(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】漢方薬点眼薬及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 36/258 20060101AFI20230904BHJP
A61K 36/808 20060101ALI20230904BHJP
A61K 36/28 20060101ALI20230904BHJP
A61K 35/413 20150101ALI20230904BHJP
A61K 36/286 20060101ALI20230904BHJP
A61K 36/533 20060101ALI20230904BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230904BHJP
A61K 31/045 20060101ALI20230904BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20230904BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
A61K36/258
A61K36/808
A61K36/28
A61K35/413
A61K36/286
A61K36/533
A61P27/02
A61K31/045
A61K36/185
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2022127440
(22)【出願日】2022-08-09
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】522318944
【氏名又は名称】香港中醫眼科學會有限公司
【氏名又は名称原語表記】HONG KONG CHINESE MEDICINE OPHTHALMOLOGY INSTITUTE LIMITED
【住所又は居所原語表記】Flat B, 17/F, Chai Wan Industrial Centre, Lee Chun Street, Chai Wan, Hong Kong
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】關 斯桐
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-17298(JP,A)
【文献】特開2022-099576(JP,A)
【文献】特開2005-272445(JP,A)
【文献】特表2022-531889(JP,A)
【文献】特表2022-513560(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114588236(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114010709(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108686035(CN,A)
【文献】中国特許第113713022(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
漢方薬成分と補助材料とで製造され、重量百分率基準で、前記漢方薬成分は、
コウライニンジン(高麗人参)5~10wt%、ゲンジン(玄参)15~20wt%、ソウジシ(蒼耳子)5~10wt%、ゴオウ(牛黄)5~10wt%、コウカ(紅花)5~10wt%、ボルネオール(冰片)5~10wt%、タイキンギク(千里光)25~35wt%、オウトウ(黄藤)5~15wt%、及び
ことを特徴とする漢方薬点眼薬。
【請求項2】
重量百分率基準で、前記漢方薬成分は、
前記コウライニンジン7.5wt%、前記ゲンジン15wt%、前記ソウジシ7.5wt%、前記ゴオウ7.5wt%、前記コウカ7.5wt%、天然ボルネオール7.5wt%、前記タイキンギク30wt%、前記オウトウ10wt%、及び前記ジュウイシ7.5wt%を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の漢方薬点眼薬。
【請求項3】
前記補助材料は精製水、塩化ナトリウム注射液及びpH調整剤を含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の漢方薬点眼薬。
【請求項4】
前記補助材料は防腐剤をさらに含む、ことを特徴とする請求項3に記載の漢方薬点眼薬。
【請求項5】
前記pH調整剤はホウ酸を含み、前記防腐剤はエチルパラベンを含み、かつ/又は
前記pH調整剤と前記防腐剤との質量比が1:1である、ことを特徴とする請求項4に記載の漢方薬点眼薬。
【請求項6】
pH値が5~9である、ことを特徴とする請求項3に記載の漢方薬点眼薬。
【請求項7】
漢方薬成分全量に対してコウライニンジン5~10wt%、ゲンジン15~20wt%、ソウジシ5~10wt%、コウカ5~10wt%、タイキンギク25~35wt%、オウトウ5~15wt%、及びジュウイシ5~10wt%を精製水に加えて煎じた後、ろ過して、第1抽出液を得るステップと、
塩化ナトリウム注射液を精製水に加え、加熱して沸騰させ、70~90℃に冷却した後、前記第1抽出液を加え、50~70℃に降温して、第1混合液を得るステップと、
前記漢方薬成分全量に対してゴオウ5~10wt%と天然ボルネオール5~10wt%をエタノールで加熱して還流し、ろ過して第2抽出液を得るステップと、
前記第2抽出液を前記第1混合液に滴下した後、防腐剤及び精製水を加え、漢方薬点眼薬半製品を製造するステップと、を含む、ことを特徴とする漢方薬点眼薬の製造方法。
【請求項8】
前記第2抽出液を前記第1混合液に滴下した後、防腐剤及び精製水を加え、漢方薬点眼薬半製品を製造する前記ステップの後、
前記漢方薬点眼薬のpH値を測定するステップと、
測定した結果前記漢方薬点眼薬のpH値が所定のpH値範囲内ではない場合、pH調整剤で前記漢方薬点眼薬のpH値を調整するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項7に記載の漢方薬点眼薬の製造方法。
【請求項9】
前記pH調整剤はホウ酸を含み、前記防腐剤はエチルパラベンを含む、ことを特徴とする請求項8に記載の漢方薬点眼薬の製造方法。
【請求項10】
前記第1抽出液の製造において、前記コウライニンジン、前記ゲンジン、前記ソウジシ、前記コウカ、前記タイキンギク、前記オウトウ及び前記ジュウイシの全質量と精製水の質量との比が1:20である、ことを特徴とする請求項7~9のいずれか1項に記載の漢方薬点眼薬の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は漢方薬製剤の技術分野に関し、特に漢方薬点眼薬及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
目は人間の最も重要な器官の一つであり、人々が社会生活に適応するための保障を提供している。ひとたび光を失うと、生活は暗闇に陥り、人生も多くの楽しみを失う。全世界の視覚障害者の90%が後天的に失明している。原因は、各種の慢性眼病をきちんと治療していないからである。
【0003】
生活リズムの加速に伴い、携帯電話、パソコンなどの電子製品の使用率が増加し、目の不調、目の疲労や目の乾燥などの眼病の発病率がますます高くなっている。点眼薬は眼科疾患に最もよく使われる薬物剤形の一つであり、多くの眼疾患に対して、点眼薬はすべて直接、迅速な治療作用がある。伝統的な漢方薬は湯剤を始め、丸剤、散剤、膏剤、丹剤を使用し、数千年以来、人の病気を予防、治療してきた。
【0004】
発明の実施過程において、発明者は、関連技術において、眼疾患を治療する点眼外用薬の多くが西洋薬の成分であることを発見し、一方、西洋薬の点眼薬は目への刺激が大きく、眼病を治療すると同時に、大きな副作用をもたらすことがある。市販の漢方薬点眼薬はまた健康維持用の点眼薬が多く、目の疲労によるさまざまな症状を緩和することができるが、治療効果を備えているわけではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題を解決するために、本発明の実施例は以下の技術案を提供する。
第1態様によれば、本発明の実施例は、漢方薬成分と補助材料とで製造され、重量百分率基準で、前記漢方薬成分は、
コウライニンジン5~10wt%、ゲンジン15~20wt%、ソウジシ5~10wt%、ゴオウ5~10wt%、コウカ5~10wt%、ボルネオール5~10wt%、タイキンギク25~35wt%、オウトウ5~15wt%、及びジュウイシ5~10wt%を含む、漢方薬点眼薬を提供する。
【0007】
好ましくは、重量百分率基準で、前記漢方薬成分は、
前記コウライニンジン7.5wt%、前記ゲンジン15wt%、前記ソウジシ7.5wt%、前記ゴオウ7.5wt%、前記コウカ7.5wt%、前記天然ボルネオール7.5wt%、前記タイキンギク30wt%、前記オウトウ10wt%、及び前記ジュウイシ7.5wt%を含む。
【0008】
好ましくは、前記補助材料は精製水、塩化ナトリウム注射液、及びpH調整剤を含む。
【0009】
好ましくは、前記補助材料は防腐剤をさらに含む。
【0010】
好ましくは、前記pH調整剤はホウ酸を含み、前記防腐剤はエチルパラベンを含み、且つ/又は
前記pH調整剤と前記防腐剤との質量比が1:1である。
【0011】
好ましくは、前記漢方薬点眼薬のpH値が5~9である。
【0012】
第2態様によれば、本発明の実施例はまた、
漢方薬成分全量に対してコウライニンジン5~10wt%、ゲンジン15~20wt%、ソウジシ5~10wt%、コウカ5~10wt%、タイキンギク25~35wt%、オウトウ5~15wt%、及びジュウイシ5~10wt%を精製水に加えて煎じた後、ろ過して、第1抽出液を得るステップと、
塩化ナトリウム注射液を精製水に加え、加熱して沸騰させ、70~90℃に冷却した後、前記第1抽出液を加え、50~70℃に降温して、第1混合液を得るステップと、
前記漢方薬成分全量に対してゴオウ5~10wt%と天然ボルネオール5~10wt%をエタノールで加熱して還流し、ろ過して第2抽出液を得るステップと、
前記第2抽出液を前記第1混合液に滴下した後、防腐剤及び精製水を加え、漢方薬点眼薬半製品を製造するステップと、を含む、漢方薬点眼薬の製造方法を提供する。
【0013】
好ましくは、前記第2抽出液を前記第1混合液に滴下した後、防腐剤及び精製水を加え、漢方薬点眼薬半製品を製造する前記ステップの後、前記方法は、
前記漢方薬点眼薬のpH値を測定するステップと、
測定した結果前記漢方薬点眼薬のpH値が所定のpH値範囲内ではない場合、pH調整剤で前記漢方薬点眼薬のpH値を調整するステップと、をさらに含む。
【0014】
好ましくは、前記pH調整剤はホウ酸を含み、前記防腐剤はエチルパラベンを含む。
【0015】
好ましくは、前記第1抽出液の製造において、前記コウライニンジン、前記ゲンジン、前記ソウジシ、前記コウカ、前記タイキンギク、前記オウトウ及び前記ジュウイシの全質量と精製水の質量との比が1:20である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の実施形態の有益な効果は以下のとおりである。従来技術と異なり、本発明の実施例は、漢方薬点眼薬及び漢方薬点眼薬の製造方法を提供し、漢方薬点眼薬は漢方薬成分と補助材料とで製造され、重量百分率基準で、漢方薬成分はコウライニンジン5~10wt%、ゲンジン15~20wt%、ソウジシ5~10wt%、ゴオウ5~10wt%、コウカ5~10wt%、ボルネオール5~10wt%、タイキンギク25~35wt%、オウトウ5~15wt%、及びジュウイシ5~10wt%を含む。本発明の実施例による漢方薬点眼薬は、上記の漢方薬成分を配合することで、白内障を治療して視力を高め、体内の熱毒を取り除いて毒素を除去し、血や経絡の気の流れを良くし、鬱血を除去して痛めを鎮めることができ、風火赤眼(急性結膜炎、病症として、目が赤くなり、灼熱感、腫れや痛みがあり、暑さや光に弱く、風が当たると涙が出て、かゆみと乾燥が感じる)、円翳内障(白内障、発症初期に瞳孔が白く濁って、視界がぼんやりし、視界内に小さな薄い影のようなものが現れ、深刻な場合は失明する)や緑風内障(緑内障、病症として物がぼやけて、目の膨満感を伴う痛みや頭痛、吐き気と嘔吐が認められる)、糖尿病性網膜症(糖尿病性眼底黄斑変性症、病症として物が歪んで見え、まっすぐのものが曲がるように見え、視界がかすんで見え、ぼやけて見え、視力が低下する。)、及び能近怯遠(近視眼、例えば青年期の軽度の近視、病症として近くのものが見えて、遠くが見えにくい)のいずれにも良好な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下、本発明の実施例に必要な図面を簡単に説明する。明らかに、以下で説明される図面は本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な努力を必要とせずに、これらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【
図1】本発明の一実施例による漢方薬点眼薬の製造方法の流れの概略図の一例である。
【
図2】本発明の別の実施例による漢方薬点眼薬の製造方法の流れの概略図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の目的、技術案及び利点をより明瞭にするために、以下、図面及び実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。なお、ここで説明する具体的な実施例は本発明を解釈するために過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0019】
なお、矛盾しない限り、本発明の実施例における各特徴は相互に組み合わせられてもよく、この組み合わせは全て本発明の特許範囲である。また、装置概略図において機能性モジュールが区分されており、流れ図においてロジックの順番が示されているが、場合によっては、装置概略図におけるモジュールの区分、又は流れ図における順番と異なるものをもって示される又は記載されるステップが実施されてもよい。
【0020】
特に断らない限り、本明細書に使用されている全ての技術的用語及び科学的用語は当業者が通常理解するものと同義である。本明細書では、本発明の明細書に使用される用語は具体的な実施形態を説明することにのみ使用され、本発明を限定するものではない。本明細書に使用される用語「及び/又は」は1つ又は複数の関連する記載の項目のいずれか又は全ての組み合わせを含む。
【0021】
本発明の実施例は点眼薬を提供し、該点眼薬は漢方薬成分と補助材料とで製造され、重量百分率基準で、漢方薬成分は、コウライニンジン5~10wt%、ゲンジン15~20wt%、ソウジシ5~10wt%、ゴオウ5~10wt%、コウカ5~10wt%、ボルネオール5~10wt%、タイキンギク25~35wt%、オウトウ5~15wt%、及びジュウイシ5~10wt%を含む。
【0022】
漢方薬点眼薬に好ましい眼疾治療効果を持たせるために、いくつかの実施例では、重量百分率基準で、漢方薬成分は、具体的には、前記コウライニンジン7.5wt%、前記ゲンジン15wt%、前記ソウジシ7.5wt%、前記ゴオウ7.5wt%、前記コウカ7.5wt%、前記天然ボルネオール7.5wt%、前記タイキンギク30wt%、前記オウトウ10wt%、及び前記ジュウイシ7.5wt%を含む。
【0023】
いくつかの実施例では、補助材料は精製水、塩化ナトリウム注射液、及びpH調整剤を含む。補助材料は防腐剤をさらに含んでもよく、ここで、pH調整剤と前記防腐剤との質量比が1:1である。pH調整剤はホウ酸を含み、防腐剤はエチルパラベンを含む。pH調整剤は漢方薬点眼薬のpH値を5~9に調整するものである。
【0024】
中国伝統医学によれば、風が軽く浮き上がり、熱も上方に行き、風熱の邪気が目まで至ると、眼部に蓄積し、目が掻痒したり、ぐりぐりしていたり、痛んだりし、目が赤くなり、灼熱感、腫れや痛みがあり、熱や明らかなもの(光)に弱く、また、眼瞼が赤く腫れ、白目が浮腫し、熱により血の動きが促進されて、脈外部まで至ると、白目には点状又はフレーク状の出血が見られ、体に至ると熱が出て頭が痛み、口腔が乾燥しており、口の中が苦く、尿が黄色く、糞便が乾燥し、舌が赤く舌苔が黄色く見え、弦脈や数脈が認められ、以上は全て風熱邪毒に起因する症状である。治療手段としては、体内の熱毒を取り除いて毒素を除去し、風や痒みを取り除き、目赤を解消して視力を高める。
【0025】
『目経大成』によれば、「特に病気がないが目が見えなくなり、瞳孔では、翳障が体液に覆われるものは、内障と呼ばれる。」が記載されている。『秘伝眼科龍木論・七十二証方論』においては、「円翳内障では、疾患に罹患する初期において視界内に小さな薄い影のようなものが現れる場合が多い。視界には薄い煙や霧があるような気がしており、次第に進行していき、痛いや痒みがないが、経時的に失明に至る。」が記載され、また、「氷翳は水のようなものであり、硬さを有し、陰陽の調子が不調になる傾向にあり、側面から瞳孔を観察すると、表面に透明性のある白色のものが認められる。」も記載されており、これらの記載から分かるように、円翳内障という疾患では、最初に瞳孔が白く濁って、自覚的に視界がぼんやりし、深刻な場合は失明してしまう。
【0026】
『秘伝眼科龍木論・巻之二』において、「緑風内障では、罹患初期には、つむじやこめかみに偏痛があり、眼瞼骨及び鼻の頬骨に痛みがあり、目の中が痛んだりぐりぐりしたりし、物がぼやけて見える。又は、吐き気、嘔吐や吐逆により、最初に1つの目がこの疾患に罹患する。」が記載されており、この記載から分かるように、緑風内障病症として物がぼやけて、頭や目の痛み、吐き気と嘔吐が見られ、多くの場合には、最初には1つの目が疾患に罹患している。
【0027】
消渇病の機序は主に陰津不足、燥熱過剰になり、陰虚が病因、燥熱が病症となり、両方には因果関係があり、陰虚が酷いほど燥熱が蓄積しておき、燥熱が蓄積するほど陰虚が進み、消渇が長くなると燥熱により目中の血絡が損傷を受け、その結果として目内の血が経絡から流れてしまう。陰損傷、燥熱、鬱血とは糖尿病性網膜症の主な機序であり、また、気虚の場合も考えられる。
【0028】
能近怯遠(近視眼)は、多くの場合、青少年が勉強や仕事をするときに目を不適切に使用し、目が過度に苦労したり、先天的な不備があったり、先天性遺伝病があったりすることによる。その機序としては、主に心陽が弱まり、目が満足に機能することができず、遠くのものが見えにくくなり、或いは、肝臓と腎臓の調子が悪く、精血が不足し、目の働きを損ない、遠くのものが見えにくくなる。本処方では、先天的な不備があって肝臓と腎臓の調子が悪く、精血が不足し、栄養素などが目に行き渡らず、また、青少年が小さいから長期間にわたって電子デバイスを使用し、目が過労になり、目中の気や血が多く消費され、気や血が双目に必要な栄養を提供できない。
【0029】
処方においては、タイキンギク、天然ボルネオール(D-ボルネオール)、ゲンジンは君薬として使用され、これらのうち、タイキンギク(別名:キュウジュウコウ又はキュウリコウ)は、味わいが苦く、寒性のものであり、体内の熱毒を取り除いて毒素を除去し、血中の熱邪をなくして腫れを解消し、肝を丈夫にして視力を高める効果があり、風火赤眼、目翳によく使用されており、従来からよく使われている視力向上用の漢方薬であり、『百草鏡』に記載のとおり、「視界がぼやけて、赤目や白内障があり、風が与えると涙が出る」という疾患に効く。ゲンジンは、体内の熱毒を取り除いて血中の熱邪をなくして、陰を強くして火邪を下げて体外に排出し、目がぐりぐりしてはっきりと見えないのに有効であり、『神農本草経』には、「腎臓の気を強めて、視力を高める」が記載されており、『医学衷中参西録』において、さらに、「『本経』によれば、ゲンジンは能視力を高め、肝の働きを向上させることで目の機能をよくし、ゲンジンは体内の水分を増やして肝や目に栄養素などを与え、これにより視力を高め、また、目が見えるのは、瞳孔に液体が十分であり、液体が腎臓のエッセンスを反映するものである」とのように解釈されており、天然ボルネオール(D-ボルネオール)は、辛くて強い香りがしており、人体の腔の通りをよくして熱を放散し、体におけるさまざまな腔の通りをよくして、蓄積した火を取り除き、目翳をなくして視力を高め、腫れを解消して痛みを鎮める。『本草経疎』によれば、「目が赤くて肌色が悪いことは、火熱が過剰になるものであり、ボルネオールは辛くて性質が温和であり、主に放散機能を果たし、火熱が含まれた気を体外へ導き、これにより、目が正常に働き、赤目や目の痛み、肌色が改善される」ことが分かり、また、内眼疾患、外眼疾患によく効き、『海薬本草』においては、「主に内眼疾患、外眼疾患に効き、視力を高める」ことが記載されており、上記の3種類の生薬を併用することにより、体内の熱毒を取り除いて血内の熱邪を除去し、陰を増やして視力を高める効果が向上する。
【0030】
目が肝臓に関係しているので、ゴオウは心臓や肝臓を介して機能し、味わいが苦く、性質が涼しく、肝臓の熱邪を鎮めて風を緩和させ、体内の熱毒を取り除いて毒素を除去することができ、「風は痒みの原因となり、痒みを解消するのに風の解除が必要であり、血の流れを良くすると風が消える」ため、コウカ、ジュウイシと組み合わせることで、血の流れ及び脈の通りをよくし、これらのうち、コウカは血を和らげて痛みを鎮めることもでき、ジュウイシは風を放散して体内の熱毒を取り除いて、精に有利であり、視力を高めることもでき、『神農本草経』によれば、目赤、腫れや痛み、目の翳障に効くことができ、コウカ、ジュウイシは共同で臣薬として使用される。
【0031】
オウトウ(別名:ドオウレン、ダイオウトウ)は、『銀海精微』によれば、甘みをしている苦さがあり、寒性であり、心臓及び肝臓の両方に作用し、体内の熱毒を取り除いて毒素を除去し、赤眼に効き、病症として目赤が現れる場合、目がよく痛み、佐薬として使用される。
【0032】
コウライニンジンは体を元気にして、天然ボルネオール(D-ボルネオール)による疎通機能を支援し、気の消費を減少し、使薬として使用される。
【0033】
本発明の実施例における点眼薬は、コウライニンジン、ゲンジン、ソウジシ、ゴオウ、コウカ、天然ボルネオール、タイキンギク、オウトウ、及びジュウイシの生薬を併用することで、白内障を治療して視力を高め、体内の熱毒を取り除いて毒素を除去し、血や経絡の気の流れを良くし、鬱血を除去して痛めを鎮めるような効果を奏する。主として、風火赤眼(急性結膜炎、病症として、目が赤くなり、灼熱感、腫れや痛みがあり、暑さや光に弱く、風が当たると涙が出て、かゆみと乾燥が感じる)、円翳内障(白内障、発症初期に瞳孔が白く濁って、視界がぼんやりし、視界内に小さな薄い影のようなものが現れ、深刻な場合は失明する)や緑風内障(緑内障、病症として物がぼやけて、目の膨満感を伴う痛みや頭痛、吐き気と嘔吐が認められる)、糖尿病性網膜症(糖尿病性眼底黄斑変性症、病症として物が歪んで見え、まっすぐのものが曲がるように見え、物がぼけて見え、小さな影が出現し、視力が低下する)、及び能近怯遠(近視眼、例えば、青年期の軽度の近視眼、病症として近くのものが見えて、遠くが見えにくい)を治療する。
【0034】
本発明の実施例による漢方薬点眼薬の使用方法及び用量は、1日当たり2~3回、1回に2~3滴である。
【0035】
本発明の実施例はまた、漢方薬点眼薬の製造方法を提供し、
図1には漢方薬点眼薬の製造の流れが模式的に示されており、
図1に記載の方法は以下のステップを含む。
S11、漢方薬成分全量に対してコウライニンジン5~10wt%、ゲンジン15~20wt%、ソウジシ5~10wt%、コウカ5~10wt%、タイキンギク25~35wt%、オウトウ5~15wt%、及びジュウイシ5~10wt%を精製水に加えて煎じた後、ろ過して、第1抽出液を得る。
本実施例では、漢方薬成分のうちコウライニンジン5~10wt%、ゲンジン15~20wt%、ソウジシ5~10wt%、コウカ5~10wt%、タイキンギク25~35wt%、オウトウ5~15wt%、及びジュウイシ5~10wt%をかき混ぜて、これらの生薬の混合物を粉砕して篩にかけて、均一に混合し、生薬の混合物に対して20倍の精製水を加えて、1回ずつ1時間2回煎じ、漢方薬液を適切な体積となるまで減圧濃縮させ、静置して、上澄み液を吸引してろ過して、第1抽出液を得て、使用時まで保存する。
【0036】
S12、塩化ナトリウム注射液を精製水に加え、加熱して沸騰させ、70~90℃に冷却した後、前記第1抽出液を加え、50~70℃に降温して、第1混合液を得る。
塩化ナトリウム注射液を適量の精製水に加え、加熱して沸騰させ、冷却して漢方薬点眼薬完成品を得て、抽出液を加え、撹拌しながら50~70℃に降温する。
【0037】
S13、前記漢方薬成分全量に対してゴオウ5~10wt%と天然ボルネオール5~10wt%をエタノールで加熱して還流し、ろ過して第2抽出液を得る。
また、ゴオウ、天然ボルネオール(D-ボルネオール)をエタノールで加熱して半時間還流し、エタノールを回収してアルコール臭をなくし、ろ過して、ろ液を使用時まで保存する。
【0038】
S14、前記第2抽出液を前記第1混合液に滴下した後、防腐剤及び精製水を加え、漢方薬点眼薬を得る。
以上の抽出液を撹拌しながら、以上の溶液に滴下し、エチルパラベン(防腐剤))及び水を加え、30分間以上撹拌する。
【0039】
好ましくは、いくつかの実施例では、上記方法は以下のステップをさらに含む。
S15、前記漢方薬点眼薬のpH値を測定する。
S16、測定した結果、前記漢方薬点眼薬のpH値が所定のpH値範囲内ではない場合、pH調整剤で前記漢方薬点眼薬のpH値を調整する。
【0040】
溶液のpH値を測定し、測定した結果、前記漢方薬点眼薬のpH値が所定のpH値範囲内ではない場合、漢方薬点眼薬のpH値に応じて適量のホウ酸を加え、溶液のpH値を所定のpH値の範囲に調整し、ここで、所定のpH値の範囲は具体的にはpH5~9の範囲であってもよく、次に、溶液をろ過して、ろ液を殺菌処理し、漢方薬点眼薬完成品を得る。
【0041】
具体的には、いくつかの実施例では、コウライニンジン1.5g、ゲンジン3g、ソウジシ1.5g、コウカ1.5g、タイキンギク1.5g、オウトウ2g、及びジュウイシ1.5gを粉砕して、篩にかけて均一に混合した後、精製水340mlを加えて、1回ずつ1時間2回煎じ、適切な体積となるまで減圧濃縮させ、静置して、上澄み液をろ過して、使用時まで保存する。塩化ナトリウム注射液15gを適量の精製水に加え、加熱して沸騰させ、80℃に冷却して、抽出液を加え、撹拌しながら60℃に降温する。また、ゴオウ1.5g、天然ボルネオール(D-ボルネオール)1.5gをエタノール175gで半時間加熱して還流し、エタノールを回収してエタノール臭をなくし、ろ過して、ろ液を使用時まで保存する。以上の抽出液を撹拌しながら、以上の溶液に滴下し、エチルパラベン0.25gを加え、1000mlとなるまで水を添加し、30分間以上撹拌し、溶液のpH値を測定し、場合よっては、完成品に要求されるpH値に応じて、ホウ酸0.25gを加えて、溶液のpH値をpH5~9の範囲(中国薬局方に記載のpH値検出法[付録VII G検出]によって)に調整し、溶液をろ過して、ろ液を加熱殺菌し、缶詰めすると、漢方薬点眼薬完成品を得る。
【0042】
実施例1
本実施例の漢方薬点眼薬は以下のように製造される。
漢方薬成分全量に対してコウライニンジン7.5wt%、ゲンジン15wt%、ソウジシ7.5wt%、コウカ7.5wt%、天然ボルネオール7.5wt%、タイキンギク30wt%、オウトウ10wt%、及びジュウイシ7.5wt%を精製水に加えて煎じた後、ろ過して、第1抽出液を得た。
塩化ナトリウム注射液を精製水に加え、加熱して沸騰させ、80℃に冷却した後、前記第1抽出液を加え、60℃に降温し、第1混合液を得た。
前記漢方薬成分全量に対してゴオウ7.5wt%と天然ボルネオール7.5wt%をエタノールで加熱して還流し、ろ過して第2抽出液を得た。
第2抽出液を第1混合液に滴下した後、エチルパラベン及び精製水を加え、漢方薬点眼薬半製品を得た。
【0043】
前記漢方薬点眼薬のpH値を測定し、ホウ酸で前記漢方薬点眼薬のpH値を9に調整した。
【0044】
実施例2
本実施例の漢方薬点眼薬は以下のように製造される。
漢方薬成分全量に対してコウライニンジン10wt%、ゲンジン15wt%、ソウジシ5wt%、コウカ5wt%、タイキンギク35wt%、オウトウ5wt%、及びジュウイシ5wt%を精製水に加えて煎じた後、ろ過して、第1抽出液を得た。
塩化ナトリウム注射液を精製水に加え、加熱して沸騰させ、80℃に冷却した後、前記第1抽出液を加え、60℃に降温し、第1混合液を得た。
前記漢方薬成分全量に対してゴオウ10wt%と天然ボルネオール10wt%をエタノールで加熱して還流し、ろ過して第2抽出液を得た。
第2抽出液を第1混合液に滴下した後、エチルパラベン及び精製水を加え、漢方薬点眼薬半製品を得た。
【0045】
前記漢方薬点眼薬のpH値を測定し、ホウ酸で前記漢方薬点眼薬のpH値を6に調整する。
【0046】
実施例3
本実施例の漢方薬点眼薬は以下のように製造される。
漢方薬成分全量に対してコウライニンジン10wt%、ゲンジン20wt%、ソウジシ5wt%、コウカ5wt%、タイキンギク35wt%、オウトウ5wt%、及びジュウイシ5wt%を精製水に加えて煎じた後、ろ過して、第1抽出液を得た。
塩化ナトリウム注射液を精製水に加え、加熱して沸騰させ、80℃に冷却した後、前記第1抽出液を加え、50℃に降温し、第1混合液を得た。
前記漢方薬成分全量に対してゴオウ5wt%と天然ボルネオール10wt%をエタノールで加熱して還流し、ろ過して第2抽出液を得た。
第2抽出液を第1混合液に滴下した後、エチルパラベン及び精製水を加え、漢方薬点眼薬半製品を得た。
【0047】
前記漢方薬点眼薬のpH値を測定し、ホウ酸で前記漢方薬点眼薬のpH値を5に調整した。
【0048】
試験
実施例1~3の漢方薬点眼薬について以下の臨床試験を行った。
1.被験者資料
すべての観察対象は臨床で眼疾患と診断された、男性と女性を含め、計36例で、年齢は最小5歳、最大66歳、平均年齢は30歳であった。
【0049】
眼疾患の患者を3群に分け、1群ずつ12人とし、それぞれ群1~3と命名し、SPSS統計ソフトを利用して3群の年齢、漢方医学による症状のスコアを比較した結果、P>0.05であり、差は統計学的に有意ではなく、この3群は比較可能性があることが示された。
【0050】
2.被験者の選択基準
2.1 症例選択基準
(1)臨床で確診された眼疾患を患っている者
(2)年齢満5~75歳
(3)インフォームド・コンセントに署名すること
【0051】
2.2 症例除外基準
(1)アレルギー歴のある者
(2)他の臓器病変がある者
【0052】
3.実験方法
群1の眼疾患の患者は、実施例1の方法で製造された漢方薬点眼薬を、群2及び群3の眼疾患の患者は、実施例2及び実施例3の方法で製造された漢方薬点眼薬を、それぞれ1日に2~3回、1回に2~3滴ずつ投与され、被験者の身体反応を検査し、記録した。
【0053】
4.中医証候に対する治療効果の評価基準
目が赤くなり、灼熱感、腫れや痛みがあり、暑さや光に弱く、風が当たると涙が出て、かゆみと乾燥が感じ、瞳孔が白く濁って、視界がぼんやりし、物がぼやけて、物が歪んで見え、視界内に小さな薄い影のようなものが現れること、目の膨満感を伴う痛み、過度の近視眼や頭痛などの症状は、無、軽、重の3つの等級に分けられ、それぞれに対応する点数は0、2、4点であり、20日間投与した後、観察対象について採点した。
治療効果指数(n)=[(治療前点数-治療後点数)÷治療前点数]×100%
著効:証候のうち上記症状のほとんどが消えて、有効率n≧70%である。
有効:証候のうち上記症状はほぼ消え、有効率30%n≦n<70%である。
無効:証候のうち上記症状はある程度改善されたが、有効率n<30%である。
有効率=[著効症例数+有効症例数/総症例数]×100%。
【0054】
【0055】
表1の結果から分かるように、本発明で製造された漢方薬点眼薬は、目が赤くなり、灼熱感、腫れや痛みがあり、暑さや光に弱く、風が当たると涙が出て、かゆみと乾燥が感じ、視界がぼんやりし、物がぼやけて、瞳孔が白く濁って、視界内に小さな薄い影のようなものが現れること、目の膨満感を伴う痛み、過度の近視眼や頭痛などの症状に対して良好な治療効果があり、有効率は92.66%であった。
【0056】
以上のとおり、上記漢方薬点眼薬は少なくとも以下の有益な効果を有する。
白内障を治療して視力を高め、体内の熱毒を取り除いて毒素を除去し、血や経絡の気の流れを良くし、鬱血を除去して痛めを鎮めることができ、風火赤眼(急性結膜炎、病症として、目が赤くなり、灼熱感、腫れや痛みがあり、暑さや光に弱く、風が当たると涙が出て、かゆみと乾燥が感じる)、円翳内障(白内障、発症初期に瞳孔が白く濁って、視界がぼんやりし、視界内に小さな薄い影のようなものが現れ、深刻な場合は失明する)や緑風内障(緑内障、病症として物がぼやけて、目の膨満感を伴う痛みや頭痛、吐き気と嘔吐が認められる)、糖尿病性網膜症(糖尿病性眼底黄斑変性症、病症として物が歪んで見え、まっすぐのものが曲がるように見え、視界がかすんで見え、ぼやけて見え、視力が低下する。)、及び能近怯遠(近視眼、例えば青年期の軽度の近視、病症として近くのものが見えて、遠くが見えにくい)のいずれにも良好な効果がある。
【0057】
なお、以上の実施例は本発明の技術案を説明するために過ぎず、限定するものではなく、本発明の構想に基づいて、以上の実施例又は異なる実施例の技術的特徴は互いに組み合わせられてもよく、ステップは任意の順で実行されてもよく、また、前記した本発明の各態様に対する多くの変化が可能であり、明瞭さから、これらの変化は詳細な説明に記載されておらず、本発明は前述実施例を参照して詳細に説明されたが、当業者にとって明らかなように、前述の各実施例に記載の技術案に対する修正、又はこれらの技術的特徴の一部に対する等同置換が可能であり、これらの修正や等同置換により、対応する技術案の主旨は本発明の各実施例の技術案の範囲から逸脱することはない。
【要約】
【課題】漢方点眼薬及びその製造方法を提供する。
【解決手段】一実施例による漢方薬点眼薬は、漢方薬成分として、コウライニンジン5~10wt%、ゲンジン15~20wt%、ソウジシ5~10wt%、ゴオウ5~10wt%、コウカ5~10wt%、ボルネオール5~10wt%、タイキンギク25~35wt%、オウトウ5~15wt%、及びジュウイシ5~10wt%を含み、白内障を治療して視力を高め、体内の熱毒を取り除いて毒素を除去し、血や経絡の気の流れを良くし、鬱血を除去して痛めを鎮めることができ、風火赤眼、円翳内障や緑風内障、糖尿病性網膜症及び能近怯遠のいずれにも良好な効果がある。
【選択図】
図1