(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】硫酸系、アンモニア不含三価クロム装飾めっきプロセス
(51)【国際特許分類】
C25D 3/56 20060101AFI20230904BHJP
C25D 3/06 20060101ALI20230904BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20230904BHJP
【FI】
C25D3/56 C
C25D3/06
C25D7/00 P
(21)【出願番号】P 2022521206
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(86)【国際出願番号】 EP2020080584
(87)【国際公開番号】W WO2021084103
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-04-07
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522140231
【氏名又は名称】コヴェンティア ソチエタ ペル アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ダル ツィリオ、ディエゴ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン、アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ダルビン、サンドリーヌ
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/117178(WO,A1)
【文献】特表2019-529715(JP,A)
【文献】米国特許第05196109(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロム又はクロム合金層を堆積させるための電気めっき浴であって、
a)少なくとも1つの三価クロムイオン源と、
b)少なくとも1つの硫酸イオン源と、
c)錯化剤として少なくとも1つの有機酸と、
d)サッカリンナトリウムと、
e)少なくとも1つのポリアルキレングリコールと、
f)ビニルスルホン酸ナトリウムと、
g)
6未満の価数を有する硫黄を含むオキシ酸アニオンの群から選択される少なくとも1つの無機硫黄化合物と、
h)少なくとも1つのpH緩衝液と、任意選択的に、
i)少なくとも1つの第二鉄イオン源又は第一鉄イオン源と、を含む、電気めっき浴。
【請求項2】
前記第二鉄又は第一鉄イオンの濃度が
、20~200mg/
Lであることを特徴とする、請求項1に記載の浴。
【請求項3】
6未満の価数を有する硫黄を含むオキシ酸アニオンの群から選択される前記少なくとも1つの無機硫黄化合物が
、
・二硫酸塩又はメタ重亜硫酸塩、
・亜ジチオン酸塩又はハイドロサルファイト、
・チオ硫酸塩、
・テトラチオン酸塩、
・亜硫酸塩、及び
・これらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の浴。
【請求項4】
前記少なくとも1つの無機硫黄化合物の濃度が、5~500mg/
Lであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の浴。
【請求項5】
前記少なくとも1つのポリアルキレングリコールが、2000g/mol未満の分子量を
有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の浴。
【請求項6】
前記少なくとも1つのポリアルキレングリコールが、
・ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、
・エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、
・ポリエチレングリコール、及び
・これらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の浴。
【請求項7】
前記少なくとも1つのポリアルキレングリコールの濃度が、1~15g/
Lであることを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項に記載の浴。
【請求項8】
前記少なくとも1つの有機酸が、
i)ジカルボン酸からなる群から選択され
、かつ/又は
ii)5~40g/
Lの濃度で含まれることを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載の浴。
【請求項9】
前記少なくとも1つの有機酸が、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の浴。
【請求項10】
前記少なくとも1つのpH緩衝液が、ホウ酸からなる群から選択され、前記浴のpHが
、1~
5であることを特徴とする、請求項1から
9のいずれか一項に記載の浴。
【請求項11】
前記浴が、塩化物イオン、アンモニウムイオン、アミノカルボン酸イオン、六価クロムイオン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのイオンを実質的に含まな
いことを特徴とする、請求項1から
10のいずれか一項に記載の浴。
【請求項12】
基材を電気めっきすることによって電気めっきされた製品を調製するための方法であって、
A)電気めっき浴を提供する工程であって、
a)少なくとも1つの三価クロムイオン源と、
b)少なくとも1つの硫酸イオン源と、
c)錯化剤として少なくとも1つの有機酸と、
d)サッカリンナトリウムと、
e)少なくとも1つのポリアルキレングリコールと、
f)ビニルスルホン酸ナトリウムと、
g)
6未満の価数を有する硫黄を含むオキシ酸アニオンの群から選択される少なくとも1つの無機硫黄化合物と、
h)少なくとも1つのpH緩衝液と、任意選択的に、
i)少なくとも1つの第二鉄又は第一鉄イオン源と、を含む、提供する工程と、
B)基材を前記電気めっき浴に浸漬する工程と、
C)前記基材上に前記クロム又はクロム合金層を堆積させるために、アノードと、カソードとしての前記基材との間に電流を印加する工程と、を含む、方法。
【請求項13】
前記カソードの電流密度が、3~14A/dm
2
の範囲内であり、かつ/又は前記アノードの電流密度が、4~12A/dm
2
の範囲内であることを特徴とする、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つのアノードが、混合金属酸化
物からなることを特徴とする、請求項
12又は
13に記載の方法。
【請求項15】
前記混合金属酸化物が、白金、ルテニウム、イリジウム及びタンタルのうちの少なくとも2つの混合金属酸化物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記工程
C)中の堆積速度が、0.01~0.5μm/
分の範囲内であることを特徴とする、請求項
12から
15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程C)が、35~60
℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項
12から
16のいずれか一項に記載の方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロム又はクロム合金層を電気めっきするための電気めっき浴であって、三価クロムイオン、有機カルボン酸、硫酸イオン、ナトリウム導電性イオン、並びに無機硫黄化合物及びホウ酸の形態の添加剤を含む、電気めっき浴、並びにかかる電気めっき浴を使用するプロセスに言及する。
【背景技術】
【0002】
三価クロム電解質からのクロム堆積物は、基材がより長く、かつ通常生存し得るより厳しい条件下で作用することを可能にする、それらの固有の特性のために業界で広く使用されている。
【0003】
最近数十年にわたって、三価クロムによる堆積方法が、健康及び環境目的のためより一般的である。実際、六価クロム物質は、それらの毒性の性質のために規制圧力下にある。それらは、CMRとして分類され、欧州連合は、その使用をREACH規則下で特定の承認のため提出することを決定した。
【0004】
装飾クロムめっきは、審美的に心地良くかつ耐久性があるように設計される。厚さは、0.05~0.5μmの範囲であるが、それらは多くの場合、0.13~0.25μmである。装飾クロムめっきもまた、非常に耐食性であり、多くの場合、車の部品、ツール、及び台所用器具に使用される。
【0005】
しかし、六価クロム堆積物は、三価クロム堆積物と区別される青色-白色の外観を特徴とした。この色は、依然として六価クロム製品に使用されるものとして顧客によってよく認識される。
【0006】
第JP2009035806号は、三価クロムめっき浴及びクロムめっきを生成するための方法を記載する。このめっき浴は、(1)水溶液脂肪族カルボン酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種類の成分、並びに三価クロム化合物を含有する水溶液を加熱下で維持することによって取得された三価クロムの錯体溶液、(2)導電性塩、(3)pHのための緩衝液、及び(4)SO2基を有する基から選択される少なくとも1種類の硫黄含有化合物を含有する。かかるめっき溶液の欠点は、無機化合物の代わりに硫黄含有有機化合物を使用し、めっき浴中に鉄を使用しないことである。
【0007】
第JP2010189673号は、従来技術と比較してより良好な耐食性を有する三価クロムめっきフィルムを形成することができる新規の三価クロムめっき浴を記載する。三価クロムめっき浴は、水溶性三価クロム化合物、導電性塩、pH緩衝液、硫黄含有化合物、及びアミノカルボン酸を含有する水溶液を含む。かかるめっき浴の欠点は、めっき浴中のナトリウムイオン及び鉄イオンの欠如であり、このことで所望の色を得ることがない。
【0008】
国際公開第2019/117178号は、三価クロム化合物と、錯化剤と、導電性塩として硫酸カリウム及び硫酸アンモニウムと、pH緩衝液と、硫黄含有有機化合物と、を含有する三価クロムめっき溶液を記載する。三価クロムめっき溶液は、実用的であり、高いめっき堆積速度を有する。かかるめっき溶液の欠点は、無機化合物の代わりに硫黄含有有機化合物を使用し、めっき浴中に鉄を使用しないことである。
【0009】
欧州特許第2411567号は、(1)水溶性三価クロム塩と、(2)三価クロムイオンの少なくとも1つの錯体と、(3)2.8~4.2のpHを作製するのに十分な水素イオン源と、(4)pH緩衝化合物と、(5)硫黄含有有機化合物と、を含む、クロム電気めっき溶液を含む、クロム電気めっき溶液を記載する。クロム電気めっき溶液は、装飾物品上に接着性金属コーティングを生成するための方法において使用可能であり、かかるコーティングは、塩化カルシウムを含有する環境における腐食に対する強化された耐性を有する。かかる溶液の欠点は、無機化合物の代わりに硫黄含有有機化合物を使用し、溶液中に鉄イオンが存在しないことである。
【0010】
これらの先行技術文書のいずれも、良好な耐食性及び平均5分で0.4μmの高い堆積速度を有する、三価クロム装飾用途に関して、六価クロム堆積物からのものに近いL、a、b値を取得することに焦点を当てていない。
【発明の概要】
【0011】
したがって、この先行技術から開始するとき、本発明の目的は、六価クロム堆積物からの値に近いL、a、b値(80~85、-0.8~0、-0.5~1.0)を伴い、(Volkswagen試験PV1073Aを合格することができる)良好な耐食性を有する、良好な堆積速度で取得されたクロムめっきされた製品を提供することであった。
【0012】
この問題は、請求項1に記載の特徴を有する電気めっき浴、請求項10に記載の特徴を有する電気めっき浴を使用することによる電気めっきされた製品を調製するための方法によって解決される。更なる従属請求項は、好ましい実施形態を記載する。
【0013】
本発明によれば、クロム又はクロム合金層を堆積させるための電気めっき浴が提供され、
a)少なくとも1つの三価クロムイオン源と、
b)少なくとも1つの硫酸イオン源と、
c)錯化剤として少なくとも1つの有機酸と、
d)サッカリンナトリウムと、
e)少なくとも1つのポリアルキレングリコールと、
f)ビニルスルホン酸ナトリウムと、
g)少なくとも1つの無機硫黄化合物と、
h)少なくとも1つのpH緩衝液と、任意選択的に、
i)少なくとも1つの第二鉄イオン又は第一鉄イオン源と、を含む。
【0014】
驚くべきことに、硫酸系三価クロムイオン浴は、より高い炭素割合でより暗いめっきを得る塩化物系浴と反対に、より白い色のめっきを取得することを可能にすることが見出された。導電性イオンでは、めっきの白色度を増加させるために、ナトリウムの選択が好ましい。第二鉄又は第一鉄イオンの使用はまた、PV1073A試験に合格する耐食性を増加させる。第二鉄、ナトリウム、及び硫酸イオンの組み合わせは、六価のクロム堆積物からのものに近い青色及び白色を取得することを可能にする。
【0015】
6未満の価数を有する硫黄を含有するオキシ酸アニオンなどの無機硫黄の使用が好ましいこともまた見出された。実際、大体の場合、有機硫黄化合物の分解生成物が、クロマビリティ問題を引き起こす。硫黄を含有するオキシ酸アニオンの使用の利点は、それらが分解生成物として硫酸塩を生成することであるため、それがすでに硫酸イオンを含有するため、めっき浴に影響を与えない。浴中で6未満の価数を有する硫黄を含有するオキシ酸アニオンを有することの更なる利点は、浴を含有可能である堆積物の厚さが、6未満の価数を有する硫黄を含有するオキシ酸アニオンを含有しない浴よりも大きいことである。
【0016】
少なくとも1つの有機酸は、ジカルボン酸の群から選択され、好ましくはリンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。特に好ましいのは、リンゴ酸を有機酸として使用することである。
【0017】
少なくとも1つの有機酸の濃度は、5~40g/L、好ましくは10~30g/L、より好ましくは15~25g/Lであることが好ましい。
【0018】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの三価クロムイオンの濃度は、5~25g/L、好ましくは8~20g/Lである。
【0019】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの硫酸イオン源からの硫酸イオンの濃度は、150~300g/L、好ましくは180~280g/L、より好ましくは200~250g/Lである。
【0020】
好ましい実施形態では、三価クロムイオン源は、酸性又は塩基性形態の硫酸クロム(III)である。
【0021】
少なくとも1つの無機硫黄化合物は、6未満の価数を有する硫黄を含むオキシ酸アニオンの群から選択され、好ましくは、
・二硫酸塩又はメタ重亜硫酸塩、
・亜ジチオン酸塩又はハイドロサルファイト、
・チオ硫酸塩、
・テトラチオン酸塩、
・亜硫酸塩、及び
・これらの混合物からなる群から選択される。
【0022】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの無機硫黄化合物の濃度は、5~500mg/L、好ましくは10~200mg/Lである。
【0023】
電気めっき浴は、少なくとも1つの第二鉄又は第一鉄イオン源を含むことができる。少なくとも1つの第二鉄又は第一鉄イオン源からの第二鉄又は第一鉄イオンの濃度は、好ましくは20~200mg/L、より好ましくは30~150mg/L、更により好ましくは40~100mg/Lである。
【0024】
少なくとも1つのpH緩衝液の濃度は、50~120g/L、好ましくは60~110g/L、より好ましくは80~100g/Lの範囲内であることが好ましい。
【0025】
pH緩衝液として、ホウ酸基、クエン酸、コハク酸、乳酸、酒石酸、及びこれらの混合物のうちの少なくとも1つを使用することが好ましい。特に好ましいのは、ホウ酸をpH緩衝液として使用することである。浴のpHは、好ましくは1~5、より好ましくは2~4、更により好ましくは3.1~3.9の範囲内である。
【0026】
ビニルスルホン酸ナトリウムの濃度は、好ましくは0.1~5g/L、より好ましくは0.2~3g/Lである。
【0027】
浴は、塩化物イオン、アンモニウムイオン、アミノカルボン酸イオン、及び六価クロムイオンのうちの少なくとも1つを(実質的に)含まないことが好ましい。特に、これらのイオンのうちのいくつか又は全全てが存在しないことが好ましい。
【0028】
好ましい実施形態によれば、サッカリンナトリウムの濃度は、0.1~10g/L、より好ましくは1~5g/Lである。
【0029】
特定の実施形態では、少なくとも1つのポリアルキレングリコールは、2000g/mol未満の分子量を有し、かつ、好ましくは、
・ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、
・エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、
・ポリエチレングリコール、及び
・これらの混合物からなる群から選択される。
【0030】
浴中で、少なくとも1つのポリアルキレングリコール、特に2000g/mol未満の分子量を有する少なくとも1つのポリアルキレングリコールを有することの利点は、浴を用いて取得可能な堆積物の厚さが、上記のポリアルキレングリコールを含有しない浴よりも大きいことである。
【0031】
好ましい実施形態では、少なくとも1つのポリアルキレングリコールの濃度は、1~15g/L、好ましくは5~10g/Lである。
【0032】
クロム又はクロム合金層を堆積させるための電気めっき浴の好ましい実施形態は、
a)少なくとも1つのクロムイオン源からの5~25g/Lの三価クロムイオンと、
b)少なくとも1つの硫酸イオン源からの150~300g/Lの硫酸イオンと、
c)錯化剤としての5~40g/Lの少なくとも1つの有機酸と、
d)0.1~10g/Lのサッカリンナトリウムと、
e)1~15g/Lの少なくとも1つのポリアルキレングリコールと、
f)0.1~5g/Lのビニルスルホン酸ナトリウムと、
g)5~500mg/Lの少なくとも1つの無機硫黄化合物と、
h)50~120g/Lの少なくとも1つのpH緩衝液と、任意選択的に、
i)少なくとも1つの第二鉄又は第一鉄イオン源からの20~200mg/Lの第二鉄又は第一鉄イオンと、を含む。
【0033】
本発明によれば、基材を電気めっきすることによって電気めっきされた製品を調製するための方法はまた、
A)電気めっき浴を提供する工程であって、
a)少なくとも1つの三価クロムイオン源と、
b)少なくとも1つの硫酸イオン源と、
c)錯化剤として少なくとも1つの有機酸と、
d)サッカリンナトリウムと、
e)少なくとも1つのポリアルキレングリコールと、
f)ビニルスルホン酸ナトリウムと、
g)少なくとも1つの無機硫黄化合物と、
h)少なくとも1つのpH緩衝液と、任意選択的に、
i)少なくとも1つの第二鉄又は第一鉄イオン源と、を含む、提供する工程と、
B)基材を電気めっき浴に浸漬する工程と、
C)基材上にクロム又はクロム合金層を堆積させるために、アノードと、カソードとしての基材との間に電流を印加する工程と、を含んで提供される。
【0034】
好ましい実施形態では、カソードの電流密度は、3~14A/dm2、好ましくは5~10の範囲内であり、かつ/又はアノードの電流密度は、4~12A/dm2、好ましくは5~10A/dm2の範囲内である。
【0035】
アノードは、混合金属酸化物、好ましくは白金、ルテニウム、イリジウム及びタンタルのうちの少なくとも2つの混合金属酸化物、より好ましくはイリジウム及びタンタルの混合金属酸化物からなる群から選択される混合金属酸化物からなることが好ましい。
【0036】
好ましい実施形態では、工程C)中の堆積速度は、0.01~0.5μm/分、好ましくは0.02~0.3μm/分、より好ましくは0.03~0.2μm/分である。
【0037】
工程C)は、35~60℃、好ましくは40~58℃、より好ましくは45~55℃の温度で実施されることが好ましい。
【0038】
本発明によれば、この方法から取得可能な合金は、炭素、硫黄、酸素、クロム、及び任意選択的に、鉄を含むか、又はこれらからなる。合金は、80~86、-0.8~0、-1.5~1.0のL、a、b値によって測定される色を有する。好ましい実施形態では、L、a、b値は、80~86、-0.8~0、-0.8~1である。より好ましい実施形態では、L、a、b値は、83~85、-0.7~-0.4、-0.5~0.2である。
【0039】
合金中の炭素の割合は、好ましくは1~5原子%(at%)、より好ましくは2~4at%である。合金は、好ましくは0.5~4at%、より好ましくは1~3at%の硫黄を含む。合金は、好ましくは1~5at%、好ましくは2~4at%の酸素を含む。合金は、好ましくは0~12at%の鉄を含む。任意選択的に、合金中の鉄の割合は、3~12at%、好ましくは5~10at%である。合金は、好ましくは74~94.5at%、より好ましくは79~90at%のクロムを含む。合金の原子%(at%)は、発光分光法(optical emission spectroscopy、OES)によって判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
以下の図及び実施例を参照すると、本発明による主題は、本明細書に示される特定の実施形態に当該主題を制限することを望むことなく、より詳細に説明されることが意図される。
【0041】
【
図1】実施例に使用される3つの点(HCD、MCD、LCD)を有するハルセルパネル上のクロム被覆率を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0042】
全ての実施例を、MMOアノード(混合金属酸化物Ir/Taによるチタンメッシュカバー)を使用して5分間55℃で5Aを印加する真鍮パネルニッケルめっきを使用して、ハルセル(250mL)において実行した。
【0043】
パネルを評価した:3点において、X線方法EN ISO3497を使用するクロムの厚さは、左縁から1cmをHCD(高電流密度)として定義し、左端から5cmをMCD(中電流密度)として定義し、左縁から7cmをLCD(低電流密度)として定義する。MCDとして定義される点における色を、CIELAB(L、a、b)として色を定義する比色計KONICA MINOLTA CM2600によって測定した。
【0044】
同じパネルを、左端から右への堆積物の最大被覆率までのmmを測定するクロム堆積物被覆率を評価した。更に、クロム堆積物を、塩化カルシウムへのクロム堆積物の腐食性能を評価するために使用される自動車規格であるPV1073Aに対して試験した。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
実施例の結果は、以下の表に示される。表は、各成分が、PV1073Aの腐食試験に対する厚さ、被覆率、色、及び性能に関してどのように異なる効果を有するかを示す。
【0056】
特に、堆積物が六価クロム電解質から実行された参照例n°7は、非常に負の値のa及びbに起因して非常に青みがかった色を示すが、PV1073A試験に合格しなかった。
【0057】
本発明は、請求項1に記載の特徴を有し、請求項10に記載の特徴を有する電気めっき浴を使用することにより電気めっきされた製品を調製するため方法で、合金組成物が、5~10at%のFe、1~3at%のS、2~4at%のC、2~4at%のO、残りのat%のCr(最大100at%)を含有し、参照例に相当する色及び良好な堆積速度に達することを特徴とする実施例n°6で実行された合金を表す。
【0058】
実施例n°5bでは、浴は、メチルポリエチレングリコール(Mw500)を含有しなかった。浴中で上記化合物を省略することの欠点は、HCDで取得された厚さが本発明による浴(浴n°6)よりもはるかに小さいことである。その上、上記化合物が存在しない中で、オキシ酸硫黄アニオン(ジチオナイトナトリウムのアニオン)(単独)は、色、被覆率、及びPV 1073Aに関するコンプライアンスを増加させることができない。
【0059】
実施例n°5cでは、浴は、オキシ酸硫黄アニオンを含有しなかった、すなわち、本場合においてジチオナイトナトリウムを含有しなかった。浴中で上記化合物を省略することの欠点は、HCD、MCD、及びLCDにおける厚さが、本発明による浴(浴n°6)よりもはるかに小さいことである。色、被覆率、及びPV 1073Aは、相補的である。
【0060】
実施例n°6bは、n°6と同様の結果を示すが、より良好な色性能を有する。特に、b値は、参照CrVIと非常に近い値に達し、効率は、ほんのわずかな、すなわち、顕著に低減されない。
【0061】
【表11】
*合金組成に関して別の指示がなければ、100%に達するまでの残りの%はCrで表される。