(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】外用剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20230904BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20230904BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/891
A61Q19/08
(21)【出願番号】P 2020549397
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2019038003
(87)【国際公開番号】W WO2020067360
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/036563
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 将行
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-017317(JP,A)
【文献】特開2010-174099(JP,A)
【文献】特開2009-249610(JP,A)
【文献】特開2010-024154(JP,A)
【文献】特開2011-026263(JP,A)
【文献】特開2002-322042(JP,A)
【文献】特表2004-503566(JP,A)
【文献】特開平05-000933(JP,A)
【文献】特開2018-123071(JP,A)
【文献】特開2016-190838(JP,A)
【文献】特開2017-218440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61K 9/00- 9/72
A61K 31/00-31/327
A61K 31/33-33/44
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノルボルナン構造を含有するポリマー(A)及びヘキサメチルジシロキサン(B)を含有する外用剤組成物
であって、
前記成分(A)が下記式(6)で表されるシリコーン変性ポリノルボルネンであり、
前記成分(A)の含有量が1質量%以上20質量%以下であり、前記成分(B)の含有量が20質量%以上95質量%以下であり、
皮膚のシワ改善用組成物である、外用剤組成物。
【化1】
式中、e、fは繰り返し単位数であり、それぞれ独立に1以上の整数である。
【請求項2】
前記式(6)中のeとfの割合が、e/f=20/80~90/10(mol/mol)である請求項
1に記載の外用剤組成物。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の外用剤組成物の、皮膚のシワ改善用組成物としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外用剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢によって人の皮膚にはシワが多くなる。これは皮膚の老化現象の一部であり、皮膚組織の変化、紫外線を浴びた影響など複数の因子に左右される。
皮膚のシワを目立たなくするための技術が提案されているが、美容整形による方法では皮膚に侵襲することにより形状制御する必要があった。皮膚のシワを非侵襲で改善するスキンケア商品も知られているが、その改善効果は極めて低く、シワの悩みを持つ女性の満足度は得られていなかった。
そこで、非侵襲で皮膚の形状を制御し、効果的にシワを改善できる外用剤組成物が望まれている。
【0003】
ところで、化粧膜の均一性や化粧料の持ちを向上させることを目的として、膜形成性ポリマーを配合した化粧料が知られている。特許文献1は、所定のフラクトオリゴ糖脂肪酸エステル、揮発性炭化水素、及び油溶性被膜形成樹脂を配合した、塗布性及び化粧膜の均一性に優れるメイクアップ用化粧料に関する。特許文献2は、ポリシクロオレフィン重合体の骨格に所定の官能基を導入した膜形成性ポリマーを含み、化粧もちや感触が良好な化粧料に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-247761号公報
【文献】特開2012-17317号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明はノルボルナン構造を含有するポリマー(A)及びヘキサメチルジシロキサン(B)を含有する外用剤組成物に関する。
【発明の詳細な説明】
【0006】
[外用剤組成物]
本発明は、ノルボルナン構造を含有するポリマー(A)及びヘキサメチルジシロキサン(B)を含有する外用剤組成物に関する。以下、当該組成物を適宜「本発明の組成物」ともいう。
本発明者は、成分(A)及び成分(B)を含有する外用剤組成物を皮膚に適用することにより、非侵襲で皮膚の形状を制御し、皮膚のシワを目立たなくすることができることを見出した。
【0007】
本明細書において「皮膚のシワ」とは、皮膚表面に現れる凹凸及び筋目を意味する。皮膚のシワは口の回り、目の周り、額、首等に現れやすい。小さな筋目が小ジワ、大きな筋目が大ジワであり、大ジワは法令線、頬等の毛穴流れで発生する。本発明の外用剤組成物によれば、いずれのシワも目立たなくする効果を奏し、特に、法令線のような大ジワであっても非侵襲で改善できる点で好適である。
【0008】
<成分(A)>
本発明の組成物は、ノルボルナン構造を含有するポリマー(A)を含有する。成分(A)を含有する組成物をシワ周辺部の皮膚に塗布するなどして適用し、次いで乾燥させた際に、成分(A)を含む膜が収縮し、これとともに該膜に密着した皮膚表面が収縮する。この作用により、シワを生じている部分の皮膚が伸ばされるので、シワを目立たなくすることができる。また成分(A)は耐屈曲性にも優れることから、成分(A)を含む膜はひび割れを起こしにくく、かつ、皮膚形状に追従した状態で収縮しやすい。そのため、成分(A)を含む膜が収縮する際にも、該膜と皮膚表面との十分な密着性を得ることができる。
【0009】
本明細書においてノルボルナン構造とは、下記式で示される構造を意味する。成分(A)は、ポリマー中の任意の部位に該式で示される構造を有していればよい。
【化1】
成分(A)は分子中に上記ノルボルナン構造を有するポリマーであれば特に制限はないが、前述の作用機構により皮膚のシワを伸ばして目立たなくさせ、十分なシワ改善効果を得る観点(以下、「皮膚のシワ改善効果」ともいう)から、成分(A)はノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマーであることが更に好ましい。
【0010】
ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマーとしては、下記一般式(1)又は(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーが挙げられる。
【化2】
式中、R
1はそれぞれ独立に炭素数1以上12以下のアルキル基であり、Xは下記式(i)で表される基である。aは1以上3以下の整数であり、bは0以上2以下の整数である。
【化3】
式中、R
2はそれぞれ独立に炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、cは1以上5以下の整数である。
【化4】
式中、R
1、R
2及びbは前記と同じであり、dは2以上5以下の整数である。
【0011】
前記一般式(1)中、R1はそれぞれ独立に炭素数1以上12以下のアルキル基であり、皮膚のシワ改善効果及び汎用性の観点から、メチル基、エチル基、n-プロピル基、ブチル基、又はペンチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
Xは前記式(i)で表される基であり、式(i)中、R2はそれぞれ独立に炭素数1以上12以下の炭化水素基である。皮膚のシワ改善効果の観点及び汎用性の観点から、R2は好ましくは炭素数1以上12以下のアルキル基又は炭素数6以上12以下のアリール基であり、より好ましくは炭素数1以上12以下のアルキル基又はフェニル基、更に好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル基、より更に好ましくはメチル基である。cは1以上5以下の整数であり、汎用性の観点から、c=1が好ましい。すなわちXは、好ましくはトリメチルシロキシ基である。
aは1以上3以下の整数であり、例えばa=2の繰り返し単位とa=3の繰り返し単位が混合して存在する重合体であってよい。汎用性の観点から、aは3であることが好ましい。bは0以上2以下の整数であり、同様の観点から、好ましくは0、1又はこれらの組み合わせであり、0がより好ましい。
【0012】
前記一般式(2)中、R
1、R
2及びbは前記と同じである。dは2以上5以下の整数であり、汎用性の観点から、d=2が好ましい。一般式(2)における環状シリコーン構造は、同様の観点から、R
1及びR
2がメチル基であり、dが2又は3であることが好ましい。すなわち一般式(2)における環状シリコーン構造は、好ましくは下記式(4)又は(5)で示される構造である。
【化5】
【0013】
皮膚のシワ改善効果の観点から、ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマー中の前記一般式(1)又は(2)で表される繰り返し単位の割合は、該ポリマー中の全繰り返し単位数のうち、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上である。また、上限は100%であり、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは70%以下である。ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマー中の前記一般式(1)又は(2)で表される繰り返し単位数の具体的範囲は、該ポリマー中の全繰り返し単位数のうち、好ましくは10~100%、より好ましくは10~95%、更に好ましくは30~90%、より更に好ましくは50~70%である。
【0014】
ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマーは、前記一般式(1)又は(2)で表される繰り返し単位に加えて、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有してもよい。
【化6】
式中、R
3~R
6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下の、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基及びハロゲン化炭化水素基から選ばれる置換基、又は、オキセタニル基、アルコキシカルボニル基、ポリオキシアルキレン基、ポリグリセリル基、又はアルコキシシリル基である。R
3~R
6から選ばれる2つの基は、互いに結合して脂環構造、芳香環構造、カルボイミド基又は酸無水物基を形成していてもよい。bは前記と同じである。
【0015】
ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマー中の上記一般式(3)で表される繰り返し単位の割合は、皮膚のシワ改善効果の観点から該ポリマー中の全繰り返し単位数のうち、好ましくは90%以下、より好ましくは70%以下、更に好ましくは50%以下である。また上記一般式(3)で表される繰り返し単位を含む場合、その割合は、該ポリマー中の全繰り返し単位数のうち、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは30%以上である。ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマー中の前記一般式(3)で表される繰り返し単位数の具体的範囲は、該ポリマー中の全繰り返し単位数のうち、好ましくは5~90%、より好ましくは10~70%、更に好ましくは30~50%である。
ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマー中の上記一般式(1)~(3)で表される繰り返し単位の割合は、1H-NMR測定により求めることができる。
【0016】
ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマーとしては、シリコーン変性ポリノルボルネンが好ましく、より好ましくは下記式(6)で表されるシリコーン変性ポリノルボルネンである。
【化7】
式中、e、fは繰り返し単位数であり、それぞれ独立に1以上の整数である。
皮膚のシワ改善効果の観点から、一般式(6)中のeとfの割合は、好ましくはe/f=20/80~90/10(mol/mol)、より好ましくは30/70~80/20(mol/mol)であり、更に好ましくは50/50~70/30(mol/mol)である。
【0017】
ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマーの数平均分子量Mnは、収縮性と耐屈曲性とを両立する観点及び皮膚のシワ改善効果の観点から、好ましくは5万以上、より好ましくは10万以上、更に好ましくは20万以上であり、好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下、更に好ましくは80万以下、より更に好ましくは60万以下である。ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマーの数平均分子量Mnの具体的範囲は、好ましくは5万~200万、より好ましくは10万~150万、更に好ましくは20万~80万、より更に好ましくは20万~60万である。
当該ポリマーの数平均分子量Mnは、ポリスチレンを標準物質としたゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)法により測定でき、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0018】
成分(A)は、例えば、ノルボルナン構造を含有するか又はノルボルナン構造を形成し得る環状オレフィンモノマーを公知の方法で付加重合させて得られる。
例えば成分(A)が前記一般式(1)又は(2)で表される繰り返し単位を有するノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマーであれば、下記一般式(1a)又は(2a)で表される環状オレフィンモノマーを付加重合させて得ることができる。さらに、下記一般式(3a)で表される環状オレフィンモノマーを共重合させてもよい。
【化8】
式中、R
1はそれぞれ独立に炭素数1以上12以下のアルキル基であり、Xは下記式(i)で表される基である。aは1以上3以下の整数であり、bは0以上2以下の整数である。
【化9】
式中、R
2はそれぞれ独立に炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、cは1以上5以下の整数である。
【化10】
式中、R
1、R
2及びbは前記と同じであり、dは2以上5以下の整数である。
【化11】
式中、R
3~R
6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下の、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基及びハロゲン化炭化水素基から選ばれる置換基、又は、オキセタニル基、アルコキシカルボニル基、ポリオキシアルキレン基、ポリグリセリル基、又はアルコキシシリル基である。R
3~R
6から選ばれる2つの基は、互いに結合して脂環構造、芳香環構造、カルボイミド基又は酸無水物基を形成していてもよい。bは前記と同じである。
【0019】
上記一般式(3a)で表される環状オレフィンモノマーを共重合させる場合、その使用量は、皮膚のシワ改善効果の観点から、重合に使用する全モノマーを100モル%として、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは50モル%以下であり、また、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは30モル%以上である。
【0020】
前記式(6)で表されるシリコーン変性ポリノルボルネンは、下記式(6a)で表されるトリス(トリメチルシロキシ)シリルノルボルネンと、ノルボルネンとを付加重合させて得ることができる。
【化12】
皮膚のシワ改善効果の観点から、トリス(トリメチルシロキシ)シリルノルボルネンと、ノルボルネンとの共重合比は、好ましくは20/80~90/10(mol/mol)、より好ましくは30/70~80/20(mol/mol)であり、更に好ましくは50/50~70/30(mol/mol)である。
【0021】
なお、前記一般式(1)~(3)、及び前記式(6)において示される繰り返し単位は、いずれも原料モノマーである環状オレフィンモノマーの2,3-付加構造単位を示すものであるが、該環状オレフィンモノマーの付加重合による2,7-付加構造単位となっているものが含まれていてもよい。
【0022】
ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマーとしては、ノルボルネン/トリス(トリメチルシロキシ)シリルノルボルネン)コポリマーが好ましく、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第16版,第2巻,2016年,p.2274):NORBORNENE/TRIS(TRIMETHYLSILOXY)SILYLNORBORNENE COPOLYMERで表記される化合物である。
市販のノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマーとしては、信越化学工業(株)製「NBN-30-ID」(ノルボルネン/トリス(トリメチルシロキシ)シリルノルボルネン)コポリマーのイソドデカン溶液)等が挙げられる。
【0023】
本発明の組成物中の成分(A)の含有量は、皮膚のシワ改善効果の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、より更に好ましくは5質量%以上である。また、組成物の塗布性、処方の自由度、及び乾燥後に皮膚に違和感を与えないという観点から、組成物中の成分(A)の含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下である。組成物中の成分(A)の含有量の具体的範囲は、好ましくは0.1~30質量%、より好ましくは0.5~25質量%、更に好ましくは1~20質量%、より更に好ましくは1~15質量%、より更に好ましくは5~15質量%である。
【0024】
<成分(B)>
本発明の組成物は、皮膚のシワ改善効果をより高める観点から、成分(B)としてヘキサメチルジシロキサンを含有する。ヘキサメチルジシロキサンは揮発性が高いことから、これを含有させると、成分(A)を含有する組成物の乾燥速度が向上することにより乾燥過程での成分(A)の収縮が加速して、前述の作用機構により皮膚のシワを伸ばして目立たなくする効果がより向上する。
本発明の組成物中の成分(B)の含有量は、皮膚のシワ改善効果をより高める観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは25質量%以上、より更に好ましくは35質量%以上、より更に好ましくは45質量%以上であり、皮膚のシワ改善効果を高める観点及び処方の自由度の観点から、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99.5質量%以下、更に好ましくは99質量%以下、より更に好ましくは97質量%以下、より更に好ましくは95質量%以下である。組成物中の成分(B)の含有量の具体的範囲は、好ましくは1~99.9質量%、より好ましくは5~99.9質量%、更に好ましくは10~99.5質量%、より更に好ましくは20~99.5質量%、より更に好ましくは25~99.5質量%、より更に好ましくは35~99.5質量%、より更に好ましくは35~99質量%、より更に好ましくは35~97質量%、より更に好ましくは45~95質量%である。
【0025】
本発明の組成物は成分(B)以外の油剤を含有してもよい。成分(B)以外の油剤としては、組成物の乾燥速度向上の観点から、炭化水素油及びシリコーン油からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、イソドデカン、メチルトリメチコン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及び、25℃における動粘度が2cSt以下のジメチルポリシロキサンからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、イソドデカン及びデカメチルシクロペンタシロキサンからなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、イソドデカンが更に好ましい。なお上記動粘度は、例えばウベローデ粘度計を用いて測定できる。
但し本発明の効果を得る観点から、成分(B)以外の油剤の含有量は、本発明の組成物中、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、より更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下であり、下限は0質量%である。
【0026】
<その他の成分>
本発明の外用剤組成物は前記成分の他、本発明の目的を損なわない範囲で、化粧料等の外用剤組成物に通常配合されるその他の成分を適宜含有してもよい。当該成分としては、例えば、界面活性剤、水溶性高分子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ビタミン剤、防腐剤、pH調整剤、香料、植物エキス類、保湿剤、着色剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤等が挙げられる。
【0027】
本発明の外用剤組成物の形態は、皮膚に適用可能な形態であればよく、例えば溶液、乳液、クリーム、ローション、ジェル、パック、シート、泡状等の形態が挙げられる。
【0028】
本発明の外用剤組成物は、皮膚に塗布等して適用し、次いで該組成物を乾燥させることにより成分(A)を収縮させて皮膚のシワ改善効果を奏する観点から、皮膚への適用時に液状であることが好ましく、25℃において液状であることがより好ましい。
【0029】
また本発明の外用剤組成物は、皮膚に塗布等して適用し、次いで該組成物を乾燥させる工程での成分(A)の収縮を加速させ、皮膚のシワ改善効果を高める観点から、水の含有量が少ないことが好ましい。組成物中の水の含有量としては、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下、より更に好ましくは0.1質量%以下である。
【0030】
本発明の外用剤組成物は、皮膚のシワ改善用組成物として使用することができ、具体的には、皮膚のシワ周辺部に塗布するなどして適用することができる。これにより、前述の作用機構により非侵襲で皮膚の形状を制御することができ、皮膚のシワを目立たなくすることができる。
【0031】
本発明の組成物によれば、本発明の組成物を皮膚に適用する、皮膚のシワ改善方法も提供できる。
当該方法は、本発明の組成物を皮膚のシワ周辺部に適用する工程と、次いで該組成物を乾燥させる工程とを有することが好ましい。これらの工程を行うことにより、本発明の組成物に含有される成分(A)を含む膜の収縮作用によりシワ周辺部の皮膚を引っ張って伸ばし、非侵襲で皮膚の形状を制御することができる。すなわち本明細書における皮膚のシワ改善方法は、前述の作用機構により物理的に皮膚のシワを伸ばして皮膚表面の凹凸形状を平坦化させる方法であり、例えば、外用剤組成物を皮膚に適用して皮膚表面の凹凸を埋めたり、光学的にシワを目立たなくする方法とは異なるものである。
【0032】
本明細書における「皮膚のシワ周辺部」は、シワの内部、すなわち皮膚表面の凹部や筋目の凹部とは区別される。本発明ではシワ周辺部の皮膚に本発明の組成物を適用することで、該組成物を乾燥させた際に成分(A)を含む膜の収縮とともにシワ周辺部の皮膚表面が収縮し、シワを生じている部分の皮膚が引っ張られてシワが目立たなくなる。但し本発明の効果が得られる限り、本発明の組成物を皮膚のシワ周辺部のみに限らず、シワの内部にも適用することを妨げない。
【0033】
上記効果を得る観点から、シワ周辺部の中でも、前記組成物を適用する領域としては、シワの方向と交差する領域の少なくとも一部を含むことが好ましい。シワの方向とは筋目が走る方向をいう。シワの方向と交差する領域に前記組成物を適用することで、シワを生じている部分の皮膚が伸ばされてシワが目立たなくなるためである。
シワの方向と交差する領域としては、シワの方向に沿った領域であることが好ましく、該領域はシワの片側のみでもよく、両側でもよい。特に、シワを挟んだ両側に前記組成物を適用することがより好ましい。シワを生じている部分の皮膚をシワの両側から引っ張ることにより、シワをより目立たなくすることができるためである。
シワの方向に沿った領域に前記組成物を適用する形態としては、例えば当該領域に前記組成物を面状、帯状、線状又はドット状に塗布する形態が挙げられ、具体的には、後述する
図1~
図3に示す形態を例示できる。
【0034】
また、例えば法令線のように、シワの方向が重力方向に対し並行でない場合は、本発明の組成物を適用する領域(シワの方向と交差する領域)がシワの上側の領域を含むことが好ましい。ここでいう「重力方向」とは、人が直立している場合に重力が働く方向を意味し、「上側」とは、上記重力方向とは逆方向を意味する。少なくともシワの上側の領域に前記組成物を適用することで、シワを生じている部分の皮膚を上側に引っ張り、シワをより目立たなくすることができる。上記と同様の観点から、シワの方向が重力方向に対し並行でない場合において、本発明の組成物を適用する領域がシワを挟んだ上側及び下側の領域であり、かつ、シワの上側の領域の方がシワの下側の領域よりも広い範囲であることがより好ましい。
【0035】
本発明の組成物を皮膚のシワ周辺部に適用する形態の一例を
図1~
図3に示す。
図1はシワ(法令線)の周辺部の皮膚に組成物を面状又は帯状に塗布した形態であり、
図1(a)はシワの上側の領域、
図1(b)(c)はシワを挟んだ上側及び下側の領域にそれぞれ組成物を塗布したものである。シワをより目立たなくする観点からは、
図1(c)のように、組成物を塗布する領域がシワを挟んだ上側及び下側の領域であり、かつ、シワの上側の領域の方がシワの下側の領域よりも広いことがより好ましい。
図2(a)(b)(c)はシワ(法令線)の周辺部の皮膚に組成物を線状に塗布した形態であり、
図3(a)(b)はシワ(法令線)の周辺部の皮膚に組成物をドット状に塗布した形態である。
図2,3に示すように、組成物を線状又はドット状に塗布する場合も、皮膚をシワの両側から均等に引っ張る観点から、シワを挟んだ上側及び下側の領域に組成物を塗布することが好ましい。
【0036】
本発明の組成物を皮膚に適用する場合の使用量は、シワを目立たなくする効果を発現しうる限り特に制限されないが、例えば0.01g以上、10g以下の量である。
【0037】
本発明の組成物を皮膚に適用する方法としては、該組成物を皮膚のシワ周辺部に塗布するなどして適用する工程と、次いで該組成物を乾燥させて前記ポリマーを収縮させる工程とを有することが好ましい。該乾燥により、皮膚に塗布等した組成物中の成分(A)が収縮し、この収縮作用でシワ周辺部の皮膚を引っ張って伸ばすことにより皮膚表面の凹凸形状を平坦化させ、ひいてはシワを目立たなくする効果を奏する。
乾燥後は、必要に応じ本発明の組成物を除去してもよい。あるいは組成物を皮膚に適用し、次いで乾燥させた後、組成物を除去せず、その上から化粧を施してもよい。
【0038】
上述の実施形態に関し、本発明はさらに以下の実施態様を開示する。
<1>
ノルボルナン構造を含有するポリマー(A)及びヘキサメチルジシロキサン(B)を含有する外用剤組成物。
<2>
ノルボルナン構造を含有するポリマー(A)の含有量が0.1質量%以上30質量%以下であり、ヘキサメチルジシロキサン(B)の含有量が1質量%以上99.9質量%以下である、<1>に記載の外用剤組成物。
<3>
ノルボルナン構造を含有するポリマー(A)が下記式(6)で表されるシリコーン変性ポリノルボルネンである、<1>又は<2>に記載の外用剤組成物。
【化13】
式中、e、fは繰り返し単位数であり、それぞれ独立に1以上の整数である。
<4>
前記式(6)中のeとfの割合が、e/f=20/80~90/10(mol/mol)である、<3>に記載の外用剤組成物。
<5>
成分(A)の含有量が1質量%以上20質量%以下である、<1>~<4>のいずれか1に記載の外用剤組成物。
<6>
成分(B)の含有量が5質量%以上99.5質量%以下である、<1>~<5>のいずれか1に記載の外用剤組成物。
<7>
成分(B)の含有量が20質量%以上99.5質量%以下である、<1>~<6>のいずれか1に記載の外用剤組成物。
<8>
成分(B)の含有量が35質量%以上99質量%以下である、<1>~<7>のいずれか1に記載の外用剤組成物。
<9>
成分(A)の含有量が1質量%以上20質量%以下であり、成分(B)の含有量が5質量%以上99.5質量%以下である、<1>又は<2>に記載の外用剤組成物。
<10>
成分(A)の含有量が1質量%以上20質量%以下であり、成分(B)の含有量が20質量%以上99.5質量%以下である、<1>又は<2>に記載の外用剤組成物。
<11>
成分(A)の含有量が1質量%以上20質量%以下であり、成分(B)の含有量が35質量%以上99質量%以下である、<1>又は<2>に記載の外用剤組成物。
【0039】
<12>
成分(A)が下記式(6)で表されるシリコーン変性ポリノルボルネンであり、その含有量が1質量%以上20質量%以下であり、成分(B)の含有量が5質量%以上99.5質量%以下である、<1>又は<2>に記載の外用剤組成物。
【化14】
式中、e、fは繰り返し単位数であり、それぞれ独立に1以上の整数である。
<13>
成分(A)が下記式(6)で表されるシリコーン変性ポリノルボルネンであり、その含有量が1質量%以上20質量%以下であり、成分(B)の含有量が20質量%以上99.5質量%以下である、<1>又は<2>に記載の外用剤組成物。
【化15】
式中、e、fは繰り返し単位数であり、それぞれ独立に1以上の整数である。
<14>
成分(A)が下記式(6)で表されるシリコーン変性ポリノルボルネンであり、その含有量が1質量%以上20質量%以下であり、成分(B)の含有量が35質量%以上99質量%以下である、<1>又は<2>に記載の外用剤組成物。
【化16】
式中、e、fは繰り返し単位数であり、それぞれ独立に1以上の整数である。
<15>
前記式(6)中のeとfの割合が、e/f=20/80~90/10(mol/mol)である、<12>~<14>のいずれか1に記載の外用剤組成物。
<16>
皮膚のシワ改善用組成物である、<1>~<15>のいずれか1に記載の外用剤組成物。
<17>
水の含有量が5質量%以下である、<1>~<16>のいずれか1に記載の外用剤組成物。
<18>
<1>~<17>のいずれか1に記載の外用剤組成物を皮膚のシワ周辺部に適用する、皮膚のシワ改善方法。
<19>
<1>~<17>のいずれか1に記載の外用剤組成物を皮膚のシワ周辺部に適用する工程と、次いで該組成物を乾燥させる工程とを有する、皮膚のシワ改善方法。
<20>
前記シワ周辺部において前記外用剤組成物を適用する領域が、シワの方向と交差する領域の少なくとも一部を含む<18>又は<19>に記載の方法。
<21>
前記領域が、シワの方向に沿った領域である<20>に記載の方法。
<22>
前記領域が、シワを挟んだ両側である<20>又は<21>に記載の方法。
<23>
前記領域に前記外用剤組成物を面状、帯状、線状又はドット状に塗布する<20>~<22>のいずれか1に記載の方法。
<24>
前記シワ改善方法が、成分(A)の収縮作用によりシワ周辺部の皮膚を引っ張って伸ばし、非侵襲で皮膚の形状を制御する方法である、<18>~<23>のいずれか1に記載の方法。
<25>
<1>~<17>のいずれか1に記載の外用剤組成物の、皮膚のシワ改善用組成物としての使用。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。なお本実施例において、各種測定及び評価は以下の方法により行った。
【0041】
(数平均分子量Mn)
ポリマーの数平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としたゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)法により、以下の条件で測定した。
測定装置:HLC-8320GPC(東ソー(株)製)
カラム:K-806L(Shodex製)、2本直列
検出器:RI
溶離液:1mmol/L-ファーミンDM20(花王(株)製)/CHCl3
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
【0042】
(シワ改善効果)
図1(c)の形態で、被験者の顔の半面の口元の法令線を挟むように各例の組成物0.2gを指で塗布した。室温(25℃)で10分乾燥させた後、専門評価者が下記5段階の基準でシワ改善効果を評価した。
5:シワがかなり薄くなった
4:シワが薄くなった
3:シワがやや薄くなった。
2:シワが残ってあまり変わらない
1:変化なし
【0043】
実施例1~9、比較例1~2(外用剤組成物の製造及び評価)
表1に示す全成分を配合してディスパーで均一に混合し、表1に示す外用剤組成物を調製した。得られた外用剤組成物を用いて、前記方法で皮膚のシワ改善評価を実施した。結果を表1に示す。なお、表1に記載した配合量は各成分の有効成分量(質量%)である。
【0044】
【0045】
表1の配合成分は下記である。
*1:信越化学工業(株)製「NBN-30-ID」(下記式(6)においてe/f=60/40mol/mol)、Mn=36万のノルボルネン/トリス(トリメチルシロキシ)シリルノルボルネン)コポリマーのイソドデカン溶液、有効分濃度:30質量%)を50℃で12時間減圧乾燥し、得られた固形分を使用した。
【化17】
【0046】
*2:信越化学工業(株)製「KP-550」(アクリルポリマーとジメチルポリシロキサンからなるグラフト共重合体のイソドデカン溶液、有効分濃度:40質量%)を50℃で12時間減圧乾燥し、得られた固形分を使用した。
*3:信越化学工業(株)製、「KF-96L-0.65cs」、ヘキサメチルジシロキサン
*4:信越化学工業(株)製、「KF-995」、デカメチルシクロペンタシロキサン
【0047】
シワ改善効果について、実施例1の結果を
図4、比較例2の結果を
図5に示す。
図4(a)及び
図5(a)は外用剤組成物を適用する前の法令線周辺部の写真であり、
図4(b)及び
図5(b)は外用剤組成物を適用した後の法令線周辺部の写真である。
図4に示すように、実施例1の外用剤組成物を適用した場合、法令線及びその周辺部の小ジワが目立たなくなっているのに対し、
図5に示す比較例2では改善効果が見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の外用剤組成物によれば、非侵襲で皮膚の形状を制御し、皮膚のシワを目立たなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】シワ(法令線)の周辺部の皮膚に組成物を面状又は帯状に塗布した形態の一例である。
【
図2】シワ(法令線)の周辺部の皮膚に組成物を線状に塗布した形態の一例である。
【
図3】シワ(法令線)の周辺部の皮膚に組成物をドット状に塗布した形態の一例である。