(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】発電装置及び揚水発電装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 9/04 20060101AFI20230904BHJP
H02P 101/10 20150101ALN20230904BHJP
【FI】
H02P9/04 A
H02P101:10
(21)【出願番号】P 2022547345
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2020034601
(87)【国際公開番号】W WO2022054260
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】511238158
【氏名又は名称】日立三菱水力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正博
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/109921(WO,A1)
【文献】特開2015-171157(JP,A)
【文献】特開2012-16242(JP,A)
【文献】米国特許第4344027(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/04
H02P 101/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力系統に同期接続される発電機又は発電電動機のロータに直結され、発電運転にあってはこれを駆動し揚水運転にあってはこれに駆動される原動機を備えた発電装置又は揚水発電装置を制御対象装置とし、発電運転では前記商用電力系統の周波数に対応した回転速度と前記ロータの回転速度との偏差に基づき比例制御要素、積分制御要素及び微分制御要素を備えた回転速度制御装置により算出された案内羽根開度指令を前記原動機に与えて速度制御を行う発電装置及び揚水発電装置の制御方法において、
前記積分制御要素に設けられた積分制御関数の出力暴走防止回路が備える、負荷制限装置の出力信号に対応して定められた第1の上限値制限関数に対して、前記商用電力系統周波数に対応した回転速度と前記ロータ回転速度との差により1以下で一定値までの範囲で変化する回転速度偏差に対応して定められた第2の上限値制限関数を乗じて、前記ロータ回転速度が前記商用電力系統周波数に対応した回転速度を上廻った場合に積分制御関数内蓄積分の出力による案内羽根開度指令の出力を制限するようにし、更に前記積分制御関数と前記暴走防止回路出力値との差を前記積分制御関数の入力にフィードバックし、回転速度偏差から差引し前記積分制御関数内蓄積分を強制的に減少させる、ことを特徴とする発電装置及び揚水発電装置の制御方法。
【請求項2】
前記負荷制限装置の出力信号に対応して定められた下限値制限関数に対して、発電運転時の静落差に対して設定された無負荷開度に1未満で一定値までの範囲で定められた制限値を乗じた値を前記積分制御関数内蓄積分の出力の下限値とするようにして、起動時又は負荷遮断発生時の遮断器が解列された状態での無負荷運転時において案内羽根開度の過閉を制限し、更に前記積分制御関数と前記暴走防止回路の出力下限値との差を前記積分制御関数の入力にフィードバックし、回転速度偏差から差引し前記積分制御関数内蓄積分を強制的に増大させる、ことを特徴とする請求項1に記載の発電装置及び揚水発電装置の制御方法。
【請求項3】
前記負荷制限装置の出力信号増大開始を入口弁開度中開とし、前記負荷制限装置の並列遮断器並列前の前記案内羽根開度の起動開度までの出力信号増大速度を並列後負荷上限開度までの出力信号増大速度より遅めに設定可能とし、定格回転速度到達後での回転速度変動を小さめとし入口弁全開到達後早めの遮断器並列を可能とするよう調整する、ことを特徴とする請求項2に記載の発電装置及び揚水発電装置の制御方法。
【請求項4】
前記制御対象装置がペルトン水車で駆動される前記発電装置の場合、
前記商用電力系統周波数に対応した回転速度と前記ロータ回転速度との偏差に基づき前記積分制御要素出力に対して前記商用電力系統周波数に対応した回転速度と前記ロータ回転速度との偏差により1以下で一定値までの範囲で変化する回転速度偏差に対応して定められた上限値制限関数を乗じて、前記ロータ回転速度が前記商用電力系統周波数に対応した回転速度を上廻った場合に前記積分制御関数内蓄積分の出力によるデフレクタ開度指令の出力を制限する、ことを特徴とする請求項1に記載の発電装置及び揚水発電装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置及び揚水発電装置の制御方法に関するものである。特に、比例制御要素、積分制御要素及び微分制御要素を備え、かつ積分制御要素が負荷出力に対応した案内羽根開度指令値を内部に保持する回転速度制御装置が、発電運転において商用電力系統の周波数に対応した回転速度とロータ回転速度との差に基づき案内羽根開度指令を算出し、発電装置にあっては水車に案内羽根開度指令を与え、揚水発電装置にあってはポンプ水車側に案内羽根開度指令を与えて速度制御を行う発電装置及び揚水発電装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電装置及び揚水発電装置の発電運転については、商用電力系統の周波数に対応した回転速度とロータ回転速度との差を定格回転速度で除した値を回転速度制御装置に入力し、回転速度制御装置に設けられた比例制御要素、積分制御要素及び微分制御要素の各制御要素の出力の和により、案内羽根開度を制御し回転速度及び負荷出力を制御している。尚、負荷出力に対応した案内羽根開度指令値は、積分制御要素内に保持される。負荷遮断時においては、遮断器が解列され発電機出力が無くなる為ロータ回転速度が急上昇し、回転速度制御装置への入力が負となり案内羽根開度を急速に閉鎖するように指令値が出力され、案内羽根操作機構に設定された案内羽根閉鎖レートで案内羽根開度が減少することとなる。積分制御要素内に保持された案内羽根開度指令値も徐々に削減されることになる。
【0003】
しかしながら、長水路に接続された発電装置及び揚水発電装置においては水路の水圧変動の過大化を防ぐ為に回転速度制御装置内に設けられた各制御要素のゲインを小さめの設定とすることが必要である。また、電力系統のブラックアウト対応での逓昇加圧運転を行なう発電装置及び揚水発電装置においてはブラックアウト後の系統への電力供給変化を緩やかでかつ滑らかなものとする為に回転速度制御装置内に設けられた各制御要素のゲインを小さめの設定とすることが必要である。負荷遮断発生時の遮断器が解列された状態においては特に積分制御要素のゲイン設定が小さくなること、つまり積分制御要素の設定時定数が長くなることにより、積分制御要素内に保持された案内羽根開度指令値の回転速度上昇による減少が遅くなる為、案内羽根開度が小さくなり回転速度が最大値を示した後減速し始めて定格回転速度付近に近づいて比例制御要素からの案内羽根開度の閉指令が小さくなってゼロに近づくと、積分制御要素内に保持された案内羽根開度指令値による回転速度制御装置からの案内羽根開度指令値が案内羽根開度を上廻る事象が発生し、案内羽根開度の過大な再増大現象が発生することとなる。
【0004】
この為、長水路に接続された発電装置及び揚水発電装置、及び、電力系統のブラックアウト対応の為の逓昇加圧運転を行なう発電装置及び揚水発電装置の回転速度制御装置内各制御要素の制御ゲインの小さめの設定が不可となり、特に積分制御要素のゲイン設定を負荷遮断発生時の案内羽根閉鎖途上において案内羽根開度が再増大する現象の発生を防止可能なレベルまで増大させることが必要となる。
【0005】
この負荷遮断発生時の遮断器が解列された状態において、案内羽根開度が小さくなり回転速度が最大値を示した後減速し始めて定格回転速度付近に近づいて案内羽根開度の再増大する現象が発生することを防止可能な方法については、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の可変速揚水発電装置においては、外部から与えられる発電出力指令と水位検出信号を水車特性関数発生器に入力して最適回転速度指令と最適案内羽根開度を出力し、最適案内羽根開度指令値を回転速度制御装置の出力に加算する。しかし、発電出力指令に対応した案内羽根開度指令値を回転速度制御装置内に保持しないので上記の現象が発生することはない。すなわち、特許文献1に記載の可変速揚水発電装置は、本発明が想定する課題を解決するものではない。
【0006】
図7に、従来の定速ベースの発電装置又は揚水発電装置の発電運転に関する構成例を示す。1は発電機又は発電電動機で、そのロータに直結された原動機2によって商用電力系統の周波数に対応した回転速度に回転駆動され、遮断器3を介して交流電力が商用電力系統に出力される。原動機2としては、発電装置が制御対象装置の場合は水車が該当し、揚水発電装置が制御対象装置の場合はポンプ水車が該当する。
【0007】
4はロータの回転速度検出器で、回転速度検出器出力信号5として0.0Noから1.15Noの範囲の信号を出力する。6は商用電力系統の周波数に対応した回転速度信号(65F出力信号、目標回転速度信号)である。7は減算器で、商用電力系統の周波数に対応した回転速度信号6から回転速度検出器出力信号5を減算し出力する。
【0008】
8はゲイン乗算器で、減算器7の出力信号に定格回転速度Noの逆数1/Noを乗算し出力する。10は減算器で、ゲイン乗算器8の出力信号から後述のゲイン乗算器29の出力信号を減算し出力する。12は回転速度制御装置で、後述の比例制御要素、積分制御要素及び微分制御要素により構成されている。回転速度制御装置12には、減算器10の出力信号が入力される。13は比例制御関数で、回転速度制御装置12の比例制御要素である。比例制御関数13は、減算器10の出力信号が入力され、ゲインKPNを乗算して出力する。
【0009】
回転速度制御装置12の積分制御要素は、減算器14から減算器17までで構成される。減算器14は、減算器10の出力信号から後述の減算器17の出力信号を減算し出力する。15は積分制御関数で、減算器14の出力信号が入力され、ゲインK
INを乗算し積分した結果を出力する。16は従来の回転速度制御装置の積分制御関数の出力暴走防止回路である。出力暴走防止回路16は、積分制御関数15の出力信号が入力され、後述の
図8で示す処理結果を出力する。17は減算器で、積分制御関数15の出力信号から出力暴走防止回路16の出力信号を減算し出力し、減算器14に入力する。
【0010】
積分制御関数15内には、発電装置又は揚水発電装置の発電運転において、その発電出力に相当する案内羽根開度指令が保持され、回転速度又は出力指令の過渡的変化時においては減算器10の出力信号が積分され保持値が順次更新されることとなる。
【0011】
回転速度制御装置12の微分制御要素は、不完全微分制御関数18で構成される。不完全微分制御関数18は、減算器10の出力信号が入力されゲインKDNを乗算し、時定数0.1秒で不完全微分した結果を出力する。
【0012】
19は加算器で、前記比例制御要素、積分制御要素及び微分制御要素の各出力信号を加算し、回転速度制御装置12の出力信号として出力する。
【0013】
20は最小値選択関数で、回転速度制御装置12の出力信号と後述の
図9に詳細を示す負荷制限装置21の出力信号とを比較し最小値を選択して出力する。22は減算器で、最小値選択関数20の出力信号から後述の積分器25の出力信号を減算し出力する。23は増幅器で、減算器22の出力信号を増幅し出力する。24はアクチュエータで、増幅器23の出力信号と後述の積分器25の出力信号との差分により、案内羽根開度操作差分信号を出力する。
【0014】
25は積分器で、アクチュエータ24が出力する案内羽根開度操作差分信号が入力されこれを積分し、p.u.ベースの案内羽根開度信号を出力する。26は案内羽根操作機構で、積分器25が出力する案内羽根開度信号が入力され、水車又はポンプ水車である原動機2に設けられた案内羽根を操作し開度調整を行なうことで、電動機又は発電電動機1の出力27を調整する。
【0015】
28は減算器で、積分器25が出力する案内羽根開度信号から電動機又は発電電動機1の出力27を調整する出力指令65Pを減算し出力する。29はゲイン乗算器で、減算器28の出力信号に速度垂下率σをゲインとして乗算した値を減算器10に出力する。
【0016】
図8は、
図7に示す出力暴走防止回路16、すなわち、
図7に記載の従来の回転速度制御装置12中の積分制御関数15の出力暴走防止回路16の構成図である。
【0017】
30は、出力暴走防止回路16の上限値制限関数である。上限値制限関数30は、後述の負荷制限装置21の出力信号が入力され、負荷制限装置21の出力値に0.01p.u.を加え最大値を1.0p.u.とした値を出力する。31は最小値選択関数である。最小値選択関数31は、出力暴走防止回路16の上限値制限関数30の出力信号と積分制御関数15の出力信号とを比較し最小値を選択して出力する。
【0018】
32は、出力暴走防止回路16の下限値制限関数である。下限値制限関数32は、後述の負荷制限装置21の出力信号が入力され、一定値-0.01p.u.を出力する。33は最大値選択関数である。最大値選択関数33は、出力暴走防止回路16の下限値制限関数32の出力信号と積分制御関数15の出力信号とを比較し最大値を選択して出力する。
【0019】
34は、最大値選択関数である。最大値選択関数34は、最小値選択関数31の出力信号と最大値選択関数33の出力信号とを比較し最大値を選択して、出力暴走防止回路16の出力信号として出力する。
【0020】
図9は、
図7に示す負荷制限装置21の入口弁全開又は中開から負荷制限装置21の出力を増大させる例での構成図である。
【0021】
40は、無負荷開度及び起動開度設定関数である。無負荷開度及び起動開度設定関数40は、静落差が入力され、静落差に応じた無負荷開度信号と無負荷開度に一定値を加えた起動開度信号とを出力する。
【0022】
43は、負荷上限開度設定関数である。負荷上限開度設定関数43は、静落差が入力され、静落差に応じた負荷上限開度信号を出力する。
【0023】
44は、信号切換器である。信号切換器44は、起動開度設定関数40の出力信号と、負荷上限開度設定関数43の出力信号とが入力され、
図7に示す遮断器3から出力される並列信号がOFFのとき起動開度設定関数40の出力信号を選択出力し、遮断器3から出力される並列信号がONのとき負荷上限開度設定関数43の出力信号を選択出力する。
【0024】
35は、論理積である。論理積35は、発電装置又は揚水発電装置の起動指令ON、OFF信号と入口弁全開又は中開のON、OFF信号とが入力され、論理積して出力する。41は、信号切換器である。信号切換器41は、定数0.0と定数1.0とが入力され、論理積35の出力信号がOFFのとき定数0.0を選択出力し、論理積35の出力信号がONのとき定数1.0を選択出力する。36は、減算器である。減算器36は、信号切換器41の出力値から後述のフィードバック信号発生関数39の出力値を減算し出力する。
【0025】
37は積分器である。積分器37は、減算器36の出力信号が入力され、負荷制限装置21の出力信号の0%から100%間の変化時間Tの逆数(1/T)をゲインとして乗算して積分した結果を負荷制限装置21の出力信号として出力する。
【0026】
38は、減算器である。減算器38は、積分器37の出力値から信号切換器44の出力値を減算し出力する。39は、フィードバック信号発生関数である。フィードバック信号発生関数39は、減算器38の出力信号が入力され、入力信号が0.0未満では0.0を出力し、入力信号が0.0以上では入力信号に1.0を加えた値を出力し、減算器36へ入力する。
【0027】
図10は、従来の揚水発電装置での負荷遮断実測チャート例である。縦軸はGV(Guide Vane)サーボストローク比率および回転速度を示し、横軸は負荷遮断発生時からの経過時間を示す。本負荷遮断実測チャート例では、回転速度制御装置12内の比例制御関数13、積分制御関数15及び不完全微分制御関数18の負荷時の各制御ゲインが低めの設定であり、特に積分制御関数15の制御ゲインが低めであった影響により、負荷遮断後の回転速度上昇によっても積分制御要素内に保持された案内羽根開度指令値の減少量が少ない。この為、
図10中の負荷遮断発生時からの経過時間が約11秒以降の回転速度(N/N
o)が110%付近以下到達により、制御ゲインが小さい影響も含め比例制御要素による案内羽根開度閉指令の減少に伴い、回転速度制御装置12からの案内羽根開度指令値が初期値Y
iに対するGVサーボストローク比率(Y/Y
i)を上廻る。この結果、GVサーボストローク比率が再度大きくなり回転速度(N/N
o)も再度大きくなる現象となっている。
【0028】
図11は、従来の揚水発電装置での負荷遮断解析例である。
図11は
図10に示した従来の揚水発電装置での負荷遮断実測チャート例を模擬し解析した結果を示すものである。縦軸はGVサーボストローク比率、回転速度制御装置の出力信号値および回転速度を示す。横軸は負荷遮断発生時からの経過時間を示す。
図11では、負荷遮断発生時からの経過時間が約10秒以降の回転速度(N/N
o)が110%付近以下到達により、制御ゲインが小さい影響も含め比例制御要素による案内羽根開度閉指令の減少に伴い、回転速度制御装置12からの出力信号が負荷遮断発生時からの経過時間10秒時点のGVサーボストローク比率(Y/Y
i)を上廻る。この結果、
図10に示された従来の揚水発電装置での負荷遮断実測チャート例と同様にGVサーボストローク比率が再度大きくなり回転速度(N/N
o)も再度大きくなる現象がほぼ模擬されている。
【0029】
この様に構成された発電装置又は揚水発電装置に適用された回転速度制御装置12においては、回転速度制御装置12内の特に積分制御関数15の制御ゲインを大きめに設定し負荷遮断発生後の最高回転速度到達後の回転速度(N/No)が110%付近以下到達時での積分制御関数15に保持された案内羽根開度指令値がその時点での案内羽根開度を大きく上回らない様にし、案内羽根開度が再度大きくなる現象を防止することが必要となる。しかしながら、回転速度制御装置12内の特に積分制御関数15の制御ゲインを大きめに設定することで、負荷変化時に対応した回転速度制御装置12の応答が当初予定より早くなり水圧変動減衰が遅くなること及び負荷変動が過大となることが問題である。
【0030】
図12は、
図11に示した従来の揚水発電装置での負荷遮断実測チャート例と同一例での上記
図7から
図9に示した構成例を適用した従来の揚水発電装置での入口弁全開起動での発電起動解析実施例である。縦軸はGVサーボストローク比率、入口弁開度、回転速度、回転速度変化率及び有効落差変化率を示す。横軸はバイパス弁開開始からの経過時間を示す。
【0031】
図12では、入口弁のバイパス弁全閉から全開までを5秒その後入口弁の下流シール開に5秒を要するものとし、入口弁弁体の全閉から全開までに50秒要するものと設定し、入口弁関係の全開までの全動作時間として60秒の設定としている。
【0032】
本例での入口弁全開起動での負荷制限装置21の出力増大開始は、入口弁全開であるのでバイパス弁開開始から60秒後とし、負荷制限装置21の出力信号の0%から100%間の変化時間を60秒としている。案内羽根開度が全閉から起動開度まで開く間での初期有効落差Heiからの有効落差変化率(He-Hei)/Heiは約6%低下し、回転速度が定格回転速度No到達のバイパス弁開開始後110秒経過以降では有効落差変化率は+2.6%から-2.0%の変化を示している。回転速度制御装置12による案内羽根開閉制御の影響もあり回転速度変化率(N-No)/Noは、最大約0.8%到達後-0.19%から0.19%の間で変動しており、回転速度変動が大きめのため自動同期装置での並列が遅めになると想定される。
【0033】
図13は、
図12と同一例での従来の揚水発電装置での入口弁中開起動での発電起動解析実施例である。
図13での入口弁のバイパス弁、入口弁の下流シール及び入口弁弁体全動作時間は、
図12と同一設定としている。
【0034】
図13では、入口弁中開での負荷制限装置21の出力増大開始は入口弁開度約33%とし、バイパス弁開開始から27秒後とし、負荷制限装置21の出力信号の0%から100%間の変化時間を60秒としている。案内羽根開度が全閉から起動開度まで開く間での初期有効落差Heiからの有効落差変化率(He-Hei)/Heiは入口弁開操作と並行動作の影響で大きめの約7.5%低下し、回転速度が定格回転速度N
o到達のバイパス弁開開始後100秒経過以降では有効落差変化率は+2.5%から-2.0%の変化を示しており、回転速度制御装置12による案内羽根開閉制御の影響もあり回転速度変化率(N-N
o)/N
oは、上記
図12に示す入口弁全開起動での発電起動解析実施例と同様又は大きめの最大0.8%到達後-0.19%から0.18%の間で変動しており、回転速度変動が大きめのため自動同期装置での並列を早めることは実施出来ていないと想定される。
【0035】
前述の様に構成された発電装置又は揚水発電装置に適用された制御装置において、発電装置又は揚水発電装置の発電起動時間の短縮として、従来の負荷制限装置21の出力増大開始を入口弁全開から入口弁中開とする方法が適用されている。しかし、上記
図12に示した入口弁全開からの水車起動に対し、
図13に示した入口弁中開からの水車起動では負荷制限装置21の出力増大を開始する入口弁中開開度以降では入口弁開口と案内羽根開口とが並行動作する為、前述の通り回転速度変化率(N-N
o)/N
oは、入口弁全開起動での発電起動解析実施例と同様又は大きめの値で変動しており自動同期装置での並列を早めることは実施出来ていないと判断され、入口弁全開から入口弁中開へ負荷制限装置21の出力増大開始を早めた時間程度の起動時間短縮に留まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
従来の発電装置及び揚水発電装置の発電運転については、比例制御要素、積分制御要素及び微分制御要素を有した回転速度制御装置に商用電力系統の周波数に対応した回転速度とロータ回転速度との差を定格回転速度で除した値を入力して、案内羽根開度を制御し回転速度及び負荷出力を制御しているが、負荷出力に対応した案内羽根開度指令値は積分制御要素内に保持される。この為、負荷遮断時においては、遮断器が解列され発電機出力が無くなる為ロータ回転速度が急上昇し、回転速度制御装置への入力が負となり案内羽根開度を急速に閉鎖するように指令値が出力され、案内羽根操作機構に設定された案内羽根閉鎖レートで案内羽根が閉鎖されることとなり、積分制御要素内に保持された案内羽根開度指令値も徐々に減少されることになる。
【0038】
しかしながら、長水路に接続された発電装置又は揚水発電装置、又は電力系統のブラックアウト対応での逓昇加圧運転を行なう発電装置又は揚水発電装置においては、水路の水圧変動の過大化を防ぐ、又は、ブラックアウト後の系統への電力供給変化を緩やかでかつ滑らかなものとする為、回転速度制御装置内の各制御要素のゲインを小さめの設定とすることが必要である。負荷遮断時においては特に積分制御要素のゲイン設定が小さくなること、つまり積分制御要素の設定時定数が長くなることにより、積分制御要素内に保持された案内羽根開度指令値の回転速度上昇による減少が遅くなる為、案内羽根開度が小さくなり回転速度が最大値を示した後減速し始めて定格回転速度付近に近づいて比例制御要素からの案内羽根開度閉指令が小さくなりゼロに近づくと積分制御要素内に保持された案内羽根開度指令値による回転速度制御装置からの案内羽根開度指令値が案内羽根開度を上廻る事象が発生し、案内羽根開度が再増大する現象が発生することとなる。
【0039】
更に、従来の発電装置及び揚水発電装置の負荷遮断において、案内羽根開度が無負荷開度近傍まで閉鎖された状況では、それまでの回転速度が定格回転速度を上廻った状態の継続により回転速度制御装置の積分制御要素内に保持された案内羽根開度指令値が無負荷開度に対して、場合によっては全閉となる様な過締込み状態となり、案内羽根開度は無負荷開度近傍、回転速度は定格回転速度近傍での大きめの振幅での揺動現象が続くことになる場合が多い。
【0040】
また、ペルトン水車で駆動される発電装置においては、回転速度偏差による比例制御要素、積分制御要素及び微分制御要素を有した回転速度制御装置によりデフレクタが開閉制御される。この回転速度制御装置は積分制御要素内にデフレクタ開度指令値を保持するものとなっている為、負荷遮断時において回転速度が最大値を示した後減速し始めて定格回転速度に近づいた状況で比例制御要素からのデフレクタ閉指令が小さくなりゼロに近づくと積分制御要素内に保持されたデフレクタ開度指令値による回転速度制御回路からのデフレクタ開度指令値がデフレクタ開度を上廻る事象が発生し、デフレクタ開度が再増大する現象が発生することとなる。
【課題を解決するための手段】
【0041】
本発明は、上記課題を解決するため、(1)商用電力系統に同期接続される発電機又は発電電動機のロータに直結され、発電運転にあってはこれを駆動し揚水運転にあってはこれに駆動される原動機を備えた発電装置又は揚水発電装置を制御対象装置とし、発電運転では商用電力系統の周波数に対応した回転速度とロータの回転速度との偏差に基づき比例制御要素、積分制御要素及び微分制御要素を備えた回転速度制御装置により算出された案内羽根開度指令を原動機に与えて速度制御を行う発電装置及び揚水発電装置の制御方法において、積分制御要素に設けられた積分制御関数の出力暴走防止回路が備える、負荷制限装置の出力信号に対応して定められた第1の上限値制限関数に対して、商用電力系統周波数に対応した回転速度とロータ回転速度との差により1以下で一定値までの範囲で変化する回転速度偏差に対応して定められた第2の上限値制限関数を乗じて、ロータ回転速度が商用電力系統周波数に対応した回転速度を上廻った場合に積分制御関数内蓄積分の出力による案内羽根開度指令の出力を制限するようにし、更に積分制御関数と暴走防止回路出力値との差を積分制御関数の入力にフィードバックし、回転速度偏差から差引し積分制御関数内蓄積分を強制的に減少させる。また、(2)負荷制限装置の出力信号に対応して定められた下限値制限関数に対して、発電運転時の静落差に対して設定された無負荷開度に1未満で一定値までの範囲で定められた制限値を乗じた値を積分制御関数内蓄積分の出力の下限値とするようにして、起動時又は負荷遮断発生時の遮断器が解列された状態での無負荷運転時において案内羽根開度の過閉を制限し、更に積分制御関数と暴走防止回路の出力下限値との差を積分制御関数の入力にフィードバックし、回転速度偏差から差引し積分制御関数内蓄積分を強制的に増大させる。
【発明の効果】
【0042】
本発明は、上記(1)に記載の構成としたことにより、回転速度が最大値を示した後減速し始めて定格回転速度付近に近づいて比例制御要素からの案内羽根開度閉指令が小さくなりゼロに近づいても積分制御関数内に保持された案内羽根開度指令値による回転速度制御装置からの案内羽根開度指令値が案内羽根開度を大きく上廻る事象が発生しない様にすることで、案内羽根開度が再増大する現象の発生防止をすることが可能となる。また、上記(2)に記載の構成としたことにより、負荷遮断時又は発電起動時の無負荷開度近傍において案内羽根開度が無負荷開度近傍、回転速度が定格回転速度近傍での大きめの振幅で揺動することの発生が防止出来る。尚、負荷遮断時又は発電起動時の無負荷開度近傍において案内羽根開度が無負荷開度近傍、回転速度が定格回転速度近傍での大きめの振幅で揺動することの発生の防止は、回転速度制御装置の各制御要素の制御ゲインが大きめの一般的な水力発電装置又は揚水発電装置においても適用効果が期待可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1は、本発明の実施例に係る発電装置又は揚水発電装置の構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例に係る発電装置又は揚水発電装置の回転速度制御装置の積分制御関数の出力暴走防止回路の構成図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例に係る発電装置又は揚水発電装置の負荷制限装置の入口弁全開又は中開から負荷制限装置出力を増大させる例での構成図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例に係る揚水発電装置での負荷遮断解析例を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例に係る揚水発電装置での入口弁中開起動での発電起動解析実施例を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施例に係る揚水発電装置での入口弁中開起動での起動時の負荷制限開度信号増大速度を遅くした場合での発電起動解析実施例を示す図である。
【
図7】
図7は、従来の発電装置又は揚水発電装置の構成図である。
【
図8】
図8は、従来の発電装置又は揚水発電装置の回転速度制御装置の積分制御関数の出力暴走防止回路の構成図である。
【
図9】
図9は、従来の発電装置又は揚水発電装置の負荷制限装置の入口弁全開又は中開から負荷制限装置の出力を増大させる例での構成図である。
【
図10】
図10は、従来の揚水発電装置での負荷遮断実測チャート例を示す図である。
【
図11】
図11は、従来の揚水発電装置での負荷遮断解析例を示す図である。
【
図12】
図12は、従来の揚水発電装置での入口弁全開起動での発電起動解析実施例を示す図である。
【
図13】
図13は、従来の揚水発電装置での入口弁中開起動での他の発電起動解析実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に、本発明にかかる発電装置及び揚水発電装置の制御方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
図1は、本発明の実施例に係る発電装置又は揚水発電装置の構成図である。
図1において、従来例を説明するのに用いた上記の
図7と同一符号は、同一部分又は相当部分を示す。
【0046】
図1に示す構成は、
図7に示す従来の発電装置又は揚水発電装置の構成とほぼ同一で、以下に示す2か所が変更されている。
【0047】
1つ目の変更点は、回転速度制御装置12に設けられた積分制御要素内の従来の回転速度制御装置の積分制御関数の出力暴走防止回路16を、出力暴走防止回路45とした点である。本実施例に係る発電装置又は揚水発電装置の回転速度制御装置12を構成する出力暴走防止回路45の詳細については、
図2を用いて別途説明する。
【0048】
2つ目の変更点は、負荷制限装置21を負荷制限装置52とした点である。本実施例に係る発電装置又は揚水発電装置の負荷制限装置52の詳細については、
図3を用いて別途説明する。
【0049】
図1に示す回転速度制御装置12が備える出力暴走防止回路45について説明する。
図2は、本発明の実施例に係る発電装置又は揚水発電装置の回転速度制御装置の積分制御関数の出力暴走防止回路45の構成図である。
図2において、
図8に示す従来の発電装置又は揚水発電装置の回転速度制御装置の積分制御関数の出力暴走防止回路16と同一符号は、同一部分又は相当部分を示す。
【0050】
30は、出力暴走防止回路45の上限値制限関数である。出力暴走防止回路45の上限値制限関数30は、後述の負荷制限装置52の出力信号が入力され、負荷制限装置52の出力信号の値に0.01p.u.を加え最大値を1.0p.u.とした値を出力する。
【0051】
46は、出力暴走防止回路45の第1の上限値制限関数である上限値制限関数30に対する上限値制限関数であり、出力暴走防止回路45の第2の上限値制限関数となる。出力暴走防止回路45の第2の上限値制限関数である上限値制限関数46は、回転速度制御装置12の入力信号が入力され、回転速度制御装置12の入力信号が-0.025p.u.以下では0.8の値を出力し、回転速度制御装置12の入力信号が-0.025p.u.から-0.1p.u.の範囲では0.8から1.0に直線的に変化する値を出力し、回転速度制御装置12の入力信号が-0.1p.u.以上の範囲では1.0の値を出力する。
【0052】
47は、乗算器である。乗算器47は、上述した上限値制限関数30の出力信号と上限値制限関数46の出力信号とが入力され、これらを乗算した結果を出力する。
【0053】
48は、最小値選択関数である。最小値選択関数48は、乗算器47の出力信号と積分制御関数15の出力信号とを比較し最小値を選択し出力する。49は、ゲイン乗算器である。ゲイン乗算器49は、後述の
図3に示す負荷制限装置52から出力される、静落差に応じた無負荷開度信号に1.0未満の一定値を乗算して、出力暴走防止回路45の下限値として出力する。50は、最大値選択関数である。最大値選択関数50は、積分制御関数15の出力信号とゲイン乗算器49の出力信号とを比較し最大値を選択し出力する。51は、最大値選択関数である。最大値選択関数51は、最小値選択関数48の出力信号と最大値選択関数50の出力信号とを比較し最大値を選択し、出力暴走防止回路45の出力信号として出力する。
【0054】
次に、
図1に示す負荷制限装置52について説明する。ここでは、負荷制限装置52の入口弁全開又は中開から負荷制限装置出力を増大させる例について、
図3に示す構成図に沿って説明する。
図3において、
図9に示す構成図と同一符号は、同一部分又は相当部分を示す。
【0055】
40は、無負荷開度及び起動開度設定関数である。無負荷開度及び起動開度設定関数40は、静落差が入力され、静落差に応じた無負荷開度信号と無負荷開度に一定値を加えた起動開度信号とを出力する。43は、負荷上限開度設定関数である。負荷上限開度設定関数43は、静落差が入力され、静落差に応じた負荷上限開度信号を出力する。44は、信号切換器である。信号切換器44には、起動開度設定関数40の出力信号と、負荷上限開度設定関数43の出力信号とが入力される。信号切換器44は、
図1に示す遮断器3が出力する並列信号がOFFのとき起動開度設定関数40の出力信号を選択出力し、並列信号がONのとき負荷上限開度設定関数43の出力信号を選択出力する。
【0056】
35は、論理積である。論理積35は、発電装置又は揚水発電装置の起動指令のON、OFF信号と入口弁全開又は中開のON、OFF信号とが入力され論理積して出力する。41は、信号切換器である。信号切換器41は、定数0.0と定数1.0とが入力され、論理積35の出力信号がOFFのとき定数0.0を選択出力し、論理積35の出力信号がONのとき定数1.0を選択出力する。36は、減算器である。減算器36は、信号切換器41の出力値から後述のフィードバック信号発生関数39の出力値を減算し出力する。53は、信号切換器である。信号切換器53は、後述の積分器55の時定数として、起動時時定数Tsと定常運転時時定数Tとが入力され、並列遮断器並列信号がOFFのとき起動時時定数Tsを選択出力し、並列遮断器並列信号がONのとき定常運転時時定数Tを選択出力する。
【0057】
54は、除算器である。除算器54は、減算器36の出力信号と信号切換器53の出力信号とが入力され、減算器36の出力信号を信号切換器53の出力信号で除算して出力する。55は、積分器である。積分器55は、除算器54の出力信号が入力され、入力値を積分した値を負荷制限装置52の出力信号として出力する。
【0058】
38は、減算器である。減算器38は、積分器55の出力値から信号切換器44の出力値を減算し出力する。39は、フィードバック信号発生関数である。フィードバック信号発生関数39は、減算器38の出力信号が入力され、入力信号が0.0未満では0.0を出力し、入力信号が0.0以上では入力信号に1.0を加えた値を出力し、減算器36へ入力する。
【0059】
図4は、本発明の実施例に係る揚水発電装置での負荷遮断解析例である。
図4は、
図11に示した従来の揚水発電装置での負荷遮断解析例に対して、
図1から
図3に示した本発明の実施例を適用し解析したものである。
【0060】
図4では、負荷遮断発生時からの経過時間が約10秒での回転速度制御装置12の出力信号が20%程度まで低減されており、その後の回転速度の低下に伴う比例制御要素からの案内羽根開度閉指令の減少によっても回転速度制御装置12の出力信号はGVサーボストローク比率を若干上廻っているが、案内羽根開度が再度大きくなる現象の発生は防止されている。更に、負荷遮断発生時からの経過時間が25秒以降のGVサーボストローク比率が無負荷開度近傍となった状況では、
図2中に示した出力暴走防止回路45の下限値であるゲイン乗算器49の出力により案内羽根開度の過閉が制限され、案内羽根開度が無負荷開度近傍、回転速度が定格回転速度近傍での大きめの振幅での揺動現象の発生が防止されており、回転速度が定格回転速度へ滑らかに収斂されている。
【0061】
図5は、本発明の実施例に係る揚水発電装置での入口弁中開起動での発電起動解析実施例である。
図5は、
図13に示した従来の揚水発電装置での入口弁中開起動での発電起動解析実施例に対して、
図1から
図3に示した本発明の実施例を適用し解析したものである。但し、
図3に示した起動時時定数Tsは、定常運転時時定数Tと同一の値を適用している。
【0062】
図5に示す例では、入口弁中開での負荷制限装置52の出力増大開始は入口弁開度約33%とし、バイパス弁開開始から27秒後とし、負荷制限装置52の出力信号の0%から100%間の変化時間を60秒としている。案内羽根開度が全閉から起動開度まで開く間での初期有効落差Heiからの有効落差変化率(He-Hei)/Heiは入口弁開操作と並行動作の影響で大きめの約7.5%低下し、回転速度が定格回転速度N
o到達のバイパス弁開開始後100秒経過以降では有効落差変化率は+2.5%から-2.0%の変化を示しており、出力暴走防止回路45の上限値制限関数30に対する上限値制限関数46による回転速度制御装置12の出力制限の効果がある。回転速度変化率(N-N
o)/N
oは、
図13に示す従来の揚水発電装置での入口弁中開起動での発電起動解析実施例と比較して、最大値0.8%が約0.5%に低減されているが、その後の変動幅は-0.19%から0.18%の間の変動から-0.19%から0.18%の間の変動とほぼ同等で変化無しとなっている。
【0063】
従って、前述の
図1から
図3に示す様に構成された発電装置又は揚水発電装置に適用された制御装置において、発電装置又は揚水発電装置の発電起動時間の短縮として、負荷制限装置52の出力増大開始を入口弁全開から入口弁中開とする方法を適用しても、
図13に示した入口弁中開からの水車起動と同様負荷制限装置52の出力増大を開始する入口弁中開開度以降は入口弁開口と案内羽根開口とが平行動作する。この為、負荷制限装置52の起動時時定数Tsを定常運転時時定数Tと同一とした状況では前述の通り回転速度変化率(N-N
o)/N
oは、従来の揚水発電装置での入口弁中開起動での発電起動解析実施例と同程度の変動を示しており自動同期装置での並列を早めることは実施出来てないと判断され、入口弁全開から入口弁中開へ負荷制限装置52の出力増大開始を早めた時間程度の起動時間短縮に留まっている。
【0064】
図6は、本発明の実施例に係る揚水発電装置での入口弁中開起動での起動時の負荷制限開度信号増大速度を遅くした場合での発電起動解析実施例である。
図6は、
図1から
図3に示した本発明の実施例を適用し、負荷制限開度信号増大速度として定常運転時時定数Tが60秒あるのに対して起動時時定数Tsを200秒として解析したものである。
【0065】
図6では、案内羽根開度が全閉から起動開度まで開く間での初期有効落差Heiからの有効落差変化率(He-Hei)/Heiは、負荷制限開度信号増大速度の起動時時定数Tsを200秒とした効果により、定常運転時時定数Tが60秒と同一であった場合の約7.5%低下から約2.3%低下に緩和されている。また、回転速度が定格回転速度N
o到達のバイパス弁開開始後100秒経過以降では定常運転時時定数Tの60秒と同一であった
図5の場合に有効落差変化率が+2.5%から-2.0%の変化を示していたものが+1.4%から-1.5%の変化に緩和されている。
【0066】
回転速度変化率(N-N
o)/N
oは、
図5に示す、負荷制限開度信号増大速度が定常運転時時定数Tの60秒と同一であった場合での入口弁中開起動での発電起動解析実施例と比較して、最大値は約0.5%でほとんど変化は無い。しかし、その後の変動幅は負荷制限開度信号増大速度が定常運転時時定数Tの60秒と同一であった場合での-0.19%から0.18%の間の変動からバイパス弁開開始から125秒以降では-0.10%から0.08%の間の変動に半減されている。
【0067】
従って、前述の
図1から
図3に示す様に構成された発電装置又は揚水発電装置に適用された制御装置において、発電装置又は揚水発電装置の発電起動時間の短縮として、負荷制限装置52の出力増大開始を入口弁全開から入口弁中開とする方法を適用し、負荷制限開度信号増大速度として定常運転時時定数Tが60秒であるのに対して起動時時定数Tsを200秒とすることによって、
図5に示した入口弁中開からの水車起動と同様負荷制限装置52の出力増大を開始する入口弁中開開度以降入口弁開口と案内羽根開口とが並行動作するが、前述の通り回転速度変化率(N-N
o)/N
oは、入口弁中開起動で負荷制限開度信号増大速度として定常運転時時定数Tが60秒あるのに対して起動時時定数Tsを200秒とすることによって凡そ半減されており自動同期装置での並列を早めることが十分期待される。これより、遮断器並列までの起動時間の大幅短縮が期待される。
【0068】
なお、発電装置がペルトン水車で駆動される発電装置の場合、回転速度制御装置12によりデフレクタが開閉制御される。この回転速度制御装置12は積分制御要素内にデフレクタ開度指令値を保持するものとなっている。すなわち、ペルトン水車で駆動される発電装置の場合、回転速度制御装置12の積分制御要素は、上述した案内羽根開度指令値に代えてデフレクタ開度指令値を保持する。ペルトン水車で駆動される発電装置の制御は、上述した実施例の案内羽根開度指令値をデフレクタ開度指令値としたものとなる。
【符号の説明】
【0069】
1 電動機又は発電電動機
2 原動機
3 遮断器
4 ロータの回転速度検出器
5 回転速度検出器出力信号
6 商用電力系統の周波数に対応した回転速度信号(65F出力信号、目標回転速度信号)
7,10,14,17,22,28,36,38 減算器
8,29,49 ゲイン乗算器
12 回転速度制御装置
13 比例制御関数
15 積分制御関数
16 出力暴走防止回路(従来の出力暴走防止回路)
18 不完全微分制御関数
19 加算器
20,31,48 最小値選択関数
21,52 負荷制限装置
23 増幅器
24 アクチュエータ
25,37,55 積分器
26 案内羽根操作機構
30 上限値制限関数(第1の上限値制限関数)
32 従来の出力暴走防止回路の下限値制限関数
33,34,50,51 最大値選択関数
35 論理積
39 フィードバック信号発生関数
40 無負荷開度及び起動開度設定関数
41,44,53 信号切換器
43 負荷上限開度設定関数
45 出力暴走防止回路
46 上限値制限関数(第2の上限値制限関数)
47 乗算器
54 除算器