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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-01
(45)【発行日】2023-09-11
(54)【発明の名称】磁気ヘッドサスペンション
(51)【国際特許分類】
   G11B 21/21 20060101AFI20230904BHJP
【FI】
G11B21/21 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023543150
(86)(22)【出願日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2023006509
【審査請求日】2023-07-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175722
【氏名又は名称】サンコール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】神谷 友輔
(72)【発明者】
【氏名】藤本 泰夫
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-218771(JP,A)
【文献】特許第7206435(JP,B1)
【文献】特開2021-190151(JP,A)
【文献】特開2021-144779(JP,A)
【文献】特開2019-192323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 21/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロードビーム部及び前記ロードビーム部に固着されたフレキシャ部を有し、前記ロードビーム部及び前記フレキシャ部の重合体が先端及び基端の間のLB曲げ位置で先端側がディスク面から離間する方向へ曲げられている磁気ヘッドサスペンションであって、
前記フレキシャ部は、金属製のフレキシャ基板を有し、
前記フレキシャ基板は、前記ロードビーム部に固着される本体領域と、前記ロードビーム部に対してフリー状態で前記本体領域から先端側へ延びる左右一対の支持片と、前記一対の支持片に直接又は間接的に支持されたタング領域とを有し、
前記本体領域は、前記LB曲げ位置を挟んでサスペンション長手方向先端側及び基端側にそれぞれ位置するF/L第1溶接点及びF/L第2溶接点を含む複数の溶接点で前記ロードビーム部に固着され、
前記一対の支持片は、先端部が前記タング領域よりサスペンション長手方向先端側に配置された支持片溶接点で前記ロードビーム部に固着されており、
前記タング領域は、サスペンション長手方向に関し前記F/L第1溶接点及び前記支持片溶接点の間に配置されて、ディスク面と対向する下面において磁気ヘッドスライダを支持し且つディスク面とは反対側の上面において前記ロードビーム部に設けられたディンプルに当接するように構成され、
前記LB曲げ位置での曲げのサスペンション長手方向先端側の終端と前記F/L第1溶接点との間に延びる平坦領域のサスペンション長手方向長さをFとし、且つ、前記F/L第1溶接点及び前記支持片溶接点の間のサスペンション長手方向長さをDとした場合に、0.02≦F/D≦0.05を満たしていることを特徴とする磁気ヘッドサスペンション。
【請求項2】
0.04≦F/D≦0.05を満たしていることを特徴とする請求項1に記載の磁気ヘッドサスペンション。
【請求項3】
前記ロードビーム部は、基端側から先端側へ行くに従って幅狭とされた平板状の本体部と、前記本体部の幅方向両側からディスク面とは反対側へ延びる左右一対のフランジ部とを有し、
前記本体領域は、前記F/L第1及び第2溶接点で前記本体部に固着され、前記一対の支持片は、前記支持片溶接点で前記本体部に固着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気ヘッドサスペンション。
【請求項4】
前記支持片溶接点は、前記磁気ヘッドサスペンションの長手方向中心線上に位置していることを特徴とする請求項2に記載の磁気ヘッドサスペンション。
【請求項5】
前記F/L第1溶接点は、前記長手方向中心線を基準にして対称に配置された一対の溶接点を有していることを特徴とする請求項4に記載の磁気ヘッドサスペンション。
【請求項6】
前記一対の支持片は、サスペンション長手方向に関し前記タング領域より基端側に、ディスク面に向かって凸状の折り曲げ部を有していることを特徴とする請求項1、2、4又は5に記載の磁気ヘッドサスペンション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク等の記憶媒体に対してデータをリード及び/又はライトする磁気ヘッドスライダを支持する磁気ヘッドサスペンションに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ヘッドサスペンションは、ボイスコイルモータ等のアクチュエータによって基端側が直接又は間接的に揺動中心回りに揺動されるベースプレート等の支持部と、基端部が前記支持部に支持され且つ磁気ヘッドスライダを前記ディスク面に向けて押し付ける押し付け荷重を発生する荷重曲げ部と、前記荷重曲げ部を介して前記支持部に支持され且つ前記押し付け荷重を前記磁気ヘッドスライダに伝達するロードビーム部と、前記ロードビーム部に固着された状態で、先端側において前記磁気ヘッドスライダをジンバル動作を許容しつつ支持するフレキシャ部とを備えている。
【0003】
前記フレキシャ部のフレクシャ基板は、前記ロードビーム部に重合状態で固着される本体領域と、前記ロードビーム部に対してフリー状態で前記本体領域からサスペンション先端側へ延びる左右一対の支持片と、前記一対の支持片を介して支持されたタング領域とを有している。
【0004】
前記タング領域は、ディスク面との対向面において前記スライダを支持し且つディスク面とは反対側の裏面において前記ロードビーム部に設けられたディンプルに当接するように構成され、前記ディンプルを支点としてピッチ方向及びロール方向へ揺動するジンバル動作を行なえるように前記一対の支持片によって直接又は間接的に片持ち状に支持されている。
【0005】
斯かるサスペンションには、前記スライダを目的トラックに高速且つ高精度に位置させることが望まれ、前記スライダの目的トラックへの移動を高速に行う為には、前記アクチュエータを駆動する駆動電圧の周波数(駆動周波数)を上昇させて、前記サスペンションの揺動中心回りの揺動速度を速める必要があるが、駆動周波数を上昇させると前記サスペンションには意に反した振動が生じ、前記スライダの目的トラックに対する正確な位置決めが阻害される。
【0006】
この点に関し、例えば、下記特許文献1には、前記スライダのねじれ振動ゲインを低減させる為に、前記フレキシャ部が固着された状態の前記ロードビーム部がLB曲げ位置で曲げられているサスペンションが提案されている。
【0007】
前記特許文献1に記載のサスペンションは、LB曲げ位置での前記ロードビーム部の曲げによって、前記ロードビーム部に生じるねじれ振動に伴って前記タング領域がシーク方向変動すること(ねじれ振動のゲイン)を低減させることができる点において有用である。
【0008】
詳しくは、前記アクチュエータによって揺動される際に生じる振動、及び/又は、ディスク回転に伴って受ける風圧によって、前記ロードビーム部には、サスペンション長手方向に沿ったねじれ中心線回りのねじれ振動が生じる。
【0009】
前記特許文献1に記載のサスペンションにおいては、ねじれ中心線が前記ディンプルと前記タング領域との接点を通過又は接点に近接するようにLB曲げ位置での曲げの角度(大きさ)が設定されており、これにより、前記ロードビーム部がねじれ中心線回りにねじれ振動したとしても、前記タング領域がシーク方向変動を起こすことを可及的に防止している。
【0010】
このように、前記特許文献1に記載のサスペンションは、前記ロードビーム部のねじれ振動によって前記タング領域が意に反してシーク方向変動することを有効に防止できるが、前記フレキシャ部の前記ロードビーム部に対するねじれ振動については考慮されていない。
【0011】
即ち、前述の通り、前記スライダを支持する前記タング領域は、前記ロードビーム部とはフリー状態とされている前記一対の支持片を介して支持されている。
従って、前記アクチュエータによって揺動される際、及び/又は、ディスク回転に伴う風圧を受ける際に、前記フレキシャ部は全体的には前記ロードビーム部と共に前記支持部に対してねじれ振動しつつ、前記フレキシャ部のうち前記ロードビーム部とはフリー状態とされている部分は、前記ロードビーム部に連動したねじれ振動に加えて、前記ロードビーム部とは独立したねじれ振動を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特許第5796032号公報
【発明の概要】
【0013】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、ロードビーム部のねじれ振動のゲインを低減させつつ、フレキシャ部のねじれ振動のゲインを有効に低減させ得る磁気ヘッドサスペンションの提供を、目的とする。
【0014】
本発明は、前記目的を達成する為に、ロードビーム部及び前記ロードビーム部に固着されたフレキシャ部を有し、前記ロードビーム部及び前記フレキシャ部の重合体が先端及び基端の間のLB曲げ位置で先端側がディスク面から離間する方向へ曲げられている磁気ヘッドサスペンションであって、前記フレキシャ部は、金属製のフレキシャ基板を有し、前記フレキシャ基板は、前記ロードビーム部に固着される本体領域と、前記ロードビーム部に対してフリー状態で前記本体領域から先端側へ延びる左右一対の支持片と、前記一対の支持片に直接又は間接的に支持されたタング領域とを有し、前記本体領域は、前記LB曲げ位置を挟んでサスペンション長手方向先端側及び基端側に位置するF/L第1溶接点及びF/L第2溶接点を含む複数の溶接点で前記ロードビーム部に固着され、前記一対の支持片は、先端部が前記タング領域よりサスペンション長手方向先端側に配置された支持片溶接点で前記ロードビーム部に固着されており、前記タング領域は、サスペンション長手方向に関し前記F/L第1溶接点及び前記支持片溶接点の間に配置されて、ディスク面と対向する下面において磁気ヘッドスライダを支持し且つディスク面とは反対側の上面において前記ロードビーム部に設けられたディンプルに当接するように構成され、前記LB曲げ位置での曲げのサスペンション長手方向先端側の終端と前記F/L第1溶接点との間に延びる平坦領域のサスペンション長手方向長さをFとし、且つ、前記F/L第1溶接点及び前記支持片溶接点の間のサスペンション長手方向長さをDとした場合に、0.02≦F/D≦0.05を満たしている磁気ヘッドサスペンションを提供する。
【0015】
本発明に係る磁気ヘッドサスペンションによれば、ロードビーム部のねじれ振動のゲインを低減させつつ、フレキシャ部のねじれ振動のゲインを有効に低減させることができる。
【0016】
本発明に係る磁気ヘッドサスペンションは、好ましくは、0.04≦F/D≦0.05を満たすように構成される。
【0017】
一形態においては、前記ロードビーム部は、基端側から先端側へ行くに従って幅狭とされた平板状の本体部と、前記本体部の幅方向両側からディスク面とは反対側へ延びる左右一対のフランジ部とを有するものとされる。
この場合、前記本体領域は、前記F/L第1及び第2溶接点で前記本体部に固着され、前記一対の支持片は、前記支持片溶接点で前記本体部に固着される。
【0018】
好ましくは、前記支持片溶接点は、前記磁気ヘッドサスペンションの長手方向中心線上に位置される。
【0019】
好ましくは、前記F/L第1溶接点は、前記長手方向中心線を基準にして対称に配置された一対の溶接点を有するものとされる。
【0020】
好ましくは、前記一対の支持片は、サスペンション長手方向に関し前記タング領域より基端側に、ディスク面に向かって凸状の折り曲げ部を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1(a)及び(b)は、それぞれ、本発明の一実施の形態に係る磁気ヘッドサスペンションの平面図及び側面図である。
図2図2(a)及び(b)は、それぞれ、前記磁気ヘッドサスペンションの側面図及び底面図である。
図3図3は、前記磁気ヘッドサスペンションの構成部材の分解平面図である。
図4図4は、図2(b)におけるIV部拡大図である。
図5図5は、図4におけるV-V線断面図である。
図6図6は、前記磁気ヘッドサスペンションの実施例に対して行った検証1の結果のグラフであり、LB曲げ位置での曲げの終端とフレキシャ基板の本体領域及びLB本体部を固着する溶接点のうち最も先端側に位置するF/L第1溶接点との間に延びる平坦領域の長さをF、前記F/L第1溶接点と前記フレキシャ基板の一対の支持片の先端及びLB本体部の先端を固着する支持片溶接点との間の長さをD、支持部の先端エッジ及びディンプル間の長さをL、並びに、前記支持部の先端エッジと前記フレキシャ基板が前記LB本体部から離間し始めるフレキシャ離間開始位置との間の長さをAとした場合において、F/DとLに対するAの比率との関係を示している。
図7図7は、前記磁気ヘッドサスペンションの実施例に対して行った検証2における測定方法を示す模式平面図である。
図8図8は、検証2の結果のグラフであり、F/Dと前記フレキシャ部のねじれ1次共振周波数との関係を示している。
図9図9は、検証2の結果のグラフであり、F/Dと前記フレキシャ部のねじれ2次共振周波数との関係を示している。
図10図10は、前記磁気ヘッドサスペンションの実施例に対して行った検証3の結果のグラフであり、F/Dとタング領域のピッチ剛性及びロール剛性との関係を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る磁気ヘッドサスペンションの好ましい実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1(a)及び(b)に、それぞれ、本実施の形態に係る磁気ヘッドサスペンション1の平面図(ディスク面とは反対側から視た上面図)及び側面図を示す。
また、図2(a)及び(b)に、それぞれ、前記磁気ヘッドサスペンション1の側面図及び底面図(前記ディスク面から視た下面図)を示す。なお、図2(a)は、図1(b)と同一図面である。また、図2(b)においては、下記磁気ヘッドスライダ50の図示を省略している。
さらに、図3に、前記磁気ヘッドサスペンション1の下記構成部材の分解平面図(前記ディスク面とは反対側から視た上面図)を示す。
【0023】
図1図3に示すように、前記磁気ヘッドサスペンション1は、ボイスコイルモータ等のメインアクチュエータ(図示せず)によって直接又は間接的に揺動中心X回りにディスク面に平行なシーク方向へ揺動される支持部10と、磁気ヘッドスライダ50を前記ディスク面に向けて押し付ける為の荷重を発生し得るように基端部が前記支持部10に連結された荷重曲げ部20と、前記荷重曲げ部20を介して前記支持部10に支持され且つ前記荷重曲げ部20で発生された荷重を前記磁気ヘッドスライダ50に伝達するロードビーム部30と、前記磁気ヘッドスライダ50を支持した状態で前記ロードビーム部30に支持されるフレキシャ部40とを備えている。
【0024】
なお、図2(b)に示すように、本実施の形態に係る前記磁気ヘッドサスペンション1は、さらに、サブアクチュエータとして作用する一対の圧電素子70を有している。
前記一対の圧電素子70は、前記フレキシャ部40における下記タング領域415を下記ディンプル33回りにシーク方向へ揺動させ得るように構成されている。
【0025】
前記支持部10は、前記メインアクチュエータに直接又は間接的に連結された状態で前記荷重曲げ部20を介して前記ロードビーム部30を支持する部材であり、比較的高剛性を有するものとされる。
【0026】
本実施の形態においては、図1図3に示すように、前記支持部10は、前記メインアクチュエータに連結されるキャリッジアーム(図示せず)の先端にかしめ加工によって接合されるボス部15を備えたベースプレートとされている。
前記支持部10は、例えば、厚さ0.08mm~0.3mmのステンレス板によって好適に形成される。
当然ながら、前記支持部10として、基端部が前記メインアクチュエータの揺動中心に連結されるアームを採用することも可能である。
【0027】
図4に、図2(b)におけるIV部拡大図を示す。
なお、図4においては、理解容易化の為に、前記一対の圧電素子70及び前記フレキシャ部40における下記配線構造体420を削除している。
また、図5に、図4におけるV-V線断面図を示す。
【0028】
前記ロードビーム部30は、前述の通り、前記荷重曲げ部20によって発生される荷重を前記磁気ヘッドスライダ50に伝達する為の部材であり、従って、所定の剛性が要求される。
【0029】
図1図5に示すように、前記ロードビーム部30は、前記ディスク面と対向する平板状のLB本体部31と、前記LB本体部31のサスペンション幅方向両側からディスク面とは反対方向へ延びる左右一対のフランジ部32とを有しており、前記フランジ部32によって剛性を向上させている。
前記ロードビーム部30は、例えば、厚さ0.02mm~0.1mmのステンレス板によって好適に形成される。
【0030】
図1図5に示すように、前記ロードビーム部30は、さらに、前記LB本体部31の先端側に、ディンプル33と呼ばれる突起を有している。
前記ディンプル33は、ディスク面に近接する方向に、例えば、0.05mm~0.1mm程度突出されている。このディンプル33は、前記フレキシャ部40における下記タング領域415の上面(前記磁気ヘッドスライダ50を支持する支持面とは反対側の裏面)に接触し、このディンプル33を介して前記荷重曲げ部20で発生された荷重を前記フレキシャ部40の前記タング領域415に伝達するようになっている。
【0031】
本実施の形態においては、図1図5に示すように、前記ロードビーム部30は、さらに、前記LB本体部31の先端からサスペンション長手方向先端側へ延びるリフトタブ34を一体的に有している。前記リフトタブ34は、前記磁気ヘッドスライダ50がディスク面上から径方向外方へ外れるように前記磁気ヘッドサスペンション1が前記メインアクチュエータによって揺動された際に、磁気ディスク装置に備えられたランプと係合して前記磁気ヘッドスライダ50を前記ディスク面から上方へ離間させる為の部材である。
【0032】
本実施の形態においては、図1及び図3に示すように、前記LB本体部31は、サスペンション長手方向基端側から先端側へ行くに従って幅狭とされている。即ち、前記LB本体部31のサスペンション幅方向外方エッジは、サスペンション長手方向基端側から先端側へ行くに従って、サスペンション長手方向中心線CLに近接するように傾斜されている。
【0033】
斯かる構成によれば、前記ロードビーム部30の先端側における前記中心線CL回りの慣性モーメントを低減でき、捩れモードの共振周波数を上昇させることができる。
【0034】
本実施の形態においては、前記荷重曲げ部20は、両者の間に間隙が存する状態で前記中心線CLを基準にして左右対称に配置された一対の板バネ21を有している。
前記板バネ21は、板面が前記ディスク面に対向する状態で基端部が前記支持部10の先端側に連結され且つ先端部が前記ロードビーム部30の基端部に連結されている。
前記荷重曲げ部20は、例えば、厚さ0.02mm~0.1mmのステンレス板によって形成される。
【0035】
図1(a)、図2(b)及び図3に示すように、本実施の形態においては、前記荷重曲げ部20及び前記ロードビーム部30は単一のロードビーム形成部材300によって一体形成されている。
【0036】
詳しくは、前記ロードビーム部形成部材300は、前記ロードビーム部30を形成する部分と、前記ロードビーム部30を形成する部分から基端側へ延び、前記荷重曲げ部20(本実施の形態においては前記一対の板バネ21)を形成する部分と、前記荷重曲げ部20を形成する部分から基端側へ延び、前記支持部10に重合状態で溶接点312でのレーザースポット溶接によって固着される支持部重合部分310(図2(b)及び図3参照)とを一体的に有している。
【0037】
前記フレキシャ部40は、前記磁気ヘッドスライダ50を支持した状態で前記ロードビーム部30に溶接点でのレーザースポット溶接によって固着されている。
【0038】
詳しくは、前記フレキシャ部40は、前記LB本体部31に固着されるフレキシャ基板410を有している。
前記フレキシャ基板410は、前記ロードビーム部30より低剛性とされ、例えば、厚さ0.01mm~0.025mm程度のステンレス等の金属材料によって好適に形成される。
【0039】
前記フレキシャ基板410は、前記ロードビーム部30に固着される本体領域411と、前記ロードビーム部30に対してフリー状態で前記本体領域411から先端側へ延びる左右一対の支持片412と、前記一対の支持片412に直接又は間接的に支持された前記タング領域415とを有している。
【0040】
前記本体領域411は、前記LB本体部31と重合され、複数のF/L溶接点でのレーザースポット溶接によって前記LB本体部31に固着されている。
【0041】
図2(b)及び図3図5に示すように、前記複数のF/L溶接点は、サスペンション長手方向に関し先端側から基端側へ順に配置されたF/L第1溶接点91、F/L第2溶接点92及びF/L第3溶接点93を含んでいる。
【0042】
前記F/L第1溶接点91は前記中心線CLを挟んで対称に配置された一対の溶接点とされ、前記F/L第2溶接点92は前記中心線CL上に配置された単一の溶接点とされ、前記F/L第3溶接点93は前記中心線CLを挟んで対称に配置された一対の溶接点とされている。
【0043】
本実施の形態においては、図2(b)及び図3に示すように、前記本体領域411は、前記LB本体部31に重合されて前記複数のF/L溶接点91~93によって前記ロードビーム部30に固着されるロードビーム部重合部位に加えて、前記支持部10に重合される支持部重合部位417と、前記ロードビーム部重合部位及び前記支持部重合部位417の間を連結し、前記一対の板バネ21の間の間隙を通過する連結部位418とを有している。
【0044】
前記支持部重合部位417は、複数のF/S溶接点97でのスポット溶接によって前記支持部10に固着されている。
【0045】
前記一対の支持片412は、先端部が前記タング領域415よりサスペンション長手方向先端側に配置された支持片溶接点95でのレーザースポット溶接によって前記LB本体部31の先端に固着されている。
【0046】
前記タング領域415は、サスペンション長手方向に関し前記F/L第1溶接点91及び前記支持片溶接点95の間に配置されて、ディスク面と対向する下面において前記磁気ヘッドスライダ50を支持し且つディスク面とは反対側の上面において前記ディンプル33に当接するように構成されている。
【0047】
図5に示すように、前記一対の支持片412の各々は、サスペンション長手方向に関し前記タング領域415より基端側の所定の折り曲げ位置に、ディスク面に向かって凸状の折り曲げ部412aを有している。
【0048】
前記折り曲げ部412aを設けると共にその折り曲げ角度を調整することによって、前記タング領域415が前記ディンプル33へ押し付けられる力(ディンプル予圧)を高めることができると共に、前記一対の支持片412の前記ロードビーム部30に対する相対的なプロファイル(形状)を微調整して、フレキシャ部のねじれ振動の低減を図ることができる。仕様によって多少異なるが、0.5~5度ぐらいに設定するのが好ましい。
【0049】
本実施の形態においては、図4に示すように、前記フレキシャ基板410は、前記一対の支持片412の長手方向中間からサスペンション幅方向内方へ延びる一対の延在片413と、前記中心線CL上においてサスペンション長手方向に沿って延びるように前記一対の延在片413に支持された連結片414とを有しており、前記タング領域415は前記ディンプル33を支点としてピッチ方向及びロール方向へ揺動するジンバル動作を行なえるように前記連結片414に片持ち状に支持されている。
【0050】
本実施の形態においては、前記フレキシャ部40は、前記磁気ヘッドスライダ50を外部の部材に電気的に接続する為の配線導体422を含む配線構造体420を有している。
【0051】
図3に示すように、前記配線構造体420は、前記フレキシャ基板410におけるディスク対向面に積層される絶縁層421と、前記絶縁層421におけるディスク対向面に積層される配線導体422と、前記配線導体422を囲繞する絶縁性のカバー層423とを有している。
【0052】
図1(a)に示すように、前記磁気ヘッドサスペンション1は、さらに、前記LB本体部31における前記ディスク面とは反対側の裏面に固着された制振材60を有している。
【0053】
前記制振材60は、前記LB本体部31のディスク面とは反対側の裏面に固着される粘弾性材からなる第1層(図示せず)と前記第1層のディスク面とは反対側の裏面に固着される第2層(図示せず)とを有し得る。
【0054】
前記第1層としては、例えば、アクリルポリマーやシリコンが好適に使用される。
前記第2層としては、例えば、ステンレスやアルミニウム等の金属材料、若しくは、ポリエチレン・テレフタレート等の樹脂材料が好適に使用される。
【0055】
図1図5に示すように、前記磁気ヘッドサスペンション1においては、前記フレキシャ部40が前記ロードビーム部30に固着されてなる重合体が、所定のLB曲げ位置35でディスク面に向かって凸状に(即ち、前記ロードビーム部の先端側がディスク面から離間するように)曲げられている。
【0056】
LB曲げ位置35での曲げの角度(大きさ)は、前記磁気ヘッドサスペンション1に生じるねじれモードの振動中心線が前記ディンプル33の頂点(前記ディンプル33と前記タング領域415との当接点)に可及的に近接するように設定される。
LB曲げ位置35での曲げ角度は、仕様に応じて設定されるが、例えば、0.5度~3.0度の範囲とされる。
【0057】
LB曲げ位置35で前記重合体の曲げを行うことによって、前記磁気ヘッドサスペンション1に捩れモードの振動が生じたとしても、この振動に起因する前記タング領域415の姿勢変動を防止乃至は低減することができ、前記磁気ヘッドスライダ50の目的トラックから位置ズレを可及的に防止することができる。
【0058】
ここで、前記メインアクチュエータ及び/又は前記サブアクチュエータによって前記磁気ヘッドサスペンション1が揺動される際、及び/又は、前記スライダ50を目的トラックでディスク回転に伴う風圧を受ける際には、前記ロードビーム部30及び前記フレキシャ部40の重合体が前記支持部10に対してねじれ振動(ロードビーム部のねじれ振動)し、さらに、前記フレキシャ部40のうち前記ロードビーム部30に対してフリー状態とされている部分が前記ロードビーム部30に対してねじれ振動(フレキシャ部のねじれ振動)する。
【0059】
前記ロードビーム部30のねじれ振動に起因する前記タング領域415の意に反した姿勢変動は、前記重合体のLB曲げ位置35での曲げの大きさを調整することによって、可及的に防止することができる。
【0060】
しかしながら、前記フレキシャ部40のねじれ振動に起因する前記タング領域415の意に反した姿勢変動については前記重合体のLB曲げ位置35での曲げの大きさ調整によっては防止乃至は低減することができない。
【0061】
この点に関し、本願発明者は、前記フレキシャ部40のねじれ振動に起因する前記タング領域415の意に反した姿勢変動については、本来、密着されるべき前記LB本体部31と前記フレキシャ部410の本体領域411との密着度が大きく影響するのではないか、という新規な着想を得た。
【0062】
詳しくは、前述の通り、前記ロードビーム30のねじれ振動に起因する前記タング領域415の意に反した姿勢変動については、前記重合体の曲げ角度を調整して前記ロードビーム部30のねじれ中心線を前記ディンプル33の頂点に一致又は近接させることによって防止乃至は低減することができる。
【0063】
しかしながら、前記重合体は、厚みの異なる前記LB本体部31及び前記フレキシャ基板410が重合状態で複数のF/L溶接点91~93で溶接固着されて形成されており、従って、かかる重合体に対して曲げを行うと、前記LB本体部31の曲げの曲率半径と前記フレキシャ基板410の曲げの曲率半径とが異なることになる。
【0064】
この場合、厚みの薄い前記フレキシャ基板410は、前記F/L溶接点91~93においては前記LB本体部31に固着されることで拘束された状態で、その他の領域においては曲率半径の差異に応じて前記LB本体部31の曲げに引っ張られることになる。
【0065】
この点を踏まえて、本願発明者は、前記重合体の曲げによって、前記LB本体部31に密着されるべき前記フレキシャ基板410の本体領域411の一部(前記LB第1溶接点91より先端側の部分)が意に反して変形して、前記LB本体部31に対する密着性が損なわれ、前記一対の支持片412のプロファイルの意に反した変化を招き、その結果、前記一対の支持片412、前記延在片413及び前記連結片414を介して支持される前記タング領域415のねじれ振動ゲインの悪化を招くのではないかという新規な着想を得て、この着想の正否を確かめる為に下記の検証を行った。
【0066】
・検証1
下記基本構成を有しつつ、前記重合体の曲げの曲率半径R(図5参照)を6.5mmとしたロードビーム部30及びフレキシャ部40の重合体アッセンブリを6個、作成した(以下、実施例1(a1)~(a6))という。
【0067】
<基本構成>
ロードビーム部40の板厚:30μm
フレキシャ基板410の板厚:18μm
支持部10の先端エッジ及びディンプル33間の距離L:6.0mm
支持部10の先端エッジ及びLB曲げ位置35間の距離L0:3.12mm(=0.52×L)
支持部10の先端エッジ及びF/L第1溶接点91間の距離L1:3.36mm(=0.56×L)
支持部10の先端エッジ及びF/L第2溶接点92間の距離L2:2.4mm(=0.4×L)
F/L第1溶接点91及び支持片溶接点95の間の距離さD:3.75mm
ディンプル33の高さH1:0.075mm
F/L第1溶接点91及び折り曲げ部412a間の距離L3:0.75mm(=0.2×D)
折り曲げ部412aの高さH2:0.098mm(=1.3×H1)
【0068】
実施例1(a1)~(a6)のそれぞれにおいて、前記LB曲げ位置35での曲げのサスペンション長手方向先端側の終端と前記F/L第1溶接点91との間に延びる平坦領域のサスペンション長手方向長さFと前記F/L第1溶接点91及び前記支持片溶接点95の間のサスペンション長手方向長さDとの関係F/Dを測定した(図5参照)。
【0069】
その結果は以下の通りである。
実施例1(a1):0.014
実施例1(a2):0.016
実施例1(a3):0.003
実施例1(a4):0.011
実施例1(a5):0.007
実施例1(a6):0.007
実施例1(平均値):0.010
【0070】
実施例1(a1)~(a6)のそれぞれにおいて、前記支持部10の先端エッジ及び前記フレキシャ基板410が前記LB本体部31から離間し始めるフレキシャ離間開始位置430(図5参照)との間の距離Aを測定し、支持部10の先端エッジ及びディンプル33間の距離Lに対する比率を算出した。
実施例1(a1)~(a6)におけるF/DとAとの関係を図6に示す。
【0071】
前記実施例1と同一構成を有しつつ、LB曲げ位置35での曲げの曲率半径Rを4.5mmに変更した実施例2を7個、作成した(以下、実施例2(a1)~2(a7))という。
【0072】
実施例2(a1)~(a7)のそれぞれにおいて、F/Dを測定した。
その結果は以下の通りである。
実施例2(a1):0.030
実施例2(a2):0.026
実施例2(a3):0.031
実施例2(a4):0.022
実施例2(a5):0.027
実施例2(a6):0.024
実施例2(a7):0.032
実施例2(平均値):0.027
実施例2(a1)~(a7)のそれぞれにおいて、AをLに対する比率として算出した。その結果を図6に併せて示す。
【0073】
前記実施例1と同一構成を有しつつ、LB曲げ位置35での曲げの曲率半径Rを3.0mmに変更した実施例3を8個、作成した(以下、実施例3(a1)~(a8))という。
【0074】
実施例3(a1)~(a8)のそれぞれにおいて、F/Dを測定した。
その結果は以下の通りである。
実施例3(a1):0.039
実施例3(a2):0.041
実施例3(a3):0.041
実施例3(a4):0.040
実施例3(a5):0.047
実施例3(a6):0.041
実施例3(a7):0.044
実施例3(a8):0.045
実施例3(平均値):0.042
【0075】
実施例3(a1)~(a8)のそれぞれにおいて、AをLに対する比率として算出した。その結果を図6に併せて示す。
【0076】
図6に示されるように、F/Dが0.01近傍では、フレキシャ離間開始位置35までの距離Aにバラつきが見られたが、F/Dが0.02以上となると、フレキシャ離間開始位置35までの距離Aのバラつきが減少していることを確認された。
フレキシャ離間開始位置のバラつきは、同一寸法の磁気ヘッドサスペンション間におけるジンバル特性の不均一さを招くことになる。このことから、F/Dが0.02以上であることが好ましいと理解できる。
【0077】
・検証2
前記実施例1(a1)~(a6)、前記実施例2(a1)~2(a7)及び前記実施例3(a1)~(a8)のそれぞれについて、フレキシャ部40のねじれ1次モード共振周波数及びねじれ2次共振周波数を測定した。
【0078】
図7に、検証2における測定方法の模式平面図を示す。
図7に示すように、検証2においては、磁気ヘッドスライダ50が装着された状態の実施例1~3を、前記磁気ヘッドスライダ50が3.5インチのディスク面100上に位置するようにジグ110に固定した。
【0079】
この状態で、前記ディスク面100を毎分10000回転させ、前記ディスク面100からの風圧によってディスク面上で加振される前記磁気ヘッドスライダ50の変位量を、サスペンション幅方向外方に設置したレーザートップラー変位測定機120で測定し、測定された時間基準の信号を周波数基準の信号に変換して、フレキシャ部40のねじれ1次共振周波数及びねじれ2次共振周波数を算出した。
【0080】
図8に、F/Dとフレキシャ部40のねじれ1次共振周波数との関係を示す。
図8から、F/Dを大きくするほど、フレキシャ部40の捩れ1次モードの共振周波数を上昇させることができ、且つ、捩れ1次モードの振動特性のバラつきを抑え得ることが理解できる。
【0081】
図9に、F/Dとフレキシャ部40のねじれ2次共振周波数との関係を示す。
図9から、
・F/Dが0.01では、フレキシャ部40のねじれ2次モードの共振周波数にバラつきが生じていること、
・F/Dが0.02以上であれば、フレキシャ部40のねじれ2次モードの共振周波数を上昇させることができ、さらに、フレキシャ部40のねじれ2次モードの共振周波数のバラつきを抑え得ることが理解できる。
【0082】
図8及び図9から、フレキシャ部40のねじれ1次及び2次モードの共振周波数の観点からは、F/Dが0.02以上であることが好ましいと理解できる。
【0083】
・検証3
前記実施例1(a1)~(a6)、前記実施例2(a1)~2(a7)及び前記実施例3(a1)~(a8)のそれぞれについて、有限要素法(FEM)を用いて、前記タング領域415のピッチ剛性及びロール剛性の解析を行った。
【0084】
ピッチ方向剛性については、磁気ヘッドスライダ50が装着された前記実施例1~3のモデルにおいて、前記磁気ヘッドスライダ50の長手方向先端側及び基端側にディスク面と直交するZ方向に関し逆向きの1.0mgfの荷重を掛けた状態における、前記磁気ヘッドスライダ50のピッチ方向の変位量に基づき、単位角度(rad)当たりの力のモーメントを有限要素法によって算出し、それをピッチ方向剛性とした。
【0085】
ロール剛性については、前記磁気ヘッドスライダ50が装着された前記実施例1~3のモデルにおいて、前記磁気ヘッドスライダ50の短手方向一方側及び他方側にZ方向に関し逆向きの1.0mgfの荷重を掛けた状態における、前記磁気ヘッドスライダ50のロール方向の変位量に基づき、単位角度(rad)当たりの力のモーメントを有限要素法によって算出し、それをロール方向剛性とした。
【0086】
F/Dとピッチ剛性及びロール剛性との関係を図10に示す。
ディスク面への前記磁気ヘッドスライダ50の追従性を向上させる為には、前記タング領域415のピッチ剛性及びロール剛性を低減させることが好ましい。
この点を考慮すると、図10から、F/Dが0.01~0.05であることが好ましいと理解できる。
【0087】
以上の前記検証1~3の結果から、F/Dが0.02~0.05となるように構成することが好ましく、より好ましくは、0.04~0.05となるように構成することが好ましいと理解できる。
【符号の説明】
【0088】
1 磁気ヘッドサスペンション
10 支持部
20 荷重曲げ部
30 ロードビーム部
31 本体部
32 フランジ部
33 ディンプル
35 LB曲げ位置
40 フレキシャ部
50 磁気ヘッドスライダ
91 LB第1溶接点
92 LB第2溶接点
95 支持片溶接点
410 フレキシャ基板
411 本体領域
412 支持片
412a 折り曲げ部
415 タング領域
CL サスペンション長手方向中心線
【要約】
本発明の磁気ヘッドサスペンションにおいて、フレキシャ基板の本体領域は、ロードビーム部のねじれ振動のゲインを低減させる為のLB曲げの位置を挟んでサスペンション長手方向先端側及び基端側にそれぞれ位置するF/L第1溶接点及びF/L第2溶接点を含む複数の溶接点でロードビーム部に固着され、フレキシャ基板の一対の支持片は、先端部がタング領域よりサスペンション長手方向先端側に配置された支持片溶接点でロードビーム部に固着されている。LB曲げ位置での曲げのサスペンション長手方向先端側の終端とF/L第1溶接点との間に延びる平坦領域のサスペンション長手方向長さをFとし、且つ、F/L第1溶接点及び支持片溶接点の間のサスペンション長手方向長さをDとした場合に、0.02≦F/D≦0.05を満たしている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10