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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】帯電ロール
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20230904BHJP
   G03G 15/02 20060101ALI20230904BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20230904BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20230904BHJP
   B32B 25/04 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
G03G15/00 551
G03G15/02 101
F16C13/00 B
F16C13/00 A
B32B1/08 Z
B32B25/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021541904
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 JP2019033944
(87)【国際公開番号】W WO2021038799
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(74)【代理人】
【識別番号】100125335
【弁理士】
【氏名又は名称】矢代 仁
(72)【発明者】
【氏名】大浦 孝祐
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章吾
(72)【発明者】
【氏名】福岡 智
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 憲司
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-080986(JP,A)
【文献】特開2010-048869(JP,A)
【文献】特開2003-316111(JP,A)
【文献】特開2014-089415(JP,A)
【文献】特開2009-265157(JP,A)
【文献】特開2005-043621(JP,A)
【文献】特開平10-048916(JP,A)
【文献】特開2013-073130(JP,A)
【文献】特開2008-112150(JP,A)
【文献】特開2002-304053(JP,A)
【文献】特開2008-122915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 15/02
F16C 13/00
B32B 1/08
B32B 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、前記芯材の周囲に配置されたゴム基材と、前記ゴム基材の周囲に配置された表層とを備え、
前記表層の表面の山頂点の算術平均曲Spcが、1,880(1/mm)以上、14,024(1/mm)以下であり、
前記表層の表面の山の頂点密度Spdが、93,406(1/mm)以上、151,476(1/mm)以下であり、
単位投影面積あたりの前記表層の表面積が、1.255以上、5.132以下であり、
前記表層は、ウレタン樹脂から形成されたベース材と前記ベース材に分散された導電材を含む導電性マトリックスと、前記導電性マトリックスに分散された表面粗さ付与材の粒子を有し、前記表面粗さ付与材の粒子は、平均粒径が6~32μmのウレタン粒子である
ことを特徴とする帯電ロール。
【請求項2】
芯材と、前記芯材の周囲に配置されたゴム基材と、前記ゴム基材の周囲に配置された表層とを備え、
前記表層の表面の山頂点の算術平均曲S pc が、1,880(1/mm)以上、14,024(1/mm)以下であり、
前記表層の表面の山の頂点密度S pd が、93,406(1/mm )以上、151,476(1/mm )以下であり、
単位投影面積あたりの前記表層の表面積が、1.255以上、5.132以下であり、
前記表層は、絶縁体から形成されたベース材と前記ベース材に分散された導電材を含む導電性マトリックスと、前記導電性マトリックスに分散された絶縁体製の表面粗さ付与材の粒子を有し、前記表層の表面に前記表面粗さ付与材の各粒子の表面の一部が露出している
ことを特徴とする帯電ロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置の帯電ロール関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式複写機等の画像形成装置における画質は、感光体の帯電状態の均一性に依存しており、帯電ロールの表面粗さが、帯電状態の均一性に影響する。従来、帯電ロールの表面粗さに言及した技術としては、特許文献1~3が知られている。
【0003】
特許文献1には、導電性支持体と、導電性支持体上に積層された導電性弾性体層と、導電性弾性体層上に最外層として積層された導電性樹脂層とからなる帯電部材(帯電ロール)に関する技術が記載されている。導電性樹脂層はマトリックス材料と、樹脂粒子及び無機粒子からなる群より選択される少なくとも一種の粒子を含有し、粒子は第一の粒子を含有し、導電性樹脂層におけるマトリックス材料単独で形成される部分の層厚をA[μm]、粒子の平均粒子径をB1[μm]、及び粒子の粒子間距離をS[μm]としたとき、Aが10μm~7.0μmであり、B1/Aが5.0~30.0であり、Sが50μm~400μmである。
【0004】
特許文献2には、正帯電単層型電子写真感光体と、感光体の表面を帯電するための接触帯電部材を有する帯電装置と、帯電された像担持体の表面を露光して、像担持体の表面に静電潜像を形成するための露光装置と、静電潜像をトナー像として現像するための現像装置と、トナー像を像担持体から被転写体へ転写するための転写装置とを備える画像形成装置に関する技術が記載されている。接触帯電部材は、ゴム硬度がAsker-C硬度で62°~81°である導電性のゴムからなる帯電ローラであり、接触帯電部材の帯電ローラのローラ表面粗度が、凹凸の平均間隔Sで55μm~130μmであり、かつ十点平均粗さRで9μm~19μmである。
【0005】
特許文献3には、導電性支持体と、導電性支持体上にロール状に形成された半導電性弾性層と、半導電性弾性層の表面に形成された保護層とを具備する帯電ローラに関する技術が記載されている。保護層は、保護層への外部物質の付着を防止する機能を発現する微粒子を含有した保護層形成用塗工液を塗工することにより形成され、微粒子の体積平均粒径は保護層の表面粗さが1μm以下となるように微細化されている。
【0006】
特許文献1~3によれば、帯電ロールの最表面の表面粗さを、表層に含有させた微粒子により調整することで、帯電ロールと感光体間の放電をできるだけ均一化して、画像品質を向上させようとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-121769号公報
【文献】特開2012-14141号公報
【文献】特開2005-91414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
画像形成装置に対して、高い画像品質の要求が高まっている。
【0009】
本発明は、画像ムラを低減することが可能な帯電ロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る帯電ロールは、芯材と、前記芯材の周囲に配置されたゴム基材と、前記ゴム基材の周囲に配置された表層とを備え、前記表層の表面の山頂点の算術平均曲(arithmetic mean peak curvature)Spcが、1,880(1/mm)以上、14,024(1/mm)以下であり、前記表層の表面の山の頂点密度(density of peaks)Spdが、93,406(1/mm)以上、151,476(1/mm)以下であり、単位投影面積あたりの前記表層の表面積が、1.255以上、5.132以下である。この態様によれば、画像ムラを低減することができる。
【0011】
好ましくは、前記表層は、絶縁体から形成されたベース材と前記ベース材に分散された導電材を含む導電性マトリックスと、前記導電性マトリックスに分散された表面粗さ付与材の粒子を有する。
【0012】
好ましくは、前記表面粗さ付与材の粒子は、絶縁体から形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る帯電ロールを使用する画像形成装置の一例を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る帯電ロールの一例を示す断面図である。
図3】帯電ロールの軸方向に沿って切断したゴム基材と表層の断面図である。
図4】帯電ロールの単位投影面積あたりの表層の表面積を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。面において縮尺は、必ずしも実施形態の製品またはサンプルを正確に表してはおらず、一部の寸法を誇張して表現している場合もある。
【0015】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る画像形成装置は、感光体1を備える。感光体1の周囲には、現像部2、露光部3、帯電部4、転写部6及びクリーニング部5が配置されている。現像部2には、現像ロール20、規制ブレード21及び供給ロール22が設けられ、トナー23が充填されている。帯電部4には、帯電ロール40が設けられている。転写部6は、記録媒体である紙のシート60にトナー画像を転写する。転写部6で転写されたトナー画像は、図示しない定着部で定着される。
【0016】
円柱状であり回転する感光体1と円柱状であり回転する帯電ロール40は、ニップ50で接触する。感光体1と帯電ロール40の回転方向におけるニップ50の手前の領域51(場合によっては、手前の領域51に加えてニップ50の後の領域52)において、感光体1と帯電ロール40の間で放電が起こり、感光体1の表面が帯電される。感光体1の表面の帯電状態は、感光体1の周方向および軸線方向にわたって一様であることが好ましい。
【0017】
図2は、本発明の実施形態に係る帯電ロールの一例を示す断面図である。図2に示すように、帯電ロール40は、芯材401と、芯材401の外周面に形成されたゴム基材402と、ゴム基材402の外周面にコーティングされた表層403とを有する。ゴム基材402の外周面にコーティング成分によって表層403を形成し、その表層403の表面状態を適切にすることにより、感光体1と帯電ロール40の間の放電ムラが解消されて、感光体1に均一に放電することが可能となり、露光部3で形成された潜像に正確に対応する量のトナーを現像部2は感光体1の表面に付着させることができる。
【0018】
<芯材>
芯材401は、限定されるわけではないが、熱伝導性及び機械的強度に優れた金属又は樹脂材料から形成することができ、例えば、ステンレス鋼、ニッケル(Ni)、ニッケル合金、鉄(Fe)、磁性ステンレス、コバルト-ニッケル(Co-Ni)合金等の金属材料や、PI(ポリイミド樹脂)等の樹脂材料から形成することができる。また、芯材401の構造についても特に制限はなく、中空であっても、中空でなくてもよい。
【0019】
<ゴム基材>
ゴム基材402は、芯材401の外周面に配置されており、導電性を有する導電性ゴムによって形成されている。ゴム基材402は、1層であっても、2層以上であってもよい。また、芯材401とゴム基材402の間に、必要に応じて密着層や調整層等を設けてもよい。
【0020】
ゴム基材402は、導電性ゴムに導電性付与材や架橋剤等を添加して得られたゴム組成物を、芯材401の周囲に、成形することによって形成できる。導電性ゴムとしては、ポリウレタンゴム(PUR)、エピクロルヒドリンゴム(ECO)、ニトリルゴム(NBR)、スチレンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)等を挙げることができる。
【0021】
導電性付与材としては、カーボンブラック、金属粉等の電子導電性付与材、イオン導電付与材、又はこれらを混合して用いることができる。
【0022】
イオン導電付与材としては、有機塩類、無機塩類、金属錯体、イオン性液体等が挙げられる。有機塩類としては、三フッ化酢酸ナトリウム等が挙げられ、無機塩類としては、過塩素酸リチウム、4級アンモニウム塩等が挙げられる。また、金属錯体としては、ハロゲン化第二鉄-エチレングリコール等が挙げられ、具体的には、特許第3655364号公報に記載されたものを挙げることができる。イオン性液体は、室温で液体である溶融塩であり、常温溶融塩とも呼ばれるものであり、特に、融点が70℃以下、好ましくは30℃以下のものをいう。具体的には、特開2003-202722号公報に記載されたものを挙げることができる。
【0023】
また、架橋剤としては、特に限定されず、例えば、硫黄や過酸化物加硫剤等が挙げられる。
【0024】
さらに、ゴム組成物には、必要に応じて架橋剤の働きを促進させる架橋助剤等を加えてもよい。架橋助剤としては、無機系の酸化亜鉛や酸化マグネシウム、有機系のステアリン酸やアミン類等が挙げられる。また、架橋時間の短縮等の目的で、チアゾール系、またはその他の架橋促進剤を用いてもよい。ゴム組成物には、必要に応じて他の添加剤を加えてもよい。
【0025】
本実施形態において、芯材401の外周面に形成されたゴム基材402の表面を研磨機で研磨し、所定の厚さに合わせた後、研磨砥石による乾式研磨を行った後に、ゴム基材402の外周面に表層403を形成する。このように研磨を行うのは、ゴム基材402の表面粗さを適切に調整し、その外側の表層403の表面状態を調整するためである。
【0026】
ゴム基材402の表面粗さを極力小さくする場合、ゴム基材402の表面粗さ(JIS B 0601:1994に準拠する十点平均粗さ(ten point height of irregularities))Rは、8.5μm以下であることが好ましい。この場合、表面粗さRは、接触式の表面粗さ計により測定された値である。
【0027】
乾式研磨は、例えば、ゴム基材402を回転させた状態で、回転砥石をゴム基材402に接触させながら軸方向に移動させることにより行う(トラバース研磨)。ゴム基材402の表面粗さを極力小さくする場合には、回転の際に、例えば、研磨機の砥石回転数を1000rpm、2000rpm、3000rpmのように順次上げてもよい。或いは、研磨砥石の種類を変更してもよく、例えば、GC(green carborundum)砥石番手をGC60、GC120、GC220のように順次上げて研磨してもよい。
【0028】
また、ゴム基材402の表面を乾式研磨した後に、更に耐水研磨ペーパー等を用いて湿式研磨機で湿式研磨を施して研磨してもよい。ここで、湿式研磨は、耐水研磨ペーパー、例えば、耐水性のサンドペーパーを用い、これに研磨液を供給しながらゴム基材402を回転させた状態で当接させることにより研磨する。
【0029】
<ゴム基材のゴム硬度>
ゴム基材402について、デュロメータ(「JIS K 6253」および「ISO 7619」に準拠した「タイプA」)を用いて測定した硬度は、50°~64°の範囲が好ましい。
【0030】
ゴム基材402の外側の表層403は薄いため、帯電ロール40の表面の硬度は、ゴム基材402に影響される。ゴム基材402の硬度が50°未満であると、帯電ロール40の表面の凸部が潰れて、感光体1が汚れやすく、画像不良が発生する。一方、ゴム基材402の硬度が64°より大きいと、帯電ロール40の表面の凸部が画像に反映されるおそれがある。
【0031】
<表層>
本実施形態では、ゴム基材402の外周面に、コーティング液を塗布し、乾燥硬化させることにより、表層403を形成することができる。コーティング液を塗布する方法としては、ディップコート法、ロールコート法、スプレーコート法等を用いることができる。
【0032】
図3に示すように、硬化した表層403は、導電性マトリックス404と、導電性マトリックス404に分散された例えば絶縁性の表面粗さ付与材(粗さ付与材ともいう。)の粒子405を有する。粗さ付与材の粒子405は、表層403に適切な表面粗さを与える。導電性マトリックス404は、粗さ付与材の粒子405を固定位置に保持する役割と、感光体1に対する放電を行う役割を果たす。導電性マトリックス404は、ベース材とベース材に分散された導電剤を有する。上記の通り、領域51(および場合により領域52)において、帯電ロール40と感光体1の間で放電が起こる。
【0033】
図3に示す例では、粗さ付与材の粒子405は導電性マトリックス404内に完全に埋没していないが、完全に埋没していてもよい。導電性マトリックス404の厚さが小さい場合には、粗さ付与材の粒子405を保持する能力が低いため、粗さ付与材の粒子405の直径に対して、導電性マトリックス404は適切な厚さを有するのが好ましい。粗さ付与材の粒子405が絶縁体であって、導電性マトリックス404の厚さが大きく、導電性マトリックス404の電気抵抗が大きい場合には、放電が発生しにくくなりがちであるが、導電性マトリックス404に含まれる導電剤の割合を向上させることにより、導電性マトリックス404の電気抵抗を低減して、放電を発生させやすくすることができる。
【0034】
本実施形態においては、表面粗さが調整されたゴム基材402の上に形成された表層403に粗さ付与材の粒子405が分散されていることにより、表層403の表面状態が調整されている。
【0035】
本実施形態において、表層403の導電性マトリックス404の膜厚は、適切な数値範囲内にあることが好ましいと考えられる。この厚さが大きすぎる場合には、表層403の表面粗さが小さくなりすぎて、画像ムラの原因となると考えられる。
【0036】
また、本実施形態において、表層403の粗さ付与材の粒子405の含有率は、適切な数値範囲内にあることが好ましいと考えられる。粒子含有量が多い場合、粒子同士が重なり合うため、表層403の表面が粗くなり、画像ムラの原因となると考えられる。
【0037】
本実施形態において、表層403の材料であるコーティング液の成分は、ベース材、導電剤及び表面粗さ付与材の粒子405を少なくとも含有する。コーティング液の硬化後に、ベース材と導電剤は、導電性マトリックス404の成分となる。
【0038】
コーティング液は、たとえば、下記組成の成分を希釈溶剤に溶解させて得られる。
・ベース材 :10重量部~80重量部。
・導電剤:1重量部~50重量部。
・表面粗さ付与材:コーティング液全量の70重量%以下。
【0039】
表層403の表面状態が適切である場合に、帯電ロール40と感光体1が接触するニップの手前のギャップにおいて、帯電ロール40と感光体1間の放電がほぼ均一化され、画像形成時に放電ムラが生じることなく、所望の濃度の画像が形成され、画像品質が向上すると考えられる。
【0040】
表面粗さ付与材の粒子405の粒径および添加量を適切に調整することにより、表層403の表面状態を適切に調整することができると考えられる。
【0041】
<ベース材>
コーティング液に含まれるベース材は絶縁体である。ベース材としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アミノ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、メラミン樹脂、ナイロン樹脂等が挙げられる。これらのベース材は、単独で又は任意の組み合わせで用いることができる。
【0042】
<導電剤>
コーティング液に含まれる導電剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、トーカブラック等のカーボンブラック、カーボンナノチューブ、過塩素リチウム等のイオン、ヘキサフルオロリン酸1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム等のイオン性液体、酸化スズ等の金属酸化物、導電性ポリマーが挙げられる。これらの導電剤は、単独で又は任意の組み合わせで用いることができる。
【0043】
<表面粗さ付与材>
コーティング液に含まれる表面粗さ付与材の粒子405としては、アクリル粒子、ウレタン粒子、ポリアミド樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、フッ素樹脂粒子、スチレン樹脂粒子、フェノール樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、オレフィン樹脂粒子、エポキシ樹脂粒子、ナイロン樹脂粒子、カーボン、グラファイト、炭化バルン、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、タルク、カオリンクレー、珪藻土、ガラスビーズ、中空ガラス球等が挙げられる。これらの粒子は、単独で又は任意の組み合わせで用いることができる。
【0044】
画像品質を向上するために、コーティング液中の表面粗さ付与材の粒子405の粒径と粒子含有率との関係については、好ましい範囲があると考えられる。
【0045】
<希釈溶剤>
コーティング液に含まれる希釈溶剤としては、特に限定されないが、水系、又は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メタノール、エタノール、ブタノール、2-プロパノール(IPA)、アセトン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、クロロホルム等の溶剤系等が挙げられる。
【実施例
【0046】
以下、本実施形態の実施例を更に具体的に説明する。
【0047】
実験1
<ゴム基材の準備>
エピクロルヒドリンゴム(エピクロマーCG-102;株式会社大阪ソーダ(日本国大阪府)製)100重量部に、導電性付与材としてトリフルオロ酢酸ナトリウム0.5重量部、亜鉛華3重量部、ステアリン酸2重量部、架橋剤1.5重量部を添加したゴム組成物をロールミキサーで混練りした。
【0048】
混練りしたゴム組成物をシート状の生地にして、直径6mmの芯材401(芯金)の表面に巻いて、プレス成形し、架橋したエピクロルヒドリンゴムからなるゴム基材402を得た。
【0049】
デュロメータ(「JIS K 6253」および「ISO 7619」に準拠した「タイプA」)を用いて、得られたゴム基材402の硬度を測定した結果、測定値は、50°~64°であった。
【0050】
<ゴム基材表面の研磨>
ゴム基材402の表面を研磨機で研磨した。具体的には、得られたゴム基材402の表面を研磨機で研磨して、所定の厚さ(1.25mm)に合わせた後、研磨機の砥石回転数を1000rpm、2000rpm、3000rpmのように順次上げて乾式研磨で研磨した。すなわち、実験1では、ゴム基材402の表面粗さを極力小さくした。
【0051】
<コーティング液の調製>
上記のゴム基材402の外周面に表層403を形成するためのコーティング液を作製した。
【0052】
コーティング液の組成は、表1に示す通りである。
【表1】
【0053】
ウレタン粒子としては、根上工業株式会社(日本国東京都)製のウレタンビーズを用いた。
【0054】
ウレタンビーズの平均粒径と製品名との関係は以下の通りである。但し、実際には、一つの製品は、平均粒径と異なる粒径の粒子を含む。
6μm:ウレタンビーズ「C-800」
10μm:ウレタンビーズ「C-600」
15μm:ウレタンビーズ「C-400」
22μm:ウレタンビーズ「C-300」
【0055】
実験1では、異なる粒径と異なる量の表面粗さ付与材の粒子405を含むコーティング液の塗布によって、表層403の表面状態が異なるサンプルを製造した。これらのサンプルでの粒子405の粒径と量は、表2に示す通りである。表2において、サンプル1~サンプル11が実験1のサンプルである。但し、サンプル6では、粗さ付与材の粒子405が表層403に含まれていない。
【0056】
上記組成のコーティング液を、ボールミルで3時間分散混合した。
【0057】
【表2】
【0058】
<帯電ロールの作製>
研磨したゴム基材402の外周面に、上記コーティング液を塗布して表層403を形成し、帯電ロール40を作製した。具体的には、コーティング液を撹拌し、その液をゴム基材402の表面にスプレーコートして、電気炉にて120℃で60分間乾燥し、ゴム基材402の外周面に表層403を形成し、帯電ロールを作製した。
【0059】
<山頂点の算術平均曲Spcと山の頂点密度Spdの測定>
表層403の表面の山頂点の算術平均曲(arithmetic mean peak curvature)Spc(ISO 25178に準拠)と、表層403の表面の山の頂点密度(density of peaks)Spd(ISO 25178に準拠)を測定した。
【0060】
まず、帯電ロール40の軸線方向の中央部の表面を非接触式のレーザー顕微鏡を用いて撮影した。使用したレーザー顕微鏡は、株式会社キーエンス(日本国大阪府)製の「VK-X200」であった。倍率は400倍であり、撮影した視野は、帯電ロール40の周方向に528.7μm、帯電ロール40の軸線方向に705.1μmであった。
【0061】
次に、株式会社キーエンス製のマルチファイル解析アプリケーション「VK-H1XM」のVersion1.2.0.116で、撮影で得られた幾何学データの2次曲面補正を行った。2次曲面補正は、撮影で得られた幾何学データから、帯電ロール40の円筒状の表面の円筒面に相当するデータ成分を除去する処理である。換言すれば、撮影で得られた円筒表面の幾何学データを平面に対する幾何学データに変換する処理である。
【0062】
この後、このアプリケーションで、山頂点の算術平均曲Spcと山の頂点密度Spdを計算した。山頂点の算術平均曲Spcと山の頂点密度Spdの計算でのWolfプルーニング(Wolf pruning)の値は5%であった。すなわち、輪郭曲線の最大振幅(最大高さと最低高さの差)の5%より大きい振幅を持つ領域から、山頂点の算術平均曲Spcと山の頂点密度Spdを計算した。このようにして得られた山頂点の算術平均曲Spcと山の頂点密度Spdは、表2に示す通りである。
【0063】
<単位投影面積あたりの表層の表面積の測定>
帯電ロール40の各サンプルの単位投影面積あたりの表層403の表面積を測定した。図4は、帯電ロール40の各サンプルの単位投影面積あたりの表層403の表面積を説明するための図である。
【0064】
単位投影面積あたりの表層403の表面積の測定では、上記の撮影で得られた幾何学データの2次曲面補正を行った幾何学データを使用した。上記の撮影では、視野は、帯電ロール40の周方向に528.7μm、帯電ロール40の軸線方向に705.1μmであったので、サンプルの単位投影面積は、撮影した視野の面積A、すなわちX・Y=705.1×528.7(μm)である。
【0065】
上記のアプリケーションで、撮影した視野内の表層403の表面積Sを計算した。表面積Sは、凹凸を含む表層403の表面積である。さらに、単位投影面積あたりの表層403の表面積を、表面積Sを撮影した視野の面積Aで除算することにより計算した。このようにして得られた単位投影面積あたりの表層403の表面積は、表2に示す通りである。
【0066】
<画像ムラ及び放電ムラの評価>
複写機を用いて帯電ロールの画像評価試験を行った。複写機は、コニカミノルタ株式会社(日本国東京都)製のカラー複合機(MFP)「bizhub C3850」(直流電圧印加式)であった。
【0067】
テスターにより、帯電印加電圧を計測した。実験1では、通常電圧(REF)より100V下げた電圧(REF-100V)を、外部電源を用いて印加した。
【0068】
帯電ロールを複写機に適用し、下記印刷条件で印刷した画像(ハーフトーン画像および白ベタ画像)について、画像ムラを評価した。結果を表2に示す。
画像ムラの評価は、ハーフトーン画像について局所放電の判定を行い、白ベタ画像について明度判定を行った。局所放電があったことは、ハーフトーン画像において、白点、黒点、白スジ、黒スジの発生を目視で発見することで確認することができる。
【0069】
[印刷条件]
印加電圧:REF-100V
速度 :38枚/分
印刷環境:温度23℃、湿度55%
【0070】
(局所放電評価) ハーフトーン画像について、目視によって局所放電に起因する画像ムラを以下の基準で判定した。
良:局所放電に起因する画像ムラがなかった
不良:局所放電に起因する画像ムラがあった
【0071】
(明度判定)
色彩色差計(chroma meter、コニカミノルタ株式会社製「CR-400」)を用いて、画像内7箇所についてL*値(L* value、明度)を測定した。明度の判定は以下の評価基準で評価した。明度を測定する理由は、地汚れ、すなわちカブリ(印刷されるべきでない箇所に印刷されること)の有無を判断するためである。
【0072】
[評価基準]
良:地汚れなし(L*95.5以上)
不良:地汚れあり(L*95.5より低い)
【0073】
局所放電に起因する画像ムラまたは地汚れが発生したサンプルについては、画像総合判定で不良と判定し、表2にこれらを記載した。
【0074】
実験2
<ゴム基材の準備>
エピクロルヒドリンゴム(エピクロマーCG-102;株式会社大阪ソーダ製)100重量部に、導電性付与材としてトリフルオロ酢酸ナトリウム0.5重量部、亜鉛華3重量部、ステアリン酸2重量部、架橋剤1.5重量部を添加したゴム組成物をロールミキサーで混練りした。
【0075】
混練りしたゴム組成物をシート状の生地にして、直径8mmの芯材401(芯金)の表面に巻いて、プレス成形し、架橋したエピクロルヒドリンゴムからなるゴム基材402を得た。
【0076】
デュロメータ(「JIS K 6253」および「ISO 7619」に準拠した「タイプA」)を用いて、得られたゴム基材402の硬度を測定した結果、測定値は、50°~64°であった。
【0077】
<ゴム基材表面の研磨>
上記ゴム基材402の表面を研磨機で研磨した。具体的には、得られたゴム基材402の表面を研磨機で研磨して、所定の厚さ(2mm)に合わせた後、さらに乾式研磨で研磨した。実験2では、砥石回転数を変化させなかった。
【0078】
<コーティング液の調製>
上記のゴム基材402の外周面に表層403を形成するためのコーティング液を作製した。
【0079】
コーティング液の組成は、表1に示す通りである。
【0080】
ウレタン粒子としては、根上工業株式会社製のウレタンビーズを用いた。
【0081】
ウレタンビーズの平均粒径と製品名との関係は以下の通りである。但し、実際には、一つの製品は、平均粒径と異なる粒径の粒子を含む。
6μm:ウレタンビーズ「C-800」
10μm:ウレタンビーズ「C-600」
15μm:ウレタンビーズ「C-400」
22μm:ウレタンビーズ「C-300」
32μm:ウレタンビーズ「C-200」
【0082】
実験2では、異なる粒径と異なる量の表面粗さ付与材の粒子405を含むコーティング液の塗布によって、表層403の表面状態が異なるサンプルを製造した。これらのサンプルでの粒子405の粒径と量は、表2に示す通りである。表2において、サンプル21~サンプル35が実験2のサンプルである。
【0083】
上記組成のコーティング液を、ボールミルで3時間分散混合した。
【0084】
<帯電ロールの作製>
研磨したゴム基材402の外周面に、上記コーティング液を塗布して表層403を形成し、帯電ロール40を作製した。具体的には、コーティング液を撹拌し、その液をゴム基材402の表面にスプレーコートして、電気炉にて120℃で60分間乾燥し、ゴム基材402の外周面に表層403を形成し、帯電ロールを作製した。
【0085】
<山頂点の算術平均曲Spc、山の頂点密度Spd、および単位投影面積あたりの表層の表面積の測定>
実験1と同じ手法で、帯電ロール40の各サンプルの表層403の表面の山頂点の算術平均曲Spc、表層403の表面の山の頂点密度Spd、および単位投影面積あたりの表層403の表面積を測定した。得られた山頂点の算術平均曲Spc、山の頂点密度Spd、および単位投影面積あたりの表層403の表面積は、表2に示す通りである。
【0086】
<画像ムラ及び放電ムラの評価>
複写機を用いて帯電ロールの画像評価試験を行った。複写機は、株式会社リコー(日本国東京都)製のカラー複合機(MFP)「MP C5503」(交流直流電圧重畳印加式)であった。
【0087】
直流電圧は通常電圧(REF)であり、交流電圧Vppは、複写機の制御に依存した。
【0088】
実験2では、複写機の通常交流電流(REF)よりも低い交流電流(1.45mA)に設定した。
【0089】
帯電ロールを複写機に適用し、下記印刷条件で印刷した画像(ハーフトーン画像および白ベタ画像)について、画像ムラを評価した。結果を表3に示す。
画像ムラの評価は、ハーフトーン画像について局所放電の判定を行った。局所放電があったことは、ハーフトーン画像において、白点、黒点、白スジ、黒スジの発生を目視で発見することで確認することができる。白ベタ画像について、目視によって、地汚れ、すなわちカブリの判定を行った。
【0090】
[印刷条件]
速度 :30枚/分
印刷環境:温度23℃、湿度55%
【0091】
(局所放電評価) ハーフトーン画像について、目視によって局所放電に起因する画像ムラを以下の基準で判定した。
良:局所放電に起因する画像ムラがなかった
不良:局所放電に起因する画像ムラがあった
【0092】
(地汚れ判定)
白ベタ画像について、目視によって、地汚れ、すなわちカブリ(印刷されるべきでない箇所に印刷されること)の有無を判定した。
[評価基準]
良:地汚れなし
不良:地汚れあり
【0093】
局所放電に起因する画像ムラまたは地汚れが発生したサンプルについては、画像総合判定で不良と判定し、表2にこれらを記載した。
【0094】
表2から明らかな通り、サンプル1とサンプル11で画像ムラが発生し、他のサンプルで良好な画像が作成された。
【0095】
したがって、 表層403の表面の山頂点の算術平均曲Spcが、1,880(1/mm)以上、14,024(1/mm)以下であり、表層403の表面の山の頂点密度Spdが、93,406(1/mm)以上、151,476(1/mm)以下であり、単位投影面積あたりの表層403の表面積が、1.255以上、5.132以下であることが好ましい。
【符号の説明】
【0097】
1:感光体
2:現像部
20:現像ロール
21:規制ブレード
22:供給ロール
23:トナー
3:露光部
4:帯電部
40:帯電ロール
401:芯材
402:ゴム基材
403:表層
5:クリーニング部
6:転写部
60:シート
図1
図2
図3
図4