(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/08 20060101AFI20230904BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20230904BHJP
B60C 3/04 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
B60C9/08 Z
B60C9/22 G
B60C3/04 Z
(21)【出願番号】P 2020559305
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2019048647
(87)【国際公開番号】W WO2020122165
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2018233853
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】今 誓志
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雅之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩平
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/017556(WO,A1)
【文献】特開2017-206209(JP,A)
【文献】国際公開第2018/207617(WO,A1)
【文献】特開2011-126444(JP,A)
【文献】特開2008-126952(JP,A)
【文献】特開2002-178720(JP,A)
【文献】特開2017-197153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 3/00-3/08、9/00-9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ幅方向に沿って配置されたカーカスコードをゴム材料によって被覆したカーカストリートを用いて形成された円環状のカーカスと、
前記カーカスのタイヤ径方向外側に設けられ、樹脂材料によって被覆された樹脂被覆コードをタイヤ周方向に沿って配置することによって形成されたベルト層と
を備え、
前記カーカストリートのタイヤ幅方向に沿ったトリート強力は、10kN/25mm以上であり
、
タイヤの外径をOD、
前記タイヤに組み付けられるリムホイールのリム幅をRW、
前記タイヤのタイヤ幅をSW、
前記リムホイールのリム径をRDとした場合、
前記ODは、350mm以上、600mm以下であり、
0.78≦RW/SW≦0.99、及び
0.56≦RD/OD≦0.75
の関係を満たすタイヤ。
【請求項2】
前記カーカスコードは、芳香族ポリアミド繊維、炭素繊維またはスチールの何れかによって形成される請求項1に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂被覆コードを用いて形成されたベルト層を備えるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂材料によって被覆された樹脂被覆コードをタイヤ周方向に沿って巻き回すことによって形成されたベルト層を備える空気入りタイヤ(以下、タイヤと適宜省略する)が知られている(特許文献1参照)。このようなベルト層は、伝統的な二層の交錯ベルト層の代用となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
タイヤが路面の尖った突起などを乗り越える場合、ベルト層には、タイヤ幅方向に引っ張られる力が作用する。
【0005】
交錯ベルト層の場合、互いに交錯するベルトコードが、主にこのような入力を負担する。一方、上述したような樹脂被覆コードを用いて形成されたベルト層の場合、樹脂被覆コードがタイヤ周方向に沿って配置されているため、このような入力の負担には殆ど貢献しない。従って、被覆樹脂がこのような入力を負担することとなる。
【0006】
しかしながら、被覆樹脂自体の剛性を上げる、或いは被覆樹脂を厚くすることによって、このような入力を負担しようとすると、繰り返し変形による疲労など、ベルト層の耐久性が確保できなくなる問題がある。
【0007】
特に、近年、都市内での人や物などの輸送に主眼を置いた新たな小型シャトルバスが提案されている。このような小型シャトルバスは、全長5メートル、全幅2メートル程度であり、車両総重量も3トンを超える場合も想定されている。このような小型シャトルバスに装着されるタイヤには、高い耐荷重能力が求められる。
【0008】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、樹脂材料によって被覆された樹脂被覆コードをタイヤ周方向に沿って配置することによって形成されたベルト層を備える場合において、ベルト層の耐久性と高い耐荷重能力とを両立し得るタイヤの提供を目的とする。
【0009】
本発明の一態様は、タイヤ(空気入りタイヤ10)であって、タイヤ幅方向に沿って配置されたカーカスコード(カーカスコード40a)をゴム材料によって被覆したカーカストリート(カーカストリート40T)を用いて形成された円環状のカーカス(カーカス40)と、前記カーカスのタイヤ径方向外側に設けられ、樹脂材料によって被覆された樹脂被覆コード(樹脂被覆コード50a)をタイヤ周方向に沿って配置することによって形成されたベルト層(ベルト層50)とを備え、前記カーカストリートのタイヤ幅方向に沿ったトリート強力は、10kN/25mm以上である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、空気入りタイヤ10が装着される車両1の全体概略側面図である。
【
図2】
図2は、空気入りタイヤ10及びリムホイール100の断面図である。
【
図3】
図3は、空気入りタイヤ10の単体断面図である。
【
図4】
図4は、カーカス40を構成するカーカストリート40Tの一部斜視図である。
【
図5】
図5は、タイヤ形状(タイヤ外径OD及びタイヤ幅SW)と、リムホイール形状(リム径RD及びリム幅RW)との組合せに基づく典型的なタイヤサイズのポジショニングを示す図である。
【
図6】
図6は、カーカスコード40aの断面形状を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0012】
(1)空気入りタイヤが装着される車両の概略構成
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ10が装着される車両1の全体概略側面図である。
図1に示すように、本実施形態では、車両1は、4輪自動車である。なお、車両1は、4輪に限定されず、6輪構成或いは8輪構成などであってもよい。
【0013】
車両1は、車輪構成に応じて、所定数の空気入りタイヤ10が装着される。具体的には、車両1には、リムホイール100に組み付けられた空気入りタイヤ10が所定位置に装着される。
【0014】
車両1は、都市内での人や物などの輸送に主眼を置いた新たな小型シャトルバスに属する。本実施形態では、新たな小型シャトルバスとは、全長が4m~7m、全幅2m程度であり、車両総重量が3t前後である車両を想定する。但し、サイズ及び車両総重量は、必ずしも当該範囲に限定されず、多少であれば、当該範囲から外れても構わない。
【0015】
また、小型シャトルバスは、必ずしも人の輸送に限らず、物の輸送、移動店舗、移動オフィスなどとして用いられてもよい。
【0016】
さらに、小型シャトルバスは、都市内での人や物などの輸送に主眼が置かれているため、比較的低い走行速度レンジ(最高速度70km/h以下、平均速度50km/h程度)を想定する。このため、ハイドロプレーニング対策は重視されなくても構わない。
【0017】
本実施形態では、車両1は、自動運転機能(レベル4以上を想定)を備えた電気自動車であることを前提とするが、自動運転機能は必須ではなく、また、電気自動車でなくても構わない。
【0018】
車両1が電気自動車である場合、インホイールモーター(不図示)をパワーユニットとして用いられることが好ましい。インホイールモーターは、ユニット全体がリムホイール100の内側空間に設けられてもよいし、ユニットの一部がリムホイール100の内側空間に設けられてもよい。
【0019】
また、インホイールモーターを用いる場合、車両1は、各車輪が独立して操舵が可能な独立操舵機能を備えることが好ましい。これにより、その場での転回、及び横方向への移動が可能となるとともに、動力伝達機構が不要となるため、車両1のスペース効率を向上し得る。
【0020】
このように、車両1では、高いスペース効率が要求される。このため、空気入りタイヤ10は、極力小径であることが好ましい。
【0021】
一方、車両サイズ及び用途に応じた相応の車両総重量となる車両1に装着されるため、高い耐荷重能力(最大負荷能力)が要求される。
【0022】
空気入りタイヤ10は、このような要件を満たすべく、タイヤ外径OD(
図1において不図示、
図2参照)を小さくしつつ、車両1の車両総重量に対応した耐荷重能力を有する。
【0023】
また、車両1がインホイールモーター及び独立操舵機能を備える場合、応答性向上の観点からは空気入りタイヤ10の偏平率は低いことが好ましく、インホイールモーターなどの収容スペースを考慮すると、空気入りタイヤ10のリム径RD(
図1において不図示、
図2参照)は、大きいことが好ましい。
【0024】
(2)空気入りタイヤの構成
図2は、空気入りタイヤ10及びリムホイール100の断面図である。具体的には、
図2は、リムホイール100に組み付けられた空気入りタイヤ10のタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面図である。なお、
図2では、断面のハッチング表示は、省略されている(
図3以降も同様)。
【0025】
空気入りタイヤ10は、比較的小径である一方、幅広である。具体的には、リムホイール100の径であるリム径RDは、12インチ以上、17.5インチ以下であることが好ましい。但し、リム径RDは、他の数値範囲を満たすのであれば、10インチ以上、22インチ以下であってもよい。
【0026】
図2に示すように、リム径RDは、リムホイール100のリム本体部分の外径であり、リムフランジ110の部分は含まない。
【0027】
また、空気入りタイヤ10のタイヤ幅SWは、125mm以上、255mm以下であることが好ましい。
図2に示すように、タイヤ幅SWは、空気入りタイヤ10の断面幅を意味し、空気入りタイヤ10がリムガード(不図示)を備える場合、リムガード部分は含まれない。
【0028】
さらに、空気入りタイヤ10の偏平率は、35%以上、75%以下であることが好ましい。なお、偏平率は、式1を用いて算出される。
【0029】
偏平率(%)=タイヤ断面高さH/タイヤ幅SW(断面幅)×100 …(式1)
空気入りタイヤ10の外径であるタイヤ外径ODは、350mm以上、600mm以下である。なお、タイヤ外径ODは、500mm以下であることが好ましい。
【0030】
タイヤ外径ODがこのようなサイズであって、空気入りタイヤ10に組み付けられるリムホイール100のリム幅をリム幅RWとした場合、空気入りタイヤ10は、(式2)及び(式3)の関係を満たす。
【0031】
0.78≦RW/SW≦0.99 …(式2)
0.56≦RD/OD≦0.75 …(式3)
なお、空気入りタイヤ10は、0.78≦RW/SW≦0.98を満たすことが好ましく、0.78≦RW/SW≦0.95を満たすことがより好ましい。また、空気入りタイヤ10は、0.56≦RD/OD≦0.72を満たすことが好ましく、0.56≦RD/OD≦0.71を満たすことがより好ましい。
【0032】
このような関係を満たす空気入りタイヤ10は、小径でありながら、車両1の車両総重量を支持するために必要なエアボリュームを確保し得る。具体的には、エアボリュームは、荷重支持性能を考慮すると20,000cm3以上必要である。また、省スペース化を考慮すると80,000cm3以下であることが必要である。
【0033】
なお、上述の関係を満たすのであれば、リム幅RWは、特に限定されないが、エアボリュームを確保する観点からは、なるべく広いことが好ましい。例えば、リム幅は、3.8~7.8Jとすることができる。
【0034】
また、同じくエアボリュームを確保する観点からは、タイヤ外径ODに対するリム径RDの比率が小さい、つまり、偏平率が高いことが好ましい。但し、上述したように、応答性の観点からは偏平率が低いことが好ましく、また、インホイールモーターなどの収容スペースを考慮すると、リム径RDは大きいことが好ましいため、偏平率及びリム径RDは、エアボリュームと、応答性及びインホイールモーターなどの収容スペースとにおいてトレードオフの関係となる。
【0035】
空気入りタイヤ10としての好適なサイズの一例としては、205/40R15が挙げられる。また適合リム幅は、7.5J程度である。なお、好適なサイズの他の例としては、215/45R12が挙げられる。この場合、適合リム幅は、7.0J程度である。
【0036】
さらに、特に限定されないが、空気入りタイヤ10の設定内圧(正規内圧)は、400~1,100kPa、現実的には、500~900kPaを想定する。なお、正規内圧とは、例えば、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のYearBookにおける最大負荷能力に対応する空気圧であり、欧州ではETRTO、米国ではTRA、その他各国のタイヤ規格が対応する。
【0037】
また、空気入りタイヤ10が負担する荷重は、500~1,500kgf、現実的には、900kgf程度を想定する。
【0038】
図3は、空気入りタイヤ10の単体断面図である。具体的には、
図3は、空気入りタイヤ10のタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面図である。
【0039】
図3に示すように、空気入りタイヤ10は、トレッド20、タイヤサイド部30、カーカス40、ベルト層50及びビード部60を備える。
【0040】
トレッド20は、路面と接する部分である。トレッド20には、空気入りタイヤ10の使用環境や装着される車両の種別に応じたパターン(不図示)が形成される。
【0041】
タイヤサイド部30は、トレッド20に連なり、トレッド20のタイヤ径方向内側に位置する。タイヤサイド部30は、トレッド20のタイヤ幅方向外側端からビード部60の上端までの領域である。タイヤサイド部30は、サイドウォールなどと呼ばれることもある。
【0042】
カーカス40は、空気入りタイヤ10の骨格を形成する。カーカス40は、タイヤ径方向に沿って放射状に配置されたカーカスコード40a(
図3において不図示、
図4参照)がゴム材料によって被覆されたラジアル構造である。但し、ラジアル構造に限定されず、カーカスコード40aがタイヤ径方向に交錯するように配置されたバイアス構造でも構わない。
【0043】
ベルト層50は、トレッド20のタイヤ径方向内側に設けられる。ベルト層50は、カーカス40のタイヤ径方向外側に設けられる。ベルト層50は、樹脂材料によって被覆された樹脂被覆コード50aをタイヤ周方向に沿って巻き回すことによって形成される。
【0044】
つまり、ベルト層50は、樹脂材料によって被覆された樹脂被覆コード50aをタイヤ周方向に沿って巻き回すことによって形成された単層のスパイラルベルトである。なお、スパイラルベルトの具体的な構成は、例えば、特開2018-65426号公報に記載されている。
【0045】
当該樹脂材料には、タイヤサイド部30を構成するゴム材料、及びトレッド20を構成するゴム材料よりも引張弾性率の高い樹脂材料が用いられる。当該樹脂材料としては、弾性を有する熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)、及び熱硬化性樹脂等を用いることができる。走行時の弾性と製造時の成形性を考慮すると、熱可塑性エラストマーを用いることが望ましい。
【0046】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)などが挙げられる。
【0047】
また、熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。さらに、熱可塑性樹脂材料としては、例えば、ISO75-2またはASTM D648に規定されている荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)が78°C以上、JIS K7113に規定される引張降伏強さが10MPa以上、同じくJIS K7113に規定される引張破壊伸びが50%以上、JIS K7206に規定されるビカット軟化温度(A法)が130°C以上であるものを用いることができる。
【0048】
また、樹脂被覆コード50aのコード自体は、芳香族ポリアミド繊維、炭素繊維またはスチールの何れかによって形成されることが好ましい。
【0049】
ビード部60は、タイヤサイド部30に連なり、タイヤサイド部30のタイヤ径方向内側に位置する。ビード部60は、タイヤ周方向に延びる円環状であり、ビード部60を介してカーカス40がタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返されている。
【0050】
なお、ビード部60には、ビードコアのタイヤ径方向外側にビードフィラーが設けられてもよいし、ビード部60で折り返されているカーカス40などがリムホイール100と擦れて摩耗することを防止するチェーファーが設けられてもよい。
【0051】
(3)カーカス40の構成
次に、カーカス40の構成について説明する。
図4は、カーカス40を構成するカーカストリート40Tの一部斜視図である。
【0052】
図4に示すように、カーカストリート40Tは、タイヤ幅方向に沿って配置されたカーカスコード40aをゴム材料の被覆ゴム40bによって被覆した部材である。カーカストリート40Tを用いて円環状のカーカス40が形成される。
【0053】
カーカストリート40Tのタイヤ幅方向に沿ったトリート強力は、10kN/25mm以上(図中の所定幅W)である。
【0054】
カーカスコード40aは、芳香族ポリアミド繊維、炭素繊維またはスチールの何れかによって形成されることが好ましい。具体例としては、アラミドまたはカーボンファイバーを用いることができる。
【0055】
なお、必要とされるカーカストリート40Tの強力(材料物性及びコード構造など)によって、カーカスコード40aの打ち込み本数(隣接するカーカスコード40aの間隔)を調整すればよい。
【0056】
(4)作用・効果
次に、上述した空気入りタイヤ10の作用・効果について説明する。
図5は、タイヤ形状(タイヤ外径OD及びタイヤ幅SW)と、リムホイール形状(リム径RD及びリム幅RW)との組合せに基づく典型的なタイヤサイズのポジショニングを示す図である。
【0057】
具体的には、
図5に示すグラフの横軸は、リム幅RWとタイヤ幅SWとの比率(RW/SW)を示し、縦軸は、リム径RDとタイヤ外径ODとの比率(RD/OD)を示す。
図5では、RW/SW及びRD/ODの値に従って、典型的なタイヤサイズのポジションがプロットされている。
【0058】
図5に示すように、トラック・バス用タイヤの領域は、RW/SW及びRD/OD共に低い。乗用車または小型トラック用タイヤの領域は、RW/SW及びRD/OD共に、トラック・バス用タイヤよりも高い。
【0059】
上述した空気入りタイヤ10としての好適なサイズの一例である215/45R12は、領域A1に含まれる。領域A1は、上述したように、0.78≦RW/SW≦0.99であり、0.56≦RD/OD≦0.75の範囲である。このような領域A1は、上述した車両1のように、都市内での人や物などの輸送に主眼を置いた新小型シャトルバス用タイヤの領域と位置付けられる。
【0060】
新小型シャトルバス用タイヤの領域のRD/ODは、乗用車または小型トラック用タイヤの領域のRD/ODと大きく変わらず、一部は重複している。一方、新小型シャトルバス用タイヤの領域のRW/SWは、乗用車または小型トラック用タイヤの領域のRW/SWよりも高い。
【0061】
上述したように、空気入りタイヤ10のタイヤ外径ODは、350mm以上、600mm以下である。このため、車両1のサイズと比較して十分に小径であり、車両1の省スペース化に貢献し得る。
【0062】
また、領域A1に含まれるサイズの空気入りタイヤ10によれば、0.78≦RW/SW≦0.99の関係を満たすため、タイヤ幅SWに対するリム幅RWが広く、つまり、幅広のタイヤを構成でき、高い耐荷重能力を発揮するために必要なエアボリュームを確保し易い。なお、リム幅RWが広くなり過ぎると、タイヤ幅SWも広がりスペース効率が低下するとともに、ビード部60がリムホイール100から外れやすくなる。
【0063】
さらに、領域A1に含まれるサイズの空気入りタイヤ10によれば、0.56≦RD/OD≦0.75の関係を満たすため、タイヤ外径ODに対するリム径RDが大きく、インホイールモーターなどの収容スペースを確保し易い。なお、リム径RDが小さくなり過ぎると、ディスクブレーキまたはドラムブレーキの径サイズが小さくなる。このため、有効なブレーキの接触面積が小さくなり、必要な制動性能の確保が難しくなる。
【0064】
すなわち、空気入りタイヤ10によれば、新たな小型シャトルバスなどに装着される場合において、さらに高い耐荷重能力を有しつつ、高いスペース効率を達成し得る。
【0065】
空気入りタイヤ10のリム径RDは、12インチ以上、17.5インチ以下であることが好ましい。これにより、小径を維持しつつ、必要十分なエアボリューム及びインホイールモーターなどの収容スペースを確保し得る。また、制動性能及び駆動性能も確保できる。
【0066】
また、空気入りタイヤ10のタイヤ幅SWは、125mm以上、255mm以下であることが好ましい。さらに、空気入りタイヤ10の偏平率は、35%以上、75%以下であることが好ましい。これにより、必要十分なエアボリューム及びインホイールモーターなどの収容スペースを確保し得る。
【0067】
さらに、本実施形態では、上述したように、空気入りタイヤ10は、樹脂被覆コード50aをタイヤ周方向に沿って巻き回すことによって形成されたベルト層50を備える。このようなベルト層50は、一般的な交錯ベルト層と比較して、特にトレッド20のショルダー部分の剛性が高く、空気入りタイヤ10のような小径タイヤで懸念されるショルダー部分の径成長を効果的に抑制し得る。また、ベルト層50は、軽量であり、転がり抵抗の低減にも寄与する。
【0068】
また、カーカストリート40Tのタイヤ幅方向に沿ったトリート強力は、10kN/25mm以上である。このため、空気入りタイヤ10は、高い耐荷重能力を発揮し得る。一般的な従来の空気入りタイヤでは、カーカストリートのタイヤ幅方向に沿ったトリート強力は、2~5kN/25mm程度であり、カーカス40を2プライ化した場合でも、10kN/25mm未満である。空気入りタイヤ10では、カーカス40を2プライ化、ベルト層50のゲージ増加、及び特に必要な耐荷重能力の確保が厳しい空気入りタイヤ10のセンター部付近に部材を追加することなく、必要な耐荷重能力を確保し得る。
【0069】
すなわち、空気入りタイヤ10によれば、樹脂被覆コード50aをタイヤ周方向に沿って配置することによって形成されたベルト層50を備える場合において、ベルト層50の耐久性と高い耐荷重能力とを両立し得る。
【0070】
本実施形態では、カーカスコード40aは、芳香族ポリアミド繊維、炭素繊維またはスチールの何れかによって形成される。このため、カーカストリート40Tに要求されるトリート強力をより確実かつ容易に達成し得る。
【0071】
(5)その他の実施形態
以上、実施例に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0072】
例えば、上述した実施形態では、ベルト層50は、樹脂材料によって被覆された樹脂被覆コード50aをタイヤ周方向に沿って巻き回すことによって形成されていたが、樹脂被覆コード50aは、必ずしもタイヤ周方向に沿って複数回に亘って巻き回されていなくても構わない。つまり、樹脂被覆コード50aにそって配置されていればよい。
【0073】
また、上述した実施形態では、ベルト層50は、単層のスパイラルベルトであったが、必ずしも単層でなくても構わない。
【0074】
さらに、上述した実施形態では、空気入りタイヤ10が、0.56≦RD/OD≦0.75の関係を満たすとしたが、当該関係は、必ずしも満たしていなくても構わない。
【0075】
また、カーカス40のカーカスコード40aは、次のように構成されてもよい。
図6は、カーカスコード40aの断面形状を模式的に示す。
図6に示すように、カーカスコード40aは、複数のフィラメントFL1、及び複数のフィラメントFL2が撚られることによって形成される。具体的には、カーカスコード40aは、2本のフィラメントFL1と、6本のフィラメントFL2とによって形成される。
【0076】
カーカスコード40aは、小径な空気入りタイヤ10のビード部60の形状に追従し易いように、一般的なカーカスコードよりも外径が細い。具体的には、カーカスコード40aの外径は、0.7mm以下である。なお、カーカスコード40aの外径は、0.6mm以下がより好ましい。
【0077】
また、このようなカーカスコード40aを形成するフィラメントFL1及びフィラメントFL2の外径は、0.2mm以下であることが好ましい。
【0078】
本変更例では、フィラメントFL1の外径が0.15mm、及びフィラメントFL2の外径が0.175mmである。
【0079】
さらに、上述した実施形態では、空気入りタイヤ10が、小型シャトルバスを前提とした車両1に装着される小径タイヤである例について説明したが、空気入りタイヤ10は、必ずしもこのような小径タイヤに限定されない。
【0080】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0081】
1 車両
10 空気入りタイヤ
20 トレッド
30 タイヤサイド部
40 カーカス
40a カーカスコード
40b 被覆ゴム
40T カーカストリート
50 ベルト層
50a 樹脂被覆コード
60 ビード部
100 リムホイール
110 リムフランジ