(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】生体情報測定装置及び生体情報測定方法並びに生体情報測定プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20230904BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
A61B5/16 110
A61B5/0245 A
(21)【出願番号】P 2022074845
(22)【出願日】2022-04-28
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】592095332
【氏名又は名称】NTTコム エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】横畠 誠也
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-168108(JP,A)
【文献】特開2018-191780(JP,A)
【文献】特開2017-032202(JP,A)
【文献】特開2018-011721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 - 5/22
A61B 5/02 - 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の少なくとも顔を含む領域を撮像する撮像部と、
プログラム記憶部と、
被検者による所定の入力操作が行われた際に、ネットワークを経由して接続されたwebサーバに心拍数推定プログラムを取得するためのリクエストを出力し、前記リクエストに対するレスポンスとして前記webサーバから送信される心拍数推定プログラムを受信し、前記プログラム記憶部にダウンロードするクライアント側通信制御部と、
前記撮像部で撮像された画像に基づき、前記心拍数推定プログラムを用いて、前記被検者の心拍数を演算する心拍数演算部と、
前記心拍数に基づいて心拍間隔を演算する心拍間隔演算部と、
を備え、
前記クライアント側通信制御部は、前記webサーバに設定されているストレス値演算モジュールに、前記心拍間隔のデータを送信し、前記ストレス値演算モジュールにより演算されたストレス値を
受信し、
更に、
前記受信したストレス値を取得するデータ取得部
と、
前記ストレス値を記憶するデータ記憶部と、
を備えた生体情報測定装置。
【請求項2】
前記ストレス値は、
被検者の心拍波形における低周波領域と高周波領域とのパワー比率「LF/HF」、及び、前記心拍波形におけるR波の間隔の標準偏差「SDNN」、の少なくとも一方を含む請求項1に記載の生体情報測定装置。
【請求項3】
撮像部が、被検者の顔を含む領域を撮像して画像を取得するステップと、
被検者による所定の入力操作が行われた際に、クライアント側通信制御部が、ネットワークを経由して接続されたwebサーバに心拍数推定プログラムを取得するためのリクエストを出力し、前記リクエストに対するレスポンスとして前記webサーバから送信される心拍数推定プログラムを受信するステップと、
前記クライアント側通信制御部が、前記心拍数推定プログラムをプログラム記憶部にダウンロードするステップと、
心拍数演算部が、前記画像に基づき、前記心拍数推定プログラムを用いて前記被検者の心拍数を演算するステップと、
心拍間隔演算部が、前記心拍数に基づいて心拍間隔を演算するステップと、
前記クライアント側通信制御部が、前記心拍間隔のデータをwebサーバ側通信制御部に送信するステップと、
前記webサーバにおけるストレス値演算モジュールが、前記心拍間隔に基づいてストレス値を演算するステップと、
webサーバにおいて前記ストレス値を記憶せず、webサーバ側通信制御部が、前記ストレス値を前記クライアント側通信制御部に送信するステップと、
前記クライアント側通信制御部が、前記ストレス値を
受信するステップと、
データ取得部が、前記ストレス値を取得してデータ記憶部に記憶するステップと、
を備えた生体情報測定方法。
【請求項4】
前記顔を含む領域を撮像してから、所定時間が経過した後に、
前記心拍間隔演算部が前記心拍間隔を演算する
請求項3に記載の生体情報測定方法。
【請求項5】
前記ストレス値は、被検者の心拍波形における低周波領域と高周波領域とのパワー比率「LF/HF」、及び、前記心拍波形におけるR波の間隔の標準偏差「SDNN」、の少なくとも一方を含む
請求項3に記載の生体情報測定方法。
【請求項6】
請求項1に記載の生体情報測定装置としてコンピュータを機能させる生体情報測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報測定装置及び生体情報測定方法並びに生体情報測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
勤労者のメンタルヘルスの不調を未然に防止するために、被検者の生体情報を定期的に測定し、ストレスをチェックすることが行われている。特許文献1には、カメラを用いて被検者の顔を撮像し、撮像した画像データに基づいて被検者の心拍数、心拍間隔(RRI)を測定することが開示されている。心拍数或いは心拍間隔を測定することにより、被検者のストレス状態を推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した特許文献1に開示された技術では、生体情報測定のアプリケーションを使用する際にユーザ自身が端末からアプリケーションプログラムのインストール作業をする必要があり、手間がかかる。
【0005】
また、ユーザ(被検者)がリモートワークで作業を行う際には、リモートワーク用の端末装置は、セキュリティ上の問題からOSのレジストリ領域などの設定変更が必要なアプリケーションのインストールが制限されている、或いはインストールが禁止されていることが多い。このため、リモートワークで作業するユーザは、生体情報測定用のアプリケーションをインストールすることができず、定期的な生体情報の測定を行うことが難しい。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被検者の生体情報を簡易な方法で取得することが可能な生体情報測定装置、生体情報測定方法、及び生体情報測定プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の生体情報測定装置は、被検者の少なくとも顔を含む領域を撮像する撮像部と、プログラム記憶部と、被検者による所定の入力操作が行われた際に、ネットワークを経由して接続されたwebサーバに心拍数推定プログラムを取得するためのリクエストを出力し、前記リクエストに対するレスポンスとして前記webサーバから送信される心拍数推定プログラムを受信し、前記プログラム記憶部にダウンロードするクライアント側通信制御部と、前記撮像部で撮像された画像に基づき、前記心拍数推定プログラムを用いて、前記被検者の心拍数を演算する心拍数演算部と、前記心拍数に基づいて心拍間隔を演算する心拍間隔演算部と、を備え、前記クライアント側通信制御部は、前記webサーバに設定されているストレス値演算モジュールに、前記心拍間隔のデータを送信し、前記ストレス値演算モジュールにより演算されたストレス値を受信し、更に、前記受信したストレス値を取得するデータ取得部と、前記ストレス値を記憶するデータ記憶部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様の生体情報測定方法は、撮像部が、被検者の顔を含む領域を撮像して画像を取得するステップと、被検者による所定の入力操作が行われた際に、クライアント側通信制御部が、ネットワークを経由して接続されたwebサーバに心拍数推定プログラムを取得するためのリクエストを出力し、前記リクエストに対するレスポンスとして前記webサーバから送信される心拍数推定プログラムを受信するステップと、前記クライアント側通信制御部が、前記心拍数推定プログラムをプログラム記憶部にダウンロードするステップと、心拍数演算部が、前記画像に基づき、前記心拍数推定プログラムを用いて前記被検者の心拍数を演算するステップと、心拍間隔演算部が、前記心拍数に基づいて心拍間隔を演算するステップと、前記クライアント側通信制御部が、前記心拍間隔のデータをwebサーバ側通信制御部に送信するステップと、前記webサーバにおけるストレス値演算モジュールが、前記心拍間隔に基づいてストレス値を演算するステップと、webサーバにおいて前記ストレス値を記憶せず、webサーバ側通信制御部が、前記ストレス値を前記クライアント側通信制御部に送信するステップと、前記クライアント側通信制御部が、前記ストレス値を受信するステップと、データ取得部が、前記ストレス値を取得してデータ記憶部に記憶するステップと、を備える。
【0009】
本発明の一態様は、上記生体情報測定装置としてコンピュータを機能させるための生体情報測定プログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被検者の生体情報を簡易な方法で取得することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係る生体情報測定装置、及びその周辺機器の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、心拍数推定プログラムの構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、ストレス値演算モジュールの構成を示す機能ブロック図である。
【
図4A】
図4Aは、被検者の顔画像から取得される生信号(RGB信号)を示すグラフである。
【
図4B】
図4Bは、RGB信号からトレンド成分を除去した信号を示すグラフである。
【
図4C】
図4Cは、トレンド成分を除去した信号を平滑化した信号を示すグラフである。
【
図5】
図5は、被検者の心拍数の推定結果を示すグラフである。
【
図6】
図6は、実施形態に係る生体情報測定装置を含むクライアントPC及びwebシステムによる処理動作を示すシーケンス図である。
【
図7】
図7は、データ記憶部に記憶されるストレス値のデータの例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、ストレス値の表示例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、本実施形態のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る生体情報測定装置1を搭載したクライアントPC100、及びその周辺機器の構成を示すブロック図である。
図2は、心拍数推定プログラムの構成を示す機能ブロック図、
図3は、ストレス値演算モジュールの構成を示す機能ブロック図である。
【0013】
図1に示すように、クライアントPC100(クライアント端末)は、生体情報測定装置1と、表示部4を備えている。生体情報測定装置1は、ネットワークを経由してwebサーバ2に接続されている。
【0014】
生体情報測定装置1は、カメラ11(撮像部)と、通信制御部12と、プログラム記憶部13と、心拍数演算部14と、RRI演算部15(心拍間隔演算部)と、データ取得部16と、データ記憶部17を備えている。
【0015】
カメラ11は、クライアントPC100を操作するユーザ(被検者)の顔を含む画像を撮像する。カメラ11は、撮像した画像を心拍数演算部14に出力する。
【0016】
通信制御部12は、被検者による所定の入力操作が行われた際に、webサーバ2に対して心拍数推定プログラム22(アプリケーションプログラム)を取得するための、HTTPリクエスト(GETメソッド)を出力する。通信制御部12は、HTTPリクエストに対するレスポンスとして、webサーバ2から送信される心拍数推定プログラム22を受信し、プログラム記憶部13にダウンロードする。
【0017】
被検者は、アプリケーションプログラムを使えるようにするためのOSへの設定変更が必要なインストールの作業の必要がなく、通常ほとんどのPCで最初からプリインストールされ使用できる状態になっているwebブラウザ上にてプログラムを実行することができる。このため、OSへのレジストリ領域などの設定変更が必要なアプリケーションの新規のインストールが禁止されているPCであっても、最初から利用できる状態となっている、即ち、インストール済のwebブラウザにて所望のアプリケーションプログラム(例えば、JavaScript製のアプリケーションプログラム(登録商標)のファイルの取得すなわちダウンロードをHTTPのGETにより行い、webブラウザ上でこれを実行させることで機能を実現することができる。「JavaScript製のアプリケーションプログラム」は、心拍数推定プログラム22の一例である。
【0018】
webサイトにアクセスすると、ダウンロードされたアプリケーションはwebブラウザ上にてキャッシュ(一時的に保存)される。次回webサイトにアクセスするとブラウザはこのキャッシュを優先的に読み取るので、円滑にダウンロードすることが可能である。
【0019】
通信制御部12は、RRI演算部15でRRI(詳細は後述する)が演算された際に、RRIをHTTPリクエスト(POSTメソッド)として、webサーバ2に送信する。通信制御部12は、webサーバ2のストレス値演算モジュール23(詳細は後述する)で演算されたストレス値をHTTPリクエストに対するレスポンスとして受信し、データ取得部16に出力する。
【0020】
プログラム記憶部13は、通信制御部12で受信された心拍数推定プログラム22を記憶する。
【0021】
図2は、心拍数推定プログラム22の構成を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、心拍数推定プログラム22は、撮像指示部220と、顔検出部221と、生信号抽出部222と、信号処理部223と、心拍数推定部224を備えている。
【0022】
撮像指示部220は、カメラ11に対して被検者の顔画像を撮像する指示を出力する。
【0023】
顔検出部221は、カメラ11にて撮像された被検者の画像を取得する。顔検出部221は、被検者の画像に基づき1フレーム(例えば、1/30sec、1/60sec)ごとに機械学習により顔の領域をトラッキングし、被検者の顔画像を検出する。
【0024】
生信号抽出部222は、顔検出部221で検出された被検者の顔画像に基づいて、生信号を抽出する。生信号は、例えば被検者の顔から発せられるRGB信号である。
【0025】
信号処理部223は、生信号抽出部222で抽出された生信号に対して、トレンド除去処理、及び平滑化処理を行う。「トレンド除去処理」とは、時系列的に得られる生信号から長期的な傾向を除去する処理である。
図4A、
図4B、
図4Cはそれぞれ、生信号(RGB信号)、トレンド除去後の信号、平滑化後の信号を示すグラフである。信号処理部223は、
図4Aに示す生信号にトレンド除去処理を加えることにより
図4Bに示す信号を取得する。更に、
図4Bに示す信号を平滑化処理して、
図4Cに示す平滑化信号を取得する。
【0026】
心拍数推定部224は、信号処理部223で処理された平滑化信号(
図4C参照)に対して、周波数解析を実施する。その結果、
図5に示す周波数特性のグラフが得られる。
図5に示すグラフから、振幅がピークとなる周波数が検出される。心拍数推定部224は、振幅がピークとなる周波数F1を被検者の心拍数(BPM)として推定する。
【0027】
図1に戻って心拍数演算部14は、カメラ11で撮像された被検者の画像と、心拍数推定プログラムに基づいて、被検者の心拍数を演算する。
【0028】
RRI演算部15は、心拍数演算部14で演算された心拍数に基づいて、心電図波形に含まれるR波間の時間であるRRI(R-Rインターバル;心拍間隔)を演算する。RRIは、RRI=60[sec]/BPM[回/1分]の演算式で算出することができる。前述したようにRRI信号は、通信制御部12によりwebサーバ2に送信される。
【0029】
データ取得部16は、webサーバ2に設けられたストレス値演算モジュール23で演算されたストレス値を取得する。後述するように、ストレス値演算モジュール23は被検者のRRIに基づいて、該被検者のLF/HF、SDNNなどのストレス値を演算する。即ち、ストレス値は、被検者のLF/HF及びSDNNの少なくとも一方を含む。「LF/HF」は、心拍波形における低周波領域と高周波領域とのパワー比率である。「SDNN」は、心拍波形におけるR波の間隔の標準偏差である。
【0030】
データ取得部16は、取得したストレス値のデータをデータ記憶部17に記憶する。データ取得部16は、取得したストレス値のデータを表示部4に出力する。データ取得部16は、データ記憶部17に記憶されているストレス値のデータを被検者からの要求に応じて表示部4に表示する。
【0031】
webサーバ2は、ネットワークに接続されているサーバであり、クライアントPC100からHTTPリクエストが送信された際に、このHTTPリクエストに対するレスポンスをクライアントPC100に送信する。webサーバ2は、webシステムを提供するサーバである。「webシステム」とは、webブラウザが搭載される機器で使用可能なサービスである。被検者は、クライアントPC100にてwebブラウザを使用しwebシステムにアクセスすることにより、OSへの設定変更が必要なアプリケーションプログラムのインストール作業を行う必要がない。すなわち被験者はwebシステムにアクセスすると、被験者は特に意識することがない状態で、webブラウザはJavaScript製のアプリケーションプログラムをダウンロードしwebブラウザ上の実行環境にて動作することができる。
【0032】
webサーバ2は、クライアントPCからHTTPリクエスト(GETメソッド)が送信された際には、所望のアプリケーションプログラムを要求元のクライアントPCに送信する。webサーバ2は、クライアントPCからHTTPリクエスト(POSTメソッド)が送信された際には、所望の演算モジュールにより演算処理を実施し、演算処理の結果を要求元のクライアントPCに送信する。
【0033】
図1に示すようにwebサーバ2は、通信制御部21と、記憶部M1と、ストレス値演算モジュール23を備えている。
【0034】
記憶部M1は、各種のアプリケーションプログラムを記憶している。アプリケーションプログラムは、心拍数推定プログラム22を含む。
【0035】
ストレス値演算モジュール23は、クライアントPC100の生体情報測定装置1から送信されたRRIに基づき、被検者のLF/HF、SDNNなどのストレス値を演算する。
【0036】
図3に示すように、ストレス値演算モジュール23は、LF/HF演算部231と、SDNN演算部232を備えている。
【0037】
LF/HF演算部231は、被検者のRRIに基づいて、被検者のLF/HFを演算する。前述したように「LF/HF」は、心拍波形における低周波領域と高周波領域とのパワー比率である。
【0038】
LF/HFは、次の(1)~(4)の手順で演算することができる。
(1)心拍間隔(RRI;R-R Interval)の時系列データを取得する。
(2)RRI時系列データからパワースペクトル密度(PSD;Power Spectral Density)を推定する。
(3)推定したPSDの低周波成分(LF成分;0.04~0.15Hz)と高周波成分(HF成分;0.15~0.45Hz)を算出する。
(4)LF成分とHF成分の比であるLF/HFを算出する。
【0039】
SDNN演算部232は、RRIに基づいて被検者のSDNNを演算する。前述したように「SDNN」は、心拍波形におけるR波の間隔(RRI)の標準偏差である。
【0040】
図1に戻って、通信制御部21は、クライアントPC100からHTTPリクエストが送信された際に、このリクエストに対するレスポンスをクライアントPC100に送信する。具体的には、前述したようにクライアントPC100からHTTPリクエスト(GETメソッド)が送信された際に、リクエストされたアプリケーションプログラムをクライアントPC100に送信する。クライアントPC100からHTTPリクエスト(POSTメソッド)が送信された際に、リクエストされた演算処理を実行し、演算結果をクライアントPC100に送信する。
【0041】
次に、本実施形態に係る生体情報測定装置1及びwebサーバ2の処理手順について、
図4に示すシーケンス図を参照して説明する。
【0042】
初めに、ステップS11において、クライアントPC100の通信制御部12は、被検者による入力操作に応じて心拍数推定プログラムの送信をwebサーバ2に要求するためのHTTPリクエストを送信する。
【0043】
ステップS12において、webサーバ2の通信制御部21は、HTTPリクエストを受信する。
【0044】
ステップS13において通信制御部21は、記憶部M1に記憶されている心拍数推定プログラム22をクライアントPC100に送信する。
【0045】
ステップS14において通信制御部12は、心拍数推定プログラム22を受信し、プログラム記憶部13にダウンロードする。
【0046】
次に、心拍数演算部14は、プログラム記憶部13にダウンロードした心拍数推定プログラム22によりステップS15~S19の処理を実行する。
【0047】
ステップS15において撮像指示部220(
図2参照)は、カメラ11に対して被検者の画像を撮像する指示を出力する。カメラ11は、撮像指示部220による撮像指示を受けて被検者の画像を撮像する。
【0048】
ステップS16において顔検出部221(
図2参照)は、被検者の画像から顔画像を検出し、検出した顔画像をトラッキングする。周知のようにトラッキングとは、テンプレートマッチングなどにより被検者及び背景を含む画像全体から被検者の顔画像を追跡する処理である。
【0049】
ステップS17において生信号抽出部222は、被検者の顔画像からRGB信号(生信号)を抽出する。例えば、
図4Aに示すように横軸を時間としたRGB信号が抽出される。
【0050】
ステップS18において信号処理部223は、RGB信号からトレンド成分を除去する。トレンド成分を除去することにより、
図4Bに示す信号が得られる。信号処理部223は、トレンド成分除去後の信号に対して平滑化処理を加える。平滑化処理することにより、
図4Cに示す如くの平滑化信号が得られる。
【0051】
ステップS19において心拍数推定部224は、平滑化信号を周波数解析する。その結果、
図5に示すように横軸を心拍数とした周波数解析信号が得られる。心拍数推定部224は、
図5に示す周波数解析信号に基づいて、被検者の心拍数を推定する。具体的には、振幅がピークとなる周波数F1を、被検者の心拍数と推定する。
【0052】
ステップS20においてRRI演算部15は、推定した心拍数に基づいてR波の間隔を示すRRIを演算する。上述したステップS15~S20の処理は、画像の1フレームごとに行うとよい。
【0053】
ステップS21において通信制御部12は、RRI演算部15において1分間のRRIのデータが得られたか否かを判定し、1分間分のRRIが得られた場合には(S21;YES)、ステップS22に処理を進める。
【0054】
ステップS22において通信制御部12は、RRIをwebサーバ2に送信して、ストレス値の演算をリクエストする。
【0055】
ステップS23においてwebサーバ2の通信制御部21は、RRIを受信する。ストレス値演算モジュール23はRRIに基づいて、被検者のストレス値を演算する。具体的には、LF/HF演算部231は、RRIに基づいて被検者のLF/HFを演算する。SDNN演算部232は、RRIに基づいて被検者のSDNNを演算する。
【0056】
ステップS24において通信制御部21は、ストレス値演算モジュール23で演算されたストレス値(LF/HF、SDNN)をクライアントPC100に送信する。
【0057】
ステップS25においてクライアントPC100の通信制御部12は、ストレス値を受信し、データ取得部16は受信したストレス値を取得する。
【0058】
ステップS26においてデータ取得部16は、ストレス値をデータ記憶部17に記憶する。ストレス値は、例えば
図7に示すように、データ記憶部17に設定される「Key」の欄に保存時のUNIX時間、「Value」の欄にストレス値が記憶される。
【0059】
ステップS27においてデータ取得部16は、受信したストレス値、及びデータ記憶部17に記憶されている過去ストレス値のデータを表示部4に表示する。例えば、
図8に示すように、日時、LF/HF、心拍数(BPM)、SDNNを表示する。被検者は、表示部4に表示された自身のストレス値を確認することができる。
【0060】
このように、本実施形態に係る生体情報測定装置1は、被検者の少なくとも顔を含む領域を撮像するカメラ11(撮像部)と、webサーバ2からネットワークを経由してダウンロードした心拍数推定プログラム22を記憶するプログラム記憶部13と、カメラ11で撮像された画像に基づき、心拍数推定プログラム22を用いて、被検者の心拍数を演算する心拍数演算部14と、演算した心拍数に基づいて心拍間隔を演算するRRI演算部15(心拍間隔演算部)と、webサーバ2に設定されているストレス値演算モジュール23に、RRIを送信し、ストレス値演算モジュール23により演算されたストレス値を取得するデータ取得部16と、を備えている。データ取得部16で取得されたストレス値は、表示部4に表示される。
【0061】
このため、クライアントPC100に心拍数測定用のアプリケーションプログラムをインストールする必要がなく、例えば、リモートワーク用のPCのようにアプリケーションプログラムのインストールが許可されていないPCであっても、被検者の心拍数を取得できる。
【0062】
また、心拍数に基づいて演算されたRRIに基づき、webサーバ2において提供されているストレス値演算モジュール23を用いて、被検者のLF/HF、SDNNなどのストレス値を演算する。
【0063】
従って、クライアントPC100では、心拍数推定プログラムをOSの設定変更を伴うインストール作業をすることなく、被検者のストレス値を取得することができる。このため被検者は、簡易な方法で自身のストレス値を認識することが可能になる。
【0064】
本実施形態に係る生体情報測定装置1は、ストレス値を記憶するデータ記憶部17を備えている。即ち、ストレス値は、クライアントPC100に設けられたデータ記憶部17に記憶され、webサーバ2に記憶されない。このため、被検者の個人情報が意図せずに外部に流出することを回避できる。例えば、リモートワークを実施している被検者の個人情報が、被検者が勤務する企業に集計、管理されることを防止できる。
【0065】
本実施形態では、カメラ11で撮像した被検者の画像に戻づいて被検者のストレス値を推定するので、特別な測定器具を被検者に取り付けるなどの操作が不要になる。このため、汎用されているPCがあれば被検者のストレス値を測定できる。また、被検者は測定器具に触れないので、感染症のリスクを低減することができる。
【0066】
心拍数推定プログラム22は、ネットワーク回線により接続されたwebサーバ2からダウンロードすることができるので、操作が容易である。また、RRIに基づいてストレス値を演算する演算モジュールは、webサーバ2に提供されているので、この演算モジュールを使用することにより、容易にストレス値の演算を行うことが可能になる。
【0067】
本実施形態では、所定時間(例えば、1分間)のRRI値が得られた際に、ストレス値を演算する。即ち、被検者の顔を含む領域を撮像してから、所定時間のデータが取得された後に、RRI(心拍間隔)を演算するので、ストレス値の演算精度を高めることができる。
【0068】
本実施形態では、被検者の顔画像を取得してこの被検者のストレス値を演算するので、被検者が長時間に亘ってリモートワークによる作業を実施している際に、ストレス値を推定でき、リアルタイムにストレス値を確認することが可能になる。
【0069】
本実施形態では、簡易な方法で被検者のストレス値を取得できるので、例えば毎日の体温測定などと同じ感覚で各自のストレス値を認識することができ、メンタルケアに役立てることができる。
【0070】
なお、本実施形態では被検者のストレス値としてLF/HF及びSDNNを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなくその他のストレス値を測定してもよい。
【0071】
上記説明した本実施形態の生体情報測定装置1には、
図9に示すように例えば、CPU(Central Processing Unit、プロセッサ)901と、メモリ902と、ストレージ903(HDD:Hard Disk Drive、SSD:Solid State Drive)と、通信装置904と、入力装置905と、出力装置906とを備える汎用的なコンピュータシステムを用いることができる。メモリ902およびストレージ903は、記憶装置である。このコンピュータシステムのwebブラウザの動作において、CPU901がメモリ902上にロードされた所定のプログラムを実行することにより、生体情報測定装置1の各機能が実現される。
【0072】
なお、生体情報測定装置1は、1つのコンピュータで実装されてもよく、あるいは複数のコンピュータで実装されても良い。また、生体情報測定装置1は、コンピュータに実装される仮想マシンであっても良い。
【0073】
なお、生体情報測定装置1用のプログラム、即ち、webサーバ2から心拍数推定プログラム22をダウンロードする処理、心拍数を演算する処理、心拍間隔(RRI)を演算する処理、webサーバ2に設定されているストレス値演算モジュール23に、心拍間隔のデータを送信しストレス値演算モジュール23により演算されたストレス値を取得する処理、を実行するプログラムは、HDD、SSD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD (Compact Disc)、DVD (Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶することも、ネットワークを介して配信することもできる。
【0074】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 生体情報測定装置
2 webサーバ
4 表示部
11 カメラ(撮像部)
12 通信制御部
13 プログラム記憶部
14 心拍数演算部
15 RRI演算部(心拍間隔演算部)
16 データ取得部
17 データ記憶部
21 通信制御部
22 心拍数推定プログラム
23 ストレス値演算モジュール
220 撮像指示部
221 顔検出部
222 生信号抽出部
223 信号処理部
224 心拍数推定部
231 LF/HF演算部
232 SDNN演算部
M1 記憶部
【要約】
【課題】被検者の生体情報を簡易な方法で取得することが可能な生体情報測定装置、生体情報測定方法、及び生体情報測定プログラムを提供する。
【解決手段】被検者の少なくとも一部の領域を撮像するカメラ11と、webサーバ2よりダウンロードした心拍数推定プログラム22を記憶するプログラム記憶部13と、カメラ11で撮像された画像に基づき、心拍数推定プログラム22を用いて、被検者の心拍数を演算し、心拍数に基づいてRRIを演算するRRI演算部15を備える。また、webサーバ2に設定されているストレス値演算モジュール23に、心拍間隔のデータを送信し、ストレス値演算モジュール23により演算されたストレス値を取得するデータ取得部16を備える。
【選択図】
図1