(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】ヨードトリメチル白金(IV)
(51)【国際特許分類】
C07F 15/00 20060101AFI20230904BHJP
B01J 31/12 20060101ALI20230904BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20230904BHJP
H01M 4/92 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
C07F15/00 F
B01J31/12 M
H01M4/88 K
H01M4/92
(21)【出願番号】P 2022500725
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 EP2021058054
(87)【国際公開番号】W WO2021186087
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D-63457 Hanau,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンゲリノ・ドッピウ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ・カルヒ
(72)【発明者】
【氏名】アイリーン・ヴェルナー
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-258852(JP,A)
【文献】米国特許第04329274(US,A)
【文献】特表2001-504159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 15/
B01J 31/
H01M 4/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法であって、
エーテルS
E及びハロゲン化炭化水素S
Hを含む非プロトン性極性溶媒S
A中において、
白金(II)化合物及び白金(IV)化合物からなる群から選択される少なくとも1つの白金化合物と、
一般式MeMgX(式中、Xは、独立して、Cl、Br、及びIからなる群から選択される)による少なくとも1つのメチルグリニャール化合物及び
ヨードメタンとの反応を含み、
前記ハロゲン化炭化水素S
H
が、ジクロロメタン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、ジブロモメタン、1,1-ジブロモエタン、1,2-ジブロモエタン、クロロベンゼン、及びこれらの異性体、並びにこれらの混合物からなる群から選択され、
Pt金属:MeMgX:ヨードメタンのモル比が1:4:4~1:6:6である、方法。
【請求項2】
少なくとも1つの白金化合物が、白金(II)塩又は白金(IV)塩であり、白金(II)又は白金(IV)がカチオン又はアニオン中に含有されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの白金ハロゲン化物又はハロゲン化白金酸塩が準備される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
PtX
2、[(C
2H
4)PtX
2]
2、M[(C
2H
4)PtX
3]、M
2[PtX
4]、PtX
4、M
2[PtX
6](式中、Xは、各々独立して、F、Cl、Br、及びIからなる群から選択され、Mは、独立して、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び銀からなる群から選択される)、これらの誘導体及び異性体、並びにこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの白金化合物が、準備される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのメチルグリニャール化合物が、MeMgIを含むか、又はMeMgIである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記非プロトン性極性溶媒S
Aが沸点T
Aを有し、前記沸点T
Aが30℃~140℃である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記エーテルS
Eが、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、及びこれらの異性体、並びにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記MeMgX:ヨードメタンのモル比が、1:1.5~1.5:1である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応が、以下の工程:すなわち、
i)少なくとも1つの白金化合物を準備する工程と、
ii)前記ヨードメタンを添加する工程と、
iii)前記一般式MeMgXによる少なくとも1つのメチルグリニャール化合物を添加する工程と、
を含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応が、不活性ガス雰囲気中で行われる、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記反応後に、ヨードトリメチル白金(IV)を、
ヨードトリメチル白金(IV)と前記非プロトン性極性溶媒S
Aとを含む溶液として、又は
固体として、単離することを含む工程が、実施される、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ヨードトリメチル白金(IV)と、エーテルS
E及びハロゲン化炭化水素S
Hを含む非プロトン性極性溶媒S
Aと、を含む溶液を使用して、又
は
ヨードトリメチル白金(IV)を使用して、
白金(IV)化合物を製造するための方法であって、
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法によりヨードトリメチル白金(IV)を製造する工程と、
a)前記ヨードトリメチル白金(IV)、又はヨードトリメチル白金(IV)と前記非プロトン性極性溶媒S
Aとを含む前記溶液を準備する工程と、
b)反応物として前記ヨードトリメチル白金(IV)を使用して前記白金(IV)化合物を合成する工程と、
を含む、方法。
【請求項13】
ヨードトリメチル白金(IV)と、エーテルS
E及びハロゲン化炭化水素S
Hを含む非プロトン性極性溶媒S
Aと、を含む溶液を使用して、又
は
ヨードトリメチル白金(IV)を使用して、
化学反応を実施するための方法であって、
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法によりヨードトリメチル白金(IV)を製造する工程と、
a)前記ヨードトリメチル白金(IV)、又はヨードトリメチル白金(IV)と前記非プロトン性極性溶媒S
Aとを含む前記溶液を準備する工程と、
b)触媒として又はプレ触媒として前記ヨードトリメチル白金(IV)を使用して、前記化学反応を実施する工程と、
を含む、方法。
【請求項14】
請求項
12に記載の方法によって得られたか、若しくは得ることができ
る白金(IV)化合物を使用して基材の表面上に
i.白金層又は
ii.白金含有層
を製造するための方法であって、
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法によりヨードトリメチル白金(IV)を製造する工程と、
a)前記白金(IV)化合物を準備する工程と、
b)
i.前記白金層又は
ii.白金含有層
を、前駆体化合物として前記白金(IV)化合物を使用して、前記基材の表面上に堆積させる工程と、
を含む、方法。
【請求項15】
請求項
12に記載の方法によって得られたか、若しくは得ることができ
る白金(IV)化合物を使用して、電子部品又は燃料電池用電極を製造するための方法であって、
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法によりヨードトリメチル白金(IV)を製造する工程と、
a)前記白金(IV)化合物を準備する工程と、
b)
i.白金層又は
ii.白金含有層
を基材の表面上に堆積させる工程と、
c)前記電子部品又は前記燃料電池用電極を完成させる工程と、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ヨードトリメチル白金(IV)(Me3PtI)、それを製造するための方法及びその使用は既知である。
【背景技術】
【0002】
ヨードトリメチル白金(IV)は、例えば、様々な白金(IV)錯体を製造するための反応物として、例えば、(シクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)及びその誘導体を製造するための反応物として使用される。後者は、とりわけ、白金層又は白金含有層の堆積のために、原子層堆積プロセス(ALD)、有機金属化学蒸着プロセス(MOCVD)、又は有機金属化学気相エピタキシープロセス(MOVPE)における白金前駆体として使用される。
【0003】
1909年には、Pope and Peachey(J.Chem.Soc.1909,95,571)は、無水白金(IV)塩化物と大過剰のグリニャール試薬ヨウ化メチルマグネシウム(MeMgI)から出発する、白金(IV)化合物の合成について最初に報告した。本質的に、ヨードトリメチル白金(IV)を調製するための3つの方法は、従来技術により既知である:すなわち、
a.ベンゼン中でジメチル白金(II)化合物Pt(L)Me2(式中、L=COD=1,5-シクロオクタジエン又はL=NBD=ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,5-ジエニル)を、ヨードメタン(MeI)と反応させる方法(H.C.Clark and L.E.Manzer,J.rganomet.Chem.1972,38,C41-C42;T.G.Appleton et al.,J.Organomet.Chem.1986,303,139-149)、
b.白金(II)化合物、例えば、無水ツァイゼ塩K[(C2H4)PtCl3]を、グリニャール試薬MeMgIと、溶媒としてのジエチルエーテル/ベンゼン混合物中で反応させる方法(Hel’man,Gorushkina,Doklady Akad.Nauk,S.S.S.R.1947,57,259-261)、及び
c.白金(IV)化合物、例えば、PtCl4(H.Gilman et al.,J.Am.Chem.Soc.1953,75,2063-2065)、K2PtCl6(L.D.Boardman and R.A.Newmark,Magnetic Resonance in Chemistry1992,30,481-489)又は(NH4)2[PtCl6](V.M.Kharchevnikov,Zhurnal Obshchei Khimii 1973,43,817-821)を、
ジエチルエーテル/ベンゼン混合物中のグリニャール試薬MeMgIと、
又は
ジエチルエーテル/ベンゼン混合物中の、マグネシウム及び過剰のMeIから出発して製造されたグリニャール試薬MeMgI(例えば、D.E.Clegg and J.R.Hall,Inorganic Syntheses 1967,10,71-74)と、
又は
ジエチルエーテル/テトラヒドロフラン混合物中のメチルリチウム(MeLi)及びその後の飽和ヨウ化カリウム溶液の添加(例えば、L.D.Boardman and R.A.Newmark,Magnetic Resonance in Chemistry 1992,30,481-489)と、反応させる方法。
【0004】
a.で与えられたMe3PtIの製造のための合成経路の1つの欠点は、全体的に3段階であるため労働集約的であり、コストを要する経路である点である。第1段階は、Pt(L)Cl2を製造するためであり、Pt(L)Cl2は第2の工程においてMeLiと反応してPt(L)Me2を形成する。次いで、後者はMeIと反応してMe3PtIを形成する。ベンゼン中MeIとのPt(NBD)Me2の反応は、非常に良好な収率(97%)で高純度のヨードトリメチル白金(IV)(白色固体)を提供する(T.G.Appleton et al.,J.Organomet.Chem.1986,303,139-149)。
【0005】
最も単純な場合、合成経路b.及びc.の範囲内で1つの合成工程のみが必要であるが、少なくとも1つのワンポット法が可能である。しかしながら、それぞれのメチル化試薬、すなわち、グリニャール試薬、及び任意選択で追加のヨードメタン、又はメチルリチウムは、通常は、使用されるPt金属の量に対して比較的大過剰量で使用される。例えば、Pt金属:MeMgIのモル比1:4.2及び1:5、Pt金属:MeMgI:MeIのモル比1:4.6:3.2及び1:7:4.5及び1:11:8.4、並びにPt金属:MeLiのモル比、少なくとも1:8、例えば、1:8.2が提供される。(原子)経済学的かつ生態学的な観点から、これは不利であり、とりわけ、特に製造物の色からすでに認めることができるように、収率及び/又は製造物純度に関して満足のいく結果が得られないためである。比較的低過剰量のグリニャール試薬MeMgIを使用するときは、比較的強い着色及び/又は比較的低い収率のヨードトリメチル白金(IV)が報告されている(参照:H.Gilman et al.,J.Am.Chem.Soc.1953,75,2063-2065:Pt金属:MeMgIのモル比は1:4.2である;G.I.Zharkova et al.,olyhedron 2012,40,40-45:Pt金属:MeMgIのモル比は1:5である)。Hel’man及びGorushkinaによるプロトコルによると、ヨードトリメチル白金(IV)は、およそ70%の収率でオレンジ色の結晶の形態でMeMgI及びMeIを使用して得られる(Doklady Akad.Nauk,S.S.S.R.1947,57,259-261:Pt金属:MeMgI:MeIのモル比は1:4.6:3.2である)。MeIの添加又は比較的大過剰のメチル化試薬MeLiの使用による、更により大過剰のグリニャール試薬MeMgIの場合では、各場合において、より明るい色の単離されたヨードトリメチル白金(IV)が特定され、その収率は、70%~89%で、中程度から良好である(参照:J.C.Baldwin and W.C.Kaska,Inorg.Chem.1975,14,2020:Pt金属:MeMgI:MeIのモル比は1:11:8.4であり;D.E.Clegg and J.R.Hall,Inorganic Syntheses 1967,10,71-74:Pt金属:MeMgI:MeIのモル比は1:7:4.5であり;L.D.Boardman and R.A.Newmark,Magnetic Resonance in Chemistry 1992,30,481-489:Pt金属:MeLiのモル比は1:8.2である)。
【0006】
ヨードトリメチル白金(IV)は、従来技術に記載の調製方法によって非常に異なる色で得られる。したがって、当該白金(IV)化合物は、とりわけ、白色(T.G.Appleton et al.,J.Organomet.Chem.1986,303,139-149)、黄色(D.E.Clegg and J.R.Hall,Inorganic Syntheses 1967,10,71-74)、及びオレンジ色の固体(G.I.Zharkova et al.,Polyhedron2012,40,40-45;オレンジ色の結晶:Hel’man,Gorushkina,Doklady Akad.Nauk,S.S.S.R.1947,57,259-261)として記載されている。単離された製造物の視覚的外観の変化は、広範囲の製造物品質又は純度の程度を示している。Hoff及びBrubaker(Inorg.Chem.1968,7,1655-1656)によると、ヨードトリメチル白金(IV)は、白色又は黄色の固体として得られたか否かに関係なく、四量体[Me3PtI]4として固体で存在する。著者らは、黄色の着色は、ヨウ素によるわずかな汚染によるものであると仮定している。
【0007】
更に、既知の合成経路によって達成された収率は様々である。従来技術は、45%(H.Gilman et al.,J.Am.Chem.Soc.1953,75,2063-2065)~97%(T.G.Appleton et al.,J.Organomet.Chem.1986,303,139-149)の明細書(specification)を開示している。Kharchevnikov(Zhurnal Obshchei Khimii 1973,43,817-821)によると、(NH4)2PtCl6:MeMgIのモル比1:2が1:15まで増加するとき、ヨードトリメチル白金(IV)の全収率、すなわち、二量体[Me3PtI]2及び四量体[Me3PtI]4を一緒にした全収率は、12%から86%まで増加する。加えて、Kharchevnikovは、使用するジエチルエーテル/ベンゼン混合物中のジエチルエーテルのモル分率が0.15から1.0まで増加すると、収率が87%から8%まで減少することを記載している。更に、Boardman及びNewmark(Magnetic Resonance in Chemistry 1992,30,481-489)は、K2[PtCl6]とMeLiの反応では、大過剰のメチル化試薬の使用が必要であるだけでなく、比較的低い温度も維持する必要があると報告している。したがって、8モル当量未満のMeLi又は5℃~10℃を超える反応温度の使用は、有意な収率損失をもたらした。
【0008】
前述の合成経路の欠点は、達成された製造物単位及び収率が、大部分は不十分であり、一部は再現可能ではない点である。これは、困難を伴うため部分的にのみ除去することができる、又は全く除去することができない副製造物の形成に起因している可能性がある。また、それぞれの原料と硫酸銀との反応及びその後のヨウ化カリウムの添加が、ヨードトリメチル白金(IV)を精製するために必要とされ、それは、比較的より低い品質で定期的に得られ、特に、ヨウ素汚染によって多かれ少なかれ強く着色される(D.E.Clegg and J.R.Hall,Inorganic Syntheses 1967,10,71-74)。
【0009】
したがって、本明細書に記載の従来技術によれば、十分な純度及び収率を有するヨードトリメチル白金(IV)の調製は、比較的高い労力及びコストで、特に、aで言及した経路によってのみ可能である。
【0010】
全体として、ヨードトリメチル白金(IV)の製造について文献から知られている合成経路は、生態学的及び(原子)経済学的な観点から満足のいくものではないと分類される。1つの重要な理由は、多くの場合、得られたヨードトリメチル白金(IV)の選択率が比較的低く、結果的に収率、例えば、空時収率が低くなり、かつ/又は純度が低くなるためである。「空時収率」という用語は、反応容器又は反応槽内の空間及び時間あたりに形成される製造物量を指している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、従来技術のこれら及び他の不利な点を克服し、そして、純度が高く、特に、マグネシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、及び元素状ヨウ素による不純物を実質的に含まないヨードトリメチル白金(IV)を、良好な収率(空時収率を含む)で、容易に、費用対効果が高く、かつ再現性良く製造できる方法を提供することである。特に、ヨードトリメチル白金(IV)の純度は、触媒、プレ触媒に関して、及び化学蒸着プロセスのための前駆体を製造するための反応物に関して設定された要件を満たすべきである。当該方法は更に、ヨードトリメチル白金(IV)の同等の収率及び純度によって工業規模でも実施することができ、分離が困難又は全く分離できない副製造物の形成が削減又は回避されることを特徴とするべきである。当該発明は更に、特許請求される方法に従って得ることができるか、又は得られたヨードトリメチル白金(IV)に関し、並びにその使用に関する。加えて、白金(IV)化合物を製造するための方法は、当該化合物を、容易に、高い費用対効果で製造することができ、並びに高純度かつ良好な収率(空時収率を含む)で再現可能に製造することができる。白金(IV)化合物は、特許請求される方法に従って得ることができるか、又は得られたヨードトリメチル白金(IV)を使用して調製することが可能である。更に、当該発明の主題は、少なくとも1つの表面上に少なくとも1つの白金層又は1つの白金含有層を有する基材である。それぞれの層は、特許請求される方法に従って得ることができるか、又は得られた白金(IV)化合物を使用して製造することができるべきである。また、当該発明は、本明細書で特許請求される方法に従って得られたか、又は得ることができる白金(IV)化合物を使用して、電子部品又は燃料電池用電極を製造するための方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の主な特徴は、特許請求の範囲で定義される。
【0013】
目的は、エーテルSEとハロゲン化炭化水素SHとを含む非プロトン性極性溶媒SA中において、白金(II)化合物及び白金(IV)化合物からなる群から選択される少なくとも1つの白金化合物を、
一般式MeMgXによる少なくとも1つのメチルグリニャール化合物(式中、Xは、独立して、Cl、Br、及びIからなる群から選択される)及び
ヨードメタンと、反応させることを含む、ヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法であって、Pt金属:MeMgX:ヨードメタンのモル比が1:4:4~1:6:6である、当該方法によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の文脈において、「ヨードトリメチル白金(IV)」という表現は、当該白金(IV)化合物の全ての無溶媒分子式、特に、Me3PtI、並びにオリゴマー[Me3PtI]2及び[Me3PtI]4の無溶媒分子式を含む。
【0015】
「少なくとも1つの白金化合物」はまた、白金(II)化合物及び白金(IV)化合物からなる群から選択される少なくとも2つの白金化合物を含む混合物でもあり得る。
【0016】
反応物、すなわち、少なくとも1つの白金化合物、一般式MeMgXによるメチルグリニャール化合物及びヨードメタンで、反応槽が充填される順序は、自由に選択することができる。この順序は、反応の成功に影響を与えず、特に、この方法を使用して溶液で又は固体として得られたか、又は得ることができる、ヨードトリメチル白金(IV)の純度及び収率に影響を与えない。
【0017】
本発明の文脈における「反応容器」及び「反応槽」という用語は、同義的に使用され、体積、材料組成、装置、又は形態に限定されない。好適な反応槽としては、例えば、ガラスフラスコ、エナメル化反応器、撹拌槽型反応器、圧力槽、管反応器、マイクロリアクター、及び流動反応器が挙げられる。
【0018】
本明細書に記載のヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法は、不連続プロセスとして又は連続プロセスとして実施することができる。
【0019】
非プロトン性極性溶媒SAはまた、2つ以上のエーテルSE及び/又は2つ以上のハロゲン化炭化水素SHを含有する溶媒混合物でもあり得る。当該方法の一実施形態は、少なくとも1つのエーテルSE及び少なくとも1つのハロゲン化炭化水素SHが混和性であることを提供する。非プロトン性極性溶媒SAは、少なくとも1つのエーテルSE及び少なくとも1つのハロゲン化炭化水素SHと混和性である更なる非プロトン性極性溶媒を含み得る。
【0020】
本発明の文脈において、少なくともそれぞれの反応中に混和性である場合、すなわち、2つの相として存在しない場合、2つの溶媒は混和性と称される。
【0021】
従来技術による方法と比較して、本明細書に記載の方法は、製造物品質、すなわち、製造物純度の改善を達成し、同時に、収率(空時収率を含む)を増加させる。驚くべきことに、非常に高い製造物純度が達成されるが、使用した白金金属の量に対して、一般式MeMgXによるメチル化試薬は、比較的小過剰量で、ヨードメタンの添加と共に使用される。これは、特に、ヨードトリメチル白金(IV)の調製のための以前から知られている方法を考えると驚くべきことである。これは、上で説明したように、Pt金属:MeMgI:MeIの同様のモル比、すなわち、1:4.6:3.2について、従来技術は、ヨードトリメチル白金(IV)が、オレンジ色の結晶の形態の熱ベンゼンからの比較的複雑な再結晶後に単離され、その収率はおよそ70%の中程度であったと記載しているためである。グリニャール試薬MeMgIを有意により大過剰で使用したときのみ、(原子)経済学的及び生態学的観点から不利であり、MeIを添加したときには、淡色のヨードトリメチル白金(IV)が、場合によっては、70%~89%の中程度から良好な収率で単離された。
【0022】
以前から知られている合成戦略とは対照的に、本明細書に記載の方法では、比較的小過剰のメチル化試薬は、ほぼ定量的収率において非常に高い純度でヨードトリメチル白金(IV)を得る及び/又は単離するのに十分である。したがって、例えば、K2[PtCl6]を、MeMgI及びMeIと、Pt:MeMgI:MeIのモル比1:5:5で反応させ、ジエチルエーテル/ジクロロメタン混合物を0.86:1の体積比で使用するとき、目標化合物は、およそ98%の収率でオフホワイトの部分結晶性粉末として得られる。本明細書で特許請求される方法によって、単離された固体として、又は溶液で得られたか、又は得ることができるヨードトリメチル白金(IV)は、不純物を有しておらず、又はその製造中に製造された塩によってもたらされた不純物を全く又は殆ど有していない。特に、マグネシウム塩及びカリウム塩及び/又はナトリウム塩の含有量は、明らかに比較的低い。ICP-OESによる上記実施例において測定された単離した製造物であるヨードトリメチル白金(IV)のマグネシウム含有量は<300ppmであり、ICP-OESによって測定されたカリウム含有量は<50ppmであった。通常は、元素状ヨウ素によってもたらされる不純物は、ヨウ素含有量が増加するにつれて、視覚的に、すなわち、特徴的な黄色、オレンジ色、赤色、又は茶色に基づいて識別することができる。しかしながら、本明細書で特許請求される方法によって単離したヨードトリメチル白金(IV)は、ヨウ素不純物がほとんど微量レベルで存在するように、一般的に少なくとも半結晶性であり、又はオフホワイト若しくは白色の結晶の形態である、オフホワイト又は白色粉末として存在する。したがって、本明細書に記載の方法によって得られたか、又は得ることができるヨードトリメチル白金(IV)は、「元素状ヨウ素による不純物を実質的に含まない」と称される。
【0023】
特許請求される方法はまた、溶媒の選択によって従来技術で開示される方法とは異なる。一般に使用されるジエチルエーテル/ベンゼン混合物の代わりに、エーテルSE及びハロゲン化炭化水素SHを含む非プロトン性極性溶媒SAがここで提供される。エーテルSE:ハロゲン化炭化水素SHの体積比は、例えば、0.5:1~1:5、有利には0.75:1~1:4、特に、0.85:1~1:3であり得る。
【0024】
非プロトン性極性溶媒SA中のNaCl、KCl、MgCl2、及びMgI2などの副製造物として典型的に得られる塩は、比較的溶解度が低いため、特に有利である。したがって、塩負荷の定量又はほぼ完全な分離は、迅速かつ容易に、すなわち、濾過によって、及び/又は遠心分離によって、及び/又はデカンテーションによって実施することができる作業工程によって実現することができる。続いて、濾液、遠心分離物、又はデカンテーション物(decantate)は、迅速かつ複雑化せずに、調製に関して特別な努力をせずに、特に、不活性ガス雰囲気を確保することなく実施され得る更なる精製工程及び/又は単離工程に有利かつ任意選択的に供することができる。全体的に、製造物の精製及び/又は単離は、比較的単純である。
【0025】
要約すると、ヨードトリメチル白金(IV)は、本明細書で特許請求される方法を使用して、単純で、費用対効果の高い、かつ再現可能な方法で製造できることに留意すべきである。目標化合物は、非常に高い純度、特に、マグネシウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩、及び元素状ヨウ素による不純物を実質的に含まずに、非常に良好な収率(空時収率を含む)で得られる。分離が難しいか、又は全く分離できない副製造物の形成、特に、元素状ヨウ素は、有利に低減又は完全に回避される。選択した溶媒混合物に基づいて、例えば、NaCl、KCl、MgCl2、又はMgI2の形態で製造された塩負荷は、有利には、完全に又はほぼ定量的に分離することができる。したがって、このようにして得られたか、又は得ることができるヨードトリメチル白金(IV)の純度は、触媒、プレ触媒、及び化学蒸着プロセスのための前駆体を製造するための反応物に関して設定された要件を満たす。加えて、本明細書に記載の方法はまた、工業規模で実施することもでき、ヨードトリメチル白金(IV)は、同等の収率(空時収率を含む)及び純度で得ることができるか、又は得られる。
【0026】
全体として、ヨードトリメチル白金(IV)の製造のための本明細書で特許請求される方法は、生態学的及び(原子)経済学的な観点から満足のいくものであると分類される。
【0027】
本発明の文脈において、「マグネシウム塩による不純物を実質的に含まない」という表現は、≦500ppm、理想的には≦300ppmの、単離された製造物ヨードトリメチル白金(IV)中のマグネシウム含有量を指している。「カリウム塩による不純物を実質的に含まない」という表現は、≦100ppm、理想的には≦50ppmのカリウム含有量を指しており、同じことは、「ナトリウム塩による不純物を実質的に含まない」という表現にも当てはまる。本発明の文脈において、「元素状ヨウ素による不純物を実質的に含まない」という表現は、特にオフホワイト若しくは白色の、任意選択的に少なくとも半結晶性の粉末として、又はオフホワイト若しくは白色の結晶の形態で存在する、単離されたヨードトリメチル白金(IV)について使用される。
【0028】
ヨードトリメチル白金(IV)を製造する方法の一実施形態では、少なくとも1つの白金化合物は、白金(II)塩又は白金(IV)塩であり、白金(II)又は白金(IV)はカチオン又はアニオン中に含有されている。有利には、少なくとも1つの白金化合物は、白金(IV)塩であり、白金(IV)はカチオン又はアニオン中に含有されている。
【0029】
当該方法の更なる変形例では、少なくとも1つの白金ハロゲン化物又は少なくとも1つのハロゲン化白金酸塩が提供される。別の実施形態によれば、PtX2、[(C2H4)PtX2]2、M[(C2H4)PtX3]、M2[PtX4]、PtX4、M2[PtX6]、それらの誘導体及び異性体、並びにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの白金化合物が提供される。この場合、Xは、各々独立して、F、Cl、Br、及びI、有利にはCl、Br、及びI、特にCl及びBrからなる群から選択される。Mは、独立して、アルカリ金属、有利にはリチウム、ナトリウム、又はカリウム、特にナトリウム又はカリウム、アルカリ土類金属、有利にはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、又はバリウム、特にマグネシウム又はカルシウム、及び銀からなる群から選択される。特許請求される方法の別の変形例では、少なくとも1つの塩化白金又は1つの塩化白金酸塩が提供される。更なる実施形態では、PtCl2、[(C2H4)PtCl2]2、K[(C2H4)PtCl3]、Na2[PtCl4]、K2[PtCl4]、PtCl4、Na2[PtCl6]、及びK2[PtCl6]、それらの誘導体及び異性体、並びにそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1つの白金化合物が提供される。更に別の変形例によれば、PtCl4、Na2[PtCl6]、及びK2[PtCl6]、それらの誘導体及び異性体、並びにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの白金化合物が提供される。更に別の変形例では、Na2[PtCl6]及びK2[PtCl6]、それらの誘導体及び異性体、並びにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの白金化合物が提供される。
【0030】
ヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法に関する別の実施形態変形例は、少なくとも1つのメチルグリニャール化合物がMeMgIを含むか、又はMeMgIである、ことを提供する。白金化合物(一種又は複数種)の選択、溶媒SA、白金濃度、反応温度、及び/又は反応圧力、バッチサイズ、エーテルSE:ハロゲン化炭化水素SHの意図した体積比の選択などの他の反応条件の選択に応じて、MeMglの使用は、反応の過程、特に発熱をより良好に制御できるようにするために有利であり得る。
【0031】
更に別の変形例では、非プロトン性極性溶媒SAは化学的に不活性である。本発明の文脈において、「不活性溶媒」という用語は、それぞれのプロセス条件下で化学的に反応性ではない溶媒を意味している。精製工程及び/又は単離工程を含むそれぞれの反応条件下では、したがって、不活性溶媒は、潜在的な反応パートナー、特に、反応物及び/又は中間物及び/又は製造物及び/又は副製造物と反応せず、また別の溶媒、空気、又は水と反応しない。
【0032】
更なる実施形態では、非プロトン性極性溶媒SAは沸点TAを有し、沸点TAは30℃~140℃である。沸点TAは、有利には31℃~120℃、特に32℃~110℃、又は33℃~99℃である。したがって、溶媒SAは、例えば、それぞれの反応槽に単純に負圧を加え、任意選択で、それぞれの反応混合物の温度をわずかに上昇させることによって、定量的に除去することができる。
【0033】
本方法の別の実施形態によれば、ハロゲン化炭化水素SHは、ハロゲン化アルキル及び芳香族ハロゲン化炭化水素からなる群から選択される。有利には、ハロゲン化炭化水素SHは、塩素化炭化水素又は臭素化炭化水素である。特に、ハロゲン化炭化水素SHは、ジクロロメタン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、ジブロモメタン、1,1-ジブロモエタン、1,2-ジブロモエタン、クロロベンゼン、及びこれらの異性体、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。ヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法に関する別の実施形態は、エーテルSEが、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、及びこれらの異性体、並びにこれらの混合物からなる群から選択されることを提供する。有利には、前述の溶媒の全ては、化学産業において通常使用されている溶媒である。更に、当該溶媒は、<140℃、部分的には<110℃、又は<100℃の沸点を有する。したがって、当該溶媒の定量的除去は、例えば、それぞれの反応槽に単純に負圧を加え、任意選択に、それぞれの反応混合物の温度をわずかに上昇させることによって、可能である。
【0034】
ヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法に関する別の実施形態では、Pt金属:MeMgX:ヨードメタンのモル比は、1:4.05:4.05~1:5.9:5.9、又は1:4.1:4.1~1:5.5:5.5、又は正確には1:5:5である。当該方法の更なる実施形態変形例では、MeMgX:ヨードメタンのモル比は、1:1.5~1.5:1、又は1:1.4~1.4:1、有利には1:1.3~1.3:1、又は1:1.2~1.2:1、特に1:1.1~1.1:1、又は正確には1:1である。
【0035】
当該方法の別の実施形態によれば、反応は、以下の工程、すなわち、
A.少なくとも1つの白金化合物を準備する工程と、
B.工程Aからの少なくとも1つの白金化合物を、
ヨードメタン及び一般式MeMgXによる少なくとも1つのメチルグリニャール化合物と反応させる工程と、
を含む。
【0036】
本明細書に記載の方法の別の変形例は、反応が以下の工程、すなわち、
i)少なくとも1つの白金化合物を、特に懸濁液として、又は固体として準備する工程と、
ii)ヨードメタンを添加する工程と、
iii)一般式MeMgXによる少なくとも1つのメチルグリニャール化合物を添加する工程と、
を含むことを提供する。
【0037】
この場合、少なくとも1つのメチルグリニャール化合物は、通常は、工程iii)の間及び/又は後に、少なくとも1つの白金化合物と反応する。
【0038】
当該方法の別の実施形態は、工程i)において、少なくとも1つの白金化合物の懸濁液が、ハロゲン化炭化水素SH中、例えば、ジクロロメタン中、又はそれと混和性であるハロゲン化炭化水素若しくはハロゲン化炭化水素混合物中で準備されることを提供する。あるいは、供給は、エーテルSE中で、例えば、ジエチルエーテル中で、又はそれと混和性であるエーテル若しくはエーテル混合物中で提供され得る。ハロゲン化炭化水素SHはまた、溶媒混合物を構成してもよく、すなわち、複数のハロゲン化炭化水素を含有してもよい。エーテルSEはまた、複数のエーテルの混合物でもあり得る。あるいは、少なくとも1つの白金化合物が、1つ以上のハロゲン化炭化水素及び1つ以上のエーテルを含む溶媒混合物中に提供され得る。特に、溶媒混合物は、非プロトン性極性溶媒SAと混和性であるか、又は全く同一である。当該方法の更に別の変形例は、少なくとも1つの白金化合物が、非プロトン性極性溶媒SAと混和性である非プロトン性極性溶媒中の懸濁液として提供されることを提供する。
【0039】
ヨードメタンは、エーテルSE中、例えば、ジ-n-プロピルエーテル中の溶液として、又はそれと混和性であるエーテル若しくはエーテル混合物として、添加され得る。あるいは、ハロゲン化炭化水素SH中、例えば、ジブロモメタン中のヨードメタンの添加、又はそれと混和性であるハロゲン化炭化水素若しくはハロゲン化炭化水素混合物中のヨードメタンの添加が可能である。ハロゲン化炭化水素SHはまた、複数のハロゲン化炭化水素を含む混合物も構成し得る。エーテルSEはまた、複数のエーテルの混合物でもあり得る。当該方法の別の変形例によれば、ヨードメタンは、非プロトン性極性溶媒SA中、又は非プロトン性極性溶媒SAと混和性である非プロトン性極性溶媒若しくは溶媒混合物中に添加される。あるいは、実質的に、すなわち液体としてヨードメタンを添加することが可能である。
【0040】
メチルグリニャール化合物は、通常は、エーテル若しくはエーテル混合物SE中の溶液として又はそれと混和性であるエーテル若しくはエーテル混合物として、添加される。使用したグリニャール溶液の濃度、すなわち、それぞれのエーテル若しくはエーテル混合物SE又はそれと混和性であるエーテル若しくはエーテル混合物中のメチルグリニャール化合物のモル濃度は、有利には、残りの反応条件、例えば、白金化合物(一種又は複数種)の選択、使用した更なる非プロトン性極性溶媒又は溶媒混合物の選択、特に、ハロゲン化炭化水素又はハロゲン化炭化水素混合物SHの選択、反応温度の選択、及び/又は反応圧力の選択、白金濃度の選択、バッチサイズの選択、エーテルSE:ハロゲン化炭化水素SHの意図した体積比の選択を考慮して選択される。
【0041】
それぞれの反応槽はまた、反応物で、すなわち、少なくとも1つの白金化合物、一般式MeMgXによるメチルグリニャール化合物、及びヨードメタンで、異なる順序で、充填することもできる。
【0042】
したがって、当該方法の別の実施形態は、工程ii)において、一般式MeMgXによる少なくとも1つのメチルグリニャール化合物が、エーテル若しくはエーテル混合物SE中溶液として、又はそれと混和性であるエーテル若しくはエーテル混合物として、添加されることを提供する。工程iii)において、エーテルSE中の溶液としてのヨードメタンの添加、例えば、メチルtert-ブチルエーテル中の溶液としての添加、又はそれと混和性であるエーテル若しくはエーテル混合物として、ヨードメタンの添加が加えられる。あるいは、ハロゲン化炭化水素SH中のヨードメタンの添加、例えば、クロロベンゼン中のヨードメタンの添加、又はそれと混和性であるハロゲン化炭化水素若しくはハロゲン化炭化水素混合物中のヨードメタンの添加が可能である。ハロゲン化炭化水素SHはまた、複数のハロゲン化炭化水素を含む溶媒混合物も構成し得る。エーテルSEはまた、複数のエーテルの混合物でもあり得る。当該方法の別の変形例によれば、ヨードメタンは、非プロトン性極性溶媒SA中、又は非プロトン性極性溶媒SAと混和性である非プロトン性極性溶媒若しくは溶媒混合物中に添加される。あるいは、実質的に、すなわち液体としてヨードメタンを添加することが可能である。
【0043】
本方法の更に別の変形例では、ヨードメタン及び一般式MeMgXによる少なくとも1つのメチルグリニャール化合物は、単一工程で添加される。メチルグリニャール化合物は、最初に、対応する過剰のヨードメタンを使用して、エーテル若しくはエーテル混合物SE中で、又はそれと混和性であるエーテル若しくはエーテル混合物中で、in situで製造され得る。あるいは、メチルグリニャール化合物は、前もって製造された、かつ/又は保管された、任意選択で、市販されている、エーテル若しくはエーテル混合物SE中、又はそれと混和性であるエーテル若しくはエーテル混合物中の溶液として使用することができ、この溶液には、少なくとも1つのメチルグリニャール化合物の溶液を添加する前に、意図した量のヨードメタンを添加する。あるいは、メチルグリニャール化合物及びヨードメタンは、別々にではあるが同時に添加する。
【0044】
本発明で使用するとき、「in situで製造される」という語句は、このようにして製造される化合物の合成に必要な反応物が、溶媒又は溶媒混合物中で好適な化学量論量で反応し、得られた製造物が単離されないことを意味している。代わりに、in situで製造された化合物を含む溶液又は懸濁液は、一般に、直接、すなわち、単離及び/又は更なる精製なしに再使用される。
【0045】
当該方法の更なる実施形態は、一般式MeMgXによる少なくとも1つのメチルグリニャール化合物が、工程i)で提供され、工程ii)では、少なくとも1つの白金化合物が、特に、懸濁液の形態で、又は実質的に、すなわち、固体として添加される、ことを提供する。メチルグリニャール化合物は、最初に、対応する過剰のヨードメタンを使用して、エーテル若しくはエーテル混合物SE中で、又はそれと混和性であるエーテル若しくはエーテル混合物中で、in situで製造され得る。あるいは、メチルグリニャール化合物は、前もって製造された、かつ/又は保管された、任意選択で、市販されている、エーテル若しくはエーテル混合物SE中、又はそれと混和性であるエーテル若しくはエーテル混合物中の溶液として使用することができ、この溶液には、少なくとも1つのメチルグリニャール化合物の溶液を添加する前に、意図した量のヨードメタンを添加する。更に別の変形例では、メチルグリニャール化合物及びヨードメタンは、別々にではあるが同時に添加する。代替的に又は追加的に、ヨードメタンは、少なくとも1つの白金化合物の添加前及び/又は添加中及び/又は添加後に、部分的に添加してもよい。
【0046】
当該方法の別の変形例によれば、少なくとも1つの白金化合物は、注入デバイスを使用して、特に、漏斗を介した固体として、又は滴加若しくは注射によって懸濁液として、提供又は添加される。代替的に又は追加的に、遮断弁及び/又は停止弁を反応槽の供給ラインに設けることができる。
【0047】
当該方法の更なる実施形態では、注入デバイスを使用して、一般式MeMgXによる少なくとも1つのメチルグリニャール化合物及び/又はヨードメタンが添加又は付与されることが提供される。添加は、例えば、滴加又は注射によって行うことができる。代替的に又は追加的に、遮断弁及び/又は停止弁を反応槽の供給ラインに設けることができる。
【0048】
更に、少なくとも1つの白金化合物と、ヨードメタン及び一般式MeMgXによるメチルグリニャール化合物との反応が、温度TUにおいて非プロトン性極性溶媒SA中で実施される方法変形例が提供される。この場合、温度TUは、-10℃~140℃、有利には-5℃~120℃、特に、0℃~110℃、又は0.5℃~100℃である。反応は、1℃~99℃の温度TUで実施される場合、特に有利である。当該方法の特に省エネ型の変形例では、温度TUは、10℃~50℃、特に15℃~45℃、例えば、20℃、25℃、30℃、35℃、又は40℃である。
【0049】
当該方法の更に別の実施形態は、ヨードメタン及び/又は一般式MeMgXによる少なくとも1つのメチルグリニャール化合物を、少なくとも1つの白金化合物に添加している間及び/又は添加した後、温度TCは、-10℃~120℃、有利には-5℃~110℃、特に0℃~100℃である、ことを提供する。ヨードメタン及び/又は一般式MeMgXによる少なくとも1つのメチルグリニャール化合物を添加している間及び/又は添加した後、温度TCは、0.5℃~99℃、有利には1℃~90℃、特に2℃~80℃であることは特に有利である。当該方法の特に省エネ型の変形例では、ヨードメタン及び/又は一般式MeMgXによる少なくとも1つのメチルグリニャール化合物を添加している間及び/又は添加した後、温度TCは、10℃~50℃、特に15℃~45℃、例えば、20℃、25℃、30℃、35℃、又は40℃である。当該方法の更なる変形例によれば、上記の温度範囲は、上記したように、反応物によるそれぞれの反応槽の充填、すなわち、反応物の添加、すなわち、少なくとも1つの白金化合物、ヨードメタン、及び少なくとも1つのメチルグリニャール化合物の添加が、異なる順序で実施される場合にも、同様に提供される。特に、たとえ一般式MeMgXによる少なくとも1つのメチルグリニャール化合物が、工程i)で提供されるとしても、少なくとも1つの白金化合物は、工程ii)で、特に、懸濁液の形態で、又は実質的に、すなわち、固体として添加される。
【0050】
当該方法の別の実施形態では、温度TU及び温度TCは、伝熱媒体Wを使用して調節及び/又は制御される。この目的のために、例えば、冷却材及び熱媒体として両方で理想的に機能することができる伝熱媒体Wを含有する低温槽(cryostat)を使用することができる。伝熱媒体Wの使用により、定義されたセットポイント値TS1からの温度TUにおける任意の偏差、及び定義されたセットポイント値TS2からの温度TCにおける偏差を、大部分クエンチ又は補償することができる。典型的なデバイス偏差により、一定な温度TU及びTCを実現することはほとんど不可能である。伝熱媒体Wを使用することによって、少なくとも1つの白金化合物と、ヨードメタン及び一般式MeMgXによる及びメチルグリニャール化合物との反応は、少なくとも、しかしながら、予め選択された温度範囲又は複数の予め選択された温度範囲において、非プロトン性極性溶媒SA中で実施され得る。例えば、白金化合物(一種又は複数種)の選択、グリニャール溶液の濃度の選択、溶媒SAの選択、白金濃度の選択、反応圧力の選択、バッチサイズの選択、エーテルSE:ハロゲン化炭化水素SHの意図した体積比の選択などの他の反応パラメータ-の関数として、反応又は発熱の過程を更により良好に制御するための温度プログラムを作り出すことは有利であり得る。例えば、少なくとも1つの白金化合物と、ヨードメタン及びメチルグリニャール化合物との反応の第1の相の間には、少なくとも1つの白金化合物と、ヨードメタン及びメチルグリニャール化合物との反応の第2の相よりもより低い温度又はより低い温度範囲を選択することができる。反応及び/又は添加の3つ以上の相、したがって3つ以上の予め選択された温度又は温度範囲を提供することも可能である。白金化合物(一種又は複数種)の選択、グリニャール溶液の濃度の選択、溶媒SAの選択、白金濃度の選択、反応圧力の選択、バッチサイズの選択、エーテルSE:ハロゲン化炭化水素SHの意図した体積比の選択などの他の反応条件の選択に応じて、伝熱媒体Wを使用して、反応物のうちの1つの添加中及び/又は添加後に、温度TCを上昇させることが好ましい場合がある。このようにして、任意選択で、反応が定量的に起こることを保証することができる。伝熱媒体Wを使用する温度TUの上昇は、例えば、10分間~24時間継続し得る。
【0051】
ヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法に関する別の実施形態は、反応が不活性ガス雰囲気中で起こることを提供する。
【0052】
当該方法の更に別の実施形態では、反応後に、一般式MeMgXによる未反応のメチルグリニャール化合物をクエンチすることを含む工程が実施される。
【0053】
当該発明の文脈では、「クエンチすること」という用語は、一般式MeMgXによる1つ以上の未反応のメチルグリニャール化合物の不活性化を指している。この目的に提供される試薬は、以下「クエンチャー」と称する。当該方法の一実施形態は、クエンチャーが、ハロゲン化アルキル、ケトン、アルコール、水、鉱酸、及び有機酸、特にカルボン酸からなる群から選択されることを提供する。有利には、クエンチャーは、アセトン、1-ブロモ-2-クロロエタン、1-ブロモ-2-フルオロエタン、及びヨードメタンからなる群から選択される。特に、クエンチャーは、アセトン及び/又はヨードメタンを含む。例えば、メチルグリニャール化合物MeMgXに対して過剰のヨードメタンが使用される場合、特に、上記した更なるクエンチャーの使用は、任意選択的で、部分的に又は完全に省略され得る。
【0054】
ヨードトリメチル白金(IV)が本明細書に記載の方法に従って製造される場合、所望の目標化合物であるヨードトリメチル白金(IV)、溶媒SA、及び定義した、簡単に分離可能な副製造物、例えば、NaCl、KCl、MgCl2、及びMgI2のみが、少なくとも1つの白金化合物と、ヨードメタン及び一般式MeMgXによる少なくとも1つのメチルグリニャール化合物との反応後に、存在する。溶液中の目標化合物であるヨードトリメチル白金(IV)を含む懸濁液は、1つ以上の更なる反応物、例えば、シクロペンタジエニルナトリウムと直接反応させ得る。
【0055】
あるいは、反応後に:
ヨードトリメチル白金(IV)及び非プロトン性極性溶媒SAを含む溶液として、
又は
固体として、
ヨードトリメチル白金(IV)を単離することを含む工程が実施される。
【0056】
当該方法の更なる変形例では、単離は濾過工程を含む。複数の濾過工程、任意選択で、活性炭又はシリカなどの清浄媒体、例えば、Celite(登録商標)による1回以上の濾過も提供され得る。
【0057】
溶液として又は固体としての単離中、例えば、濾過によって、任意選択で、濾過助剤(例えば、例えば、Celite(登録商標))及び/又は遠心分離及び/又はデカンテーションによる、副製造物として製造された塩、特に、マグネシウム塩及びナトリウム及び/又はカリウム塩として製造された塩に関する容易な分離能が、最大限利用され得る。これは、非プロトン性極性溶媒SAを有利に選択することによっても実証され得る。例えば、約1:1(v/v)の比でジエチルエーテル/ジクロロメタンが溶媒として使用される場合、マグネシウム塩、カリウム塩、及びナトリウム塩は、特に、完全に又はほぼ定量的に沈殿する一方で、目標化合物のヨードトリメチル白金(IV)は溶液中に残留している。したがって、生じる塩負荷によるヨードトリメチル白金(IV)の汚染は、有利には有意に低減又は防止される。溶液中に当該白金(IV)化合物を含む濾液、遠心分離物、又はデカンテーション物は、1つ以上の更なる反応物を用いて、in situで、すなわち、事前の単離及び/又は精製なしに、保管及び/又は反応させ得る。
【0058】
あるいは、ヨードトリメチル白金(IV)は、例えば、任意選択で、濾過助剤、例えば、Celite(登録商標)を用いる単純な濾過によって、及び/又は遠心分離によって、及び/又はデカンテーションによって、続いて、溶媒及び未反応ヨードメタンなどの全ての揮発性成分の除去によって、固体として単離することができる。マグネシウム塩、特に、例えば、MgI2及びMgCl2、並びにナトリウム及びカリウム塩、例えば、任意選択で、少量の未反応の懸濁された白金(II)塩及び/又は白金(IV)塩は、濾過工程によって、及び/又は遠心分離及び/若しくはデカンテーションによって、容易かつほぼ定量的に、好ましくは定量的に除去され得ることは特に有利である。
【0059】
溶液又は固体としてのヨードトリメチル白金(IV)の単離は、例えば「バルブトゥーバルブ(bulb-to-bulb)」による母液体積の減少、すなわち母液濃度の低下、母液から製造物を沈殿させるための及び/又は不純物及び/若しくは反応物を除去するための溶媒の添加及び/又は溶媒交換、例えば希塩酸、水、及び/又はアセトンによる洗浄、製造物の乾燥などの更なる方法工程、を含み得る。前述の工程は、各々、異なる順序及び頻度で提供され得る。
【0060】
有利には、濾液、遠心分離物、又はデカンテーション物は、迅速に、かつ複雑にならずに、調製に関して特別な努力をせずに、特に、不活性ガス雰囲気を確保することなく実施され得る更なる精製工程及び/又は単離工程に有利かつ任意選択的に供することができる。全体として、目標化合物のヨードトリメチル白金(IV)の精製及び/又は単離は、比較的に単純でかつ費用対効果が高い。
【0061】
一般に、最終製品は、副製造物として沈殿した溶媒又は塩の残留物を依然として含有している場合がある。固体として単離されたヨードトリメチル白金(IV)は、少なくとも97%の純度を有し、有利には97%超、特に98%又は99%を超える純度を有する。工業規模へのアップスケールの場合でも、再現可能な収率は、特に、白金化合物(一種又は複数種)、メチルグリニャール化合物、及び溶媒混合物の選択の関数として、通常は>90%である。
【0062】
この目的はまた、上記の例示的な実施形態のうちの1つに従ったヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法によって得られたか、又は得ることができるヨードトリメチル白金(IV)と、エーテルSE及びハロゲン化炭化水素SHを含む非プロトン性極性溶媒SAと、を含む溶液によっても達成される。
【0063】
非プロトン性極性溶媒SAはまた、2つ以上のエーテルSE及び/又は2つ以上のハロゲン化炭化水素SHを含有する溶媒混合物でもあり得る。本明細書で特許請求される溶液の一実施形態は、少なくとも1つのエーテルSE及び少なくとも1つのハロゲン化炭化水素SHが混和性であることを提供する。非プロトン性極性溶媒SAは、少なくとも1つのエーテルSE及び少なくとも1つのハロゲン化炭化水素SHと混和性である更なる非プロトン性極性溶媒を含み得る。本明細書で特許請求される溶液の文脈において、2つの溶媒が、少なくとも本明細書で特許請求される溶液の各製造及び保管中に、混和性である場合、すなわち、2つの相として存在しない場合、当該2つの溶媒は、混和性と称される。
【0064】
本明細書で特許請求される溶液の変形例では、非プロトン性極性溶媒SAは化学的に不活性である。「不活性溶媒」という用語は、既に上で定義されている。
【0065】
特許請求される溶液の更なる実施形態によれば、非プロトン性極性溶媒SAは沸点TAを有し、当該沸点TAは30℃~140℃である。沸点TAは、有利には31℃~120℃、特に32℃~110℃、又は33℃~99℃である。したがって、溶媒SAは、例えば、それぞれの保管又は反応槽に単純に負圧を加え、任意選択で、それぞれの溶液又はそれぞれの反応混合物の温度をわずかに上昇させることによって、定量的に除去され得る。
【0066】
ヨードトリメチル白金(IV)及び非プロトン性極性溶媒SAを含む溶液の別の実施形態によれば、ハロゲン化炭化水素SHは、ハロゲン化アルキル及び芳香族ハロゲン化炭化水素からなる群から選択される。有利には、ハロゲン化炭化水素SHは、塩素化炭化水素又は臭素化炭化水素である。特に、ハロゲン化炭化水素SHは、ジクロロメタン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、ジブロモメタン、1,1-ジブロモエタン、1,2-ジブロモエタン、クロロベンゼン、及びそれらの異性体、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。特許請求される溶液に関する別の実施形態は、エーテルSEが、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、及びそれらの異性体、並びにそれらの混合物からなる群から選択されることを提供する。有利には、前述の溶媒の全ては、化学産業において通常使用されている溶媒である。更に、当該溶媒は、<140℃、部分的には<110℃、又は<100℃の沸点を有する。したがって、当該溶媒の定量的除去は、例えば、それぞれの保管又は反応槽に単純に負圧を加え、任意選択で、それぞれの溶液又はそれぞれの反応混合物の温度をわずかに上昇させることによって、可能である。
【0067】
ヨードトリメチル白金(IV)及び非プロトン性極性溶媒SAを含む、特許請求される溶液は、特に、上記の方法によって単純で、費用対効果の高いかつ再現可能な仕方で製造することができるという事実を特徴とする。当該溶液は、非常に高い純度を有し、特に、マグネシウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩、並びに元素状ヨウ素による不純物を実質的に含まない。上記定義は、「マグネシウム塩による不純物を実質的に含まない」、「カリウム塩による不純物を実質的に含まない」、「ナトリウム塩による不純物を実質的に含まない」、及び元素状ヨウ素による不純物を実質的に含まない」という用語に適用される。溶液中の化合物ヨードトリメチル白金(IV)の収率は、良好から非常に良好である。分離が難しいか、又は全く分離できない副製造物の形成、特に、元素状ヨウ素は、有利に低減又は完全に回避される。選択した溶媒混合物に基づいて、例えば、NaCl、KCl、MgCl2、又はMgI2の形態で製造された塩負荷は、定量的に又はほぼ定量的に有利に分離され得る。したがって、このようにして得られたか、又は得ることができ、かつヨードトリメチル白金(IV)及び非プロトン性極性溶媒SAを含む溶液の純度は、触媒、プレ触媒、及び化学蒸着プロセスのための前駆体の製造の分野において記載されている要件を満たす。加えて、上記方法はまた、工業規模で実施することもでき、同等の収率(空時収率を含む)及び純度が達成される。
【0068】
更に、目的は、上記の例示的な実施形態のうちの1つに従ってヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法に従って得られたか、又は得ることができるヨードトリメチル白金(IV)によって達成される。
【0069】
ヨードトリメチル白金(IV)の一実施形態では、マグネシウム含有量は≦500ppm、有利には≦300pmである。ヨードトリメチル白金(IV)の更なる実施形態は、カリウム含有量が≦100ppm、有利には≦50ppmであることを提供する。ヨードトリメチル白金(IV)の更なる変形例は、ナトリウム含有量が≦100ppm、有利には≦50ppmであることを提供する。更に、上記の例示的な実施形態のうちの1つに従う方法によって得られたか、又は得ることができる、本明細書で特許請求されるヨードトリメチル白金(IV)は、特に、オフホワイト若しくは白色の、任意選択で少なくとも半結晶性の粉末として、又はオフホワイト若しくは白色結晶の形態で存在する。
【0070】
特許請求されるヨードトリメチル白金(IV)は、特に、単純で、費用対効果の高いかつ再現可能な仕方で製造できることを特徴としている。白金(IV)化合物は、上記の方法によって非常に高い純度で、特に、マグネシウム塩、カリウム塩、又はナトリウム塩、及び元素状ヨウ素による不純物を実質的に含まずに、良好から非常に良好な収率(空時収率を含む)で得られる。分離が難しいか、又は全く分離できない副製造物の形成、特に、元素状ヨウ素は、有利に低減又は完全に回避される。選択した溶媒混合物に基づいて、例えば、NaCl、KCl、MgCl2、又はMgI2の形態で製造された塩負荷は、定量的に又はほぼ定量的に有利に分離され得る。したがって、固体の形態で得られたか、又は得ることができるヨードトリメチル白金(IV)の純度は、触媒、プレ触媒、及び化学蒸着プロセスのための前駆体を製造するための反応物に関して設定された要件を満たす。加えて、上記方法はまた、工業規模で実施することもでき、目標化合物の同等の収率(空時収率を含む)及び純度が達成される。
【0071】
上記定義は、「マグネシウム塩による不純物を実質的に含まない」、「カリウム塩による不純物を実質的に含まない」、「ナトリウム塩による不純物を実質的に含まない」、及び元素状ヨウ素による不純物を実質的に含まない」という用語に適用される。
【0072】
更に、当該目的は、ヨードトリメチル白金(IV)と、エーテルSE及びハロゲン化炭化水素SHを含む非プロトン性極性溶媒SAと、を含む溶液を使用すること、又はヨードトリメチル白金(IV)を使用することによって達成され、各々は、白金(IV)化合物を製造するための反応物として、上記した例示的な実施形態のうちの1つに従って、ヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法によって得られた又は得ることができる。
【0073】
上記の使用は、
ヨードトリメチル白金(IV)と、エーテルSE及びハロゲン化炭化水素SHを含む非プロトン性極性溶媒SAと、を含む溶液を使用して、
又は
ヨードトリメチル白金(IV)を使用して、
白金(IV)化合物を製造するための方法であって、各白金(IV)化合物は、上記した例示的な実施形態のうちの1つに従って、ヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法によって得られたか、又は得ることができ、
当該方法は、
a)ヨードトリメチル白金(IV)、又はヨードトリメチル白金(IV)と非プロトン性極性溶媒SAとを含む溶液を準備する工程と、
b)反応物として溶液中に存在するヨードトリメチル白金(IV)を使用して白金(IV)化合物を合成する工程と、を含む。
【0074】
本明細書に記載の白金(IV)化合物を製造するための方法は、不連続プロセスとして又は連続プロセスとして実施することができる。
【0075】
本明細書で特許請求される白金(IV)化合物を製造するための方法に関する一実施形態によると、ヨードトリメチル白金(IV)の供給、特に、ヨードトリメチル白金(IV)と非プロトン性極性溶媒SAとを含む溶液の供給は、工程a)において、上記した実施形態のうちの1つに従って、ヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法によって、ヨードトリメチル白金(IV)のin-situでの製造とを含む。「in-situでの製造」という表現は、このようにして製造される化合物の合成に必要な反応物が、溶媒又は溶媒混合物中で好適な化学量論量で反応し、得られた製造物は単離されないことを意味している。代わりに、in situで製造された化合物を含む溶液又は懸濁液は、一般に、直接、すなわち、単離及び/又は更なる精製なしに再使用される。
【0076】
非プロトン性極性溶媒SAはまた、2つ以上のエーテルSE及び/又は2つ以上のハロゲン化炭化水素SHを含有する溶媒混合物でもあり得る。ヨードトリメチル白金(IV)の本明細書で特許請求される使用若しくはヨードトリメチル白金(IV)と非プロトン性極性溶媒SAとを含む溶液の本明細書で特許請求される使用に関する実施形態、又はヨードトリメチル白金(IV)を使用する方法若しくは白金(IV)化合物を製造するための前述の溶液に関する実施形態は、少なくとも1つのエーテルSE及び少なくとも1つのハロゲン炭化水素SHが混和性であることを提供する。非プロトン性極性溶媒SAは、少なくとも1つのエーテルSE及び少なくとも1つのハロゲン化炭化水素SHと混和性である更なる非プロトン性極性溶媒を含み得る。本明細書に記載の使用又は本明細書で特許請求される方法に関する文脈において、2つの溶媒が、少なくとも本明細書で特許請求される溶液の各製造及び保管中に、混和性である場合、すなわち、2つの相として存在しない場合、当該2つの溶媒は、混和性と称される。
【0077】
本明細書で特許請求される使用又は本明細書で特許請求される方法に関する一実施形態によると、非プロトン性極性溶媒SAは化学的に不活性である。「不活性溶媒」という用語は、既に上で定義されている。
【0078】
白金(IV)化合物を製造するための前述の使用又は方法に関する更なる実施形態では、非プロトン性極性溶媒SAは沸点TAを有し、当該沸点TAは30℃~140℃である。沸点TAは、有利には31℃~120℃、特に32℃~110℃、又は33℃~99℃である。したがって、溶媒SAは、それぞれの白金(IV)化合物の製造前及び/又は製造中及び/又は製造後に、例えば、それぞれの保管又は反応槽に単純に負圧を加え、任意選択で、それぞれの溶液又はそれぞれの反応混合物の温度をわずかに上昇させることによって、定量的に除去することができる。最も単純な場合、及び経済学的かつ生態学的な観点から最適には、溶媒SAは、それぞれの白金(IV)化合物を製造するための方法中に溶媒として機能し、又はこの目的のために使用される溶媒の少なくとも混和性成分である。
【0079】
白金(IV)化合物を製造するための前述の使用又は方法に関する別の実施形態によると、ハロゲン化炭化水素SHは、ハロゲン化アルキル及び芳香族ハロゲン化炭化水素からなる群から選択される。有利には、ハロゲン化炭化水素SHは、塩素化炭化水素又は臭素化炭化水素である。特に、ハロゲン化炭化水素SHは、ジクロロメタン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、ジブロモメタン、1,1-ジブロモエタン、1,2-ジブロモエタン、クロロベンゼン、及びそれらの異性体、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。白金(IV)化合物を製造するための前述の使用又は方法に関する別の実施形態は、エーテルSEが、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、及びそれらの異性体、並びにそれらの混合物からなる群から選択されることを提供する。有利には、前述の溶媒の全ては、化学産業において通常使用されている溶媒である。更に、当該溶媒は、<140℃、部分的には<110℃、又は<100℃の沸点を有する。したがって、それぞれの白金(IV)化合物の製造前及び/又は製造中及び/又は製造後の当該溶媒の定量的な除去は、例えば、それぞれの保管又は反応槽に単純に負圧を加え、任意選択で、それぞれの溶液又はそれぞれの反応混合物の温度をわずかに上昇させることによって、可能である。
【0080】
本明細書で特許請求されるヨードトリメチル白金(IV)の使用によって、又は固体としてヨードトリメチル白金(IV)を用いて若しくは極性非プロトン性溶媒SA中に溶解させてヨードトリメチル白金(IV)を用いて白金(IV)化合物を製造するための本明細書に記載の方法によって(各々は、上記の実施形態のうちの1つによるヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法によって得られたか、又は得ることができる)、複数の白金(IV)化合物を、比較的安価に、容易に、そして迅速に、非常に高い純度で、良好から非常に良好な収率で製造することができる。そのような白金(IV)化合物の例は、特に、(シクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)及びその誘導体、例えば、(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(エチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(イソ-プロピルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、及び(tert-ブチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)である。このようにして得ることができるか、又は得られた白金(IV)化合物は、それらの非常に高い純度の故に、高い純度の白金層又は白金含有層を製造するための化学蒸着プロセスにおける前駆体としての使用に好適である。有利には、前述の白金(IV)化合物は、上記の方法によって得られたか、又は得ることができるヨードトリメチル白金(IV)を使用して、工業規模で、非常に高い純度及び良好から非常に良好な収率で容易に調製することもできる。
【0081】
更に、目的は、上記の例示的な実施形態のうちの1つに従って白金(IV)化合物を製造するための方法に従って得られたか、又は得ることができる白金(IV)化合物によって達成される。当該方法は、ヨードトリメチル白金(IV)を、固体として使用して、又はヨードトリメチル白金(IV)と、エーテルSE及びハロゲン化炭化水素SHを含む非プロトン性極性溶媒SAとを含む溶液として使用して、実施され、その各々は、前述の実施形態の1つに従ってヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法によって得られたか、又は得ることができる。
【0082】
このようにして得られたか、又は得ることができる白金(IV)化合物は、例えば、(シクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)及びその誘導体、例えば、(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(エチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(イソ-プロピルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、及び(tert-ブチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)である。前述の白金(IV)化合物及び複数の更なる白金(IV)化合物は、ヨードトリメチル白金(IV)を、固体として使用して、又はヨードトリメチル白金(IV)と非プロトン性極性溶媒SAとを含む溶液として使用して、白金(IV)化合物を製造するための上記の方法によって、比較的に費用対効果が高く、容易に、そして迅速に、非常に高い純度で、良好から非常に良好な収率で製造することができ、その各々は、上記した実施形態のうちの1つに従って、ヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法によって得られた又は得ることができる。このようにして得ることができるか、又は得られた白金(IV)化合物は、それらの高い純度の故に、高い純度の白金層又は白金含有層を製造するための化学蒸着プロセスにおける前駆体としての使用に好適である。有利には、前述の白金(IV)化合物は、上記の方法によって得られた又は得ることができるヨードトリメチル白金(IV)を使用して、工業規模で、非常に高い純度及び良好から非常に良好な収率で容易に調製することもできる。
【0083】
更に、当該目的は、
ヨードトリメチル白金(IV)と、エーテルSE及びハロゲン化炭化水素SHを含む非プロトン性極性溶媒SAと、を含む溶液を使用することによって、
又は
ヨードトリメチル白金(IV)を使用することによって達成され、
その各々は、化学反応において、触媒若しくはプレ触媒を含有する溶液として、又は触媒として、又はプレ触媒として、上記した例示的な実施形態のうちの1つに従って、ヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法によって得られたか、又は得ることができる。
【0084】
上記の使用は、
ヨードトリメチル白金(IV)と、エーテルSE及びハロゲン化炭化水素SHを含む非プロトン性極性溶媒SAと、を含む溶液を使用して、
又は
ヨードトリメチル白金(IV)を使用して、
化学反応を実施するための方法であって、その各々は、上記した例示的な実施形態のうちの1つに従って、ヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法によって得られたか、又は得ることができ、
当該方法は、
a)ヨードトリメチル白金(IV)、又はヨードトリメチル白金(IV)と非プロトン性極性溶媒SAとを含む溶液を準備する工程と、
b)固体として、又は触媒として若しくはプレ触媒として溶液中に存在するヨードトリメチル白金(IV)を使用して、化学反応を実施する工程と、を含む。
【0085】
本明細書に記載の化学反応を実施するための方法は、不連続プロセスとして又は連続プロセスとして実施することができる。
【0086】
化学反応を実施するために本明細書で請求される方法に関する一実施形態によると、本明細書で特許請求される白金(IV)化合物を製造するための方法に関する一実施形態によると、ヨードトリメチル白金(IV)の供給、特に、ヨードトリメチル白金(IV)と非プロトン性極性溶媒SAとを含む溶液の供給は、工程a)において、上記した実施形態のうちの1つに従って、ヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法によって、ヨードトリメチル白金(IV)のin-situでの製造とを含む。「in-situ製造」という表現は、既に上で定義してある。
【0087】
非プロトン性極性溶媒SAはまた、2つ以上のエーテルSE及び/又は2つ以上のハロゲン化炭化水素SHを含有する溶媒混合物でもあり得る。ヨードトリメチル白金(IV)の本明細書で特許請求される使用若しくはヨードトリメチル白金(IV)と非プロトン性極性溶媒SAとを含む溶液の本明細書で特許請求される使用に関する実施形態、又はヨードトリメチル白金(IV)を使用して化学反応を実施するための方法若しくは前述の溶液に関する実施形態は、少なくとも1つのエーテルSE及び少なくとも1つのハロゲン化炭化水素SHが混和性であることを提供する。非プロトン性極性溶媒SAは、少なくとも1つのエーテルSE及び少なくとも1つのハロゲン化炭化水素SHと混和性である更なる非プロトン性極性溶媒を含み得る。本明細書に記載の使用又は本明細書で特許請求される方法に関する文脈において、2つの溶媒が、少なくとも本明細書で特許請求される溶液の各製造及び保管中に、混和性である場合、すなわち、2つの相として存在しない場合、当該2つの溶媒は、混和性と称される。
【0088】
本明細書に記載の使用又は本明細書で特許請求される方法に関する一実施形態によると、非プロトン性極性溶媒SAは化学的に不活性である。「不活性溶媒」という用語は、既に上で定義してある。
【0089】
化学反応を実施するための前述の使用又は方法に関する更なる実施形態では、非プロトン性極性溶媒SAは沸点TAを有し、当該沸点TAは30℃~140℃である。沸点TAは、有利には31℃~120℃、特に32℃~110℃、又は33℃~99℃である。したがって、溶媒SAは、化学反応を実施する前及び/又は実施中及び/又は実施後に、例えば、それぞれの保管又は反応槽に単純に負圧を加え、任意選択で、それぞれの溶液又はそれぞれの反応混合物の温度をわずかに上昇させることによって、定量的に除去することができる。最も単純な場合、及び経済的かつ生態学的な観点から最適には、溶媒SAは、白金触媒様式で実施される化学反応中に溶媒として機能し、又はこの目的のために使用される溶媒の少なくとも混和性成分である。
【0090】
化学反応を実施するための前述の使用又は方法に関する別の実施形態によると、ハロゲン化炭化水素SHは、ハロゲン化アルキル及び芳香族ハロゲン化炭化水素からなる群から選択される。有利には、ハロゲン化炭化水素SHは、塩素化炭化水素又は臭素化炭化水素である。特に、ハロゲン化炭化水素SHは、ジクロロメタン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、ジブロモメタン、1,1-ジブロモエタン、1,2-ジブロモエタン、クロロベンゼン、及びこれらの異性体、並びにこれらの混合物からなる群から選択される。化学反応を実施するための方法に関する別の実施形態は、エーテルSEが、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、及びこれらの異性体、並びにこれらの混合物からなる群から選択されることを提供する。有利には、前述の溶媒の全ては、化学産業において通常使用されている溶媒である。更に、当該溶媒は、<140℃、部分的には<110℃、又は<100℃の沸点を有する。したがって、化学反応を実施する前及び/又は実施中及び/又は実施後の当該溶媒の定量的な除去は、例えば、それぞれの保管又は反応槽に単純に負圧を加え、任意選択で、それぞれの溶液又はそれぞれの反応混合物の温度をわずかに上昇させることによって、可能である。
【0091】
ヨードトリメチル白金(IV)の本明細書で特許請求される使用の一実施形態、又は触媒若しくはプレ触媒としてヨードトリメチル白金(IV)を使用して化学反応を実施するための方法の一実施形態によると、ヨードトリメチル白金(IV)は、ヨードトリメチル白金(IV)の供給後に単量体化される(工程a)を参照されたい)。「単量体化」という用語は、単量体、可溶性、及び触媒活性のMe3PtIの提供を指す。単量体化は、通常はオリゴマーとして、例えば、二量体又は四量体として存在するヨードトリメチル白金(IV)の熱分解によって通常は達成される。
【0092】
ヨードトリメチル白金(IV)を使用して化学反応を実施するための、本明細書で特許請求される使用の更に別の実施形態又は本明細書で特許請求される方法の更に別の実施形態では、化学反応は、炭素-炭素二重結合への付加反応であり、ヨードトリメチル白金(IV)は、プレ触媒として使用される。特許請求される使用の更なる変形例又は特許請求される方法の更なる変形例では、付加反応は、炭素-炭素二重結合のヒドロシリル化である。
【0093】
化学反応を実施するための、本明細書で特許請求される使用又は本明細書で特許請求される方法では、ヨードトリメチル白金(IV)は、固体として、又はヨードトリメチル白金(IV)及び非プロトン性極性溶媒SAを含む溶液として使用することができ、その各々は、上記の実施形態のうちの1つに従ってヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法によって得られたか、又は得ることができる。その非常に高い純度の故に、このようにして得ることができるか、又は得られたヨードトリメチル白金(IV)は、複数の白金触媒反応におけるプレ触媒又は触媒としての使用に好適である。特に、ヨードトリメチル白金(IV)は、上で説明したように、マグネシウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩、並びに元素状ヨウ素による不純物を実質的に含まない。上記の定義は、「マグネシウム塩による不純物を実質的に含まない」、「カリウム塩による不純物を実質的に含まない」、「ナトリウム塩による不純物を実質的に含まない」、及び元素状ヨウ素による不純物を実質的に含まない」という用語に適用される。ヨードトリメチル白金(IV)は、工業規模でも、上記の方法によって、良好から非常に良好な収率(空時収率を含む)で、比較的に費用対効果が高く、単純に、そして迅速に調製できることが特に有利である。上記の実施形態のうちの1つに従ってヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法によって得られた又は得ることができる、ヨードトリメチル白金(IV)を使用して化学反応を実施するための、本明細書で特許請求されるヨードトリメチル白金(IV)の使用又は本明細書に記載の方法は、少なくともヨードトリメチル白金(IV)の供給又はヨードトリメチル白金(IV)と非プロトン性極性溶媒SAとを含む溶液の供給(工程a)を参照されたい)に関して、容易に、迅速に、かつ比較的費用対効果が高く実施することができる。
【0094】
加えて、当該目的は、白金層又は白金含有層を、特に、基材の少なくとも1つの表面上に製造するための前駆体化合物として、上記した実施形態のうちの1つに従って、白金(IV)化合物を製造するための方法によって得られたか、又は得ることができる白金(IV)化合物の使用によって、達成される。
【0095】
前述の使用は、
i.少なくとも1つの白金層又は
ii.少なくとも1つの白金含有層
を、上記の例示的な実施形態のうちの1つに従って白金(IV)化合物を製造するための方法によって得られたか、又は得ることができる白金(IV)化合物を使用して、基材の少なくとも1つの表面上に製造するための方法であり、
当該方法は、
a)白金(IV)化合物を準備する工程と、
b)
i.少なくとも1つの白金層又は
ii.少なくとも1つの白金含有層
を、前駆体化合物として白金(IV)化合物を使用して、基材の少なくとも1つの表面上に堆積させる工程と、
を含む。
【0096】
工程a)では、1つ以上の白金(IV)化合物の供給が準備され得る。更に、工程a)では、1つ以上の白金(IV)化合物が、固体として、又は1つ以上の白金(IV)化合物を含む溶液として、互いに独立して準備され得る。
【0097】
ここで、並びに以下において、堆積可能な白金含有層又は膜の正確な化学量論の詳細については省略する。用語「層」は、表現「膜」と同義であり、層の厚さ又は膜の厚さに関するいかなる記述もなすものではない。
【0098】
それらの非常に高い純度の故に、使用される白金(IV)化合物は、基材の表面上に高品質の白金層又は白金含有層を製造するための前駆体化合物として特に好適である。これは、特に、上記した実施形態のうちの1つに従う方法に基づくそれらの製造、すなわち、上記した例示的な実施形態のうちの1つに従う、ヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法によって得られた又は得ることができるヨードトリメチル白金(IV)を用いるそれらの製造に寄与する。これは、このようにして得られたか、又は得ることができるヨードトリメチル白金(IV)が、マグネシウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩、並びに元素状ヨウ素による不純物を実質的に含まないためであり、それはコーティングプロセスには不利であるため、コーティングされた基材の性能に不利である。上記の定義は、「マグネシウム塩による不純物を実質的に含まない」、「カリウム塩による不純物を実質的に含まない」、「ナトリウム塩による不純物を実質的に含まない」、及び元素状ヨウ素による不純物を実質的に含まない」という用語に適用される。加えて、工程a)に従って準備される白金(IV)化合物は、産業規模での使用を容易にする特に単純で比較的費用対効果の高い仕方で、上記した実施形態のうちの1つに従って白金(IV)化合物を製造するための方法によって調製することができる。
【0099】
本明細書に記載の使用の一実施形態では、又は基材の表面上に白金層又は白金含有層を製造するための本明細書に記載の方法の一実施形態では、工程a)で準備される白金(IV)化合物は、(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(エチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(イソ-プロピルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、及び(tert-ブチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)からなる群から選択される。
【0100】
白金層若しくは白金含有層を製造するための本明細書で特許請求される使用の別の実施形態又は本明細書で特許請求される方法の別の実施形態では、工程b)における白金層又は白金含有層の堆積は、蒸着プロセスによって行われる。特に、白金層又は白金含有層は、ALDプロセス又はMOCVDプロセス、特に、MOVPEプロセスによって堆積される。
【0101】
基材は、例えば、1つ以上の卑金属を含んでもよく、又は1つ以上の卑金属から製造してもよい。代替的に又は追加的に、基材は、1つ以上の非金属材料を含んでもよく、又は1つ以上の非金属材料から完全になっていてもよい。例えば、コランダム箔又は薄い金属箔を基材として使用することができる。基材自体は、部品の一部であり得る。白金層若しくは白金含有層を製造するための前駆体化合物としての白金(IV)化合物の前述の使用に関する一実施形態では、又は、基材の表面上に白金層若しくは白金含有層を製造するための方法に関する一実施形態では、基材はウエハである。ウエハは、ケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、SiO2などのガラス、及び/若しくはシリコーンなどのプラスチックを含んでもよく、又は、1つ以上のこのような材料から完全になってもよい。ウエハはまた、それぞれ1つの表面を有する1つ以上のウエハ層を有することもできる。白金層の製造又は白金含有層の製造は、1つ以上のウエハ層の表面上に提供され得る。
【0102】
白金層又は白金含有層の純度が非常に高いため、本明細書で特許請求される使用又は本明細書に記載の方法によって得られたか、又は得ることができ、かつ白金層又は白金含有層を含む、基材は、電子部品、特に、電子半導体部品、又は燃料電池用電極の製造に特によく使用することができる。後者の場合、白金層又は白金含有層は触媒層として機能する。
【0103】
目的は、更に、少なくとも
i.1つの白金層又は
ii.1つの白金含有層
を、少なくとも1つの表面上に含む基材によって達成され、
当該白金層又は白金含有層は、上記の例示的な実施形態のうちの1つに従った白金(IV)化合物を製造するための方法に従って得られたか、又は得ることができる白金(IV)化合物を使用して製造される。
【0104】
基材は、例えば、1つ以上の卑金属を含んでもよく、又は1つ以上の卑金属から製造してもよい。代替的に又は追加的に、基材は、1つ以上の非金属材料を含んでもよく、又は1つ以上の非金属材料から完全になっていてもよい。例えば、コランダム箔又は薄い金属箔を基材として使用することができる。基材自体は、部品の一部であり得る。一実施形態では、基材は、ウエハである。ウエハは、ケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、SiO2などのガラス、及び/若しくはシリコーンなどのプラスチックを含んでもよく、又は、1つ以上のこのような材料から完全になってもよい。ウエハはまた、それぞれ1つの表面を有する1つ以上のウエハ層を有することもできる。この場合、1つ以上の表面は白金層又は白金含有層を有してもよい。
【0105】
本明細書で特許請求される基材の少なくとも1つの表面上の少なくとも1つの白金層又は白金含有層の純度が非常に高いため、電子部品、特に、電子半導体部品、又は燃料電池用電極を製造するのに特に好適である。後者の場合、少なくとも1つの白金層又は白金含有層は、触媒層として機能する。
【0106】
当該目的はまた、上記の例示的な実施形態のうちの1つに従って白金(IV)化合物を製造するための方法によって得られたか、又は得ることができる白金(IV)化合物を使用して、電子部品、特に、電子半導体部品、又は燃料電池用電極を製造するための方法によっても達成され、当該方法は、
a)白金(IV)化合物を準備する工程と、
b)
i.少なくとも1つの白金層又は
ii.少なくとも1つの白金含有層
を、基材の少なくとも1つの表面上に堆積させる工程と、
c)電子部品、特に、電子半導体部品、又は燃料電池用電極を完成させる工程と、を含む。
【0107】
工程a)では、1つ以上の白金(IV)化合物の供給が準備され得る。更に、工程a)では、1つ以上の白金(IV)化合物が、固体として、又は1つ以上の白金(IV)化合物を含む溶液として、互いに独立して準備され得る。
【0108】
基材は、例えば、1つ以上の卑金属を含んでもよく、又は1つ以上の卑金属から製造してもよい。代替的に又は追加的に、基材は、1つ以上の非金属材料を含んでもよく、又は1つ以上の非金属材料から完全になっていてもよい。例えば、コランダム箔又は薄い金属箔を基材として使用することができる。基材自体は、部品の一部であり得る。一実施形態では、基材は、ウエハである。ウエハは、ケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、SiO2などのガラス、及び/若しくはシリコーンなどのプラスチックを含んでもよく、又は、1つ以上のこのような材料から完全になってもよい。ウエハはまた、それぞれ1つの表面を有する1つ以上のウエハ層を有することもできる。この場合、ウエハの1つ以上の表面上に1つ以上の白金層又は1つ以上の白金含有層の堆積が提供され得る。
【0109】
それらの非常に高い純度の故に、本明細書で使用される白金(IV)化合物は、電子半導体構成要素及び燃料電池用電極の製造のための前駆体化合物として特に好適である。これは、特に、上記した実施形態のうちの1つに従う方法に基づくそれらの製造、すなわち、上記した例示的な実施形態のうちの1つに従う、ヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法によって得られたか、又は得ることができるヨードトリメチル白金(IV)を用いるそれらの製造に寄与する。これは、このようにして得られたか、又は得ることができるヨードトリメチル白金(IV)が、マグネシウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩、並びに元素状ヨウ素による不純物を実質的に含まないためであり、それはコーティングプロセスには不利であるため、コーティングされた基材の性能に不利である。上記の定義は、「マグネシウム塩による不純物を実質的に含まない」、「カリウム塩による不純物を実質的に含まない」、「ナトリウム塩による不純物を実質的に含まない」、及び元素状ヨウ素による不純物を実質的に含まない」という用語に適用される。加えて、工程a)に従って準備される白金(IV)化合物は、産業規模での使用を容易にする特に単純で比較的費用効果の高い仕方で、上記した実施形態のうちの1つに従って白金(IV)化合物を製造するための方法によって調製することができる。
【0110】
上記した実施形態のうちの1つに従って、ヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法によって得られたか、又は得ることができるヨードトリメチル白金(IV)を用いて、定義した白金(IV)化合物が提供される。ヨードトリメチル白金(IV)は、特許請求される方法によって、非常に高い純度、かつ良好から非常に良好な収率(空時収率を含む)を有する単純で費用対効果が高くかつ再現可能な様式で調製することができる。加えて、特許請求される方法は、目標化合物の同等の収率(空時収率を含む)及び純度を工業規模でも実施できることを特徴とする。全体として、ヨードトリメチル白金(IV)を製造するための特許請求される方法と、このようにして調製されたヨードトリメチル白金(IV)は、生態学的及び経済的な観点から満足のいくものとして評価されるべきである。その非常に高い純度の故に、そのようにして得られたか、又は得ることができるヨードトリメチル白金(IV)は、白金層又は白金含有層を堆積させるように機能する高純度白金(IV)前駆体化合物を製造するための反応物として、並びにプレ触媒及び触媒として、特に好適である。その非常に高い純度の白金層若しくは白金含有層の故に、上記の白金(IV)前駆体化合物を使用して得られたか、又は得ることができる基材は、電子部品、特に電子半導体部品、及び燃料電池用電極の製造に特によく使用することができる。
【0111】
本発明の他の特徴、詳細、及び利点については、特許請求の範囲の文言、並びに以下の実施例の説明から得られる。
【0112】
ヨードトリメチル白金(IV)の合成のための作業手順の説明
材料及び方法:
後続の濾過を含む全ての反応は、標準的な不活性ガス条件下で実施された。使用した溶媒及び試薬を精製し、標準的な手順によって乾燥させた。溶液として使用されるグリニャール試薬の場合、滴定により含有量を求めた。単離された製造物のヨードトリメチル白金(IV)の白金含有量、マグネシウム含有量、及びカリウム含有量を、ICP-OESによって測定した。
【0113】
実施例1:CH2Cl2中のK2[PtCl6]、MeI、及びMeMgIから出発したMe3PtIの調製
125gのK2[PtCl6](50.4gのPt、0.258モル)を1Lの反応槽に移し、500mLのCH2Cl2を添加した。次いで、80mL(1.29モル、5当量)のヨードメタンを室温で添加した。2℃の流れ温度で、ジエチルエーテル中MeMgIの430mLの溶液(3M、1.29モル、5当量)を45分以内に添加した。添加完了後、その懸濁液を、10℃の流れ温度で16~20時間撹拌した。懸濁液の色は、黄色からベージュ色にゆっくりと変化した。反応中、ガス製造が観察され、流れ温度に対して最大5℃の温度上昇が観察された。50mLのアセトンを20分以内に添加することにより、過剰なグリニャール試薬をクエンチした。懸濁液を室温で濾過し、濾過ケーキを2000mLのCH2Cl2で洗浄した。合わせた濾液の溶媒をロータリーエバポレーター(終了条件:40℃、<500mbar)を使用して除去した。次いで、500mLのアセトンを添加し、圧力を300mbarまでゆっくりと低下させた。その後、脱気蒸留水500mLを添加し、圧力を<100mbarまでゆっくりと低下させた。次いで、製造物懸濁液を濾過した。固体として得られた製造物を、希塩酸、水(pHが中性になるまで)で洗浄し、最後にアセトンで洗浄した。93gのヨードトリメチル白金(IV)(53.1%Pt)を、オフホワイトの粉末の形態で単離した(金属収率98%)。ベンゼン-d6中の1H-NMRは、製造物シグナル:195Ptサテライトを伴う1.74ppmでの一重項、H-PTカップリング=77.21Hzのみを示した。マグネシウム含有量は<300ppmであった。カリウム含有量は<50ppmであった。
【0114】
実施例2:CH2Cl2中のK2[PtCl6]、MeI、及びMeMgIから出発したMe3PtIの調製
これは、実施例1に記載したものと同様に実施した。唯一の違いは、3モルのエーテル性MeMgI溶液の添加を2℃ではなく20℃の流れ温度で実施し、添加の完了後に、その懸濁液を、20℃の流れ温度で16~20時間撹拌もしたことであった。同程度の収率及び品質で、ヨードトリメチル白金(IV)が得られた。
【0115】
本発明は、上記の実施形態のうちの1つに限られず、代わりに多くの方法で修正変更され得る。
【0116】
本発明は、ヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法、及び当該方法により得ることができる又は得られたヨードトリメチル白金(IV)、及び高純度白金(IV)化合物を製造するための反応物として、プレ触媒として及び触媒としてのその使用に関することを認めることができる。本発明の主題はまた、前述の白金(IV)化合物と、白金層及び白金含有層を基材の表面上に堆積させるための前駆体としてのそれらの使用である。本発明はまた、1つの表面上に白金層又は白金含有層を含む基材と、本明細書に記載の方法によって得ることができるヨードトリメチル白金(IV)を使用して得られた又は得ることができる白金(IV)化合物を使用して、電子部品、特に、電子半導体部品、又は燃料電池用電極を製造するための方法と、にも関する。
【0117】
上記した実施形態のうちの1つに従って、ヨードトリメチル白金(IV)を製造するための方法によって得られた又は得ることができるヨードトリメチル白金(IV)を用いて、定義した白金(IV)化合物が提供される。ヨードトリメチル白金(IV)は、特許請求される方法によって、非常に高い純度、かつ良好から非常に良好な収率(空時収率を含む)を有する単純で、費用対効果が高くかつ再現可能な様式で調製することができる。更に、本明細書に記載される方法はまた、目標化合物の同等の収率(空時収率を含む)及び純度によって、工業規模で実施することもできる。全体として、ヨードトリメチル白金(IV)を製造するための特許請求される方法と、このようにして調製されたヨードトリメチル白金(IV)は、生態学的及び経済学的な観点から満足のいくものとして評価されるべきである。その非常に高い純度の故に、そのようにして得られた又は得ることができるヨードトリメチル白金(IV)は、白金層又は白金含有層を堆積させるのに役立つ高純度白金(IV)前駆体化合物を製造するための反応物として、プレ触媒及び触媒として、使用するのに特に好適である。
【0118】
特許請求の範囲及び説明からもたらされる、例えば、構造上の詳細、空間的配置、及び方法工程からもたらされるあらゆる特徴及び利点は、単独で又は様々な組み合わせのいずれかで、本発明と関連があり得る。