IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オムヤ インターナショナル アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

特許7342013カルボン酸エステルのエステル交換のための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】カルボン酸エステルのエステル交換のための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/03 20060101AFI20230904BHJP
   C01F 11/18 20060101ALI20230904BHJP
   B01J 27/232 20060101ALI20230904BHJP
   C07C 69/52 20060101ALI20230904BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230904BHJP
【FI】
C07C67/03
C01F11/18 H
B01J27/232 Z
C07C69/52
C07B61/00 300
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020544944
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2019056826
(87)【国際公開番号】W WO2019180012
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-16
(31)【優先権主張番号】18163580.6
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518453383
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100116975
【弁理士】
【氏名又は名称】礒山 朝美
(72)【発明者】
【氏名】ジャマル フトゥーニ
(72)【発明者】
【氏名】マチアス ベルカー
(72)【発明者】
【氏名】ザームエル レンチ
【審査官】坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103977781(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102824903(CN,A)
【文献】特開2010-120011(JP,A)
【文献】特開2013-249325(JP,A)
【文献】RUI WANG; ET AL,A FACILE, LOW-COST ROUTE FOR THE PREPARATION OF CALCINED POROUS CALCITE AND DOLOMITE 以下備考,CATALYSIS SCIENCE & TECHNOLOGY,2013年,VOL:3, NR:9,,PAGE(S):2244 - 2251,http://dx.doi.org/10.1039/c3cy00129f,AND THEIR APPLICATION AS HETEROGENEOUS CATALYSTS IN BIODIESEL PRODUCTION
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C01F
B01J
C07B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を含む不均一系触媒作用によるカルボン酸エステルのエステル交換のための方法であって:
(a)第一のカルボン酸エステルを含む基剤を提供すること;
(b)第一のアルコールを提供すること;
(c)触媒を提供すること;及び
(d)工程(a)で提供した前記基剤と、工程(b)で提供した前記第一のアルコールとを、工程(c)で提供した前記触媒の存在下に反応させて、第二のカルボン酸エステルと第二のアルコールとを含む反応混合物を得ること;
ここで、前記触媒が、焼成した表面反応炭酸カルシウムを含み、
前記表面反応炭酸カルシウムが、粉砕天然炭酸カルシウム含有鉱物(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び一つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、かつ前記二酸化炭素が、前記Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部源から供給され
前記表面反応炭酸カルシウムが、以下の工程を含むプロセスによって得られ:
(i)粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)の水性懸濁液を提供すること;
(ii)工程(i)で提供した前記懸濁液に、20℃で0又はそれ未満のpK 値を有するか、又は20℃で0~2.5のpK 値を有する少なくとも一つの前記H イオン供与体を添加すること、
ここで、前記H イオン供与体:前記粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)のモル比は、0.01:1~4:1である;及び
(iii)工程(i)で提供した前記懸濁液を、工程(ii)の前、間、又は後に、二酸化炭素で処理すること;かつ
少なくとも650℃の焼成温度で、前記表面反応炭酸カルシウムの焼成を行うこと
を特徴とする、
不均一系触媒作用によるカルボン酸エステルのエステル交換のための方法。
【請求項2】
前記基が、脂肪又は脂肪油であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一のカルボン酸エステルが、トリグリセリドであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一のアルコールが、一価のアルコールであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒が、以下を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法:
(i)1~75μmの50(vol);及び/又は
(ii)2~150μmの98(vol)。
【請求項6】
前記触媒が、窒素及びISO 9277:2010によるBET法を用いて測定して、1~200mgの比表面積を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記表面反応炭酸カルシウムが、以下を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法:
(i)0.5~50μmの50(vol);及び/又は
(ii)1~120μmの98(vol)。
【請求項8】
前記表面反応炭酸カルシウムが、窒素及びISO 9277:2010によるBET法を用いて測定して、15~200mgの比表面積を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
下記を特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法:
(i)前記粉砕天然炭酸カルシウム含有鉱物が、大理石、白亜、ドロマイト、石灰石、及びそれらの混合物からなる群から選択され;かつ/又は
(ii)前記沈降炭酸カルシウムが、アラゴナイトの、バテライトの、若しくはカルサイトの鉱物結晶形又はこれらの混合物を含む。
【請求項10】
前記触媒が、表面反応炭酸カルシウムの部分的な又は完全な焼成によって得られることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒が、表面反応炭酸カルシウムの焼成によって得られることを特徴とし、ここで、前記焼成を下記のとおり行う、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法:
(i)700~950℃の焼成温度で前記焼成を行い、かつ/又は
(ii)1~3時間の焼成時間で前記焼成を行う。
【請求項12】
工程(d)において、前記第一のアルコールを反応媒体として使用することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(d)において、前記基剤の総重量に対して、0.01~20重量%の量で前記触媒を使用することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(d)において、第一段階で前記アルコールと前記触媒とを接触させ、かつ次いで第二段階で前記基剤を加えることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも20℃の温度で、工程(d)を実施することを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程(d)で得られた前記反応混合物から、前記第二のカルボン酸エステルを分離する工程(e)をさらに含むことを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
燃料又は燃料成分の製造における、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項18】
燃料又は燃料成分としての、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法によって得られるカルボン酸エステルの使用。
【請求項19】
焼成した表面反応炭酸カルシウムを含むエステル交換触媒であって、
前記表面反応炭酸カルシウムが、粉砕天然炭酸カルシウム含有鉱物(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び一つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、かつ前記二酸化炭素が、前記Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部源から供給され
前記表面反応炭酸カルシウムが、以下の工程を含むプロセスによって得られ:
(i)粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)の水性懸濁液を提供すること;
(ii)工程(i)で提供した前記懸濁液に、20℃で0又はそれ未満のpK 値を有するか、又は20℃で0~2.5のpK 値を有する少なくとも一つの前記H イオン供与体を添加すること、
ここで、前記H イオン供与体:前記粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)のモル比は、0.01:1~4:1である;及び
(iii)工程(i)で提供した前記懸濁液を、工程(ii)の前、間、又は後に、二酸化炭素で処理すること;かつ
少なくとも650℃の焼成温度で、前記表面反応炭酸カルシウムの焼成を行う、
焼成した表面反応炭酸カルシウムを含むエステル交換触媒。
【請求項20】
エステル交換反応における触媒としての、焼成した表面反応炭酸カルシウムを含む触媒の使用であって、
前記表面反応炭酸カルシウムが、粉砕天然炭酸カルシウム含有鉱物(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び一つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、かつ前記二酸化炭素が、前記Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部源から供給され
前記表面反応炭酸カルシウムが、以下の工程を含むプロセスによって得られ:
(i)粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)の水性懸濁液を提供すること;
(ii)工程(i)で提供した前記懸濁液に、20℃で0又はそれ未満のpK 値を有するか、又は20℃で0~2.5のpK 値を有する少なくとも一つの前記H イオン供与体を添加すること、
ここで、前記H イオン供与体:前記粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)のモル比は、0.01:1~4:1である;及び
(iii)工程(i)で提供した前記懸濁液を、工程(ii)の前、間、又は後に、二酸化炭素で処理すること;かつ
少なくとも650℃の焼成温度で、前記表面反応炭酸カルシウムの焼成を行う、
焼成した表面反応炭酸カルシウムを含む触媒の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面反応炭酸カルシウムの焼成によって得られる触媒を使用した不均一系触媒作用によるカルボン酸エステルのエステル交換のための方法に関する。さらに、本発明は、バイオディーゼルなどの燃料又は燃料成分の製造におけるこの方法の使用に関する。本発明のさらなる態様は、本発明の方法によって得られるエステル交換したエステル、及び燃料としての又は燃料成分としてのその使用に関する。本発明のさらに別の態様は、対応するエステル交換触媒、及びエステル交換反応におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エステル交換は、下記の反応スキームに従って、エステルの有機基R”をアルコールの有機基R’と交換するプロセスである:
R”O(O=)CR + R’OH → R’O(O=)CR + R”OH
【0003】
このタイプの反応は、多数の大規模な工業プロセスにおいて適用される。例えば、ポリエステルの合成は、ジエステルとジオールとのエステル交換によって達成することができる。過去数十年の間に、脂肪(トリグリセリドで構成される)のエステル交換は、非化石燃料、特にバイオディーゼルの製造において重要性を増している。
【0004】
バイオディーゼルという用語は、植物又は動物脂肪ベースの燃料を指し、この燃料は、これらの脂肪をアルコールと化学的に反応させて脂肪酸エステルを生成することによって得ることができる。メタノールは、脂肪酸メチルエステル(いわゆるFAME)を生じるアルコールとして最も頻繁に使用されている。脂肪のエステル交換の場合、グリセリンが需要のある副生成物として得られる。
【0005】
典型的には、エステル交換は、塩基触媒又は酸触媒のいずれかであり得る適切な触媒の存在下で実施される。一般に使用される塩基触媒には、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)又はナトリウムメトキシド(HCONa)が含まれる。一方、一般に使用される酸触媒には、硫酸(HSO)及びリン酸(HPO)が含まれる。
【0006】
エステル交換法に関する特別な要求は、完全な転化率、高い反応速度、及び望ましくない不純物の防止である。エステル交換プロセスの望ましくない不純物としては、例えば、カルボン酸の塩が挙げられる。
【0007】
一般に、酸触媒は、塩基触媒と比較して効率が悪いことが知られており、かつそのエステル交換プロセスは、大量の過剰なアルコールを必要とする。エステル交換の際に水が生成すると、反応速度がさらに低下し、又は反応を止めることさえあり得る。通常、強い酸(例えば、硫酸)は、高い反応速度で完全な変換を達成するために必要とされ、これは、今度は耐酸性機器の使用を必要とする。
【0008】
逆に、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムなどの公知の塩基触媒の使用にも欠点がある。この点に関して、カルボン酸塩の形成は、主要な問題の1つである。脂肪エステル交換の場合、これらのカルボン酸塩は、石鹸として作用する脂肪酸塩であり、プロセスのいくつかの段階で問題を引き起こし得る。したがって、その後の洗浄工程が必要とされる場合がある。
【0009】
水酸化ナトリウム(NaOH)は安価で入手が容易な触媒であるが、水酸化ナトリウムの取り扱い及び溶解は困難であり、かつ危険である。水酸化カリウム(KOH)は、より容易に溶解するが、より高価であり、貯蔵時の水分に対する感受性がより高い。
【0010】
最後に、特にNaOH又はKOHのような可溶性触媒の場合、触媒自体の除去も問題である。上述のように、触媒は、エステル生成物中に不純物として存在し得るし、又は不純物の形成をもたらし得る。基剤、すなわち、出発物質によっては、需要のある副生成物中の不純物(例えば、脂肪エステル交換の場合にはグリセリン中の不純物)もまた問題となる。
【0011】
前述の欠点の一つ又は複数を克服するか、又は前述の方法を改善するための一般的な必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の一つの目的は、触媒を反応混合物から容易に分離することができるエステル交換法の提供に見出すことができる。
【0013】
別の目的は、より効率的なエステル交換法の提供又は対応する触媒の提供に見出すことができる。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、プロセス不純物の減少及び対応する触媒の提供に見出すことができる。
【0015】
さらに別の目的は、容易に取り扱うことができるエステル交換法の提供、及び容易かつ安全に貯蔵又は使用することができる対応する触媒の提供に見出すことができる。本発明の別の目的として、本発明の方法又は触媒の環境適合性を見出すことができる。
【0016】
最後に、本発明のさらに別の目的は、エステル交換反応に使用するための、より経済的な触媒系の提供に見出すことができる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述した問題及びその他の問題は、独立請求項における本明細書に定義する主題によって解決することができる。
【0018】
これに関して、本発明の第一の態様は、不均一系触媒作用によるカルボン酸エステルのエステル交換のための方法に関し、この方法は以下の工程を含む:
(a)第一のカルボン酸エステルを含む基剤を提供すること;
(b)第一のアルコールを提供すること;
(c)触媒を提供すること;及び
(d)工程(a)で提供した基剤と工程(b)で提供した第一のアルコールとを、工程(c)で提供した触媒の存在下に反応させて、第二のカルボン酸エステルと第二のアルコールとを含む反応混合物を得ること;
ここで、上記触媒が、焼成した表面反応炭酸カルシウムを含み、
この表面反応炭酸カルシウムが、粉砕天然炭酸カルシウム含有鉱物(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び一つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、かつ二酸化炭素が、Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部供給源から供給されることを特徴とする。
【0019】
本発明者らは、驚くべきことに、焼成した表面反応炭酸カルシウムを含む触媒の使用が効率的なエステル交換をもたらすことを見出した。以下にさらに詳しく説明するように、表面反応炭酸カルシウムは、炭酸カルシウム含有物質と、二酸化炭素と、一つ又は複数のHイオン供与体とを反応させて得られる特定の種類の炭酸カルシウムである。その使用の前に、この触媒は、後続の高温での焼成によって活性化される。さらに、本発明者らは、驚くべきことに、焼成した表面反応炭酸カルシウムを含む触媒の使用が、不純物の減少をもたらすことを見出した。
【0020】
本発明の別の態様は、燃料又は燃料成分の製造における本発明の方法の使用に関する。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、本発明の方法によって得ることができるカルボン酸エステルに関する。
【0022】
さらに別の態様は、燃料として又は燃料成分としての、本発明の方法によって得られるカルボン酸エステルの使用に関する。
【0023】
さらに別の態様は、焼成した表面反応炭酸カルシウムを含むエステル交換触媒に関し、ここで、この表面反応炭酸カルシウムは、粉砕天然炭酸カルシウム含有鉱物(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び一つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、かつ二酸化炭素は、Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部源から供給される。
【0024】
最後に、本発明のさらに別の態様は、エステル交換反応における、触媒として表面反応炭酸カルシウムを含む触媒の使用に関し、ここで、この表面反応炭酸カルシウムは、二酸化炭素及び一つ又は複数のHイオン供与体で処理した、粉砕天然炭酸カルシウム含有鉱物(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)の反応生成物であり、かつ二酸化炭素は、Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部源から供給される。
【0025】
本明細書において使用される以下の用語は、以下に定める意味を有するものとする。
【0026】
上述したように、「表面反応炭酸カルシウム」は、特定の種類の炭酸カルシウムである。これは、粉砕天然炭酸カルシウム含有鉱物(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び一つ又は複数のHイオン供与体との反応によって得られ、ここで、二酸化炭素は、Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部源から供給される。
【0027】
本明細書でいう「焼成した」との用語は、焼成を行った固体材料の外観を指す。焼成とは、酸素の存在下又は非存在下での、好ましくは酸素、例えば大気中の酸素の存在下での高温での熱処理を意味する。「焼成した」及び「焼成」という用語は、当業者に周知であり、かつ焼成は、出発材料の完全な熱変換の部分(部分的又は完全な焼成)をもたらすことができるということが理解される。
【0028】
本明細書での意味における「粉砕天然炭酸カルシウム」(GNCC)との用語は、天然炭酸カルシウム含有鉱物(例えば、白亜、石灰石、大理石又はドロマイト)から得られる微粒子状材料であって、破砕及び/又は粉砕などの湿式及び/又は乾燥粉砕工程で処理され、任意に、例えばサイクロン又は分級機によるスクリーニング及び/又は分画などのさらなる工程に供した微粒子状材料を指す。
【0029】
「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、水性環境中での二酸化炭素と水酸化カルシウム(消石灰)との反応に続く沈殿によって得られる合成材料である。あるいは、沈降炭酸カルシウムは、水性環境中でのカルシウム塩と炭酸塩との反応、例えば塩化カルシウムと炭酸ナトリウムとの反応によっても得ることができる。PCCは、バテライトの、カルサイトの、又はアラゴナイトの結晶形態を有することができる。PCCは、例えば、欧州特許出願公開第2 447 213 A1号公報、欧州特許出願公開第2 524 898 A1号公報、欧州特許出願公開第2 371 766 A1号公報、欧州特許出願公開第2 840 065 A1号公報、又は国際公開第2013/142473 A1号に記載されている。
【0030】
ここで使用される場合、体積に基づく粒径分布d(vol)は、この直径に関して、粒子のx体積%が、d(vol)よりも小さい直径を有するということを示す。これは、例えば、d20(vol)値が、全粒子の20体積%が、この粒径よりも小さい粒径であることを意味する。したがって、d50(vol)の値は、体積メジアン粒径であり、すなわち、全粒子の50体積%がこの粒径よりも小さく、かつd98(vol)値は、体積に基づくトップカットと呼ばれ、全粒子の98体積%がこの粒径よりも小さい。
【0031】
次に、重量に基づく粒径分布d(wt)は、この直径に関して、粒子のx重量%が、d(wt)よりも小さい直径を有するということを示す。これは、例えば、d20(wt)値が、全粒子の20重量%が、この粒径よりも小さい粒径であることを意味する。したがって、d50(wt)値は、重量メジアン粒径であり、すなわち、全粒子の50体積%がこの粒径よりも小さく、かつd98(wt)値は、重量に基づくトップカットと呼ばれ、全粒子の98重量%がこの粒径よりも小さい。
【0032】
本明細書全体を通して、表面反応炭酸カルシウム又はその他の物質を定義するために使用される「比表面積」(m/gで表される)という語は、(吸着ガスとして窒素を使用する)BET法を使用することによって決定される比表面積を指す。
【0033】
単数名詞に言及するときに、不定又は定冠詞、例えば「a」、「an」又は「the」が使用されている場合、これには、特に明記されていない限り、その名詞の複数を含む。
【0034】
用語「~を含む(comprising)」が、本明細書及び特許請求の範囲において使用されている場合、それは他の要素を排除するわけではない。本発明の目的のために、用語「~からなる(consisting of)」は、用語「~を含む(comprising)」の好ましい実施形態であるとみなされる。以下において、一つの群が少なくとも特定の数の実施形態を含むものとして定義されている場合、これは同様に、好ましくはこれらの実施形態のみで構成されている一つの群を開示するものとして理解されるべきである。
【0035】
「得ることができる(obtainable)」又は「定義することができる(definable)」及び「得られた(obtained)」又は「定義された(defined)」のような用語は、互換的に使用される。これは、例えば、文脈上明白に別段の指示がなされているのでない限り、「得られた(obtained)」との用語が、例えばある実施形態が、例えば「得られた」という用語の後に続く工程の順番によって得られなければならないことを示すことを意味するものではないが、このような限定された理解は、好ましい実施形態として、「得られた」又は「定義された」という用語に常に含まれるということを意味する。
【0036】
「~を含む(including)」又は「~を有する(having)」という用語が使用されるときはいつでも、これらの用語は、上記で定義された「~を含む(comprising)」と等価であることを意味する。
【0037】
本発明の方法の有利な実施形態及びさらなる態様は、対応する従属請求項において定義される。
【0038】
本発明の一実施形態において、基剤は、脂肪又は脂肪油、好ましくは植物油であり、より好ましくは、基剤は、キャノーラ油、綿実油、ココナッツ油、コーン油、ヘーゼルナッツ油、アマニ油、からし油、オリーブ油、ヤシ油、ピーナッツ油、菜種油、ぬか油、ベニバナ油、ごま油、大豆油、ヒマワリ油、タイガーナッツ油、キリ油、及びこれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは、基剤は、ヒマワリ油である。
【0039】
本発明の方法の別の実施形態では、第一のカルボン酸エステルは、トリグリセリドである。
【0040】
さらに別の実施形態では、第一のアルコールは、一価のアルコール、好ましくは一価のC-Cアルコール、より好ましくは一価のC-Cアルコール、さらにより好ましくは、メタノール又はエタノール、最も好ましくはメタノールである。
【0041】
本発明の別の実施形態では、触媒は、以下を有する:
(i)1~75μm、好ましくは1.5~50μm、より好ましくは2~30μm、最も好ましくは3~15μmのd50(vol);及び/又は
(ii)2~150μm、好ましくは5~120μm、より好ましくは8~80μm、最も好ましくは10~30μmのd98(vol)。
【0042】
さらに別の実施形態では、この触媒は、窒素及びISO 9277:2010に従うBET法を使用して測定して、1~200m/g、好ましくは5~120m/g、最も好ましくは10~100m/gの比表面積を有する。
【0043】
さらに別の実施形態では、表面反応炭酸カルシウムは、以下を有する:
(i)0.5~50μm、好ましくは1~30μm、より好ましくは1.5~20μm、最も好ましくは2~12μmのd50(vol);及び/又は
(ii)1~120μm、好ましくは2~100μm、より好ましくは5~50μm、最も好ましくは8~25μmのd98(vol)。
【0044】
さらに別の実施形態では、この表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びISO 9277:2010によるBET法を使用して測定して、15~200m/g、好ましくは25~180m/g、最も好ましくは30~150m/gの比表面積を有する。
【0045】
別の実施形態では、触媒は、下記を特徴とする:
(i)粉砕天然炭酸カルシウム含有鉱物は、大理石、白亜、ドロマイト、石灰石、及びそれらの混合物からなる群から選択される;かつ/又は
(ii)沈降炭酸カルシウムは、アラゴナイトの、バテライトの、若しくはカルサイトの鉱物結晶形又はそれらの混合物を含む。
【0046】
本発明のさらに別の実施形態では、触媒は、表面反応炭酸カルシウムの部分的又は完全な焼成によって得ることができる。
【0047】
別の実施形態では、触媒は、表面反応炭酸カルシウムの焼成によって得ることができ、ここで、この焼成を下記のとおり行う:
(i)少なくとも650℃、好ましくは少なくとも680℃の焼成温度で、最も好ましくは700~950℃の温度で焼成を行い;かつ/又は
(ii)少なくとも5分、好ましくは少なくとも0.25時間、より好ましくは少なくとも0.5時間、最も好ましくは1~3時間の焼成時間で焼成を行う。
【0048】
別の実施形態では、この方法は、工程(d)において、第一のアルコールを反応媒体として使用し、好ましくは、この第一のアルコールを、第一のカルボン酸エステルに対してモル過剰で使用することを特徴とする。
【0049】
別の実施形態では、この方法は、工程(d)において、触媒を、基剤の総重量に対して、0.01~20重量%、好ましくは0.1~10重量%、最も好ましくは0.5~5重量%の量で使用することを特徴とする。
【0050】
さらに別の実施形態では、この方法は、工程(d)において、第一段階でアルコールと触媒とを接触させ、かつ次いで第二段階で基剤を加えることを特徴とする。
【0051】
さらに別の実施形態では、この方法は、工程(d)を、少なくとも20℃、好ましくは少なくとも25℃、最も好ましくは30~80℃の範囲の温度で実施することを特徴とする。
【0052】
さらに別の実施形態において、本方法は、工程(d)で得られた反応混合物から第二のカルボン酸エステルを分離する工程(e)をさらに含む。
【0053】
以下に、本発明によるエステル交換法の詳細及び好ましい実施形態を開示する。これらの詳細及び実施形態は、適用可能な場合、燃料又は燃料成分の製造における本発明の方法の使用、この本発明の方法によって得ることができるカルボン酸エステル、及び燃料として又は燃料成分としてのこのエステルの使用にも言及することを理解されたい。適用可能な場合、以下の詳細及び実施形態は、本発明のエステル交換触媒、及びエステル交換反応における触媒としてのこの触媒の使用をさらに指す。
【0054】
(A)基剤
本発明のエステル交換法の工程(a)によれば、工程(b)で提供する第一のアルコールと反応する第一のカルボン酸エステルを含む基剤を提供する。「第一のカルボン酸エステル」との用語は、基剤のエステルと、エステル生成物、すなわち「第二のカルボン酸エステル」とが、異なる化学構造を有することを示す。
【0055】
原則として、本発明で使用する第一のカルボン酸エステルは、このエステルが、R”O(O=)CR(式中、R”及びRは、同一であっても異なっていてもよく、かつ任意の想定される有機基であってよい)として一般的に記載することができる一つ又は複数のエステル部分を特徴とすることを条件として、任意の有機分子であることができる。
【0056】
これに関して、第一のカルボン酸エステルは、モノエステル、すなわち、1つのエステル部分を特徴とする有機分子であることができ、又はジエステル、トリエステルなど、すなわち、2つ又はそれを超えるエステル部分を特徴とする有機分子であることができる。第一のカルボン酸エステルが2つ又はそれを超えるエステル部分を含む場合、これは特に、ポリエステル化多価アルコール(例えば、ジグリセリド又はトリグリセリド)を指す。
【0057】
特に適切なエステルは、(固形)脂肪又は(液体)脂肪油の構成成分であるグリセリド、好ましくはトリグリセリドであり、まとめて天然「脂肪」と称され、飽和脂肪と不飽和脂肪とでさらなる区別を行うことができる。したがって、一実施形態では、基剤は脂肪又は脂肪油、好ましくは脂肪油である。より好ましい態様において、基剤は植物油であり、更に好ましくは、キャノーラ油、綿実油、ココナッツ油、コーン油、ヘーゼルナッツ油、アマニ油、からし油、オリーブ油、ヤシ油、ピーナッツ油、菜種油、ぬか油、ベニバナ油、ごま油、大豆油、ヒマワリ油、タイガーナッツ油、キリ油、及びそれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは、基剤はヒマワリ油である。
【0058】
特に脂肪、例えば脂肪油の場合、基剤は、未使用(未処理)の基剤又は使用済みの基剤、すなわち使用済みの脂肪油であってよい。これに関して、本発明の方法は、使用済み脂肪の処理又は変換のためにさらに使用することができる。
【0059】
上記のように、基剤は、一般式R”O(O=)CRを有することができる第一のカルボン酸エステルを含む。本発明の一実施形態において、第一のカルボン酸エステルは、グリセリド、好ましくはトリグリセリドである。当業者は、基剤が、2つ又はこれを超える構造的に異なるカルボン酸エステルの混合物、例えば、天然脂肪の場合として、異なるトリグリセリドの混合物を含むことができることを認識するであろう。
【0060】
最も単純なトリグリセリドは、3つの脂肪酸が同一であるトリグリセリドである。次に、トリグリセリドなどのポリエステル化多価アルコールを、異なるアシル基で置換することができる。
【0061】
(B)アルコール
本発明による方法の工程(b)において、第一のアルコールを提供する。「第一のアルコール」との用語は、工程(b)において反応物として提供したアルコールと、アルコール生成物、すなわち「第二のアルコール」とが、異なる化学構造を有することを示す。
【0062】
原則として、本発明で使用される第一のアルコールは、それが少なくとも一つのヒドロキシ基を特徴とすることを条件にして、任意の有機アルコールであることができる。したがって、アルコールは、一般に、R’OHと記載することができ、ここで、R’は、任意の想定される有機基であってよい。特に、工程(b)で提供する第一のアルコールは、一価のアルコールであってよく、これは、一つのヒドロキシ基のみを含有することを意味する。
【0063】
したがって、本発明の一実施形態では、第一のアルコールは、一価のアルコール、好ましくは一価のC-Cアルコール、より好ましくは一価のC-Cアルコールである。例えば、C-Cは、1~5個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖又は分岐アルキル鎖を示す。したがって、適切な一価のアルコールの非限定的な例としては、ペンタノールの構造異性体、ブタノールの構造異性体、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール及びメタノールが挙げられる。別の好ましい実施形態では、工程(b)で提供する第一のアルコールは、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール及びメタノールから選択され、さらに好ましくはメタノール又はエタノールであり、最も好ましくは、第一のアルコールはメタノールである。
【0064】
(C)触媒
工程(c)で提供される本発明の方法の触媒は、焼成によって活性化された表面反応炭酸カルシウムを含み、ここで、表面反応炭酸カルシウムは、粉砕天然炭酸カルシウム含有鉱物(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び一つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、かつ二酸化炭素は、Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部源から供給される。
【0065】
活性化した触媒の基材は、表面反応炭酸カルシウム(SRCC)であり、これは変性炭酸カルシウム(MCC)とも呼ばれる。
【0066】
表面反応炭酸カルシウムは、一つ又は異なる種類の表面反応炭酸カルシウムの混合物であってよいことが理解される。本発明の一実施形態では、表面反応炭酸カルシウムは、一種類の表面反応炭酸カルシウムを含み、好ましくはそれからなる。あるいは、表面反応炭酸カルシウムは、二種類又はそれを超える表面反応炭酸カルシウムを含み、好ましくはそれからなる。例えば、表面反応炭酸カルシウムは、二種又は三種の表面反応炭酸カルシウムを含み、好ましくはそれからなる。表面反応炭酸カルシウムは、一種類の表面反応炭酸カルシウムを含み、好ましくはそれからなる。
【0067】
表面反応炭酸カルシウムは、二酸化炭素及び一つ又は複数のHイオン供与体で処理した、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)の反応生成物であり、ここで、二酸化炭素は、Hイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部源から供給される。粉砕天然炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムと、二酸化炭素及び一つ又は複数のHイオン供与体との反応のため、表面反応炭酸カルシウムは、GNCC又はPCC及び炭酸カルシウム以外の少なくとも一つの水不溶性カルシウム塩を含むことができる。
【0068】
好ましい実施形態では、この表面反応炭酸カルシウムは、GNCC又はPCCと、前記GNCC又はPCCの表面の少なくとも一部に存在する、炭酸カルシウム以外の少なくとも一つの水不溶性カルシウム塩とを含む。
【0069】
本発明に関して、Hイオン供与体は、ブレンステッド酸及び/又は酸性塩である。
【0070】
本発明の好ましい実施形態では、表面反応炭酸カルシウムは、以下の工程を含むプロセスによって得られる:
(a)粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)の懸濁液を提供すること;
(b)工程(a)で提供した懸濁液に、20℃で0又はそれ未満のpK値を有するか、又は20℃で0~2.5のpK値を有する少なくとも一つの酸を添加すること;及び
(c)工程(a)で提供した懸濁液を、工程(b)の前、間、又は後に二酸化炭素で処理すること。
【0071】
別の実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは、以下の工程を含むプロセスによって得られる:
(a)粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)を提供すること;
(b)少なくとも一つの水溶性酸を提供すること;
(c)二酸化炭素ガスを提供すること;及び
(d)工程(a)で提供した上記GNCC又はPCCと、工程(b)で提供した上記少なくとも一つの酸と、工程(c)で提供した二酸化炭素ガスとを接触させること;
ここで、このプロセスは下記を特徴とする
(i)工程(b)で提供した少なくとも一つの酸は、その第一の利用可能な水素のイオン化に関連して、20℃で2.5より大きくかつ7又はこれ未満のpKを有し、かつ対応するアニオンが、水溶性カルシウム塩を形成することができるこの第一の利用可能な水素の喪失時に形成されること;及び
(ii)工程(b)で提供した少なくとも一つの水溶性酸と、工程(a)で提供したGNCC又はPCCとを接触させた後、水素含有塩が、第一の利用可能な水素のイオン化に関連して、20℃で7より大きいpKを有し、かつその塩アニオンが水不溶性カルシウム塩を形成することができる場合には、少なくとも一つの水溶性塩が追加で提供されること。
【0072】
炭酸カルシウム源、例えば、粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)は、好ましくは、大理石、白亜、石灰石及びそれらの混合物を含む群から選択される炭酸カルシウム含有鉱物から選択される。天然炭酸カルシウムは、さらに、炭酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩などの天然に存在する成分を含んでもよい。一実施形態によれば、GNCCなどの天然炭酸カルシウムは、アラゴナイトの、バテライトの、若しくはカルサイトの鉱物結晶形、又はそれらの混合物を含む。
【0073】
一般に、粉砕天然炭酸カルシウムの粉砕は、乾式又は湿式粉砕プロセスで行うことができ、例えば、粉砕が二次的物体による衝撃の結果として大部分の粉砕が生じるような条件下で、任意の従来からの粉砕装置を使用して、すなわち、以下の一つ又は複数の装置を用いて実施することができる:ボールミル、ロッドミル、振動ミル、ロール破砕機、遠心衝撃ミル、垂直ビーズミル、摩滅粉砕機、ピンミル、ハンマーミル、粉砕機、シュレッダー、デクランバ、ナイフカッター、又は当業者に公知の他のこのような装置。粉砕天然炭酸カルシウムが湿式粉砕炭酸カルシウムを含む場合、粉砕工程は、自生粉砕が行われるような条件下で、及び/又は水平方向のボールミル粉砕、及び/又は当業者に公知の他のそのようなプロセスによって行われてもよい。このようにして得られた湿式処理された粉砕天然炭酸カルシウムは、乾燥前に周知のプロセスによって、例えば、凝集、ろ過又は強制蒸発によって洗浄しかつ脱水することができる。後続の乾燥工程(必要に応じて)は、噴霧乾燥などの単一工程で、又は少なくとも二工程で実施することができる。また、このような鉱物材料は、不純物を除去するために、選鉱工程(浮選、漂白又は磁気分離工程など)を受けることが一般的である。
【0074】
先に示したように、本発明の意味における沈降炭酸カルシウム(PCC)は、水性環境中での二酸化炭素と水酸化カルシウムの反応に続く沈殿によって、又は溶液からのカルシウムイオン及び炭酸イオン、例えばCaCl及びNaCOの沈殿によって、一般に得られる合成物質である。PCCを製造するさらに可能な方法は、石灰ソーダ法、又はPCCがアンモニア製造の副産物であるソルベー法である。沈降炭酸カルシウムは、カルサイト、アラゴナイト及びバテライトという3つの一次結晶形態で存在し、これらの結晶形態の各々について多くの異なる多形体(晶癖)が存在する。カルサイトは、偏三角面体(S‐PCC)、菱面体晶(R‐PCC)、六方晶系角柱、卓面体、コロイド状(C‐PCC)、立方体、角柱体(P‐PCC)などの典型的晶癖を伴う三方晶構造を有する。アラゴナイトは、双晶の六方晶系角柱状の典型的晶癖を有する斜方晶系構造のみならず、薄く細長い角柱、曲面羽根付き、急勾配錐体、チゼル状結晶、分岐樹木形態、及びサンゴ又は蠕虫様形態の様々な取り合わせを伴う構造を有する。バテライトは、六方晶系に属する。得られたPCCスラリー水溶液は、機械的に脱水し、かつ乾燥することができる。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、沈降炭酸カルシウムは、アラゴナイトの、バテライトの、若しくはカルサイトの鉱物結晶形、又はそれらの混合物を含む。
【0076】
沈降炭酸カルシウムは、二酸化炭素及び少なくとも一つのHイオン供与体での処理の前に、天然炭酸カルシウムを粉砕するために使用されるのと同じ手段によって、上述のように粉砕されてもよい。
【0077】
本発明の一実施形態によれば、天然炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムは、0.05~10.0μm、好ましくは0.2~5.0μm、より好ましくは0.4~3.0μm、最も好ましくは0.6~1.2μm、特に0.7μmの重量メジアン粒径d50(wt)を有する粒子の形態である。本発明のさらなる実施形態によれば、天然炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムは、0.15~55μm、好ましくは1~40μm、より好ましくは2~25μm、最も好ましくは3~15μm、特に4μmのトップカット粒径d98(wt)を有する粒子の形態である。
【0078】
天然又は沈降炭酸カルシウムは、乾燥状態で又は水に懸濁して使用することができる。好ましくは、対応する水性スラリーは、このスラリーの総重量に基づいて、1~90重量%、より好ましくは3~60重量%、さらにより好ましくは5~40重量%、最も好ましくは10~25重量%の範囲内の天然又は沈降炭酸カルシウムの含有量を有する。
【0079】
表面反応炭酸カルシウムの調製のために使用される一つ又は複数のHイオン供与体は、調製条件下でHイオンを生成する、任意の強酸、中強酸、若しくは弱酸、又はそれらの混合物であり得る。本発明によれば、少なくとも1つのHイオン供与体は、調製条件下でHイオンを生成する酸性塩であってもよい。
【0080】
一実施形態によれば、少なくとも一つのHイオン供与体は、20℃で0又はそれ未満のpKを有する強酸である。
【0081】
別の実施形態によれば、少なくとも一つのHイオン供与体は、20℃で0~2.5のpK値を有する中強酸である。20℃でpKが0又はそれ未満である場合、この酸は、好ましくは、硫酸、塩酸、又はそれらの混合物から選択される。20℃でpKが0~2.5である場合、このHイオン供与体は、好ましくは、HSO、HPO、シュウ酸、又はそれらの混合物から選択される。少なくとも一つのHイオン供与体はまた、酸性塩、例えば、Li、Na若しくはKなどの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されているHSO 又はHPO 、あるいはLi、Na、K、Mg2+若しくはCa2+などの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されているHPO 2-であってもよい。少なくとも一つのHイオン供与体はまた、一つ又は複数の酸及び一つ又は複数の酸性塩の混合物であってもよい。
【0082】
さらに別の実施形態によれば、少なくとも一つのHイオン供与体は、第一の利用可能な水素のイオン化に関連して、20℃で測定した場合に2.5より大きくかつ7又はこれ未満のpK値を有し、かつ水溶性カルシウム塩を形成することができる対応するアニオンを有する弱酸である。続いて、水素含有塩が、第一の利用可能な水素のイオン化に関連して、20℃で測定したときに7を超えるpKを有し、かつその塩アニオンが水不溶性カルシウム塩を形成することができる場合には、少なくとも一つの水溶性塩が、追加的に提供される。より好ましい実施形態によれば、弱酸は、20℃で2.5を超えて5までのpK値を有し、より好ましくは、弱酸は、酢酸、ギ酸、プロパン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。この水溶性塩の例示的なカチオンは、カリウム、ナトリウム、リチウム及びそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましい態様において、このカチオンはナトリウム又はカリウムである。この水溶性塩の例示的アニオンは、リン酸アニオン、リン酸二水素アニオン、リン酸一水素アニオン、シュウ酸アニオン、ケイ酸アニオン、それらの混合物及びそれらの水和物からなる群から選択される。より好ましい実施形態では、このアニオンは、リン酸アニオン、リン酸二水素アニオン、リン酸一水素アニオン、それらの混合物及びそれらの水和物からなる群から選択される。最も好ましい実施形態では、このアニオンは、リン酸二水素アニオン、リン酸一水素アニオン、それらの混合物及びそれらの水和物からなる群から選択される。水溶性塩の添加は、滴下して行ってもよいし、一段階で行ってもよい。滴下の場合、この添加は、好ましくは、10分の時間内に行われる。この塩を一段階で添加することがより好ましい。
【0083】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも一つのHイオン供与体は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、少なくとも一つのHイオン供与体は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸;Li、Na若しくはKなどの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されているHPO ;Li、Na、K、Mg2+又は若しくはCa2+などの対応するカチオンによって少なくとも部分的に中和されているHPO 2-;及びそれらの混合物から選択され、より好ましくは、少なくとも一つの酸は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、シュウ酸、又はそれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましいHイオン供与体は、リン酸である。
【0084】
一つ又は複数のHイオン供与体を、濃縮溶液又はより希釈した溶液として、懸濁液に加えることができる。好ましくは、Hイオン供与体:天然又は沈降炭酸カルシウムのモル比は、0.01:1~4:1であり、より好ましくは0.02:1~2:1であり、さらに好ましくは0.05:1~1:1であり、最も好ましくは0.1:1~0.58:1である。
【0085】
別の好ましい実施形態では、少なくとも一つのHイオン供与体は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸及びそれらの混合物からなる群から選択され、ここで、Hイオン供与体:天然又は沈降炭酸カルシウムとのモル比は、0.01:1~4:1、より好ましくは0.02:1~2:1、さらにより好ましくは0.05:1~1:1、最も好ましくは0.1:1~0.58:1である。
【0086】
特に好ましい態様において、少なくとも一つのHイオン供与体は、リン酸とクエン酸との混合物であり、より好ましくは、Hイオン供与体:天然又は沈降炭酸カルシウムとのモル比は、0.01:1~4:1、より好ましくは0.02:1~2:1、さらにより好ましくは0.05:1~1:1、最も好ましくは0.1:1~0.58:1である。この実施形態では、リン酸は、好ましくは、クエン酸に対して過剰に使用される。
【0087】
代替として、天然又は沈降炭酸カルシウムを懸濁させる前に、Hイオン供与体を水に加えることもできる。
【0088】
次の工程では、天然又は沈降炭酸カルシウムを二酸化炭素で処理する。天然又は沈降炭酸カルシウムのHイオン供与体での処理に硫酸又は塩酸などの強酸を使用すると、二酸化炭素が自動的に形成する。代替的又は追加的に、二酸化炭素を外部源から供給することができる。
【0089】
イオン供与体処理と、二酸化炭素による処理とを同時に行うことができ、これは、強酸又は中強酸を使用する場合に当てはまる。例えば、20℃で0~2.5のpKを有する中強酸を用いて、最初にHイオン供与体処理を実施することもでき、ここでは、二酸化炭素がその場で形成され、したがって、二酸化炭素処理は、Hイオン供与体による処理と同時に自動的に実施されることになり、その後、外部源から供給された二酸化炭素による追加の処理が行われる。
【0090】
好ましくは、懸濁液中の二酸化炭素ガスの濃度は、体積換算で、(懸濁液の体積):(二酸化炭素ガスの体積)の比が、1:0.05~1:20、さらに好ましくは1:0.05~1:5となるようにする。
【0091】
好ましい実施形態において、Hイオン供与体処理工程及び/又は二酸化炭素処理工程は、少なくとも1回、より好ましくは数回繰り返される。一実施形態によれば、少なくとも一つのHイオン供与体は、少なくとも約5分間、好ましくは少なくとも約10分間、典型的には約10~約20分間、より好ましくは約30分間、さらにより好ましくは約45分間、ときには約1時間又はそれを超える時間にわたって添加される。
【0092】
イオン供与体処理及び二酸化炭素処理に続いて、20℃で測定した水性懸濁液のpHは、自然に、6.0を超え、好ましくは6.5を超え、より好ましくは7.0を超え、さらにより好ましくは7.5を超える値に達し、それによって、表面反応した、天然炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムを、6.0を超え、好ましくは6.5を超え、より好ましくは7.0を超え、さらにより好ましくは7.5を超えるpHを有する水性懸濁液として調製する。
【0093】
表面反応天然炭酸カルシウムの調製に関するさらなる詳細は、国際公開第00/39222 A1号、国際公開第2004/083316 A1号、国際公開第2005/121257 A2号、国際公開第2009/074492 A1号、欧州特許出願公開第2 264 108 A1号公報、欧州特許出願公開第2 264 109 A1号公報、及び米国特許出願公開第2004/0020410 A1号公報に開示されており、これらの参考文献の内容は、本明細書に含まれる。
【0094】
同様に、表面反応沈降炭酸カルシウムを得ることができる。国際公開第2009/074492 A1号から詳細に取りあげることができるように、表面反応沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムを、水性媒体中で、Hイオン、及び水性媒体中で可溶化され、かつ水不溶性カルシウム塩を形成することができるアニオンと接触させて、表面反応沈降炭酸カルシウムのスラリーを形成することによって得られ、ここで、この表面反応沈降炭酸カルシウムは、沈降炭酸カルシウムの少なくとも一部の表面上に形成された上記アニオンの少なくとも部分的に結晶質の不溶性カルシウム塩を含む。
【0095】
上記の可溶化されたカルシウムイオンは、Hイオンによる沈降炭酸カルシウムの溶解時に自然に生成する可溶化されたカルシウムイオンに対して、過剰な可溶化されたカルシウムイオンに相当し、ここで、Hイオンは、もっぱらアニオンに対する対イオンの形態で、すなわち、酸又は非カルシウム酸性塩の形態でのアニオンの添加を介して、かつ任意のさらなるカルシウムイオン又はカルシウムイオン生成源の不存在下で提供される。
【0096】
上記の過剰な可溶化されたカルシウムイオンは、好ましくは、可溶性の中性又は酸カルシウム塩の添加によって、又は可溶性の中性又は酸性カルシウム塩をその場で生成する酸、又は中性若しくは酸性非カルシウム塩の添加によって提供される。
【0097】
このHイオンは、酸又は上記アニオンの酸性塩の添加によって、又は上記の過剰な可溶化されたカルシウムイオンの全部又は一部を提供するために同時に役立つ酸又は酸性塩の添加によって提供されてもよい。
【0098】
表面反応天然炭酸カルシウム又は表面反応沈降炭酸カルシウムの調製のさらなる好ましい実施形態では、ケイ酸塩、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム又はカリウムなどのアルカリ土類アルミン酸塩、酸化マグネシウム、硫酸アルミニウム、又はそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物の存在下で、天然又は沈降炭酸カルシウムを、上記の酸及び/又は二酸化炭素と反応させる。好ましくは、少なくとも一つのケイ酸塩は、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、又はアルカリ土類金属ケイ酸塩から選択される。
【0099】
別の好ましい実施形態では、上記の少なくとも一つの化合物は、硫酸アルミニウム16水和物である。特に好ましい実施形態では、上記の少なくとも一つの化合物は、硫酸アルミニウム16水和物であって、ここで、Hイオン供与体は、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、クエン酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸、及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、このHイオン供与体:天然又は沈降炭酸カルシウムのモル比は、0.01:1から4:1、より好ましくは0.02:1から2:1、さらにより好ましくは0.05:1から1:1であり、最も好ましく0.1:1から0.58:1である。
【0100】
前述の成分は、酸及び/又は二酸化炭素を添加する前に、天然又は沈降炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に添加することができる。
【0101】
あるいは、天然又は沈降炭酸カルシウムと、酸及び二酸化炭素との反応が既に開始している間に、上述の成分を天然又は沈降炭酸カルシウムの水性懸濁液に添加することができる。少なくとも一つのケイ酸塩及び/又はシリカ及び/又は水酸化アルミニウム及び/又はアルカリ土類アルミン酸塩の成分の存在下での表面反応天然炭酸カルシウム又は表面反応沈降炭酸カルシウムの調製に関する詳細は、国際公開第2004/083316 A1号に開示されており、ここで、この文献の内容は、本明細書中に含まれる。
【0102】
表面反応炭酸カルシウムを、懸濁液中に保持することができ、任意には分散剤によってさらに安定化させることができる。当業者に公知の従来の分散剤を使用することができる。好ましい分散剤は、ポリアクリル酸及び/又はカルボキシメチルセルロースから構成される。
【0103】
あるいは、上述の水性懸濁液を乾燥させ、それによって、固体の(すなわち、乾燥しているか、又は流体形態ではない程度のわずかな水しか含まない)表面反応天然炭酸カルシウム又は沈降炭酸カルシウムを顆粒又は粉末の形態で得ることができる。
【0104】
表面反応炭酸カルシウムは、例えばバラ、ゴルフボール及び/又は脳の形状などの異なる粒子形状を有していてよい。
【0105】
好ましい実施形態では、表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びISO 9277:2010によるBET法を使用して測定して、15~200m/g、好ましくは25~180m/g、最も好ましくは30~150m/gの比表面積を有する。さらなる実施形態において、表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びISO 9277:2010によるBET法を使用して測定して、120m/g又はこれ未満、より好ましくは60~120m/g、及び最も好ましくは70~105m/gの比表面積を有する。例えば、表面反応炭酸カルシウムは、窒素及びISO 9277:2010によるBET法を使用して測定して、75~100m/gの比表面積を有することができる。
【0106】
さらに、表面反応炭酸カルシウム粒子は、0.5~50μm、好ましくは1~30μm、より好ましくは1.5~20μm、最も好ましくは2~12μmの体積メジアン粒径d50(vol)を有することが好ましい場合がある。別の好ましい実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウム粒子は、1.5~12μm、好ましくは2~5μm、又は6~10μmの体積メジアン粒径d50(vol)を有する。
【0107】
さらに、表面反応炭酸カルシウム粒子は、1~120μm、好ましくは2~100μm、より好ましくは5~50μm、最も好ましくは8~25μmの粒径d98(vol)を有することが好ましい場合がある。別の好ましい実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウム粒子は、5~20μm、好ましくは8~12μm又は13~18μmの体積メジアン粒径d98(vol)を有する。
【0108】
別の実施形態によれば、表面反応炭酸カルシウムは、水銀ポロシメトリー測定から計算して、0.1~2.3cm/g、より好ましくは0.2~2.0cm/g、とりわけ好ましくは0.4~1.8cm/g、最も好ましくは0.6~1.6cm/gの範囲の粒子内圧入比細孔容積を有する。
【0109】
表面反応炭酸カルシウムの粒子内孔径は、水銀ポロシメトリー測定によって決定して、好ましくは0.004~1.6μm、より好ましくは0.005~1.3μm、特に好ましくは0.006~1.15μm、最も好ましくは0.007~1.0μm、例えば0.004~0.50μmの範囲である。
【0110】
本発明の方法の工程(c)で提供され、その後のエステル交換工程(d)で使用される触媒は、焼成した表面反応炭酸カルシウムであり、これは、この触媒が、表面反応炭酸カルシウムの焼成によって得ることができる材料であることを意味する。上記で既に説明したように、焼成は、出発材料が完全に熱変換した部分(完全に焼成した部分)をもたらす高温での熱処理を意味する。
【0111】
したがって、一実施形態では、この触媒は、表面反応炭酸カルシウムの部分的又は完全な焼成によって得ることができる、焼成した表面反応炭酸カルシウムを含む。本発明の意味において、完全な焼成とは、X線回折(XRD)によって決定されるような焼成した基材中の炭酸カルシウム(CaCO)の割合が、所与の焼成温度で15分間にわたって、全組成物に基づいて1%を超えて減少しないことを示す(部分焼成の場合とは反対に)。例えば、焼成した試料中の炭酸カルシウムの初期割合が、XRDによって決定して5%である場合、完全な焼成とは、この試料中の炭酸カルシウムの割合が、関連する焼成温度で15分間にわたって、XRDによって決定して4%を下回らないことを意味する。
【0112】
焼成の程度(部分的な又は完全な焼成)は、エステル交換触媒の活性に影響を与えることができ、これは、次に、焼成温度及び焼成時間に依存することができる。したがって、一実施形態では、触媒は、表面反応炭酸カルシウムの部分的又は完全な焼成によって得られ、好ましくは完全な焼成によって得られる。
【0113】
さらに、触媒の活性化又は焼成の程度は、特定の焼成温度及び/又は特定の焼成時間を使って定義することができる。したがって、一実施形態では、触媒は、表面反応炭酸カルシウムの焼成によって得ることができ、ここで、焼成は、少なくとも650℃、好ましくは少なくとも680℃、最も好ましくは700~950℃の温度で実施され;かつ/又は少なくとも5分、好ましくは少なくとも0.25時間、より好ましくは少なくとも0.5時間、最も好ましくは1~3時間の焼成時間で実施される。特に好ましい実施形態では、触媒は、表面反応炭酸カルシウムの焼成によって得ることができ、ここで、焼成は、700~950℃の温度であり、かつ1~3時間の焼成時間で行われる。
【0114】
図3からわかるように、表面反応した炭酸カルシウムの比表面積は、熱活性化によって驚くほど減少する。これは、従来の粉砕天然炭酸カルシウムの場合に観察することができるものとは対照的であり、したがって、当業者であれば、エステル交換反応についての乏しい全転化率又は低下した反応速度を予想したであろう。しかしながら、その逆のことが真実であり、活性化の間に比表面積が減少し、かつ触媒の石灰(CaO)含有量が同程度に低いにもかかわらず、焼成したGNCCと焼成したSRCCとを比較すると、同等に良好に機能することを示す。
【0115】
図5からわかるように、SRCCの表面構造の特性は、本質的に保持されるか、又は熱活性化によってわずかに変化するだけである。反対に、図6は、GNCCの熱活性化による微小孔が形成したことを示している。
【0116】
具体的には、本発明の別の実施形態では、触媒は、窒素及びISO 9277:2010によるBET法を使用して測定して、1~200m/g、好ましくは5~120m/g、最も好ましくは10~100m/gの比表面積を有する。さらに別の実施形態では、触媒は、窒素及びISO 9277:2010によるBET法を使用して測定して、1~120m/g、好ましくは3~50m/g、最も好ましくは5~25m/gの比表面積を有することができる。
【0117】
石灰含量に関しては、図4から得ることができ、表面反応炭酸カルシウムの化学組成は、熱活性化によって変化する。例示的な実施形態では、X線回折(XRD)によって決定した、焼成した表面反応炭酸カルシウムの化学組成は、それぞれ、組成物全体に基づいて、0.5~50%の酸化カルシウム(CaO)、0.5~50%の炭酸カルシウム(CaCO)、70~99%のヒドロキシアパタイト(Ca(POOH)、及び0~5%の水酸化カルシウム(Ca(OH))を含んでいる。
【0118】
追加的に又は代替的に、本発明の一実施形態において、触媒は、1~75μm、好ましくは1.5~50μm、より好ましくは2~30μm、最も好ましくは3~15μmのd50(vol)を有し、かつ/又は2~150μm、好ましくは5~120μm、より好ましくは8~80μm、最も好ましくは10~30μmのd98(vol)を有する。
【0119】
表面反応炭酸カルシウム及びこの炭酸カルシウムの焼成によって得ることができる触媒は、緩い粉末の形態であってよい。しかしながら、触媒はまた、圧縮形態、例えば、顆粒、ペレット、タブレット、又は押出物であってもよく、これらは、触媒前駆体(すなわち、焼成していない表面反応炭酸カルシウム)の圧縮によって、又は活性化触媒(すなわち、焼成した表面反応炭酸カルシウム)の圧縮によって形成することができる。圧縮形態は、反応混合物からの触媒の分離に有利であり得る。
【0120】
当業者は、触媒の粒径分布及び/又は比表面積は、適切な焼成温度及び/又は焼成時間を適用することによって制御することができることを認識するであろう。したがって、さらなる実施形態において、触媒は、表面反応炭酸カルシウムの焼成によって得ることができ、ここで、触媒が、窒素及びISO 9277:2010によるBET方法を用いて測定して、1~75μm、好ましくは1.5~50μm、より好ましくは2~30μm、及び最も好ましくは3~15μmのd50(vol)、及び/又は2~150μm、好ましくは5~120μm、より好ましくは8~80μm、及び最も好ましくは10~30μmのd98(vol)、及び/又は1~200m/g、好ましくは5~120m/g、及び最も好ましくは10~100m/gの比表面積を有するような、焼成温度及び焼成時間である。これらの実施形態のいずれにおいても、焼成温度は、少なくとも650℃、好ましくは少なくとも680℃、最も好ましくは700~950℃とすることができ、かつ/又は焼成時間は、少なくとも5分、好ましくは少なくとも0.25時間、より好ましくは少なくとも0.5時間、最も好ましくは1~3時間とすることができ、例えば、700~950℃、1~3時間で焼成を行うことができる。
【0121】
一般に、本発明の触媒は、焼成した表面反応炭酸カルシウムを含むように定義されている。しかしながら、本明細書において上記で説明したように、「からなる(consisting of)」との用語は、「含む(comprising)」という用語の好ましい実施形態であると考えられ、したがって、本明細書に開示される任意の態様及び実施形態は、焼成した表面反応炭酸カルシウムからなる触媒を同様に指すものである。
【0122】
(D)エステル交換工程
本発明の方法の工程(d)では、工程(a)で提供した基剤と、工程(b)で提供した第一のアルコールとを、工程(c)で提供した触媒の存在下に反応させて、第二のカルボン酸エステルと第二のアルコールとを含む反応混合物を得る。
【0123】
導入部で説明したように、工程(d)における反応は、下記の反応スキームによって例示することができるエステル交換である:
R”O(O=)CR + R’OH → R’O(O=)CR + R”OH
上記のスキームから、R’及びR”が構造的に異なる基であることを当業者は認識するであろう。しかしながら、Rは、R’又はR”と同じであっても、又は異なっていてもよい。
【0124】
したがって、本発明に係る方法は、以下の工程によって説明することができる:
(a)第一のカルボン酸エステルR”O(O=)CRを含む基剤を提供すること;
(b)第一のアルコールR’OHを提供すること;
(c)触媒を提供すること;及び
(d)工程(a)で提供した基剤と工程(b)で提供した第一のアルコールとを、工程(c)で提供した触媒の存在下に反応させて、第二のカルボン酸エステルR’O(O=)CRと第二のアルコールR”OHとを含む反応混合物を得ること;
ここで、上記の触媒が、焼成した表面触媒炭酸カルシウムを含み、
この表面触媒炭酸カルシウムが、粉砕天然炭酸カルシウム含有鉱物(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び一つ又は複数のHイオン供与体との反応生成物であり、
二酸化炭素がHイオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部源から供給され、かつ
R’及びR”が構造的に異なる有機基であることを特徴とする。
【0125】
本発明者らは、焼成した表面反応炭酸カルシウムが、上記に例示したエステル交換反応を触媒することができることを見出した。
【0126】
この触媒は、本発明の方法において種々の濃度で適用することができる。一実施形態では、触媒は、本発明の方法の工程(d)において、基剤の総重量に対して、0.01~20重量%、好ましくは0.1~10重量%、最も好ましくは0.5~5重量%の量で使用される。
【0127】
全転化率又は反応速度を改善するために、第一のアルコールを、基剤に含まれる第一のカルボン酸エステルに対してモル過剰で使用すると、有益であり得る。したがって、一実施形態では、工程(a)で提供する第一のアルコールを、本発明の方法の工程(d)において反応媒体として使用し、好ましくは、第一のアルコールを、第一のカルボン酸エステルに対してモル過剰で使用する。より好ましくは、アルコールを、工程(d)で反応媒体として使用し、ここで、第一のカルボン酸エステル:第一のアルコールのモル比は、少なくとも1:1.5、好ましくは少なくとも1:2、より好ましくは少なくとも1:3、最も好ましくは少なくとも1:5である。
【0128】
エステル交換の工程は、周囲温度で、又はより好ましくは高められた温度で実施することができ、ここで、反応混合物は、適切な撹拌を可能にする液体状態であるべきである。一実施形態では、工程(d)は、少なくとも20℃、好ましくは少なくとも25℃、最も好ましくは30~80℃の範囲の温度で実施される。さらに別の実施形態では、工程(d)は、40~60℃の温度で実施される。反応温度は、全転化率及び反応速度を制御するために調整することができる。
【0129】
多くの場合、反応温度を、反応混合物の沸点未満に近い温度に調整することが適切であるか、又は反応混合物を還流下で加熱する。工程(d)において第一のアルコールが反応媒体として使用される場合、工程(d)における反応温度は、このアルコールの沸点未満に近いものであることが好ましい。したがって、好ましい実施形態において、基剤及び第一のアルコールは、所与の条件下で、このアルコールの沸点より25~5℃低い温度で、工程(d)において反応する。例えば、メタノールが周囲圧力で反応媒体として使用される場合、反応温度は、40~60℃の範囲内であり得る。特に好ましい態様において、第一のアルコールは、本明細書中で上記に定義したような一価のアルコールであり、ここで、この第一のアルコールが、工程(d)において反応媒体として使用され、好ましくは、第一のカルボン酸エステル:第一のアルコールのモル比は、少なくとも1:1.5、より好ましくは、少なくとも1:2、さらに好ましくは、少なくとも1:3、最も好ましくは少なくとも1:5であり、かつ基剤及び第一のアルコールは、所与の条件下に、このアルコールの沸点より25~5℃低い温度で、工程(d)で反応する。
【0130】
さらに別の実施形態において、エステル交換工程(d)は、周囲圧力で、又は増加した圧力で、好ましくは周囲圧力で実施される。本発明の方法を周囲圧力下で実施することがより好都合であるが、圧力の増加は、より高い反応温度及びより高い反応速度を可能にし得る。本発明によるさらに別の実施形態では、工程(d)は、不活性ガス雰囲気下で実施され、好ましい不活性ガスは、窒素、アルゴン及びそれらの混合物である。
【0131】
第一のアルコールが第一のエステルに対してモル過剰量で使用されるかどうかとは無関係に、不活性溶媒を本発明の方法の工程(d)において使用することができ、この不活性溶媒は、共溶媒として作用することができ、かつ全転化率又は反応速度を制御するのに有益であり得る。この場合に、「不活性」とは、本発明の方法の工程(d)で適用される条件下において、溶媒が不活性であることを意味する。好ましい例としては、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、又はジメチルスルホキシドなどの極性非プロトン性溶媒が挙げられる。
【0132】
原則として、工程(d)の反応混合物は、各成分(第一のカルボン酸エステル、第一のアルコール、及び触媒)を、想定される任意の順序で、及び一つ又は複数の部分で混合することによって調製することができる。しかしながら、適切な混合及び予備調整を確実にするために、本発明の一実施形態では、第一段階で、アルコール、触媒、及び任意の共溶媒を接触させかつ予備混合し、次いで第二段階で基剤を添加することが好ましい。
【0133】
本発明は、特定の組み合わせに限定されると理解すべきものではないが、いくつかの例示的な有利な実施形態を以下に開示する:
【0134】
例示的な一実施形態では、基剤は、脂肪又は脂肪油、好ましくは脂肪油であり、ここで、第一のアルコールは、一価のアルコールであり、好ましくは、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、及びメタノールから選択され、さらにより好ましくはメタノール又はエタノールであり、最も好ましくは、この第一のアルコールは、メタノールである。
【0135】
例示的な別の実施形態では、基剤は、脂肪又は脂肪油、好ましくは脂肪油であり、ここで、第一のアルコールは、一価のアルコールであり、好ましくは、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、及びメタノールから選択され、さらにより好ましくはメタノール又はエタノールであり、最も好ましくは、この第一のアルコールは、メタノールであり;触媒は、少なくとも650℃、好ましくは少なくとも680℃、最も好ましくは700~950℃の焼成温度、及び/又は少なくとも5分、好ましくは少なくとも0.25時間、より好ましくは少なくとも0.5時間、最も好ましくは1~3時間の焼成時間での、表面反応炭酸カルシウムの焼成によって得ることができる。
【0136】
例示的な別の実施形態では、基剤は、脂肪又は脂肪油、好ましくは脂肪油であり、ここで、第一のアルコールは、一価のアルコールであり、好ましくは、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、及びメタノールから選択され、さらにより好ましくはメタノール又はエタノールであり、最も好ましくは、この第一のアルコールは、メタノールであり;触媒は表面反応炭酸カルシウムの焼成によって得られ、ここで、焼成温度及び焼成時間は、触媒が、1~75μm、好ましくは1.5~50μm、より好ましくは2~30μm、最も好ましくは3~15μmのd50(vol)、及び/又は2~150μm、好ましくは5~120μm、より好ましくは8~80μm、最も好ましくは10~30μmのd98(vol)、及び/又は窒素とISO 9277:2010によるBET法を使用して測定して、1~200m/g、好ましくは5~120m/g、最も好ましくは10~100m/gの比表面積を有するような焼成温度及び焼成時間である。
【0137】
上述の例示的な実施形態のいずれにおいても、触媒は、本発明の方法のエステル交換工程(d)において、基剤の総重量に基づいて、0.01~20重量%、好ましくは0.1~10重量%、最も好ましくは0.5~5重量%の量で使用することができる。
【0138】
さらに、上述の例示的な実施形態のいずれかにおいて、第一のアルコールを、工程(d)で反応媒体として使用することができ、ここで、好ましくは、第一のカルボン酸エステル:第一のアルコールのモル比は、少なくとも1:1.5、より好ましくは少なくとも1:2、さらにより好ましくは少なくとも1:3、最も好ましくは少なくとも1:5であり、かつ/又は所与の条件下で、この第一のアルコールの沸点より25~5℃低い温度で、工程(d)において基剤と第一のアルコールとを反応させる。
【0139】
(E)任意の工程及びさらなる態様
適切な場合には、上記の項目で開示した詳細及び実施形態は、以下に開示する任意のさらなる態様及び実施形態に等しく適用されることに留意されたい。
【0140】
本発明のプロセスの工程(d)では、第二のカルボン酸エステル及び第二のアルコールを含む反応混合物が得られる。
【0141】
また、得られた反応混合物は、通常、残留触媒を含む。したがって、一実施形態において、本発明の方法は、好ましくは濾過によって、工程(d)の反応混合物中に含まれる残留触媒を分離する工程(e)をさらに含む。
【0142】
別の実施形態では、本発明の方法は、工程(d)の反応混合物に含まれる第二のアルコールから第二のカルボン酸エステルを分離する工程(f)をさらに含む。この目的のために、当業者に公知の任意の方法、例えば、液相分離、抽出、蒸発又は分別蒸留を使用することができる。上記のように、基剤は、二つ又はそれを超える構造的に異なるカルボン酸エステルの混合物、例えば、天然脂肪の場合のように異なるトリグリセリドの混合物を含むことができる。次に、トリグリセリドなどのポリエステル化多価アルコールを、異なるアシル基で置換することができる。これらの場合のそれぞれにおいて、二つ又はそれを超える構造的に異なるエステルの混合物を得ることができ、そのすべてが、本発明の意味における第二のカルボン酸エステルを示す。
【0143】
多くの場合、液相分離は、主生成物、すなわち、カルボン酸エステル及びアルコールの分離のために選択される方法であり得る。典型的には、重い相又は極性相は、エステル交換工程(d)で得られたアルコール生成物を、工程(a)で提供した未反応の又は過剰なアルコールと一緒に含有している。軽い相又は非極性相は、通常、エステル生成物を含有している。例えば、工程(a)で提供した基剤が、脂肪油などの脂肪である場合、このカルボン酸エステルは、一つ又は複数の脂肪酸エステル及びグリセリンの形成をもたらすトリグリセリドであり、脂肪酸エステル及びグリセリンは、例えば分液漏斗中で、液相分離によって分離することができる。水又は塩水を使用して、相分離を改善し、かつエステル相に含有される水溶性不純物を除去することができる。
【0144】
上記のように、特に好ましい実施形態は、工程(a)で提供する植物油などのトリグリセリド含有基剤と、工程(b)で第一のアルコールとして提供するメタノールとを使用する。この場合、構造的に異なる脂肪酸エステル(FAME)の混合物が得られ、そのすべてが、本発明の意味における第二のカルボン酸エステルを示す。
【0145】
分離方法に応じて、バッチプロセスとして又は連続プロセスとして、本発明の方法を実施することが可能である。
【0146】
本発明の方法によって得ることができるカルボン酸エステル、特に、植物油などの脂肪ベースの基剤から得られるカルボン酸エステルは、有益な燃料であり、単独で又は燃料成分として使用することができる非化石代替エネルギー源である。
【0147】
したがって、本発明の一つのさらなる態様は、燃料又は燃料成分の製造における本発明の方法の使用に関する。
【0148】
特に、本発明の方法によって得られる植物性又は動物性脂肪をベースとするエステルは、燃料又は燃料成分として使用することができ、かつバイオディーゼルと呼ぶことができる。したがって、さらなる態様によれば、本発明は、本明細書に開示される本発明の方法によって得ることができるカルボン酸エステル、及び燃料として、又は燃料成分としてのその使用に関する。
【0149】
本発明のプロセスによって得られる別の生成物は、基剤のエステルから構造的に誘導される第二のアルコールである。上述のように、本発明者らは、本発明の触媒の使用が、特にアルコール製品において、及び特に第二のアルコールがグリセリンである場合に、不純物の減少をもたらすことを見出した。
【0150】
したがって、本発明のさらに別の態様は、本発明の方法によって得ることができるアルコールに関する。この点において好ましい態様は、例えば、基剤が、本明細書中で上記に開示した脂肪ベースの基剤の場合にようにグリセリドを含有する場合に、本発明の方法によって得ることができるグリセリンである。
【0151】
最後に、本発明のさらなる態様は、焼成した表面反応炭酸カルシウムを含むエステル交換触媒と、エステル交換反応における触媒としてのその使用とに関する。本発明のプロセスにおいて使用される触媒に関する詳細及び実施形態は、項目(C)に開示したものを参照することができる。
【図面の簡単な説明】
【0152】
図1】(a)エステル交換工程後の相分離、(b)触媒としてNaOHを用いて得られた粗グリセロール、(c)触媒としてKOHを用いて得られた粗グリセロールをそれぞれ示したものである。
図2】熱活性化の異なる温度及び異なる時間で熱的に活性化した粉砕天然炭酸カルシウムのX線回折データ(ディフラクトグラム)である。
図3】活性化温度の関数として示した、粉砕天然炭酸カルシウムと表面反応炭酸カルシウムの比表面積の変化である。
図4】熱活性化の異なる温度及び異なる時間で熱的に活性化した表面反応炭酸カルシウムのX線回折データ(ディフラクトグラム)である。
図5】ドイツ、リリエンソール、Nabertherm GmbH、Nabertherm furnace モデル Le 6/11における、(a)焼成前のSRCCのSEM顕微鏡写真、(b)900℃で3時間焼成したSRCCのSEM顕微鏡写真である。
図6】ドイツ、リリエンソール、Nabertherm GmbH、Nabertherm furnace モデル Le 6/11における、(a)焼成前のGNCCのSEM顕微鏡写真、(b)900℃で3時間焼成したGNCCのSEM顕微鏡写真である。
図7】(a)ひまわり油のNMRスペクトル、(b)900℃で焼成したGNCCを使用して得られたエステル交換生成物のNMRスペクトルである。
図8】触媒として、1:KOH、2:NaOH、3:焼成したGNCC、及び4:焼成したSRCCをそれぞれ使用することによって得られた粗グリセロールであり、5は、純グリセロールである。
【実施例
【0153】
本発明の範囲及び利益は、本発明の実施形態を例示することを意図する以下の実施例に基づいてより良く理解することができる。
【0154】
(A)分析方法
本明細書を通じて規定するすべてのパラメーター及び以下の実施例で言及するパラメーターは、以下の測定方法に基づくものである:
【0155】
粒径分布
体積に基づく粒径分布を決定するために、マルバーンマスターサイザー2000レーザー回折システム(Malvern Mastersizer 2000 Laser Diffraction System)を使用する。測定によって得られた生データは、フラウンホーファー理論及びマルバーンアプリケーションソフトウェア5.60(Malvern Application Software 5.60)を用いて分析する。一般に、測定は、乾燥状態(試料の総重量に基づき、<0.5重量%の全水分)であって、かつ400kPaの圧力で測定した、焼成した表面反応炭酸カルシウムを除いて、水性分散液を用いて行う。全ての粒子の密度が等しい場合には、決定された重量粒径分布は、決定された体積粒径に相当することができる。
【0156】
重量に基づく粒径分布を、重量測定の分野における沈降挙動の分析である沈殿法によって測定する。測定は、米国、Micromeritics Instrument社のSedigraph(商標)5120で行った。この方法及び計器は、当業者にとって公知であり、例えば充填剤及び顔料の粒径分布を決定するために一般的に使用されている。測定を、0.1重量%のNaの水溶液中で行った。高速撹拌機を用いて試料を分散させ、超音波処理した。
【0157】
X線回折(XRD)
XRD実験を、回転可能なPMMAホルダー環を用いて試料について行った。ブラッグの法則に従うBruker D8 Advance粉末回折計で、試料を分析する。この回折計は2.2kWのX線管、試料ホルダー、θ-θゴニオメータ、VÅNTEC-1検出器から構成されている。すべての実験で、ニッケルフィルタのCu Kα輻射を採用した。プロファイルは、2θにおいて、毎分0.7°のスキャンスピードを使用して自動的に記録されるチャートである。得られた粉末回折パターンは、ICDD PDF 2 データベースの参照パターンに基づいて、DIFFRACsuite ソフトウェアパッケージ EVA及びSEARCHを使用して、鉱物含有量によって容易に分類することができる。
【0158】
回折データの定量分析は、多相試料中の異なる相の量の決定を示し、かつDIFFRACsuite ソフトウェアパッケージ TOPASを使用して実施された。詳細には、定量分析は、実験データ自体から定量化可能な数値精度で構造特性及び位相比を決定することを可能にする。これには、リートベルト(Rietveld)の方法を用いて完全な回折パターンをモデル化することが含まれ、それによって、計算されたパターンが実験的なパターンと重複するようになっている。
【0159】
特に明記しない限り、活性化した固体は、X線回折測定が実施されるまで、不活性雰囲気(例えば、N)でパージした丸底フラスコ中に一時的に貯蔵した。
【0160】
比表面積
表面反応炭酸カルシウム又は他の物質の比表面積(m/g)は、当業者に周知の(吸着ガスとして窒素を使用した)BET法を使用して決定される(ISO 9277:2010)。総表面積(m単位)は、対応する試料の比表面積と質量(g単位)との乗算によって得ることができる。熱的に活性化された固体について測定を行うために、X線回折について上記したものと同様の事前の処置を行った。
【0161】
走査電子顕微鏡(SEM)
ドイツ、イェナ、Carl Zeiss Microscopy GmbH社の電界放出型走査電子顕微鏡(FESEM)、Zeiss Sigma VPを用いて、走査電子顕微鏡像を作製した。
【0162】
核磁気共鳴分光法(NMR分光法)
Bruker 300MHz Spectrometer Avance 300を使用して、試料を特性決定した。分析前に、特定重量の試料をジクロロメタン-dに可溶化した。
【0163】
(B)実施例
以下の実施例は、いかなる方法でも特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0164】
比較例1-CE1
250mL丸底フラスコ中で、無水メタノール(HPLC用、Sigma Aldrich社製、>99.9%)及び均一塩基触媒としてNaOHペレット(Sigma Aldrich社製、>97%ACS試薬)を使用し、市販のヒマワリ油(Migros社製、M Classic ヒマワリ油)を使用して、第1の比較試験を実施した。このプロセスでは、2:1の油/メタノール重量比を使用し、かつ170:1の油/NaOH重量比を使用した。まず、無水メタノールをNaOHペレットと30℃で30分間混合した。同時に、別の丸底フラスコ中で、植物油も30℃で加熱し、30分後、植物油をメタノール/NaOH混合物に滴下した。さらに50℃まで徐々に温度を上昇させた。添加終了時に、混合物全体の温度を60℃まで上昇させ、2~3時間の間保持した。
【0165】
このプロセスの最後に、反応を停止し、メタノールを50℃/25mbarの真空下で約15~20分間蒸発させた。最後に、混合物を分液漏斗に移して、得られた相を分離した(図1a参照)。上側の軽い相はエステル交換生成物に対応し、下側の重い相は粗グリセロールを含有している。
【0166】
比較例2-CE2
塩基源としてKOHを使用することによって、CE1と類似の触媒評価を行った。ここでは、油/KOHの重量比は119:1であった、
【0167】
比較例3-CE3
触媒の調製及び活性化
従来からの粉砕天然炭酸カルシウム(GNCC)を、カラーラ大理石の湿式粉砕及び噴霧乾燥によって得た。粉砕炭酸カルシウムは、4m/gの比表面積及び1.6μmのd50(wt)を有していた。
【0168】
粉砕した炭酸カルシウムを触媒活性化の目的で焼成した。異なる熱活性化条件(すなわち、温度及び活性化時間)を使用した。活性化後、固形物を、次にX線回折(XRD)を使用して特徴付け、かつBET技術及びSEM画像化を使用して特徴付けた(図2図3及び図6参照)。後者の2つの技術(BET技術及びSEM画像化)を使用して、この固形の化学組成及び表面についての知見が提供される。
【0169】
異なる温度でのGNCCの熱活性化は、少なくとも700℃の熱処理が、完全な焼成を達成するために好ましいことを示した。さらに、この結果は、比表面積が4m/gから14m/gへと明らかに増大し、かつ900°Cで2時間活性化した鉱物について微小孔が生成したことを示している。
【0170】
不均一系触媒作用試験
CE1で提示した手順に類似した手順で、不均一系触媒を用いてエステル交換を実施した。
【0171】
上記で調製した0.75gの活性化触媒を三つ口フラスコに入れ、次いでNで約10分間パージした。触媒に25gの無水メタノールを加えて撹拌し、次いで、再度系をNでパージして、いかなる微量空気も排除した。混合物を30℃まで加熱し、30分間撹拌した。50gのヒマワリ油(Migros社からのM Classic ヒマワリ油)を、別の丸底フラスコ中で、30℃で30分間加熱した。30分後、加熱した油を、触媒/メタノール混合物に添加し、次いでこの混合物を50℃に徐々に加熱した。添加の最後に、触媒/メタノール/植物油の混合物全体を60℃に加熱し、その温度で2~3時間保った。このプロセスの最後に、メタノールを、50℃/25mbarの温度で約15~20分間、真空下で蒸発させた。次いで、589/1グレードのWhatman濾紙を使用した濾過によって固体を分離した。
【0172】
本発明による例-EX1
触媒の調製及び活性化
例示的な試験において、表面反応炭酸カルシウム(SRCC)を、以下のようにして得た: 粉砕大理石の水性懸濁液10リットルを、水性懸濁液の総重量に基づいて、固形分を10重量%に調整することによって混合容器中で調製した。粉砕大理石は、ノルウェーのHustadmarmorから得られ、2μm未満のd90(wt)を有していた。30重量%のリン酸を含有する水溶液を調製し、一方で、5重量%のクエン酸を含有する別の溶液を調製した。懸濁液を混合しながら、1.60kgのリン酸溶液を、10分間にわたって70℃の温度で、この懸濁液に添加した。さらに、リン酸添加の開始から2分後に開始して、0.05kgのクエン酸溶液をこのスラリーに添加した。最後に、リン酸の添加後、さらに5分間撹拌した後で、このスラリーを容器から取り出した。次いで、得られた固体を濾過し、かつ乾燥した。
【0173】
同様に調製した表面反応炭酸カルシウムであって、135m/gの比表面積、6.2μmのd50(vol)、及び12.8μmのd98(vol)を有する表面反応炭酸カルシウムを、以下の試験に用いた。
【0174】
表面反応炭酸カルシウム(SRCC)を触媒活性化の目的で焼成した。異なる熱活性化条件(すなわち、温度及び活性化時間)を使用した。活性化後、固形物を、次にX線回折(XRD)を使用して特徴付け、かつBET技術及びSEM画像化を使用して特徴付けた(図3図4及び図5参照)。
【0175】
異なる温度でのSRCCの熱活性化は、少なくとも700℃の熱処理が所望の活性を達成するために好ましいことを示した。
【0176】
図3から明らかなように、温度の関数としての表面反応炭酸カルシウムの比表面積は、粉砕天然炭酸カルシウムの比表面積とは全く対照的であり、表面反応炭酸カルシウムの比表面積は、熱活性化条件の関数で減少している。実際、表面積は、未処理の試料における135m/gから、900℃で2時間活性化した後、15m/gへと減少した。しかしながら、図5からわかるように、焼成した表面反応炭酸カルシウム(SRCC)の表面構造は、焼成前の表面反応炭酸カルシウムの表面構造に匹敵するものである。
【0177】
不均一系触媒作用試験
CE3に記載されている手順と同一の手順を使用し、表面反応炭酸カルシウムから調製した触媒を用いて試験を行った。
【0178】
(C)触媒性能の評価
以下に示す場合では、エステル交換生成物の全ての収量を、H-NMRスペクトルに基づいて計算し、かつ正規化した。
【0179】
均一系触媒
NaOH又はKOHのいずれかを使用して、プロトン核磁気共鳴(H-NMR)を使ってエステル交換生成物の存在を確認した。これは、植物油に由来するシグナルが全く観測されず、その完全な転化を確認したためである。EN 14103に準拠した認証されている分析によっても、エステル交換生成物の高い収率が確認された。粗グリセロールの物理的外観について、差異を観察することができた。NaOHの場合、粗グリセロールは、KOHの場合に得られるより粘性の粗グリセロールと比較して、粘性が低い(図1b及び図1c参照)。
【0180】
不均一系触媒
エステル交換触媒としての焼成したGNCCの評価は、700℃を超える温度で活性化した場合に完全な変換を観察することができたので、700℃を超える温度で活性化した触媒がより効率的であることを示した。
【0181】
エステル交換触媒としての焼成したSRCCの性能を類似の方法で調べた。この分析は、完全な変換が、それぞれ900℃及び700℃で活性化したSRCCで可能であったことを明らかにした。
【0182】
焼成したGNCCと焼成したSRCCとの触媒性能の比較は、以下のように要約することができる:
【0183】
【表1】
【0184】
焼成したGNCCと焼成したSRCCの比較は、驚くべきことに、SRCCが、活性化中に比表面積が減少し、かつ石灰(CaO)含有量が同程度に低いにもかかわらず、同等に良好に機能することを示している。
【0185】
さらに、粗グリセロール相の比較は、焼成したSRCCを使用することによって得られたグリセロールが、焼成したGNCC又は従来の触媒を使用して得られたものよりも澄明であることを示している(図8参照)。この事実は、焼成したSRCCを使用することによって得られた粗グリセロールが、焼成したGNCC又はNaOH/KOHを使用することによって得られたものよりも、高い純度の品質等級を有することを示唆している。
本明細書に開示される発明は以下の態様を含む:
[1]下記の工程を含む不均一系触媒作用によるカルボン酸エステルのエステル交換のための方法であって:
(a)第一のカルボン酸エステルを含む基剤を提供すること;
(b)第一のアルコールを提供すること;
(c)触媒を提供すること;及び
(d)工程(a)で提供した前記基剤と、工程(b)で提供した前記第一のアルコールとを、工程(c)で提供した前記触媒の存在下に反応させて、第二のカルボン酸エステルと第二のアルコールとを含む反応混合物を得ること;
ここで、前記触媒が、焼成した表面反応炭酸カルシウムを含み、
前記表面反応炭酸カルシウムが、粉砕天然炭酸カルシウム含有鉱物(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び一つ又は複数のH イオン供与体との反応生成物であり、かつ前記二酸化炭素が、前記H イオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部源から供給されることを特徴とする、
不均一系触媒作用によるカルボン酸エステルのエステル交換のための方法。
[2]前記基剤が、脂肪又は脂肪油、好ましくは植物油であり、より好ましくは、前記基剤が、キャノーラ油、綿実油、ココナッツ油、コーン油、ヘーゼルナッツ油、アマニ油、からし油、オリーブ油、ヤシ油、ピーナッツ油、菜種油、ぬか油、ベニバナ油、ごま油、大豆油、ヒマワリ油、タイガーナッツ油、キリ油、及びこれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは、前記基剤が、ヒマワリ油であることを特徴とする、上記[1]に記載の方法。
[3]前記第一のカルボン酸エステルが、トリグリセリドであることを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記第一のアルコールが、一価のアルコール、好ましくは一価のC -C アルコール、より好ましくは一価のC -C アルコール、さらにより好ましくはメタノール又はエタノール、最も好ましくはメタノールであることを特徴とする、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の方法。
[5]前記触媒が、以下を有することを特徴とする、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の方法:
(i)1~75μm、好ましくは1.5~50μm、より好ましくは2~30μm、最も好ましくは3~15μmのd 50 (vol);及び/又は
(ii)2~150μm、好ましくは5~120μm、より好ましくは8~80μm、最も好ましくは10~30μmのd 98 (vol)。
[6]前記触媒が、窒素及びISO 9277:2010によるBET法を用いて測定して、1~200m /g、好ましくは5~120m /g、最も好ましくは10~100m /gの比表面積を有することを特徴とする、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の方法。
[7]前記表面反応炭酸カルシウムが、以下を有することを特徴とする、上記[1]~[6]のいずれか一つに記載の方法:
(i)0.5~50μm、好ましくは1~30μm、より好ましくは1.5~20μm、最も好ましくは2~12μmのd 50 (vol);及び/又は
(ii)1~120μm、好ましくは2~100μm、より好ましくは5~50μm、最も好ましくは8~25μmのd 98 (vol)。
[8]前記表面反応炭酸カルシウムが、窒素及びISO 9277:2010によるBET法を用いて測定して、15~200m /g、好ましくは25~180m /g、最も好ましくは30~150m /gの比表面積を有することを特徴とする、上記[1]~[7]のいずれか一つに記載の方法。
[9]下記を特徴とする、上記[1]~[8]のいずれか一つに記載の方法:
(i)前記粉砕天然炭酸カルシウム含有鉱物が、大理石、白亜、ドロマイト、石灰石、及びそれらの混合物からなる群から選択され;かつ/又は
(ii)前記沈降炭酸カルシウムが、アラゴナイトの、バテライトの、若しくはカルサイトの鉱物結晶形又はこれらの混合物を含む。
[10]前記触媒が、表面反応炭酸カルシウムの部分的な又は完全な焼成によって得られることを特徴とする、上記[1]~[9]のいずれか一つに記載の方法。
[11]前記触媒が、表面反応炭酸カルシウムの焼成によって得られることを特徴とし、ここで、前記焼成を下記のとおり行う、上記[1]~[10]のいずれか一つに記載の方法:
(i)少なくとも650℃、好ましくは少なくとも680℃、最も好ましくは700~950℃の焼成温度で前記焼成を行い、かつ/又は
(ii)少なくとも5分、好ましくは少なくとも0.25時間、より好ましくは少なくとも0.5時間、最も好ましくは1~3時間の焼成時間で前記焼成を行う。
[12]工程(d)において、前記第一のアルコールを反応媒体として使用し、好ましくは前記第一のアルコールを前記第一のカルボン酸エステルに対してモル過剰で使用することを特徴とする、上記[1]~[11]のいずれか一つに記載の方法。
[13]工程(d)において、前記基剤の総重量に対して、0.01~20重量%、好ましくは0.1~10重量%、最も好ましくは0.5~5重量%の量で前記触媒を使用することを特徴とする、上記[1]~[12]のいずれか一つに記載の方法。
[14]工程(d)において、第一段階で前記アルコールと前記触媒とを接触させ、かつ次いで第二段階で前記基剤を加えることを特徴とする、上記[1]~[13]のいずれか一つに記載の方法。
[15]少なくとも20℃、好ましくは少なくとも25℃、最も好ましくは30~80℃の範囲の温度で、工程(d)を実施することを特徴とする、上記[1]~[14]のいずれか一つに記載の方法。
[16]工程(d)で得られた前記反応混合物から、前記第二のカルボン酸エステルを分離する工程(e)をさらに含むことを特徴とする、上記[1]~[15]のいずれか一つに記載の方法。
[17]燃料又は燃料成分の製造における、上記[1]~[16]のいずれか一つに記載の方法の使用。
[18]上記[1]~[16]のいずれか一つに記載の方法によって得られるカルボン酸エステル。
[19]燃料又は燃料成分としての上記[18]に記載のカルボン酸エステルの使用。
[20]焼成した表面反応炭酸カルシウムを含むエステル交換触媒であって、
前記表面反応炭酸カルシウムが、粉砕天然炭酸カルシウム含有鉱物(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び一つ又は複数のH イオン供与体との反応生成物であり、かつ前記二酸化炭素が、前記H イオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部源から供給される、
焼成した表面反応炭酸カルシウムを含むエステル交換触媒。
[21]エステル交換反応における触媒としての、焼成した表面反応炭酸カルシウムを含む触媒の使用であって、
前記表面反応炭酸カルシウムが、粉砕天然炭酸カルシウム含有鉱物(GNCC)又は沈降炭酸カルシウム(PCC)と、二酸化炭素及び一つ又は複数のH イオン供与体との反応生成物であり、かつ前記二酸化炭素が、前記H イオン供与体での処理によってその場で形成され、かつ/又は外部源から供給される、
焼成した表面反応炭酸カルシウムを含む触媒の使用。
図1a)】
図1b)】
図1c)】
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8