(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】圧力補償システムおよびこれを備える高圧電気分解器システム
(51)【国際特許分類】
C25B 1/04 20210101AFI20230904BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20230904BHJP
【FI】
C25B1/04
C25B9/00 A
(21)【出願番号】P 2020551279
(86)(22)【出願日】2019-03-21
(86)【国際出願番号】 EP2019057172
(87)【国際公開番号】W WO2019180184
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-01
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520100103
【氏名又は名称】ハイメット アーペーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ビシュワス, サモン
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/011252(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0072040(US,A1)
【文献】特開2007-100204(JP,A)
【文献】特開2003-342773(JP,A)
【文献】登録実用新案第3202182(JP,U)
【文献】独国特許発明第00597180(DE,C1)
【文献】特開昭64-083681(JP,A)
【文献】米国特許第02695874(US,A)
【文献】米国特許第02208352(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0072688(US,A1)
【文献】特開平06-173053(JP,A)
【文献】特開2010-236089(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106801232(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧電気分解器システム(23)であって、
酸素ガス出口(36a)、水素ガス出口(36b)、および電気分解器スタック(25)を水で満たすための水入口を備える電気分解器スタック(25)と、
水入口に一方向弁の機能性を与えるように構成された水入口弁(33)と、
圧力補償システム(1)であって、
第1の流体管部分(3a)および第2の流体管部分(3b)を有する流体管(3)、および
流体管(3)の中に配置されて第1の流体管部分(3a)と第2の流体管部分(3b)を分離する圧力補償器(11)
を備える圧力補償システム(1)と
を備え、
第1の流体管部分(3a)が、第1の流体流れ[O
2]のための第1の流体入口(5a)および第1の流体出口(7a)を有し、
第2の流体管部分(3b)が、第1の流体流れ[O
2]から分離した第2の流体流れ[H
2]のための第2の流体入口(5b)および第2の流体出口(7b)を有し、
第1の流体入口(5a)が酸素ガス出口(36a)に接続されており、第2の流体入口(5b)が水素ガス出口(36b)に接続されて
おり、
前記圧力補償器(11)が、第1の流体管部分(3a)と第2の流体管部分(3b)の間の圧力差に応答して第1の流体出口(7a)と第2の流体出口(7b)の間の流体管(3)の中を移動することによって、第1の流体出口(7a)および第2の流体出口(7b)のうちの1つを少なくとも部分的に遮って、第1の流体管部分(3a)と第2の流体管部分(3b)の間の圧力を補償するように構成され
ており、
流体管(3)に沿った第1の流体入口(5a)から第2の流体入口(5b)の方向において、第1の流体入口(5a)の後に第1の流体出口(7a)が配置され、第2の流体出口(7b)が続き、第2の流体入口(5b)が続く、高圧電気分解器システム(23)。
【請求項2】
圧力補償器(11)が非圧縮性流体を含
む、請求項1に記載の高圧電気分解器システム(23)。
【請求項3】
圧力補償器(11)が第1のプランジャ(11a)および第2のプランジャ(11b)を備え、第1のプランジャ(11a)と第2のプランジャ(11b)の間に非圧縮性流体が供給され、両プランジャが非圧縮性流体を間に密封するように働く、請求項2に記載の高圧電気分解器システム(23)。
【請求項4】
第1の流体管部分(3a)と第2の流体管部分(3b)が湾曲部(9)を介して接続されており、圧力補償器(11)が湾曲部(9)に位置する、請求項1から3のいずれか一項に記載の高圧電気分解器システム(23)。
【請求項5】
第1の流体管部分(3a)が、2元流体流れシステムの初期状態において第1の流体管部分(3a)から流体を放出するように構成された第1の放出弁(21a)を備え、第2の流体管部分(3b)が、2元流体流れシステムの初期状態において第2の流体管部分(3b)から流体を放出するように構成された第2の放出弁(21b)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の高圧電気分解器システム(23)。
【請求項6】
第1の放出弁(21a)およ
び第2の放出弁(21b)が外部制御によって制御されるように構成されている、請求項5に記載の高圧電気分解器システム(23)。
【請求項7】
第1の放出弁(21a)が第1の電磁弁であり、第2の放出
弁(21b)が第2の電磁弁である、請求項5または6に記載の高圧電気分解器システム(23)。
【請求項8】
第1の流体出口(7a)が、第1の流体流れ[O
2]の方向において、先細りになる断面を有する第1の横断面(13)と、第1の横断面(13)の下流の、増大する断面を有する第2の横断面(15)とを有し、第2の流体出口(7b)が、第2の流体流れ[H
2]の方向において、先細りになる断面を有する第3の横断面(17)と、第3の横断面(17)の下流の、増大する断面を有する第4の横断面(19)とを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の高圧電気分解器システム(23)。
【請求項9】
第1の横断面(13)および第2の横断面(15)が
、ノズルの喉部または胴部を有する中細ノズル構造を形成する、請求項8に記載の高圧電気分解器システム(23)。
【請求項10】
第3の横断面(17)および第4の横断面(19)が
、ノズルの喉部または胴部を有する中細ノズル構造を形成する、請求項8または9に記載の高圧電気分解器システム(23)。
【請求項11】
電気分解器スタック(25)が複数の電極プレート(27a、27b)を備え、各電極プレート(27a、27b)が、電極素子(46)を備える内側金属フレーム(43)と、内側金属フレーム(43)を保持する外側熱伝導ポリマーフレーム(45)とを有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の高圧電気分解器システム(23)。
【請求項12】
電気分解器スタック(25)が複数の電極プレート(27a、27b)
を備え、各電極プレート(27a、27b)が、外側フレーム(45)と、外側フレーム(
45)の対向面の間の空間(47)に延在する電極素子(46)とを備え、各電極プレート(27a、27b)が、外側フレーム(45)を通って延在する水素チャネル(53)および酸素チャネル(51)を有し、第1の出口チャネル(59)および第2の出口チャネルが、空間(47)と水素チャネル(53)および酸素チャネル(51)のうちの1つとを接続
し、それぞれの第1の出口チャネル(59)が、空間(47)から水素チャネル(53)または酸素チャネル(51)の方向において先細りになる形状を有し、それぞれの第2の出口チャネルが、水素チャネル(53)または酸素チャネル(51)から空間(47)の方向において先細りになる形状を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の高圧電気分解器システム(23)。
【請求項13】
第1のポンプおよび第2のポンプと、
第1のセンサおよび第2のセンサと、
第1のセンサおよび第2のセンサに接続されるように構成されたポンプ制御システムと
を備える高圧電気分解器システム(23)であって、
第1のセンサが、電気分解器スタック(25)の水位を検知するように構成されており、ポンプ制御システムが、水位に基づいて第1のポンプを活性化して、電気分解器スタック(25)
に水を注入するように構成されており、
第2のセンサが、電気分解器スタック(25)の温度を検知するように構成されており、ポンプ制御システムが、温度が閾値を超えると第2のポンプを活性化して、電気分解器スタック(25)から給水するように構成されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の高圧電気分解器システム(23)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電気分解に関し、詳細には高圧電気分解に関する。
【背景技術】
【0002】
水の電気分解は、水分子を分解して水素ガスおよび酸素ガスを形成するプロセスである。水に浸かった2つの電極の間に電流が流れると、このプロセスが生じる。
【0003】
ある特定の用途については、電気分解プロセスで生成した水素ガスおよび酸素ガスを圧縮するのが望ましいことがある。従来、このガス圧縮は、電気分解器システムからガスが放出されてから行われてきた。
【0004】
最近になって、電気分解中にガス圧縮を実行してしまうことが提案されている。高圧電気分解器システムの一例が、米国特許第20050072688 A1号に開示されている。このシステムは、電解槽に水をポンピングするためのポンプと、ポンプへの水の逆流を防止するための逆止弁と、電解槽を備える電気分解器スタックとを含む。このシステムは、アノード側とカソード側の間の約138バールの圧力差に耐えるように設計されている。その上に、このシステムは、水素流路における水素流量を制御することによって水素圧力を制御する圧力調整弁を備える。セパレータから貯蔵タンクへ水素が流れるように圧力調整弁を開く圧力差は、セパレータ、水素流路および電気分解器のカソード側における圧力が、所望の水素製造圧力に到達するように設定される。圧力調整弁が閉じた状態ではカソード流路が空になり、電気分解器のカソード側で水素が生成される。水素の生成が続くと、電気分解器のカソード側、水素流路およびセパレータにおける圧力が上昇し、十分な圧力差が生じて圧力調整弁が開き、セパレータ内の水素の一部が貯蔵タンクに移動することができる。
【発明の概要】
【0005】
米国特許第20050072688 A1号の設計は、アノード側とカソード側を、高い圧力差に耐えるように構築する必要がある。その上、この設計は、所望の水素製造圧力に到達するように、制御システムが圧力調整弁を制御することに頼るものである。
【0006】
上記に鑑みて、本開示の一般的な目的は、先行技術の問題を解決するかまたは少なくとも軽減する圧力補償システムを提供することである。
【0007】
そのため、本開示の第1の態様によれば、2元流体流れシステムのための圧力補償システムが提供され、この圧力補償システムは、第1の流体管部分および第2の流体管部分を有する流体管であって、第1の流体管部分が、第1の流体流れのための第1の流体入口および第1の流体出口を有し、第2の流体管部分が、第1の流体流れから分離した第2の流体流れのための第2の流体入口および第2の流体出口を有する、流体管と、流体管の中に配置されて第1の流体管部分と第2の流体管部分を分離する圧力補償器であって、第1の流体管部分と第2の流体管部分の間の圧力差に応答して第1の流体出口と第2の流体出口の間の流体管の中を移動することによって第1の流体出口および第2の流体出口のうちの1つを少なくとも部分的に遮って、第1の流体管部分と第2の流体管部分の間の圧力を補償するように構成された、圧力補償器とを備える。
【0008】
そのため、第1の流体管部分の内部と第2の流体管部分の内部の間の任意の圧力差は、圧力補償器によって等しくなり得る。この圧力補償は頑健であり、センサや外部コントローラなどの電子機器は不要である。流体パイプの中の圧力補償器が、圧力補償器の、第1の流体管部分に面する第1の側と第2の流体管部分に面する第2の側の圧力差に応じて変位することにより、第1の流体管部分の圧力と第2の流体管部分の圧力が、等しくなるかまたは本質的に等しくなり得る。そのため、この圧力補償は自動調整である。
【0009】
一実施形態によれば、流体パイプは、圧力補償器を収容する領域の内表面が、摩擦を低減するようにコーティングされている。摩擦低減コーティングは、たとえばポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoreten)(PTFE)を含み得、またはPTFEから成るものでもよい。PTFEは高温環境や腐食環境において使用され得る。そのため、圧力補償器と流体管の間の摩擦が低減されることにより、生じる熱も低減されることになる。
【0010】
一実施形態によれば、第1の流体管部分の内表面には摩擦低減コーティングが施されている。摩擦低減コーティングは、たとえばPTFEを含み得、またはPTFEから成るものでもよい。
【0011】
一実施形態によれば、第2の流体管部分の内表面には摩擦低減コーティングが施されている。摩擦低減コーティングは、たとえばPTFEを含み得、またはPTFEから成るものでもよい。
【0012】
第1の流体管部分は、第1の流体出口の上流に、第1の膜アセンブリを含む第1のガス濾過システムを備え得る。そのため、第1の膜アセンブリは、第1の流体流れが第1の膜アセンブリを通過してから第1の流体出口を通って流れるように配置されている。第1の膜アセンブリは、複数の膜(たとえば2つのニードルフェルトまたはクロス膜などの2つの支持膜)と、支持膜の間にはさまれたPTFE膜などの濾過膜とを備え得る。支持膜は、たとえばPTFEニードルフェルト膜でよい。濾過膜は、たとえばPTFE膜などの微多孔膜でよい。第1の膜アセンブリは、Oリングなどの密封部材を付加的に備え得る。第1の膜アセンブリの2つの面の各々に、第1の流体管部分に対して密封するためのそれぞれの密封部材が設けられてよい。濾過膜は、支持膜によって機械的強度を与えられ、そのため圧力に耐えることができる。支持膜には多数の細孔が設けられ、液体および気体を通すことができる。濾過膜は、第1の流体出口に乾燥ガスが供給されるように、ガスの流れは許容するが、任意の液体を遮る。その上、第1の膜アセンブリは、圧力補償システムを保護し、第1の流体出口を通してより多くのガスを逃がすことができ、したがって2元流体流れシステムのガス圧力を低下させる。加えて、ガスが純粋で湿気が少ないためにガスの密度が概算され得、したがって、設計段階において第1の流体出口の最小径を設計することができる。その上、第1の流体流れから湿気が除去されるので(since the since the)、圧力補償システムの機能性を低下させかねない、圧力補償システムの浸水を防ぐことが保証され得る。
【0013】
そのゆえに、一実施形態によれば、圧力補償システムは、湿気を濾過して第1の流体管部分の浸水を防止するように構成されたPTFE膜および微多孔濾過膜を含む第1の膜アセンブリを備える。
【0014】
第2の流体管部分は、第2の流体出口の上流に、第2の膜アセンブリを含む第2のガス濾過システムを備え得る。そのため、第2の膜アセンブリは、第2の流体流れが第2の膜アセンブリを通過してから第2の流体出口を通って流れるように配置されている。第2の膜アセンブリは、複数の膜(たとえば2つのニードルフェルトまたはクロス膜などの2つの支持膜)と、支持膜の間にはさまれたPTFE膜などの濾過膜とを備え得る。支持膜は、たとえばPTFEニードルフェルト膜でよい。濾過膜は、たとえばPTFE膜などの微多孔膜でよい。第2の膜アセンブリは、Oリングなどの密封部材を付加的に備え得る。第2の膜アセンブリの2つの面の各々に、第2の流体管部分に対して密封するためのそれぞれの密封部材が設けられてよい。濾過膜は、支持膜によって機械的強度を与えられ、そのため圧力に耐えることができる。支持膜には多数の細孔が設けられ、液体および気体を通すことができる。濾過膜は、第2の流体出口に乾燥ガスが供給されるように、ガスの流れは許容するが、任意の液体を遮る。電気分解器システムにおいて圧力補償システムを使用する場合、第2の膜アセンブリにより、水素乾燥器が不要になり得る。水素乾燥器は大きく、湿気を低減するために樹脂を含有している。その上、第2の膜アセンブリは、圧力補償システムを保護し、第2の流体出口を通してより多くのガスを逃がすことができ、したがって2元流体流れシステムのガス圧力を低下させる。加えて、ガスが純粋で湿気が少ないためにガスの密度が概算され得、したがって、設計段階において第2の流体出口の最小径を設計することができる。その上、第2の流体流れから湿気が除去されるので(since the since the)、圧力補償システムの機能性を低下させかねない、圧力補償システムの浸水を防ぐことが保証され得る。
【0015】
そのゆえに、一実施形態によれば、圧力補償システムは、湿気を濾過して第2の流体管部分の浸水を防止するように構成されたPTFE膜および微多孔濾過膜を含む第2の膜アセンブリを備える。
【0016】
一実施形態によれば、流体管に沿った第1の流体入口から第2の流体入口の方向において、第1の流体入口の後に第1の流体出口が配置され、第2の流体出口が続き、第2の流体入口が続く。
【0017】
一実施形態によれば、圧力補償器は非圧縮性流体を含む。したがって、流体管の中で、圧力補償器の両端が、第1の流体管部分と第2の流体管部分の間の何らかの圧力差に応答して変位することになる。
【0018】
一実施形態によれば、非圧縮性流体は液体である。
【0019】
一実施形態によれば、圧力補償器は第1のプランジャおよび第2のプランジャを備え、第1のプランジャと第2のプランジャの間に非圧縮性流体が供給され、両プランジャは非圧縮性流体を間に密封するように働く。
【0020】
一実施形態によれば、第1のプランジャの外表面には摩擦低減コーティングが施されている。摩擦低減コーティングは、たとえばPTFEを含み得、またはPTFEから成るものでもよい。それによって、第1のプランジャは、摩擦低減コーティングによって第1の管部分の内表面と接触することになる。
【0021】
一実施形態によれば、第2のプランジャの外表面には摩擦低減コーティングが施されている。摩擦低減コーティングは、たとえばPTFEを含み得、またはPTFEから成るものでもよい。それによって、第2のプランジャは、摩擦低減コーティングによって第2の管部分の内表面と接触することになる。
【0022】
第1のプランジャおよび第2のプランジャのうちの1つが圧力差によって静的位置から移動するとき、摩擦低減コーティングによって静止摩擦が特に低減され得る。それによって、圧力補償システムにおける圧力損失のリスクが低減され得る。
【0023】
一実施形態によれば、第1の流体管部分はステンレス鋼を含み得、またはステンレス鋼から成るものでもよい。この場合、第1の流体入口は酸素流れに対して有益に接続され得る。ステンレス鋼は酸素と反応しない。
【0024】
一実施形態によれば、第2の流体管部分はチタンを含み得、またはチタンから成るものでもよい。この場合、第2の流体入口は水素流れに対して有益に接続され得る。チタンは酸素と反応し得、したがって、好ましくは、第1の流体管部分の材料には使用されない。
【0025】
一実施形態によれば、第1の流体管部分と第2の流体管部分は、どちらも、たとえばステンレス鋼などの鋼で作製されてよい。
【0026】
一実施形態によれば、第1のプランジャは第1の流体入口と流体連通するように構成されており、第2のプランジャは第2の流体入口と流体連通するように構成されている。ここで、第1のプランジャの表面には第1の流体管部分の圧力がかかり、第2の流体管部分の表面には第2の流体管部分の圧力がかかる。
【0027】
一実施形態によれば、第1の流体管部分と第2の流体管部分は湾曲部を介して接続されており、圧力補償器は湾曲部に位置する。このように構成することにより、流体管の、たとえば第1の流体管部分と第2の流体管部分が平行に延在するU字型の設計が可能になる。それによって、第1の流体流れは、圧力補償器に向かって、湾曲することなくまっすぐに流れ得、第2の流体流れについても同様である。
【0028】
一実施形態によれば、第1の流体管部分は、2元流体流れシステムの初期状態において第1の流体管部分から流体を放出するように構成された第1の放出弁を備え、第2の流体管部分は、2元流体流れシステムの初期状態において第2の流体管部分から流体を放出するように構成された第2の放出弁を備える。
【0029】
このように、流体管の中に含有されている空気が排出され得る。加えて、電気分解器スタックを含む高圧電気分解器システムに圧力補償システムが含まれている場合には、水に浸かっていない電気分解器スタックの内部の空間内部の空気が排出され得る。流体管が空気抜きされたとき、第1の放出弁および第2の放出弁が閉じられてよい。たとえば、電気分解では、とりわけ水素および酸素を圧縮する高圧電気分解器システムでは、空気の存在下でこれらの成分を圧縮することには問題がある。
【0030】
第1の放出弁は、第1の流体出口に本質的に面して、第1の流体出口に面して、または第1の流体出口の上流に設けられてもよい。第2の放出弁は、第2の流体出口に本質的に面して、第2の流体出口に面して、または第2の流体出口の上流に設けられてもよい。これにより、空気が、第1の流体入口と第1の流体出口の間の区間全体の第1の流体管部分を通って、および第2の流体入口と第2の流体出口の間の区間全体の第2の流体管部分を通って排出され得ることが保証される。
【0031】
一実施形態によれば、第1の放出弁および(and of)第2の放出弁は外部制御によって制御されるように構成されている。それによって、第1の放出弁および第2の放出弁の開閉が、たとえば放出弁コントローラによって外部から制御され得る。
【0032】
一実施形態によれば、第1の放出弁は第1の電磁弁であり、第2の放出谷(discharge vale)は第2の電磁弁である。
【0033】
一実施形態によれば、第1の流体出口は、第1の流体流れ方向において、先細りになる断面を有する第1の横断面と、第1の横断面の下流の、増大する断面を有する第2の横断面とを有し、第2の流体出口は、第2の流体流れ方向において、先細りになる断面を有する第3の横断面と、第3の横断面の下流の、増大する断面を有する第4の横断面とを有する。このように構成すると、第1の流体流れや第2の流体流れが圧力補償システムから放出されるときの、熱の発生、乱流、および圧力降下が低減され得る。
【0034】
一実施形態によれば、第1の横断面および第2の横断面が、ミクロンの範囲の直径を有するノズルの喉部または胴部を有する中細ノズル構造を形成する。
【0035】
一実施形態によれば、第3の横断面および第4の横断面が、ミクロンの範囲の直径を有するノズルの喉部または胴部を有する中細ノズル構造を形成する。
【0036】
一実施形態によれば、第1の流体出口は、ステンレス鋼もしくは銅ベースの合金を含むか、またはステンレス鋼もしくは銅ベースの合金から成る。
【0037】
一実施形態によれば、第2の流体出口は、チタンもしくは銅ベースの合金を含むか、またはチタンもしくは銅ベースの合金から成る。
【0038】
本開示の第2の態様によれば、酸素ガス出口、水素ガス出口、および電気分解器スタックを水で満たすための水入口を備える電気分解器スタックと、水入口に一方向弁の機能性を与えるように構成された水入口弁と、第1の態様による圧力補償システムとを備える高圧電気分解器システムであって、第1の流体入口が酸素ガス出口に接続されており、第2の流体入口が水素ガス出口に接続されている、高圧電気分解器システムが提供される。
【0039】
高圧電気分解器システムは、電気分解が行われている間に、電気分解器スタック内の水圧によって、電気分解器スタックの水素ガスおよび酸素ガスを圧縮することができる。これによって、水素ガスおよび酸素ガスを圧縮するための外部圧縮が不要になる。さらに、電気分解に必要なエネルギー以外の追加のエネルギーを一切必要としない。したがって、ガスが低コストで圧縮され得る。
【0040】
加えて、電気分解中に水素ガスが酸素ガスよりも多く生成されるので、圧力補償システムは、電気分解器スタックの内部の圧力を等しくすることを保証する。第1の流体管部分と第2の流体管部分の圧力が等しくなければ、電気分解器スタックにおいて水素チャンバと酸素チャンバを分離する膜に、超過圧力がかかることになる。この超過圧力によって、水素チャンバと酸素チャンバにおいて、膜を通る交差汚染が生じる可能性がある。
【0041】
一実施形態によれば、電気分解器スタックは複数の電極プレートを備え、各電極プレートが、電極素子を備える内側金属フレームと、内側金属フレームを保持する外側熱伝導ポリマーフレームとを有する。それによって、電気分解器スタックは、各電極プレートが完全に金属で作製される場合と比較して、かなり軽量化され得る。
【0042】
一実施形態によれば、電気分解器スタックは、複数の電極プレートであって、各電極プレートは、外側フレームと、外側フレームの対向面の間の空間に延在する電極素子とを備え、各電極プレートは、外側フレームを通って延在する水素チャネルおよび酸素チャネルを有し、第1の出口チャネルおよび第2の出口チャネルは、空間と水素チャネルおよび酸素チャネルのうちの1つとを接続する、複数の電極プレートを備え、それぞれの第1の出口チャネルは、空間から水素チャネルまたは酸素チャネルの方向において先細りになる形状を有し、それぞれの第2の出口チャネルは、水素チャネルまたは酸素チャネルから空間の方向において先細りになる形状を有する。
【0043】
各電極プレートについて、第1の出口チャネルと第2の出口チャネルのどちらも、水素チャネルまたは酸素チャネルのいずれかに接続されている。
【0044】
電気分解器スタックにおいてカソードおよびアノードとして働く2つの隣接した電極プレートが電解槽を形成する。隣接した電極プレートは、それぞれカソードおよびアノードによって生成された水素ガスと酸素ガスを分離するために、膜によって分離され得る。
【0045】
電極プレートがアノードとして動作する場合には、第1の出口チャネルおよび第2の出口チャネルは酸素チャネルに接続される。電極素子と水素チャネルの間に流体接続はない。
【0046】
電極プレートがカソードとして動作する場合には、第1の出口チャネルおよび第2の出口チャネルは水素チャネルに接続される。電極素子と酸素チャネルの間に流体接続はない。
【0047】
各電極プレートが、高さ寸法、幅寸法、および深さすなわち厚さの寸法を有する。第1のチャネル出口および第2のチャネル出口は、深さすなわち厚さの方向において順々に配置されている。好ましくは、第1のチャネル出口は、酸素/水素ガスの流れ方向に関して、深さすなわち厚さの方向において第2のチャネル出口の上流に配置される。
【0048】
第1のチャネル出口の最小の断面積が、第2のチャネル出口の最小の断面積と異なってもよい。たとえば、第1のチャネル出口の最小の断面積が、第2のチャネル出口の最小の断面積よりも大きくてよい。
【0049】
電気分解によって電極プレートで生成されたガスは、大部分が第1の出口チャネルを通って流れ、第1の出口チャネルが開く/終結する水素チャネルまたは酸素チャネルに到達し、それによって、約35~40バールまでガスを圧縮する。水素チャネルまたは酸素チャネルにおけるいくらかのガスは、背圧のために、第2の出口チャネルを通って、電極素子が含有されている空間へ再び流れ込むことになる。このプロセスのサイクルがあって、ガスがさらに圧縮されることになる。その上、いくらかの水が水素チャネルまたは酸素チャネルの内部に入ると、空間の内部へ再び流れ込むことになる。
【0050】
高圧電気分解器システムはガス出口弁も備えてよく、これは、水素ガスおよび酸素ガスをさらに圧縮するために、電気分解器スタックから、ある特定の量の水素ガスおよび酸素ガスが流れることを可能にする逆止弁でよい。
【0051】
一実施形態は、第1のポンプおよび第2のポンプと、第1のセンサおよび第2のセンサと、第1のセンサおよび第2のセンサに接続されるように構成されたポンプ制御システムとを備え、第1のセンサは、電気分解器スタックの水位を検知するように構成されており、ポンプ制御システムは、水位に基づいて第1のポンプを活性化して、電気分解器スタックにより多くの水を注入するように構成されており、第2のセンサは、電気分解器スタック(25)の温度を検知するように構成されており、ポンプ制御システムは、温度が閾値を超えると第2のポンプを活性化して、電気分解器スタックから給水するように構成されている。
【0052】
一般に、特許請求の範囲で使用されるすべての用語は、本明細書で別様に明確に定義されない限り、当技術分野における通常の意味によって解釈されるべきである。「1つの(a)/1つの(an)/この(the)要素、装置、構成要素、手段、ステップなど」に対するすべての参照は、別様に明示されない限り、要素、装置、構成要素、手段、ステップなどの少なくとも1つの事例を制限なく参照するものと解釈されるべきである。本明細書で開示された任意の方法のステップは、明示されない限り、開示された正確な順番で実行する必要はない。
【0053】
次に、発明概念の例を、添付図面を参照しながら例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】圧力補償システムの一例の概略上面図である。
【
図2】高圧電気分解器システムの一例の概略図である。
【
図4a】
図3の電極プレートの第1の区分を示す図である。
【
図4b】
図3の電極プレートの、
図4aに示された区分に沿った第2の区分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
次に、本発明のある特定の実施形態を示す添付図面を参照しながら、本発明が以下でより十分に説明される。しかしながら、この発明は様々な形態で具現され得、本明細書に記載されている実施形態に限定されるものと解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、この開示が十分かつ完全になるように例として提供されるものであり、当業者に本発明の範囲を十分に伝えるものである。類似の番号は、説明の全体にわたって類似の要素を指す。
【0056】
図1は、2元流体流れシステムのための圧力補償システム1の一例を示すものである。以下では、高圧電気分解器システムによって2元流体流れシステムを例示する。なお、圧力補償システム1は、2つの流体流れの圧力が異なり得る任意の2元流体流れシステムとともに、2つの流体流れの間の圧力を等しくするために使用され得るものである。
【0057】
圧力補償システム1は流体管3を備える。流体管3は、第1の流体管部分3aおよび第2の流体管部分3bを有する。第1の流体管部分3aは、第1の流体流れのための第1の流体入口および第1の流体出口7aを有する。第2の流体管部分3bは、第2の流体流れのための第2の流体入口5bおよび第2の流体出口7bを有する。以下では、第1の流体流れは酸素ガス流れO2によって例示され、第2の流体流れは水素ガス流れH2によって例示される。
【0058】
流体管3に沿った第1の流体入口5aから第2の流体入口5bの方向において、第1の流体入口5aに第1の流体出口7aが続く。第1の流体出口7aに第2の流体出口7bが続く。第2の流体出口7bに第2の流体出口5b(second fluid outlet 5b)が続く。
【0059】
例示の流体管3は、第1の流体出口7aと第2の流体出口7bの間に湾曲部9を有する。本例によれば、流体管3は湾曲部9において180度曲がっている。そのため、第1の流体管部分3aと第2の流体管部分3bは平行に配置されている。
【0060】
圧力補償システム1は、圧力補償器11をさらに備える。圧力補償器11は流体管3に含有されている。圧力補償器11は湾曲部9の中に配置されてよい。圧力補償器11は、第1の流体管部分3aと第2の流体管部分3bを分割する。
【0061】
圧力補償器11は、第1のプランジャ11aと、第2のプランジャ11bと、第1のプランジャ11aと第2のプランジャ11bの間に配置された非圧縮性流体11cとを備える。そのため、第1のプランジャ11aが圧力補償器11の第1の終端を形成し、第2のプランジャ11bが圧力補償器11の第2の終端を形成する。第1のプランジャ11aおよび第2のプランジャは、間に非圧縮性流体11cを保つためのシールとして働く。
【0062】
非圧縮性流体11cは、好ましくは非圧縮性液体であり得る。
【0063】
第1の流体出口7aは、第1のノズルを形成するベンチュリ管状の区分を備える。これに関して、第1の流体出口7aは、第1の流体流れO2の方向において、先細りになる断面を有する第1の横断面13と、第1の横断面13の下流の、増大する断面を有する第2の横断面15とを有する。
【0064】
第2の流体出口7bは、第2のノズルを形成するベンチュリ管状の区分を備える。これに関して、第2の流体出口7bは、第2の流体流れH2の方向において、先細りになる断面を有する第3の横断面17と、第3の横断面17の下流の、増大する断面を有する第4の横断面19とを有する。
【0065】
そのため、第1の横断面13および第2の横断面15、ならびに第3の横断面17および第4の横断面19は、中細ノズルを形成する。これらのノズルは、所望の出力圧が得られるように特別に較正されてよい。たとえば、300バールの圧力で毎時1Nm3の水素ガス流れの出力が望まれる場合には、高圧電気分解器システムが毎時1Nm3の水素ガスを生成することができると想定すると、ノズルは、電気分解器スタックの圧力が300バールに達したとき1Nm3/hの水素ガスがノズルのみを通って逃げることができるように較正され得る。集中-分散型ノズルの口径、特に集中-分散型ノズル構造の最小の直径を有するノズルの喉区分または胴部は、酸素が水素よりも少なく、酸素と水素の分子量が異なるために、酸素ガスを放出する第1の流体出口7aに関して異なったものになる。第1の流体出口7aのノズルの喉区分または胴部は、第2の流体出口7bのノズルの喉区分または胴部よりも直径が小さい。直径がより小さければ、ある特定の圧力下で流体出口7a、7bを通って逃げるガスをより少なくすることができる。ある特定の圧力下で特定の量のガスを流すために必要な直径のサイズは、設計過程で計算され得る。このように、出力圧の能力は、中細ノズルを変化させることによって変化され得る。一例によれば、喉の直径は数ミクロンの範囲であり得る。そのような直径のサイズは、たとえばレーザ微細機械加工を使用して作製され得る。第1の横断面13の長さは、第2の横断面15の長さ以上であり得る。第3の横断面17の長さは、第4の横断面19の長さ以上であり得る。この目的のために、第1のノズルおよび第2のノズルの各々の集中部分は、対応する分散部分よりも長くてよい。集中部分の断面積は、より優れた圧縮、特定の圧力における毎時較正流量、乱流の低減、熱の低減、およびノズル寿命の向上を達成するように設計された喉の直径に達するまで、徐々に縮小されてよい。第1のノズルおよび第2のノズルの外表面は、熱の自然対流のための放熱板フィンを備えていてよい。
【0066】
例示の圧力補償システム1は、第1の放出弁21aおよび第2の放出弁21bをさらに備える。第1の放出弁21aは、第1の流体管部分3aから流体を放出するように構成されている。第2の放出弁21bは、第2の流体管部分3bから流体を放出するように構成されている。第1の放出弁21aはたとえば電磁弁でよい。第2の放出弁21bはたとえば電磁弁でよい。
【0067】
第1の放出弁21aは、たとえば第1の流体管部分3aの垂直方向の上部または頂部の領域に配置されてよい。それによって、空気が酸素ガスよりも軽いため、空気の排出が促進され得る。酸素ガス分子が第1の流体管部分3aの底部の方へ沈み得、空気が第1の放出弁21aへと上昇し得る。
【0068】
第2の放出弁21bは、たとえば第2の流体管部分3bの垂直方向の下部または底部の領域に配置されてよい。
【0069】
第1の放出弁21aおよび第2の放出弁21bは、圧力補償システムの初期状態において、流体管3に含有されている酸素ガスや水素ガス以外の任意のガスを、それぞれ第1の流体管部分3aおよび第2の流体管部分3bから放出するために開くように制御されるように構成されてよい。流体管3がそのようなガスから排出された(the fluid pipe 3 has been evacuated from such gas)とき、第1の放出弁21aおよび第2の放出弁21bが閉じられてよい。
【0070】
したがって、動作において、最初に第1の放出弁21aおよび第2の放出弁21bが開かれて、流体管3の中に存在する酸素ガスおよび水素ガス以外の任意のガスを排出する。ガスが排出されると、放出弁21aと21bが閉じられる。電気分解器とともに圧力補償システム1が使用される平坦なところで(In the even that)、第1の流体管部分3aには酸素ガスO2が流れ込み、第2の流体管部分3bには水素ガスH2が流れ込む。結局、電気分解では酸素ガスと水素ガスの生成が非対称であるため、第1の流体管部分3aの圧力と比較して第2の流体管部分3bの圧力が上昇する。この圧力差により、第2のプランジャ11b上のガス圧力のために、圧力補償器11が第1の流体出口7aに向かって流体管3の中に移動する。圧力補償器11が変位することにより、第1のプランジャ11aが第1の流体出口7aを部分的に遮り、または第1の流体出口7aを遮り、第1の流体出口7aを通して酸素ガスO2を逃がすための有効な断面を縮小する。このように、第1の流体管部分3aにおける圧力が上昇して、第1の流体管部分3aと第2の流体管部分3bにおける圧力が均等化される。電気分解中に、圧力補償器11は、第1の流体管部分3aと第2の流体管部分3bの現在の圧力差に基づいていずれかの方向に変位されることになる。そのため、圧力補償器11は、流体管3の中の圧力で生成された変位による自動調整によって圧力の均等化をもたらす。
【0071】
第1の流体出口7aおよび第2の流体出口7bにおけるベンチュリ管状の設計のために、第1の流体および第2の流体が圧力補償システム1を出るときの、熱の発生、乱流、および圧力降下が低減される。
【0072】
図2は、高圧電気分解器システム23の一例を示すものである。高圧電気分解器システム23は、電気分解器スタック25および圧力補償システム1を備える。電気分解器スタック25は、複数の電極プレート27aと27bを含む。電極プレート27aと27bが、積層構成で交互に配置されている。隣接した電極プレートのそれぞれの対が電解槽を形成する。それぞれの電極プレート27aと27bがカソードとしてまたはアノードとして動作し、各電解槽がカソードおよびアノードを有する。それぞれの電極プレート27aと27bが、内側フレームおよび外側フレームを備えるフレーム構造を有し、それによって内側フレームの内部に空間が形成される。電極プレート27aと27bが積層されるとき、隣接した空間が、水で満たされるように構成された電気分解チャンバを形成する。
【0073】
電気分解器スタック25は複数の膜をさらに備える。隣接した電極プレート27aと27bのそれぞれの対は、各カソードが水素チャンバを形成して各アノードが酸素チャンバを形成するように、膜によって分離される。酸素チャンバと水素チャンバが、一緒に電気分解チャンバを形成する。膜は、電気分解チャンバにおいて水素ガスや酸素ガスが電極プレート27aと27bの間で移動するのを防止するように構成されている。
【0074】
電気分解器スタック25は、電気分解器スタック25の第1の終端を形成する第1のエンドプレート29a、および電気分解器スタック25の第2の終端を形成する第2のエンドプレート29bを備える。第1のエンドプレート29aと第2のエンドプレート29bの間に、電極プレート27aと27bが配置されている。
【0075】
第1のエンドプレート29aは、電気分解チャンバへの水の流入を可能にするように構成された2つの水入口31を備える。高圧電気分解器システム23は、それぞれの水入口31に逆止弁の機能性を与えるように構成された、各水入口31につき1つの水入口弁33が2つと、ポンプPと、ポンプコントローラ35と、をさらに備える。
【0076】
ポンプPは、水入口31を通して電気分解器スタック25に給水するように構成されている。ポンプコントローラ35はポンプPを制御するように構成されている。たとえば、ポンプコントローラ35は、毎時1回など、時々ポンプPのみを動作させるように構成され得る。そのため、ポンプコントローラ35はタイマ機能を使用し得る。したがって、ポンプPによって電気分解器スタック25の水位を一杯まで上げてよく、そのため、電気分解器スタック25を、たとえば毎時1回、満水状態にしてよい。あるいは、ポンプコントローラ35によってポンプPを動作させるために他の時間フレームが使用されてもよい。ポンプPをたまにしか動作させなければ、高圧電気分解器システム23を動作させながらエネルギーが節約され得る。あるいは、高圧電気分解器システムは、電気分解器スタックの水位を検知するための1つまたは複数のセンサを含み得、ポンプコントローラ35は、1つまたは複数のセンサによって検知された水位に基づいてポンプを制御するように構成され得る。さらにもう1つの代替形態として、ポンプPを常に運転してもよい。
【0077】
一例によれば、高圧電気分解器システム23は2つのポンプおよび2つのセンサを備え得る。2つのポンプのうち第1のポンプは高圧ポンプでよく、2つのポンプのうち第2のポンプは低圧ポンプでよい。第1のセンサは、電気分解器スタック25における水位を検知し、水位に基づいてポンプコントローラ35に第1のポンプを活性化させて電気分解器スタックにより多くの水を注入させるように構成されてよい。第2のセンサは、電気分解器スタック25の内部の温度を検知し、温度に基づいて、ポンプコントローラ35あるいは第2のポンプを制御するように構成された別のポンプコントローラに、第2のポンプを活性化させるように構成されてよい。ポンプコントローラ35または他のポンプコントローラは、温度がたとえば35度または40度などの閾値に到達した場合にはたとえば第2のポンプを活性化するように構成されてよい。高圧電気分解器システムは、一般に、第1のポンプおよび第2のポンプを制御するように構成されたポンプ制御システムを備え得る。ポンプ制御システムが備え得るポンプコントローラ35は、第1のポンプを制御するように構成されてよく、一例によれば第2のポンプも制御するように構成されてよい。ポンプ制御システムは、一例によれば、第2のポンプを制御するように構成された専用のコントローラを備えてよい。この場合、ポンプ制御システムは、それぞれが第1のポンプおよび第2のポンプのうち片方を制御するように構成された2つのポンプコントローラを備えることになる。動作するとき、第2のポンプは、電気分解器スタックから給水する。そのため、第2のポンプは冷却ポンプとして機能し、材料の過熱または自己発火を防止するために、高圧電気分解器システム23を同一の温度に保つことを可能にする。
【0078】
電気分解器スタック25は、圧力補償システム1の第1の流体入口5aに接続された酸素ガス出口36aと、圧力補償システム1の第2の流体入口5bに接続された水素ガス出口36bをさらに備える。
【0079】
高圧電気分解器システム23は、逆止弁であり得るガス出口弁37をさらに備え得る。ガス出口弁37は、水素ガスおよび酸素ガスのある特定の制限されたガス流れが、電気分解器スタック25から酸素ガス出口36aおよび水素ガス出口36bを通って圧力補償システム1へと流れることを可能にするように構成されてよい。
【0080】
圧力補償システム1の第1の流体出口7aは、圧縮した酸素ガスを貯蔵するための酸素ガス圧力容器39に接続されてよく、第2の流体出口7bは、圧縮した水素ガスを貯蔵するための水素ガス圧力容器41に接続されてよい。
【0081】
図3は、電極プレート27aまたは27bの一例を表す。例示の電極プレートは内側フレーム43および外側フレーム45を有する。内側フレーム43は、好ましくは優れた導電性を有する金属(たとえば銅、アルミニウム)で作製されている。そのため、内側フレーム43は内側金属フレームでよい。外側フレーム45は熱伝導ポリマーで作製されてよい。そのため、外側フレーム45は、外側熱伝導ポリマーフレームでよい。外側フレーム45が内側フレーム43を保持する。外側フレーム45は、たとえば射出成形によって作製されてよい。この目的のために、製造中に、注入型の内部に内側フレームが設置されてよく、外側フレーム45を形成するために、フレームの中に熱伝導ポリマーが注入される。
【0082】
電極プレート27a、27bは、内側フレーム43の対向面の間に延在し、それゆえ外側フレーム45の対向面の間にも延在する電極素子46をさらに備える。内側フレーム43は、電極素子46が延在する領域における空間47の境界を定める。この空間47は、電極プレートがアノードとして動作する場合には酸素チャンバであり、電極プレートがカソードとして動作する場合には水素チャンバである。電極プレート27a、27bが有する端子49は、内側フレーム43を介して電極素子46に接続され、電源に接続されるように構成されている。
【0083】
外側フレーム45は酸素チャネル51および水素チャネル53を備える。これら2つのチャネル51と53のうちの1つだけが空間47と流体連通するように構成されている。電極プレートがアノードとして動作する場合には酸素チャネル51のみが空間47と流体連通し、電極プレートがカソードとして動作する場合には水素チャネル53のみが空間47と流体連通する。電極プレート27aと27bは、間の空間47を覆う膜を伴って交互に積層されるので、1つおきの電極プレートすなわちすべてのアノードが酸素チャネル51における酸素ガス流に寄与し、1つおきの電極プレートすなわちすべてのカソードが水素チャネル53における水素ガス流れに寄与する。
【0084】
電気分解器スタック25が膜に加えて備え得る複数の電気絶縁性ガスケットは、それぞれが電極プレート27aと27bの間を電気的に絶縁し、かつ密封するように、2つの隣接した電極プレート27aと27bの間にはさまれている。
【0085】
各電極プレート27a、27bは、2つの水チャネル55と57も備え得る。2つの水チャネルのうち第1の水チャネル55が水入口31の一方に接続されてよく、2つの水チャネルのうち第2の水チャネル57が水入口31の他方に接続されてよい。アノードとして働く電極プレート27aについては、第1の水チャネル55が、第1の水チャネル55から空間47まで延在するチャネルによって空間47と流体連通しているが、第2の水チャネル57は流体連通していない。カソードとして働く電極プラテン(platen)27bについては、第2の水チャネル57が、第2の水チャネル57から空間47まで延在するチャネルによって空間47と流体連通しているが、第1の水チャネル55は流体連通していない。これは、アノードが独自の給水設備を有し、カソードが独自の給水設備を有することを意味する。これによって、酸素チャンバと水素チャンバの間の交差汚染のリスクが低減される。
【0086】
第1の水チャネル55は、中央のチャネル部分と、中央のチャネル部分よりも狭い、相対して配置された2つの側方のフィン55aとを有する。第2の水チャネル57は、中央のチャネル部分と、中央のチャネル部分よりも狭い、相対して配置された2つの側方のフィン57aとを有する。これにより、第1の水チャネル55と第2の水チャネル57が電気分解器スタック25に沿って延在するとき、両者の長さに沿って水圧が同一または本質的に同一になり得るという効果がある。酸素チャネル51および水素チャネル53は、一変形形態によれば、この構成も有し得る。
【0087】
図4aは、アノードとして働く電極プレート27aを通る区分の詳細を示すものである。内側フレーム43および外側フレーム45は、空間47から酸素チャネル51まで延在する第1の出口チャネル59を備える。第1の出口チャネル59はベンチュリ管状の設計を有し、空間47から酸素チャネル51の方向において先細りになっている。この電極プレート27aの水素チャネル53には、空間47に対する開口がない。
【0088】
カソードとして働く電極プレート27bに関して、内側フレーム43および外側フレーム45は、空間47から水素チャネル53まで延在する第1の出口チャネルを備える。第1の出口チャネルはベンチュリ管状の設計を有し、空間47から水素チャネル53の方向において先細りになっている。この電極プレート27bの酸素チャネル51には、空間47に対する開口がない。
【0089】
図4bは、電極プレート27aを通り
図4aに示された区分と平行であるが電極プレート27aの厚さ方向においてさらに下流の区分の詳細を示すものである。内側フレーム43および外側フレーム45は、空間47から酸素チャネル51まで延在する第2の出口チャネル61を備える。第2の出口チャネル61はベンチュリ管状の設計を有し、酸素チャネル51から空間47の方向において先細りになっている。
【0090】
カソードとして働く電極プレート27bに関して、内側フレーム43および外側フレーム45は、空間47から水素チャネル53まで延在する第2の出口チャネルを備える。第1の出口チャネルはベンチュリ管状の設計を有し、水素チャネル53から空間47の方向において先細りになっている。
【0091】
本発明が、主にいくつかの実施形態を参照しながら上記で説明されている。しかしながら、当業者には容易に諒解されるように、上記で開示されたもの以外の実施形態が、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲内で同様に可能である。