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特許7342178マイクロセルフォームシートおよび作製プロセスおよび使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】マイクロセルフォームシートおよび作製プロセスおよび使用
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/26 20060101AFI20230904BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20230904BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20230904BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20230904BHJP
   B29C 48/154 20190101ALI20230904BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20230904BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20230904BHJP
   B29C 44/22 20060101ALI20230904BHJP
   B29C 44/24 20060101ALI20230904BHJP
   B32B 37/14 20060101ALI20230904BHJP
   B32B 5/32 20060101ALI20230904BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230904BHJP
   B29K 23/00 20060101ALN20230904BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20230904BHJP
   B29K 71/00 20060101ALN20230904BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20230904BHJP
【FI】
B29C44/26
C08J9/04 CER
C08J9/04 CEZ
B29C48/08
B29C48/21
B29C48/154
B29C48/305
B29C44/00 E
B29C44/22
B29C44/24
B32B37/14 Z
B32B5/32
B32B27/00 B
B29K23:00
B29K67:00
B29K71:00
B29L7:00
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022046204
(22)【出願日】2022-03-23
(62)【分割の表示】P 2018193002の分割
【原出願日】2018-10-12
(65)【公開番号】P2022087129
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】62/571,971
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/594,763
(32)【優先日】2017-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503096421
【氏名又は名称】ダート コンテナー コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(72)【発明者】
【氏名】チェンタオ リー
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0121577(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0082693(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0062235(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0052180(US,A1)
【文献】特開平06-344457(JP,A)
【文献】米国特許第04360484(US,A)
【文献】特開2010-215805(JP,A)
【文献】特開平03-166237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/26
C08J 9/04
B29C 48/08
B29C 48/21
B29C 48/154
B29C 48/305
B29C 44/00
B29C 44/22
B29C 44/24
B29C 67/20
B32B 37/14
B32B 5/32
B32B 27/00
B29K 23/00
B29K 67/00
B29K 71/00
B29L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の形成に使用するための固相発泡マイクロセルフォームシートであって、
前記マイクロセルフォームシート内のフォーム層を画定し、かつ第1のセル集団よりも小さいセルサイズを有する第2のセル集団が中に散在している第1のセル集団を有する中央発泡部分であって、前記第2のセル集団は、前記中央発泡部分内の前記第1のセル集団を画定する前記材料中に形成されている、中央発泡部分と、
1つもしくは複数の別個の発泡部分、スキン層を画定する1つもしくは複数の別個の非発泡部分、または前記中央発泡部分の片側もしくは両側の1つもしくは複数の別個の発泡部分と1つもしくは複数の別個の非発泡部分との組み合わせと
を含む、固相発泡マイクロセルフォームシート。
【請求項2】
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシ酸(PHA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)または熱可塑性ウレタン(TPU)を含むポリマー材料から作製される、請求項1に記載の固相発泡マイクロセルフォームシート。
【請求項3】
前記マイクロセルフォームシートが多層シートの第1の層を形成している、請求項1に記載の固相発泡マイクロセルフォームシート。
【請求項4】
前記第1の層が、追加の層と共押出、ラミネート、または押出コーティングされている、請求項3に記載の固相発泡マイクロセルフォームシート。
【請求項5】
前記第1のセル集団が100マイクロメートルを超える平均直径を含む、請求項1に記載の固相発泡マイクロセルフォームシート。
【請求項6】
前記第2のセル集団が10マイクロメートル未満の平均直径を含む、請求項5に記載の固相発泡マイクロセルフォームシート。
【請求項7】
前記マイクロセルフォームシートが1g/cm未満の密度を有する、請求項1に記載の固相発泡マイクロセルフォームシート。
【請求項8】
前記マイクロセルフォームシートが少なくとも1つの成核剤を含むポリマー材料から作製される、請求項1に記載の固相発泡マイクロセルフォームシート。
【請求項9】
前記少なくとも1つの成核剤が無機成核剤からなる、請求項8に記載の固相発泡マイクロセルフォームシート。
【請求項10】
前記少なくとも1つの成核剤が有機成核剤からなる、請求項8に記載の固相発泡マイクロセルフォームシート。
【請求項11】
前記少なくとも1つの成核剤が、無機成核剤、および有機成核剤の組み合わせから選択される、請求項8に記載の固相発泡マイクロセルフォームシート。
【請求項12】
前記少なくとも一つの成核剤が、タルクおよびポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択される、請求項8に記載の固相発泡マイクロセルフォームシート。
【請求項13】
前記少なくとも1つの成核剤が、約0.5~5重量%の量で存在する、請求項8に記載の固相発泡マイクロセルフォームシート。
【請求項14】
前記中央発泡部分の両側にある一対の非発泡部分を含む、請求項1に記載の固相発泡マイクロセルフォームシート。
【請求項15】
前記中央発泡部分と前記一対の非発泡部分のそれぞれとの間にある少なくとも1対の別個の発泡部分を含む、請求項14に記載の固相発泡マイクロセルフォームシート。
【請求項16】
前記マイクロセルフォームシートが、発泡剤からなるポリマー材料から作られる、請求項1に記載の固相発泡マイクロセルフォームシート。
【請求項17】
前記発泡剤が、約0.1~5重量%の範囲の量で存在する、請求項16に記載の固相発泡マイクロセルフォームシート。
【請求項18】
前記発泡剤が、物理発泡剤を含む、請求項16に記載の固相発泡マイクロセルフォームシート。
【請求項19】
前記発泡剤が、化学発泡剤を含む、請求項16に記載の固相発泡マイクロセルフォームシート。
【請求項20】
前記化学発泡剤が
重炭酸ナトリウムとクエン酸との組み合わせ、
クエン酸ナトリウムと炭酸カルシウムとの組み合わせ、または
ジステアリン酸カルシウムと石灰石と酸化カルシウムとの組み合わせ
含む、請求項19に記載の固相発泡マイクロセルフォームシート。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
カップなどの断熱容器は、熱いまたは冷たい飲料または食品を収容するのに使用できると同時に、その容器を保持する消費者を、容器内に収容された品物の温度から保護することができる。発泡フォーム材料製の容器は、その断熱特性および軽量により有益である。
【0002】
マイクロセルプラスチックフォーム(Microcellular plastic foam)は、典型的には従来のプラスチックフォームのセル直径よりも小さいセルを有するマイクロ孔またはマイクロセルを生成するように、特別に発泡させたポリマーを指す。マイクロセルプラスチックフォームは、従来のプラスチックフォームとは異なる機械的特性を有することが可能である。マイクロセルプラスチックフォームを使用して製造された製品は、従来のプラスチックフォームと比較して材料コストおよび重量を低減することができる。従来のフォーム生成技術では、多くの場合、発泡剤として、オゾン破壊性のクロロフルオロカーボン(CFC)またはハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)ならびに可燃性炭化水素を使用する。他方、マイクロセルフォーム処理技術では、一般に、二酸化炭素および窒素のような非反応性ガスなどの、より環境に優しい発泡剤を使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2016/0229973号
【文献】米国特許第8,568,125号
【文献】米国特許第10,029,401号
【文献】米国特許第5,684,055号
【文献】米国特許出願公開第2015/0042005号
【文献】米国特許第9,427,903号
【文献】米国特許第8,877,331号
【文献】米国特許第8,926,876号
【文献】米国特許第8,858,849号
【文献】米国特許出願公開第2010/0052201号
【文献】米国特許第8,377,548号
【文献】米国特許第7,807,260号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一態様によれば、容器の形成に使用するためのマイクロセルフォームシート(microcellular foam sheet)を生成するための固相発泡プロセスを提供する。このプロセスは、第1のポリマー材料および発泡剤を含み、かつ第1の密度を有する第1の層を押出することを含むことができる。第1の層を発泡剤で少なくとも部分的に発泡させて、第1の密度よりも低い第2の密度を有する予備発泡層を含む予備発泡シートを形成することができる。第1のポリマー材料に可溶な非反応性ガスを、固相の予備発泡層に含浸させることができる。第2の発泡は、予備発泡層を非反応性ガスで少なくとも部分的に発泡させて、第2の密度よりも低い第3の密度を有するマイクロセルフォーム層を形成することを含むことができる。
【0005】
本開示の一態様によれば、容器の形成に使用するための固相発泡マイクロセルフォームシートは、マイクロセルフォームシート内のフォーム層を画定し、かつ第1の集団よりも小さいセルサイズを有する第2のセル集団が中に散在している第1のセル集団を有する中央発泡部分であって、第2のセル集団は、中央発泡部分内の第1のセル集団を画定する材料中に形成されている、中央発泡部分を含む。フォームシートは、1つもしくは複数の別個の発泡部分、スキン層を画定する1つもしくは複数の別個の非発泡部分、または中央発泡部分の片側もしくは両側の1つもしくは複数の別個の発泡部分と1つもしくは複数の別個の非発泡部分との組み合わせを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の態様による、物品の形成に使用するための多層シートを示す。
図2】本開示の一態様による、物品の形成に使用するための多層シートを示す。
図3】本開示の態様による多層シート形成プロセスを示すフローチャートである。
図4】本開示の態様による多層シート形成プロセスを示すフローチャートである。
図5】本開示の態様による多層シート形成プロセスを示すフローチャートである。
図6】本開示の態様による時間の関数としてのガス吸収のグラフを示す。
図7】本開示の態様による、脱着段階の後の図6のシートのガス吸収のグラフを示す。
図8】本開示の態様による、温度の関数としての、図6のシートの密度のグラフを示す。
図9】本開示の態様によるマイクロセルフォームシートと従来のマイクロセルフォームシートとのガス吸収を比較するグラフを示す。
図10】本開示の態様による温度の関数としての密度のグラフを示す。
図11】本開示の態様によるガス含浸サイクル時間の関数としてのガス吸収のグラフを示す。
図12】本開示の態様による例示的マイクロセルフォームシートの最終的なガス吸収のグラフを示す。
図13】本開示の態様による温度の関数としての密度のグラフを示す。
図14】本開示の態様による時間の関数としてのマイクロセルフォーム物品の対向する側の間の温度差の変化のグラフを示す。
図15】本開示の態様による時間の関数としてのマイクロセルフォーム物品の一方の側の温度変化のグラフを示す。
図16】本開示の態様による多層シート形成プロセスを示すフローチャートである。
図17】本開示の態様によるマイクロセルフォームシートと従来のマイクロセルフォームシートとのガス吸収を比較するグラフを示す。
図18】本開示の態様によるマイクロセルフォームシートの温度の関数としての密度のグラフを示す。
図19】本開示の態様によるマイクロセルフォームシートの温度の関数としての厚さのグラフを示す。
図20】本開示の態様による、時間の関数としての、マイクロセルフォームシートと従来のマイクロセルフォームシートとのガス吸収を比較するグラフを示す。
図21】本開示の態様による発泡温度の関数としてのフォーム密度を比較するグラフを示す。
図22】本開示の態様による発泡温度の関数としてのフォーム厚さを比較するグラフを示す。
図23】本開示の態様による発泡温度の関数としてのフォーム密度を比較するグラフを示す。
図24】本開示の態様による発泡温度の関数としてのフォーム厚さを比較するグラフを示す。
図25】本開示の態様による時間の関数としてのマイクロセルフォーム物品の対向する側の間の温度差の変化のグラフを示す。
図26】本開示の態様による時間の関数としてのマイクロセルフォーム物品の外部温度の変化のグラフを示す。
図27】本開示の態様による、含浸段階と発泡段階との間に吸収される二酸化炭素の量を比較するグラフを示す。
図28A】従来のプロセスに従って作製された従来のマイクロセルフォーム物品断面の60倍の倍率の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図28B】従来のプロセスに従って作製された従来のマイクロセルフォーム物品断面の300倍の倍率の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図28C】従来のプロセスに従って作製された従来のマイクロセルフォーム物品断面の2000倍の倍率の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図29A】予備発泡処理段階を含む本開示の固相発泡プロセスに従って作製されたマイクロセルフォーム物品断面の60倍の倍率の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図29B】予備発泡処理段階を含む本開示の固相発泡プロセスに従って作製されたマイクロセルフォーム物品断面の300倍の倍率の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図29C】予備発泡処理段階を含む本開示の固相発泡プロセスに従って作製されたマイクロセルフォーム物品断面の2000倍の倍率の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の態様は、マイクロセルフォーム材料の形成を促進し、少なくとも1つのマイクロセルフォーム材料の層を含む多層シートを形成するためのプロセスに関する。本開示の態様はまた、少なくとも1つのマイクロセルフォーム材料の層を含む多層シートから食品および飲料を保持するのに好適な容器のなどの物品を形成するプロセスに関する。本開示の態様は、単層シートまたは多層シートにおいてマイクロセルフォームを生成するための固相発泡プロセスを利用する。
【0008】
マイクロセルフォームを形成するための固相発泡プロセスは、一般に、ポリマー材料を非反応性ガスに曝露して、ポリマー材料内にセル核形成が可能であるのに十分な濃度のガスをポリマー材料に含浸させることを含む。典型的には、非反応性ガスへの曝露は、ポリマー材料による非反応性ガスの吸収を促進するために圧力を上げて行われ、材料の押出後に行う。非反応性ガスを含浸させた後、ポリマー材料をより低い圧力の雰囲気に曝露し、ガラス転移温度(Tg)に近いかもしくはそれよりわずかに高い温度に、溶融させずに加熱して、材料内に吸収されたガスから気泡核形成させる。ポリマー材料は、吸収および発泡段階中に固体のままであり、溶融しないので、ポリマー材料は固相で発泡していると考えられる。含浸圧力、サイクル時間、および発泡温度などのプロセスパラメータは、セルサイズ、形状および密度を含む発泡材料の特性に影響を及ぼし得る。発泡材料のセルサイズ、形状および密度は、材料の密度および材料の断熱特性を含む、フォーム材料から作られた物品の特性に影響を及ぼす場合がある。
【0009】
ポリマー材料内に含浸するガスの濃度は、ポリマー材料がガスに曝される時間の長さおよび曝露中の圧力などのパラメータに影響を受ける可能性がある。所望の含浸濃度を達成するためにポリマー材料がガスに曝露されなければならない時間の長さは、マイクロセルフォームを形成し、マイクロセルフォームを使用して物品を形成するプロセスにおける律速工程であり得る。容器を熱成形するために使用するマイクロセルフォームポリマー材料の含浸時間は、40時間以上の長さであり得る。
【0010】
本開示の態様は、固相発泡プロセス中にポリマー材料内で非反応性ガスの所定の含浸濃度を達成する時間を短縮させる予備発泡処理プロセスに関する。予備発泡処理プロセスは、最終的にマイクロセルフォームを形成するポリマー材料と発泡剤とを組み合わせて押出ブレンドを形成することを含む。押出ブレンドは押出されてポリマー押出物を形成し、少なくとも部分的に発泡させて押出された材料内にボイドを生成した後、固相発泡プロセス中に非反応性ガスを材料に含浸させてマイクロセルフォームを生成させる。
【0011】
本開示の一態様によれば、予備発泡処理プロセスに従って形成したマイクロセルフォームは、第1の集団よりも小さいセルサイズを有する第2のセル集団が中に散在している第1のセル集団を有する、中央発泡部分を含む、別個の発泡および非発泡部分を含み得る。別個の発泡および別個の非発泡部分は、マイクロセルフォーム材料内に層を形成することができる。第2のセル集団は、中央発泡部分内の第1のセル集団を画定する材料中に形成される。任意に、マイクロセルフォーム材料は、中央発泡部分の片側または両側に1つまたは複数の別個の発泡部分を含むことができる。本開示の態様は、マイクロセルフォーム材料の、スキンとも呼ばれる外面を形成する別個の、非発泡外側部分を含み得る。本開示の一態様によれば、一対の別個の非発泡部分が中央発泡部分の各側に存在することができ、任意に、1つまたは複数の別個の発泡部分が中央発泡部分の各側で、中央発泡部分と別個の非発泡部分の間に存在し得る。マイクロセルフォーム材料は、単層シートとして単独で使用することができ、または他の材料層と組み合わせて使用し、多層シートを形成することができる。
【0012】
本開示の態様は、本開示の予備発泡処理を含まないプロセスと比較して、固相発泡プロセス中にフォームを生成する非反応性ガスの所定の含浸濃度を達成する時間を、約40%以上、任意に約50%以上短縮することができる。含浸時間を短縮することにより、マイクロセルフォーム層を含む多層シートを製造するための、およびマイクロセルフォーム層を含む多層シートから物品を製造するための全体のサイクル時間を短縮することができる。別の態様では、本開示の予備発泡処理を含むプロセスで製造したマイクロセルフォームは、予備発泡処理なしで製造したマイクロセルフォームの特性とは、断熱特性および表面仕上げの違いなど、異なる特性を有するマイクロセルフォームである。さらに別の態様では、本開示の予備発泡処理プロセスを含む固相発泡プロセスでは、予備発泡処理プロセスを伴わない類似の固相発泡プロセスにおけるものとは異なるセル構造を有するフォームシートを製造する。
【0013】
構造
図1および図2を参照すると、本開示の一態様による多層シート20は、フォーム第1層またはコア層22と、任意に少なくとも1つの第2層または外側シート層24とを含む。多層シート20は、図1に示すように、「AB」構造でフォームコア層22の一方の側に隣接する単一の外側シート層24を含むことができる。任意に、図2に示すように、多層シート20は、「ABA」構造で、対向する第1および第2の外層24および26の間に配置されたフォームコア層22を含むことができる。任意に、フォームコア層22の片側または両側に複数の外層を設けることができる。本開示の一態様によれば、複数のフォーム層22および複数の外側層24および/または26を、任意の所望の層パターンに従って組み合わせて、所望の多層シートを提供することができる。
【0014】
本開示の一態様によれば、フォームコア層22は、第2の外層なしで形成され、使用される。したがって、本開示のいくつかの態様は、フォームコア層22および1つまたは複数の外層24、26を含む多層シートとの関係において記載されるが、本明細書に記載された材料、作製プロセスおよび形成プロセスは、単一フォームコア層を含むシートと同様の方法で使用できることが理解されるであろう。「フォーム」および「発泡体(expanded)」という用語は、ガスが発泡して材料内にセル構造を生成する気泡(セルとも呼ばれる)を生成するポリマー材料を意味し、本開示を通じて同じ意味で使用する。本明細書で使用する「多層シート」という用語は、ラミネート加工、押出コーティング、または共押出される材料の個々の層によって形成される材料を意味する。
【0015】
多層シート20は、フォームコア層22および外側シート層24のそれぞれの基材として使用するための1つまたは複数の熱可塑性ポリマー材料を含む。フォームコア層22のポリマー材料は、外側シート層24のポリマー材料と同じであっても異なっていてもよい。好適なポリマー材料は、押出または共押出および発泡されてフォームを形成し得る任意の材料であり得、以下のポリマー、すなわち、リサイクルPETを含むポリエチレンテレフタレート(PET)、植物ベースのPET、改質PETコポリマー、非晶質または結晶性PET、グリコール改質(PETG)および他のポリエステル、ならびにポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、熱可塑性ウレタン(TPU)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ならびにそれらの種々のポリマーブレンド、のいずれか1つまたは複数を含み得る。
【0016】
任意に、フォームコア層22および/または外側シート層24を形成するポリマー材料は、少なくとも一部のリグラインド材料(regrind material)を含む。リグラインド材料としては、ポリマーブレンドに含めるために粉砕した、リサイクルトリミング材料および/またはリサイクル廃棄材料を挙げることができる。
【0017】
フォームコア層22は、第1の集団よりも小さいセルサイズを有する第2のセル集団が中に散在している第1のセル集団を有する、中央発泡部分を含む、別個の発泡および非発泡部分を含み得るマイクロセルフォーム層を形成する。別個の発泡および非発泡部分は、フォームコア層22内に層を形成することができる。本開示の一態様によれば、第1のセル集団(より大きいセル)は、約40~300マイクロメートル、任意に約70~300マイクロメートルの範囲内の少なくとも1つの寸法の直径、任意に、全ての寸法の直径を有すると定義されるセルサイズを有する。別の態様では、より大きいセルである第1の集団は、平均直径が、約180±40マイクロメートル、任意に約160±50マイクロメートルの範囲内の少なくとも1つの寸法、任意に、全ての寸法であると定義されるセルサイズを有する。
【0018】
本開示の一態様では、第2のセル集団(より小さいセル)は、約1~20マイクロメートルの、任意に約2~20マイクロメートルの、さらに任意に約2~14マイクロメートルの、さらに任意に約1~9マイクロメートルの範囲内の少なくとも1つの寸法の直径、任意に、全ての寸法の直径を有すると定義されるセルサイズを有する。一態様によれば、より小さいセルの第2の集団は、平均直径が、約8±4マイクロメートル、任意に約8±3マイクロメートル、さらに任意に約5±3マイクロメートル、さらに任意に約4±2マイクロメートルの範囲内の少なくとも1つの寸法、任意に、全ての寸法であると定義されるセルサイズを有する。
【0019】
本開示の一態様によれば、より小さいセルの第2の集団は、一般に、第1の集団のより大きなセルよりも1桁小さいセルサイズを有すると考えることができる。第2のセル集団は、マイクロセルに対応するサイズを有し、したがって、本開示の材料は、本開示の態様によるマイクロセルフォームと考えることができる。一態様によれば、より大きいセルの第1の集団は、約1~20マイクロメートルの、任意に約2~20マイクロメートルの、さらに任意に約2~14マイクロメートルの、さらに任意に約1~9マイクロメートルの範囲内の直径を有する、より小さいセルの第2の集団と組み合わさって、約40~300マイクロメートル、任意に約70~300マイクロメートルの範囲の直径を有する。本開示の一態様では、より大きいセルの第1の集団は、約8±4マイクロメートル、任意に約8±3マイクロメートル、さらに任意に約5±3マイクロメートル、さらに任意に約4±2マイクロメートルの範囲内の平均直径を有する、より小さいセルの第2の集団と組み合わさって、約180±40マイクロメートル、任意に約160±50マイクロメートルの範囲の平均直径を有する。
【0020】
本開示の一態様によれば、第1のセル集団は、20マイクロメートル未満、任意に10マイクロメートル未満の平均直径を有するセルの第2の集団と組み合わさって、100マイクロメートル超の平均直径を有する。これと比較して、従来のプラスチックフォームは、典型的には、所与のフォーム部分内で単一のセル集団を有し、平均セル直径は100~500マイクロメートルの範囲である。
【0021】
外側シート層24は、非発泡(unfoamed)(非発泡(unexpanded)とも呼ばれる)固体層であってもよく、フォームコア層22よりもある程度小さいセル構造を示してもよい。本明細書で使用するとき、外側シート層とは、フォームコア層22よりも高い密度を有してフォームコア層22に当接し、ラミネーション、押出コーティング、または共押出によりフォームコア層22に隣接して設けられポリマー材料層を意味する。外側シート層24が発泡フォーム構造を示す場合、セル構造体はマイクロセルフォーム構造であってもなくてもよい。
【0022】
一態様によれば、多層シート20は、物品を形成するのに好適な厚さを有することができ、その一例は、食品または飲料または他の物品を収容するのに好適な容器および容器の蓋を含む。多層シート20は、例えば約0.01~0.06インチ(約0.2~約1.5mm)の範囲の、熱成形によって物品を形成するのに好適な厚さ総計を有することができる。外側シート層24は、約0.0005~0.003インチ(約0.01~約0.08mm)の範囲、任意に約0.001~0.002インチ(約0.02~約0.05mm)の範囲の厚さを有することができる。外側シート層24、26がフォームコア層22の両側に設けられる場合、各外側シート層24、26は、約0.0005~0.003インチ(約0.01~0.08mm)、任意に約0.001~0.002インチ(約0.02~0.05mm)の範囲の同じ厚さまたは異なる厚さを有し得る。フォームコア層22は、約0.01~0.06インチ(約0.2~約1.5mm)の範囲、任意に0.015~0.06インチ(約0.03~約1.5mm)、さらに任意に約0.03~0.04インチ(約0.7~約1mm)の範囲の厚さを有し得る。任意に、多層シート20の厚さ総計は、ブロー成形などの、熱成形以外の成形プロセスに好適な範囲内であり得る。
【0023】
本開示の一態様によれば、高結晶性PETを外側シート層24に使用し、非晶質PETをフォームコア層22に使用する。任意に、フォームコア層22は、約50~100%のPET社内リグラインド材料または使用済みリサイクル(PCR)材料を含む。
【0024】
フォームコア層22および外側シート層24は、層22、24に所望の物理的および化学的特性を付与するための1つまたは複数の添加剤を含むことができる。好適な添加剤の非限定的な例としては、乳白剤、着色剤、充填剤、成核剤、光沢剤などが挙げられる。フォームコア層22および外側シート層24中の添加剤は同じであっても異なっていてもよい。多層シート20が、図2の第2の外側層26など、複数の外側シート層24を含む場合、外側シート層24、26それぞれの材料および添加剤は、同じであっても異なっていてもよい。各層の添加剤の種類および量は、層に所望の特性を付与するように選択することができる。
【0025】
多層シート20は、フォームコア層22の片側または両側面に、ラミネート加工、押出コーティング、または共押出された少なくとも1つのフォームコア層22および1つまたは複数の外側シート層24を含む。ラミネート加工、押出コーティング、および共押出という用語は、本明細書では、ポリマー発泡材料の分野においてそのような用語に帰される通常の意味に従って使用される。本明細書で使用する押出コーティングとは、ダイから第1の層を、既に押出された第2の層上に押し出し、加圧ロールと冷却ロールとの間のニップ部に引きこみ、加圧ロールと冷却ロールとの間の圧力により第1の層を第2の層に強制的に圧着させるプロセスを意味する。ラミネーションとは、第1層と第2層を別々に形成した後、熱、圧力、および/または接着剤を用いて互いに接着させるプロセスを意味する。共押出とは、第1の押出物および第2の押出し物を単一のダイヘッドで結合させ、第1および第2の押出物をダイに通して一緒に押し出して多層材料を形成するプロセスを意味する。
【0026】
予備発泡処理
ここで図3を参照すると、本開示の一態様によるマイクロセルフォーム層を含む多層シートを形成するための固相発泡プロセス100を示す。固相発泡プロセス100は、多層シート20との関連で記載されているが、本明細書に記載のプロセスは、本明細書に明示的に記載されていない他の単一または多層シートを形成するために使用してもよく、異なる論理的順序で進めてもよく、または追加的または介在する工程を含んでもよい。例えば、固相発泡プロセス100を使用して、単層フォームシートまたは多層フォームシートを、任意に非発泡シート層と組み合わせて形成することができる。
【0027】
マイクロセルフォームコア層22を有する多層シート20を形成するための固相発泡プロセス100は、固相の層22を用いてマイクロセルフォーム構造を形成する含浸および発泡段階104の前に、フォームコア層22を形成するポリマー層内にボイドの形成を誘発するための予備発泡処理を含む予備発泡処理段階102を含む。含浸および発泡段階104は、材料が固相である場合に行われ、したがって、プロセス100は、固相発泡プロセスと考えられる。任意選択の成形/熱成形段階106は、含浸および発泡段階104の後に行われ、多層シート20を所望の形状に成形することができる。
【0028】
図4は、多層シート20を形成するための例示的な予備発泡処理段階102を示す。予備発泡処理段階102は、共押出プロセスとの関連で記載されているが、予備発泡処理段階102は、例えばラミネーションプロセスまたは押出コーティングプロセスを含む、隣接するポリマーシート層を形成する他のプロセスと同様の方法で利用することができる。本開示の別の態様によれば、予備発泡処理段階102は、共押出、押出コーティング、またはラミネーションプロセスの非存在下で使用して、単一の材料フォームシート層を形成し得る。
【0029】
122において、第1のポリマー材料は、発泡剤および任意の添加剤と組み合わせて、フォームコア層22を形成する第1の押出ブレンドを形成する。124において、第2のポリマー材料を任意に添加剤と組み合わせて、外側シート層24を形成する第2の押出ブレンドを形成する。第1および第2の押出ブレンドは、単一のポリマーまたは2つ以上のポリマーのブレンドを含むことができ、その例として、リサイクルPETを含むポリエチレンテレフタレート(PET)、植物ベースのPET、改質PETコポリマー、非晶質または結晶性PET、グリコール改質(PETG)および他のポリエステル、ならびにポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、熱可塑性ウレタン(TPU)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、またはポリエチレン(PE)が挙げられる。第1および第2のポリマー材料を形成するポリマーは、同じであっても異なっていてもよい。任意に、第1および/または第2の押出ブレンド中のポリマーの一部は、ポストインダストリアルもしくは社内リグラインド材料または使用済みリサイクル(PCR)材料を含み得る。
【0030】
第1および/または第2の押出ブレンドに含めるための好適な添加剤の非限定的な例としては、乳白剤、着色剤、充填剤、成核剤、光沢剤などが挙げられる。第1および第2の押出ブレンド中の添加剤は、同じであっても異なっていてもよい。
【0031】
一態様によれば、第1のポリマー材料と組み合わせた発泡剤は、化学発泡剤または物理発泡剤を含む。好適な化学発泡剤は、熱分解によりガスを放出する有機または無機材料であってもよい。一例では、発泡剤は、重炭酸ナトリウムとクエン酸との組み合わせ、クエン酸ナトリウムと炭酸カルシウムとの組み合わせ、またはジステアリン酸カルシウム、石灰石、および酸化カルシウムの組み合わせを含む。別の例では、発泡剤は、分解して、熱分解により二酸化炭素ガスまたは窒素ガスを生成する任意の好適な材料または材料の組み合わせから選択される。本開示の一態様によれば、発泡剤は、物理発泡剤、例えば、二酸化炭素ガスまたは窒素ガスなどの直接ガス注入物理発泡剤である。
【0032】
一態様によれば、第1の押出ブレンド中の発泡剤の量は、約0.1~5重量%(重量%)任意に約0.2~4重量%、さらに任意に約0.2~2重量%、さらに任意に約0.2~1重量%の範囲である。一態様によれば、発泡剤の量および種類は、押出された層の密度の顕著または有意な低下を生じない(例えば、従来の方法を使用してほとんど測定できない密度の低下)量、または、次の固相含浸および発泡段階104で生じる密度のその後の低下よりも小さい、密度のわずかな低下を生じる量に基づく。一例では、発泡剤の量および種類は、約12%以下、任意に約5%以下、さらに任意に約3%以下、またさらに任意に約2%以下の密度低下をもたらすように選択される。本開示の一態様によれば、固相含浸および発泡段階104における密度の低下は、一次発泡段階または密度の一次低下と考えられ、発泡前処理段階102における密度の減少は、一次発泡段階に先立つ密度の最小または偶発的な低下と考えられる。
【0033】
好適な市販の発泡剤の例としては、Sukano Polymers Corporation、U.S.A.から市販され、固体ポリマーマトリックス中の発泡剤マスターバッチとして製造者によって記載されている、SUKANO(登録商標)fa 5632、REEDY Chemical Foam&Specialty Additives、U.S.A.から市販され、ポリエチレン担体中にクエン酸ナトリウムおよび炭酸カルシウムを含有するものとして製造者によって記載さている、SAFOAM(登録商標)CE-335、およびClariant Plastics&Coating USA Inc.から市販され、低密度ポリエチレン(LDPE)担体中のジステアリン酸カルシウム、石灰石、および酸化カルシウムを含む発泡剤として製造者によって記載されている、Hydrocerol 8642が挙げられる。
【0034】
第1の押出ブレンドを加熱して可塑化混合物または溶融物を形成し、これを溶融押出機に通して加熱したダイに移動させる。共押出機を加熱ダイと接合して、加熱ダイに第2の押出ブレンドを溶融物として供給して、第1の押出ブレンド溶融物との共押出しを行うことができる。126において、第1および第2の押出混合溶融物を加熱ダイに通して共押出して、第1の押出ブレンドから形成された第1の層および第2の押出ブレンドから形成された第2の層を含む多層押出物を形成する。任意に、加熱ダイは、押出シートを製造するフラットダイであり得る。
【0035】
126で製造した多層押出物には128で第1の発泡を行い、128は、多層押出物を加熱して第1の押出ブレンド中の発泡剤を分解し、ガスを発生させて、第1の層にボイドを生成して予備発泡層を形成することを含む。一態様によれば、加熱ダイからの熱は、押出物が加熱ダイのダイ出口を通過する際に発泡剤を分解して予備発泡層を形成するのに十分である。任意に、多層押出物は、128で高温ゾーンに押し出されて、発泡剤の分解およびボイド形成を促進し、予備発泡層を形成することができる。多層押出物を加熱する温度、圧力、および時間の長さは、128での第1の発泡中の所望の発泡度に基づいてもよい。128における第1の発泡は、第1の押出ブレンド中の発泡剤を完全または部分分解して、予備発泡層にボイドを形成することを含んでもよい。128で形成した予備発泡層のボイドは、後の固相発泡段階中に非反応ガスの吸収を促進する予備発泡層内のセル、マイクロセル、キャビティ、および/またはチャネルを含み得る。
【0036】
第2の押出ブレンドから形成された第2の層は、外側シート層24を形成し、この外側シート層24は、予備発泡層とともに、130で、直ちに使用することができるか、または保存のために巻取り機に巻き付けて、後で使用することができる予備発泡多層シートを形成する。多層シート130を、能動的または受動的に、次の意図された用途に好適な、または貯蔵に好適な所定の温度に冷却することができる冷却期間を設けてもよい。本開示の一態様によれば、130で形成された予備発泡多層シートは、図3の含浸および発泡段階104で処理して、外側シート層24と組み合わせて多層シート20を形成する予備発泡層から、マイクロセルフォームコア層22を生成する。
【0037】
130で形成された予備発泡多層シートの外側シート層24は、第1の発泡後の密度の低下があってもなくてもよい。本開示の一態様によれば、外側シート層24を形成する第2の押出ブレンドは、発泡剤を含まないか、または、第1の発泡128の結果として外側シート層24の密度がほとんどまたは全く低下しない無視できるほど少量の発泡剤を含んでもよい。無視できるほど少量の発泡剤は、意図的にまたは意図せずに第2の押出ブレンド中に存在していてもよい。一例では、第2の押出ブレンドは、少量の発泡剤を含んで、外側シート層24の外面に(すなわち、フォームコア層22に隣接する表面の反対側の面)、発泡剤が存在しない場合の表面の光沢仕上げと比較して、より艶消しタイプの仕上げを付与することができる。
【0038】
図5は、図3の固相発泡プロセス100の含浸および発泡段階104で使用して、図4の予備発泡処理段階102中に形成された予備発泡層からマイクロセルフォーム層を生成し得る、例示的な固相含浸および発泡方法を示す。任意に、含浸および発泡段階104は、これらの全てが、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2016年3月18日出願の「熱可塑性ポリマー分子を含む材料中にマイクロ構造を生成する方法および関連するシステム(A METHOD FOR GENERATING A MICROSTRUCTURE IN A MATERIAL THAT INCLUDES THERMOPLASTIC POLYMER MOLECULES, AND RELATED SYSTEMS)」と題する米国特許出願公開第2016/0229973号、2013年10月29日発行の「ガス含浸熱可塑性ウェブの波形のない加熱および発泡のためのロールフィード空気浮上/衝突式オーブンおよび関連する熱成形システム(ROLL FED FLOTATION/IMPINGEMENT AIR OVENS AND RELATED THERMOFORMING SYSTEMS FOR CORRUGATION-FREE HEATING AND EXPANDING OF GAS IMPREGNATED THERMOPLASTIC WEBS)」と題する米国特許第8,568,125号、2018年7月24日発行の「多層発泡高分子体および関連方法(Multi-layered Foamed Polymeric Objects and Related Methods)」と題する米国特許第10,029,401号、1997年11月4日発行の「固相ポリマーフォームの半連続製造(SEMI-CONTINUOUS PRODUCTION OF SOLID STATE POLYMERIC FOAMS)」と題する米国特許第5,684,055号、2014年8月28日出願の「熱可塑性材料にガスを注入する方法および関連するシステム(METHOD FOR INFUSING A GAS INTO A THERMOPLASTIC MATERIAL, AND RELATED SYSTEMS)」と題する米国特許出願公開第2015/0042005号、2016年8月30日発行の「ガス含浸熱可塑性ウェブの波形のない加熱および発泡のためのロールフィード空気浮上/衝突式オーブンおよび関連する熱成形システム(ROLL FED FLOTATION/IMPINGEMENT AIR OVENS AND RELATED THERMOFORMING SYSTEMS FOR CORRUGATION-FREE HEATING AND EXPANDING OF GAS IMPREGNATED THERMOPLASTIC WEBS)」と題する米国特許第9,427,903号、2014年11月4日発行の「セグメント化され、異なる物理的特性を有する多層発泡高分子体および関連する方法(MULTI-LAYERED FOAMED POLYMERIC OBJECTS HAVING SEGMENTED AND VARYING PHYSICAL PROPERTIES AND RELATED METHODS)」と題する米国特許第8,877,331号、2015年1月6日発行の「成形可能なマイクロセルポリ乳酸物品の製造方法(METHOD FOR MAKING SHAPEABLE MICROCELLULAR POLY LACTIC ACID ARTICLES)」と題する米国特許第8,926,876号、2014年10月14日発行の「熱可塑性ロールまたはシートの固相マイクロセル処理のための方法および圧力容器(METHODS AND PRESSURE VESSELS FOR SOLID-STATE MICROCELLULAR PROCESSING OF THERMOPLASTIC ROLLS OR SHEETS)」と題する米国特許第8,858,849号、2009年3月3日出願の「発泡セルパネルおよび関連方法(FOAMED CELLULAR PANELS AND RELATED METHODS)」と題する米国特許出願公開第2010/0052201号、2013年2月19日発行の「多層発泡高分子体および関連方法(MULTI-LAYERED FOAMED POLYMERIC OBJECTS AND RELATED METHODS)」と題する米国特許第8,377,548号、2010年10月5日発行の「多層発泡高分子体および関連方法(MULTI-LAYERED FOAMED POLYMERIC OBJECTS AND RELATED METHODS)」と題する米国特許第7,807,260号に記載されているマイクロセルフォームを形成するための固相発泡法のいずれかに従って進めることができる。
【0039】
固相発泡プロセスとは、材料を溶融することなく、材料が固相に留まっている間に、気泡が材料内で形成されおよび/または発泡してセル構造を形成するプロセスを意味する。含浸および発泡段階104を実施して、予備発泡シート中にマイクロセルフォームを生成し、多層シート20のフォームコア層22を形成する。
【0040】
含浸および発泡段階104は、任意に132で開始し、図4の130で形成した予備発泡多層シートの層の間にガス透過性の交互配置材料(interleaving material)を交互配置して、予備発泡多層シートのロールを形成する。ガス透過性材料は、ガスが予備発泡多層シートの隣接層へ通過することができる、可撓性材料の形態であり得る。本開示の一態様によれば、ガス透過性材料は、多孔質紙シート、ガーゼ、メッシュ、または織布材料もしくは不織布材料であり得る。別の態様によれば、ガス透過性材料はポリプロピレンベースの布地である。一例では、ポリプロピレンベースの布地は、任意に約50グラム/平方メートルの密度を有する、ポリプロピレンスパンボンド不織布を含む。
【0041】
136において、132で形成した交互配置されたロールは、予備発泡シートにおいて可溶な非反応性ガスを材料に含浸させるための圧力容器内に配置して、ガス含浸シートを形成することができる。本明細書で使用するとき、非反応性ガスとは、予備発泡多層シートを形成するポリマーと反応しないガスを意味する。本開示の一態様によれば、非反応性ガスは、二酸化炭素ガス、窒素ガス、またはそれらの組み合わせであってもよい。任意に、PET、PVCおよびポリカーボネート系材料に含浸させるための好ましい非反応性ガスは二酸化炭素であり、ポリスチレンに含浸させるための好ましい非反応性ガスは窒素である。予備発泡多層シートの交互配置されたロールは、予備発泡層内および任意に多層シート内に吸収される所望のガス濃度を得るのに十分な時間、高圧および所定温度で、非反応性ガスに曝露し得る。一態様によれば、予備発泡層内に吸収される所望の非反応ガス濃度は、少なくとも約6重量%、任意に少なくとも約5重量%、さらに任意に少なくとも約4重量%、さらに任意に少なくとも約3.5重量%であり、さらに任意に約3.5~6重量%の範囲である。
【0042】
予備発泡層に含浸したガスの濃度は、予備発泡層材料内の非反応ガス気泡の核形成および成長の際に、予備発泡層で製造するマイクロセルフォームの特性に影響を及ぼす。例えば、生成するマイクロセルフォームの密度および/または生成される気泡の平均サイズは、予備発泡層内のガスの濃度および分散に影響を受け得る。予備発泡層に存在するボイドによって、予備発泡層の材料内の非反応性ガスの含浸および吸収が促進され、その結果、所望のガス濃度および/または分散を、図4の予備発泡処理段階102によって予備処理されなかった材料と比較して、より短時間で得ることができる。一態様によれば、予備発泡層中のボイドは、材料の深さ内にガスの含浸を促進する経路を提供し、オーブン内での加熱中または熱成形中など、固相発泡中に、セル核形成のための部位を任意に提供することができる。予備形成されたボイドは、低密度フォームを製造するために必要とされる二酸化炭素の臨界濃度を任意に低下させることができる。
【0043】
本開示の一態様によれば、136におけるガス含浸は、圧力が制御され得る圧力容器内で行われる。ガス含浸は、一般に、室温(約21℃)で実施し、任意により高温を使用して、ガスの予備発泡層への拡散を加速することができる。任意に、予備発泡多層シートおよび交互配置ガス透過性材料でロールを形成する代わりに、予備発泡多層シート部分にガス透過性材料を積み重ね、次いで136で圧力容器内に配置することができる。さらに任意に、136で、予備発泡多層シートの単一部分を、圧力容器内に配置することができる。
【0044】
136におけるガス含浸中の曝露圧力および時間は、製造されるマイクロセルフォームの所望の密度、材料中の気泡の寸法、材料を形成する(1つまたは複数の)ポリマー、および含浸させる材料の寸法に依存する。一態様によれば、136におけるガス含浸のための圧力および時間条件は、シートの厚さ、ポリマーおよびガス系、含浸圧力、およびポリマー材料へのガスの拡散速度に基づいて実験的に決定することができる。約0.014~0.040インチ(約0.3~約1mm)の範囲内の厚さを有する予備発泡多層シートに対する136でのガス含浸中の例示的な圧力は、約600~800psi、任意に約600~900psi、さらに任意に約660~800psiの範囲であり得る。例示的な含浸時間は、約2~60時間の範囲、任意に約2~46時間、任意に約6~27時間、さらに任意に約6~24時間、さらに任意に約6~8時間、さらに任意に約15~28時間、およびさらに任意に約15~35時間の範囲であり得る。本開示の一態様によれば、136におけるガス含浸中の圧力は、約2~46時間、任意に約6~27時間、さらに任意に約6~24時間、さらに任意に約6~8時間、さらに任意に約15~28時間、およびさらに任意に約15~35時間の範囲の時間において、約600~800psi、任意に600~900psi、さらに任意に約660~800psiの範囲である。
【0045】
一態様によれば、約0.035~0.040インチ(約0.8~約1mm)の範囲の厚さ総計を有する予備発泡多層シートを、660~800psiで約15~35時間、圧力容器内の非反応ガスに曝露することができる。厚さ約0.035~0.040インチ(約0.8~約1mm)のシートは、熱成形カップに使用する典型的な厚さである。対照的に、他の全ての条件が同じである場合、予備発泡段階102に従って処理されていない多層シートは、36~48時間、非反応ガスに曝されて同等のレベルのガス含浸を得るが、またより高密度である。
【0046】
任意に、ガス含浸段階136(浸漬段階とも呼ばれる)に続いて、プロセスは、キャップとも呼ばれる保持段階を含むことができ、ここで圧力容器内の圧力は含浸段階136に続く二次保持圧力で保持される。キャップは、含浸段階中の圧力と同じ二次保持圧力で、任意に含浸段階中の圧力よりも高い圧力で実施することができる。加圧容器内に高圧で長時間保持することにより、材料全体への非反応性ガスの分散を促進し、その後圧力を大気圧に戻すことができる。任意に、キャップ段階は収着速度を加速し、結晶化の速度よりも速く(COは結晶化もまた誘発する)収着曲線の二酸化炭素飽和濃度ピークに到達するのを促進し得る。ガス含浸段階中に、ガス濃度が十分になることによって、吸収されたCOの可塑化効果により飽和PETのガラス転移温度(Tg)を低下させることができる。キャップ段階中の圧力はまた、発泡セルの多層マイクロ構造の生成を促進することができる。
【0047】
136でのガス含浸段階に続いて、ガス含浸シートには、138で、シートに含浸したガスの一部がシートから拡散することができるガス脱着段階を行うことができる。一態様によれば、138におけるガス脱着段階は、136におけるガス含浸と比較して、減圧および/または低下した温度で行われる。一例では、ガス脱着段階138は大気圧で、温度は進行し、約-6℃未満、任意に約-12℃未満で進行する。シートは、約1時間以上、任意に約1~24時間、さらに任意に約4~24時間などの所定の時間、低温で保存することができる。本開示の一態様によれば、138におけるガス脱着段階に続いて、予備発泡層内に残留する非反応性ガスの濃度は、少なくとも約6重量%、任意に少なくとも約5重量%、さらに任意に少なくとも約4重量%、さらに任意に少なくとも約3.5重量%であり、さらに任意に約3.5~6重量%の範囲である。
【0048】
一態様では、脱着後に、外側シート層24の外面のガス濃度を、任意にわずかなまたは無視できるほど少量に低下させる。予備発泡段階で外側シート層24が発泡剤を含まない場合、外側シート層24内のガスの不足(または無視できるほど少量)により、固体表面の外観に、光沢のある滑らかな表面仕上げを付与することができる。
【0049】
外側シート層24に発泡剤が存在する予備発泡段階を使用して外側シート層24を形成する場合、外側シート層24の表面は、発泡剤の分解中に生成されるボイドの存在により外観が艶消しになることがある。一態様によれば、外層は、約0.1~5重量%の範囲の発泡剤を含む押出ブレンドを使用して形成する。
【0050】
138におけるガス脱着段階に続いて、142においてガス含浸シートを加熱して発泡(気泡形成または発泡とも呼ばれる)が開始され、144で予備発泡シート中のマイクロセルフォームの形成が誘発され、多層シート20を製造する。この段階はまた、マイクロセルフォーム構造を有するフォームコア層22を最終的に形成する予備発泡層の第2の発泡と考えてもよい。予備発泡層は、部分的または完全に発泡させることができる。発泡を開始するための加熱は、シートを延伸することを含む。任意に、外側シート層24は、外側シート層24に存在するガスの濃度に応じて、部分的に発泡させることができる。
【0051】
ガス含浸シートが交互配置材料とともにロールに巻かれている場合、142で加熱する前に、シートは最初に巻きを解き、挟み込み材料から分離する。発泡を開始するための加熱は、任意の好適な熱システムを使用して行うことができ、その例としては、温水浴、熱油浴、赤外線ヒーター、および空気加熱オーブン(heated air oven)が挙げられる。ガス含浸シートは、加熱して気泡形成を開始させるが、シートを形成するポリマー材料を溶融させないように加熱する。
【0052】
一態様によれば、142における加熱は、ガス含浸シートの上下に配置されたノズルが加熱空気をシートに供給する空気浮上式オーブン(floating air oven)内で行われる。ガス含浸シートを空気浮上式オーブン内で加熱すると、シートは、長さ、幅、および厚さの3つの全ての寸法において発泡することが可能になる。一態様では、シートは幅寸法が約15~45%、任意に20~25%、および厚さ寸法が約30~70%、任意に約35~55%発泡する。別の態様によれば、144でマイクロセルフォームが形成されるときの発泡により、シートの密度が約35~65%、任意に約40~55%、さらに任意に約40~50%低下する。
【0053】
144でマイクロセルフォーム多層シートを形成した後、シートは、図3の固相発泡プロセス100の106で成形/熱成形するか、または後で使用するために保存してもよい。本開示の一態様によれば、マイクロセルフォーム多層シートは、発泡後に冷却ステーションに曝露して、シートを冷却し、気泡核形成および成長を停止させる。任意の冷却ステーションとしては、例えば、冷水浴、冷却ローラー一式、または冷気を挙げることができる。
【0054】
任意に、142における加熱に続いて、または加熱と同時に、マイクロセルフォーム多層シートは、図3の固相発泡プロセス100の106において成形または熱成形して、所望の形状にシートを形成することができる。一態様によれば、マイクロセルフォーム多層シートは、冷間成形する。別の態様によれば、マイクロセルフォーム多層シートは、シートを金型で成形する前および/または成形中に熱成形プロセスで加熱して、軟化させる。
【0055】
一態様では、マイクロセルフォーム多層シートは、熱成形により所望の形状および寸法を有する物品、例えば食品もしくは飲料容器またはそのような容器の蓋に成形することができる。熱成形の非限定的な例としては、真空成形、加圧成形、プラグアシスト成形、および真空スナップバック成形を挙げることができる。熱成形プロセスは、シートを軟化させるために熱成形温度までマイクロセルフォーム多層シート(ウェブとも呼ばれる)を加熱し、次いでシートを金型上に延伸するまたは引っ張ることを含み得る。材料は金型上に維持され、材料を冷却して凝固させて、物品を形成し得る。形成した物品は、その後、熱成形されたシートからトリミングして、金型から取り出す。任意に、トリミングした材料は再粉砕して、単独でまたはバージン材と組み合わせてリグラインドとしてのさらなる使用のために加工する。
【0056】
一態様によれば、予備発泡多層シートには、熱成形プロセスで供給される熱によって開始される熱成形中に、第3の発泡を行う。熱成形中のシートの成形を促進するための熱は、例として輻射熱および加熱空気を含む任意の好適な方法で供給することができる。任意に、金型および/または対応する金型キャビティを加熱して、予備発泡多層シートの成形を促進させる。加熱した金型/キャビティは、PETなどのポリマーベース予備発泡多層シートを結晶化させて、ホットフードサービス用途用に十分な耐熱性を有する物品の形成を促進させることができる。
【0057】
熱成形プロセスにおける熱は、第3の発泡中に予備発泡多層シート内のガスの追加の発泡を誘発して、形成された物品が予備発泡多層シートよりも低い密度を有するようにする。一態様では、形成された物品の密度は、予備発泡多層シートと比較して約65~92%、任意に約65~85%、さらに任意に約75~92%低下する。
【0058】
任意に、熱成形プロセスは、シート上に空気を吹き付けて、シートを金型の周りに押圧することを促進することを含む。別の例では、熱成形プロセスは、シートを真空によって金型に押し付ける真空成形を含み得る。
【0059】
特定の理論に限定されるものではないが、最終的にマイクロセルフォームコア層を形成する第1の押出ブレンドに発泡剤を導入すると、予備発泡処理段階102において第1の発泡128中に層内にボイドが生じると考えられる。これらのボイドは、規則的または不規則な形状を有していてもよく、チャネル、気泡、キャビティ、セルなどの形態であってもよい。予備発泡層中のこれらのボイドは、固相発泡段階104の136におけるガス含浸中に、層内の非反応性ガスの吸収を促進し、特に層の内部および中央領域への非反応性ガスの吸収を促進する。一般に、層の内部および中心領域内の非反応性ガスの含浸は、層の外部または表面領域よりも長くかかり、吸収された非反応性ガスのガス濃度勾配が生じ、圧力容器内で飽和後に、その中で最も低い濃度の領域が、層の中心近くににある。
【0060】
任意に、予備発泡層の第1の発泡128において発泡剤の分解によって生成されたガスの一部は、材料内に分散されて保持されてもよく、したがって、含浸および発泡段階104の136でのガス含浸中に加えるべきガスはより少なく、所望の非反応性ガス濃度に達する。136におけるガス含浸前の若干のガス量の存在はまた、固相発泡中に所定のガス吸収濃度を達成するのに必要な時間量の減少に寄与し得る。任意に、136におけるガス含浸前にボイドが存在することは、予備発泡段階発泡剤の核形成効果の結果として、最終物品のフォーム密度の著しい低下を促進することができる。
【0061】
含浸および発泡段階104の136でのガス含浸中に、非反応性ガスは外側シート層24に吸収され、したがって、外側シート層24に若干量の発泡が生じることがある。外側シート層24における発泡量は、最終的に外側シート層24を形成する第2の押出ブレンドが発泡剤を含むか否かによっても影響され得る。加えて、ほとんどの場合、非反応性ガスは、ガス脱着段階138中に外側シート層24からコア層22からよりも速く脱着し、したがって外側シート層24中のガス濃度は減少し、138における脱着の後に、脱着時間に依存して、外側シート層24内には吸収された二酸化炭素がほとんど残っていないか全く残っていない。一般的に、外側シート層24の発泡は、存在する場合にその程度は、発泡コア層22の発泡の程度よりも小さく、任意にフォームコア層22のセルサイズよりも小さいおよび/またはより細かいセルサイズを有し、外側シート層24の密度は、発泡コア層22の密度よりも高い。
【実施例1】
【0062】
予備発泡処理段階102を伴う場合と伴わない場合で、図3の固相発泡プロセス100によるPETマイクロセルフォーム層を含む多層シートを作製した。予備発泡処理シートは、PETおよび化学発泡剤として1~2重量%のSUKANO(登録商標)fa S632を含むブレンドを使用して作製した。シートは0.035~0.040インチ(約0.8~約1mm)の範囲の厚さを有していた。予備発泡処理シートと非処理シートの両方を660psiで二酸化炭素ガスに曝露した。非処理シートを二酸化炭素ガスに36~40時間曝露して所定量の二酸化炭素吸収を達成し、一方、予備発泡処理シートを二酸化炭素ガスに15~20時間曝露して同量の二酸化炭素吸収を達成した。
【実施例2】
【0063】
予備発泡処理段階102を伴う場合と伴わない場合で、図3の固相発泡プロセス100に従ってPETマイクロセルフォームシートを作製した。予備発泡処理シートは、本開示による1重量%の化学発泡剤SUKANO(登録商標)fa S632を含むブレンドを使用して作製した。予備発泡処理シートは、0.018インチ(約0.46mm)の厚さを有し、非処理シートは0.014インチ(約0.46mm)の厚さを有していた。予備発泡処理シートは、発泡時に90%の密度低下を達成することができたが、未処理シートは60%の密度低下のみで発泡した。
【実施例3】
【0064】
図6は、図3の固相発泡プロセス100の含浸および発泡段階104におけるガス含浸中に、材料によって吸収される二酸化炭素の量に対する、本開示による予備発泡処理段階102の効果を実証するグラフ200を示す。データ点[A]は、予備発泡処理に従って処理されなかったPETシート(「非処理シート」)によって吸収された二酸化炭素の量を示す。データ点[B]は、図3の予備発泡処理段階102の追加を除いて、非処理シート[A]と同じ条件に従って作製されたPETシート(「予備発泡処理シート」)によって吸収される二酸化炭素の量を示す。予備発泡処理シートは、PETおよび化学発泡剤として2重量%のSUKANO(登録商標)fa S632を含むPETブレンドを使用して作製した。破線は、[A]および[B]の各データセットの最小二乗回帰直線を示す。
【0065】
図6のグラフは、圧力容器内において600psiおよび21℃で厚さ0.014インチ(約0.36mm)のPETシートが吸収する二酸化炭素ガスの量を、時間の関数として示す。グラフ200に示すように、所与の時間に処理シート[B]が吸収する二酸化炭素の量は、非処理シート[A]が同じ時間内に吸収した二酸化炭素より一貫して多い。
【0066】
図7は、非処理PETシート[A]および処理PETシート[B]が保持する、図6に示す各飽和時間に対する二酸化炭素の量を示すグラフ210を示す。破線は、[A]および[B]の各データセットの最小二乗回帰直線を示す。固相発泡プロセス100の含浸および発泡段階104のガス含浸部分に続いて、非処理および処理PETシートを、ガス脱着段階中に冷凍庫に1時間保存した。特記しない限り、冷凍庫内の温度は約-5℃(約23°F)である。シートを冷凍庫から取り出し、シートが保持した二酸化炭素の量を、経時的に測定した。グラフ210に示すように、脱着段階の後の各測定時点で、予備発泡処理PETシート[B]は、非処理PETシート[A]と比較して、より多くの量の二酸化炭素ガスを保持する。
【0067】
図8は、非処理のPETシート[A]および予備発泡処理PETシート[B]から形成されたマイクロセルフォームシートの密度を比較するグラフ220を示す。グラフ220は、固相発泡中の発泡温度の関数として、発泡シートの密度を示す。破線は、[A]および[B]の各データセットの最小二乗回帰直線を示す。非処理PETシート[A]および予備発泡処理PETシート[B]は、空気浮上式オーブン中で指示された温度まで加熱して、含浸した二酸化炭素ガスの発泡の結果として、シートの発泡を開始させた。グラフ220は、非処理PETシート[A]と比較して、予備発泡処理PETシート[B]は一貫して発泡後の密度がより低いことを示している。本開示による図3の固相発泡プロセス100の、予備発泡処理段階102と含浸および発泡段階104との組み合わせにより、予備発泡処理段階102なしで、含浸および発泡段階104のみを用いて形成したシートよりも低い密度を有するマイクロセルフォームシートを製造することができる。したがって、本開示の態様によれば、予備発泡処理段階102によって処理されたマイクロセルフォームシートは、実施例3の実施形態に示すように、1g/cm未満、具体的には0.8g/cm未満の密度を有するこれは、1g/cmを超える密度を有する非処理シートとは対照的である。
【実施例4】
【0068】
図9は、図3の固相発泡プロセス100の含浸および発泡段階104中に、材料によって吸収される二酸化炭素の量に対する、本開示による予備発泡処理段階102の効果を実証するグラフ230を示す。データ点[C]は、予備発泡処理に従って処理されなかったPETシート(「非処理シート」)によって吸収された二酸化炭素の量を示す。データ点[D]は、予備発泡処理段階の追加を除いて、非処理シート[C]と同じ条件に従って作製されたPETシート(「予備発泡処理シート」)によって吸収される二酸化炭素の量を示す。予備発泡処理シートは、PETおよび化学発泡剤として2重量%のSUKANO(登録商標)fa S632を含むブレンドを使用して作製した。データ点を結ぶ実線は、視覚的に強調するためにのみ提供されている。非処理シート[C]および予備発泡処理シート[D]を圧力容器内で、700psiで5時間、二酸化炭素に曝露した。シートはPETから作製し、0.019インチ(約0.48mm)の厚さを有していた。グラフ230は、予備発泡処理シート[D]が、同じ含浸および発泡条件下で、非処理シート[C]よりも多くの二酸化炭素量を一貫して吸収したことを示す。
【実施例5】
【0069】
図10は、固相発泡プロセス100において形成されたマイクロセルフォームの密度に対する、本開示による予備発泡処理段階102の効果を示すグラフ240を示す。表1には、調査した[E]から[H]までの各サンプルのパラメータを列挙する。
【0070】
【表1】
【0071】
データ点[E]および[F]は、予備発泡処理に従って処理されなかったPETシート(「非処理シート」)によって吸収された二酸化炭素の量を示す。データ点[G]および[H]は、予備発泡処理段階の追加を除いて、非処理シート[E]および[F]と同じ条件に従って作製されたPETシート(「予備発泡処理シート」)によって吸収される二酸化炭素の量を示す。データ点を結ぶ実線は、視覚的に強調するためにのみ提供されている。
【0072】
グラフ240は、発泡温度の関数として、発泡シートの密度を示す。非処理PETシート[E]および[F]ならびに予備発泡処理PETシート[G]および[H]は、空気浮上式オーブン中で指示された温度に加熱して、含浸した二酸化炭素ガスの発泡の結果として、シートの発泡を開始させた。グラフ240は、予備発泡処理PETシート[G]および[H]が、非処理PETシート[E]および[F]と比較して、予備発泡処理シートが非処理シートよりも厚さがあっても、一貫して固相発泡後の密度がより低いことを実証している。例えば、予備発泡処理PETシート[H]は、0.022インチ(0.56mm)の厚さを有し、その両方の厚さがより薄い非処理シート[E]および[F]よりも、低いフォーム密度を有する。本開示による固相発泡プロセス100の、予備発泡処理段階102と含浸および発泡段階104との組み合わせにより、予備発泡処理段階102を含まない従来の固相発泡プロセスを用いて形成したシートよりも低い密度を有するマイクロセルフォームシートを製造することができる。したがって、本開示の態様によれば、予備発泡処理段階102によって処理されたマイクロセルフォームシートは、実施例5の実施形態に示すように、1g/cm未満、具体的には0.8g/cm未満の密度を有し得る。これは、1g/cmを超える密度を有する非処理シートとは対照的である。
【実施例6】
【0073】
図11および12は、図3の固相発泡プロセス100の含浸および発泡段階104におけるガス含浸中に、材料によって吸収される二酸化炭素の量に対する、本開示による予備発泡処理段階102の効果を実証するグラフ250および260を示す。以下の表2には、調査した[I]から[N]までの各サンプルのパラメータを列挙する。
【0074】
【表2】
【0075】
SUKANO(登録商標)fa S632は、Sukano Polymers Corporation、U.S.A.から市販されており、製造者によって固体ポリマーマトリックス中の発泡剤マスターバッチとして記載されている。SAFOAM(登録商標)CE-335は、REEDY Chemical Foam&Specialty Additives、U.S.A.から市販されており、製造者によってポリエチレン担体中にクエン酸ナトリウムおよび炭酸カルシウムを含有するものとして記載されている。PETは、ASTM4603に従って約0.6~0.84dL/gの範囲内で固有粘度を有する押出熱成形等級のPETである。
【0076】
データ点[I]は、予備発泡処理に従って処理されなかったPETシート(「非処理シート」)によって吸収された二酸化炭素の量を示す。データ点[J]、[K]、[L]、[M]および[N]は、予備発泡処理段階の追加を除いて、非処理シート[I]と同じ条件に従って作製されたPETシート(「予備発泡処理シート」)によって吸収される二酸化炭素の量を示す。サンプル[I]から[N]までの全てを、圧力容器内で、図11のグラフ250に示された時間、660psiの二酸化炭素に曝露し、次いで720psiで4時間のキャップを行った。図11の破線は、[I]から[L]までの各データセットの最小二乗回帰直線を示す。図12の棒グラフは、非処理サンプル[I]および予備発泡処理サンプル[L]、[M]、および[N]について、20時間の曝露、次いで720psiで4時間のキャップ後に吸収された二酸化炭素の量を比較する。
【0077】
図11および図12のデータは、固相発泡プロセス100の含浸および発泡段階104の含浸部分中に吸収される二酸化炭素の量に対する、予備発泡処理段階102における化学発泡剤の異なる種類および濃度の影響を示す。SUKANO(登録商標)fa S632およびSAFOAM(登録商標)CE-335の発泡剤はいずれも、0.5~4重量%の範囲の濃度で、予備発泡処理プロセスにおいて発泡剤を添加しない同じプロセスにより作製されるサンプルと比較して、固相発泡中の二酸化炭素吸収の増加をもたらす。
【0078】
図13は、異なる発泡温度における非処理サンプル[I]および予備発泡処理サンプル[J]~[N]のフォーム密度を比較するグラフ270を示す。非処理PETシート[I]ならびに予備発泡処理PETシート[J]~[N]は、空気浮上式オーブン中で指示された温度まで加熱して、含浸した二酸化炭素ガスの発泡の結果として、シートの発泡を開始させた。グラフ270は、非処理PETシート[I]と比較して、予備発泡処理PETシート[J]~[N]は一貫して固相発泡後の密度がより低いことを実証している。本開示による固相発泡プロセス100の、予備発泡処理段階102と含浸および発泡段階104との組み合わせにより、予備発泡処理段階を含まない従来の固相発泡プロセスを用いて形成したシートよりも低い密度を有するマイクロセルフォームシートを製造することができる。
【実施例7】
【0079】
図14および図15は、本開示の予備発泡処理段階102(「予備発泡処理」)に従って調製したマイクロセルPETシートおよび予備発泡処理を含まない(「非処理」)マイクロセルPETシートを用いて作製したカップの断熱性能を比較する。予備発泡処理カップと非処理カップの両方を形成するために使用したシートは、予備発泡処理カップが化学発泡剤を含むPET押出ブレンドを用いて作製されたことを除いて、同じ固相発泡プロセスに従って発泡させた。予備発泡処理カップと非処理カップの両方を、同じ熱成形プロセスを用いてカップへと形成した。
【0080】
非処理および予備発泡処理カップの両方を、単層PETシートを用いて作製した。予備発泡処理シートは、PETおよび1重量%の化学発泡剤SUKANO(登録商標)fa S632を含むブレンドから作製した単層PETシート使用して作製した。両方のシートを、660psiで15時間の二酸化炭素ガスへの曝露、続いて720psiで4時間のキャップ、および冷凍庫での4時間の脱着段階を含む固相発泡プロセスを使用して発泡させた。冷凍庫の温度は23°F(-5℃)であり、発泡シートの温度は約170~185°F(約77~85℃)の範囲であり、熱成形シートの温度は約200~210(約93~99℃)の範囲であり、高温成形温度は約375~390°F(約190~199℃)の範囲である。
【0081】
図14のグラフ280では、同じ量の熱い液体を190°Fで保持した場合の、非処理および予備発泡処理カップそれぞれの内側と外側との間の温度差を比較する。カップの内側と外側の温度差が大きくなればなるほど、カップは、消費者が触れるとより冷たく感じられると予想される。図15のグラフ290は、予備発泡処理カップの外部温度が非処理カップよりも低いことを示す。グラフ280および290のデータは、予備発泡処理カップが、非処理カップと比較して消費者が触れるとより冷たく感じられ、したがって、非処理カップと比較して、消費者の手に対しカップの熱い内容物からのより大きな断熱性を提供する。
【0082】
図14および図15のデータは、二酸化炭素の吸収速度の増加または二酸化炭素の保持の増加などの、固相発泡中のプロセス条件の相違に加えて、本開示による予備発泡処理により、対応する非処理物品とは異なる断熱特性を有するマイクロセルフォーム物品が作製されることを実証する。
【実施例8】
【0083】
以下の表3は、カップへの熱成形に好適な、本開示による予備発泡処理段階102を含む、ABA構造を有するマイクロセルフォーム多層シートを形成するための例示的な組成を示す。
【0084】
【表3】
【0085】
成核剤
本開示の別の態様によれば、マイクロセルフォーム層を形成するために使用する押出ブレンドは、予備発泡処理段階102において発泡剤の代わりに、または発泡剤と組み合わせて成核剤を含むことができる。押出ブレンドは、含浸および発泡段階104の含浸段階136中に非反応ガスの吸収を促進する、および/またはセル核形を促進することができる成核剤を含むことができ、したがって非処理サンプルと比較してより短い時間で所望の密度を有するマイクロセルフォームを提供することができる。
【0086】
図16は、成核剤を添加して、図3の含浸および発泡段階104で使用して、プロセス100の成形/熱成形段階106で任意に使用できるマイクロセルフォームを形成することができる押出物を提供することを含む、予備発泡核形成処理段階300のフローチャートを示す。予備発泡核形成処理段階300を使用して、図1および図2のマイクロセルフォームシート20を、外側シート層24、26を伴うかまたは伴わないで、形成することができる。
【0087】
一態様によれば、予備発泡核形成処理段階300で形成した押出物は、固相発泡プロセス100の含浸および発泡段階104に従って発泡させる。別の態様によれば、図3の予備発泡処理段階102の122で形成した第1の押出ブレンドは、発泡剤に加えて成核剤を含む。予備発泡処理段階102、含浸および発泡段階104、および任意に成形/熱成形段階106は、予備発泡処理段階102で発泡剤を用いる場合または用いない場合において、上記記載に類似した方法で、成核剤の存在下で実施することができる。したがって、予備発泡核形成処理段階300は、図3の固相発泡プロセス100において、予備発泡処理段階102と組み合わせて、または予備発泡処理段階102の代わりに使用することができる。
【0088】
マイクロセルフォーム層を形成する押出ブレンドに成核剤を添加することによって、成核剤の添加なしに作製したサンプルと比較して、固相発泡によるマイクロセルフォームの形成を促進することができる。成核剤の存在は、サイズ、密度および/または均一性などのセルの特徴を含み、セル形成を促進することができる。したがって、成核剤はまた、マイクロフォームの密度および/または厚さを含む、生成されたマイクロフォームの品質に影響を及ぼし得る。範囲を限定するものではないが、成核剤により、マイクロセルフォームシートの熱成形中に冷結晶化を促進して、サイクル時間を短縮することができることが理論付けられている。成核剤は、固相発泡プロセスのガス含浸段階の前に、溶融結晶化にほとんどまたは全く影響を及ぼさず、押出シートは非晶質状態のままである。
【0089】
さらに図16を参照すると、302において、第1のポリマー材料は、成核剤および任意の添加剤と組み合わせて、フォームコア層22を形成する第1の押出ブレンドを形成する。第2のポリマー材料を任意に添加剤と組み合わせて、図4の予備発泡処理段階102に関して上述したのと同様の方法で、1つまたは複数の外側シート層24、26を形成する第2の押出ブレンドを形成する。しかし、予備発泡核形成処理段階300による第1および第2の押出ブレンドは、発泡剤を含んでも含まなくてもよい。第1および第2の押出ブレンドは、単一のポリマーまたは2つ以上のポリマーのブレンドを含むことができ、その例として、リサイクルPETを含むポリエチレンテレフタレート(PET)、植物ベースのPET、改質PETコポリマー、非晶質または結晶性PET、グリコール改質(PETG)および他のポリエステル、ならびにポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、熱可塑性ウレタン(TPU)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、またはポリエチレン(PE)が挙げられる。第1および第2のポリマー材料を形成するポリマーは、同じであっても異なっていてもよい。任意に、第1および/または第2の押出ブレンド中のポリマーの一部は、リグラインド材料を含むことができる。
【0090】
302で第1のポリマー材料と組み合わせられた成核剤は、無機または有機成核剤であり得る。好適な成核剤の例としては、タルク、安息香酸ナトリウム、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。一態様によれば、第1の押出ブレンド中に存在する成核剤の量は、約0.125~1.25重量%の範囲である。一態様では、成核剤は、担体と組み合わせた成核剤を含むマスターバッチとして提供し、第1の押出ブレンドと組み合わせた成核剤マスターバッチの量は、約0.5~5重量%の範囲である。使用する成核剤の量は、成核剤の種類(例えば、無機または有機成核剤)または粒子サイズなどの成核剤の特性に基づいていてもよい。
【0091】
第1の押出ブレンドを加熱して可塑化混合物または溶融物を形成し、これを溶融押出機に通して加熱したダイに移動させる。共押出機を加熱したダイと接合して、加熱したダイに第2の押出ブレンドを溶融物として供給して、第1の押出ブレンド溶融物との共押出しを行うことができる。304で、第1および任意の第2の押出混合溶融物を加熱ダイに通して押出して、第1の押出ブレンドから形成された第1の層および第2の押出ブレンドから形成された第2の層を含む多層押出物を形成する。加熱したダイは、押出シートを製造するフラットダイであってもよい。306において、304で形成された多層押出物は、図3の固相発泡プロセス100の図5に示す含浸および発泡段階104に従って処理して、マイクロセルフォームを製造することができる。
【0092】
図17~20は、本開示によるマイクロセルフォームシートを生成するために使用する、含浸および発泡段階104の予備発泡核形成処理段階300による第1の押出ブレンドへの成核剤添加の効果を示す。
【実施例9】
【0093】
図17は、含浸および発泡段階104のガス含浸段階中に押出PETシートによって吸収された二酸化炭素の量に対する、第1の押出ブレンド中の無機成核剤タルクの存在の効果を示すグラフ400を示す。成核剤を用いておよび用いないで形成したPETシートによって吸収された二酸化炭素の量を、2つの異なるガス含浸条件について測定した、すなわち、(a)660psiで36時間、二酸化炭素への曝露、続いて720psiで4時間のキャップ(白いバー)および(b)660psiで20時間、二酸化炭素への曝露、続いて720psiでの4時間のキャップ(黒いバー)である。
【0094】
図17のグラフは、成核剤を含まないPETシート(「非処理PET」)、2重量%のTA10-13 MB01タルク成核剤を含むPETシート(「処理1」)4重量%のTA10-13 MB01タルク成核剤を含むPETシート(「処理2」)、および4重量%のT na S595タルク成核剤を含むPETシート(「処理3」)について、両方のガス含浸条件で吸収された二酸化炭素の量を比較する。TA10-13およびT na S595はともに、SUKANO(登録商標)から市販されているタルクおよび担体を含むPET成核剤マスターバッチである。製造業者によると、TA10-13は約28重量%のタルクを含有し、T na S595は約26重量%のタルクを含有する。図17に示すように、成核剤処理サンプル1~3の全てが、同じガス含浸条件下で、非処理PETサンプルよりも多くの二酸化炭素を吸収した。
【実施例10】
【0095】
図18のグラフは、成核剤を含まないPETシート(「非処理PET」)、2重量%のTA10-13 MB01タルク成核剤を含むPETシート(「処理1」)および4重量%のTA10-13 MB01タルク成核剤を含むPETシート(「処理2」)について、異なる曝露時間におけるガス含浸段階中の二酸化炭素吸収の差を示すグラフ410を示す。非処理および成核剤処理シートのそれぞれは、厚さ0.040インチ(~1.0mm)のPETシートであり、指示された時間660psiで二酸化炭素に曝露した。
【0096】
図18に実証するように、成核剤処理されたサンプル1および2の両方は、非処理のPETサンプルと比較して曝露時間の広範囲にわたって二酸化炭素吸収の増加を示した。図18のデータは、PET押出物が成核剤を含む場合、所与の時間、特に約5~72時間の曝露時間の範囲で吸収される二酸化炭素量の改善を示す。このように、本開示によるPETシート中に成核剤を含めることにより、非処理サンプルと比較して、固相発泡プロセスのガス含浸段階中に必要とされる時間量を減少させることができる。
【実施例11】
【0097】
図19および図20は、本発明による固相発泡シートの密度および厚さを、予備発泡核形成処理段階300において2種類の異なる成核剤を用いて比較している。図19は、PET押出ブレンドを成核剤と混合した、本開示によるPETの固相発泡シートのフォーム温度の関数としてのフォーム密度のグラフを示す。4重量%のTA10-13 MB01タルク成核剤を含むPETシート(「処理2」)、または4重量%のT na S595タルク成核剤を含むPETシート(「処理3」)を作製した。シートは発泡前に0.040インチ(~1.0mm)の厚さを有し、ガス含浸段階中に700psiで15時間、二酸化炭素に曝露し、続いて780psiで9時間キャップした。図20は、図19について記載したように異なる発泡温度で調製した発泡シートの厚さを比較するグラフ422を示す。
【0098】
図19および20で示すように、4重量%のTA10-13 MB01を使用して作製した成核剤処理シート2は、異なるタイプのタルク成核剤を使用した成核剤処理シート3と比較して、所与の発泡温度で、一般により低いフォーム密度およびより厚いフォームシートを示す。したがって、本開示の態様によれば、予備発泡核形成処理段階300によって処理されたマイクロセルフォームシートは、実施例11の実施形態に示すように、1g/cm未満、具体的には0.8g/cm未満の密度を有し得る。
【0099】
発泡剤および成核剤による予備発泡処理
本開示の別の態様によれば、マイクロセルフォームシートは、図3の予備発泡処理段階102と、図3の予備発泡核形成処理段階300による成核剤の使用とを組み合わせたプロセスを用いて、形成することができる。成核剤は、図4の予備泡処理段階102の122で、発泡剤に加えて、第1の押出ブレンドに添加して、成核剤および発泡剤の両方を含む第1の押出ブレンドを形成することができる。図3の固相発泡プロセス100の含浸および発泡段階104は、予備発泡処理段階102を、予備発泡核形成処理段階300なしで単独で使用するプロセスを実施する方法に関して上述したのと同様の方法で、成核剤および発泡剤の両方を含む押出ブレンドを用いて実施することができる。成核剤は、図16の予備発泡核形成処理段階300に関して上述したのと同様の方法で、122で第1の押出ブレンドに添加する。
【0100】
一態様によれば、予備発泡処理段階102で発泡剤を使用することにより、固相発泡中の非反応性ガスの吸収を促進して、吸収されたガスの所与の濃度を達成するのに必要な時間量を減少させることができる。成核剤の存在は、セル形成を促進し、サイズ、密度、および均一性などのセルの特徴を含む場合があり、フォームの密度および/または厚さを含む、生成されたマイクロフォームの品質に影響し得る。マイクロセルフォーム層を形成する押出ブレンド中の成核剤と発泡剤との組み合わせは、ガス吸収およびセル形成を促進することにより、固相発泡プロセスおよび成形プロセスを促進することができる。成核剤と発泡剤との組み合わせにより、フォーム押出ブレンド中に発泡剤および成核剤を使用しないプロセスと比較して、より速いサイクル時間で所望の密度および厚さを有するマイクロセルフォームシートおよび物品を生成し得る。
【0101】
実施例12~13および図21~24は、本開示によるマイクロセルフォームシートを生成するために含浸および発泡段階104で使用する、第1の押出ブレンドへの成核剤および発泡剤添加の効果を示す。
【実施例12】
【0102】
図21および図22では、成核剤および発泡剤との組み合わせを用いて、本開示に従って作製した固相フォームシートと、発泡剤のみを用いて製造した固相フォームシートの密度および厚さをそれぞれ比較する。シートは、「発泡剤」サンプルの押出ブレンドが発泡剤を含むが、「組み合わせ」サンプルは発泡剤および成核剤の両方を含む点を除いて、PETを使用する同じプロセスパラメータを用いて作製した。両サンプルセットの発泡剤はSAFOAM(登録商標)CE-335であり、これは、REEDY Chemical Foam&Specialty Additives、U.S.A.から市販されており、製造者によってポリエチレン担体中にクエン酸ナトリウムおよび炭酸カルシウムを含有するものとして記載されている。発泡剤の充填量は約0.25~1重量%であった。組み合わせサンプルの成核剤は、約2重量%の充填量で、タルク系の成核剤であるSukano(登録商標)T na S595であった。固相発泡条件には、ガス含浸段階中に700psiで21時間、続いて780psiで7時間のキャップが含まれていた。
【0103】
図21は、発泡剤を含むPET押出ブレンドから形成した発泡剤サンプルについて、発泡剤および成核剤を含むPET押出ブレンドから形成した組み合わせサンプルと比較して、発泡温度の関数としてのマイクロセルPETフォームの密度を比較するグラフ430を示す。グラフ430で実証するように、観察された発泡温度それぞれにおいて、組み合わせ剤サンプルは、発泡剤のみを用いて形成したシートよりも低い密度を有するマイクロセルフォームシートを製造した。図22に示すグラフ432は、発泡剤のみを添加した場合と比較して、組み合わせ剤サンプルは、観察された発泡温度でより大きい厚さを有するフォームも製造したことを示す。所与の密度でより厚いフォームを製造する能力は、大型または深絞り容器(例えば、20オンスのカップ)などの、フォームシートからある種の物品を形成する際に有利であり得る。
【実施例13】
【0104】
図23および図24では、成核剤および発泡剤との組み合わせを用いて、本開示に従って作製した固相フォームシートと、発泡剤のみを用いて製造した固相フォームシートの密度および厚さをそれぞれ比較する。図23および図24のデータは、有機成核剤、PTFEの、固相発泡シートへの影響を示す。シートは、「成核剤」サンプルの押出ブレンドが発泡剤を伴わず成核剤を含むが、「組み合わせ」サンプルは発泡剤および成核剤の両方を含む点を除いて、PETを使用する同じプロセスパラメータを用いて作製した。組み合わせサンプル1の発泡剤は、充填量約1重量%のSAFOAM(登録商標)CE-335であり、これは、REEDY Chemical Foam&Specialty Additives、U.S.A.から市販されており、製造者によってポリエチレン担体中にクエン酸ナトリウムおよび炭酸カルシウムを含有するものとして記載されている。組み合わせサンプル1の発泡剤は、充填量約0.75重量%のSUKANO(登録商標)fa S632であり、これは、Sukano Polymers Corporation、U.S.A.から市販されており、製造者によって固体ポリマーマトリックス中の発泡剤マスターバッチとして記載されている。全てのサンプルの成核剤は、充填量約0.5重量%のPTFE成核剤であり、これは、Shamrock Technologies、U.S,A.からXD-8461として市販されている。固相発泡条件には、ガス含浸段階中に700psiで15時間、続いて780psiで9時間のキャップが含まれていた。
【0105】
図23は、発泡剤を伴わない有機成核剤を含むPET押出ブレンドから形成した成核剤サンプルについて、発泡剤およびPTFE成核剤の両方を含むPET押出ブレンドから形成した組み合わせサンプル1および2と比較して、発泡温度の関数としてのマイクロセルPETフォームの密度を比較するグラフ440を示す。グラフ440で実証するように、観察された発泡温度それぞれにおいて、組み合わせサンプル1および2は、PTFE成核剤のみを用いて形成したシートよりも低い密度を有するマイクロセルフォームシートを製造した。図24に示すグラフ442は、PTFE成核剤のみを添加した場合と比較して、組み合わせサンプル1および2は、観察された発泡温度でより大きい厚さを有するフォームも製造したことを示す。
【実施例14】
【0106】
追加の予備発泡処理段階実施例
図25および図26は、本開示の固相発泡プロセス100の予備発泡処理段階102(「予備発泡処理」)に従って調製したマイクロセルPETシートおよび予備発泡処理段階102を含まない(「非処理」)マイクロセルPETシートを用いて作製したカップの断熱性能を比較する。予備発泡処理カップと非処理カップの両方を形成するために使用したシートは、予備発泡処理段階102を伴う場合と伴わない場合でそれぞれ、同じ固相発泡プロセスに従って発泡させた。予備発泡処理カップと非処理カップの両方を、同じ熱成形プロセスを用いてカップに成形した。予備発泡処理カップおよび非処理カップは、単一発泡層シートから成形した。
【0107】
非処理および予備発泡処理カップの両方を、単層PETシートを用いて作製した。予備発泡処理カップは、PETおよび発泡剤を4つの異なる濃度で含むブレンドから作製した単層PETシート使用して作製した。予備発泡処理カップは、PETおよび4つの異なる濃度、すなわち0.4重量%(「予備発泡処理O」)、0.5重量%(「予備発泡処理P」)、0.75重量%(「予備発泡処理Q」)、1重量%(「予備発泡処理R」)の発泡剤を含むブレンドから作製した単層PETシートを使用して作製した。4つの予備発泡処理カップ全ての発泡剤は、SAFOAM(登録商標)CE-335であった。全てのシートを、660psiで36時間の二酸化炭素ガスへの曝露、続いて765psiで4時間のキャップ、および冷凍庫での4時間の脱着段階を含む固相発泡プロセスを使用して発泡させた。冷凍庫の温度は23°F(-5℃)であり、発泡シートの温度は約155~170°F(約68~77℃)の範囲であり、熱成形シートの温度は約200~210(約93~99℃)の範囲であり、高温成形温度は約375~390°F(約190~199℃)の範囲である。
【0108】
図25のグラフ500では、同じ量の熱い液体を190°Fで保持した場合の、非処理および予備発泡処理カップそれぞれの内側と外側との間の温度差を比較する。カップの内側と外側の温度差が大きくなればなるほど、カップは、消費者が触れるとより冷たく感じられると予想される。図26のグラフ510は、予備発泡処理カップの外部温度が非処理カップよりも低いことを示す。グラフ500および510のデータは、予備発泡処理カップが、非処理カップと比較して消費者が触れるとより冷たく感じられ、したがって、非処理カップと比較して、消費者の手に対しカップの熱い内容物からのより大きな断熱性を提供する。グラフ500および510のデータはまた、予備発泡処理サンプル中の発泡剤の濃度が異なると、材料の断熱特性に影響を与え得ることを実証している。
【0109】
図25および図26のデータは、二酸化炭素の吸収速度の増加または二酸化炭素の保持の増加などの、固相発泡中のプロセス条件の相違に加えて、本開示による予備発泡処理段階102により、対応する非処理物品とは異なる断熱特性を有するマイクロセルフォーム物品が作製されることを実証する。
【実施例15】
【0110】
表4は、本開示による予備発泡処理段階102が、固相発泡プロセス後のフォームシートの密度に及ぼす影響を示す。表4は、非処理サンプル[S]および予備発泡処理サンプル[T]から[Y]の材料および密度を列挙する。
【0111】
【表4】
【0112】
非処理サンプル[S]および予備発泡処理サンプル[T]から[Y]は、予備発泡処理段階102を伴う場合と伴わない場合で、それぞれ同じ固相発泡プロセスに従って発泡させた。予備発泡処理サンプル[T]から[Y]は、発泡剤を含むPET押出ブレンドを用いて作製し、非処理サンプル[S]は、発泡剤を含まないPET押出ブレンドを用いて作製した。予備発泡処理サンプル[T]から[Y]を、種々の濃度の同じ発泡剤、SAFOAM(登録商標)CE-335で処理した。
【0113】
図27は、予備発泡処理サンプル[T]から[Y]までについて、予備発泡処理プロセスが、固相発泡プロセスのガス含浸段階中に吸収されるガス量に及ぼす効果を、同じ圧力、温度および時間条件の非処理サンプル[5]と比較して実証するグラフ520を示す。非処理サンプル[S]および予備発泡処理サンプル[T]から[Y]までは、全て圧力容器内で、660psiで36時間、二酸化炭素に曝露し、続いて765psiで4時間キャップした。4時間のキャップの後、吸収された二酸化炭素の量を測定した。これは図27に示す。サンプルは、空気浮上式オーブン中で155~170°F(約68~77℃)に加熱して、含浸した二酸化炭素ガスの発泡の結果として、シートの発泡を開始させた。非処理および処理サンプルの密度を表4に示す。
【0114】
表4および図27の結果は、本開示の予備発泡処理段階102が、固相発泡プロセスの態様および製造される材料の特徴に影響を及ぼすことを示す。表4に示すように、予備発泡処理段階102における発泡剤の存在は、一貫して、非処理発泡シートより低い密度を有する発泡シートをもたらす。図27は、非処理サンプルと比較して、プレフォーム処理段階102が、含浸および発泡段階104の含浸部分中に吸収されたガスの量に及ぼす効果を実証する。予備発泡処理段階102に従って調製したサンプルは、非処理のサンプル[S]よりも一貫してより多くのガスを吸収した。
【実施例16】
【0115】
以下の表5では、予備発泡処理段階102を含む固相発泡プロセスに従って作製したカップ(「予備発泡処理カップ」)および予備発泡処理段階102なしで作製したカップ(「非処理カップ」)の特徴を比較する。両カップは、PETを用いて作製し、予備発泡処理カップを、予備発泡処理段階102に従い、0.4重量%の発泡剤、SAFOAM(登録商標)CE-335を含むPETブレンドから製造した以外は、同じ含浸、発泡および成形条件に曝露した。
【0116】
【表5】
【0117】
カップ底部および側壁の厚さをそれぞれ3つおよび4つの異なる位置で測定し、各カップの重量を測定した。熱変形試験は、熱水(約190°F/88℃)を保持するカップを0.25インチ(6mm)たわませるのに必要な力の大きさに対応する。カップをたわませるのに必要な力は、カップの円周の周りの120度離れた異なる3つの点で測定した。カップには熱湯を充填ラインまで充填し、フォーステスターを使用して、カップを所定の大きさたわませるのに必要な力を測定した。圧潰力は、金属圧潰板をデジタルフォースゲージに接続して測定し、圧潰板が、圧潰板の下方の中心に置かれたカップ上に押し下げられると、力が測定される。フォースゲージの出力は、圧潰板の移動中に測定され、現在の読取り値が前の読取り値と2%以上異なる場合、カップは圧潰されたと判断され、最後の力読取り値が記録される。
【0118】
表5の結果は、変形および圧潰力データが示すように、予備発泡処理カップが、非処理カップよりも軽量であり、かつ非処理カップよりも強いことを示す。予備発泡処理カップの重量が軽いため、保存と輸送の点でコスト削減が可能である。予備発泡処理カップの強度の増加は、多くの場合、消費者にとって望ましい特性である。
【0119】
フォームセル構造
図28A~Cおよび図29A~Cは、本開示の予備発泡処理段階なしで作製した固相フォームと比較して、予備発泡処理段階102を含む図3の固相発泡プロセス100に従って製造したフォーム材料のセル構造を示す。図28A~Cは、本開示の予備発泡処理段階102を含まない固相発泡プロセスに従って作製されたフォームカップ(「未処理カップ」)の側壁断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。図29A~Cは、予備発泡処理段階102を含む、本開示の固相発泡プロセス100に従って作製したフォームカップ(「予備発泡処理カップ」)のカップ側壁断面のSEM画像を示す。図28A~Bおよび図29A~Cの設定は、2kV、WD12mm、SS30であり、図28Cは、WD13mmであった。
【0120】
非処理および予備発泡処理カップは、両方ともPETを用いて作製し、予備発泡処理段階102に従い、予備発泡処理カップが0.4重量%の発泡剤、SAFOAM(登録商標)CE-335を含む以外は、含浸および発泡段階104の同じ固相発泡条件に、および成形段階106の成形条件に曝露した。発泡温度は、約155~165°F(68~74℃)であった。
【0121】
図28Aは、発泡材料内に層を形成する別個の発泡部分602および604、ならびに非発泡部分608を一般に含む、非処理カップ600の断面におけるセル構造を示す。固相フォーム材料用のこのセル構造は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2018年7月24日発行の「多層発泡高分子体および関連方法(Multi-Layer Foamed Polymeric Objects and Related Methods)」と題する米国特許第10,029,401号と一致している。図28Bの高解像度画像に示すように、隣接するセル612と614との間の材料610、すなわち別個の発泡部分602および604のそれぞれの中のセルを画定する材料は、発泡していない。別個の発泡部および非発泡部の正確な数は、米国特許第10,029,401号に記載のように、材料およびプロセス条件により異なり得る。例えば、非処理カップ600は、別個の発泡部分604と隣接する非発泡部分608(スキン層と呼ばれることもある)との間に、薄い別個の発泡部を任意に含むことがある。非発泡部分608(スキン層)の存在または厚さもまた、本明細書に記載の技術分野で知られているように、材料およびプロセス条件より異なり得る。
【0122】
図29Aは、本開示によるセル構造を、予備発泡処理カップ700の断面で示しており、これは、一般に、材料内の層を形成している中央発泡部分702、一対の別個の発泡部分704、一対の非発泡部分708を含む。図29Aに示すように、かつ図29Bでよりはっきりと見えるように、中央発泡部分702は、第1の集団710より小さいセルサイズを有する第2のセル集団712が散在する第1のセル集団710を含む。例示的な予備発泡処理カップ700は、中央フォーム部分702の各側に単一の別個のフォーム部分704を有するものとして示されているが、予備発泡処理カップ700は、中央フォーム部分702を挟む、より多いかまたは少ない別個のフォーム部分を任意に含み得る。任意に、非発泡部分708(スキン層)の存在または厚さもまた、材料およびプロセス条件より異なり得る。
【0123】
図29Bに関して、中央発泡部分702の大きなセルサイズの集団710の隣接する例示的なセル722と724との間の材料720の少なくとも一部は、それ自体が発泡し、第2のより小さなセル集団712を含む。上述したように、非処理カップ(図28B参照)は、隣接するセル間の非発泡材料610によって画定されるセルを含む。対照的に、予備発泡処理カップ(図29B参照)の大きなセル710を画定する材料720の少なくとも一部分は、それ自体が発泡し、第2のより小さいセル集団712を含む。
【0124】
図28A図28Bの非処理カップ600の別個のフォーム層602、604のそれぞれは、単一のセル集団を含むが、本開示による予備発泡処理カップ700は、はるかに小さいセルサイズを有する第2のセル集団が中に散在している第1のセル集団を含む。図28Cおよび図29Cは、非処理および予備発泡処理カップを、それぞれ同じ解像度で示す。2000xのズームでは、非処理カップ600は、別個のフォーム部分内の隣接するセル間の材料中に、第2のセル集団(すなわち、フォーム材料)を含まないことが、画像から明らかである。対照的に、図29Cは、中央フォーム部分702内の隣接するセル間に第2のより小さいセルサイズのセル集団を含む発泡材料を示す。
【0125】
以下の表6では、本開示の予備発泡処理段階102なしで形成された例示的な非処理カップ600のセルサイズ情報をまとめている。セルサイズは、カップの側壁の2つの異なる位置で、カップを形成するために使用するシートの機械方向(「MD」)および幅方向(「CD」)の両方において、材料の別個の発泡部分602内の複数のセルの垂直方向および水平方向(断面画像に関して)の各セルの長さ/直径を測定することによって測定した。
【0126】
本明細書で使用するとき、機械方向および幅方向という用語は、熱成形中のシートの延伸方向に関する。機械方向(「MD」)は、熱成形中のシートの延伸方向に対応し、したがってカップ側壁の垂直方向に対応する。カップ側壁を垂直(MD)および水平(CD)にSEMの横断面サンプルへと切断した。セル数とは、各集団について測定したセルの数を意味し、「最小~最大」とは、測定した方向の最小セル長さと最大セル長さをそれぞれ意味し、「平均±標準偏差」とは、測定した方向の平均セル長さに標準偏差をプラスまたはマイナスしたものを意味する。
【0127】
【表6】
【0128】
同じカップからの2つの断面サンプルの測定値を示し、第2の断面からの測定値を括弧内に示す。
【0129】
以下の表7では、本開示による例示的な予備発泡処理カップ700の第1および第2のセル集団710および712のセルサイズ情報をまとめている。セルサイズは、カップを形成するために使用するシートの機械方向(「MD」)および幅方向(「CD」)の両方において、材料の中央発泡部分702内の複数のセルの垂直方向および水平方向で測定した。
【0130】
【表7】
【0131】
表7のデータが示すように、小さいセルの第2の集団は、マイクロセルサイズ範囲のセルサイズを有し、一般に、第1のセル集団のより大きなセルよりも1桁小さい。マイクロセルプラスチックフォームの一般的な定義には、直径が約10マイクロメートル、典型的には約0.1~約100マイクロメートルの範囲の平均セルサイズを有するフォームが含まれる。したがって、第2の小さいセルの集団は、セルサイズ範囲および平均が約20マイクロメートル未満である場合、マイクロセルフォームを形成するものとみなすことができる。第1のより大きいセルの集団は、従来の発泡材料のセルサイズに近いマイクロセルの第2の集団よりも著しく大きいセルサイズ範囲および平均を有する。本開示の一態様によれば、本開示の材料は、マイクロセルフォームが、より大きな発泡構造を形成する材料内に形成されるフォーム-内-フォーム構造を含む。第2のセル集団は、中央発泡部分内の第1のセル集団を画定する材料中に形成される。
【0132】
予備発泡処理段階を伴う本開示による固相発泡プロセスは、従来の固相発泡材料とは異なる特性および構造特徴を有するマイクロフォーム材料を提供する。本開示の固相発泡材料およびそのような材料から作製する容器は、本開示に従って作製されていない従来の固相発泡材料と比較して、断熱および強度の向上などの改善された特性を示す。本開示の固相発泡材料およびその容器は、材料の単一の別個の発泡部分内の第1の集団よりも小さいセルサイズを有する第2のセル集団が中に散在している第1のセル集団を含む、異なる構造的特徴を有する。いずれの理論にも限定されるものではないが、本開示の態様によれば、より大きなセルサイズの第1集団とより小さいセルサイズの第2集団との組み合わせは、協働して、断熱性の改善および固相発泡材料に対する強度の改善を提供する。
【0133】
本開示の予備発泡処理カップ700のセル構造と非処理カップ600のセル構造との間にはいくつかの相違点がある。図28A図28Cおよび表6に関して上述したように、従来の固相発泡プロセスにより作製した非処理カップは、第1の集団よりも小さいセルサイズを有する第2のセル集団が中に散在している第1のセル集団を含む予備発泡処理カップ700と比較して、単一セル集団を含む中央フォーム部分を含む。
【0134】
さらに、予備発泡処理カップ700のマイクロフォームは、未処理カップ600のセルよりも著しく小さいセルサイズを有するセルの集団を含む。予備発泡処理カップ700内のマイクロフォームセルの第2の集団は、CDおよびMD両方向において垂直および水平方向で20マイクロメートル未満のセル寸法を有し、大部分のセルは10マイクロメートル未満のセル寸法を有する。対照的に、非処理カップは、数十マイクロメートルから数百マイクロメートルのセル寸法を有する。したがって、予備発泡処理カップ700のセルのサイズおよび分布は、非処理カップのサイズおよび分布とは異なる。
【0135】
以下の節は、本明細書に包含される本開示の追加の態様を定義する。これらの態様は、本開示に包含される組み合わせを形成するために、所望の場合、組み合わせることができる。
【0136】
本開示の一態様によれば、容器の形成に使用するためのマイクロセルフォームシートを生成するための固相発泡プロセスは、第1のポリマー材料および発泡剤を含み、かつ第1の密度を有する第1の層を押出することと、第1の層を発泡剤で少なくとも部分的に発泡させて、第1の密度よりも低い第2の密度を有する予備発泡層を含む予備発泡シートを形成することを含む、第1の発泡と、第1のポリマー材料に可溶な非反応性ガスを、固相の予備発泡層に含浸させることと、予備発泡層を非反応性ガスで少なくとも部分的に発泡させて、第2の密度よりも低い第3の密度を有するマイクロセルフォーム層を形成することを含む、第2の発泡とを含み、これは、以下の特徴のうちの任意の1つまたは任意の組み合わせと任意に組み合わせることができる:プロセスは、第1の層に隣接する第2の層を共押出、ラミネートまたは押出コーティングして多層シートを形成することを含み;第2の層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシ酸(PHA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)または熱可塑性ウレタン(TPU)を含む群から選択されるポリマー材料から作製することができ;第2の層は、発泡剤を含むことができ;第2の層中の発泡剤は、約0.1~5重量%の範囲の量で存在することができる;プロセスはさらに、マイクロセルフォームシートを加熱し、加熱したマイクロセルフォームシートを物品金型の周りに適用して、加熱されたマイクロセルフォームシートで少なくとも1つの物品を形成することと、マイクロセルフォームシートの加熱によって開始する第3の発泡とを含むことができ;第3の発泡は、約65~92%、任意に約65~85%、さらに任意に約75~92%マイクロセルフォームシートの密度を低下させる;第1の層は、成核剤を含むことができ;成核剤は発泡剤とは異なってもよい;マイクロセルフォーム層は、第1の集団よりも小さいセルサイズを有する第2のセル集団が中に散在している第1のセル集団を有する、中央発泡部分を含むことができ;第1の集団は、少なくとも一方向で約160±50マイクロメートルまたは180±40マイクロメートルのセル直径を有することができ;および/または第2集団は、少なくとも一方向で約8±4マイクロメートルまたは5±3マイクロメートルのセル直径を有することができる。
【0137】
本開示の一態様によれば、容器の形成に使用するための発泡マイクロセルフォームシートは、マイクロセルフォームシート内のフォーム層を画定し、かつ第1の集団よりも小さいセルサイズを有する第2のセル集団が中に散在している第1のセル集団を有する中央発泡部分を含んでいてもよく、第2のセル集団は、中央発泡部分、1つもしくは複数の別個の発泡部分、スキン層を画定する1つもしくは複数の別個の非発泡部分、または中央発泡部分の片側もしくは両側の1つもしくは複数の別個の発泡部分と1つもしくは複数の別個の非発泡部分との組み合わせの中の第1のセル集団を画定する材料中に形成され、これは、以下の特徴のうちの任意の1つまたは任意の組み合わせと任意に組み合わせることができる:多層シートを形成するために第1の層に隣接して設けられた、共押出、ラミネートまたは押出コーティングされた第2の層;第2の層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシ酸(PHA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)または熱可塑性ウレタン(TPU)、を含む群から選択されるポリマー材料から作製することができ;第2の層中の発泡剤は、約0.1~5重量%の範囲の量で存在することができる;第1の層は、成核剤を含むことができ;成核剤は発泡剤とは異なってもよい;第1の集団は、少なくとも一方向で約160±50マイクロメートルまたは180±40マイクロメートルのセル直径を有することができ;および/または第2集団は、少なくとも一方向で約8±4マイクロメートルまたは5±3マイクロメートルのセル直径を有することができる。
【0138】
既に記載していない限り、本開示の種々の実施形態の異なる特徴および構造は、所望により互いに組み合わせて使用してよい。例えば、本開示の一態様に関して示され、および/または記載される1つまたは複数の特徴は、本開示の他の態様に関して示され、および/または記載される1つまたは複数の特徴と共に使用され得るか、または組み合わせて使用し得る。ある特徴は、全ての実施形態においては示されていない可能性があるが、このことは、示すことができないと解釈されることを意図したものではなく、記載を簡潔にするために行われていると解釈されることを意図している。したがって、異なる実施形態の種々の特徴は、新規の実施形態が明示的に記載されているか否かにかかわらず、新規の実施形態を形成するために所望により混合され、適合され得る。
【0139】
本開示の態様は、そのある特定の実施形態に関連して具体的に記載されているが、これは例示のためのものであって限定するためのものではないことを理解すべきである。添付の特許請求の範囲に定義される本開示の精神から逸脱することなく、前述の開示および図面の範囲内で、妥当な変更および改変が可能である。
【0140】
本出願は、2017年10月13日出願の米国仮特許出願第62/571,971号、および2017年12月5日出願の米国仮特許出願第62/594,763号の利益を主張し、これらの両出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
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図19
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図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28A
図28B
図28C
図29A
図29B
図29C