(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】カプセル製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/445 20060101AFI20230904BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230904BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230904BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20230904BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230904BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230904BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230904BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230904BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230904BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230904BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230904BHJP
A61P 11/08 20060101ALI20230904BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230904BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230904BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20230904BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230904BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230904BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230904BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230904BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20230904BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230904BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230904BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20230904BHJP
A61P 5/50 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
A61K31/445
A61K9/48
A61K47/14
A61K47/44
A61K47/10
A61P7/00
A61P31/04
A61P25/28
A61P9/10
A61P1/04
A61P27/02
A61P11/08
A61P19/02
A61P37/08
A61P17/04
A61P29/00
A61P37/06
A61P35/00
A61P9/00
A61P7/02
A61P9/10 101
A61P13/12
A61P17/06
A61P21/04
A61P5/50
(21)【出願番号】P 2021531035
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 US2019063547
(87)【国際公開番号】W WO2020112961
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-24
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507416218
【氏名又は名称】ケモセントリックス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】マンモハン レディー レレティ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ ピー. パワーズ
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-529647(JP,A)
【文献】特表2008-521807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離塩基として、中性形態の、又は医薬的に許容し得る塩の形態の化合物1
【化1】
と、ビヒクルとを、含む固溶体カプセル製剤であって、ここで、
前記ビヒクルは、少なくとも10の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含
み、
化合物1が固溶体カプセル製剤の総充填重量の約1~3重量%を占め、かつ、
前記ビヒクルの総重量が、30:70~65:35の比率で、少なくとも10の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤からなる、
固溶体カプセル製剤。
【請求項2】
(a)前記ビヒクルが、前記固溶体カプセル製剤の総充填重量の97~99重量%を
占める;又は、
(b)前記固溶体カプセル製剤が、
化合物1を前記固溶体カプセル製剤の総充填重量の約2重量%
で含む、請求項1に記載の固溶体カプセル製剤。
【請求項3】
(a)前記ビヒクルが、前記固溶体カプセル製剤の総充填重量の約98重量%を占める、請求項2に記載の固溶体カプセル製剤。
【請求項4】
前記ビヒクルの総重量が、35:65~65:35の比率
で、少なくとも10の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤
からなる、請求項
1~3のいずれか1項に記載の固溶体カプセル製剤。
【請求項5】
前記ビヒクルの総重量が、40:60~60:40の比率
で、少なくとも10の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤
からなる、請求項
1~3のいずれか1項に記載の固溶体カプセル製剤。
【請求項6】
前記ビヒクルの総重量が、45:55~55:45の比率で、少なくとも10の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤からなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の固溶体カプセル製剤。
【請求項7】
前記ビヒクルの総重量が、50:50の比率
で、少なくとも10の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤
からなる、請求項
1~3のいずれか1項に記載の固溶体カプセル製剤。
【請求項8】
(a)少なくとも10のHLB値を有する前記少なくとも1種の非イオン性界面活性剤が、約8~22個の炭素原子を含有する脂肪酸のポリオキシエチレン誘導体を含み又は、
(b)少なくとも10のHLB値を有する前記少なくとも1種の非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン水素添加ヒマシ油又はポリオキシエチレンヒマシ油である;又は、
(c)少なくとも10のHLB値を有する前記少なくとも1種の非イオン性界面活性剤が、マクロゴール-40-グリコールヒドロキシステアレート又はマクロゴールグリセロールリシノール酸塩である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の固溶体カプセル製剤。
【請求項9】
前記脂肪酸がリシノール酸である、請求項8に記載の固溶体カプセル製剤。
【請求項10】
少なくとも10のHLB値を有する前記少なくとも1種の非イオン性界面活性剤が、マクロゴール-40-グリコールヒドロキシステアレートである、請求項1~
7のいずれか1項に記載の固溶体カプセル製剤。
【請求項11】
(a)37℃以上の溶融温度を有する前記少なくとも1種の水溶性可溶化剤が、PEG-1000、PEG-1500、PEG-1540、PEG-2000、PEG-3000、PEG-3350、PEG-4000、PEG-6000、PEG-8000、PEG-10000、PEG-20000、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、及びポロキサマー407からなる群から選択される、請求項1~
10のいずれか1項に記載の固溶体カプセル製剤。
【請求項12】
(a)37℃以上の溶融温度を有する前記少なくとも1種の水溶性可溶化剤が、PEG-1540、PEG-2000、PEG-3000、PEG-3350、PEG-4000、PEG-6000からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の固溶体カプセル製剤。
【請求項13】
37℃以上の溶融温度を有する前記少なくとも1種の水溶性可溶化剤がPEG-4000である、請求項1~
10のいずれか1項に記載の固溶体カプセル製剤。
【請求項14】
少なくとも10のHLB値を有する前記少なくとも1種の非イオン性界面活性剤が、マクロゴール-40-グリコールヒドロキシステアレートであり、37℃以上の溶融温度を有する前記少なくとも1種の水溶性可溶化剤がPEG-4000である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の固溶体カプセル製剤。
【請求項15】
(a)前記固溶体カプセル製剤の総充填重量が約130mg~900mgである;又は、
(b)前記カプセルサイズが、#00、#0、#1、#2、#3、#4、又は#5からなる群から選択され
る;又は、
(c)前記カプセルが硬カプセルである、請求項1~
14のいずれか1項に記載の固溶体カプセル製剤。
【請求項16】
(a)前記固溶体カプセル製剤の総充填重量が約500mgである、請求項15に記載の固溶体カプセル製剤。
【請求項17】
(b)前記カプセルサイズが#0である、請求項15又は16に記載の固溶体カプセル製剤。
【請求項18】
遊離塩基として、中性形態の、又は医薬的に許容し得る塩の形態の化合物1
【化2】
と、ビヒクルとを、含む固溶体カプセル製剤の調製方法であって、ここで、
前記ビヒクルは、少なくとも10の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含み、
化合物1が固溶体カプセル製剤の総充填重量の約1~3重量%を占め、かつ、
前記ビヒクルの総重量が、30:70~65:35の比率で、少なくとも10の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤からなり;
前記方法は、
(a)ビヒクルを溶融する工程;
(b)工程(a)で得られた溶融ビヒクルを化合物1と組み合わせて薬液を生成する工程;
(c)薬液をカプセルシェルにカプセル化する工程;及び
(d)カプセル化された薬液を冷却して、化合物1を含む固溶体カプセルを形成する工程を含む、前記調製方法。
【請求項19】
1)工程(a)が、前記ビヒクルを約50~85℃の温度に加熱することを含む;又は、
2)工程(a)が以下を含む、
(i)少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を加熱して溶融界面活性剤を生成すること;
(ii)少なくとも1種の水溶性可溶化剤を加熱して溶融可溶化剤を生成すること;
及び/又は
(iii)溶融可溶化剤を溶融界面活性剤と合わせて溶融ビヒクルを生成すること;を含む、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
工程(i)が、少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を約50~70℃の温度に加熱することを含む、及び/又は
工程(ii)が、少なくとも1種の水溶性可溶化剤を約80~85℃の温度に加熱することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
(a)少なくとも10のHLB値を有する前記少なくとも1種の非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン水素添加ヒマシ油又はポリオキシエチレンヒマシ油である;又は、
(b)少なくとも10のHLB値を有する前記少なくとも1種の非イオン性界面活性剤が、マクロゴール-40-グリコールヒドロキシステアレート又はマクロゴールグリセロールリシノール酸塩である;又は、
(c)37℃以上の溶融温度を有する前記少なくとも1種の水溶性可溶化剤が、PEG-1500、PEG-1540、PEG-2000、PEG-3000、PEG-3350、PEG-4000、PEG-6000、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、及びポロキサマー407からなる群から選択される、請求項
18~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
(b)少なくとも10のHLB値を有する前記少なくとも1種の非イオン性界面活性剤が、マクロゴール-40-グリコールヒドロキシステアレートである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(c)37℃以上の溶融温度を有する前記少なくとも1種の水溶性可溶化剤がPEG-1540、PEG-2000、PEG-3000、PEG-3350、PEG-4000、及びPEG-6000からなる群から選択される、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
(c)37℃以上の溶融温度を有する前記少なくとも1種の水溶性可溶化剤がPEG-4000である、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも10のHLB値を有する前記少なくとも1種の非イオン性界面活性剤が、マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート及び少なくとも1種の水溶性可溶化剤がポリエチレングリコール4000(PEG-4000)である、請求項
18~20のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
中性形態において遊離塩基である、請求項1~
17のいずれか1項に記載の固溶体カプセル製剤。
【請求項27】
C5a受容体の病理学的活性化を伴う疾患又は障害に罹患しているか又は罹患しやすい個体を治療するための、請求項1~
17のいずれか1項に記載の固溶体カプセル製剤。
【請求項28】
(a)前記疾患又は障害が炎症性疾患又は障害でる;又は、
(b)前記疾患又は障害が心血管障害又は脳血管障害でる;又は、
(c)前記疾患又は障害が自己免疫障害でる;又は、
(d)前記疾患又は障害が、インスリン依存性真性糖尿病、ループス腎症、ヘイマン腎炎、膜性腎炎、糸球体腎炎、接触感受性反応、及び血液と人工表面との接触に起因する炎症からなる群に関連する病理学的後遺症である;又は、
(e)前記疾患又は障害が、抗好中球細胞質抗体関連(ANCA)血管炎、C3糸球体症、化膿性汗腺炎、及びループス腎炎からなる群から選択される、請求項
27に記載の固溶体カプセル製剤。
【請求項29】
(a)前記疾患又は障害が、好中球減少症、敗血症、敗血症性ショック、アルツハイマー病、多発性硬化症、脳卒中、炎症性腸疾患、加齢性黄斑変性症、慢性閉塞性肺障害、火傷による炎症、肺損傷、骨関節炎、アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹、虚血再灌流障害、急性呼吸窮迫症候群、全身性炎症反応症候群、多臓器機能不全症候群、組織移植片拒絶、癌、及び移植臓器の超急性拒絶からなる群から選択される;又は
(b)前記疾患又は障害が、心筋梗塞、冠状動脈血栓症、血管閉塞、術後血管再閉塞、動脈硬化症、外傷性中枢神経系損傷、及び虚血性心疾患からなる群から選択される;又は、
(c)前記疾患又は障害が、関節リウマチ、C3糸球体症(C3G)、化膿性汗腺炎(HS)、全身性エリテマトーデス、ギランバレー症候群、膵炎、ループス腎炎、ループス糸球体腎炎、乾癬、免疫グロブリンA(IgA)腎症、クローン病、血管炎、過敏性腸症候群、皮膚筋炎、多発性硬化症、気管支喘息、天疱瘡、類天疱瘡、硬化性皮膚炎、重症筋無力症、自己免疫性溶血性及び血小板減少性状態、グッドパスチャー症候群、免疫血管炎、組織移植片拒絶反応、移植臓器の超急性拒絶反応からなる群から選択される、請求項28に記載の固溶体カプセル製剤。
【請求項30】
遊離塩基として、中性形態の、又は医薬的に許容し得る塩の形態の2.6mg~25.2mgの化合物1
【化3】
と、ビヒクルとを、含む単一単位用量
固溶体カプセル製剤であって、ここで、
前記ビヒクルは、少なくとも10の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含
み、
化合物1が前記単一単位用量固溶体カプセル製剤の総充填重量の約1~3重量%を占め、かつ、
前記ビヒクルの総重量が、30:70~65:35の比率で、少なくとも10の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤からなる、
前記
単一単位用量固溶体カプセル製剤。
【請求項31】
(a)前記単一単位用量
固溶体カプセル製剤は、遊離塩基として、中性形態の約2.6mg~18mgの化合物1を含む;及び/又は、
(b)前記
単一単位用量固溶体カプセルの総充填重量が約130mg~900mgである、請求項
30に記載の単一単位用量
固溶体カプセル製剤。
【請求項32】
請求項1~
17及び26のいずれか1項に記載の1種以上の固溶体カプセル製剤、又は請求項
30又は
31に記載の1種以上の単一単位用量
固溶体カプセル製剤を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
これは、米国特許法第119条(e)に基づいて2018年11月30日に提出された米国仮出願第62/773,848号(これは、すべての目的で参照によりその全体が本明細書に取り込まれる)の優先権の利益を主張する出願である。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発のもとでなされた発明に対する権利に関する声明
適用されない。
【0003】
コンパクトディスクで提出された「配列表」、表、又はコンピュータープログラムリスト添付書類の参照
適用されない。
【背景技術】
【0004】
補体系は、免疫複合体のクリアランス、並びに感染性病原体、外来抗原、ウイルス感染細胞、及び腫瘍細胞に対する免疫応答において中心的な役割を果たす。補体系の不適切又は過剰な活性化は、重度の炎症とその結果としての組織破壊により、有害な、さらには生命を脅かす可能性のある結果につながる可能性がある。これらの結果は、敗血症性ショック;心筋並びに腸虚血/再灌流障害;移植片拒絶;臓器不全;腎炎;病理学的炎症;と自己免疫疾患を含むさまざまな障害で臨床的に現れる。
【0005】
補体系は、通常は不活性状態で血清中に存在するタンパク質の群から構成される。補体系の活性化は、主に3つの異なる経路、すなわち古典的、代替的、及びレクチン経路を含む(V. M. Holers, In Clinical Immunology: Principles and Practice, ed. R. R. Rich, Mosby Press; 1996, 363-391):1)古典的経路はカルシウム/マグネシウム依存性カスケードであり、これは通常、抗原-抗体複合体の形成によって活性化される。これはまた、リガンドと複合体を形成したC反応性タンパク質の結合により、及びグラム陰性菌を含む多くの病原体によって、抗体に依存しない方法で活性化することもできる。2)代替経路は、特定の感受性表面(例えば、酵母及び細菌の細胞壁多糖類、及び特定の生体高分子材料)へのC3の沈着及び活性化によって活性化されるマグネシウム依存性カスケードである。3)レクチン経路は、マンノース結合レクチンの最初の結合と、それに続くC2及びC4の活性化を伴い、これは古典的経路に共通している(Matsushita, M. et al., J. Exp. Med. 176: 1497-1502 (1992); Suankratay, C. et al., J. Immunol. 160: 3006-3013 (1998))。
【0006】
補体経路の活性化は、補体タンパク質の生物学的に活性な断片、例えばC3a、C4a、C5aアナフィラトキシン、及びC5b-9膜攻撃複合体(MAC)を生成し、これらはすべて、白血球走化性;マクロファージ、好中球、血小板、肥満細胞、及び内皮細胞の活性化;並びに血管透過性、細胞溶解、及び組織損傷の亢進に影響を与えることによって、炎症性応答を仲介する。
【0007】
補体C5aは、補体系の最も強力な炎症誘発性メディエーターの1つである(アナフィラキシーC5aペプチドは、モルベースで、炎症反応の誘発がC3aよりも100倍強力である)。C5aはC5(190kD、分子量)の活性化型である。C5aはヒト血清中に約80μg/mlで存在する(Kohler, P. F. et al., J. Immunol. 99: 1211-1216 (1967))。これは、それぞれおよそ115kD及び75kDの分子量を有する2つのポリペプチド鎖(α及びβ)で構成されている(Tack, B. F. et al., Biochemistry 18: 1490-1497 (1979))。1本鎖プロ分子として生合成されたC5は、プロセシング及び分泌中に酵素的に2本鎖構造に切断される。切断後、2つの鎖は少なくとも1つのジスルフィド結合及び非共有相互作用によって一緒に保持される(Ooi, Y. M. et al., J. Immunol. 124: 2494-2498(1980))。
【0008】
最近の研究により、化合物1
【化1】
が、C5aを介した疾患の治療に有用であることが特定された。化合物1は、生物医薬品分類システム(Biopharmaceutics Classification System:BCS)のクラスIIに属する化合物として分類され、消化管(GI)管の水性環境での溶解度は低いが、高い膜透過性を有する。すなわちその吸収は、消化管での溶解度と溶解速度によって制御される。この化合物の開示にもかかわらず、製造可能性、一貫した安定性、生物学的利用能、及び薬物動態を提供する製剤は開発されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、それらをヒト又は他の動物への経口投与に適したものにするために、必要な製造可能性、安定性、生物学的利用能、及び薬物動態学的要件を満たす製剤を製造する必要がある。本開示は、これらのニーズに対処し、関連する利点も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの態様において、遊離塩基としての、その中性形態の、又は医薬的に許容し得る塩の形態の化合物1
【化2】
と、ビヒクルとを、含む固溶体カプセルが本明細書で提供され、ここで、
前記ビヒクルは、少なくとも10の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含む。
【0011】
1つの態様において、遊離塩基としての、その中性形態の、又は医薬的に許容し得る塩の形態の化合物1
【化3】
と、ビヒクルとを、含む固溶体カプセルの調製方法が本明細書で提供され、ここで、
前記ビヒクルは、少なくとも10の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含み、
前記方法は、
(a)ビヒクルを溶融する工程;
(b)工程(a)で得られた本方法の溶融ビヒクルを化合物1と組み合わせて薬液を生成する工程;
(c)薬液をカプセル化する工程;及び
(d)カプセル化された薬液を冷却して、化合物1を含む固溶体カプセルを形成する工程、を含む。
【0012】
1つの態様において、遊離塩基としての、その中性形態の、又は医薬的に許容し得る塩の形態の化合物1
【化4】
と、ビヒクルとを、含む固溶体カプセルが本明細書で提供され、ここで、
前記ビヒクルは、少なくとも10の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含み、
前記固溶体カプセルは、本明細書に記載の方法に従って調製される。
【0013】
1つの態様において、本明細書に記載の化合物1を含む1種以上の固溶体カプセルの有効量を個体に投与することを含む、C5a受容体の病理学的活性化を伴う疾患又は障害に罹患しているか又は罹患しやすい個体を治療する方法が、本明細書で提供される。
【0014】
1つの態様において、遊離塩基としての、その中性形態の、又は医薬的に許容し得る塩の形態の、約2.6mg~25.2mgの化合物1
【化5】
と、ビヒクルとを、含む単一の単位用量カプセルが本明細書で提供され、ここで、
前記ビヒクルは、少なくとも10の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含む。
【0015】
1つの態様において、本明細書に記載の化合物1を含む固溶体カプセルを含むキットが、本明細書で提供される。
【0016】
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明及び図から当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】様々なpH値での遊離塩基としての化合物1の溶解度プロフィールをプロットしている。
【0018】
【
図2】化合物1を含む固溶体カプセル製剤を作製するための流れ図を示す。
【0019】
【
図3】マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000の50:50混合物中に化合物1を含む固溶体カプセルの示差走査熱量測定(DSC)プロットである。
【0020】
【
図4】マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000の30:70混合物中に化合物1を含む固溶体カプセルのDSCプロットである。
【0021】
【
図5】マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000の90:10混合物中に化合物1を含む固溶体カプセルのDSCプロットである。
【0022】
【
図6】さまざまなマクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000ブレンドの溶解プロフィールをプロットしている。
【0023】
【
図7】マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000の50:50混合物中に化合物1を含む固溶体カプセルのロットA、B、C、及びDの溶解プロフィールをプロットしている。
【0024】
【
図8】ビーグル犬に投与されたマクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000の50:50混合物中に化合物1を含む固溶体カプセルのPKプロフィールを示す。20mg/イヌが投与された;T1はトライアル1である;T2はトライアル2である;T3はトライアル3である。
【0025】
【
図9】ビーグル犬に投与された100%マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート中の化合物1を含む固溶体カプセルのPKプロフィールを示す。20mg/犬が投与された;T1はトライアル1である;T2はトライアル2である;T3はトライアル3である。
【0026】
【
図10】高脂肪、高カロリー食有り又は無しの、化合物1の30mgの単回経口投与後の化合物1の薬物動態プロフィールを示す。
【0027】
【
図11】マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000の50:50混合物中に化合物1を含むカプセルからの、原薬(参照)及びカプセル充填物(9kHz)の
19F固体NMRスペクトルを示す。化合物1参照試料は複数のピークを含むが、カプセル充填物(「化合物1カプセル」と表示)ではピークが顕著に少なくなっている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
I.概説
化合物1は、広いpH範囲にわたって極めて低い溶解度を有することが見出された。さらに化合物1は、試験した多くの賦形剤に溶解しにくかった。化合物1は液体としてうまく製剤化された。しかし、そのような製剤にはエタノールが含まれていた。エタノールは、投与量の調製中と保管中の両方で容易に蒸発するため、投与量が不正確になり、場合によっては、化合物1が溶液から崩壊する。医薬用途のために化合物1を製剤化することの困難さを克服するために、本開示は、化合物1の固溶体カプセル製剤及びその製造方法を提供する。
【0029】
本明細書に記載の固溶体カプセルは、マトリックスに完全かつ分子的に溶解され、マトリックスに分散された化合物1、又はその混合物を提供する。すなわち、製剤は、アモルファスカプセル充填マトリックス中の原薬の固溶体である。いくつかの実施態様において、マトリックス中の化合物1の溶解は、カプセル充填マトリックスの目視検査によって決定することができる。すなわち、完全かつ分子的に溶解した化合物1は、溶解していない化合物1の観察可能なクラスターを有さず、肉眼では均一な固溶体として見える固溶体カプセル充填マトリックスを含むことができる。
【0030】
有利には、本明細書に記載の固溶体カプセル製剤は、分子的に溶解又は分散したマトリックス中の原薬の結晶化を回避又は低減し、優れた安定性、生物学的利用能、及び薬物動態特性を提供する。本明細書に記載の製剤の重要な特徴は、少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤との比率であり、これは有用な医薬組成物を提供する。
II.定義
【0031】
「治療する」又は「治療」という用語は、疾患修正治療及び対症療法の両方を含み、いずれも予防的(すなわち、症状の発症前に、症状の重症度を予防、遅延、又は軽減するため)、又は治療的(すなわち、症状の発症後に、症状の重症度及び/又は期間を低減するため)であり得る。
【0032】
「医薬的に許容し得る塩」という用語は、比較的毒性のない酸又は塩基を用いて調製される活性化合物の塩を含むことを意味する。医薬的に許容し得る無機塩基に由来する塩の例には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが含まれる。医薬的に許容し得る有機塩基に由来する塩には、置換アミン、環状アミン、天然に存在するアミンなどを含む、第一級、第二級、及び第三級アミン、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペラジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩が含まれる。医薬的に許容し得る酸付加塩の例には、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸、又はリン酸などの無機酸に由来する塩、並びに比較的毒性のない有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などに由来する塩が含まれる。アルギン酸などのアミノ酸の塩、及びグルクロン酸又はガラクツロン酸などの有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge, S.M., et al, “Pharmaceutical Salts”, Journal of Pharmaceutical Science, 1977, 66, 1-19 or P.Heinrich, Stahl, Camille G. Wemouth, Handbook of Pharmaceutical Salts, 2002. Wiley-VCH参照)。
【0033】
中性形態の化合物1は、塩を塩基又は酸と接触させ、従来の方法で親化合物を単離することによって再生することができる。化合物1の親形態は、極性溶媒への溶解度などの特定の物理的特性において様々な塩形態とは異なるが、それ以外の点では、塩は、本開示の目的のために化合物1の親形態と同等である。
【0034】
「固溶体カプセル」は、カプセル化された賦形剤マトリックスに溶解又は分散された原薬を含む製剤を指す。原薬は、賦形剤マトリックスに完全かつ分子的に溶解又は分散しているか、又はそれらの混合物である。本発明において、原薬、すなわち遊離塩基としての、その中性形態の、又は医薬的に許容し得る塩の形態の化合物1は、少なくとも10の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、及び37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤を含むビヒクルである賦形剤マトリックスに溶解又は分散される。
【0035】
「非イオン性界面活性剤」は、界面活性剤の親水性部分が電荷を持たない界面活性剤を指す。本開示において有用な非イオン性界面活性剤の2つの非限定的なクラスは、(a)ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、及び(b)約8~約22個の炭素原子を含有する脂肪酸のポリオキシエチレン誘導体である。脂肪酸の炭素原子は、1つ以上の不飽和点又は1つ以上の置換点(例えばリシノール酸)を含むことができる。
【0036】
「親水性-親油性バランス」(「HLB」)という用語は、界面活性剤中に存在する極性基と非極性基の比率の相対的な尺度である。いくつかの実施態様において、HLB値は、以下の式を使用するグリフィン法によって計算される:
HLB=20×Mh/M
ここで、Mhは分子の親水性部分の分子質量で、Mは分子全体の分子質量であり、0~20のスケールで結果が得られる。HLB値0は、完全に親油性/疎水性の分子に対応し、20の値は、完全に親水性/疎油性の分子に対応する。グリフィン法の詳細は、Griffin (Journal of the Society of Cosmetic Chemists 1949 1: 311-326) 及び Griffin (Journal of the Society of Cosmetic Chemists 1954 5: 249-256) に記載されており、これらはあらゆる目的のため参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施態様において、HLB値はデイビス法によって計算され、これは、Davies J. T., “A Quantitative Kinetic Theory of Emulsion Type, I. Physical Chemistry of the Emulsifying Agent,”Gas/Liquid and Liquid/Liquid Interface. Proceedings the International Congress of Surface Activity 426-438 (1957)に記載されており、これは、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施態様において、親水性部分がエチレンオキシドのみからなる組成物のHLB値を決定する場合、HLB値は、以下の式を使用して計算される:
HLB=E/5
ここで、Eはオキシエチレン含有量の重量パーセントである。この計算の詳細については、「The HLB system: a time-saving guide to emulsifier selection. Wilmington. ICI Americas, Inc. 1984. 印刷物」に記載されている。その内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
「水溶性可溶化剤」は、中性pH及び周囲温度で、水に分子的に容易に溶解する組成物を指す。例えば水溶性可溶化剤は、25℃で少なくとも15、20、25、30、35、40、45、又は50g/Lの水への溶解度を有する。いくつかの実施態様において、水溶性可溶化剤は、25℃で少なくとも40g/Lの水への溶解度を有する。37℃以上の溶融温度を有する典型的な水溶性可溶化剤は、平均分子量が1,000~6,000であるポリエチレングリコールである。37℃以上の溶融温度を有する追加の水溶性可溶化剤には、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、及びポロキサマー407などのポロキサマーも含まれる。
【0038】
「総充填重量」は、本明細書に記載されるように、カプセルシェル内にカプセル化される材料の量を指す。「総充填重量」には、カプセル自体の重量や、カプセルを封止するために使用されるその他の添加剤の重量は含まない。
【0039】
「化合物1」は、IUPAC名(2R,3S)-2-(4-(シクロペンチルアミノ)フェニル)-1-(2-フルオロ-6-メチルベンゾイル)-N-(4-メチル-3-(トリフルオロメチル)フェニル)ピペリジン-3-カルボキサミド、及び以下に示す構造を有する化合物である:
【化6】
【0040】
本明細書で使用される場合、C5a受容体活性の調節がC5a受容体の不適切な活性の低下をもたらす場合、状態は「C5a受容体調節に応答する」と見なされる。
【0041】
「個体」という用語は、哺乳動物を指し、これは霊長類(特にヒト)、ペット動物(イヌ、ネコ、ウマなど)、及び家畜(ウシ、ブタ、ヒツジなど)を含む。いくつかの実施態様において、「個体」という用語はヒトを指す。
III.実施態様の詳細な説明
【0042】
A.固溶体カプセル
いくつかの態様において、遊離塩基としての、その中性形態の、又は医薬的に許容し得る塩の形態の化合物1
【化7】
と、ビヒクルとを、含む固溶体カプセル製剤が本明細書で提供され、ここで、
前記ビヒクルは、少なくとも10の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含む。
【0043】
典型的には、少なくとも10のHLB値を有する適切な非イオン性界面活性剤は、(a)ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、及び(b)ポリオールエステルのポリオキシエチレン誘導体を含み、ここで、ポリオールエステルのポリオキシエチレン誘導体は、約8~約22個の炭素原子を含有する脂肪酸から誘導される。脂肪酸の炭素原子は、1つ以上の不飽和点又は1つ以上の置換点(例えばリシノール酸)を含むことができる。
【0044】
いくつかの実施態様において、少なくとも10のHLB値を有する適切な非イオン性界面活性剤は、マクロゴール-グリセロールヒドロキシステアレートポリマー、例えばポリオキシエチレン40ヒマシ油、ポリオキシエチレン40水素添加ヒマシ油(マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレートとしても知られ、その以前の商品名Cremophor(登録商標)RH40、及び現在の商品名Kolliphor(登録商標)RH40)、マクロゴルグリセロールリシノレート(ポリエトキシエチレン35ヒマシ油として、その以前の商品名Cremophor(登録商標)ELにより、及び現在の商品名Kolliphor(登録商標)ELによっても知られる)、マクロゴール-15-ヒドロキシステアレート(以前の商品名Solutol(登録商標)HS15及び現在の商品名KolliphorHS15としても知られる)、ポリオキシエチレン60ヒマシ油、ポリオキシエチレン60水素添加ヒマシ油、ポリオキシエチレン100水素添加ヒマシ油、ポリオキシエチレン200ヒマシ油、ポリオキシエチレン200水素添加ヒマシ油である。
【0045】
37℃以上の溶融温度を有する適切な水溶性可溶化剤は、最小平均分子量が1,000で最大平均分子量が20,000のポリエチレングリコール(PEG)であり得る。本発明において可溶化剤として使用される典型的なポリエチレングリコールは、PEG-1000、PEG-1500、PEG-1540、PEG-2000、PEG-3000、PEG-3350、PEG-4000、PEG-6000、PEG-8000、PEG-10000、及びPEG-20000である。いくつかの実施態様において、少なくとも1種の水溶性可溶化剤は、PEG-3000、PEG-3350、PEG-4000、PEG-6000である。いくつかの実施態様において、少なくとも1種の水溶性可溶化剤は、PEG-4000である。
【0046】
また37℃以上の溶融温度を有する水溶性可溶化剤としても適切であるのは、平均分子量が6、000~18,000のポロキサマーポリオールとしても知られているか、又はそれらの商品名Pluronics(登録商標)で知られている固体ポロキサマーであり、これは、式HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aHを有する。適切なポロキサマーの例は、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、及びポロキサマー407である。
【0047】
特定の実施態様において、少なくとも10の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤は、単一の成分である。このような成分には、親油性脂肪酸又は脂肪アルコール成分に結合した親水性ポリエチレングリコール(PEG)鎖(例えば、マクロゴール-グリセロールヒドロキシステアレート)が含まれる。PEG鎖の長さが長いほど、つまりHLB値が高いほど、PEG鎖と親油性成分の間で解離が発生する可能性が高くなる。そのような単一成分ビヒクルは、少なくとも10のHLB値を有する非イオン性界面活性剤、及び水溶性可溶化剤として作用する遊離PEGポリマー鎖を提供する。
【0048】
特定の理論に拘束されることを望まないが、少なくとも10のHLB値を有する非イオン性界面活性剤と37℃以上の溶融温度を有する水溶性可溶化剤とを含むカプセル製剤は、いわゆる自己乳化又は自己可溶化システムを提供すると考えられる。経口投与すると、カプセルシェルは胃腸管で溶解し、続いて可溶化剤が胃液に溶解し、同時に分子溶解した化合物1を含むミセルが形成される。従って、化合物1が通常不溶性であるpH値3以上の胃液に囲まれているにもかかわらず、化合物1が溶液で維持されることを可能にするマイクロエマルジョン又はナノエマルジョンが形成される。
【0049】
いくつかの実施態様において、固溶体カプセル製剤は、遊離塩基としての、その中性形態の、又は医薬的に許容し得る塩の形態の化合物1と、ビヒクルとを含み、前記ビヒクルは、マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート及びPEG-4000を含む。
【0050】
いくつかの実施態様において、ビヒクルは、前記固溶体カプセルの総充填重量の約97~99重量%を含む。いくつかの実施態様において、ビヒクルは、前記固溶体カプセルの総充填重量の約98重量%を含む。
【0051】
いくつかの実施態様において、固溶体カプセルは、前記固溶体カプセルの総充填重量の約1~3重量%の化合物1を含む。いくつかの実施態様において、固溶体カプセルは、前記固溶体カプセルの総充填重量の約1~2.8重量%の化合物1を含む。いくつかの実施態様において、固溶体カプセルは、前記固溶体カプセルの総充填重量の約2重量%の化合物1を含む。
【0052】
いくつかの実施態様において、ビヒクルの総重量は、30:70~65:35の比率の、少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含む。好適な実施態様において、マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレートとポリエチレングリコール4000(PEG-4000)との比率は、30:70~65:35である。いくつかの実施態様において、ビヒクルの総重量は、35:65~65:35の比率の、少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含む。好適な実施態様において、マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレートとポリエチレングリコール4000(PEG-4000)との比率は、35:65~65:35である。いくつかの実施態様において、ビヒクルの総重量は、45:55~55:45の比率の、少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含む。好適な実施態様において、マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレートとポリエチレングリコール4000(PEG-4000)との比率は、45:55~55:45である。いくつかの実施態様において、ビヒクルの総重量は、50:50の比率の、少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含む。好適な実施態様において、マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレートとポリエチレングリコール4000(PEG-4000)との比率は、50:50である。いくつかの実施態様において、ビヒクルの総重量は、40:60の比率の、少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含む。好適な実施態様において、マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレートとポリエチレングリコール4000(PEG-4000)との比率は、40:60である。いくつかの実施態様において、ビヒクルの総重量は、30:70の比率の、少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含む。好適な実施態様において、マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレートとポリエチレングリコール4000(PEG-4000)との比率は、30:70である。
【0053】
いくつかの実施態様において、前記固溶体カプセルの総充填重量は、約100mg~約1,000mgである。いくつかの実施態様において、前記固溶体カプセルの総充填重量は、約130mg~約900mgである。いくつかの実施態様において、前記固溶体カプセルの総充填重量は、約250mg~約750mgである。いくつかの実施態様において、前記固溶体カプセルの総充填重量は、約500mgである。
【0054】
いくつかの実施態様において、固溶体カプセルはエタノールを含まない。
【0055】
いくつかの実施態様において、固溶体カプセルは、サイズ#00、#0、#1、#2、#3、#4、又は#5のカプセル内にある。いくつかの実施態様において、固溶体カプセルは、サイズ#00のカプセル内にある。いくつかの実施態様において、固溶体カプセルは、サイズ#0のカプセル内にある。いくつかの実施態様において、固溶体カプセルは、サイズ#1のカプセル内にある。
【0056】
いくつかの実施態様において、カプセルは硬カプセルである。いくつかの実施態様において、カプセルは軟カプセルである。
【0057】
本開示のカプセルは、当技術分野で知られている技術を使用して封止することができる。例えば、ポリソルベート80などの可塑剤を含むゼラチンシーリングバンドを使用して、本明細書に開示されるカプセルを封止することができる。
【0058】
B.固溶体カプセルの作製方法
本明細書では、遊離塩基としての、その中性形態の、又は医薬的に許容し得る塩の形態の化合物1を含む固溶体カプセルを作製するための方法も提供される。本明細書に記載の固溶体カプセル製剤は、ハードシェルカプセルに温めた薬液を充填することによって製造される。温めた薬液をカプセルに充填した後、溶液は固化し、アモルファスマトリックスが形成される。
【0059】
いくつかの態様において、遊離塩基としての、その中性形態の、又は医薬的に許容し得る塩の形態の化合物1
【化8】
と、ビヒクルとを、含む固溶体カプセルの調製方法が本明細書で提供され、ここで、
前記ビヒクルは、少なくとも10の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含み、
前記方法は、
(a)ビヒクルを溶融する工程;
(b)工程(a)で得られた本方法の溶融ビヒクルを化合物1と組み合わせて薬液を生成する工程;
(c)薬液をカプセルシェル内にカプセル化する工程;及び
(d)カプセル化された薬液を冷却して、化合物1を含む固溶体カプセルを形成する工程、を含む。
【0060】
ビヒクルの溶融は、当技術分野における標準的な技術を使用して達成される。溶融するための温度は、ビヒクルの本体に依存する。典型的な溶解技術には、直接加熱オーブンやジャケット付き混合タンクが含まれる。いくつかの実施態様において、工程(a)のビヒクルは、約40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90℃、又はそれ以上の温度に加熱される。いくつかの実施態様において、工程(a)のビヒクルは、約50~85℃に加熱される。いくつかの実施態様において、工程(a)のビヒクルは約50℃に加熱される。いくつかの実施態様において、工程(a)のビヒクルは約60℃に加熱される。いくつかの実施態様において、工程(a)のビヒクルは約70℃に加熱される。いくつかの実施態様において、工程(a)のビヒクルは約80℃に加熱される。
【0061】
いくつかの実施態様において、工程(a)は、以下を含む:
(i)少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を加熱して溶融界面活性剤を生成すること;
(ii)少なくとも1種の水溶性可溶化剤を加熱して溶融可溶化剤を生成すること;そして
(iii)溶融可溶化剤を溶融界面活性剤と合わせて溶融ビヒクルを生成すること。
【0062】
上記のように、工程(a)の溶融は、当技術分野における標準的な加熱技術を使用して実施することができる。これはまた、工程(i)及び(ii)にも当てはまる。いくつかの実施態様において、工程(i)と(ii)の加熱温度は同じである。いくつかの実施態様において、工程(i)と(ii)の加熱温度は異なる。
【0063】
いくつかの実施態様において、工程(i)における少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤は、約40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90℃、又はそれ以上の温度に加熱される。いくつかの実施態様において、工程(i)における少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤は、約50℃~85℃に加熱される。いくつかの実施態様において、工程(i)における少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤は、約50~70℃に加熱される。いくつかの実施態様において、工程(i)における少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤は、約50℃に加熱される。いくつかの実施態様において、工程(i)における少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤は、約60℃に加熱される。いくつかの実施態様において、工程(i)における少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤は、約70℃に加熱される。いくつかの実施態様において、工程(i)における少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤は、約80℃に加熱される。
【0064】
いくつかの実施態様において、工程(ii)における少なくとも1種の水溶性可溶化剤は、約40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90℃、又はそれ以上の温度に加熱される。いくつかの実施態様において、工程(ii)における少なくとも1種の水溶性可溶化剤は、約50~90℃に加熱される。いくつかの実施態様において、工程(ii)における少なくとも1種の水溶性可溶化剤は、約80~85℃に加熱される。いくつかの実施態様において、工程(ii)における少なくとも1種の水溶性可溶化剤は、約50℃に加熱される。いくつかの実施態様において、工程(ii)における少なくとも1種の水溶性可溶化剤は、約60℃に加熱される。いくつかの実施態様において、工程(ii)における少なくとも1種の水溶性可溶化剤は、約70℃に加熱される。いくつかの実施態様において、工程(ii)における少なくとも1種の水溶性可溶化剤は、約80℃に加熱される。
【0065】
いくつかの実施態様において、工程(i)における少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤は、約50~70℃に加熱され、工程(ii)における少なくとも1種の水溶性可溶化剤は、約80~85℃に加熱される。いくつかの実施態様において、工程(i)における少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を約60℃に加熱され、工程(ii)における少なくとも1種の水溶性可溶化剤は、約80℃に加熱される。
【0066】
工程(i)及び(ii)を実行した後、溶融した可溶化剤は、カプセルシェルの許容範囲内の温度に調整された温度を有することができる。例えば、ゼラチンカプセルシェルの温度耐性は約65℃である。異なるカプセルシェルは異なる温度に耐えることができ、当業者は、使用されているカプセルシェルに基づいて適切な温度を容易に特定できるであろう。
【0067】
溶融可溶化剤と溶融界面活性剤とを接触させる場合、一般的に、溶融界面活性剤と溶融可溶化剤との混合を確実にするために攪拌(agitation)が適用される。典型的には、攪拌(stirring)が使用される。撹拌(agitation)/攪拌(stirring)の時間は、溶融界面活性剤及び溶融可溶化剤の成分、調製物のサイズ、及び使用される加熱温度によって異なる。いくつかの実施態様において、攪拌は、0.25、0.5、0.75、1、2時間、又はそれ以上の時間行われる。この工程の間、溶液を脱気するために真空下で攪拌(agitation)を行ってもよい。
【0068】
工程(b)に戻ると、工程(b)において溶融ビヒクルを化合物1と接触させると、薬物は加熱されたビヒクルに溶解する。化合物1の溶解は、適切な時間待つこと、又は溶液を攪拌して溶解速度を上げることを含む多くの技術によって達成することができる。いくつかの実施態様において、工程(b)において化合物1を有する加熱されたビヒクルは、攪拌(stir)することによって撹拌(agitate)される。攪拌時間は1時間~6時間又はそれ以上でもよい。いくつかの実施態様において、攪拌時間は、1、2、3、4、5 6時間、又はそれ以上である。いくつかの実施態様において、攪拌時間は約3.5時間である。
【0069】
薬液のカプセル化は、当技術分野で知られている技術を使用して実施される。カプセル化に有用なそのような機械の1つは、Shionogi F40充填機である。当業者は、追加の同等の機械を承知しているであろう。
【0070】
所望の物質を冷却するための多くの手段が当技術分野で知られている。記載された工程(d)における冷却は、カプセル化された薬液を室温に平衡化させるなどの受動的活動、又はカプセル化された薬液を冷蔵領域に入れて冷却速度を上げるなどのより能動的な工程を含むことができる。
【0071】
当業者は、化合物1を含む固溶体カプセルを調製するために、上記の各工程を記載の順序で実施する必要はないことを認識するであろう。例えば、加熱されたビヒクルに化合物1を溶解して(工程(b))薬物混合物を生成した後、薬物混合物を冷却して固溶体を生成することができる。上記のように、冷却は、カプセル化された薬液を室温に平衡化させるなどの受動的活動、又はカプセル化された薬液を冷蔵領域に入れて冷冷却速度を上げるなどのより能動的な工程を含むことができる。
【0072】
いくつかの実施態様において、ビヒクルの総重量は、30:70~65:35の比率の、少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含む。好適な実施態様において、マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレートとポリエチレングリコール4000(PEG-4000)との比率は、30:70~65:35である。いくつかの実施態様において、ビヒクルの総重量は、35:65~65:35の比率の、少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含む。好適な実施態様において、マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレートとポリエチレングリコール4000(PEG-4000)との比率は、35:65~65:35である。いくつかの実施態様において、ビヒクルの総重量は、45:55~55:45の比率の、少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含む。好適な実施態様において、マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレートとポリエチレングリコール4000(PEG-4000)との比率は、45:55~55:45である。いくつかの実施態様において、ビヒクルの総重量は、50:50の比率の、少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含む。好適な実施態様において、マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレートとポリエチレングリコール4000(PEG-4000)との比率は、50:50である。いくつかの実施態様において、ビヒクルの総重量は、40:60の比率の、少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含む。好適な実施態様において、マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレートとポリエチレングリコール4000(PEG-4000)との比率は、40:60である。いくつかの実施態様において、ビヒクルの総重量は、30:70の比率の、少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含む。好適な実施態様において、マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレートとポリエチレングリコール4000(PEG-4000)との比率は、30:70である。
【0073】
前の段落で説明したように、これらの方法は、固溶体カプセルを調製するために使用される。従って、いくつかの態様において、本明細書に記載の方法に従って調製された化合物1を含む固溶体カプセルも本明細書に提供される。
【0074】
いくつかの実施態様において、遊離塩基としての、その中性形態の、又は医薬的に許容し得る塩の形態の化合物1
【化9】
と、ビヒクルとを、含む固溶体カプセルが本明細書で提供され、ここで、
前記ビヒクルは、少なくとも10の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含み、前記固溶体カプセルは、
(a)ビヒクルを溶融する工程、
(b)工程(a)で得られた溶融ビヒクルを化合物1と組み合わせて薬液を生成する工程;
(c)薬液をカプセルシェルにカプセル化する工程。及び
(d)カプセル化された薬液を冷却して、化合物1を含む固溶体カプセルを形成する工程を含むプロセスにより得られる。
【0075】
C.治療方法
C5a受容体調節に応答する状態に苦しむ個体を治療する方法もまた、本明細書で提供される。
【0076】
いくつかの態様において、本明細書に記載の化合物1を含む有効量の固溶体カプセルを個体に投与することを含む、C5a受容体の病理学的活性化を伴う疾患又は障害に罹患しているか又は感受性の個体を治療する方法が本明細書で提供される。
【0077】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の化合物1を含む固溶体カプセルは、C5a受容体調節に応答する状態に罹患している患者を治療するために使用される。
【0078】
C5a調節で治療できる状態:
自己免疫障害 - 例えば関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、ギランバレー症候群、膵炎、C3糸球体障害(C3G)、化膿性汗腺炎(HS)、ループス腎炎、ループス糸球体腎炎、免疫グロブリンA(IgA)腎症、乾癬、クローン病、血管炎、過敏性腸症候群、皮膚筋炎、多発性硬化症、気管支喘息、天疱瘡、類天疱瘡、強皮症、重症筋無力症、自己免疫溶血性及び血小板減少性状態、グッドパスチャー症候群(及び関連する糸球体腎炎と肺出血)、免疫血管炎、組織移植片拒絶反応、移植臓器の超急性拒絶反応。
【0079】
炎症性障害及び関連する状態 - 例えば好中球減少症、敗血症、敗血症性ショック、アルツハイマー病、多発性硬化症、脳卒中、炎症性腸疾患(IBD)、加齢黄斑変性症(AMD、湿性及び乾性の両方の形態)、重度の火傷による炎症、肺損傷、及び虚血再灌流障害、骨関節炎、並びに急性(成人)呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性肺閉塞性障害(COPD)、全身性炎症応答症候群(SIRS)、アトピー性皮膚炎、乾癬、慢性蕁麻疹、及び多臓器機能不全症候群(MODS)。また、インスリン依存性真性糖尿病(糖尿病性網膜症を含む)、ループス腎症、ヘイマン腎炎、膜性腎炎、及び他の形態の糸球体腎炎、接触感受性反応、及び例えば血液の体外循環中(例えば、血液透析中、又は例えば冠状動脈バイパス移植又は心臓弁置換などの血管手術に関連する心肺装置を介して)に、又は他の人工血管若しくは容器表面との接触(例えば、心室補助装置、人工心臓機械、輸血チューブ、血液保存バッグ、血漿交換、血小板交換など)に関連して起きるような、補体活性化を引き起こす可能性のある血液と人工表面との接触から生じる炎症も含まれる。また、固形臓器移植を含む移植に起因するような虚血/再灌流障害に関連する疾患、並びに虚血性再灌流障害、虚血性大腸炎、及び心虚血などの症候群も含まれる。本明細書に記載の化合物1を含む固溶体カプセルはまた、加齢黄斑変性の治療にも有用であり得る(Hageman et al, P.N.A.S.102: 7227-7232, 2005)。
【0080】
心血管障害及び脳血管障害 - 例えば心筋梗塞、冠動脈血栓症、血管閉塞、術後血管再閉塞、アテローム性動脈硬化症、外傷性中枢神経系損傷、及び虚血性心疾患。1つの実施態様において、本明細書に記載の化合物1を含む固溶体カプセルの有効量は、心筋梗塞又は血栓症のリスクがある患者(すなわち、心筋梗塞又は血栓症の1つ以上の認められた危険因子、例えば、特に限定されるものではないが、肥満、喫煙、高血圧、高コレステロール血症、心筋梗塞又は血栓症の既往歴又は遺伝歴を有する患者)に、心筋梗塞又は血栓症のリスクを減らすために投与することができる。
【0081】
血管炎の疾患 - 血管炎の疾患は、血管の炎症を特徴とする。白血球の浸潤は血管壁の破壊につながり、補体経路は、白血球の遊走の開始と、炎症部位に現れる損傷の結果として主要な役割を果たすと考えられている(Vasculitis, Second Edition, Ball and Bridges編、Oxford University Press, pp 47-53, 2008)。本明細書に記載の化合物1を含む固溶体カプセルは、抗好中球細胞質抗体関連血管炎(又は顕微鏡的多発血管炎を含むANCA関連血管炎、多発血管炎を伴う好酸球性肉芽腫症、及び、またウェゲナー病として知られている多発血管炎を伴う肉芽腫症)、チャーグ-ストラウス症候群、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、結節性多発動脈炎、急速進行性糸球体腎炎(RPGN)、クリオグロブリン血症、巨細胞性動脈炎(GCA)、ベーセット病、高安動脈炎(TAK)を含む血管炎を治療するために使用し得る。
【0082】
HIV感染及びAIDS - 本明細書に記載の化合物1を含む固溶体カプセルは、HIV感染を阻害し、AIDS進行を遅らせ、又はHIV感染及びAIDSの症状の重症度を低下させるために使用し得る。
【0083】
神経変性障害及び関連疾患 - さらなる実施態様において、本明細書に記載の化合物1を含む固溶体カプセルは、アルツハイマー病、多発性硬化症、及び心肺バイパス手術及び関連する操作によ認知機能低下を治療するために使用し得る。
【0084】
癌 - 本明細書に記載の化合物1を含む固溶体カプセルはまた、被験体における癌及び前癌状態の治療に有用である。治療できる特定の癌には、特に限定されるものではないが、肉腫、癌腫、及び混合腫瘍が含まれる。本発明に従って治療することができる例示的な状態には、線維肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨形成肉腫、血管肉腫、リンパ管肉腫、滑膜腫、中皮腫、髄膜腫、白血病、リンパ腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮がん、基底細胞癌、腺癌、乳頭癌、嚢胞腺癌、気管支癌、黒色腫、腎細胞癌、肝細胞癌、移行上皮癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌、ウィルムス腫瘍、多形腺腫、肝細胞パピローマ、腎尿細管腺腫、嚢胞腺腫、乳頭腫、腺腫、平滑筋腫、横紋筋腫、血管腫、リンパ管腫、骨腫、軟骨腫、脂肪腫、及び線維腫が含まれる。
【0085】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の化合物1を含む固溶体カプセルは、敗血症(及び関連する障害)、COPD、関節リウマチ、ループス腎炎、及び多発性硬化症からなる群から選択される疾患の治療に使用することができる。
【0086】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の化合物1を含む固溶体カプセルは、抗好中球細胞質抗体関連(ANCA)血管炎、C3糸球体症、化膿性汗腺炎、及びループス腎炎からなる群から選択される疾患の治療に使用することができる。
【0087】
本明細書で提供される治療方法は、一般に、本明細書に記載の化合物1を含む1種以上の固溶体カプセルの有効量を患者に投与することを含む。適切な患者には、本明細書で特定される障害又は疾患に罹患しているか、又はその可能性がある(すなわち、予防的治療)患者が含まれる。本明細書に記載の治療の典型的な患者には、哺乳動物、特に霊長類、特にヒトが含まれる。他の適切な患者には、イヌ、ネコ、ウマなどのペット動物、又はウシ、ブタ、ヒツジなどの家畜が含まれる。
【0088】
一般に、本明細書で提供される治療方法は、本明細書に記載の化合物1を含む1種以上の固溶体カプセルの有効量を患者に投与することを含む。好適な実施態様において、本明細書に記載の化合物1を含む固溶体カプセルは、患者(例えばヒト)に経口投与される。有効量は、C5a受容体活性を調節するのに十分な量、及び/又は患者によって提示される症状を軽減又は緩和するのに十分な量であり得る。好ましくは投与量は、インビトロで白血球(例えば好中球)の走化性を検出可能に阻害するのに十分高い化合物(又は化合物がプロドラッグである場合はその活性代謝物)の血漿濃度をもたらすのに十分である。治療計画は、使用される化合物及び治療される特定の状態によって異なり得る;ほとんどの障害の治療には、1日4回以下の投与頻度が好ましい。いくつかの実施態様において、1日2回の投与計画が使用される。いくつかの実施態様において、1日1回の投与が使用される。患者は、摂食状態又は絶食状態で、化合物1を含む固溶体カプセルを投与され得る。いくつかの実施態様において患者は、化合物1を含む固溶体カプセルを食物と共に服用する。いくつかの実施態様において患者は、化合物1を含む固溶体カプセルを食物なしで服用する。しかしながら、特定の患者の特定の用量レベル及び治療計画は、年齢、体重、全身の健康、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、薬物の組み合わせ(すなわち、患者に投与されている他の薬物)、及び治療を受けている特定の疾患の重症度、並びに処方する医師の判断を含む様々な要因に依存することが理解されよう。一般に、効果的な治療を提供するのに十分な最小用量の使用が好ましい。患者は、一般に、治療又は予防されている状態に適した医学的又は獣医学的基準を使用して、治療効果について監視することができる。
【0089】
1日あたり体重1キログラムについて約0.1mg~約140mgのオーダーの用量レベルが、病原性C5a活性を含む状態の治療又は予防に有用である(1日あたりヒト患者一人について約0.5mg~約7g)。単回投与剤形は一般に、約1mg~約500mgの化合物1を含む。いくつかの実施態様において単回投与剤形は、10mgの化合物1を含む。血清濃度を達成するために十分な量の化合物1を投与することが好ましい。5ng(ナノグラム)/mL~10g(マイクログラム)/mL血清の血清濃度を達成するのに十分な化合物1を投与することが好ましく、より好ましくは20ng~1μg/ml血清の血清濃度を達成するのに十分な化合物1を投与することが好ましく、最も好ましくは50ng/ml~200ng/mlの血清濃度を達成するのに十分な化合物を投与することが好ましい。
【0090】
D.医薬剤形
本開示は、遊離塩基としての、その中性形態の化合物1の医薬剤形を含む。本明細書に記載の剤形は、被験体への経口投与用の固溶体カプセルである。
【0091】
上記のように、固溶体カプセルは、前記溶液カプセルの総充填重量の約1~2.8重量%の化合物1を含むことができる。いくつかの実施態様において、前記固溶体カプセルの総充填重量は、約130mg~約900mgである。従って、いくつかの実施態様において、単一の単位用量カプセルは、遊離塩基としてその中性形態の1.3mg~25.2mgの化合物1を含むことができる。
【0092】
いくつかの態様において、本開示は、遊離塩基としての、その中性形態の約2.6mg~25.2mgの化合物1
【化10】
と、ビヒクルとを、含む単一の単位用量カプセルを提供し、ここで、
前記ビヒクルは、少なくとも10の親水性-親油性バランス(HLB)値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含む。
【0093】
いくつかの実施態様において、固溶体カプセルは、前記溶液カプセルの総充填重量の約2重量%の化合物1を含む。いくつかの実施態様において、前記固溶体カプセルの総充填重量は、約130mg~約900mgである。そのような実施態様において、単一の単位用量カプセルは、遊離塩基としての、その中性形態の2.6mg~18mgの化合物1を含むことができる。いくつかの実施態様において、単一の単位用量カプセルは、遊離塩基としての、その中性形態の10mgの化合物1を含むことができる。
【0094】
単一の単位用量カプセルの総充填重量は、約100mg~約1,000mgである。いくつかの実施態様において、単一の単位用量カプセルの総充填重量は、約130mg~約900mgである。いくつかの実施態様において、単一の単位用量カプセルの総充填重量は、約250mg~約750mgである。いくつかの実施態様において、単一の単位用量カプセルの総充填重量は、約500mgである。
【0095】
いくつかの実施態様において、単一の単位用量カプセルは、サイズ#00、#1、#2、#3、#4、又は#5である。いくつかの実施態様において、単一の単位用量カプセルはサイズ#0である。いくつかの実施態様において、単一の単位用量カプセルはサイズ#00である。いくつかの実施態様において、単一の単位用量カプセルはサイズ#1である。いくつかの実施態様において、単一の単位用量カプセルはサイズ#2である。いくつかの実施態様において、単一の単位用量カプセルはサイズ#3である。いくつかの実施態様において、単一の単位用量カプセルはサイズ#4である。いくつかの実施態様において、単一の単位用量カプセルはサイズ#5である。
【0096】
いくつかの実施態様において、カプセル剤形は硬カプセルである。いくつかの実施態様において、カプセル剤形は軟カプセルである。
【0097】
いくつかの実施態様において、ビヒクルの総重量は、30:70~65:35の比率の、少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含む。好適な実施態様において、マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレートとポリエチレングリコール4000(PEG-4000)との比率は、30:70~65:35である。いくつかの実施態様において、ビヒクルの総重量は、35:65~65:35の比率の、少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含む。好適な実施態様において、マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレートとポリエチレングリコール4000(PEG-4000)との比率は、35:65~65:35である。いくつかの実施態様において、ビヒクルの総重量は、45:55~55:45の比率の、少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含む。好適な実施態様において、マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレートとポリエチレングリコール4000(PEG-4000)との比率は、45:55~55:45である。いくつかの実施態様において、ビヒクルの総重量は、50:50の比率の、少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含む。好適な実施態様において、マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレートとポリエチレングリコール4000(PEG-4000)との比率は、50:50である。いくつかの実施態様において、ビヒクルの総重量は、40:60の比率の、少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含む。好適な実施態様において、マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレートとポリエチレングリコール4000(PEG-4000)との比率は、40:60である。いくつかの実施態様において、ビヒクルの総重量は、30:70の比率の、少なくとも10のHLB値を有する少なくとも1種の非イオン性界面活性剤と、37℃以上の溶融温度を有する少なくとも1種の水溶性可溶化剤とを含む。好適な実施態様において、マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレートとポリエチレングリコール4000(PEG-4000)との比率は、30:70である。
【0098】
E.キット
本開示はまた、本明細書に記載の化合物1を含む固溶体カプセルを含むキットを包含する。
【0099】
いくつかの態様において、本明細書に記載される化合物1を含む固溶体カプセルを含むキットが本明細書で提供される。いくつかの実施態様において、本明細書に記載される1種以上の単位用量カプセルが本明細書で提供される。
【0100】
本明細書に記載のキットのいくつかは、化合物1を含む固溶体カプセルを投与する方法を説明するラベルを含む。本明細書に記載のキットのいくつかは、C5a受容体の病理学的活性化を含む疾患又は障害を治療する方法を説明するラベルを含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載のキットは、ANCA関連血管炎を治療する方法を説明するラベルを含む。
【0101】
本開示の化合物1を含む固溶体カプセルは、ボトル、ジャー、バイアル、アンプル、チューブ、ブリスターパック、又は食品医薬品局(FDA)又は他の規制機関によって承認された他の容器閉鎖システムに包装することができ、これらは、化合物1又はその医薬的に許容し得る塩を含む固溶体カプセルを含む1つ以上の単位投与量を提供し得る。いくつかの実施態様において、化合物1を含む固溶体カプセルはボトルにパッケージされる。パッケージ又はディスペンサーには、医薬品の製造、使用、又は販売を規制する政府機関によって規定された形式の容器に関連する通知が添付されている場合があり、この通知は、政府機関による承認を示す。特定の態様においてキットは、本明細書に記載の化合物1を含む固溶体カプセル、製剤若しくは製剤を含む1つ以上の単回投与剤形を含む容器閉鎖システム、及び本明細書に記載の使用方法を説明する通知又は説明書を含み得る。
IV.実施例
【0102】
実施例1:遊離塩基である化合物1は低い溶解度を示す
pH調整済み緩衝液(pH2~12)、水、0.1M HCl、模擬胃液(SGF)、摂食状態及び絶食状態の模擬腸液(FeSSIF、FaSSIF)中の化合物1の溶解度を評価し、そのデータは、以下の表1、及び
図1に示されている。
【表1】
【0103】
化合物1遊離塩基は、生体関連媒体及び水(塩作用なし)を含む、pH範囲の全スペクトルにわたって非常に低い水溶性を有する。
【0104】
実施例2:PEG400/EtOH及び化合物1の液体配合物の調製
PEG400/EtOHと化合物1の液体配合物は、当技術分野で知られている液体配合物を作製するための一般的な方法を使用して調製することができる。例えば、化合物1を周囲温度で攪拌してEtOHに溶解し、次に所望の量のPEG400を添加して所望の比率を達成した。
【0105】
冷蔵安定性(5℃/周囲)、室温(25℃/60%RH)、通常の実験室光条件、及び加速安定性(40℃/75%RH)で保存された、PEG-400/エタノール中の全ての3つの濃度配合物は、1週間後に安定しているように見え、化合物1のアッセイ値はラベル記載値の98.1~103.1%の範囲であった。1週間後にすべての配合物で検出された総不純物は、総ピークの0.28~0.34%a/aの範囲であり;最も高い個々の不純物は0.17%a/aで、相対保持時間は0.90~0.94であった。
【0106】
これらの結果にもかかわらず、エタノールを含む配合物は、用量の調製及び貯蔵の両方の間にエタノールが蒸発するために、用量の不正確さ及び未溶解の薬物が入り込む可能性がある。そのため、エタノールを含む配合物は必要な属性を提供しない。
【0107】
実施例3:化合物1を含む液体配合物の代替賦形剤の探索
本実施例の液体配合物は、実施例2に記載されるように調製される。追加の賦形剤が含まれる場合、それらは、化合物1がエタノールに溶解した後に添加される。
【0108】
この試験のデータは、以下の表2に要約されている。
【表2-1】
【表2-2】
【0109】
本明細書で試験された具体的な配合物は、完全に溶解された化合物1を提供した。この約束にもかかわらず、最も陽性の配合物はそれぞれエタノールを含み、これは、実施例2に記載されるように、用量の調製及び貯蔵の両方の間にエタノールが蒸発するために、用量の不正確さ及び未溶解の薬物が入り込む可能性がある。
【0110】
実施例4:マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000の50:50混合物中に化合物1を含む固溶体カプセルの調製
化合物1固溶体カプセルの製造は、硬ゼラチンカプセルを充填するのに適した従来の医薬経口剤形装置を利用した。カプセル充填質量部は、攪拌機/ホモジナイザーを備えた標準的な加熱ステンレス鋼容器である。
【0111】
製造プロセスに必要な典型的な機器のリストは、表3に見出される。機器の例は、情報提供のみを目的としてリストされている。
【表3】
【0112】
医薬品製造プロセスの工程内管理は、表4に要約されている。
【表4】
【0113】
原薬の溶解を検証するための目視試験に加えて、遠心分離試験を実施した。容器から試料を採取し、遠心分離し、溶解していない原薬がないように制御した。原薬が完全に溶解していない場合は、遠心分離管の先端に白い粒子が見える。
【0114】
化合物1の10mg固溶体カプセルは、表5に要約された成分を用いて調製される。
【表5】
【0115】
表5の固溶体製剤は、
図2に示される製造プロセスに従って調製された。使用された工程の詳細を以下に示す:
1. マクロゴール-グリセロールヒドロキシステアレートを、60±10℃の直接加熱オーブンで溶融した。
2. ポリエチレングリコール-4000(PEG-4000)を、ジャケット付き混合タンクで約80~85℃で溶融した。PEG-4000が大部分溶解すると、攪拌が始まる。
3. 溶融したPEG-4000が入ったジャケット付き混合タンクを60±10℃に冷却した。溶融したマクロゴール-グリセロールヒドロキシステアレートをタンクに加え、真空下で混合して溶液を脱気する。
4. 化合物1を混合タンクに加え、60±5℃で少なくとも3.5時間撹拌して完全に溶解した。
5. サイズ0のカプセルを、容積式ポンプを備えた自動カプセル化装置を使用して、目標の500mg充填重量まで充填した。ジャケット付きカプセル化ホッパー内の充填溶液を、カプセル充填操作中、約60~65℃に維持した。
6. 充填されたカプセルは、約50~55℃で維持されたゼラチンバンドで封止された。
7. 完成したカプセルをトレイ上で室温で乾燥させた。
【0116】
ゼラチンカプセルシェル及びゼラチンシーリング溶液の組成は、それぞれ表6及び表7に記載されている。
【表6】
【表7】
【0117】
実施例5:代替マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000製剤の試験
実施例4に概説された一般的操作を使用して、マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000の製剤を調製した(50:50、70:30、30:70、及び90:10(w/w)マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000)。
【0118】
調製された製剤のそれぞれを、示差走査熱量測定(DSC)を使用して特性評価した。50:50及び30:70のマクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000を含む製剤は、DSCサーモグラムに1つの広い吸熱ピークを有するようであり、1つの混和性固相を示唆している(それぞれ
図3及び
図4を参照)。比較すると、90:10及び70:30を有するマクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000配合物を含む製剤は、DSCサーモグラムに2つの別個の吸熱ピークを示し、潜在的な相分離を示す(
図5を参照、データは示していない)。
【0119】
実施例6:化合物1を含む固溶体カプセルの溶解プロフィール
30:70及び50:50(w/w)のマクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000を含む化合物1の固溶体カプセルを、実施例4に記載のように調製した。
【0120】
溶解進行試験のために、37.0±0.5℃で900mLの媒体容量を有するUSP装置II(パドル)が選択された。容器は1000mL、透明ガラス、丸底である。媒体は生理的条件を表す。溶解試験中に十分な攪拌を確保し、崩壊中にカプセルをパドル攪拌ゾーンに維持するために、バスケットよりもシンカー付きのパドルを選択した。
【0121】
図6は、試験された各試料の溶解をプロットしている。50:50のマクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000試料は急速な溶解を示したが、30:70マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000試料はより遅い初期溶解特性を示した。
【0122】
50:50のマクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000ブレンドの再現性を確認するために、50:50製剤を調製する複数のロットからの試料を試験した。確かに
図7は、迅速で再現性のある化合物1の放出が達成されることを示している。
【0123】
実施例7:マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000の50:50混合物中に化合物1を含む固溶体カプセルの強制分解
化合物1固溶体カプセル中の強制分解生成物の同定は、フォトダイオードアレイ検出を備えたHPLCを使用して実施された。カプセルをストレス条件(酸、塩基、過酸化物、熱、光、熱、湿度)に曝露し、ストレス試料からのクロマトグラムとデータをストレスのない対照試料と比較した。ストレスを受けた試料では検出されたが、ストレスを受けていない対照試料では検出されなかった分解生成物のみが報告された。ストレスを受けた条件下の結果の要約は、カプセルについては表9に、ストレスを受けたカプセルについて見られた分解生成物については表10に要約されている。試験した各条件の詳細は表8に示される。試験したすべてのストレス条件で、化合物1のピークは、ダイオードアレイ検出のピーク純度の結果に基づいて、潜在的な分解生成物からの共溶出又は干渉を示さなかった。
【表8】
【表9】
【表10】
【0124】
評価されたストレス条件では、プラセボカプセルの分解は観察されなかった。
【0125】
化合物1カプセルは、酸化ストレス下で最も分解することが見出され、合計15個の分解物が観察された。酸加水分解は3つの分解物を生成し、塩基加水分解は2つの分解物を生成し、熱と熱/湿度は1つの分解物を生成した(RRT0.78)。0.78のRRTでの不純物は、熱(80℃)及び酸化ストレス下ではわずかに増加したが、酸性又は塩基性条件下では変化しなかった。
【0126】
全体として、この試験は、化合物1固溶体カプセルが、酸化ストレスを除いたすべてのストレス条件に曝露されたときに、非常に安定していることを示している。
【0127】
実施例8:イヌにおける固溶体カプセルの薬物動態データ
50:50のマクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000又は100%マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレートを含む化合物1の固溶体カプセルを、実施例4に記載の一般的操作を使用して調製した。100%マクロゴール-40グリセロールヒドロキシステアレート製剤については、PEG加熱工程を省略した。これらの製剤は、ビーグル犬(オス)に1匹あたり20mgを投与して、薬物動態プロフィールを評価した。結果を表11に要約する[下記、及び
図8(50:50のマクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000)と
図9(100%マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート)に示される]。
【表11】
【0128】
100%マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート製剤は、高い生物学的利用能(AUC比較によって決定される)を提供したが、100%マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート製剤はそれほど安定ではない。平行した安定性の比較において、イヌに投与された両方の製剤を50℃で3ヶ月間保存した。100%マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート製剤は不純物の増加(RRT0.78)を示したが、50:50のマクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート製剤:PEG-4000製剤は変化しなかった。これは、100%マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート製剤が医薬品用途に適していないのに対し、50:50製剤は医薬品用途に適していることを示している。
【0129】
実施例9:ANCA関連血管炎を有するヒトにおける固溶体カプセルの薬物動態データ
50:50のマクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000を含む化合物1の固溶体カプセルを、実施例4に記載の一般的操作を使用して調製した。
【0130】
AAVを有する患者を無作為化し、二重盲検プラセボ対照臨床試験を段階的に実施して、プレドニゾンが減少しているか又はプレドニゾンがない上記の固溶体で配合された化合物1の有効性と安全性を、標準治療の全用量プレドニゾンと比較して評価した。すべての患者は、シクロホスファミド(CYC)又はリツキシマブ(RTX)のいずれかを静脈内投与された。22人の被験者は上記のように30mgの化合物1を1日2回で84日間、プレドニゾンなし(プレドニゾン一致プラセボ)で投与され、22人の被験者は上記のように30mgの化合物1を1日2回で84日間、プレドニゾンの開始用量を減らして(すなわち20mg/日)投与され、23人の被験者は上記のように化合物1に一致するプラセボを1日2回84日間、プレドニゾンの完全な開始用量(すなわち60mg/日)で投与された。すべての被験者は、シクロホスファミド又はリツキシマブを静脈内投与された。
【0131】
化合物1のPKパラメーター及びその平均トラフ濃度を表12に示す。1日目に30mgの化合物1を最初に投与した後、化合物1は急速に吸収された。化合物1のAUC
0-6hr及びC
maxは、それぞれ580±219ng・hr/mL及び188±69ng/mLであった(これらのPKの結果は、プレドニゾン有り又は無しで投与された患者からのデータを使用して計算された)。これらのAAV患者(プレドニゾン同時投与なし:C
max=166±55.2ng/mL)の化合物1の1日目のC
maxは、同じ剤形を投与された健康な被験者のそれと類似しており、単回経口投与後の化合物1の結果においてAAV患者と健康な被験者との間に意味のある違いがないことを示唆している
の曝露における。
【表12】
【0132】
この試験では、化合物1と、併用薬であるプレドニゾン、シクロホスファミド、及びリツキシマブとの間に、有意な薬物間相互作用は観察されなかった。
【0133】
実施例10:マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000の50:50混合物中に化合物1を含む固溶体カプセルに対する食物の影響
マクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000の混合物中の50:50混合物中の化合物1の固溶体カプセルに対する、高脂肪(食事の総カロリー含有量の約50%)、高カロリー食の薬物動態学的作用を評価するための、16人の健康なボランティアにおけるオープンラベル試験。被験者は、摂食状態又は絶食状態で30mgの化合物1の単回経口投与を受けた。化合物1の血漿濃度を測定するために血液試料を収集した。
【0134】
この試験の結果は、30mgの化合物1を有する高脂肪、高カロリー食の投与が、絶食条件下での投与と比較して、血漿化合物1のAUCを約70%増加させることを証明した。C
maxはほぼ同等であり、絶食条件下と比較して摂食条件下ではわずか8%の増加であった;しかしT
maxは摂食集団では約3時間遅かった(
図10及び表13)。
【表13】
【0135】
実施例11:固溶体カプセル製剤の安定性
実施例4に記載のように調製された50:50のマクロゴール-40-グリセロールヒドロキシステアレート:PEG-4000を含む化合物1の固溶体カプセル中の原薬の物理的状態を、65%未満のRH及び25℃で2年以上保存したカプセルで評価した。
【0136】
選択されたカプセルのカプセル充填物をカプセルシェルから取り出し、
19F固体核磁気共鳴(SS-NMR)を使用して分析した。
図11に示されるように、それぞれ-62ppm又は-122ppm領域におけるトリフルオロメチル(-CF
3)とフッ化アリール(CF)基のカップリング現象は観察されず、これは結晶性化合物1の原薬の特徴である。従って、カプセル充填マトリックス中の原薬は、クラッシュの兆候なしにマトリックス内に分子的に溶解したままであった。
【0137】
実施例12:化合物1を含む固溶体カプセルのバッチ調製
実施例4に概説された一般的な操作を使用して、300,000単位の10mg硬カプセルを製造するバッチサイズが調製された。調製に使用された量を表14及び表15に示す。
【表14】
【表15】
【0138】
前述の発明は、理解を明確にする目的で例示及び例によりある程度詳細に説明されているが、当業者は、添付の特許請求の範囲内で特定の変更及び修正が実施され得ることを理解するであろう。さらに、本明細書で提供される各参照は、各参照が参照によって個別に組み込まれた場合と同じ程度に、その全体が参照によって組み込まれる。本出願と本明細書で提供される参照との間に矛盾が存在する場合は、本出願が優先するものとする。