(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】外科手術器具用の力制限組立品
(51)【国際特許分類】
A61B 17/29 20060101AFI20230904BHJP
A61B 17/03 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
A61B17/29
A61B17/03
(21)【出願番号】P 2020542304
(86)(22)【出願日】2019-02-06
(86)【国際出願番号】 US2019016760
(87)【国際公開番号】W WO2019157000
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2020-08-04
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-18
(32)【優先日】2018-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500103074
【氏名又は名称】コンメッド コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オリチニー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ メイソン
(72)【発明者】
【氏名】コンセルマン ジュリア
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】井上 哲男
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】独国実用新案第29713490(DE,U1)
【文献】欧州特許出願公開第3095399(EP,A2)
【文献】独国特許出願公開第4411099(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手術器具用の力制限組立品であって、
ハンドルと、
前記ハンドルに第一の端の旋回点で枢動可能に取り付けられ、前記ハンドルから外へと延びて反対端にトリガーを画定する、レバーと、
前記レバー内に位置付けられ、前記旋回点から離間した自由端を有する、カンチレバーばねと、
前記カンチレバーばねの前記自由端に対向する第一のストップが固定された駆動シャフトと、を備え、
前記旋回点を中心とした前記レバーの旋回により、前記カンチレバーばねの前記自由端が移動することで、前記自由端が前記第一のストップを押して、前記駆動シャフトが軸方向に移動するように構成されて
おり、
前記レバーの前記第一の端が二つの離間したアームを有し、
前記レバーは、前記レバーの前記第一の端の前記二つの離間したアームと前記カンチレバーばねとの間に延びたピンを有し、前記ピンは、前記カンチレバーばねを、前記カンチレバーばねが部分的に付勢される位置にある予め負荷を与えられた状態に保持する、
力制限組立品。
【請求項2】
前記レバーの前記第一の端の二つの離間したアームが、前記駆動シャフトの両側に延びる、請求項1に記載の力制限組立品。
【請求項3】
前記カンチレバーばねが二つの離間したプレートを有する、請求項2に記載の力制限組立品。
【請求項4】
前記二つの離間したプレートが前記駆動シャフトのいずれかの側に延びる、請求項3に記載の力制限組立品。
【請求項5】
前記旋回点を中心とした前記レバーの旋回により、前記カンチレバーばねが前記予め負荷を与えられた状態よりもさらに付勢される屈曲状態へと前記カンチレバーばねが移動する、請求項1に記載の力制限組立品。
【請求項6】
ハンドルおよび前記ハンドルに枢動可能に取り付けられたレバーを有する外科手術器具を製造する方法であって、
カンチレバーばねが、前記ハンドルに対して前記レバーの第一の端の旋回点から離間した自由端を有するように、前記カンチレバーばねを前記レバーに関連付けるステップと、
前記カンチレバーばねの自由端を前記外科手術器具の駆動シャフトに固定された第一のストップに対向させるステップであって、前記旋回点を中心とした前記レバーの旋回により、前記カンチレバーばねの自由端が移動することで、前記自由端が前記第一のストップを押して、前記駆動シャフトを軸方向に移動させるように、前記カンチレバーばねの自由端を前記駆動シャフトに対向させるステップと、を含み、
前記レバーの前記第一の端が二つの離間したアームを有するものであり、
前記レバーは、前記レバーの前記第一の端の前記二つの離間したアームと前記カンチレバーばねとの間に延びたピンを有し、前記ピンは、前記カンチレバーばねを、前記カンチレバーばねが部分的に付勢される位置にある予め負荷を与えられた状態に保持するものである、
外科手術器具の製造方法。
【請求項7】
前記カンチレバーばねが、前記ハンドルに対する前記レバーの移動の前に部分的に付勢される、請求項6に記載の外科手術器具の製造方法。
【請求項8】
前記カンチレバーばねが、前記レバーの移動が前記駆動シャフトの所定の所望の移動量を超える時にさらに付勢される、請求項7に記載の外科手術器具の製造方法。
【請求項9】
前記カンチレバーばねが、前記駆動シャフトに固定された二つのストップの間に位置付けられる、請求項8に記載の外科手術器具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年2月6日に出願された米国仮特許出願第62/626,854号の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、外科手術器具およびより具体的には、ユーザが外科手術装置の顎部に供給できる力の量を制限する外科手術器具用のハンドル組立品に対するものである。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
電気手術血管シーラーなどの外科手術器具は、ユーザが外科手術器具のハンドルに結合されたレバーを操作するのに応答して組織の上で閉じられる一対の顎部を有しうる。顎部に送達される力の量を制御し、したがって使用時にユーザが器具を損傷する、または標的組織を損傷するリスクを低減するために、力制限機構をハンドル内に含めて、顎部に伝送されるハンドルの力量を制限してもよい。しかし、これらの力制限機構は複雑であり、製造コストの増大につながる。さらに、多くの力制限機構は、外科手術装置内のかなりの量の空間を占める。したがって、ユーザが、コンパクトかつ製造が簡単な外科手術器具の顎部に適用できる力を制限することができる力制限機構のための技術分野におけるニーズが存在する。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、低減された部品の数および複雑さを有し、それによって組立時間および製造コストを低減する力制限組立品である。より具体的には、本発明による外科手術器具用の力制限組立品は、ハンドルと、ハンドルに旋回点で枢動可能に取り付けられたレバーとを含む。カンチレバーばねは、レバー内に位置付けられ、レバーの旋回点から離間した自由端を有する。駆動シャフトは、カンチレバーばねの自由端を小さい弧を通して移動させる、旋回点を中心としたレバーの旋回に応答した軸方向移動のために、カンチレバーばねの自由端に結合される。レバーが旋回するのにつれて顎部が閉位置に達すると、レバーに適用される力により、カンチレバーばねがより完全に付勢され、それによってレバーの操作を介してユーザが外科手術器具の駆動シャフトに適用しうる力の量を低減する。レバーの第一の端は、駆動シャフトの両側に延びる二つの離間したアームを有しうる。カンチレバーばねは、駆動シャフトのいずれかの側に延びる二つの離間したプレートを有してもよく、二つの離間したプレートのそれぞれは、その中に形成されたノッチを含む。ピンは、レバーの第一の端の二つの離間したアームの間に延びて、カンチレバーばねを係合して、カンチレバーばねが部分的に付勢される予め負荷を与えられた状態に保持しうる。駆動シャフトは、それに固定され、カンチレバーばねの二つの離間したプレートと係合している、第一のストップを含みうる。旋回ピンを中心としたレバーの旋回により、駆動シャフトが軸方向に移動するように、カンチレバーばねの二つの離間したプレートが第一のストップを押す。また、旋回ピンを中心としたレバーの旋回により、カンチレバーばねが、カンチレバーばねが予め負荷を与えられた状態よりもより完全に付勢されるより屈曲状態へと移動し、それによってユーザによってレバーに適用される力の一部を吸収する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本発明は、添付図面と併せて以下の詳細な説明を読むことにより、より完全に理解され、認識される。
【0006】
【
図1】
図1は、本発明による力制限機構を有するハンドル組立品の等角概略図である。
【
図2】
図2は、本発明による力制限機構を有するハンドル組立品の側面図である。
【
図3】
図3は、本発明による力制限機構の分解図である。
【
図4】
図4は、本発明による力制限機構のための、組み立てられたレバーの側面図である。
【
図5】
図5は、本発明による、組み立てられていないかつ予め負荷を与えられた構成にあるレバー組立品およびカンチレバーばねの斜視図であり、ピン挿入を示している。
【
図6】
図6は、本発明による予め負荷を与えられた構成における力制限機構のためのレバー組立品およびカンチレバーばねの側面図である。
【
図7】
図7は、本発明による力制限機構を有するハンドル組立品に組み込まれるレバー組立品の分解図である。
【
図8】
図8は、本発明による力制限機構を有するハンドル組立品の側面図であり、対応する顎部は開位置にある。
【
図9】
図9は、本発明による力制限機構を有するハンドル組立品の側面図であり、対応する顎部は閉位置にある。
【
図10】
図10は、本発明による力制限機構を有するハンドル組立品の側面図であり、対応する顎部は閉位置にあり、顎部を閉位置に移動させるのに必要な力を超える追加的な力がレバーに適用されている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図を参照して、図中、同様の数字は同様の部分を指し、
図1および
図2には、ハンドル12のレバー18を操作して顎部16を閉じる時にユーザが器具10の顎部16に適用しうる力の量を低減するための力制限機構14を有する、ハンドル12を有する外科手術器具10を示す。レバー18は、ハンドル12内に一方の端20で枢動可能に取り付けられ、レバー18がハンドル12に対して旋回するのにつれて長手方向に移動される駆動シャフト22に結合される。駆動シャフト22の長手方向移動は、器具10の顎部16の開閉を制御する。第二のレバー24は、顎部16の間に延びてその間に捕捉された任意の組織を切断することができる切断ナイフなどの、顎部16に関連付けられた器具を操作するために別の駆動シャフトに結合されうる。
【0008】
図3~
図6を参照すると、レバー18は、第二の端34aおよび34bが結合して、ユーザによる手動の係合のためのハンドル12から延びるトリガー36を形成するように、一緒に結合される二つの半片30aおよび30bを含む。二つの半片30aおよび30bは、ハンドル12の駆動シャフト22を中心とした枢動取り付けのためのフォーク38を一緒に画定する、二つの離間したアーム38aおよび38bを使用してレバー18の第二の端20を形成する。この目的のために、離間したアーム38aおよび38bは、ハンドル12内のレバー18の枢動取り付けのための旋回孔40aおよび40bを有する。カンチレバーばね42は、レバー18の二つの半片30aと30bとの間に位置付けられ、その中に結合される。カンチレバーばね42は、一方の端44でレバー18のトリガー36内に固定され、フォーク状の自由端46を形成する二つの離間したプレート46aおよび46bを画定するように延びる。フォーク状の自由端46は、ハンドル12内に枢動可能に取り付けられたレバー18のフォーク38から所定の距離オフセットされる。フォーク46のプレート46aおよび46bは、ユーザによって保持された時にハンドル12に対して近位に面する、その中に形成された対応する軸受表面50aおよび50bを有する。
図5を参照すると、ばね42のカンチレバー自由端48が、二つの離間したアーム38aと38bとの間に位置付けられた時に遠位に屈曲する一方で、カンチレバーばね42の固定端44がレバー18のトリガー36内に保持されるように、カンチレバーばね42の自由端48は、レバー18の二つの半片30aと30bとの間に延び、カンチレバーばね42を係合する予め負荷を与えられたピン54によって少なくとも部分的に付勢される位置に保持される。
【0009】
図7を参照すると、ハンドル12は、一緒に結合されてその間に空洞62を画定する二つの半片を有しうるハウジング60を含む。空洞62は、駆動シャフト22および力制限機構14を収容し、ハンドル12内の駆動シャフト22の中間セクションの周りに結合されうるようにレバー18を受け入れるように寸法決めされる。レバー18は、レバー18のフォーク状の端40の旋回孔40aおよび40bを通って空洞62を横切って延びる旋回ピン64によって空洞内に端20で枢動可能に取り付けられ、ハウジング60に固定される。駆動シャフト22は、レバーのフォーク状の端38とカンチレバーばね42のフォーク状の端46との間に延びる。駆動シャフト22は、カンチレバーばね42が第一のストップ66および第二のストップ68の両方と係合し、軸受表面50aおよび50bが、第一のストップ66を押すことによって駆動シャフト22を軸方向に移動させることができるように、それに固定され、カンチレバーばね42の近位に位置付けられた第一のストップ66と、それに固定され、カンチレバーばね42の遠位に位置付けられた第二のストップ68とを含む。
【0010】
図8を参照すると、カンチレバーばね42が予め負荷を与えられた状態にあり、レバー18が作動していない位置にある場合、顎部16は開位置にある。レバー半片34aは、本発明を可視化するために隠されている。
図8に示すように、レバー18は、ユーザが旋回レバー18に旋回ピン64の周りに力を適用していない解放された位置にある。解放された位置では、カンチレバーばね42は予め負荷を与えられているが、カンチレバーばね42の軸受表面50aおよび50bは第一のストップ66に力を適用しておらず、故に駆動シャフト22は顎部16を閉じさせるように軸方向に移動していない。
【0011】
図9を参照すると、レバー18が旋回ピン64を中心として部分的に旋回し、顎部16を閉じるように駆動シャフト22を駆動するように、ユーザは手動でレバー18に力を適用している。レバー18が旋回するにつれて、カンチレバーばね42の自由端46が第一のストップ66と係合してこれを押し、顎部16が駆動シャフト22によって閉位置へと駆動されるように、駆動シャフト22を近位に移動させる。上記で説明した通り、フォーク状の自由端46は、ハンドル12内のレバー18のフォーク38の旋回点から所定の距離だけオフセットされる。結果として、旋回ピン64を中心としたレバー18の旋回により、カンチレバーばね42のフォーク状の自由端46がハンドル12内で小弧を通して移動する。そのため、レバー18の旋回により、駆動シャフト22がその長手方向軸に沿って
近位に並進するように、カンチレバーばね42の自由端46が駆動シャフト22の第一のストップ66を近位に付勢する。駆動シャフト22の近位移動が、顎部16の各顎部部材を閉位置へと旋回させるよう力を加えるように、駆動シャフト22の反対端が顎部16に相互接続されているため、駆動シャフト22の近位移動は顎部16の閉鎖へと変換される。例えば、駆動シャフト22は、ピンの軸方向移動により顎部16を閉じさせるように、顎部16の旋回点の近位に位置付けられたスロットを通って延びるピンを介して各顎部16に結合されてもよい。その他の機械的アプローチを使用して、力制限機構14の設計に影響を及ぼすことなく、駆動シャフト22の軸方向移動を顎部16の閉鎖へと変換しうることを認識されたい。
【0012】
図10を参照すると、顎部16が完全に閉じられる点を超えるレバー18の旋回により、カンチレバーばね42が
図8における初期の予め負荷を与えられた状態を超えて屈曲するように、追加的な手動の力がカンチレバーばね42の追加的な屈曲へと変換される。カンチレバーばね42の追加的な屈曲は、顎部16に適用される力についてのユーザフィードバックを提供し、より重要なことに、力が、駆動シャフト22の追加的な移動ではなく、カンチレバーばね42の屈曲に変換されるために、駆動シャフト22の移動へと変換されるレバー18に適用される力の量を制限する。したがって、顎部16を閉じるのに必要な力を超えるレバー18に適用される力は、カンチレバーばね42の追加的な屈曲に吸収され、それによって顎部16に適用される力の量を制限し、器具10を損傷しかねない過度の手動の力の適用を防止する。
【0013】
顎部16を閉じるのに必要な力の量(すなわち、制限される力の量)、ならびに駆動シャフト22の動きの距離、および吸収することができる制限量を超える力の量は、旋回ピン64からのカンチレバーばね42のオフセットを変化させること、カンチレバーばね42に対して使用される設計および材料などによって調整されうることを認識されたい。よって、力制限機構14は、外科手術器具10に対して望ましいあらゆる条件に適合するよう調整されうる。さらに、本発明は電気手術血管シーラーと組み合わせて示したが、力制限組立品は、ユーザハンドルおよび力を提供するために使用されるレバーを有する任意のその他の外科手術器具との組み合わせにおいても有用でありうる。例えば、クリップアプライヤ、グラスパ、ディセクタ、およびその他のハンドルおよびレバー操作器具も、本発明による力制限組立品から利益を得ることができる。