IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-タイヤ 図1
  • 特許-タイヤ 図2
  • 特許-タイヤ 図3
  • 特許-タイヤ 図4
  • 特許-タイヤ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20230905BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C11/03 100C
B60C11/12 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019211364
(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公開番号】P2021079902
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】生野 裕亮
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-44901(JP,A)
【文献】特開2011-201337(JP,A)
【文献】特開平4-201610(JP,A)
【文献】特開2011-105074(JP,A)
【文献】特開2015-30412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に設けられたタイヤ周方向に延びる陸部と、前記陸部に設けられたタイヤ周方向に延びるジグザグサイプとを備え、前記ジグザグサイプは、タイヤ周方向に対してタイヤ幅方向の一方側に傾斜して延びる第1サイプ部とタイヤ周方向に対してタイヤ幅方向の他方側に傾斜して延びる第2サイプ部とをタイヤ周方向に交互に配置してなり、前記第1サイプ部のタイヤ周方向一方側の端部と前記第2サイプ部のタイヤ周方向一方側の端部がそれぞれ除去され、前記除去された両サイプ部分の合計長さ以上の長さを持つ補足サイプ部が前記第1サイプ部に繋がることなく前記第2サイプ部のタイヤ周方向他方側の端部に繋げて設けられた、タイヤ。
【請求項2】
前記補足サイプ部が前記第1サイプ部のタイヤ周方向一方側における延長線上に設けられた、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記陸部はタイヤ幅方向における外側の縁部と内側の縁部を備え、前記外側の縁部にタイヤ幅方向に延びる第1ノッチが設けられ、前記第1サイプ部のタイヤ周方向他方側の端部が前記第1ノッチに繋げて設けられた、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記陸部はタイヤ幅方向における外側の縁部と内側の縁部を備え、前記内側の縁部にタイヤ幅方向に延びる第2ノッチが設けられ、前記補足サイプ部が前記第2ノッチに繋げて設けられた、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第2サイプ部と前記補足サイプ部との接続部に鋭角状の角部が形成され、前記角部が面取りされた、請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
トレッド部に設けられたタイヤ周方向に延びる陸部に、タイヤ周方向に延びるジグザグサイプを設けたタイヤが知られている。かかるジグザグサイプはタイヤ幅方向におけるエッジ効果を発揮する。また、タイヤ周方向(タイヤ前後方向と同じ)におけるエッジ効果を発揮するために、タイヤ周方向に延びる陸部の縁部にタイヤ幅方向に延びるノッチを設けることがある。ここで、エッジ効果とは、サイプやノッチなどにより形成される陸部の角で氷雪路などの滑りやすい路面を引っ掻くことでグリップ力を増す効果をいう。
【0003】
特許文献1,2には、タイヤ周方向に延びる陸部にタイヤ周方向に延びるジグザグ状の細溝を設けるとともに、該陸部の両側の縁部にタイヤ幅方向に延びる横溝を設け、細溝を横溝に繋げて周方向主溝に連通させたトレッドパターンを持つタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-097795号公報
【文献】WO2008/146851A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなタイヤ周方向に延びるジグザグサイプは、タイヤ周方向に連続しているために、陸部の剛性低下による耐摩耗性の低下を招く場合がある。特に、ジグザグサイプがその屈曲部において上記のような陸部の縁部に開口したノッチに繋げられていると、その部分での剛性低下が大きく、耐摩耗性が損なわれる。
【0006】
本発明の実施形態は、エッジ効果を維持しつつ耐摩耗性を向上することができるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係るタイヤは、トレッド部に設けられたタイヤ周方向に延びる陸部と、前記陸部に設けられたタイヤ周方向に延びるジグザグサイプとを備え、前記ジグザグサイプは、タイヤ周方向に対してタイヤ幅方向の一方側に傾斜して延びる第1サイプ部とタイヤ周方向に対してタイヤ幅方向の他方側に傾斜して延びる第2サイプ部とをタイヤ周方向に交互に配置してなり、前記第1サイプ部のタイヤ周方向一方側の端部と前記第2サイプ部のタイヤ周方向一方側の端部がそれぞれ除去され、前記除去された両サイプ部分の合計長さ以上の長さを持つ補足サイプ部が前記第1サイプ部に繋がることなく前記第2サイプ部のタイヤ周方向他方側の端部に繋げて設けられたものである。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によれば、タイヤ周方向に延びるジグザグサイプを設けたものにおいて、当該ジグザグサイプの特定の一部を除去して非連続としたことにより、ジグザグサイプを設けたことによる陸部の剛性低下を抑えて耐摩耗性を向上することができる。また、除去したサイプ長さ以上の長さを持つ補足サイプ部を、上記非連続の形態を維持したまま追加したことにより、エッジ効果を維持することかできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るタイヤのトレッドパターンを示す展開図
図2】同トレッドパターンの要部拡大図
図3図2の要部を更に拡大して示す図(但し、細サイプは省略して示す)
図4図2のIV-IV線断面図
図5】他の実施形態に係るタイヤのトレッドパターンの要部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
一実施形態に係るタイヤは、空気入りタイヤであり、左右一対のビード部及びサイドウォール部と、左右のサイドウォール部の径方向外方端部同士を連結するように両サイドウォール部間に設けられたトレッド部とを備えて構成されている。タイヤの内部構成は、特に限定されず、例えば、ビード部に埋設された環状のビードコアと、一対のビード部間にトロイダル状に延びるラジアル構造のカーカスプライと、トレッド部においてカーカスプライのタイヤ径方向外側に設けられたベルト及びトレッドゴム等を有して構成される。本実施形態では、トレッドパターン以外については一般的なタイヤ構造を採用することができる。
【0012】
なお、本明細書における各形状及び寸法等は、特に断らない限り、タイヤを正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷の正規状態でのものである。正規リムとは、JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、又はETRTO規格における「Measuring Rim」である。正規内圧とは、JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の「最大値」、又はETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」である。
【0013】
図1は、一実施形態に係るタイヤのトレッド部10の一部展開図である。図中、符号CLは、タイヤ幅方向中心に相当するタイヤ赤道面を示す。符号WDは、タイヤ幅方向(タイヤ軸方向とも称される。)を示し、タイヤ幅方向WD内側とはタイヤ赤道面CLに近づく方向をいい、タイヤ幅方向WD外側とはタイヤ赤道面CLから離れる方向をいう。符号CDは、タイヤ回転軸を中心とした円周上の方向であるタイヤ周方向を示す。
【0014】
図1に示すタイヤは、車両に装着される際の表裏の指定があるタイヤであり、すなわち、車両に装着する際に外側に装着される面と内側に装着される面とが指定されている。そのため、タイヤの例えばサイド部には、車両への装着向きを指定するための表示が設けられている。図1中、符号OUTで示す側が車両装着姿勢において外側(車両外側)に向き、符号INで示す側が車両装着姿勢において内側(車両内側)に向くように、車両に装着される。
【0015】
トレッド部10の表面には、タイヤ周方向CDに延びる複数の主溝12がタイヤ幅方向WDに間隔をおいて設けられている。この例では、主溝12は3本、即ち、タイヤ赤道面CL上に位置するセンター主溝12Aと、その両側に配された一対のショルダー主溝12B,12Bが設けられており、いずれもタイヤ周方向CDに平行に延びるストレート状である。なお、主溝12は、一般に5mm以上の溝幅(開口幅)を持つ周方向溝である。
【0016】
トレッド部10には主溝12によって複数の陸部が区画形成されている。詳細には、センター主溝12Aとショルダー主溝12Bとの間に挟まれた左右のセンター陸部14,16と、ショルダー主溝12Bのタイヤ幅方向WD外側に位置して接地端を含む左右のショルダー陸部18,20が設けられている。センター陸部14,16は、タイヤ周方向CDに連続するリブとして形成されており、ショルダー陸部18,20は、タイヤ幅方向WDに延びて当該陸部を横断する横溝22をタイヤ周方向CDに間隔をおいて設けることにより複数のブロックをタイヤ周方向CDに配設してなるブロック列として形成されている。
【0017】
この例ではトレッドパターンはタイヤ赤道面CLに関して非対称であり、4つの陸部のうち車両内側INのセンター陸部14のトレッドパターンに特徴がある。以下、このセンター陸部14のトレッドパターンについて詳細に説明する。
【0018】
センター陸部14は、隣接する2本の主溝12により挟まれてタイヤ周方向CDに延びるリブ状の陸部である。センター陸部14にはタイヤ周方向CDに延びるジグザグサイプ24が設けられている。ジグザグサイプ24は、直線が交互に右、左と折れ曲がった形を基本形状としてタイヤ周方向CDに延びるサイプであり、センター陸部14のタイヤ幅方向WDにおける中央部に設けられている。
【0019】
図2に示すように、ジグザグサイプ24は、第1サイプ部26と第2サイプ部28とをタイヤ周方向CDに交互に配置してなる。第1サイプ部26は、タイヤ周方向CDに対してタイヤ幅方向WDの一方側(図では右側)に傾斜して延びる直線状のサイプ部分であり、第2サイプ部28は、タイヤ周方向CDに対してタイヤ幅方向WDの他方側(図では左側)に傾斜して延びる直線状のサイプ部分である。第1サイプ部26と第2サイプ部28は、鈍角状の屈曲部30を介してタイヤ周方向CDに繰り返し配置しており、従って、第1サイプ部26と第2サイプ部28とのなす角度θは鈍角である。角度θは特に限定されず、例えば100°以上170°以下でもよく、120°以上160°以下でもよい。なお、第1サイプ部26と第2サイプ部28のタイヤ周方向CDに対する傾斜角度は、同一でも異なってもよいが、この例では同じ大きさに設定されている。
【0020】
ジグザグサイプ24は、タイヤ周方向CDに連続しておらず断続して延びている。図3に拡大して示すように、第1サイプ部26のタイヤ周方向CDにおける一方側CD1の端部26Aと第2サイプ部28のタイヤ周方向CDにおける一方側CD1の端部28Aは、それぞれ除去されている。そして、これら除去された両サイプ部分(即ち、上記端部26A,28A)の合計長さ以上の長さを持つ補足サイプ部32が、第1サイプ部26に繋がることなく第2サイプ部28のタイヤ周方向CDにおける他方側CD2の端部28Bに繋げて設けられている。
【0021】
詳細には、第1サイプ部26は、その上記一方側CD1の端部26Aが切除されて、当該第1サイプ部26とともに屈曲部30を構成する第2サイプ部28のタイヤ周方向CDにおける他方側CD2の端部28Bから切り離されている。また、第2サイプ部28は、タイヤ周方向CDに関して第1サイプ部26と同じ側の上記一方側CD1の端部28Aが切除されて、当該第2サイプ部28とともに屈曲部30を構成する第1サイプ部26のタイヤ周方向CDにおける他方側CD2の端部26Bから切り離されている。そのため、ジグザグサイプ24は、タイヤ幅方向WDの一方側に傾斜して延びる第1サイプ部26及びその端部26Aが除去されてなる第1除去部と、タイヤ幅方向WDの他方側に傾斜して延びる第2サイプ部28及びその端部28Aが除去されてなる第2除去部とを、タイヤ周方向に交互に配置した構成を持ち、屈曲部30に位置する上記第1及び第2除去部を切れ目とする断続状をなしている。
【0022】
このようにして除去される端部26A,28Aの長さL3,L4は特に限定されず、例えば除去前の第1サイプ部26及び第2サイプ部28のそれぞれの長さL1,L2に対して3%以上20%以下でもよく、5%以上15%以下でもよい。ここで、除去前の第1サイプ部26及び第2サイプ部28の長さL1,L2は、それぞれその延在方向での長さであり、後述する第1ノッチ44に繋げられた場合でも図3に示すように第1サイプ部26をそのまま第1ノッチ44内に延長した仮想線を引いて該仮想線部分も含めた延在長さを求めることとする。除去する端部26A,28Aの長さL3,L4も同様に、それぞれその延在方向での長さである。
【0023】
補足サイプ部32は、上記のようにサイプを除去することによるエッジ効果の減少を補うために設けられるサイプ部分である。そのため、除去された上記端部26A,28Aの合計長さ以上の長さを持つ。すなわち、補足サイプ部32の長さL5は、L5≧L3+L4に設定される(L3:除去する端部26Aの長さ、L4:除去する端部28Aの長さ)。特に限定しないが、補足サイプ部32の長さL5は(L3+L4)に対して100~350%でもよく、110~250%でもよい。ここで、補足サイプ部32の長さL5は、図3に示すように第2サイプ部28に対する接続端から先端32Aまでの延在方向での長さであり、後述する第2ノッチ46に繋げられる場合、第2ノッチ46に対する接続端までの長さ(第2ノッチ46部分は含めない)である。
【0024】
補足サイプ部32は、第1サイプ部26の上記一方側CD1の端部26Aと第2サイプ部28の上記他方側CD2の端部28Bとの間の屈曲部30において、第1サイプ部26には接続されることなく、第2サイプ部28の他方側CD2の端部28Bに接続されている。このように端部26Aを除去した第1サイプ部26との分離状態を維持しながら補足サイプ部32を設けることにより、エッジ効果と耐摩耗性を両立することができる。
【0025】
補足サイプ部32は、第1サイプ部26のタイヤ周方向一方側CD1における延長線34上に設けられることが好ましい。このように補足サイプ部32を第1サイプ部26の延長線34に沿って延在させることにより、除去したサイプ部分である端部26A,28Aと同等の傾斜角度を持つサイプ成分が追加されることになり、同等のエッジ効果を確保しやすくなる。
【0026】
補足サイプ部32を上記延長線34上に設けたことにより、第2サイプ部28と補足サイプ部32との接続部には鋭角状の陸部である角部36が形成されている。そして、この例では、該鋭角状の角部36が面取りされている。詳細には、図3及び図4に示すように、鋭角状の角部36は、その角をそぐことで傾斜面38を持たせるように面取りされている。傾斜面38は、角部36の頂点に向かって接地面10Aから漸次落ち込むように傾斜しており、すなわち、頂点に近づくほどジグザグサイプ24の溝底に近づくように傾斜している。
【0027】
図1に示すように、センター陸部14は、タイヤ幅方向WDにおける外側の縁部40と内側の縁部42とを備える。外側の縁部40はショルダー主溝12Bに面する縁部であり、内側の縁部42はセンター主溝12Aに面する縁部である。
【0028】
外側の縁部40には、タイヤ幅方向WDに延びる第1ノッチ44が、タイヤ周方向CDに間隔をおいて複数設けられている。第1ノッチ44は、その延在方向の一端がショルダー主溝12Bに開口し、他端がセンター陸部14内で終端する横溝状の切れ込みであり、タイヤ幅方向WDに平行でなくてもよく、即ちタイヤ幅方向WDに対して傾斜してもよい。第1ノッチ44のタイヤ幅方向WDにおける延在長さL6(図2参照)は特に限定されないが、センター陸部14の幅W1の50%以下であることが好ましく、20~45%でもよい。ここで、第1ノッチ44の延在長さL6は、複数の第1ノッチ44においてそれらの延在長さが異なる場合、最大の延在長さを持つものの延在長さである。
【0029】
図2に示すように、タイヤ周方向CDに複数設けられた第1ノッチ44は、第1サイプ部26に接続されたものと接続されていないものとをタイヤ周方向CDに交互に配置してなる。
【0030】
詳細には、第1サイプ部26のタイヤ周方向他方側CD2の端部26Bが、第1ノッチ44に繋げて設けられている。そのために、第1ノッチ44は、複数の第1サイプ部26の端部26Bに対応する位置にそれぞれ設けられており、各々の先端部が対応する第1サイプ部26の端部26Bに接続されている。一方、第2サイプ部28は第1ノッチ44には接続されておらず、図3に示すように上記一方側CD1の端部28Aを除去することで、第1ノッチ44から切り離されている。これにより、第1ノッチ44近傍での剛性を高めて耐摩耗性を向上することができる。
【0031】
また、このようにして第1サイプ部26と接続された2つの第1ノッチ44,44間に、第1サイプ部26と接続されていない非接続の第1ノッチ44が設けられている。この非接続の第1ノッチ44は、第2サイプ部28とも接続されていない。
【0032】
図2に示すように、内側の縁部42には、タイヤ幅方向WDに延びる第2ノッチ46が、タイヤ周方向CDに間隔をおいて複数設けられている。第2ノッチ46は、その延在方向の一端がセンター主溝12Aに開口し、他端がセンター陸部14内で終端する横溝状の切れ込みであり、タイヤ幅方向WDに平行でなくてもよく、即ちタイヤ幅方向WDに対して傾斜してもよい。第2ノッチ46のタイヤ幅方向WDにおける延在長さL7(図3参照)は特に限定されないが、第1ノッチ44の延在長さL6よりも小さく、例えばセンター陸部14の幅W1の30%以下であることが好ましく、15~30%でもよい。ここで、第2ノッチ46の延在長さL7は、複数の第2ノッチ46においてそれらの延在長さが異なる場合、最大の延在長さを持つものの延在長さである。
【0033】
図2に示すように、タイヤ周方向CDに複数設けられた第2ノッチ46は、補足サイプ部32に接続されたものと接続されていないものとをタイヤ周方向CDに交互に配置してなる。
【0034】
詳細には、補足サイプ部32の先端32A(第2サイプ部28との接続端とは反対側の端部)が第2ノッチ46に繋げて設けられている。そのために、第2ノッチ46は、複数の補足サイプ部32の先端32Aに対応する位置にそれぞれ設けられており、各々の先端部が対応する補足サイプ部32の先端32Aに接続されている。
【0035】
また、このようにして補足サイプ部32と接続された2つの第2ノッチ46,46間に、ジグザグサイプ24と接続されていない非接続の第2ノッチ46が設けられている。この非接続の第2ノッチ46は、補足サイプ部32と接続された第2ノッチ46よりも延在長さが短く設定されている。
【0036】
第1ノッチ44と第2ノッチ46との位置関係については、この例では、図2に示すように、タイヤ幅方向WDに対して傾斜して延びる第1ノッチ44の延長線上に第2ノッチ46が配されている。詳細には、第1サイプ部26と接続された第1ノッチ44の延長線上には補足サイプ部32が接続されていない非接続の第2ノッチ46が配されており、第1サイプ部26が接続されていない非接続の第1ノッチ44の延長線上には補足サイプ部32と接続された第2ノッチ46が配されている。
【0037】
センター陸部14には、図2に示すように、ジグザグサイプ24、第1ノッチ44及び第2ノッチ46の他に、エッジ効果を更に高めるための任意要素として複数の細サイプ48が設けられている。なお、図3では細サイプ48の図示は省略している。詳細には、隣接する2本の第1ノッチ44,44間にタイヤ幅方向WDに延びる複数の第1横細サイプ48Aが設けられるとともに、第1横細サイプ48Aと交差するようにタイヤ周方向CDに延びる複数の第1縦細サイプ48Bが設けられている。また、隣接する2本の第2ノッチ46,46間にタイヤ幅方向WDに延びる複数の第2横細サイプ48Cが設けられるとともに、第2横細サイプ48Cに交差するようにタイヤ周方向CDに延びる1本又は複数の第2縦細サイプ48Dが設けられている。
【0038】
これらの細サイプ48は、この例では、ジグザグサイプ24に繋がっていないが、ジグザグサイプ24に繋げて設けてもよい。また、細サイプ48は、この例では延在方向の全体が直線状のサイプとしたが、横断面形状が波形をなす波形部を含む波形サイプとしてもよい。
【0039】
本実施形態において、ジグザグサイプ24や細サイプ48などのサイプの溝幅は1.5mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.2~1.4mmである。ジグザグサイプ24は、細サイプ48よりも溝幅が大きいサイプであり、例えば、ジグザグサイプ24の溝幅は0.8~1.5mmでもよく、1.0~1.4mmでもよい。細サイプ48の溝幅は0.2~1.0mmでもよく、0.3~0.8mmでもよい。
【0040】
以上よりなる本実施形態に係るタイヤであると、センター陸部14において、タイヤ周方向CDにおけるエッジ効果は主として第1ノッチ44及び第2ノッチ46により発揮され、タイヤ幅方向WDにおけるエッジ効果は主としてジグザグサイプ24により発揮され、これにより全方位でのエッジ効果を持たせることができ、例えば氷雪路でのグリップ力を増すことができるので、スノー性能やアイス性能を向上することができる。
【0041】
ここにおいて、本実施形態であると、ジグザグサイプ24の各屈曲部30において第1サイプ部26の端部26Aと第2サイプ部28の端部28Bとを除去して非連続としたことにより、屈曲部30における剛性低下を抑えて耐摩耗性の向上することができる。特に、第1ノッチ44が接続された屈曲部30において、第2サイプ部28の端部28Bを第1ノッチ44から切り離したことにより、第1ノッチ44近傍での剛性低下を抑えて耐摩耗性を向上することができる。
【0042】
一方で、除去した端部26A,28Aに相当するサイプ長さ以上の長さを持つ補足サイプ部32を設けて、当該補足サイプ部32を、第1ノッチ44の端部26Aが除去された屈曲部30において、第1サイプ部26との切り離しを確保しつつ、第2サイプ部28に繋げて設けたので、上記のとおり向上した耐摩耗性を維持しつつ、エッジ効果を補うことができる。
【0043】
そのため、タイヤ周方向CDに延びるジグザグサイプ24を設けたものにおいて、エッジ効果を維持してスノー性能やアイス性能などのグリップ力を維持しつつ耐摩耗性を向上することができる。
【0044】
また、補足サイプ部32が第1サイプ部26のタイヤ周方向一方側CD1における延長線34上に設けられたので、除去したサイプ部分である端部26A,28Aと同等の傾斜角度を持つサイプ成分が追加されることになり、同等のエッジ効果を確保しやすくなる。
【0045】
また、センター陸部14の外側の縁部40に第1ノッチ44を設け、第1サイプ部26の端部26Bを第1ノッチ44に繋げて設けたので、第1ノッチ44によるタイヤ周方向CDにおけるエッジ効果を高めながら、排水性を向上することができる。
【0046】
また、センター陸部14の内側の縁部42に第2ノッチ46を設けたことによりタイヤ周方向CDにおけるエッジ効果を高めることができる。
【0047】
また、第2サイプ部28と補足サイプ部32との接続部に設けられた鋭角状の角部36を面取りして傾斜面38を持たせたことにより、鋭角状の角部36における偏摩耗を抑制することができる。
【0048】
図5は、上記実施形態のセンター陸部14における変形例を示した図である。図5に示す例のセンター陸部14Aでは、第2サイプ部28と補足サイプ部32との接続部に設けられた鋭角状の角部36が面取りされておらず、従って上記実施形態のような傾斜面38が設けられていない。このように図5に示す例では角部36が面取りされていないので、当該角部36における偏摩耗の抑制効果という点では図1~4に示す実施形態の方が有利である。図5に示す実施形態において、その他の構成及び作用効果は上記実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0049】
以上の実施形態では、一対のセンター陸部14,16のうち、車両内側INのセンター陸部14についてジグザグサイプ24を備えた構成を設けたが、かかるジグザグサイプ24を備えた構成は、車両外側OUTのセンター陸部16に適用してもよく、また、ショルダー陸部に適用してもよい。また、上記実施形態では主溝12が3本の場合について説明したが、主溝の本数は特に限定されず、例えば、4本の主溝を持つトレッドパターンにおいて、一対のセンター主溝間に設けられるセンター陸部や、センター主溝とショルダー主溝との間に設けられる中間陸部や、ショルダー主溝の外側に設けられるショルダー陸部において、同様のジグザグサイプ24を持つ構成を採用してもよい。
【0050】
本実施形態に係る空気入りタイヤとしては、乗用車用タイヤ、トラックやバスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック(例えば、SUV車やバン(ライトバン)、ピックアップトラック)用タイヤなど、各種車両用のタイヤが挙げられる。また、用途も特に限定されない。好ましくは、オールシーズンタイヤやウインタータイヤに用いることであり、またライトトラック用タイヤに用いることである。ここで、ライトトラックとは、ライトデューティートラックとも称され、アメリカ合衆国における自動車の分類で、貨物の積載量が4000ポンド(1815kg)未満のトラックまたはトラックベースの自動車をいう。
【0051】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
10…トレッド部、14…センター陸部(陸部)24…ジグザグサイプ、26…第1サイプ部、26A…第1サイプ部のタイヤ周方向一方側の端部、26B…第1サイプ部のタイヤ周方向他方側の端部、28…第2サイプ部、28A…第2サイプ部のタイヤ周方向一方側の端部、28B…第2サイプ部のタイヤ周方向他方側の端部、30…補足サイプ部、34…第1サイプ部の延長線、36…鋭角状の角部、40…センター陸部の外側の縁部、42…センター陸部の内側の縁部、44…第1ノッチ、46…第2ノッチ、WD…タイヤ幅方向、CD…タイヤ周方向
図1
図2
図3
図4
図5