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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20230904BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20230904BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20230904BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
E02F9/22 E
E02F9/24 B
E02F9/26 B
E02F9/20 M
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020550419
(86)(22)【出願日】2019-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2019038523
(87)【国際公開番号】W WO2020071314
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2018188454
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 純一
(72)【発明者】
【氏名】本田 圭二
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-091131(JP,A)
【文献】国際公開第2016/035898(WO,A1)
【文献】特開2016-172963(JP,A)
【文献】特開2010-151191(JP,A)
【文献】特開2009-256891(JP,A)
【文献】特開平08-302753(JP,A)
【文献】特開平05-202535(JP,A)
【文献】特開2016-113791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
E02F 9/24
E02F 9/26
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられるブームと、前記ブームの先端に取り付けられるアームと、前記アームの先端に取り付けられるエンドアタッチメントと有するアタッチメントと、
前記アタッチメントを駆動する油圧シリンダと、
前記油圧シリンダの油室の作動油を外部に排出させる制御弁と、
前記下部走行体及び前記上部旋回体を含む機体が所定の不安定状態にある場合に、前記アタッチメントを自動で動作させ、且つ、前記アタッチメントの動作の程度を所定基準以下に制限する制御装置と、を備え
前記機体が前記所定の不安定状態にある場合とは、前記下部走行体又は前記アタッチメントの動作に応じて、前記機体の後部の浮き上がり若しくは前記機体の振動が発生する可能性がある場合、又は、前記機体の後部浮き上がり若しくは前記機体の振動が発生した場合であり、
前記制御装置は、前記機体が前記所定の不安定状態にある場合に、前記制御弁を制御し、前記油圧シリンダの油室から作動油を外部に排出させることにより、前記アタッチメントを自動で動作させると共に、前記油圧シリンダの油室から外部に排出される作動油の量を制限することにより、前記アタッチメントの動作の程度を前記所定基準以下に制限する、
ショベル。
【請求項2】
前記制御弁を通じて前記油圧シリンダから作動油が排出される際の移動方向への前記油圧シリンダの移動量を検出する検出装置を備え、
前記制御装置は、前記機体が前記所定の不安定状態にある場合に、前記制御弁を制御し、前記油圧シリンダの油室の作動油を外部に排出させると共に、前記移動量の増加に応じて、前記油圧シリンダの油室から外部に排出される作動油の流量を少なくさせる、
請求項に記載のショベル。
【請求項3】
前記油圧シリンダは、前記ブームを駆動するブームシリンダであり、
前記制御弁は、前記ブームシリンダのボトム側油室の作動油を外部に排出させ、
前記制御装置は、前記制御弁を制御し、前記ブームシリンダの油室から外部に排出される作動油の量を制限することにより、前記ブームの動作の程度を前記所定基準以下に制限する、
請求項に記載のショベル。
【請求項4】
前記制御装置は、所定時間内における前記ブームの下げ方向の移動量を前記所定基準以下に制限するように、前記ブームを下げ方向に動作させる、
請求項に記載のショベル。
【請求項5】
前記制御装置は、前記アタッチメントが前記エンドアタッチメントとしてのバケットの収容物を排出させる動作を行う場合、前記制御弁を制御し、前記ブームを下げ方向に移動させると共に、前記ブームの下げ方向の移動量を前記所定基準以下に制限する、
請求項又はに記載のショベル。
【請求項6】
前記ブームシリンダの下げ方向への移動量を検出する検出装置を備え、
前記制御装置は、前記機体が前記所定の不安定状態にある場合に、前記制御弁を制御し、前記ブームシリンダのボトム側油室の作動油を外部に排出させると共に、前記移動量の増加に応じて、前記ブームシリンダのボトム側油室から外部に排出される作動油の流量を少なくさせる、
請求項乃至の何れか一項に記載のショベル。
【請求項7】
前記ブームシリンダに対する作動油の給排を制御するコントロールバルブと、
前記コントロールバルブと前記ブームシリンダのボトム側油室との間の油路において、前記ブームシリンダのボトム側油室からの作動油の流出を遮断し、前記ブームシリンダのボトム側油室に作動油を保持する機能と、を備え、
前記制御弁は、前記機能が解除されている場合に、前記ブームシリンダのボトム側油室の作動油を外部に排出させることが可能であり
前記制御装置は、前記機体が前記所定の不安定状態にある場合に、前記機能を解除し、且つ、前記制御弁を制御し、前記ブームシリンダのボトム側油室の作動油を外部に排出させると共に、前記移動量の増加に応じて、前記機能の解除度合いを低くしていくことにより、前記ブームシリンダのボトム側油室から外部に排出される作動油の流量を少なくさせる、
請求項に記載のショベル。
【請求項8】
前記コントロールバルブと前記ブームシリンダのボトム側油室との間の油路に設けられ、前記ブームの下げ操作が行われない場合に、前記機能を作動させる作動油保持回路を備え、
前記制御弁は、前記ブームシリンダのボトム側油室から見て、前記作動油保持回路よりも下流側の油路に設けられ、
前記制御装置は、前記作動油保持回路を制御することにより、前記機能を解除する、
請求項に記載のショベル。
【請求項9】
前記検出装置は、前記ブーム又は前記ブームシリンダの動作状態に関する検出情報、又は、前記ブームシリンダのボトム側油室から外部に排出される作動油の量に関する検出情報を出力し、
前記制御装置は、前記検出情報に基づき、前記移動量を取得する、
請求項乃至の何れか一項に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ショベルのアタッチメントを自動で動作させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、ショベルの動作に合わせて、ブームシリンダのボトム側油室の圧力を制御(リリーフ)し、ブームの動作を自動で補正することで、ショベルの機体後部の浮き上がり等の不安定な現象を抑制する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-122510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アタッチメントを自動で動作させる場合、その動作の態様によっては、オペレータや周囲の作業者等に不安を与えてしまう可能性がある。
【0006】
そこで、上記課題に鑑み、アタッチメントを自動で動作させる場合のショベルの安全性を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態では、
走行体と、
前記走行体に旋回自在に搭載される旋回体と、
前記旋回体に取り付けられるブームと、前記ブームの先端に取り付けられるアームと、前記アームの先端に取り付けられるエンドアタッチメントと有するアタッチメントと、
前記アタッチメントを駆動する油圧シリンダと、
前記油圧シリンダの油室の作動油を外部に排出させる制御弁と、
前記下部走行体及び前記上部旋回体を含む機体が所定の不安定状態にある場合、前記アタッチメントを自動で動作させ、且つ、前記アタッチメントの動作の程度を所定基準以下に制限する制御装置と、
を備え
前記機体が前記所定の不安定状態にある場合とは、前記下部走行体又は前記アタッチメントの動作に応じて、前記機体の後部の浮き上がり若しくは前記機体の振動が発生する可能性がある場合、又は、前記機体の後部浮き上がり若しくは前記機体の振動が発生した場合であり、
前記制御装置は、前記機体が前記所定の不安定状態にある場合に、前記制御弁を制御し、前記油圧シリンダの油室から作動油を外部に排出させることにより、前記アタッチメントを自動で動作させると共に、前記油圧シリンダの油室から外部に排出される作動油の量を制限することにより、前記アタッチメントの動作の程度を前記所定基準以下に制限する、
ショベルが提供される。

【発明の効果】
【0008】
上述の実施形態によれば、アタッチメントを自動で動作させる場合のショベルの安全性を向上させることが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ショベルの一例を示す側面図である。
図2】ショベルの構成の一例を示すブロック図である。
図3】ショベルの構成の他の例を示すブロック図である。
図4】ショベルの構成の更に他の例を示すブロック図である。
図5】作動油保持回路及びリリーフ弁を含む油圧回路の一例の詳細を示す図である。
図6A】ショベルの後部浮き上がり現象の具体例を示す図である。
図6B】ショベルの後部浮き上がり現象の具体例を示す図である。
図6C】ショベルの後部浮き上がり現象の具体例を示す図である。
図6D】ショベルの後部浮き上がり現象の具体例を示す図である。
図6E】ショベルの後部浮き上がり現象の具体例を示す図である。
図7A】ショベルの振動現象の具体例を示す図である。
図7B】ショベルの振動現象の具体例を示す図である。
図8A】ショベルの振動現象の具体例を示す図である。
図8B】ショベルの振動現象の具体例を示す図である。
図9】コントローラによる安定化制御処理の一例を概略的に示すフローチャートである。
図10】コントローラによる安定化制御処理の他の例を概略的に示すフローチャートである。
図11】ショベル管理システムの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
[ショベルの概要]
まず、図1を参照して、本実施形態に係るショベル100の概要について説明をする。
【0012】
図1は、本実施形態に係るショベル100の側面図である。
【0013】
本実施形態に係るショベル100は、下部走行体1と、旋回機構2を介して旋回自在に下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、アタッチメントとしてのブーム4、アーム5、及びバケット6と、キャビン10とを備える。以下、ショベル100の前方は、ショベル100を上部旋回体3の旋回軸に沿って真上から平面視(以下、単に「平面視」と称する)で見たときに、上部旋回体3に対して、アタッチメントが延出する方向(以下、単に「アタッチメントの延出方向」と称する)に対応する。また、ショベル100の左方及び右方は、それぞれ、ショベル100を平面視で見たときに、キャビン10内のオペレータの左方及び右方に対応する。
【0014】
下部走行体1は、例えば、左右一対のクローラを含み、それぞれのクローラが走行油圧モータ1L,1R(図2図4参照)で油圧駆動されることにより、ショベル100を走行させる。
【0015】
上部旋回体3は、旋回油圧モータ2A(図2図4参照)で駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回する。
【0016】
ブーム4は、上部旋回体3の前部中央に俯仰可能に枢着され、ブーム4の先端には、アーム5が上下回動可能に枢着され、アーム5の先端には、バケット6が上下回動可能に枢着される。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、それぞれ、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。
【0017】
また、バケット6は、エンドアタッチメントの一例であり、ショベル100には、バケット6とは異なる種類のエンドアタッチメント(例えば、破砕機、リフティングマグネット等、バケット6と用途の異なるエンドアタッチメントや、大型バケット等、バケット6と用途以外の仕様が異なるエンドアタッチメント)が取り付けられてもよい。つまり、ショベル100は、作業内容等に合わせて、適宜、エンドアタッチメントの種類を交換可能に構成されてよい。
【0018】
キャビン10は、オペレータが搭乗する操縦室であり、上部旋回体3の前部左側に搭載される。
【0019】
ショベル100は、キャビン10に搭乗するオペレータ(以下、便宜的に「搭乗オペレータ」)の操作に応じて、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の被駆動要素を動作させる。
【0020】
また、ショベル100は、所定の外部装置(例えば、後述の管理装置200)から受信される遠隔操作信号に応じて、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の被駆動要素を動作させてもよい。即ち、ショベル100は、遠隔操作されてもよい。ショベル100が遠隔操作される場合、キャビン10の内部は、無人状態であってよい。
【0021】
また、ショベル100は、キャビン10の搭乗オペレータの操作や外部装置のオペレータ(以下、便宜的に「遠隔オペレータ」)の遠隔操作の内容に依らず、自動で油圧アクチュエータを動作させてもよい。これにより、ショベル100は、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の被駆動要素の少なくとも一部を自動で動作させる機能(以下、「自動運転機能」)を実現する。以下、搭乗オペレータ及び遠隔オペレータを包括的にオペレータと称する場合がある。
【0022】
自動運転機能には、搭乗オペレータの操作や遠隔操作オペレータの遠隔操作に応じて、操作対象の被駆動要素(油圧アクチュエータ)以外の被駆動要素(油圧アクチュエータ)を自動で動作させる機能(いわゆる「半自動運機能」)が含まれてよい。また、自動運転機能には、搭乗オペレータの操作や遠隔オペレータの遠隔操作がない前提で、複数の被駆動要素(油圧アクチュエータ)の少なくとも一部を自動で動作させる機能(いわゆる「完全自動運転機能」)が含まれてよい。ショベル100において、完全自動運転機能が有効な場合、キャビン10の内部は無人状態であってよい。また、自動運転機能には、ショベル100の周囲の作業者等の人のジェスチャをショベル100が認識し、認識されるジェスチャの内容に応じて、複数の被駆動要素(油圧アクチュエータ)の少なくとも一部を自動で動作させる機能(「ジェスチャ操作機能」)が含まれてよい。また、半自動運転機能や完全自動運転機能やジェスチャ操作機能には、自動運転の対象の被駆動要素(油圧アクチュエータ)の動作内容が予め規定されるルールに従って自動的に決定される態様が含まれてよい。また、半自動運転機能や完全自動運転機能やジェスチャ操作機能には、ショベル100が自律的に各種の判断を行い、その判断結果に沿って、自律的に自動運転の対象の被駆動要素(油圧アクチュエータ)の動作内容が決定される態様(いわゆる「自律運転機能」)が含まれてもよい。
【0023】
[ショベルの構成]
次に、図1に加えて、図2図5を参照して、ショベル100の具体的な構成について説明する。
【0024】
図2図4は、本実施形態に係るショベル100の構成の一例、他の例、及び更に他の例を示すブロック図である。具体的には、図2図4は、相互に、後述するリリーフ弁V7Bに関連する油圧回路の構成が異なる。図5は、作動油保持回路90及びリリーフ弁V7Bを含む油圧回路の一例を示す図であり、具体的には、図4に示すショベル100の構成に対応する作動油保持回路90及びリリーフ弁V7Bを含む油圧回路の一例を示す図である。
【0025】
尚、図中において、機械的動力ラインは二重線、高圧油圧ラインは実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御ラインは点線でそれぞれ示される。
【0026】
本実施形態に係るショベル100の油圧駆動系は、上述の如く、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6のそれぞれを油圧駆動する走行油圧モータ1L,1R、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等の油圧アクチュエータを含む。また、本実施形態に係るショベル100の油圧駆動系は、エンジン11と、レギュレータ13と、メインポンプ14と、コントロールバルブ17とを含む。
【0027】
エンジン11は、油圧駆動系におけるメイン動力源であり、例えば、上部旋回体3の後部に搭載される。具体的には、エンジン11は、後述するコントローラ30による直接或いは間接的な制御の下、予め設定される目標回転数で一定回転し、メインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動する。エンジン11は、例えば、軽油を燃料とするディーゼルエンジンである。
【0028】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。例えば、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じて、メインポンプ14の斜板の角度(以下、「傾転角」)を調節する。
【0029】
メインポンプ14は、例えば、エンジン11と同様、上部旋回体3の後部に搭載され、高圧油圧ラインを通じてコントロールバルブ17に作動油を供給する。メインポンプ14は、上述の如く、エンジン11により駆動される。メインポンプ14は、例えば、可変容量式油圧ポンプであり、上述の如く、コントローラ30による制御の下、レギュレータ13により斜板の傾転角が調節されることでピストンのストローク長が調整され、吐出流量(吐出圧)が制御されうる。
【0030】
コントロールバルブ17は、例えば、上部旋回体3の中央部に搭載され、搭乗オペレータによる操作装置26の操作や遠隔オペレータによる遠隔操作に応じて、油圧アクチュエータの制御を行う油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、上述の如く、高圧油圧ラインを介してメインポンプ14と接続され、メインポンプ14から供給される作動油を、オペレータの操作内容に応じて、油圧アクチュエータ(走行油圧モータ1L,1R、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9)に選択的に供給する。具体的には、コントロールバルブ17は、メインポンプ14から油圧アクチュエータのそれぞれに供給される作動油の流量と流れる方向を制御する複数の制御弁(例えば、ブームシリンダ7に対応する後述の制御弁17A等)を含む。
【0031】
本実施形態に係るショベル100の操作系は、パイロットポンプ15と、操作装置26とを含む。
【0032】
パイロットポンプ15は、例えば、上部旋回体3の後部に搭載され、パイロットライン25を介して操作装置26に作動油(パイロット圧)を供給する。パイロットポンプ15は、例えば、固定容量式油圧ポンプであり、上述の如く、エンジン11により駆動される。
【0033】
操作装置26は、キャビン10の操縦席付近に設けられ、搭乗オペレータが各種動作要素(下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、バケット6等)の操作を行うための操作入力手段である。換言すれば、操作装置26は、それぞれの動作要素を駆動する油圧アクチュエータ(即ち、走行油圧モータ1L,1R、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9等)の操作を搭乗オペレータが行うための操作入力手段である。
【0034】
図2図4に示すように、操作装置26は、例えば、パイロットライン25を通じてパイロットポンプ15から供給される作動油を利用する油圧パイロット式である。操作装置26は、パイロットポンプ15から供給される作動油を利用して、その操作内容に応じたパイロット圧をその二次側のパイロットライン27に出力する。操作装置26は、その二次側のパイロットライン27を通じてコントロールバルブ17に接続される。これにより、コントロールバルブ17には、操作装置26における下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に応じたパイロット圧が入力される。そのため、コントロールバルブ17は、操作装置26における操作状態に応じた、それぞれの油圧アクチュエータの動作を実現することができる。
【0035】
また、操作装置26は、例えば、操作内容に応じた電気信号(以下、「操作信号」)を出力する電気式であってもよい。操作装置26から出力される操作信号は、例えば、コントローラ30に取り込まれる。コントローラ30は、受信される操作信号に応じて、操作装置26の操作内容に応じた制御指令を、パイロットポンプ15とコントロールバルブ17のパイロットポートとの間を結ぶパイロットラインに介設される油圧制御弁(以下、「操作用制御弁」)に出力する。これにより、操作用制御弁から操作装置26の操作内容に応じたパイロット圧がコントロールバルブ17に供給される。そのため、コントロールバルブ17は、搭乗オペレータ等の操作装置26に対する操作内容に応じた、それぞれの油圧アクチュエータの動作を実現することができる。
【0036】
尚、ショベル100が遠隔操作される場合についても、操作用制御弁が利用されてよい。例えば、コントローラ30は、外部装置から受信される遠隔操作信号に応じて、遠隔操作の内容に応じた制御指令を操作用制御弁に出力する。これにより、操作用制御弁から遠隔操作の内容に応じたパイロット圧がコントロールバルブ17に供給される。そのため、コントロールバルブ17は、遠隔オペレータによる遠隔操作の内容に応じた、それぞれの油圧アクチュエータの動作を実現することができる。また、ショベル100が自動運転機能を有する場合についても、操作用制御弁が利用されてよい。例えば、コントローラ30は、オペレータの操作に依らず、自動運転機能による油圧アクチュエータの動作に対応する制御指令を出力する。これにより、操作用制御弁から自動運転機能による油圧アクチュエータの動作に応じたパイロット圧がコントロールバルブ17に供給される。そのため、コントロールバルブ17は、自動運転機能に対応するそれぞれの油圧アクチュエータの動作を実現することができる。
【0037】
操作装置26は、例えば、ブーム4(ブームシリンダ7)、アーム5(アームシリンダ8)、バケット6(バケットシリンダ9)、及び上部旋回体3(旋回油圧モータ2A)のそれぞれを操作するレバー装置を含む。また、操作装置26は、例えば、左右の下部走行体1(走行油圧モータ1L,1R)のそれぞれを操作するペダル装置或いはレバー装置を含む。
【0038】
本実施形態に係るショベル100の制御系は、コントローラ30と、操作圧センサ29と、表示装置40と、入力装置42と、音声出力装置44と、ブーム落下量検出装置50と、ブーム姿勢センサS1と、アーム姿勢センサS2と、バケット姿勢センサS3と、機体傾斜センサS4と、ブームボトム圧センサS7Bと、ブームロッド圧センサS7Rと、アームボトム圧センサS8Bと、アームロッド圧センサS8Rと、バケットボトム圧センサS9Bと、バケットロッド圧センサS9Rと、リリーフ弁V7Bとを含む。
【0039】
コントローラ30(制御装置の一例)は、ショベル100の駆動制御を行う。コントローラ30は、その機能が任意のハードウェア、或いは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現されてよい。例えば、コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性の補助記憶装置、及び各種入出力用のインタフェース装置等を含むコンピュータを中心に構成される。
【0040】
例えば、コントローラ30は、アタッチメントを自動で動作させる機能(以下、「アタッチメントの自動制御機能」)に関する制御を行う。アタッチメントの自動制御機能には、例えば、ショベル100における所定の不安定現象(例えば、後述の後部浮き上がり現象)を抑制するようにアタッチメントを自動で動作させる安定化制御機能が含まれる。また、アタッチメントの自動制御機能には、アタッチメントに関する自動運転機能が含まれる。
【0041】
コントローラ30は、例えば、不揮発性の補助記憶装置等にインストールされる一以上のプログラムをCPU上で実行することにより実現される、安定化制御機能に関する機能部として、動的不安定状態判定部301と、安定化制御部302とを含む。
【0042】
尚、コントローラ30の機能の一部は、他のコントローラ(制御装置)により実現されてもよい。即ち、コントローラ30の機能は、複数のコントローラにより分散される態様で実現されてもよい。
【0043】
操作圧センサ29は、上述の如く、操作装置26の二次側(パイロットライン27)のパイロット圧、即ち、操作装置26におけるそれぞれの動作要素(油圧アクチュエータ)の操作状態に対応するパイロット圧を検出する。操作圧センサ29による操作装置26における下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に対応するパイロット圧の検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0044】
表示装置40は、キャビン10内の搭乗オペレータから視認し易い位置に配置され、コントローラ30による制御下で、各種情報画像を表示する。表示装置40は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。
【0045】
入力装置42は、キャビン10内の着座した搭乗オペレータから手が届く範囲に設けられ、搭乗オペレータによる各種操作入力を受け付け、操作入力に応じた信号をコントローラ30に出力する。入力装置42は、例えば、各種情報画像を表示する表示装置のディスプレイに実装されるタッチパネル、操作装置26に含まれるレバー装置のレバー部の先端に設けられるノブスイッチ、表示装置40の周囲に設置されるボタンスイッチ、レバー、トグル、ダイヤル等を含みうる。
【0046】
音声出力装置44は、キャビン10内に設けられ、コントローラ30による制御下で、各種音声を出力する。音声出力装置44は、例えば、スピーカやブザー等である。
【0047】
ブーム落下量検出装置50(検出装置の一例)は、ブーム4の下げ方向への移動量(以下、「落下量」)に関する検出情報を出力する。このとき、ブーム4の落下量は、ショベル100が所定の基準状態(例えば、水平面に位置している状態)において、ブーム4の所定位置の下方向への移動量である。ブーム4の落下量は、例えば、ブーム4の先端部の落下量であってもよいし、ブーム4の中央部の落下量であってもよい。ブーム落下量検出装置50の検出情報は、コントローラ30に取り込まれる。これにより、コントローラ30は、ブーム落下量検出装置50の検出情報に基づき、ブーム4の落下量を取得できる。
【0048】
ブーム落下量検出装置50は、例えば、ブーム4の動作状態に関する検出情報を出力してよい。これにより、コントローラ30は、ブーム4の動作状態から、直接的に、ブーム4の落下量を取得(算出)できる。この場合、ブーム落下量検出装置50は、例えば、上述のブーム姿勢センサS1、具体的には、ロータリポテンショメータ、ロータリエンコーダ、加速度センサ、角加速度センサ、6軸センサ、IMU等を含みうる。また、ブーム落下量検出装置50は、ブームシリンダ7の動作状態に関する検出情報を出力してもよい。これにより、コントローラ30は、ブームシリンダ7の動作状態から、間接的に、ブーム4の落下量を取得(算出)できる。この場合、ブーム落下量検出装置50は、例えば、ブームシリンダ7の移動位置や移動速度等を検出するシリンダセンサを含みうる。また、ブーム落下量検出装置50は、例えば、ブームシリンダ7のボトム側油室から外部に排出される作動油の量に関する検出情報を出力してよい。これにより、コントローラ30は、ブームシリンダ7のボトム側油室から外部に排出された作動油の積算量を取得すると共に、ブームシリンダ7のボトム側油室から外部に排出された作動油の積算量を、ブームシリンダ7の移動量を介して、ブーム4の落下量に換算する態様で取得することができる。この場合、ブーム落下量検出装置50は、例えば、ブームボトム圧を検出するブームボトム圧センサS7Bやブームシリンダ7のボトム側油室から外部に排出される作動油の流量を検出する流量センサ等を含みうる。
【0049】
ブーム姿勢センサS1は、ブーム4に取り付けられ、ブーム4の上部旋回体3に対する姿勢角度、具体的には、俯仰角度(以下、「ブーム角度」)を検出する。ブーム姿勢センサS1は、例えば、側面視において、上部旋回体3の旋回平面に対してブーム4の両端の支点を結ぶ直線が成す角度を検出する。ブーム姿勢センサS1は、例えば、ロータリポテンショメータ、ロータリエンコーダ、加速度センサ、角加速度センサ、6軸センサ、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)等を含んでよく、以下、アーム姿勢センサS2、バケット姿勢センサS3、機体傾斜センサS4についても同様である。ブーム姿勢センサS1によるブーム角度θ1に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0050】
アーム姿勢センサS2は、アーム5に取り付けられ、アーム5のブーム4に対する姿勢角度、具体的には、回動角度(以下、「アーム角度」)、例えば、側面視において、ブーム4の両端の支点を結ぶ直線に対してアーム5の両端の支点を結ぶ直線が成す角度を検出する。アーム姿勢センサS2によるアーム角度θ2に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0051】
バケット姿勢センサS3は、バケット6に取り付けられ、バケット6のアーム5に対する姿勢角度、具体的には、回動角度(以下、「バケット角度」)、例えば、側面視において、アーム5の両端の支点を結ぶ直線に対してバケット6の支点と刃先とを結ぶ直線が成す角度を検出する。バケット姿勢センサS3によるバケット角度θ3に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0052】
機体傾斜センサS4は、所定の基準面(例えば、水平面)に対する機体(例えば、上部旋回体3)の傾斜状態を検出する。機体傾斜センサS4は、例えば、上部旋回体3に取り付けられ、ショベル100(即ち、上部旋回体3)の前後方向及び左右方向の2軸回りの傾斜角度(以下、「前後傾斜角」及び「左右傾斜角」)を検出する。機体傾斜センサS4により検出される傾斜角度(前後傾斜角及び左右傾斜角)に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
【0053】
旋回状態センサS5は、上部旋回体3に取り付けられ、上部旋回体3の旋回状態に関する検出情報を出力する。旋回状態センサS5は、例えば、上部旋回体3の旋回角速度や旋回角度を検出する。旋回状態センサS5は、例えば、ジャイロセンサ、レゾルバ、ロータリエンコーダ等を含む。旋回状態センサS5により検出される旋回状態に関する検出情報は、コントローラ30に取り込まれる。
【0054】
尚、機体傾斜センサS4に3軸回りの角速度を検出可能なジャイロセンサ、6軸センサ、IMU等が含まれる場合、機体傾斜センサS4の検出信号に基づき上部旋回体3の旋回状態(例えば、旋回角速度)が検出されてもよい。この場合、旋回状態センサS5は、省略されてよい。
【0055】
撮像装置S6は、ショベル100の周辺を撮像する。撮像装置S6は、ショベル100の前方を撮像するカメラS6F、ショベル100の左方を撮像するカメラS6L、ショベル100の右方を撮像するカメラS6R、及び、ショベル100の後方を撮像するカメラS6Bを含む。
【0056】
カメラS6Fは、例えば、キャビン10の天井、即ち、キャビン10の内部に取り付けられている。また、カメラS6Fは、キャビン10の屋根、ブーム4の側面等、キャビン10の外部に取り付けられていてもよい。カメラS6Lは、上部旋回体3の上面左端に取り付けられ、カメラS6Rは、上部旋回体3の上面右端に取り付けられ、カメラS6Bは、上部旋回体3の上面後端に取り付けられている。
【0057】
撮像装置S6(カメラS6F,S6B,S6L,S6R)は、それぞれ、例えば、非常に広い画角を有する単眼の広角カメラである。また、撮像装置S6は、ステレオカメラや距離画像カメラ等であってもよい。撮像装置S6による撮像画像は、コントローラ30に取り込まれる。
【0058】
ブームロッド圧センサS7R及びブームボトム圧センサS7Bは、それぞれ、ブームシリンダ7に取り付けられ、ブームシリンダ7のロッド側油室の圧力(以下、「ブームロッド圧」)及びボトム側油室の圧力(以下、「ブームボトム圧」)を検出する。ブームロッド圧センサS7R及びブームボトム圧センサS7Bによるブームロッド圧及びブームボトム圧に対応する検出信号は、それぞれ、コントローラ30に取り込まれる。
【0059】
アームロッド圧センサS8R及びアームボトム圧センサS8Bは、それぞれ、アームシリンダ8に取り付けられ、アームシリンダ8のロッド側油室の圧力(以下、「アームロッド圧」)、及びボトム側油室の圧力(以下、「アームボトム圧」)を検出する。アームロッド圧センサS8R及びアームボトム圧センサS8Bによるアームロッド圧及びアームボトム圧に対応する検出信号は、それぞれ、コントローラ30に取り込まれる。
【0060】
バケットロッド圧センサS9R及びバケットボトム圧センサS9Bは、それぞれ、バケットシリンダ9に取り付けられ、バケットシリンダ9のロッド側油室の圧力(以下、「バケットロッド圧」)及びボトム側油室の圧力(以下、「バケットボトム圧」)を検出する。バケットロッド圧センサS9R及びバケットボトム圧センサS9Bによるバケットロッド圧及びバケットボトム圧に対応する検出信号は、それぞれ、コントローラ30に取り込まれる。
【0061】
リリーフ弁V7B(制御弁の一例)は、コントローラ30からの制御指令に応じて、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油を外部(作動油タンクT)に排出し、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油の圧力を開放する。具体的には、リリーフ弁V7Bは、ブームボトム圧が、コントローラ30からの制御指令により規定される設定圧力を超える場合に、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油を作動油タンクTに排出する。これにより、ブームシリンダ7は、ロッドの先端で連結されているブーム4の自重によって、ボトム側、つまり、収縮側に移動し、結果として、ブーム4は、下げ方向に動作(回動)する。
【0062】
例えば、図2に示すように、リリーフ弁V7Bは、ブームシリンダ7のボトム側油室とコントロールバルブ17との間の高圧油圧ラインに設けられてよい。また、例えば、図3に示すように、リリーフ弁V7Bは、ブームシリンダ7のロッド側油室とコントロールバルブ17内のブームシリンダ7に対応する制御弁17Aとの間の高圧油圧ラインのうちのコントロールバルブ17に内蔵される部分に設けられてもよい。つまり、リリーフ弁V7Bは、コントロールバルブ17の内外問わず、ブームシリンダ7に対応する制御弁17Aとブームシリンダ7のボトム側油室との間の高圧油圧ラインに設けられてよい。
【0063】
尚、リリーフ弁V7Bは、制御弁17Aに内蔵されてもよい。この場合、リリーフ弁V7Bは、制御弁17A内におけるブームシリンダ7のボトム側油室と接続されるポートと連通する油路からコントロールバルブ17内のセンタバイパス油路(メインポンプ14の作動油を作動油タンクTまで循環させる油路)に作動油を排出させる態様であってよい。
【0064】
また、図4に示すように、ブームシリンダ7のボトム側油室とコントロールバルブ17との間の高圧油圧ラインに作動油保持回路90が設けられる場合がありうる。作動油保持回路90は、操作装置26を通じてブーム4の下げ方向の操作(以下、「ブーム下げ操作」)が行われていない場合に、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油(の油圧)を保持する。これにより、例えば、作動油保持回路90は、ブームシリンダ7側を上流としたときの下流側で、作動油の漏れ等が発生した場合であっても、ブーム4が下げ方向に落下するような事態を防止できる。
【0065】
この場合、リリーフ弁V7Bは、ブームシリンダ7のボトム側油室とコントロールバルブ17内の制御弁17Aとの間の高圧油圧ライン上における作動油保持回路90よりも制御弁17A側(ブームシリンダ7側を上流としたときの下流側)に設けられてよい。具体的には、リリーフ弁V7Bは、図4に示すように、コントロールバルブ17の外、つまり、作動油保持回路90とコントロールバルブ17との間の高圧油圧ラインに設けられてもよい。また、リリーフ弁V7Bは、図3の場合と同様、ブームシリンダ7のボトム側油室とコントロールバルブ17内のブームシリンダ7に対応する制御弁17Aとの間の高圧油圧ラインのうちのコントロールバルブ17に内蔵される部分に設けられてもよい。また、リリーフ弁V7Bは、上述の如く、制御弁17Aに内蔵されてもよい。
【0066】
図5に示すように、作動油保持回路90は、コントロールバルブ17とブームシリンダ7のボトム側油室との間を接続する高圧油圧ラインに介設される。作動油保持回路90は、主に、保持弁90aと、スプール弁90bとを含む。本例では、図5中において、二つのブームシリンダ7が示されるが、メインポンプ14とブームシリンダ7との間にコントロールバルブ17と作動油保持回路90が介設される点は、何れのブームシリンダ7についても同様である。そのため、一方のブームシリンダ7(図中の右側のブームシリンダ7)についての油圧回路を中心に説明する。
【0067】
保持弁90aは、コントロールバルブ17からブームシリンダ7のボトム側油室への作動油の流入を許容する。具体的には、保持弁90aは、操作装置26に対するブーム4の上げ方向の操作(以下、「ブーム上げ操作」)に対応して、油路901を通じてコントロールバルブ17から供給される作動油を、油路903を通じてブームシリンダ7のボトム側油室に供給する。一方、保持弁90aは、ブームシリンダ7のボトム側油室(油路903)からコントロールバルブ17に接続される油路901への作動油の流出を遮断する。保持弁90aは、例えば、ポペット弁である。
【0068】
また、保持弁90aは、油路901から分岐する油路902の一端に接続され、油路902に配置されるスプール弁90bを通じてブームシリンダ7のボトム側油室の作動油を下流の油路901(コントロールバルブ17)に排出することができる。具体的には、保持弁90aは、油路902に設けられるスプール弁90bが非連通状態(図中の左端のスプール位置)の場合、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油が作動油保持回路90の下流側(油路901)に排出されないように保持する。一方、保持弁90aは、スプール弁90bが連通状態(図中の中央或いは右端のスプール位置)の場合、油路902を経由して、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油を作動油保持回路90の下流側に排出することができる。
【0069】
スプール弁90bは、油路902に設けられ、保持弁90aにより遮断されるブームシリンダ7のボトム側油室の作動油を作動油保持回路90の下流(油路901)に迂回して排出させることができる。スプール弁90bは、油路902を非連通にする第1のスプール位置(図中の左端のスプール位置)、油路902を絞って連通にする第2のスプール位置(図中の中央のスプール位置)、及び、油路902を全開で連通にする第3のスプール位置(図中の右端のスプール位置)を有する。このとき、第2のスプール位置において、スプール弁90bは、パイロットポートに入力されるパイロット圧の大きさに応じて、その絞り度合いが可変される。
【0070】
スプール弁90bは、パイロットポートにパイロット圧が入力されない場合、スプールが第1のスプール位置にあり、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油は、油路902を経由した作動油保持回路90の下流(油路901)に排出されない。一方、スプール弁90bは、そのパイロットポートにパイロット圧が入力される場合、そのパイロット圧の大きさに応じて、スプールが第2の位置或いは第3の位置の何れかにある。具体的には、スプール弁90bは、パイロットポートに作用するパイロット圧が大きくなるほど、第2の位置における絞り度合いが小さくなると共に、スプールが第2のスプール位置から第3のスプール位置に近づく。そして、スプール弁90bは、パイロットポートに作用するパイロット圧がある程度大きくなると、スプールが第3のスプール位置になる。
【0071】
また、本例では、スプール弁90bにパイロット圧を入力するパイロット回路が設けられる。当該パイロット回路は、パイロットポンプ15とブーム下げ用リモコン弁26Aaと、電磁比例弁92と、シャトル弁94とを含む。
【0072】
ブーム下げ用リモコン弁26Aaは、パイロットライン25Aを通じて、パイロットポンプ15と接続される。ブーム下げ用リモコン弁26Aaは、操作装置26のうちのブームシリンダ7を操作するレバー装置に含まれ、パイロットポンプ15から供給される作動油を利用して、ブーム下げ操作に対応するパイロット圧をパイロットライン27Aに出力する。
【0073】
電磁比例弁92は、パイロットポンプ15とブーム下げ用リモコン弁26Aaとの間のパイロットライン25Aから分岐し、ブーム下げ用リモコン弁26Aaをバイパスしてシャトル弁94の一方の入力ポートに接続されるパイロットライン25Bに設けられる。電磁比例弁92は、コントローラ30からの制御指令に応じて、パイロットライン25Bの連通/非連通状態を切り換えると共に、パイロットライン25Bの連通状態における流路面積、つまり、流量を比例的に変化させることができる。
【0074】
尚、後述する図10の安定化制御処理が採用されない場合、電磁比例弁92の代わりに、パイロットライン25Bの連通状態と非連通状態との切り換えだけが可能な電磁切換弁が採用されてもよい。
【0075】
シャトル弁94は、一方の入力ポートにパイロットライン25Bの一端が接続され、他方のポートには、ブーム下げ用リモコン弁26Aaの二次側のパイロットライン27Aの一端が接続される。シャトル弁94は、二つの入力ポートのうちのパイロット圧が高い方をスプール弁90bのパイロットポートに出力する。これにより、ブーム下げ操作がされている場合、シャトル弁94からスプール弁90bのパイロットポートにパイロット圧が作用し、スプール弁90bが連通状態になる。そのため、スプール弁90bは、レバー装置26Aに対するブーム下げ操作に対応して、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油を油路902経由で作動油保持回路90の下流(油路901)に排出することができる。つまり、スプール弁90bは、操作装置26に対するブーム下げ操作と連動し、操作装置26を通じてブーム下げ操作が行われる場合に、保持弁90aにより遮断された作動油をブームシリンダ7のボトム側油室から排出する。また、シャトル弁94は、操作装置26を通じてブーム下げ操作がされていない場合であっても、コントローラ30による制御下で、電磁比例弁92からシャトル弁94を経由してスプール弁90bのパイロットポートにパイロット圧を作用させることができる。そのため、コントローラ30は、電磁比例弁92を介して作動油保持回路90(スプール弁90b)の作動油保持機能を解除し、操作装置26(レバー装置)に対するブーム下げ操作の有無に依らず、油路902を連通状態にして、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油を作動油保持回路90の下流(油路901)に排出させることができる。よって、コントローラ30は、電磁比例弁92を介して作動油保持回路90の作動油保持機能を解除することにより、作動油保持回路90よりも下流側、つまり、コントロールバルブ17側に配置されるリリーフ弁V7Bによるブームシリンダ7のボトム側油室の圧力の開放機能を有効にすることができる。そして、コントローラ30は、リリーフ弁V7Bによるブームシリンダ7のボトム側油室の圧力の開放機能が有効な状態で、リリーフ弁V7Bに制御指令を出力することで、リリーフ弁V7Bにブームシリンダ7のボトム側油室の圧力を開放させることができる。
【0076】
尚、リリーフ弁V7Bは、作動油保持回路90の保持弁90aよりもブームシリンダ7側の高圧油圧ラインに設けられてもよい。この場合、リリーフ弁V7Bは、作動油保持回路90の作動油保持機能の解除の有無に依らず、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油を作動油タンクTに排出させることができる。つまり、コントローラ30は、作動油保持回路90の作動油保持機能を解除することなく、リリーフ弁V7Bに制御指令を出力することで、リリーフ弁V7Bにブームシリンダ7のボトム側油室の圧力を開放させることができる。また、リリーフ弁V7Bの代わりに、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油をブームシリンダ7のボトム側油室に排出(供給)する再生弁(制御弁の一例)が採用されてもよい。この場合、再生弁は、コントローラ30からの制御指令に応じて、全閉状態から制御指令の内容に対応する開度で開放される。これにより、ブーム4の自重で、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油が再生弁を通じてブームシリンダ7のボトム側油室に再生され、ブーム4が下げ方向に動作する。
【0077】
動的不安定状態判定部301は、ショベル100の下部走行体1及び上部旋回体3を含む機体が動的な不安定状態(以下、「動的不安定状態」)にあるか否かを判定する。機体の動的不安定状態は、アタッチメントの先端(バケット6)が地面に接触しておらず、空中にあるとき(以下、「アタッチメントの空中動作時」)に、ショベル100の動作に応じて機体に作用する動的な外乱(例えば、アタッチメントの動作の反モーメントや下部走行体1の走行時に作用するモーメント等)に起因して、所定の不安定現象が発生する可能性がある状態を表す。また、機体の動的不安定状態には、アタッチメントの空中動作時以外(例えば、アタッチメントの掘削動作時)において、ショベル100の動作に応じて機体に作用する動的な外乱に起因して、所定の不安定現象が発生する可能性がある状態を含んでもよい。
【0078】
例えば、図6は、所定の不安定現象の一例として、ショベル100の機体(下部走行体1)の後部が浮き上がる現象(以下、「後部浮き上がり現象」)の具体例を示す図である。具体的には、図6Aは、バケット6の開き動作によって、ショベル100がバケット6内の収容物(例えば、土砂等)を排出させる作業(以下、便宜的に、「排土作業」)を行う状況を模式的に示す図である。図6Bは、ブーム4の下げ動作及びアーム5の開き動作によって、ショベル100が排土作業を行う状況を模式的に示す図である。図6Cは、アーム5及びバケット6の閉じ動作によって、ショベル100がバケット6に土砂等を抱え込む作業(つまり、掘削作業の後半工程)を行う状況を模式的に示す図である。図6Dは、ブーム4の上げ動作によって、ショベル100がバケット6に抱えた土砂等を持ち上げる作業を行う状況を模式的に示す図である。図6Eは、掘削作業の開始に際して、ショベル100が急激なブーム4の下げ動作を行った後、地面の直上でその動作を急停止させる状況を模式的に示す図である。図6(f)は、バケット6が車体から相対的に大きく離れた状態で、ブーム4の上げ動作によって、ショベル100がバケット6に抱えた土砂等を持ち上げる状況を模式的に示す図である。
【0079】
図6A図6Bに示すように、アタッチメントが空中でバケット6に土砂等を抱えた状態で、バケット6が開き動作を行ったり、ブーム4が下げ動作を行い、且つ、アーム5が開き動作を行ったりすると、その動的な外乱としての反モーメントが機体(上部旋回体3)に作用する。具体的には、当該反モーメントは、車体に対して、前方に転倒させるようなピッチング方向のモーメント(以下、「動的転倒モーメント」)として、作用する。
【0080】
また、図6Cに示すように、ショベル100がアーム閉じ動作及びバケット閉じ動作によって、土砂等をバケット6に抱え込もうとすると、地面や土砂からの反力がバケット6に作用する。その結果、当該反力が、アタッチメントを通じ、ショベル100の車体に前方に転倒させるようなピッチング方向の動的転倒モーメントを作用させる。
【0081】
また、図6Dに示すように、ショベル100がバケット6を接地させた状態からブーム4を持ち上げると、バケット6に積載された土砂等の負荷によって、車体に前方に転倒させるようなピッチング方向の動的転倒モーメントが作用する。
【0082】
また、図6Eに示すように、ショベル100が急激なブーム4の下げ動作を行った後に、その動作を急停止させると、アタッチメントの急停止による動的な外乱として、動的転倒モーメントがアタッチメントから車体に対して作用する。
【0083】
また、図6A図6Eの例示以外の状況でも、ショベル100の後部浮き上がり現象が生じうる。
【0084】
例えば、アーム5とバケット6との接続態様が、クイックカップリングにより実現されている場合、ブーム4及びアーム5の動作と、バケット6の動作との間に位相差が生じる可能性がある。すると、位相遅れの態様によっては、バケット6の動作による反モーメントが、アタッチメントを通じて、増幅される態様で機体に動的転倒モーメントとして作用する可能性がある。
【0085】
また、例えば、アタッチメントを進行方向に向けてショベル100(下部走行体1)が走行している最中に、オペレータの操作によって、或いは、地面の凹凸等の影響でショベル100の走行が妨げられて、下部走行体1が急減速してしまうような場合がありうる。この場合、ショベル100の急減速に起因して機体及びアタッチメントに作用する慣性力に基づく転倒支点回りの動的転倒モーメントが機体に作用し、ショベル100の後部浮き上がり現象が発生する可能性がある。
【0086】
尚、"アタッチメントを進行方向に向けて"いる状態には、下部走行体1の進行方向とアタッチメントの向きとが完全に一致している状態だけでなく、下部走行体1の進行方向とアタッチメントの向きとの差異が比較的小さい状態も含まれる。以下の例示についても同様である。
【0087】
また、例えば、アタッチメントを進行方向に向けてショベル100(下部走行体1)が走行している最中に、斜度が比較的大きい下り傾斜地に進入したり、比較的大きな窪みに下部走行体1の前部が落ちてしまったりすると、機体の前傾量が急に増加する場合がある。この場合、機体の前傾量の急増により、機体に下方への加速度(重力加速度)が生じ、直後に、地面に下部走行体1の前部が接地することで、機体(下部走行体1)に急減速が生じる。すると、この急減速に応じて、アタッチメントに作用する慣性力に基づく転倒支点回りの動的転倒モーメントが作用し、ショベル100の後部浮き上がり現象が発生する可能性がある。
【0088】
以下、上述のように、ショベル100の動作に応じて、後部浮き上がり現象が発生する状況(シチュエーション)を"動的不安定シチュエーション"と称する。
【0089】
ショベル100の機体には、下部走行体1の前端部の接地点を支点(以下、「転倒支点」)として、前方に転倒させようとする(つまり、後部を浮き上がらせようとする)転倒モーメントと、前方への転倒(つまり、後部の浮き上がり)を抑制しようとする抑制モーメントが作用する。転倒モーメントには、アタッチメントの自重による静的な転倒モーメント(以下、「静的転倒モーメント」)と、ショベル100の動作に伴う上述の動的転倒モーメントが含まれ、抑制モーメントは、機体(下部走行体1及び上部旋回体3)の自重により作用する。そのため、転倒モーメントは、バケット6の位置が転倒支点から離れるほど、つまり、バケット6の位置が機体(下部走行体1及び上部旋回体3)から離れるほど、大きくなる。また、転倒モーメントは、バケット6の収容物を含む重量が大きいほど、大きくなる。また、転倒モーメント(動的転倒モーメント)は、ショベル100の動作の変化度合い(例えば、ショベル100の排土作業時のバケット6の開き動作の角加速度)が大きいほど、大きくなる。また、下部走行体1に対する上部旋回体3の向き、つまり、アタッチメントの向きが下部走行体1の進行方向とずれている場合、下部走行体1の接地点の前端が機体に近づくため、相対的に、バケット6の位置が転倒支点から遠ざかると共に、機体の重心位置が転倒支点に近づくため、転倒モーメントが大きくなると共に、抑制モーメントが小さくなる。
【0090】
よって、バケット6の機体に対する位置関係、バケット6の収容物を含む重量、ショベル100の動作の変化度合い、上部旋回体3の下部走行体1に対する向き等の条件によっては、転倒モーメントが抑制モーメントに対して相対的に大きくなり、結果として、ショベル100の後部浮き上がり現象が発生する可能性がある。
【0091】
また、図7図7A図7B)、図8図8A図8B)は、所定の不安定現象の一例として、ショベル100の振動現象の具体例を示す図である。具体的には、図7A図7Bは、アタッチメントの空中動作時において、ショベル100の機体に振動現象が発生する状況を示す図である。また、図8A図8Bは、それぞれ、図7A図7Bにおけるショベル100の排土動作に伴うピッチング方向の角度(以下、「ピッチ角度」)及び角速度(以下、「ピッチ角速度」)の時間波形を示す図である。本例では、空中動作の一例として、ショベル100がバケット6内の収容物DPを排出する排出動作を説明する。
【0092】
図7Aに示すように、ショベル100は、バケット6及びアーム5が閉じられ、且つ、ブーム4が上がった状態となっており、バケット6には、土砂等の収容物DPが収容されている。
【0093】
図7Bに示すように、図7Aに示す状態からショベル100の排土動作が行われると、バケット6及びアーム5が大きく開かれ、且つ、ブーム4が下げられ、収容物DPがバケット6の外部に排出される。このとき、アタッチメントの慣性モーメントの変化が、ショベル100の車体を図中矢印Aに示すピッチング方向に振動させるように作用する。
【0094】
具体的には、図8A図8Bに示すように、アタッチメントの空中動作(排土動作)に起因して、ショベル100を前方に転倒させようとする動的転倒モーメントが発生し(図8A中の丸囲み部分参照)、機体にピッチング方向の振動現象が発生することが分かる。
【0095】
また、上述の動的不安定シチュエーションで作用する動的転倒モーメントによっても、同様に、機体にピッチング方向の振動現象が発生しうる。
【0096】
例えば、動的不安定状態判定部301は、転倒支点(下部走行体1の前端部の接地点)回りに、ショベル100の機体を前方に転倒させる転倒モーメントと、前方への転倒を抑制する抑制モーメントと比較することで、ショベル100の機体が動的不安定状態であるか否かを判定してよい。
【0097】
上述の如く、転倒モーメントには、アタッチメントの自重による静的転倒モーメントと、ショベル100の動作に伴う上述の動的転倒モーメントが含まれる。このうち、動的転倒モーメントは、アタッチメントの負荷状態、つまり、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9のそれぞれの推力F1~F3、アタッチメントの姿勢状態及び動作状態、つまり、ブーム4、アーム5、及びバケット6のそれぞれの支点回りの姿勢角度、角速度、角加速度等に依存する。一方、抑制モーメントは、ショベル100の機体、つまり、下部走行体1及び上部旋回体3の自重や転倒支点とそれぞれの重心との間の距離等に依存する。
【0098】
よって、動的不安定状態判定部301は、アタッチメントの負荷状態、姿勢状態、及び動作状態に関する検出情報、つまり、各センサS1~S4、S7B,S7R,S8B,S8R,S9B,S9R等の検出値に基づき、転倒モーメントを算出することができる。また、動的不安定状態判定部301は、ショベル100の下部走行体1及び上部旋回体3の自重と、それぞれの重心と転倒支点との間の距離等から抑制モーメントを算出することができる。そして、動的不安定状態判定部301は、転倒モーメント及び抑制モーメントの算出値との間に、転倒モーメントが抑制モーメントを超えない範囲の所定の条件式(以下、「動的転倒抑制条件式」)を満足するか否かを判定してよい。これにより、動的不安定状態判定部301は、当該動的転倒抑制条件式を満足しない場合に、ショベル100の機体が動的不安定状態にあると判定できる。
【0099】
また、例えば、動的不安定状態判定部301は、動的転倒モーメントが作用する場合に、ブームシリンダ7のブームボトム圧やアームシリンダ8のアームロッド圧が過大になる点を利用して、ショベル100の機体が動的不安定状態にあるか否かを判定してもよい。具体的には、動的不安定状態判定部301は、ブームボトム圧センサS7Bやアームボトム圧センサS8Bの検出値が所定の上限値を超えている場合に、ショベル100の機体が動的不安定状態にあると判定してよい。
【0100】
また、例えば、動的不安定状態判定部301は、ショベル100の動作に応じて、動的に不安定現象が発生し易い具体的なシチュエーション(動的不安定シチュエーション)を把握することにより、ショベル100の機体が動的不安定状態にあるか否かを判定してもよい。
【0101】
具体的には、動的不安定状態判定部301は、アタッチメントがバケット6内の収容物の排土動作(例えば、図6A図6B図7A図7B等参照)を行う場合に、ショベル100の機体が動的不安定状態にあると判定してよい。このとき、コントローラ30は、ブーム姿勢センサS1、アーム姿勢センサS2、及びバケット姿勢センサS3の検出値から把握される現在のアタッチメントの姿勢状態や、直前のショベル100の動作状態(例えば、バケット6に土砂等を収容したアタッチメントの姿勢状態で旋回動作が行われたか否か等)に基づき、アタッチメントがバケット6内の収容物の排土動作を行うか否かを判断してよい。また、コントローラ30は、撮像装置S6の撮像画像に基づき、アタッチメントがバケット6内の収容物の排土動作を行うか否かを判断してもよい。
【0102】
また、動的不安定状態判定部301は、アタッチメントを進行方向に向けてショベル100(下部走行体1)が走行している最中に、下部走行体1が急減速する場合に、ショベル100の機体が動的不安定状態であると判定してよい。このとき、コントローラ30は、機体傾斜センサS4により検出される上部旋回体3の旋回角度や撮像装置S6の撮像画像に含まれる下部走行体1の見え方等に基づき、アタッチメントの向きと下部走行体1の進行方向との一致度を判断してよい。また、コントローラ30は、機体傾斜センサS4(に含まれる加速度センサ等)の検出値に基づき、下部走行体1の減速状態を判断してよい。
【0103】
また、動的不安定状態判定部301は、アタッチメントを進行方向に向けてショベル100(下部走行体1)が走行している最中に、機体の傾斜量が急に増加する場合に、ショベル100の機体が動的不安定状態であると判定してよい。このとき、コントローラ30は、機体傾斜センサS4の検出情報や撮像装置S6の撮像画像等に基づき、機体の傾斜量の増加状態を判断してよい。
【0104】
安定化制御部302は、ショベル100の機体に発生する不安定現象(例えば、後部浮き上がり現象や振動現象等)の発生を抑制し、ショベル100の機体を安定化させる制御(以下、「安定化制御」を行う。
【0105】
例えば、安定化制御部302は、動的不安定状態判定部301によりショベル100の機体が動的不安定状態にあると判定される場合に、リリーフ弁V7B或いはリリーフ弁V7B及び電磁比例弁92に制御指令を出力し、ブームシリンダ7のボトム側油室の圧力を開放する。
【0106】
これにより、安定化制御部302は、上述の如く、動的転倒モーメントが発生しうる状況で、ブームシリンダ7のボトム側油室の圧力を開放させ、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油を外部に流動可能な状態を実現させることができる。そのため、ブームシリンダ7は、ブーム4の自重で、収縮方向、つまり、ブーム4の下げ方向に移動できるようになる。よって、ブームシリンダ7の収縮方向(下げ方向)への移動によって、機体に動的転倒モーメントを作用させる動的な外乱の少なくとも一部が吸収され、動的な外乱が機体に対する動的転倒モーメントとして伝達されにくくなり、ショベル100の後部浮き上がり現象や振動現象等の所定の不安定現象を抑制できる。安定化制御部302による安定化制御の詳細は、後述する。
【0107】
尚、安定化制御部302は、リリーフ弁V7Bを制御する代わりに、コントロールバルブ17(具体的には、制御弁17A)を制御することにより、直接的に(積極的に)、ブーム4を下げ方向に移動させてもよい。
【0108】
また、安定化制御部302は、安定化制御中におけるブーム4の落下量を制限する。これにより、コントローラ30は、ショベル100の動作に応じて、ショベル100の機体に発生しうる不安定な現象を抑制しつつ、ブーム4の下げ方向への移動を抑制することができる。
【0109】
例えば、安定化制御部302は、安定化制御中におけるブーム4の下げ方向への移動速度を相対的に低くなるように制限してよい。このとき、安定化制御部302は、各時点におけるブーム4の下げ方向への移動速度が所定の上限値以下になるように制限してもよいし、所定時間におけるブーム4の落下量(つまり、平均移動速度)が所定の上限値以下になるように制限してもよい。これにより、安定化制御部302は、単位時間当たりのブーム4の下げ方向の移動量を相対的に低く制限できる。
【0110】
また、例えば、安定化制御部302は、安定化制御中におけるブーム4の下げ方向への絶対的な移動量を制限してもよい。つまり、安定化制御部302は、ブーム4の落下量が所定閾値以下の範囲で、ブーム4の下げ方向の動作が停止するように、安定化制御を行ってもよい。
【0111】
安定化制御部302を中心とする安定化制御の詳細は、後述する(図9図10参照)。
【0112】
[アタッチメントの自動制御機能の一例]
次に、図9図10を参照して、コントローラ30(動的不安定状態判定部301、安定化制御部302)によるアタッチメントの自動制御機能の一例(安定化制御機能)について説明する。
【0113】
<安定化制御の一例>
図9は、コントローラ30による安定化制御に関する処理(以下、「安定化制御処理」)の一例を概略的に示すフローチャートである。本フローチャートによる処理は、例えば、ショベル100の起動からショベル100の停止までの間で、所定の処理間隔ごとに、くりかえし実行される。以下、図10のフローチャートについても同様である。
【0114】
ステップS102にて、動的不安定状態判定部301は、ショベル100の機体が動的不安定状態にあるか否か、つまり、ショベル100の機体に所定の不安定現象が発生する可能性があるか否かを判定する。動的不安定状態判定部301は、ショベル100の機体が動的不安定状態にある、つまり、ショベル100の機体に所定の不安定現象が発生する可能性がある場合、ステップS104に進み、それ以外の場合、今回の処理を終了する。
【0115】
ステップS104にて、安定化制御部302は、リリーフ弁V7B或いは電磁比例弁92及びリリーフ弁V7Bに制御指令を出力し、リリーフ弁V7Bを介して、ブーム4のボトム側油室の作動油をリリーフさせる制御(以下、「ボトムリリーフ制御」)を開始する。
【0116】
ステップS106にて、安定化制御部302は、ブーム落下量検出装置50から取り込まれる検出情報に基づき、ボトムリリーフ制御開始後のブーム4の落下量を取得する。
【0117】
ステップS108にて、安定化制御部302は、取得したブーム4の落下量の増加に応じて、リリーフ弁V7Bの設定圧力を上げる。これにより、ブーム4の落下量が増加するほど、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油が外部に排出されにくくなる、具体的には、ブームシリンダ7のボトム側油室から外部に排出される作動油の流量が少なくなる。そのため、コントローラ30は、ボトムリリーフ制御開始後のブーム4の落下量を制限することができる。このとき、安定化制御部302は、例えば、ブーム4の落下量と、リリーフ弁V7Bの設定圧力との対応関係が予め規定される制御マップに基づき、リリーフ弁V7Bの設定圧力を決定してよい。
【0118】
ステップS110にて、動的不安定状態判定部301は、ショベル100の機体の動的不安定状態が継続しているか否か、つまり、ショベル100の機体に所定の不安定現象が発生する可能性のある状態が継続しているか否かを判定する。動的不安定状態判定部301は、ショベル100の機体の動的不安定状態が継続している、つまり、ショベル100の機体に所定の不安定現象が発生する可能性のある状態が継続している場合、ステップS106に戻って、ステップS106~S110の処理を繰り返す。一方、動的不安定状態判定部301は、ショベル100の機体の動的不安定状態が終了している場合、つまり、ショベル100の機体に所定の不安定現象が発生する可能性のある状態が終了している場合、ステップS112に進む。
【0119】
ステップS112にて、動的不安定状態判定部301は、リリーフ弁V7B或いは電磁比例弁92及びリリーフ弁V7Bの制御を停止することで、ボトムリリーフ制御を停止し、今回の処理を終了する。
【0120】
このように、本例では、コントローラ30は、ショベル100の動作に応じて、ブーム4の下げ方向の移動量を制限するように、ブーム4を下げ方向に動作させる。具体的には、コントローラ30は、ショベル100の動作に応じて、リリーフ弁V7Bを制御し、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油を外部に排出させると共に、リリーフ弁V7Bを制御し、ブームシリンダ7の落下量の増加に応じて、ブームシリンダ7のボトム側油室から外部に排出される作動油の流量を少なくさせる。これにより、コントローラ30は、上述の如く、ショベル100の動作に応じて、ショベル100の機体に発生しうる不安定な現象を抑制しつつ、ブーム4の下げ方向への移動を抑制することができる。
【0121】
<安定化制御の他の例>
図10は、コントローラ30による安定化制御処理の他の例を概略的に示すフローチャートである。具体的には、図10は、作動油保持回路90(図4図5参照)が搭載されるショベル100のコントローラ30により採用可能な安定化制御処理を例示するフローチャートである。
【0122】
ステップS202~S206,S210,S212の処理は、図9のステップS102~S106,S110,S112と同じであるため、説明を省略する。
【0123】
ステップS208にて、安定化制御部302は、取得したブーム4の落下量の増加に応じて、作動油保持回路90の解除度合いを低くする、つまり、作動油保持回路90の下流側(コントロールバルブ17側)への開口を絞る。具体的には、安定化制御部302は、取得したブーム4の落下量の増加に応じて、電磁比例弁92への制御指令を変化させることにより、スプール弁90bの開度を小さくしていく。これにより、ブーム4の落下量が増加するほど、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油が作動油保持回路90の下流側に流れにくくなる。そのため、コントローラ30は、結果として、作動油保持回路90(スプール弁90b)の下流側に位置するリリーフ弁V7Bを通じて、ブームシリンダ7のボトム側油室から外部に排出される作動油の流量を少なくさせ、ボトムリリーフ制御開始後のブーム4の落下量を制限することができる。このとき、安定化制御部302は、例えば、ブーム4の落下量と、スプール弁90bの開度に対応する電磁比例弁92に対する制御指令(例えば、制御電流値)との対応関係が予め規定される制御マップに基づき、電磁比例弁92に対する制御指令の内容を決定してよい。
【0124】
このように、本例では、コントローラ30は、ショベル100の動作に応じて、作動油保持回路90を制御し、ブームシリンダ7のボトム側油室からの作動油の流出を遮断する機能(以下、「遮断機能」)を解除し、且つ、リリーフ弁V7Bを制御し、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油を外部に排出させると共に、作動油保持回路90を制御し、ブーム4の落下量の増加に応じて、作動油保持回路90の遮断機能の解除度合いを低くしていくことにより、ブームシリンダ7のボトム側油室から外部に排出される作動油の流量を少なくさせる。これにより、コントローラ30は、上述の如く、ショベル100の動作に応じて、ショベル100の機体に発生しうる不安定な現象を抑制しつつ、ブーム4の下げ方向への移動を抑制することができる。
【0125】
尚、本例では、コントローラ30は、ショベル100の機体が動的不安定状態である場合、つまり、ショベル100の機体に所定の不安定現象が発生する可能性がある場合に、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油を外部に排出させる(ブーム4を下げ方向に移動させる)が、当該態様には限定されない。例えば、コントローラ30は、後部浮き上がり現象や振動現象等の所定の不安定現象が発生した場合(具体的には、発生直後)に、ブームシリンダ7のボトム側油室の作動油を外部に排出させる(ブーム4を下げ方向に移動させる)態様であってもよい。これにより、既に発生したショベル100の機体の後部浮き上がり現象や振動現象等の所定の不安定現象の増大を抑制し、早期に不安定現象を収束させることができる。この場合、コントローラ30は、機体傾斜センサS4の検出値や撮像装置S6の撮像画像等に基づき、下部走行体1の後部浮き上がり現象や振動現象等の発生を検出してよい。また、コントローラ30は、ブーム4の移動量を所定基準以外に制限するのに代えて、或いは、加えて、移動速度や移動加速度等を所定基準以下に制限してもよい。
【0126】
[ショベルの自動制御機能の他の例]
次に、ショベルの自動制御機能の他の例について説明する。
【0127】
例えば、コントローラ30は、安定化制御機能において、上述の一例の場合と異なり、ブーム4に代えて、或いは、加えて、アーム5を自動で動作させてもよい。
【0128】
具体的には、コントローラ30は、ショベル100の機体に所定の不安定現象が発生する可能性がある、或いは、発生した場合に、アーム5を閉じ方向に自動で動作させてよい。コントローラ30は、例えば、アームシリンダ8のロッド側油室の作動油をリリーフ弁により作動油タンクに排出させ、作動油の圧力を開放することで、アーム5の自重でアーム5を閉じ方向に移動させてよい。これにより、アタッチメントの重心位置が機体側に近づくため、ショベル100の静的な安定度が向上し、ショベル100の機体の後部浮き上がり現象等を抑制することができる。また、例えば、ショベル100の動作に応じて、動的にショベル100の機体に後部浮き上がり現象が発生する可能性がある場合であっても、アームシリンダがクッションの役割を果たし、後部浮き上がり現象を抑制することができる。この際、コントローラ30は、上述のブーム4の場合と同様、アーム5の閉じ方向への移動量、移動速度、及び移動加速度の少なくとも一つを所定基準以下に制限してよい。これにより、ショベル100の機体における不安定現象の発生を抑制しつつ、ショベル100の動作を相対的に小さくし、オペレータや周囲の作業者等に与える不安を抑制させることができる。
【0129】
また、例えば、コントローラ30は、安定化制御機能に代えて、或いは、加えて、自動運転機能によって、アタッチメントを自動で動作させてもよい。この際、コントローラ30は、上述の一例の場合と同様、アタッチメント(ブーム4、アーム5、及びバケット6の少なくとも一つ)の移動量、移動速度、及び移動加速度の少なくとも一つを所定基準以下に制限してよい。これにより、ショベル100の自動運転機能を実現しつつ、ショベル100の動作を相対的に小さくし、オペレータや周囲の作業者等に与える不安を抑制させることができる。
【0130】
[ショベル管理システムの構成]
次に、図11を参照して、ショベル管理システムSYSの構成について説明する。
【0131】
図11に示すように、ショベル100は、ショベル管理システムSYSの構成要素であってもよい。
【0132】
ショベル管理システムSYSは、ショベル100と、管理装置200と、携帯端末300とを含む。ショベル管理システムSYSに含まれるショベル100は、一台であっても複数台であってもよい。また、ショベル管理システムSYSに含まれる携帯端末300は、一台であってもよいし、複数台であってもよい。
【0133】
ショベル管理システムSYSは、例えば、管理装置200において、ショベル100から各種情報を収集し、ショベル100の運用状況や故障の有無等を監視する。また、ショベル管理システムSYSは、例えば、管理装置200から携帯端末300に対して、ショベル100に関する各種情報を配信したり、管理装置200からショベル100に制御指令を送信したりする。
【0134】
<ショベルの構成>
図11に示すように、ショベル100は、通信装置T1を含み、管理装置200と通信可能に構成される。
【0135】
通信装置T1は、所定の通信回線NWを通じて、ショベル100の外部装置(例えば、管理装置200)と通信を行う。通信回線NWは、例えば、基地局を末端とする移動体通信網を含んでよい。また、通信回線NWは、例えば、通信衛星を利用する衛星通信網を含んでもよい。また、通信回線NWは、例えば、インターネット網を含んでもよい。また、通信回線NWは、例えば、ブルートゥース(登録商標)やWiFi等の規格に基づく近距離通信網であってもよい。
【0136】
通信装置T1は、例えば、コントローラ30の制御下で、ショベル100で取得される各種情報を管理装置200にアップロード(送信)する。また、通信装置T1は、例えば、管理装置200から通信回線NWを通じて送信される情報を受信する。通信装置T1により受信される情報は、コントローラ30に取り込まれる。
【0137】
通信装置T1以外のショベル100のその他の構成は、例えば、図2図4等で表されてよい。そのため、その他の構成に関する説明を省略する。
【0138】
<管理装置の構成>
管理装置200は、ショベル100の外部に配置される。管理装置200は、例えば、ショベル100が作業を行う作業現場とは異なる場所に設置されるサーバである。当該サーバは、クラウドサーバであってもよいし、エッジサーバであってもよい。また、管理装置200は、例えば、ショベル100が作業を行う作業現場の管理事務所に配置される管理端末であってもよい。
【0139】
管理装置200は、制御装置210と、通信装置220と、表示装置230と、入力装置240とを含む。
【0140】
制御装置210は、管理装置200の動作に関する各種制御を行う。制御装置210は、その機能が任意のハードウェア、或いは、任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせにより実現されてよい。制御装置210は、例えば、CPU、RAM等のメモリ装置、ROM等の補助記憶装置、及び各種の入出力用のインタフェース装置等を含むコンピュータを中心に構成される。以下、後述する携帯端末300の制御装置310についても同様である。
【0141】
通信装置220は、通信回線NWを通じて、所定の外部装置(例えば、ショベル100や携帯端末300)と通信を行う。通信装置220は、例えば、制御装置210の制御下で、ショベル100や携帯端末300に各種情報や制御指令等を送信する。また、通信装置220は、例えば、ショベル100や携帯端末300から送信(アップロード)される情報を受信する。通信装置220により受信される情報は、制御装置210に取り込まれる。
【0142】
表示装置230は、制御装置210の制御下で、管理装置200の管理者や作業者等(以下、「管理者等」)に向けて、各種情報画像を表示する。表示装置230は、例えば、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイや液晶ディスプレイである。以下、後述する携帯端末300の表示装置330についても同様である。
【0143】
入力装置240は、管理装置200の管理者等からの操作入力を受け付け、制御装置210に出力する。入力装置240は、例えば、ボタン、トグル、レバー、ジョイスティック、キーボード、マウス、タッチパネル等の任意のハードウェアの操作入力手段を含む。また、入力装置240は、表示装置230に表示される、ハードウェアの操作入力手段(例えば、タッチパネル)を通じて操作可能な仮想的な操作入力手段(例えば、ボタンアイコン等)を含んでもよい。以下、後述する携帯端末300の入力装置340についても同様である。
【0144】
例えば、上述の動的不安定状態判定部301の機能は、管理装置200(制御装置210)に移管されてよい。この場合、制御装置210は、例えば、ショベル100からアップロードされる情報に基づき、上述と同様の方法で、ショベル100の機体が動的不安定状態にあるか否か等を監視(判定)してよい。そして、制御装置210は、通信装置220を通じて、ショベル100が動的不安定状態にある旨を通知してよい。これにより、ショベル100(コントローラ30)は、管理装置200からの通知に応じて、安定化制御機能を作動させることができる。
【0145】
また、例えば、更に、上述の安定化制御部302の機能が管理装置200(制御装置210)に移管されてもよい。この場合、制御装置210は、ショベル100が動的不安定状態にある、或いは、静的不安定状態にあると判定した場合、通信装置220を通じて、ブームシリンダ7のボトムリリーフ制御を行うように指令する制御指令をショベル100に送信してよい。
【0146】
また、制御装置210は、例えば、ショベル100の機体が動的不安定状態にあるか否かの監視結果(判定結果)に関する情報を携帯端末300に逐次送信してもよい。これにより、携帯端末300を所持するショベル100の管理者や作業現場の監督者等は、ショベル100の外部からその安定状態を把握することができる。
【0147】
<携帯端末の構成>
携帯端末300は、ショベル100のオーナ、管理者、作業現場の監督者、オペレータ等により所持される。携帯端末300は、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、ラップトップ型のコンピュータ端末等である。
【0148】
携帯端末300は、制御装置310と、通信装置320と、表示装置330と、入力装置340とを含む。
【0149】
制御装置310は、携帯端末300の動作に関する各種制御を行う。
【0150】
通信装置320は、通信回線NWを通じて、所定の外部装置(例えば、管理装置200)と通信を行う。通信装置320は、例えば、制御装置310の制御下で、管理装置200に各種情報を送信する。また、通信装置320は、例えば、管理装置200から送信(ダウンロード)される情報を受信する。通信装置320により受信される情報は、制御装置310に取り込まれる。
【0151】
表示装置330は、制御装置310の制御下で、携帯端末300のユーザに向けて各種情報画像を表示する。
【0152】
入力装置340は、携帯端末300のユーザからの操作入力を受け付け、制御装置310に出力する。
【0153】
携帯端末300のユーザは、入力装置340に対して所定の操作を行い、制御装置310にインストールされる所定のアプリケーションプログラム(以下、「ショベル安定状態閲覧アプリ」)を起動させる。そして、携帯端末300のユーザは、ショベル安定状態閲覧アプリに対応する所定のアプリ画面上で、入力装置340を通じて、ショベル100の安定状態に関する監視結果の閲覧を要求する要求信号を管理装置200に送信させるための操作を行う。制御装置310は、当該操作に応じて、通信装置320を通じて、要求信号を管理装置200に送信する。これにより、管理装置200は、携帯端末300からの要求信号に応じて、ショベル100の安定状態に関する監視結果(判定結果)を所定の制御周期毎に携帯端末300に逐次送信する。よって、携帯端末300のユーザは、ショベル100の外部からショベル100の安定状態を確認することができる。
【0154】
また、携帯端末300は、通信装置320を通じて、ショベル100と直接的に通信可能な構成であってもよい。この場合、動的不安定状態判定部301の機能や安定化制御部302の機能は、携帯端末300の制御装置310に移管されてもよい。
【0155】
[作用]
次に、本実施形態に係るショベル100の作用について説明する。
【0156】
本実施形態では、コントローラ30は、アタッチメントの動作が相対的に小さくなる(大きくならない)ように、アタッチメントを自動で動作させる。具体的には、コントローラ30は、アタッチメントの移動量、移動速度、及び移動加速度の少なくとも一つを所定基準以下に制限するように、アタッチメントを自動で動作させる。
【0157】
これにより、ショベル100のアタッチメントの自動制御を実現しつつ、オペレータや周囲の作業者等に与える不安を抑制することができる。そのため、アタッチメントを自動で動作させる場合のショベル100の安全性を向上させることができる。
【0158】
[変形・変更]
以上、本発明を実施するための形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0159】
例えば、上述した実施形態では、ショベル100は、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の各種動作要素を全て油圧駆動する構成であったが、その一部が電気駆動される構成であってもよい。つまり、上述した実施形態で開示される構成等は、ハイブリッドショベルや電動ショベル等に適用されてもよい。
【0160】
最後に、本願は、2018年10月3日に出願した日本国特許出願2018-188454号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0161】
1 下部走行体
1L 走行油圧モータ
1R 走行油圧モータ
2A 旋回油圧モータ
2 旋回機構
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
7 ブームシリンダ
8 アームシリンダ
9 バケットシリンダ
10 キャビン
11 エンジン
13 レギュレータ
14 メインポンプ
15 パイロットポンプ
17 コントロールバルブ
17A 制御弁
25,25A パイロットライン
26 操作装置
27,27A パイロットライン
29 操作圧センサ
30 コントローラ
40 表示装置
42 入力装置
44 音声出力装置
90 作動油保持回路
90a 保持弁
90b スプール弁
92 電磁比例弁
94 シャトル弁
100 ショベル
S1 ブーム姿勢センサ
S2 アーム姿勢センサ
S3 バケット姿勢センサ
S4 機体傾斜センサ
S5 旋回状態センサ
S6 撮像装置
S7B ブームボトム圧センサ
S7R ブームロッド圧センサ
S8B アームボトム圧センサ
S8R アームロッド圧センサ
S9B バケットボトム圧センサ
S9R バケットロッド圧センサ
V7B リリーフ弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11