(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】塗工装置
(51)【国際特許分類】
F04C 14/00 20060101AFI20230905BHJP
F04C 2/107 20060101ALI20230905BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
F04C14/00 E
F04C2/107
B05C5/02
(21)【出願番号】P 2019194537
(22)【出願日】2019-10-25
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000240341
【氏名又は名称】株式会社ヒラノテクシード
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】大下 博史
(72)【発明者】
【氏名】戸倉 康裕
(72)【発明者】
【氏名】工藤 晨
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-045497(JP,A)
【文献】特開2018-091263(JP,A)
【文献】特開2002-219400(JP,A)
【文献】特開2003-190867(JP,A)
【文献】特開2013-087665(JP,A)
【文献】特開2003-236444(JP,A)
【文献】特開2008-127993(JP,A)
【文献】特開2001-046940(JP,A)
【文献】特開2002-203867(JP,A)
【文献】特開2007-260565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 14/00
F04C 2/107
B05C 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定量ポンプ駆動装置を有する塗工液の塗工装置であって、
前記定量ポンプ駆動装置は、
単位時間当たり一定量の塗工液を供給する
回転容積式一軸偏心ネジポンプである定量ポンプと、
ポンプモータと、
前記ポンプモータに連結された減速装置と、
前記減速装置の駆動軸と前記定量ポンプの入力軸を連結して、
前記駆動軸と前記入力軸の捩り角を監視用トルク値として検出し、検出した前記監視用トルク値を、前記塗工液の粘度として時系列に出力する監視用トルク計と、
を有し、
前記定量ポンプから前記塗工液が供給され、かつ、搬送されるウエブに前記塗工液を塗工する塗工部を有する、
塗工装置。
【請求項2】
前記塗工部は、ダイであって、
前記ダイの内部に液溜め部が設けられ、
前記塗工液を前記定量ポンプから前記液溜め部に供給する供給口が前記ダイに設けられ、
前記液溜め部から液通路を通り、前記塗工液を前記ウエブに吐出する吐出口が前記ダイに設けられている、
請求項
1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記監視用トルク計が検出した前記監視用トルク値が基準トルク範囲外のときに第1警告を報知する制御部を有する、
請求項
2に記載の塗工装置。
【請求項4】
前記液溜め部に前記塗工液の液圧を検出し、検出した前記液圧を時系列に出力する液圧センサを有する、
請求項
3に記載の塗工装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記液圧センサが検出した前記液圧が基準液圧範囲外のときに第2警告を報知する、
請求項
4に記載の塗工装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記監視用トルク計が検出した前記監視用トルク値が前記基準トルク範囲外で、かつ、前記液圧センサが検出した前記液圧が前記基準液圧範囲外のときに第3警告を報知する、
請求項
5に記載の塗工装置。
【請求項7】
前記ポンプモータは、サーボモータである、
請求項
1に記載の
塗工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィルム、金属箔などの長尺状のウエブに塗工液を塗工する場合には、定量ポンプからダイに塗工液を供給し、このダイからウエブに塗工液を塗工している。このダイに塗工液を供給する定量ポンプとしては、例えば回転容積式一軸偏心ネジポンプ(以下、単に「ネジポンプ」という)が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ネジポンプは、塗工液などの流体を単位時間当たり一定量供給することはできるが、この供給される流体に関して異物が混じったり粘度が変化した場合にそれを検出する機構を有していないという問題点があった。
【0005】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、定量ポンプで送られる流体に粘度が変化したり異物が混じったりしたのを監視できる塗工装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、定量ポンプ駆動装置を有する塗工液の塗工装置であって、前記定量ポンプ駆動装置は、単位時間当たり一定量の塗工液を供給する回転容積式一軸偏心ネジポンプである定量ポンプと、ポンプモータと、前記ポンプモータに連結された減速装置と、前記減速装置の駆動軸と前記定量ポンプの入力軸を連結して、前記駆動軸と前記入力軸の捩り角を監視用トルク値として検出し、検出した前記監視用トルク値を、前記塗工液の粘度として時系列に出力する監視用トルク計と、を有し、前記定量ポンプから前記塗工液が供給され、かつ、搬送されるウエブに前記塗工液を塗工する塗工部を有する、塗工装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、監視用トルク計が出力した監視用トルク値から、流体の粘度が変化したり、流体に異物が混ざっていたりすることを監視できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態を示す塗工装置の説明図である。
【
図4】監視用トルク計で計測した監視用トルク値の時系列の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態の定量ポンプ駆動装置50とそれを用いた塗工装置10について
図1~
図4を参照して説明する。本実施形態においては、塗工装置10は、例えばフィルム、二次電池などに用いられる金属箔などの長尺状のウエブWに塗工液を塗工するものであり、定量ポンプ駆動装置50は塗工液を流体として供給するものである。
【0010】
(1)塗工装置10
塗工装置10について
図1を参照して説明する。塗工装置10は、水平に配されたダイ12と、ダイ12の側方に配されたバックアップロール14とを有している。
【0011】
ダイ12は、上本体16と下本体18とよりなり、上本体16の前部縦断面は三角形に形成され、下本体18の前部縦断面も三角形に形成され、上本体16と下本体18を組み合わせた場合に嘴状に前部ほど細くなる形状となっている。上本体16と下本体18の平面形状は長方形である、左右方向(幅方向)の長さは、ウエブWより長く形成されている。下本体18には、左右方向に液溜め部20が形成されている。上本体16と下本体18とを不図示のシムを介して取り付けた場合に、液溜め部20から前端部に向かって液通路22が形成され、液通路22の前端部の幅方向にスリット状となった吐出口24が形成されている。下本体18における液溜め部20には、塗工液を供給するための供給口26が設けられている。液溜め部20の内部には、塗工液の液圧を検出するための液圧センサ34が設けられている。
【0012】
バックアップロール14は、ダイ12の吐出口24の近傍に配され、
図1においてはウエブWを下から上に抱きかかえて搬送する。このバックアップロール14は、主モータ28によってウエブWの搬送速度に合わせて回転する。
【0013】
また、塗工装置10は、塗工液を溜めるための液タンク30と、液タンク30からの塗工液をダイ12の供給口26に、単位時間当たり一定量供給する定量ポンプ52とを有している。
【0014】
さらに、塗工装置10は、装置全体を制御するためのコンピュータよりなる制御部32を有している。制御部32には、定量ポンプ52、液圧センサ34、主モータ28が接続されている。
【0015】
(2)定量ポンプ駆動装置50
次に、定量ポンプ駆動装置50について
図2と
図3を参照して説明する。
【0016】
定量ポンプ駆動装置50は、定量ポンプ52、ポンプモータ54、減速装置56、監視用トルク計58を有している。
【0017】
ポンプモータ54は、例えばサーボモータよりなり回転速度とトルクを制御することができる。減速装置56は、ポンプモータ54の回転速度を減速させ、駆動軸60から出力する。監視用トルク計58の一方は、この駆動軸60に取り付けられ、他方は定量ポンプ52の入力軸68に取り付けられている。
【0018】
(3)定量ポンプ52
次に、定量ポンプ52について
図3を参照して説明する。定量ポンプ52は、回転容積式一軸偏心ネジポンプ(例えば、モーノポンプ(登録商標))であり、無脈動、単位時間当たり一定量の供給が可能なポンプである。この定量ポンプ52は、雄ネジからなるロータ62と、雌ネジからなるステータ64を有し、ステータ64の中にロータ62が差し込まれ、その隙間にキャビティ66という独立した一連の密閉空間が形成されている。
【0019】
監視用トルク計58に接続され、減速装置56の回転力によって回転する入力軸68と、ロータ62の基部とは、偏心回転部70で接続されている。偏心回転部70は、連結軸72と、ロータ62の基部に設けられた連結体74と、入力軸68の先端に設けられた連結体76と、連結体74と連結体76とを連結する連結軸72よりなる。この偏心回転部70は、入力軸68に対しロータ62を偏心回転させることができる。連結軸72としては、例えばカップリングロッドやスクリューロッドなどによって構成されている。また、連結体74,76は、例えばユニバーサルジョイントなどによって構成されている。
【0020】
入力軸68は、ケーシング78に対しベアリング80によって回転自在に支持されている。ケーシング78の上部には塗工液が供給される供給口82が設けられ、その内部には液収納空間84が形成されている。液収納空間84とベアリング80との間には、塗工液が外部に漏れるのを防止するためのメカニカルシールやグランドパッキンなどからなる軸封装置86が設けられている。そして、この液収納空間84内部に偏心回転部70が収納されている。
【0021】
供給口82から供給された塗工液は、液収納空間84を通ってロータ62の回転によって複数のキャビティ66に順番に送られる。送られた塗工液は、最後にステータ64の先端にある吐出口88から塗工液を吐出する。
【0022】
この場合に、ロータ62がステータ64内部で回転することにより、高粘度の塗工液を吸い込み強い吸収力を発生させながら、新しいキャビティ66が次々と生み出され、吐出口88側へと移動していく。すなわち、液収納空間84からキャビティ66内に吸い込まれた塗工液は、ポンプモータ54の回転速度が一定であれば、密閉された空間(キャビティ66)毎に前へ前へと連続移送される。キャビティ66の断面積は、ロータ62の位置に係わらず、どの瞬間でも一定であるため、吐出される塗工液の量が常に一定になり、単位時間当たりの吐出量はロータ62(ポンプモータ54)の回転速度に正比例する。
【0023】
(4)定量ポンプ駆動装置50の監視機構
次に、定量ポンプ駆動装置50の監視用トルク計58による監視機構について説明する。上記のような定量ポンプ52は塗工液を単位時間当たり一定量で吐出できる。そのため、塗工液に多少の粘度の変化があっても、確実に単位時間当たり一定量の塗工液をダイ12に供給できる。
【0024】
ダイ12で塗工液をウエブWに塗工する場合には、塗工液の粘度は非常に重要であり、塗工厚さを均一にするためには、粘度をできるだけ一定にし、又、異物の混入がない必要がある。しかし、塗工作業中にこの塗工液の粘度の変化を測定することは従来困難であった。
【0025】
そこで本発明者は、実験を重ねることにより、塗工液の粘度が変化したり、又、異物が混入したりした場合には、定量ポンプ52の入力軸68の監視用トルク値(減速装置56の駆動軸60と定量ポンプ52の入力軸68との捩り角)が変化することを発見した。
【0026】
図4は、その実験によって得られたグラフであり、縦軸が監視用トルク値T、横軸が時間tである。この場合に、塗工液の粘度がほぼ一定で、異物の混入がない場合には、監視用トルク値は基本トルク範囲内に納まっているが、塗工液の粘度が当初の粘度よりも高い粘度になったり、低い粘度になったり、異物の混入があると、この基準トルク範囲よりも外に監視用トルク値が振れている。なお、ポンプモータ54は、サーボモータを用いているため、トルク値を制御することができるが、減速装置56が設けられているため、減速装置56の駆動軸60が、そのサーボモータの監視用トルク値と定量ポンプ52の入力軸68の監視用トルク値とは一致しないため、監視用トルク計58が必要となる。
【0027】
以上により本実施形態の定量ポンプ駆動装置50の監視用トルク計58は、減速装置56の駆動軸60と定量ポンプ52の入力軸68との捩り角を監視用トルク値として時系列に制御部32に出力する。そして、制御部32では、その監視用トルク値をモニターやプリンタで出力する。作業員はその監視用トルク値の出力を見て現在の塗工液の粘度と異物の混入を確認できる。
【0028】
制御部32は、監視用トルク計58からの監視用トルク値を出力する方法として、モニターやプリンタ以外に、その監視用トルク値が基準トルク範囲外になった場合に、第1アラームを鳴らして作業員に警告する。
【0029】
また、制御部32は、液圧センサ34が設けられているため、液溜め部20内の塗工液の液圧が、基準液圧範囲より高くなったり、低くなったりした場合に、第1アラームとは異なる第2アラームを鳴らして、作業員に警告する。
【0030】
さらに、制御部32は、監視用トルク値が基準トルク範囲外であり、かつ、液圧が基準液圧範囲外であるときには、第1アラームと第2アラームとは異なる第3のアラームを鳴らして、作業員に警告する。
【0031】
(5)効果
本実施形態によれば、ダイ12に供給される塗工液の液圧が変化したり異物が混入したりするのを、監視用トルク計58からの監視用トルク値の出力により作業員は確認できる。
【0032】
また、監視用トルク計58の監視用トルク値が基準トルク範囲外になった場合には、第1のアラームによって作業員は知ることができる。
【0033】
また、ダイ12の液溜め部20内の液圧が基準液圧範囲外になった場合には、第2のアラームによって作業員は知ることができる。
【0034】
さらに、監視用トルク値が基準トルク範囲外になり、かつ、液圧が基準液圧範囲外になって、塗工液により異常が発生していることが高いときには第3のアラームによって作業員は知ることができる。
【0035】
なお、第1、第2、第3のアラームについては、基準液圧範囲外の値は電気的(タッチパネルなど)に設定することが可能であり、様々な塗工液に対応できる。
【変更例】
【0036】
上記実施形態では、定量ポンプ52として回転容積式一軸偏心ネジポンプを用いたが、これに代えて歯車の歯の噛み合わせ部分を使って流体を供給する歯車ポンプ(ギアポンプ)を用いてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、塗工部としてダイ12を用いたが、これ以外の塗工手段を用いてもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、塗工装置に用いられる定量ポンプに監視用トルク計58を用いたが、これに限らず、定量ポンプを用いて流体を供給する装置に本発明を適用してもよい。例えば、食品加工装置、薬供給装置などである。
【0039】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行う ことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
10・・・塗工装置、12・・・ダイ、20・・・液溜め部、32・・・制御部、34・・・液圧センサ、50・・・定量ポンプ駆動装置、52・・・定量ポンプ、54・・・ポンプモータ、56・・・減速装置、58・・・監視用トルク計、60・・・駆動軸、62・・・ロータ、64・・・ステータ、68・・・入力軸