(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】電気刺激印加装置及び判定方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20230904BHJP
【FI】
A61N1/36
(21)【出願番号】P 2021505564
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 JP2020002372
(87)【国際公開番号】W WO2020183931
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2019047738
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】豊島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】矢口 喜明
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-515428(JP,A)
【文献】特表2009-543624(JP,A)
【文献】国際公開第2012/090756(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00 ― 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ゲルが貼付された状態において電気刺激を生体又は生体組織に印加する電気刺激印加装置であって、
前記電気刺激印加装置の一面において外部に露出しており、前記電気刺激を出力する、主電極と、
前記一面において、前記主電極の周囲に配置されている、複数の検出電極と、
前記主電極と、前記複数の検出電極のそれぞれとの間のインピーダンスに応じて、前記一面における前記導電性ゲルの貼付状態を判定する制御部と、
を備える、電気刺激印加装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記主電極と、前記複数の検出電極のそれぞれとの間のインピーダンスが、全て所定の閾値以下である場合、前記導電性ゲルの貼付状態が適切であると判定する、請求項1に記載の電気刺激印加装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記主電極と、前記複数の検出電極のそれぞれとの間のインピーダンスが、全て前記所定の閾値より大きい場合、前記導電性ゲルが貼付されていない状態又は前記電気刺激印加装置が故障した状態であると判定する、請求項2に記載の電気刺激印加装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記主電極と、前記複数の検出電極のそれぞれとの間のインピーダンスのうち、少なくとも1つが前記所定の閾値以下であり、且つ、少なくとも1つが前記所定の閾値よりも大きい場合、前記導電性ゲルの貼付状態が適切でないと判定する、請求項2又は3に記載の電気刺激印加装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記導電性ゲルの貼付状態が適切であると判定した場合に、前記電気刺激を出力する、請求項2から4のいずれか一項に記載の電気刺激印加装置。
【請求項6】
情報を報知する報知部をさらに備え、
前記制御部は、前記判定した結果の情報を前記報知部から報知する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の電気刺激印加装置。
【請求項7】
導電性ゲルが貼付された状態において電気刺激を出力可能な電気刺激印加装置であって、前記電気刺激印加装置の一面において外部に露出しており、電気刺激を出力する、主電極と、前記一面において、前記主電極の周囲に配置されている、複数の検出電極と、を備える電気刺激印加装置による判定方法であって、
前記主電極と、前記複数の検出電極のそれぞれとの間のインピーダンスを測定するステップと、
測定した前記インピーダンスに応じて、前記一面における前記導電性ゲルの貼付状態を判定するステップと、
を含む、判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気刺激印加装置及び判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脱分極を惹起させないレベルの微弱な電気刺激と、温熱とを生体又は生体組織に印加することにより、様々な疾患の治療を行う装置が知られている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、電気刺激としての微弱な電流と、温熱とを、生体又は生体組織に印加することにより、神経変性疾患、癌疾患、色素性乾皮症、全身性自己免疫疾患、臓器特異性自己免疫疾患等の疾患の治療を行う装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/065239号
【文献】特開2009-125549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の装置による治療は、導電性ゲルを備えるシート材を介して当該装置が生体又は生体組織に貼付された状態で行われる。生体又は生体組織には、導電性ゲルを介して、電気刺激が印加される。
【0005】
ここで、導電性ゲルが上述の装置に対して適切な位置に貼付されておらず、その結果、例えば当該装置において電気刺激を出力する電極が直接生体又は生体組織に接触した状態で電気刺激が出力された場合、生体又は生体組織において局所的に強い電流が流れ得る。この場合、治療を受けている患者は、電気刺激による痛みを感じたり、皮膚において電極と接触する箇所がやけどを負ったりする可能性がある。
【0006】
本開示の目的は、電気刺激を生体又は生体組織に印加するに際して、電気刺激印加装置に対する導電性ゲルの貼付状態を判定可能な電気刺激印加装置及び判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様としての電気刺激印加装置は、導電性ゲルが貼付された状態において電気刺激を生体又は生体組織に印加する電気刺激印加装置であって、前記電気刺激印加装置の一面において外部に露出しており、前記電気刺激を出力する、主電極と、前記一面において、前記主電極の周囲に配置されている、複数の検出電極と、前記主電極と、前記複数の検出電極のそれぞれとの間のインピーダンスに応じて、前記一面における前記導電性ゲルの貼付状態を判定する制御部と、を備える。
【0008】
本開示の1つの実施形態としての電気刺激印加装置において、前記制御部は、前記主電極と、前記複数の検出電極のそれぞれとの間のインピーダンスが、全て所定の閾値以下である場合、前記導電性ゲルの貼付状態が適切であると判定する。
【0009】
本開示の1つの実施形態としての電気刺激印加装置において、前記制御部は、前記主電極と、前記複数の検出電極のそれぞれとの間のインピーダンスが、全て前記所定の閾値より大きい場合、前記導電性ゲルが貼付されていない状態又は前記電気刺激印加装置が故障した状態であると判定する。
【0010】
本開示の1つの実施形態としての電気刺激印加装置において、前記制御部は、前記主電極と、前記複数の検出電極のそれぞれとの間のインピーダンスのうち、少なくとも1つが前記所定の閾値以下であり、且つ、少なくとも1つが前記所定の閾値よりも大きい場合、前記導電性ゲルの貼付状態が適切でないと判定する。
【0011】
本開示の1つの実施形態としての電気刺激印加装置において、前記制御部は、前記導電性ゲルの貼付状態が適切であると判定した場合に、前記電気刺激を出力する。
【0012】
本開示の1つの実施形態としての電気刺激印加装置は、情報を報知する報知部をさらに備え、前記制御部は、前記判定した結果の情報を前記報知部から報知する。
【0013】
本開示の第2の態様としての判定方法は、導電性ゲルが貼付された状態において電気刺激を出力可能な電気刺激印加装置であって、前記電気刺激印加装置の一面において外部に露出しており、電気刺激を出力する、主電極と、前記一面において、前記主電極の周囲に配置されている、複数の検出電極と、を備える電気刺激印加装置による判定方法であって、前記主電極と、前記複数の検出電極のそれぞれとの間のインピーダンスを測定するステップと、測定した前記インピーダンスに応じて、前記一面における前記導電性ゲルの貼付状態を判定するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、電気刺激を生体又は生体組織に印加するに際して、電気刺激印加装置に対する導電性ゲルの貼付状態を判定可能な電気刺激印加装置及び判定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係る電気刺激印加装置の概略的な外観斜視図である。
【
図2】
図1の電気刺激印加装置を裏面側から見た場合の外観斜視図である。
【
図3】電気刺激印加装置を生体等に貼付する際に用いられるシート材の概略構成を示す外観斜視図である。
【
図4】電気刺激印加装置にシート材を貼付したときの導電性ゲルの位置の一例を示す図である。
【
図5】
図1の電気刺激印加装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図5の電力出力関連部の概略的な回路図の一例である。
【
図7】
図5の制御部が実行する貼付状態の判定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】導電性ゲルの適切でない貼付状態の一例を示す概略図である。
【
図9】
図5の制御部による電気刺激と温熱との出力の制御の一例を模式的に示す制御チャートである。
【
図10】
図5の制御部が設定段階において実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図5の制御部が治療段階において実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図12】所定時間T
1、T
2及びT
3の関係について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示に係る電気刺激印加装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。各図において共通する部材には同一の符号を付している。
【0017】
図1は、一実施形態に係る電気刺激印加装置1の概略的な外観斜視図である。電気刺激印加装置1は、電気刺激を生体又は生体組織(以下、単に「生体等」とも称する)に印加する。電気刺激の印加により、疾患の治療が行われる。
【0018】
電気刺激印加装置1が印加する電気刺激は、微弱な電気刺激であってよい。本明細書では、電気刺激印加装置1が印加する電気刺激が微弱な電気刺激であるとして、以下説明する。ただし、本開示において、電気刺激印加装置1が印加する電気刺激は微弱な電気刺激に限られない。
【0019】
微弱な電気刺激は、生体等に対して、脱分極を惹起させないレベルの電気刺激である。脱分極を惹起させないレベルの電気刺激は、筋収縮や刺激感を生体にもたらさないため、ユーザ(患者)は印加される電気刺激を感知することができない。電気刺激は、例えばパルス直流電流として、生体等に印加される。パルス直流電流は、例えば55Hzの周波数で印加される。パルス直流電流のパルス幅は、例えば100μ秒である。ただし、電気刺激は、これに限られず、疾患の治療に効果のある適宜の電気刺激が用いられてよい。例えば、パルス直流電流の周波数は55Hz以外であってもよく、パルス直流電流のパルス幅は100μ秒以外であってもよい。
【0020】
電気刺激印加装置1は、さらに生体等を加温する。すなわち、電気刺激印加装置1は、生体等に対して温熱を印加する。従って、電気刺激印加装置1は、電気刺激と温熱とを組み合わせて、生体等に印加することができる。この場合、微弱な電気刺激と温熱との印加により、疾患の治療が行われる。
【0021】
温熱は、生体等の平常時の温度よりも数度高い温熱である。例えば、電気刺激印加装置1を人体に対して適用する場合、温熱は、人体の平常時の体温よりも数度高い、38℃以上45℃以下の温度であってよい。
【0022】
電気刺激印加装置1による治療は、電気刺激印加装置1を生体等の少なくとも一部に貼付した状態で実行される。例えば、電気刺激印加装置1は、粘着性のあるシート材を介して、生体等に貼付される。電気刺激印加装置1が生体等に貼付された状態で、例えば、電気刺激印加装置1のユーザ(患者)が、電気刺激印加装置1に対して、電気刺激印加装置1による治療を開始するための所定の操作入力を行うと、電気刺激及び温熱を印加することによる治療が行われる。
【0023】
ここで、本実施形態に係る電気刺激印加装置1は、導電性ゲルが貼付された状態において、電気刺激を出力する。電気刺激印加装置1は、電気刺激の出力を実行するに際し、導電性ゲルの電気刺激印加装置1への貼付状態を判定する。導電性ゲルは、例えばシート材に設けられていてよい。電気刺激印加装置1は、導電性ゲルの貼付状態が適切であると判定した場合に、電気刺激を出力することにより、治療を行う。
【0024】
また、本実施形態に係る電気刺激印加装置1は、実際の治療を開始する前に、生体等に印加する微弱な電気刺激の強度を設定する。本明細書において、治療を開始する前に行われる、微弱な電気刺激の出力強度を設定する段階を、以下、単に「設定段階」とも称する。また、本明細書において、実際に治療を行う段階を、以下、単に「治療段階」とも称する。従って、電気刺激印加装置1のユーザが、電気刺激印加装置1に対して、電気刺激印加装置1による治療を開始するための所定の操作入力を行うと、電気刺激印加装置1は、設定段階を実行することにより、治療段階における電気刺激の強度を設定し、その後、治療段階を実行することにより、ユーザの治療を行う。
【0025】
図1に示すように、電気刺激印加装置1は、本体部10と印加部20とが結合されて構成される。本体部10は、筐体として構成されている。印加部20は、平板形状に構成されている。本実施形態では、印加部20は、長辺と短辺とを有する長方形状に形成されている。本体部10は、平板形状の印加部20の一方の面において、印加部20と結合されている。本明細書では、平板形状の印加部20において、本体部10が結合されている面を表面という。また、平板形状の印加部20において、表面とは反対側の、本体部10が結合されていない面を裏面という。裏面は、本開示における「一面」に相当する。
【0026】
筐体として構成されている本体部10は、内部に、電気刺激印加装置1の動作を制御するための各種機能部を有する。また、本体部10には、ユーザからの操作入力を受け付ける入力部が設けられている。
図1に示す例では、本体部10は、入力部として、第1入力部101a、第2入力部101b及び第3入力部101cを備える。
【0027】
第1入力部101a、第2入力部101b及び第3入力部101cは、例えば
図1に示すように、いずれも押下可能な操作ボタン(操作キー)として構成されていてよい。ただし、第1入力部101a、第2入力部101b及び第3入力部101cの形態は、押下可能な操作ボタンに限られない。また、本体部10が備える入力部の数量は3個に限られない。さらに、第1入力部101a、第2入力部101b及び第3入力部101cの配置は、
図1に示す配置に限られない。
【0028】
本実施形態では、第1入力部101a、第2入力部101b及び第3入力部101cは、それぞれ異なる機能を実行させる操作ボタンである。具体的には、第1入力部101aは、電気刺激印加装置1の電源のオンとオフとを切り替える操作ボタンである。第2入力部101bは、電気刺激印加装置1による治療を開始させるための操作ボタンである。第3入力部101cは、ユーザが電気刺激の感知を入力するための操作ボタンである。電気刺激の感知については、後述する。
【0029】
印加部20は、粘着性のあるシート材を介して、裏面が生体等に貼付される。印加部20は、電気刺激を出力する主電極と、発熱するヒータと、導電性ゲルの貼付状態の判定のために用いられる検出電極とを備える。印加部20は、裏面が生体等に貼付された状態で、生体等に電気刺激と温熱とを印加する。
【0030】
図2は、
図1の電気刺激印加装置1を裏面側から見た場合の外観斜視図である。
図2に示すように、印加部20は、第1主電極102aと第2主電極102bとの、2枚の主電極を備える。第1主電極102a及び第2主電極102bは、裏面側において、外部に露出している。例えば、第1主電極102a及び第2主電極102bのうち、1枚の主電極を接地し、もう1枚の主電極について電圧を変化させることにより、電気刺激が出力される。なお、本明細書において、第1主電極102aと第2主電極102bとを区別しない場合には、これらをまとめて、単に「主電極102」と記載する。
【0031】
本実施形態では、主電極102は、略半円形状を有している。すなわち、本実施形態では、
図2に示すように、主電極102は、印加部20の裏面側において、直線部120と、円弧部121とにより、外縁が形成されている。主電極102は、直線部120が印加部20の短辺と平行になるように、配置されている。また、主電極102は、円弧部121が直線部120よりも印加部20の短辺に近くなるように、配置されている。
【0032】
図2に示すように、印加部20は、各主電極102に対応する3枚の検出電極を備える。具体的には、印加部20は、第1主電極102aに対応する、第1検出電極110a、第2検出電極110b及び第3検出電極110cを備える。また、印加部20は、第2主電極102bに対応する、第4検出電極110d、第5検出電極110e及び第6検出電極110fを備える。なお、本明細書において、主電極に対応する検出電極とは、主電極に対して、導電性ゲルの貼付状態を判定するために用いられる検出電極を意味するものとする。
【0033】
第1検出電極110a、第2検出電極110b、第3検出電極110c、第4検出電極110d、第5検出電極110e及び第6検出電極110fは、裏面側において、外部に露出している。なお、本明細書において、第1検出電極110aと、第2検出電極110bと、第3検出電極110cと、第4検出電極110dと、第5検出電極110eと、第6検出電極110fとを区別しない場合には、これらをまとめて、単に「検出電極110」と記載する。
【0034】
検出電極110は、印加部20の裏面において、主電極102の周囲に配置されている。本実施形態では、
図2に示すように、第1検出電極110a、第2検出電極110bは、第1主電極102aの直線部120と円弧部121とが交わる位置の近傍に配置されている。また、第4検出電極110d、第5検出電極110eは、第2主電極102bの直線部120と円弧部121とが交わる位置の近傍に配置されている。また、第3検出電極110cは、第1主電極102aの円弧部121において最も印加部20の短辺に近い位置の近傍に配置されている。また、第6検出電極110fは、第2主電極102bの円弧部121において最も印加部20の短辺に近い位置の近傍に配置されている。ただし、検出電極110の配置は、これに限られない。複数の検出電極110は、対応する主電極102の周囲に配置されていればよい。
【0035】
また、本実施形態では、印加部20が、1枚の主電極102に対応する3枚の検出電極110を備えている場合について説明したが、1枚の主電極102に対応する検出電極110の枚数は3枚に限られない。検出電極110は、1枚の主電極102に対応する、複数の検出電極110を備えていればよい。検出電極110の枚数は、例えば、主電極102の大きさ及び形状等に応じて適宜定められてよい。
【0036】
印加部20は、内部にヒータを備える。すなわち、印加部20は、表面と裏面との間に、ヒータを備える。ヒータを加熱することにより、裏面が生体等に貼付された状態で、生体等に温熱が伝達されて、生体等が温められる。
【0037】
図3は、電気刺激印加装置1を生体等に貼付する際に用いられるシート材30の概略構成を示す外観斜視図である。シート材30は、フレーム部31と、2枚の導電性ゲル32とを備える。
【0038】
フレーム部31は、例えば樹脂等の非導電性材料により構成される。フレーム部31の外形は、印加部20の外形とほぼ同じ大きさに形成されている。従って、本実施形態では、フレーム部31は、外形が長辺と短辺とを有する長方形状に形成されている。フレーム部31は、2枚の導電性ゲル32を配置するための2つの開口(貫通孔)を有する。2つの開口は、シート材30を印加部20の裏面側に貼付した場合に、第1主電極102a及び第2主電極102b、並びに各主電極102に対応する3枚の検出電極110が配置されている位置に一致する位置に形成されている。
【0039】
2枚の導電性ゲル32は、フレーム部31の2つの開口に配置される。2枚の導電性ゲル32の間は、非導電性のフレーム部31によって絶縁されている。導電性ゲル32は、粘着性を有することにより、電気刺激印加装置1を生体等に貼付することができる。シート材30が印加部20の裏面側に貼付された状態において、2枚の導電性ゲル32は、それぞれ、第1主電極102a及び第2主電極102bと1対1に対応して接触する。これにより、電気刺激印加装置1がシート材30により生体等に貼付されて、電極部から電気刺激が出力された場合に、当該電気刺激が、2枚の導電性ゲル32を介して生体等に印加される。また、シート材30が印加部20の裏面側に貼付された状態において、2枚の導電性ゲル32は、各主電極102に対応する検出電極110に接触可能となるように構成されている。すなわち、シート材30は、導電性ゲル32が、主電極102及び当該主電極102に対応する検出電極110と接触できる大きさ及び形状となるように、構成されている。
【0040】
本実施形態では、例えば
図3に示すように、導電性ゲル32は、略半円形状を有している。すなわち、本実施形態では、
図3に示すように、導電性ゲル32は、直線部130と、円弧部131とにより、外縁が形成されている。導電性ゲル32は、直線部130がフレーム部31の短辺と平行になるように、配置されている。また、導電性ゲル32は、円弧部131が直線部130よりもフレーム部31の短辺に近くなるように、配置されている。
【0041】
図4は、電気刺激印加装置1にシート材30を貼付したときの導電性ゲル32の位置の一例を示す図である。
図4では、シート材30におけるフレーム部31の記載を省略している。
図4に示す例では、電気刺激印加装置1の印加部20の裏面にシート材30が貼付された状態において、1枚の導電性ゲル32が、第1主電極102a及び第1主電極102aに対応する3枚の検出電極110(第1検出電極110a、第2検出電極110b及び第3検出電極110c)の全てと接触している。このように、導電性ゲル32は、1枚の主電極102及び当該主電極102に対応する3枚の検出電極110の全体を覆うことができる大きさ及び形状に構成される。また、3枚の検出電極110は、導電性ゲル32が3枚の検出電極110の全てと接触しているときに、導電性ゲル32が主電極102の全体と接触するように、印加部20において、配置される。
【0042】
ユーザは、定期的又は不定期的に、シート材30を取り替えて使用する。つまり、ユーザは、定期的又は不定期的に、新たなシート材30を用いて電気刺激印加装置1を生体等に貼付して使用する。これにより、シート材30の導電性ゲル32の性質が変化して、導電性が劣化することを防ぐことができる。また、新たなシート材30を使用することにより、粘着性が劣化して電気刺激印加装置1が生体等からはがれることを防ぐことができる。ただし、シート材30を取り替えたときに、シート材30の印加部20への貼付状態が変わることがある。本実施形態に係る電気刺激印加装置1は、シート材30の貼付状態が適切であるか否かを判定することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、上述したように、印加部20という1つの構成機器に、第1主電極102a及び第2主電極102bという2枚の主電極が配置されている。しかしながら、第1主電極102a及び第2主電極102bは、例えば、異なる構成機器に別々に配置されていてもよい。本実施形態のように、1つの構成機器に2枚の主電極が配置されている場合には、2枚の主電極が異なる構成機器に別々に配置されている場合と比較して、生体等に貼付する構成機器の数量を減らすことができるため、ユーザの利便性が高まる。
【0044】
図5は、
図1の電気刺激印加装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。
図5に示すように、電気刺激印加装置1は、入力部101と、制御部103と、表示部104と、タイマ部105と、記憶部106と、電源部107と、ヒータ108と、温度測定部109とを備える。入力部101、制御部103、表示部104、タイマ部105、記憶部106、及び電源部107は、例えば本体部10に設けられる。ヒータ108、及び温度測定部109は、例えば印加部20に設けられる。ただし、各機能部が本体部10及び印加部20のいずれに設けられるかについては、本明細書に記載の機能を発揮する限り、ここで示した例に限られない。
【0045】
図5に示すように、電気刺激印加装置1は、さらに電力出力関連部40を備える。電力出力関連部40は、導電性ゲル32の貼付状態の判定処理及び電気刺激の出力の処理を実行する機能部の集合である。電力出力関連部40の詳細は、
図6に回路図として示している。電力出力関連部40の詳細については、後述する。
【0046】
図5において、入力部101は、ユーザからの操作入力を受け付けるものであり、例えば、操作ボタンにより構成される。本実施形態では、入力部101は、上述したように、第1入力部101a、第2入力部101b及び第3入力部101cという3つの操作ボタンにより構成される。なお、入力部101は、例えばタッチスクリーンにより構成され、表示デバイスの一部にユーザからの操作入力を受け付ける入力領域を表示して、ユーザによるタッチ操作入力を受け付けてもよい。ユーザにより、入力部101に対する操作入力が行われると、例えば操作入力に応じた電気信号が制御部103に送信される。
【0047】
制御部103は、電気刺激印加装置1の各機能部をはじめとして、電気刺激印加装置1の全体を制御及び管理する。制御部103は、少なくとも1つのプロセッサを含んで構成される。制御部103は、制御手順を規定したプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ又は各機能の処理に特化した専用のプロセッサで構成される。
【0048】
制御部103は、印加部20の裏面側における導電性ゲル32の貼付状態を判定する。制御部103は、主電極102と、対応する複数の検出電極110のそれぞれとの間のインピーダンスに応じて、導電性ゲル32の貼付状態を判定する。制御部103による、導電性ゲル32の貼付状態の判定処理の詳細については、後述する。
【0049】
制御部103は、主電極102からの電気刺激の出力を制御する。制御部103は、電気刺激の出力強度を変更可能である。制御部103は、例えば、パルス直流電流の大きさを変化させることにより、電気刺激の出力強度を変更可能である。制御部103は、電気刺激印加装置1により実行される治療の処理を制御する。具体的には、制御部103は、電気刺激印加装置1の各機能部を制御することにより、設定段階における微弱な電気刺激の出力強度の設定と、治療段階における治療とを制御する。制御部103が実行する処理の詳細については、後述する。
【0050】
表示部104は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、又は無機ELディスプレイ等の表示デバイスである。表示部104は、情報を報知する報知部の一態様である。表示部104は、制御部103による制御に基づき、様々な情報を表示する。表示部104は、例えば、電気刺激印加装置1が実行している処理の段階、つまり設定段階又は治療段階を表示してよい。また、表示部104は、例えば、治療の進行度を表示してよい。治療の進行度は、治療段階における進行の程度である。具体的には、治療の進行度は、例えば治療段階の時間が定められている場合、その時間のうちどの程度の割合が終了したかを示す情報であってよい。表示部104は、例えば、制御部103がユーザによる入力部101への操作入力を検出したとき、検出した操作入力の内容を表示してもよい。表示部104は、その他、治療に関連してユーザに通知する任意の情報を表示してよい。なお、
図1では、表示部104の図示を省略している。
【0051】
電気刺激印加装置1は、必ずしも表示部104を備えていなくてもよい。電気刺激印加装置1は、表示部104に代えて、又は表示部104とともに、情報をユーザに報知する報知部として、他の機構を備えていてもよい。例えば、電気刺激印加装置1は、音により情報をユーザに報知するスピーカを備えていてもよい。例えば、電気刺激印加装置1は、振動により情報をユーザに報知する振動子を備えていてもよい。なお、報知部は、ここで示した例に限られず、ユーザに情報を報知可能な任意の機構とすることができる。
【0052】
タイマ部105は、制御部103の制御に基づき、時間を計測する。例えば、タイマ部105は、治療段階を開始してからの経過時間を計測する。また、例えば、タイマ部105は、パルス直流電流の電気刺激を印加してからの経過時間を計測する。
【0053】
記憶部106は、半導体メモリ又は磁気メモリ等で構成することができる。記憶部106は、例えば、各種情報及び電気刺激印加装置1を動作させるためのプログラム等を記憶する。記憶部106は、ワークメモリとしても機能してもよい。
【0054】
電源部107は、電気刺激印加装置1の各機能部に電力を供給するバッテリである。
【0055】
ヒータ108は、温熱を印加する。ヒータ108は、例えば電熱線等の、電力の供給により発熱する部材により構成されている。ヒータ108は、例えば電源部107から電力の供給を受けて発熱する。ヒータ108が発熱すると、電気刺激印加装置1が貼付された生体等に、温熱が伝達される。
【0056】
温度測定部109は、ヒータ108の温度を測定する。温度測定部109は、例えば温度計等の、温度を検出可能なセンサを含んで構成されている。温度測定部109は、測定した温度に応じた電気信号を制御部103に送信することにより、測定した温度に関する情報を制御部103に伝達する。
【0057】
図6は、
図5の電力出力関連部40の概略的な回路図の一例である。電力出力関連部40は、導電性ゲル32の貼付状態の判定処理及び電気刺激の出力の処理を実行する機能部の集合である。
図6に示す各機能部は、例えば
図5の制御部103により制御される。
図6には、主電極102及び検出電極110に接触する導電性ゲル32が、模式的に示されている。
【0058】
図6に示すように、電力出力関連部40は、主電極102と、検出電極110と、複数の検出電極切換えスイッチと、複数の電流測定部と、治療電圧生成回路113と、判定用電圧生成回路114と、第1回路切換えスイッチ115と、第2回路切換えスイッチ116と、を備える。
【0059】
本実施形態では、複数の検出電極切換えスイッチは、第1スイッチ111a、第2スイッチ111b、第3スイッチ111c、第4スイッチ111d、第5スイッチ111e及び第6スイッチ111fという、6個の個別のスイッチにより構成されている。以下、本明細書において、第1スイッチ111a、第2スイッチ111b、第3スイッチ111c、第4スイッチ111d、第5スイッチ111e及び第6スイッチ111fを区別しない場合には、これらをまとめて、単に「検出電極切換えスイッチ111」と記載する。
【0060】
また、本実施形態では、複数の電流測定部は、第1電流測定部112a及び第2電流測定部112bという、2つの電流測定部により構成されている。以下、本明細書において、第1電流測定部112a及び第2電流測定部112bを区別しない場合には、これらをまとめて、単に「電流測定部112」と記載する。
【0061】
主電極102は、治療電圧生成回路113から供給された電圧で、電気刺激を出力する。主電極102は、例えば上述したように、第1主電極102a及び第2主電極102bという2枚の主電極により構成される。
【0062】
検出電極110は、導電性ゲル32の貼付状態の判定のために用いられる電極である。上述したように、本実施形態では、第1主電極102aに対応して、第1検出電極110a、第2検出電極110b及び第3検出電極110cという、3つの検出電極が設けられており、第2主電極102bに対応して、第4検出電極110d、第5検出電極110e及び第6検出電極110fという、3つの検出電極が設けられている。
【0063】
検出電極切換えスイッチ111は、1つの主電極102に対応する3つの検出電極110のうち、主電極102との間のインピーダンスを検出する検出電極を選択するためのスイッチである。導電性ゲル32の貼付状態の判定処理において、制御部103は、3つの検出電極110のうち、いずれか1つの検出電極110を選択し、選択された検出電極110が導通するように、検出電極切換えスイッチ111を制御する。
【0064】
具体的には、本実施形態では、
図6に示すように、第1検出電極110a、第2検出電極110b、第3検出電極110c、第4検出電極110d、第5検出電極110e及び第6検出電極110fが、それぞれ抵抗器Rを介して、第1スイッチ111a、第2スイッチ111b、第3スイッチ111c、第4スイッチ111d、第5スイッチ111e及び第6スイッチ111fと電気的に接続されている。貼付状態の判定処理においては、第1スイッチ111a、第2スイッチ111b及び第3スイッチ111cは、第1検出電極110a、第2検出電極110b及び第3検出電極110cのいずれかが導通するように、オン及びオフの状態が制御される。同様に、貼付状態の判定処理においては、第4スイッチ111d、第5スイッチ111e及び第6スイッチ111fは、第4検出電極110d、第5検出電極110e及び第6検出電極110fのいずれかが導通するように、オン及びオフの状態が制御される。
【0065】
電流測定部112は、主電極102と、検出電極切換えスイッチ111により選択された検出電極110と、の間に流れる電流を測定する。本実施形態では、第1電流測定部112aは、検出電極切換えスイッチ111を介して、第1検出電極110a、第2検出電極110b及び第3検出電極110cと、電気的に接続されている。そのため、第1電流測定部112aは、第1主電極102aと、第1検出電極110a、第2検出電極110b及び第3検出電極110cのうち、選択された検出電極と、の間に流れる電流を測定する。また、第2電流測定部112bは、検出電極切換えスイッチ111を介して、第4スイッチ111d、第5スイッチ111e及び第6スイッチ111fと、電気的に接続されている。そのため、第2電流測定部112bは、第2主電極102bと、第4検出電極110d、第5検出電極110e及び第6検出電極110fのうち、選択された検出電極と、の間に流れる電流を測定する。
【0066】
電流測定部112は、公知の電流測定機構により構成することができる。本実施形態では、電流測定部112が、第1電流測定部112a及び第2電流測定部112bという、2つの機能部により構成される場合について説明したが、電流測定部112は、必ずしも2つの機能部により構成されていなくてもよい。電流測定部112は、1つ又は3つ以上の機能により構成されていてもよい。
【0067】
治療電圧生成回路113は、設定段階及び治療段階において生体等に印加される電気刺激の電圧を生成する回路である。治療電圧生成回路113には、
図5の電源部107から電力が供給される。
【0068】
判定用電圧生成回路114は、貼付状態の判定処理において主電極102から出力する電力の電圧を生成する回路であり、インピーダンス測定のための予め定められた電圧を出力する。判定用電圧生成回路114には、
図5の電源部107から電力が供給される。
【0069】
第1回路切換えスイッチ115は、制御部103による制御に基づき、第1主電極102aの接続先を、治療電圧生成回路113と、判定用電圧生成回路114とで、切り換える。具体的には、第1回路切換えスイッチ115は、貼付状態の判定処理を実行する場合に、第1主電極102aが判定用電圧生成回路114と導通するようにスイッチを切り換える。これにより、貼付状態の判定処理を実行するときに、第1主電極102aに判定用電圧生成回路114から電力が供給される。また、第1回路切換えスイッチ115は、設定段階及び治療段階の処理を実行する場合に、第1主電極102aが治療電圧生成回路113と導通するようにスイッチを切り換える。これにより、設定段階及び治療段階の処理を実行するときに、第1主電極102aに治療電圧生成回路113から電力が供給される。
【0070】
第2回路切換えスイッチ116は、制御部103による制御に基づき、第2主電極102bの接続先を、判定用電圧生成回路114と、グランド(GND)とで、切り換える。具体的には、第2回路切換えスイッチ116は、貼付状態の判定処理を実行する場合に、第2主電極102bが判定用電圧生成回路114と導通するようにスイッチを切り換える。これにより、貼付状態の判定処理を実行するときに、第2主電極102bに判定用電圧生成回路114から電力が供給される。また、第2回路切換えスイッチ116は、設定段階及び治療段階の処理を実行する場合に、第2主電極102bがグランドに接続されるようにスイッチを切り換える。これにより、設定段階及び治療段階の処理を実行するときに、第2主電極102bが接地される。
【0071】
次に、電気刺激印加装置1の制御部103による制御の詳細について、電気刺激印加装置1の使用方法とあわせて説明する。ここでは、電気刺激印加装置1は、生体であるユーザの腹部に貼付して使用されるとして説明する。すなわち、ここでは、ユーザの腹部において治療を行うとして説明する。
【0072】
電気刺激印加装置1の使用にあたり、ユーザは、電気刺激印加装置1を、シート材30を用いて腹部に貼付する。そして、ユーザは、例えば第1入力部101aを押下することにより、電気刺激印加装置1の電源をオンにする。ユーザは、第2入力部101bを押下することにより、電気刺激印加装置1による処理を開始させることができる。
【0073】
電気刺激印加装置1は、まず導電性ゲル32の貼付状態の判定処理を実行する。
図7は、制御部103が実行する貼付状態の判定処理の一例を示すフローチャートである。
図7は、第1主電極102a及び第2主電極102bのうち、一方に対する、導電性ゲル32の貼付状態の判定処理を示すフローである。従って、制御部103は、
図7に示すフローを、第1主電極102aと第2主電極102bとについて、それぞれ実行することにより第1主電極102a及び第2主電極102bの双方について、導電性ゲル32の貼付状態の判定を行うことができる。
【0074】
図7の開始時点において、検出電極切換えスイッチ111は、全てオフの状態、つまり、検出電極110と電流測定部112とを導通させていない状態であるとする。また、
図7の開始時点において、第1回路切換えスイッチ115及び第2回路切換えスイッチ116は、主電極102を、治療電圧生成回路113、判定用電圧生成回路114、及びグランドのいずれにも接続していない状態であるとする。
【0075】
まず、制御部103は、主電極102を、判定用電圧生成回路114に電気的に接続させる(ステップS10)。例えば、第1主電極102aについて導電性ゲル32の貼付状態の判定を行う場合、制御部103は、第1回路切換えスイッチ115を制御することにより、第1主電極102aと判定用電圧生成回路114とを導通させる。
【0076】
次に、制御部103は、主電極102と、対応する3つの検出電極110それぞれとの間に流れる電流を測定する(ステップS11)。例えば、第1主電極102aについて導電性ゲル32の貼付状態の判定を行う場合、制御部103は、第1主電極102aと第1検出電極110aとの間に流れる電流、第1主電極102aと第2検出電極110bとの間に流れる電流、及び、第1主電極102aと第3検出電極110cとの間に流れる電流、を測定する。制御部103は、第1スイッチ111a、第2スイッチ111b及び第3スイッチ111cを順にオンにすることにより、第1電流測定部112aに、これらの電流を測定させることができる。
【0077】
制御部103は、主電極102と、対応する3つの検出電極それぞれとの間のインピーダンスを算出する(ステップS12)。例えば、第1主電極102aについて導電性ゲル32の貼付状態の判定を行う場合、制御部103は、第1主電極102aと第1検出電極110aとの間のインピーダンス、第1主電極102aと第2検出電極110bとの間のインピーダンス、及び、第1主電極102aと第3検出電極110cとの間のインピーダンス、を算出する。制御部103は、例えば、判定用電圧生成回路114から出力される電力の電圧と、第1電流測定部112aで測定された電流に基づいて、インピーダンスを算出することができる。
【0078】
制御部103は、主電極102と、対応する検出電極110のそれぞれとの間のインピーダンスに応じて、導電性ゲル32の貼付状態を判定する。
【0079】
具体的には、制御部103は、主電極102と、対応する検出電極110のそれぞれとの間のインピーダンスが、全て所定の閾値以下である場合、導電性ゲル32の貼付状態が適切であると判定する。すなわち、制御部103は、ステップS12で算出した3つのインピーダンスが、全て所定の閾値以下であるか否かを判定する(ステップS13)。
【0080】
例えば、導電性ゲル32が、主電極102と検出電極110との双方に接触している場合、当該主電極102と検出電極110との間のインピーダンスは、主電極102と検出電極110とが導電性ゲル32を介して電気的に接続されているため、導電性ゲル32が接触していない場合に算出されるインピーダンスと比較して低くなる。所定の閾値は、導電性ゲル32が、主電極102と検出電極110とに接触しているか否かを判定可能な値として、予め定められ、例えば記憶部106に記憶されていてよい。制御部103は、ステップS12で算出された3つのインピーダンスを、記憶部106に記憶された所定の閾値と比較する。
【0081】
制御部103は、主電極102と、対応する検出電極110のそれぞれとの間のインピーダンスが、全て所定の閾値以下であると判定した場合(ステップS13のYes)、貼付状態が適切であると判定する(ステップS14)。主電極102と、対応する検出電極110のそれぞれとの間のインピーダンスが、全て所定の閾値以下である場合には、導電性ゲル32が、主電極102と、対応する3つの検出電極110との全てと接触していると言える。3つの検出電極110は、主電極102の周囲に配置されているため、導電性ゲル32が、主電極102と対応する3つの検出電極110との全てと接触している場合には、例えば
図4に示すように、主電極102の全体が導電性ゲル32で覆われていることが推定される。そのため、このような場合に、制御部103は、導電性ゲル32の貼付状態が適切であると判定する。
【0082】
一方、制御部103は、主電極102と、対応する検出電極110のそれぞれとの間のインピーダンスの、少なくともいずれかが所定の閾値よりも大きいと判定した場合(ステップS13のNo)、主電極102と、対応する検出電極110のそれぞれとの間のインピーダンスが、全て所定の閾値より大きいか否かを判定する(ステップS15)。
【0083】
制御部103は、主電極102と、対応する検出電極110のそれぞれとの間のインピーダンスのうち、少なくとも1つが所定の閾値以下であり、且つ、少なくとも1つが所定の閾値よりも大きい場合、導電性ゲル32の貼付状態が適切でないと判定する。すなわち、制御部103は、ステップS15において、主電極102と、対応する検出電極110のそれぞれとの間のインピーダンスのうち、少なくともいずれかが所定の閾値以下である場合(ステップS15のNo)、貼付状態が適切でないと判定する(ステップS16)。
【0084】
ステップS13でNoと判定された場合、主電極102と、対応する検出電極110のそれぞれとの間のインピーダンスの、少なくともいずれかが所定の閾値よりも大きいため、少なくともいずれかの検出電極110は、導電性ゲル32に接触していないことが推定される。一方、ステップS15でNoと判定された場合、主電極102と、対応する検出電極110のそれぞれとの間のインピーダンスのうち、少なくともいずれかが所定の閾値以下であるため、少なくともいずれかの検出電極110は、導電性ゲル32に接触していることが推定される。この場合、例えば
図8に一例として示すように、導電性ゲル32は、複数の検出電極110のうち、一部の検出電極110には接触しており、残りの一部の検出電極110には接触していないこととなる。
図8に示す例では、導電性ゲル32は、第1検出電極110aには接触しておらず、第2検出電極110b及び第3検出電極110cには接触している。この場合、
図8に示すように、主電極102の一部が、導電性ゲル32で覆われていない可能性がある。このように導電性ゲル32で覆われていない主電極102の部分が生体等に接触した状態で電気刺激が出力された場合、導電性ゲル32で覆われていない主電極102の部分からの電気刺激による痛みを感じたり、主電極102と接触した皮膚がやけどを負ったりする可能性がある。そのため、制御部103は、このような貼付状態を適切でない貼付状態であると判定する。
【0085】
制御部103は、主電極102と、対応する検出電極110のそれぞれとの間のインピーダンスが、全て所定の閾値より大きい場合、導電性ゲルが貼付されていない状態又は電気刺激印加装置1が故障した状態であると判定する。すなわち、制御部103は、ステップS15において、主電極102と、対応する検出電極110のそれぞれとの間のインピーダンスが全て所定の閾値より大きい場合(ステップS15のYes)、印加部20の裏面に導電性ゲル32が貼付されていない状態であるか、電気刺激印加装置1が故障している状態であると判定する。
【0086】
ステップS15でYesと判定された場合、主電極102と、対応する全ての検出電極110とに、導電性ゲル32が接触していない可能性がある。また、例えば電気刺激印加装置1の内部の回路が故障した場合、主電極102に適切な電力が供給されない可能性がある。そのため、制御部103は、このように、主電極102と、対応する検出電極110のそれぞれとの間のインピーダンスが全て所定の閾値より大きい場合、印加部20の裏面に導電性ゲル32が貼付されていない状態であるか、電気刺激印加装置1が故障している状態であると判定する。
【0087】
制御部103は、ステップS14、ステップS16及びステップS17に示すいずれかの結果を判定すると、判定した結果の情報を報知部から報知してよい(ステップS18)。報知により、ユーザは、判定結果を知ることができる。
【0088】
制御部103は、判定した結果の内容に応じて、報知の手段及び方法等を変更してよい。例えば、報知部が表示部104により構成されている場合、制御部103は、判定した結果に応じて、異なる表示を行ってよい。この場合、ユーザは、判定結果の内容を知ることができる。
【0089】
また、制御部103は、特定の判定結果の場合にのみ報知を行ってもよい。例えば、制御部103は、貼付状態が適切であると判定した場合には報知を行わず、他の結果として判定された場合にのみ報知を行ってもよい。この場合、ユーザは、貼付状態が適切である場合に何らの対応を行うことがなく、反対に、貼付状態が適切であると判定されていない場合に、情報の報知を受け、何らかの対応を取ることができる。
【0090】
このようにして、制御部103は、導電性ゲル32の貼付状態を判定することができる。制御部103は、貼付状態の判定を行った後、設定段階の処理を開始する。制御部103は、貼付状態が適切であると判定した場合にのみ、設定段階の処理を開始することが好ましい。設定段階の処理を開始する場合、制御部103は、第1回路切換えスイッチ115を制御することにより、第1主電極102aと治療電圧生成回路113とを導通させるとともに、第2回路切換えスイッチ116を制御することにより、第2主電極102bをグランドに接続する。
【0091】
次に、制御部103が実行する、設定段階及び治療段階の処理について説明する。
図9は、
図5の制御部103による電気刺激と温熱との出力の制御の一例を模式的に示す制御チャートである。
図9には、電気刺激の出力のチャートと、ヒータ108のオン及びオフの切替えのチャートとが示されている。
図9のチャートにおいて、横軸は時刻を示す。
図9において、電気刺激の出力のチャートの縦軸は、電気刺激の出力強度を示す。
図9において、ヒータ108のオン及びオフの切替えのチャートの縦軸は、ヒータ108のオン及びオフの状態を示す。
【0092】
図10は、
図5の制御部103が設定段階において実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図11は、
図5の制御部103が治療段階において実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0093】
ここで、
図9及び
図10を参照して、設定段階における制御部103が実行する処理の詳細について説明する。
図9の時刻t
1は、設定段階の開始時刻である。また、設定段階の開始時点において、ヒータ108はオフの状態であるとする。
【0094】
制御部103は、設定段階において、電気刺激の出力強度を漸増させるように、主電極102から電気刺激を出力する。具体的には、制御部103は、まず電気刺激を出力する(ステップS20)。このとき、制御部103は、電気刺激の出力強度の漸増の処理において、最も低い出力強度P
1で電気刺激を出力する。出力強度P
1は、ほとんど全てのユーザにとって脱分極を惹起させないレベルの微弱な電気刺激であることが好ましい。すなわち、出力強度P
1は、ほとんど全てのユーザが電気刺激を感知しないレベルの微弱な電気刺激であることが好ましい。出力強度P
1は、電気刺激印加装置1において、予め設定されていてよい。制御部103は、
図9に示すように、出力強度P
1の電気刺激のパルス直流電流を、所定の周期で複数回出力してよい。
【0095】
設定段階が開始した場合、ユーザは、電気刺激を感知したときに、第3入力部101cを押下する。制御部103は、ステップS20における電気刺激の出力を実行したときに、ユーザにより電気刺激を感知した旨の入力が検出されたかを判定する(ステップS21)。すなわち、制御部103は、ステップS20における電気刺激の出力を実行したときに、ユーザにより第3入力部101cが押下されたか否かを判定する。
【0096】
制御部103は、電気刺激を感知した旨の入力を検出していない場合(ステップS21のNo)、電気刺激の出力強度を上げる(ステップS22)。そして、ステップS20に移行し、ステップS22で上げた出力強度で、再度電気刺激を出力する(ステップS20)。ステップS22において、制御部103は、電気刺激の出力強度を、例えば予め定められた所定の強度幅で、上げてよい。
図9に示す例では、制御部103は、出力強度P
1で電気刺激を出力し、電気刺激を感知した旨の入力を検出していない場合、次に、出力強度P
2で電気刺激を出力している。また、制御部103は、ステップS20における電気刺激の出力を開始してから、所定時間後に、ステップS22を経て上昇させた電気刺激の強度で、ステップS20における電気刺激の出力を開始してよい。
図9に示す例では、制御部103は、時刻t
1において、ステップS20における出力強度P
1の電気刺激の出力を開始した後、所定時間後の時刻t
2に、出力強度P
2の電気刺激の出力を開始している。
【0097】
制御部103は、ステップS21において、電気刺激を感知した旨の入力を検出したと判定するまで、ステップS22における電気刺激の強度の上昇と、ステップS20における電気刺激の出力を繰り返す。この繰り返しにより、制御部103は、電気刺激の出力強度を漸増させることができる。
図9に示す例では、制御部103は、電気刺激の出力強度を、P
1、P
2、P
3、P
4、P
5の順に上昇させて、出力している。
図9における時刻t
1、t
2、t
3、t
4及びt
5は、それぞれ出力強度P
1、P
2、P
3、P
4及びP
5の電気刺激の出力を開始した時刻を示す。
【0098】
制御部103は、入力部101に対する所定の操作入力を検出すると、治療段階で用いる電気刺激の出力強度を設定する。治療段階で用いる電気刺激の出力強度を、本明細書では、以下「治療強度」とも称する。本実施形態では、制御部103は、第3入力部101cを押下するという操作入力を検出した場合に、治療強度を設定する。
【0099】
すなわち、制御部103は、電気刺激を感知した旨の入力を検出した場合(ステップS21のYes)、治療強度を設定する(ステップS23)。すなわち、本実施形態では、制御部103は、電気刺激の出力強度を漸増させている際に電気刺激を感知した旨の入力を検出した場合、治療強度を設定する(ステップS23)。
図9のチャートは、出力強度P
5で電気刺激を出力した場合に、ユーザが電気刺激を感知して第3入力部101cを押下し、第3入力部101cが押下されたことを制御部103が検出した場合の例を示している。
【0100】
ステップS23において、制御部103は、入力部101に対する所定の操作入力(ここでの例では、第3入力部101cを押下するという操作入力)を検出したときに出力される電気刺激の出力強度よりも低い所定の出力強度を、治療強度として設定する。ここで、本明細書において、入力部101に対する所定の操作入力を検出したときに出力される電気刺激の出力強度を、検出時出力強度Psという。ここでの例では、検出時出力強度Ps=P5が成立する。
【0101】
治療強度の設定方法は、適宜定められてよい。例えば、制御部103は、検出時出力強度Psよりも所定強度低い出力強度を、治療強度として設定してよい。また、例えば、制御部103は、検出時出力強度Psに対して、1未満の係数を乗じた出力強度を、治療強度として設定してよい。ここでは、制御部103は、検出時出力強度Psに対して、係数として0.8を乗じた出力強度を、治療強度Pmとして設定するとして、以下説明する。すなわち、ここで説明する例においては、治療強度Pm=0.8×出力強度P5が成立する。
【0102】
なお、ステップS23における治療強度の設定は、必ずしもステップS24の前に実行されなくてもよい。ステップS23における治療強度の設定は、設定段階が終了するまで、すなわち
図10のフローが終了するまでに完了していればよい。
【0103】
制御部103は、入力部101に対する所定の操作入力(ここでの例では、第3入力部101cを押下するという操作入力)を検出した後、ヒータ108により生体等を加温し、ヒータ108が所定温度以上となったときに、治療段階を開始してよい。このようなヒータ108による加温は、設定段階において実行されてよい。
【0104】
具体的には、制御部103は、電気刺激を感知した旨の入力を検出し、治療強度を設定すると、ヒータ108をオンの状態にする(ステップS24)。
図9に示すチャートは、時刻t
6において、ヒータ108がオンの状態となったことを示している。これにより、ヒータ108に電力が供給され、ヒータ108が発熱を開始する。ヒータ108の発熱により、生体であるユーザの腹部が温められる。
【0105】
制御部103は、温度測定部109から伝達される信号に基づき、ヒータ108の温度を監視する。具体的には、制御部103は、ヒータ108の温度が所定温度に到達したか否かを判定する(ステップS25)。所定温度は、例えば、電気刺激印加装置1による治療に適した温度であり、予め定められていてよい。
【0106】
制御部103は、ヒータ108の温度が所定温度に到達していないと判定する場合(ステップS25のNo)、ヒータ108をオンの状態にしたまま、ステップS25を繰り返す。
【0107】
制御部103は、ヒータ108の温度が所定温度に到達したと判定した場合(ステップS25のYes)、ヒータ108をオフの状態にする(ステップS26)。
図9に示すチャートは、時刻t
7において、ヒータ108がオフの状態となったことを示している。
【0108】
制御部103がステップS26においてヒータ108をオフの状態にすると、設定段階が終了する。すなわち、
図9に示すチャートでは、時刻t
7に設定段階が終了する。設定段階が終了すると、制御部103は、次に治療段階の処理を開始する。
【0109】
次に、
図9及び
図11を参照して、治療段階における制御部103が実行する処理の詳細について説明する。治療段階は、例えば設定段階が終了すると、制御部103により自動的に開始されてよい。
【0110】
まず、制御部103は、タイマ部105による治療時間タイマをスタートさせる(ステップS30)。治療時間タイマは、治療時間を計測するタイマである。治療時間は、例えば、治療段階を開始してからの経過時間であってもよく、治療段階においてパルス直流電流の出力処理を行っている時間であってもよい。ただし、本実施形態では、治療段階において、パルス直流電流の出力処理が中断されないため、治療段階を開始してからの経過時間は、治療段階においてパルス直流電流の出力処理を行っている時間と等しくなる。
【0111】
制御部103は、電気刺激として、パルス直流電流を出力する(ステップS31)。このとき、制御部103は、設定段階で設定した治療強度、すなわち
図10のフローのステップS23で設定した治療強度Pmで、パルス直流電流を出力する。
【0112】
制御部103は、ステップS31でパルス直流電流を出力すると、タイマ部105による電気刺激インターバルタイマをスタートする(ステップS32)。電気刺激インターバルタイマは、電気刺激としてのパルス直流電流を出力するインターバルを計測するためのタイマである。言い換えると、電気刺激インターバルタイマは、パルス直流電流を出力してから次のパルス直流電流を出力するまでの時間を計測するためのタイマである。
【0113】
また、制御部103は、ステップS31でパルス直流電流を出力すると、タイマ部105によるヒータONインターバルタイマをスタートする(ステップS33)。ヒータONインターバルタイマは、電気刺激としてのパルス直流電流を出力してから、ヒータ108をオンの状態にするまでのインターバル(時間)を計測するためのタイマである。
【0114】
制御部103は、ステップS32とステップS33とを同時に実行することが好ましい。つまり、制御部103は、電気刺激インターバルタイマと、ヒータONインターバルタイマとを同時にスタートさせることが好ましい。さらに、制御部103は、ステップS32とステップS33とを、ステップS31と同時に実行することが好ましい。つまり、制御部103は、パルス直流電流を出力した時に、電気刺激インターバルタイマと、ヒータONインターバルタイマとを同時にスタートさせることが好ましい。
【0115】
制御部103は、ヒータONインターバルタイマをスタートしてから所定時間T1が経過したか否かを判定する(ステップS34)。所定時間T1は、電気刺激としてのパルス直流電流を出力してからヒータ108をオンの状態にするまでの時間であり、例えば予め設定されていてよい。
【0116】
制御部103は、ヒータONインターバルタイマをスタートしてから所定時間T1が経過していないと判定した場合(ステップS34のNo)、ヒータONインターバルタイマをスタートしてから所定時間T1が経過したと判定されるまで、ステップS34を繰り返す。
【0117】
制御部103は、ヒータONインターバルタイマをスタートしてから所定時間T1が経過したと判定した場合(ステップS34のYes)、ヒータ108をオンの状態にする(ステップS35)。
【0118】
そして、制御部103は、ヒータ108をオンの状態にしてから、予め定められた所定時間T2経過後に、ヒータ108をオフの状態にする(ステップS36)。ここで、ステップS35及びステップS36におけるヒータ108のオン及びオフの制御は、パルス波として実行されてよい。つまり、この場合、制御部103は、ステップS35においてヒータ108をオンの状態にした後、パルス幅に相当する所定時間T2経過後に、ステップS36においてヒータ108をオフの状態にしてよい。
【0119】
次に、制御部103は、電気刺激インターバルタイマをスタートしてから所定時間T3が経過したか否かを判定する(ステップS37)。所定時間T3は、電気刺激としてのパルス直流電流を出力してから次のパルス直流電流を出力するまでの時間であり、例えば予め設定されていてよい。
【0120】
制御部103は、電気刺激インターバルタイマをスタートしてから所定時間T3が経過していないと判定した場合(ステップS37のNo)、電気刺激インターバルタイマをスタートしてから所定時間T3が経過したと判定されるまで、ステップS37を繰り返す。
【0121】
制御部103は、電気刺激インターバルタイマをスタートしてから所定時間T3が経過したと判定した場合(ステップS37のYes)、治療時間タイマをスタートしてから所定時間T4が経過したか否かを判定する(ステップS38)。所定時間T4は、治療時間であり、例えば予め設定されていてよい。所定時間T4は、例えば1時間である。
【0122】
制御部103は、治療時間タイマをスタートしてから所定時間T4が経過していないと判定した場合(ステップS38のNo)、ステップS31に移行して、パルス直流電流を出力する。このようにして、制御部103は、ステップS38において治療時間タイマをスタートしてから所定時間T4が経過したと判定するまで、ステップS31からステップS38を繰り返す。このように、ステップS31からステップS38を繰り返すことにより、ユーザに継続的に治療強度Pmという微弱な電気刺激が印加され、治療が行われる。また、このとき、ステップS35においてヒータ108がオンの状態となることにより、適宜温熱が印加され、これによって腹部の温度が維持されやすくなる。
【0123】
制御部103は、治療時間タイマをスタートしてから所定時間T
4が経過したと判定した場合(ステップS38のYes)、
図11のフローを終了する。これにより、治療段階が終了する。このとき、制御部103は、治療段階が終了したことを、表示部104に表示したり、他の機構を駆動したりして、ユーザに通知してよい。ユーザは、治療段階が終了したとき、電気刺激印加装置1を腹部からはがして、治療を終了する。
【0124】
上記フローにおいて、所定時間T
3は、所定時間T
1及び所定時間T
2の和よりも長い。
図12は、所定時間T
1、T
2及びT
3の関係について説明するための図であり、例えば、
図9の破線で囲った箇所を拡大して示す図である。
図12に示すように、治療段階における第n回目のパルス直流電流の出力を開始した時刻をt
11とする。第n回目のパルス直流電流の出力後に、ヒータ108がオンの状態となる時刻をt
12とし、その後ヒータ108がオフの状態となる時刻をt
13とする。また、治療段階における第n+1回目のパルス直流電流の出力を開始する時刻をt
14とする。時刻t
11、t
12、t
13及びt
14は、この順で時系列に並んでいる。
【0125】
このとき、所定時間T1は、電気刺激としてのパルス直流電流を出力してからヒータ108をオンの状態にするまでの時間であるため、t12-t11により表される。所定時間T2は、ヒータ108がオンの状態となってからオフの状態となるまでの時間であるため、t13-t12により表される。所定時間T3は、電気刺激としてのパルス直流電流を出力してから次のパルス直流電流を出力するまでの時間であるため、t14-t11により表される。従って、上述のように、所定時間T3は、所定時間T1及び所定時間T2の和よりも長くなる。なお、所定時間T1、T2及びT3の具体的な長さについては、治療の目的、手段及び方法等に応じて、適宜定められてよい。
【0126】
このように、本実施形態に係る電気刺激印加装置1によれば、制御部103は、主電極102と、対応する複数の検出電極110のそれぞれとの間のインピーダンスに応じて、導電性ゲル32の貼付状態を判定できる。そのため、電気刺激印加装置1は、電気刺激を生体等に印加するに際して、電気刺激印加装置1に対する導電性ゲル32の貼付状態を判定可能である。
【0127】
また、本実施形態に係る電気刺激印加装置1によれば、主電極102と、対応する複数の検出電極110のそれぞれとの間のインピーダンスが、全て所定の閾値以下である場合、導電性ゲル32の貼付状態が適切であると判定する。このようにして、電気刺激印加装置1は、導電性ゲル32の貼付状態が適切である場合を判定することができる。
【0128】
また、本実施形態に係る電気刺激印加装置1によれば、主電極102と、対応する複数の検出電極110のそれぞれとの間のインピーダンスが、全て所定の閾値より大きい場合、導電性ゲル32が貼付されていない状態又は電気刺激印加装置1が故障した状態であると判定する。このようにして、電気刺激印加装置1は、導電性ゲル32が貼付されていないこと、及び電気刺激印加装置1が故障していることを判定することができる。
【0129】
また、本実施形態に係る電気刺激印加装置1によれば、主電極102と、対応する複数の検出電極110のそれぞれとの間のインピーダンスのうち、少なくとも1つが所定の閾値以下であり、且つ、少なくとも1つが所定の閾値よりも大きい場合、導電性ゲル32の貼付状態が適切でないと判定する。このようにして、電気刺激印加装置1は、導電性ゲル32の貼付状態が適切でない場合を判定することができる。
【0130】
また、制御部103は、検出時出力強度Psよりも低い治療強度Pmで電気刺激を出力することにより、治療段階において、生体等に微弱な電気刺激を印加する。そのため、ユーザが電気刺激を感知したときに所定の操作入力を入力することにより、制御部103は、ユーザが感知する電気刺激の強度よりも弱い強度で、治療段階における電気刺激の出力を行うことができる。このようにして、電気刺激印加装置1は、微弱な電気刺激と温熱とを組み合わせた刺激を生体等に印加するに際して、電気刺激の強度を適切なレベルに設定しやすくなる。
【0131】
特に、
図10のフローを参照して説明したように、制御部103は、設定段階において電気刺激の出力強度を漸増させる場合、ユーザが電気刺激を感知したときに所定の操作入力を入力することにより、治療強度Pmを、検出時出力強度Psよりも弱い強度に設定する。これにより、制御部103は、治療強度Pmをユーザが感知しない微弱なレベルに設定できる。
【0132】
電気刺激印加装置1の制御部103により実行される処理は、上述の処理に限られない。制御部103は、治療の目的、手段及び方法等に応じて、上述した処理とは異なる処理や、上述した処理に加えた追加的な処理を実行してもよい。
【0133】
例えば、上記実施形態では、制御部103は、設定段階において、ユーザによる第3入力部101cへの入力を検出した後、ヒータ108による加温を行うと説明した。しかしながら、制御部103は、例えば
図10のステップS20において、電気刺激の出力を行う前にヒータ108による加温を行ってもよい。このように電気刺激を印加する前に加温を行うことにより、ユーザは加温された状態で電気刺激の感知の有無を入力することとなる。そのため、より治療段階に近い条件で、電気刺激の感知の有無が入力される。そのため、治療段階における治療強度を、適切なレベルに設定しやすくなり得る。
【0134】
また、例えば、上記実施形態では、設定段階において、制御部103が、電気刺激の出力強度を漸増させるように主電極102から電気刺激を出力するという処理を実行する場合の例について説明した。しかしながら、設定段階における処理は、制御部103による電気刺激の出力強度の漸増に限られない。例えば、電気刺激印加装置1は、設定段階において、ユーザの操作入力に基づいて、電気刺激の出力強度を変化させてもよい。
【0135】
具体的には、例えば電気刺激印加装置1は、電気刺激の出力強度を変更するためのユーザからの操作入力を受け付ける出力強度調整部を、さらに備えていてよい。出力強度調整部は、多様な形態により実現でき、例えば、回転式のノブ(つまみ)、スライド式のノブ、及びスピンボックス等により構成されていてよい。制御部103は、電気刺激の出力強度を漸増させる処理に代えて、ユーザによる出力強度調整部への入力に応じて、電気刺激の出力強度を変更させるように処理を行う。このように、ユーザからの操作入力によっても、設定段階において電気刺激印加装置1から出力される電気刺激の出力強度を変化させることができる。
【0136】
また、上記実施形態では、制御部103は、ステップS12で算出したインピーダンスに基づいて、導電性ゲル32の貼付状態を判定すると説明した。しかしながら、制御部103は、ステップS12で算出したインピーダンスに基づいて、他の状態を判定してもよい。例えば、制御部103は、ステップS12で算出したインピーダンスに基づいて、貼付された導電性ゲル32の劣化状態を判定してもよい。導電性ゲル32を長期にわたって使用すると、その性質が変化し、性質の変化がインピーダンスに反映される場合がある。制御部103は、例えば、導電性ゲル32の性質の変化を検出可能な所定の閾値を用いて、ステップS12で算出したインピーダンスから、導電性ゲル32の劣化状態を判定してもよい。
【0137】
本開示に係る電気刺激印加装置1は、上述した実施形態で特定された構成に限定されず、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、各構成部、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本開示は、電気刺激印加装置に関する。
【符号の説明】
【0139】
1:電気刺激印加装置
10:本体部
20:印加部
30:シート材
31:フレーム部
32:導電性ゲル
40:電力出力関連部
101:入力部
101a:第1入力部
101b:第2入力部
101c:第3入力部
102:主電極
102a:第1主電極
102b:第2主電極
103:制御部
104:表示部
105:タイマ部
106:記憶部
107:電源部
108:ヒータ
109:温度測定部
110:検出電極
110a:第1検出電極
110b:第2検出電極
110c:第3検出電極
110d:第4検出電極
110e:第5検出電極
110f:第6検出電極
111:検出電極切換えスイッチ
111a:第1スイッチ
111b:第2スイッチ
111c:第3スイッチ
111d:第4スイッチ
111e:第5スイッチ
111f:第6スイッチ
112:電流測定部
112a:第1電流測定部
112b:第2電流測定部
113:治療電圧生成回路
114:判定用電圧生成回路
115:第1回路切換えスイッチ
116:第2回路切換えスイッチ
120、130:直線部
121、131:円弧部