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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20230905BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
B60C11/13 C
B60C11/03 300A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019187079
(22)【出願日】2019-10-10
(65)【公開番号】P2021062659
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 万友子
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-001913(JP,A)
【文献】特開2006-044470(JP,A)
【文献】特開2010-069956(JP,A)
【文献】特開平8-072510(JP,A)
【文献】特開2008-049751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延びる2本以上の主溝と、前記主溝に交差する方向に延びる複数の横溝と、前記主溝と前記横溝とにより形成された3列以上のブロック列とをトレッド部に備えた空気入りタイヤにおいて、
前記ブロック列は、タイヤ周方向に隣接するブロックを連結するように前記横溝の溝底から突出するタイバーを備え、
前記タイバーは、頂部と、前記頂部のタイヤ幅方向両側部に設けられ前記頂部から離れるほど前記溝底からの突出高さが漸次低くなる傾斜部を備え、
タイヤ赤道面から離れた位置にあるブロック列の前記タイバーほど、前記タイバーの頂部の幅方向の中心位置が、連結されるブロックの幅方向の中心位置よりもタイヤ赤道面に寄った位置にあり、
前記ブロック列の幅方向の中心位置がタイヤ赤道面から離れた位置にあるブロック列に設けられた前記タイバーの前記傾斜部は、タイヤ幅方向外側に設けられた外側傾斜部と、タイヤ幅方向内側に設けられた内側傾斜部とを備え、
タイヤ幅方向に対する前記外側傾斜部の傾斜角度が、タイヤ幅方向に対する前記内側傾斜部の傾斜角度より小さく、
前記傾斜部が、前記ブロックの幅方向両端まで延びている空気入りタイヤ。
【請求項2】
タイヤ周方向に延びる2本以上の主溝と、前記主溝に交差する方向に延びる複数の横溝と、前記主溝と前記横溝とにより形成された3列以上のブロック列とをトレッド部に備えた空気入りタイヤにおいて、
前記ブロック列は、タイヤ周方向に隣接するブロックを連結するように前記横溝の溝底から突出するタイバーを備え、
前記タイバーは、頂部と、前記頂部のタイヤ幅方向両側部に設けられ前記頂部から離れるほど前記溝底からの突出高さが漸次低くなる傾斜部を備え、
タイヤ赤道面から離れた位置にあるブロック列の前記タイバーほど、前記タイバーの頂部の幅方向の中心位置が、連結されるブロックの幅方向の中心位置よりもタイヤ赤道面に寄った位置にあり、
前記ブロック列の幅方向の中心位置がタイヤ赤道面から離れた位置にあるブロック列に設けられた前記タイバーの前記傾斜部は、タイヤ幅方向外側に設けられた外側傾斜部と、タイヤ幅方向内側に設けられた内側傾斜部とを備え、
タイヤ幅方向に対する前記外側傾斜部の傾斜角度が、タイヤ幅方向に対する前記内側傾斜部の傾斜角度より小さく、
前記主溝の溝底から前記内側傾斜部の幅方向端縁までの突出高さが、前記主溝の溝底から前記外側傾斜部の幅方向端縁までの突出高さより大きい空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記主溝の溝底から前記内側傾斜部の幅方向端縁までの突出高さが、前記主溝の溝底から前記外側傾斜部の幅方向端縁までの突出高さより大きい請求項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤにおいては、タイヤ周方向に延びる主溝と、主溝に交差する横溝とにより、トレッド部にブロック列が設けられた、いわゆるブロックパターンのタイヤが知られている。
【0003】
かかるブロックパターンのタイヤにおいて、ブロックの剛性を高めて耐ヒールアンドトウ摩耗性を向上するために、タイヤ周方向に隣接するブロック間の横溝にタイバーを設けて、前後のブロック間を繋ぐことが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1では、接地領域で受ける強制変位によりタイバーとブロックとの連結部に生じるクラックを抑えるため、トレッドセンターラインから離れたブロック列におけるタイバーほど、当該タイバーの周方向中心線が、連結されるブロックの周方向中心線よりもトレッドセンターライン寄りとなるように、タイバーが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-44470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では、タイバーがブロックの幅方向の一部分のみを連結するため、ブロックの幅方向において剛性差が大きくなりやすく、ドライ路面における制動性能の向上が小さかったり、ヒールアンドトウ摩耗の抑制効果が小さい。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、ドライ路面における制動性能を向上した上で、耐ヒールアンドトウ摩耗性および耐クラック性を向上することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延びる2本以上の主溝と、前記主溝に交差する方向に延びる複数の横溝と、前記主溝と前記横溝とにより形成された3列以上のブロック列と、をトレッド部に備えた空気入りタイヤにおいて、前記ブロック列は、タイヤ周方向に隣接するブロックを連結するように前記横溝の溝底から突出するタイバーを備え、前記タイバーは、頂部と、前記頂部のタイヤ幅方向両側部に設けられ前記頂部から離れるほど前記溝底からの突出高さが漸次低くなる傾斜部を備え、タイヤ赤道面から離れた位置にあるブロック列の前記タイバーほど、前記タイバーの頂部の幅方向の中心位置が、連結されるブロックの幅方向の中心位置よりもタイヤ赤道面に寄った位置にあるものである。
【0009】
本明細書では、特に断らない限り、空気入りタイヤの各部の寸法等は、空気入りタイヤを正規リムに装着して50kPaを充填した状態で測定される値である。正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば"Design Rim"、ETRTOであれば"MeasuringRim"である。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、ドライ路面における制動性能の向上した上で、耐ヒールアンドトウ摩耗性および耐クラック性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドパターンを示す展開図
図2図1のA-A線断面図
図3図1のA-A線断面図
図4】第2実施形態に係る空気入りタイヤの断面図
図5】第2実施形態に係る空気入りタイヤの断面図
図6】第2実施形態の変更例に係る空気入りタイヤの断面図
図7】第2実施形態の変更例に係る空気入りタイヤの断面図
図8】比較例に係る空気入りタイヤの断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
第1実施形態に係る空気入りタイヤは、左右一対のビード部及びサイドウォール部と、左右のサイドウォール部の径方向外方端部同士を連結するように両サイドウォール部間に設けられたトレッド部とを備えて構成されており、トレッドパターン以外については一般的なタイヤ構造を採用することができる。
【0014】
トレッド部10の表面には、タイヤ周方向CDに延びる3列以上の主溝11,12が設けられており、これら複数の主溝11,12によって複数の陸部がタイヤ幅方向Wに区画形成されている。
【0015】
具体的には、トレッド部10の表面には、図1に示すように、タイヤ周方向CDに沿って延びる4本の主溝11,12が設けられている。主溝11,12は、タイヤ周方向CDの全周にわたって延びるストレート状の溝であって、タイヤ赤道面CLを挟んで対称に配された一対のセンター主溝11と、一対のセンター主溝11のタイヤ幅方向外側Woに設けられた一対のショルダー主溝12とから構成されている。タイヤ幅方向外側Woとは、タイヤ幅方向Wにおいてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。
【0016】
トレッド部10には、2本のセンター主溝11の間に中央陸部14が形成され、センター主溝11とショルダー主溝12との間に中間陸部16が形成され、2本のショルダー主溝12のタイヤ幅方向外側Woにショルダー陸部18が形成されている。
【0017】
中央陸部14は、横溝20により区画された複数の中央ブロック15をタイヤ周方向CDに配設してなる中央ブロック列として形成されている。中央ブロック列は、トレッド部10において、タイヤ幅方向Wの中央部に位置するブロック列である。なお、本実施形態では、中央ブロック列を構成する中央ブロック15のタイヤ幅方向Wの中心がタイヤ赤道面CLと一致している。
【0018】
中央ブロック15,15を区画する横溝20は、タイヤ周方向CDに間隔をおいて複数設けられている。横溝20は、2本のセンター主溝11に対して交差する方向に延びて中央陸部14を横断する溝である。
【0019】
中間陸部16は、横溝22により区画された複数の中間ブロック17をタイヤ周方向CDに配設してなる中間ブロック列として形成されている。
【0020】
中間ブロック17,17を区画する横溝22は、タイヤ周方向CDに間隔をおいて複数設けられている。横溝22は、センター主溝11及びショルダー主溝12に対して交差する方向に延びて中間陸部16を横断する溝である。
【0021】
ショルダー陸部18は、横溝24により区画された複数のショルダーブロック19をタイヤ周方向CDに配設してなるショルダーブロック列として形成されている。ショルダーブロック列は、トレッド部10において、タイヤ幅方向両端部に位置するブロック列である。
【0022】
ショルダーブロック19,19を区画する横溝24は、タイヤ周方向CDに間隔をおいて複数設けられている。横溝24は、ショルダー主溝12に対して交差する方向に延びてショルダー陸部18を横断する溝である。
【0023】
中央陸部14、中間陸部16及びショルダー陸部18は、横溝20,22,24の溝底から突出するタイバー26,28,30を備える。タイバーの頂部の幅方向の中心位置は、タイヤ赤道面CLから離れた位置にあるブロック列に設けられたタイバーほど、連結されるブロックの幅方向の中心位置よりもタイヤ赤道面に寄った位置に設けられている。
【0024】
具体的には、図2に示すように、ブロック15,15を区画する横溝20には、タイヤ周方向CDに隣接するブロック15,15を連結するように横溝20の溝底から突出する中央タイバー26が設けられている。中央タイバー26は、中央陸部14を構成する中央ブロック列のタイヤ幅方向W全体に設けられている。つまり、ブロック15において横溝20に面する溝壁面が、タイヤ幅方向W全体にわたって中央タイバー26によって連結されている。
【0025】
中央タイバー26は、ブロック15の幅方向中央部に設けられた頂部26aと、頂部26aのタイヤ幅方向両側に設けられた傾斜部26bと、傾斜部26bのタイヤ幅方向両側に設けられた平坦突出部26cを備え、タイヤ赤道面CLに対して対称な形状をなしている。
【0026】
頂部26aは、中央タイバー26の中で溝底からの突出高さが最大となる部分を含む部位である。頂部26aの幅方向の中心は、中央タイバー26が連結されるブロック15の幅方向中央部と一致するように設けられている。
【0027】
傾斜部26bは、中央タイバー26において頂部26aからセンター主溝11に向かって頂部26aから離れるほどセンター主溝11からの突出高さが漸次低くなる部位である。頂部26aのタイヤ幅方向内側及び外側に設けられた傾斜部26bは、タイヤ幅方向Wに対する角度が同じ角度に設定されている。
【0028】
平坦突出部26cは、センター主溝11の溝底よりタイヤ径方向外方へ突出する凹凸のない突起からなる。平坦突出部26cは、傾斜部26bからブロック15の幅方向端までタイヤ幅方向Wへ延びている。
【0029】
タイバー26の各種寸法は特に制限されないが、図3に示すように、ブロック15の踏面からタイバー26の頂部26aまでの距離Hc1、センター主溝11の溝底から平坦突出部26cの上面までの突出高さHc3、頂部26aのタイヤ幅方向長さWc1、ブロック15の踏面のタイヤ幅方向長さWc2、頂部26aの中心からブロック15のタイヤ幅方向一方側の端部までの長さWc3、センター主溝11の溝深さGDとすると、次の式(1)~(4)を満たすように各種寸法を設定することができる。
0.3≦Hc1/GD1≦0.7…(1)
0.1≦Wc1/Wc2≦0.5…(2)
Wc3/Wc2=0.5…(3)
Hc3≧1.8mm…(4)
ブロック17,17を区画する横溝22には、タイヤ周方向CDに隣接するブロック17,17を連結するように横溝22の溝底から突出する中間タイバー28が設けられている。中間タイバー28は、中間陸部16を構成するブロック列のタイヤ幅方向W全体に設けられている。
【0030】
中間タイバー28は、頂部28aと、頂部28aのタイヤ幅方向両側に設けられた内側傾斜部28b1及び外側傾斜部28b2と、内側傾斜部28b1及び外側傾斜部28b2のタイヤ幅方向両側に設けられた平坦突出部28cを備える。
【0031】
頂部28aは、中間タイバー28の中で溝底からの突出高さが最大となる部分を含む部位である。頂部28aの幅方向の中心は、中間タイバー28が連結されるブロック17の幅方向中央部から所定距離L1だけタイヤ赤道面CLに寄った位置(タイヤ幅方向内側に寄った位置)に設けられている。
【0032】
内側傾斜部28b1は、中間タイバー28において頂部28aからセンター主溝11に向かって高さが漸次減少された部位である。外側傾斜部28b2は、中間タイバー28において頂部28aからショルダー主溝12に向かって高さが漸次減少された部位である。外側傾斜部28b2は、内側傾斜部28b1よりタイヤ幅方向外側に位置し、内側傾斜部28b1よりタイヤ赤道面CLから離れた位置に設けられている。内側傾斜部28b1及び外側傾斜部28b2は、タイヤ幅方向Wに対する角度が同じ角度に設定されている。
【0033】
平坦突出部28cは、センター主溝11及びショルダー主溝12の溝底よりタイヤ径方向外方へ突出する凹凸のない突起からなる。平坦突出部28cは、内側傾斜部28b1及び外側傾斜部28b2からブロック17の幅方向端までタイヤ幅方向Wへ延びている。
【0034】
タイバー28の各種寸法は特に制限されないが、図3に示すように、ブロック17の踏面からタイバー28の頂部28aまでの距離Hm1、センター主溝11の溝底から頂部28aのタイヤ幅方向内側に設けられた平坦突出部28cの上面までの突出高さHm2、ショルダー主溝12の溝底から頂部28aのタイヤ幅方向外側に設けられた平坦突出部28cの上面までの突出高さHm3、頂部28aのタイヤ幅方向長さWm1、ブロック17の踏面のタイヤ幅方向長さWm2、頂部28aの中心からブロック17のタイヤ幅方向内側の端部までの長さWm3、センター主溝11及びショルダー主溝12の溝深さGDとすると、次の式(5)~(9)を満たすように各種寸法を設定することができる。
0.3≦Hm1/GD≦0.7…(5)
0.1≦Wm1/Wm2≦0.5…(6)
0.1≦Wm3/Wm2≦0.4…(7)
Hm2≧1.8mm…(8)
Hm3≧1.8mm…(9)
また、ブロック19,19を区画する横溝24には、タイヤ周方向CDに隣接するブロック19,19を連結するように横溝24の溝底から突出するショルダータイバー30が設けられている。ショルダータイバー30は、ショルダー陸部18を構成するブロック列のタイヤ幅方向W全体に設けられている。
【0035】
ショルダータイバー30は、頂部30aと、頂部30aのタイヤ幅方向両側に設けられた内側傾斜部30b1及び外側傾斜部30b2と、内側傾斜部30b1及び外側傾斜部30b2のタイヤ幅方向両側に設けられた平坦突出部30cを備える。
【0036】
頂部30aは、ショルダータイバー30の中で溝底からの突出高さが最大となる部分を含む部位である。頂部30aの幅方向の中心は、ショルダータイバー30が連結されるブロック19の幅方向中央部から上記所定距離L1より大きい所定距離L2だけタイヤ赤道面CLに寄った位置に設けられている。
【0037】
内側傾斜部30b1は、ショルダータイバー30において頂部30aからショルダー主溝12に向かって高さが漸次減少された部位である。外側傾斜部30b2は、ショルダータイバー30において頂部30aからトレッド端に向かって高さが漸次減少された部位である。外側傾斜部30b2は、内側傾斜部30b1よりタイヤ幅方向外側に位置し、内側傾斜部30b1よりタイヤ赤道面CLから離れた位置に設けられている。内側傾斜部30b1及び外側傾斜部30b2は、タイヤ幅方向Wに対する角度が同じ角度に設定されている。
【0038】
平坦突出部30cは、センター主溝11及びショルダー主溝12の溝底よりタイヤ径方向外方へ突出する凹凸のない突起からなる。平坦突出部30cは、内側傾斜部30b1及び外側傾斜部30b2からブロック17の幅方向端までタイヤ幅方向Wへ延びている。
【0039】
タイバー30の各種寸法は特に制限されないが、図3に示すように、ブロック19の踏面からタイバー30の頂部30aまでの距離Hs1、ショルダー主溝12の溝底から頂部30aのタイヤ幅方向内側に設けられた平坦突出部30cの上面までの突出高さHs2、ショルダー主溝12の溝底から頂部30aのタイヤ幅方向外側に設けられた平坦突出部30cの上面までの突出高さHs3、頂部30aのタイヤ幅方向長さWs1、ブロック19の踏面のタイヤ幅方向長さWs2、頂部30aの中心からブロック19のタイヤ幅方向内側の端部までの長さWs3、センター主溝11及びショルダー主溝12の溝深さGDとすると、次の式(10)~(14)を満たすように各種寸法を設定することができる。
0.3≦Hs1/GD≦0.7…(10)
0.1≦Ws1/Ws2≦0.5…(11)
0.1≦Ws3/Ws2<Wm3/Wm2≦0.4…(12)
Hs2≧1.8mm…(13)
Hs3≧1.8mm…(14)
本実施形態の空気入りタイヤでは、ブロック列から構成された中央陸部14、中間陸部16及びショルダー陸部18が、タイヤ周方向CDに隣接するブロック15,17,19を連結するように横溝20,22,24の溝底から突出するタイバー26,28,30を備えるため、タイヤ周方向において各ブロック15,17,19の剛性を向上させることができ、ドライ路面における制動性能や耐ヒールアンドトウ摩耗性能を向上させることができる。
【0040】
また、タイヤ接地時にタイヤ赤道面CL方向へ向けて作用する外力は、タイヤ赤道面CLから離れるほど大きくなるが、本実施形態では、タイバーの頂部の幅方向の中心位置が、連結されるブロックの幅方向の中心位置よりもタイヤ赤道面に寄った位置に設けられているため、タイヤに作用する外力分布に応じてブロック剛性を向上させることができ、タイヤ転動時に生じるブロックの変形を抑え、クラックの発生を抑えることができる。
【0041】
また、本実施形態では、ブロック15,17,19を連結するタイバー26、28、30が、頂部26a,28a,30aと、頂部26a,28a,30aのタイヤ幅方向両側に設けられた傾斜部26b,28b,30bを備えるため、横溝20,22,24の溝容積を確保しつつブロック剛性を向上させることができ、ウェット性能を維持しつつドライ路面における制動性能や耐ヒールアンドトウ摩耗性能を向上することができる。
【0042】
また、本実施形態では、ブロック15,17,19を連結するタイバー26、28、30が、ブロック15,17,19のタイヤ幅方向W全体にわたって設けられているため、ブロックの幅方向において剛性差を小さくすることができ、より一層、ドライ路面における制動性能や耐ヒールアンドトウ摩耗性能の向上することができる。
【0043】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について、図4及び図5に基づいて説明する。
【0044】
本実施形態では、タイバーの形状が上記した第1実施形態と相違する。なお、上記した第1実施形態と同一又は対応する構成には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0045】
詳細には、中央陸部14を構成する中央ブロック列に設けられた中央タイバー126は、ブロック15の幅方向中央部に設けられた頂部126aと、頂部126aのタイヤ幅方向両側に設けられた傾斜部126bとを備える。
【0046】
頂部126aは、中央タイバー126の中で溝底からの突出高さが最大となる部分を含む部位である。頂部126aの幅方向の中心は、中央タイバー126が連結されるブロック15の幅方向中央部と一致するように設けられている。
【0047】
傾斜部126bは、中央タイバー126において頂部126aからセンター主溝11に向かって高さが漸次減少された部位である。傾斜部126bは頂部126aからブロック15の幅方向端までタイヤ幅方向Wへ延びている。傾斜部126bの幅方向端部は、センター主溝11の溝底より上方に位置している。
【0048】
中間ブロック列に設けられた中間タイバー128は、ブロック17の幅方向中央部に設けられた頂部128aと、頂部128aのタイヤ幅方向両側に設けられた内側傾斜部128b1及び外側傾斜部128b2とを備える。
【0049】
頂部128aは、中間タイバー128の中で溝底からの突出高さが最大となる部分を含む部位である。頂部128aの幅方向の中心は、中間タイバー128が連結されるブロック17の幅方向中央部から所定距離L1だけタイヤ赤道面CLに寄った位置に設けられている。
【0050】
内側傾斜部128b1は、中間タイバー128において頂部128aからセンター主溝11に向かって高さが漸次減少された部位である。内側傾斜部128b1は頂部128aからブロック17の幅方向端までタイヤ幅方向Wへ延びている。内側傾斜部128b1の幅方向端は、センター主溝11の溝底より上方に位置している。
【0051】
外側傾斜部128b2は、中間タイバー128において頂部128aからショルダー主溝12に向かって高さが漸次減少された部位である。外側傾斜部128b2は、内側傾斜部128b1よりタイヤ幅方向外側に位置し、内側傾斜部128b1よりタイヤ赤道面CLから離れた位置に設けられている。外側傾斜部128b2は頂部128aからブロック17の幅方向端までタイヤ幅方向Wへ延びている。外側傾斜部128b2の幅方向端は、ショルダー主溝12の溝底より上方に位置している。
【0052】
外側傾斜部128b2は、タイヤ幅方向に対する傾斜角度θ1oが、タイヤ幅方向に対する内側傾斜部128b1の傾斜角度θ1iより小さくなっている。
【0053】
ショルダーブロック列に設けられたショルダータイバー130は、中間タイバー128と同様、ブロック19の幅方向中央部に設けられた頂部130aと、頂部130aのタイヤ幅方向両側に設けられた内側傾斜部130b1及び外側傾斜部130b2とを備える。
【0054】
頂部130aは、ショルダータイバー130の中で溝底からの突出高さが最大となる部分を含む部位である。頂部130aの幅方向の中心は、ショルダータイバー130が連結されるブロック19の幅方向中央部から上記所定距離L1より大きい所定距離L2だけタイヤ赤道面CLに寄った位置に設けられている。
【0055】
内側傾斜部130b1は、ショルダータイバー130において頂部130aからショルダー主溝12に向かって高さが漸次減少された部位である。内側傾斜部130b1は頂部130aからブロック17の幅方向端までタイヤ幅方向Wへ延びている。内側傾斜部130b1の幅方向端は、ショルダー主溝12の溝底より上方に位置している。
【0056】
外側傾斜部130b2は、ショルダータイバー130において頂部130aからトレッド端に向かって高さが漸次減少された部位である。外側傾斜部130b2は、内側傾斜部130b1よりタイヤ幅方向外側に位置し、内側傾斜部130b1よりタイヤ赤道面CLから離れた位置に設けられている。外側傾斜部130b2は頂部130aからブロック17の幅方向端までタイヤ幅方向Wへ延びている。外側傾斜部130b2の幅方向端は、ショルダー主溝12の溝底より上方に位置している。
【0057】
外側傾斜部130b2は、タイヤ幅方向に対する傾斜角度θ2oが、タイヤ幅方向に対する内側傾斜部130b1の傾斜角度θ2iより小さくなっている。
【0058】
つまり、タイヤ赤道面CLから離れた位置にあるブロック列のタイバーの外側傾斜部ほど、タイヤ幅方向に対する傾斜角度が小さくなっている。
【0059】
以上のような本実施形態の空気入りタイヤでは、タイヤ赤道面CLから離れた位置にある中間陸部16やショルダー陸部18に設けられた中間タイバー128やショルダータイバー130において、タイヤ幅方向に対する外側傾斜部128b2、130b2の傾斜角度θ1o、θ2oが、内側傾斜部128b1、130b1の傾斜角度θ1i、θ2iに比べて小さい。これにより、傾斜部を設けることで横溝22,24の溝容積を確保しつつ、中間タイバー128やショルダータイバー130の頂部128a,130aの幅方向の中心が、ブロック17,19の幅方向の中心位置よりもタイヤ赤道面CLに寄った位置にあっても、ブロックの幅方向において剛性差を小さくすることができ、ウェット性能を維持しつつドライ路面における制動性能や耐ヒールアンドトウ摩耗性能を向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態では、タイバー126、128、130に設けられた傾斜部126b、128b1,128b2,130b1,130b2が、ブロック15の幅方向端までタイヤ幅方向Wへ延びており、タイバー126、128、130がブロック15,17,19のタイヤ幅方向W全体にわたって設けられている。そのため、横溝20,22,24の溝容積を確保しつつ、タイヤ幅方向においてブロック15,17,19の剛性差を小さくすることができ、より一層、ドライ路面における制動性能や耐ヒールアンドトウ摩耗性能の向上することができる。
【0061】
その他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0062】
(第2実施形態の変更例)
第2実施形態では、主溝11の溝底からタイバー128の内側傾斜部128b1の幅方向端縁までの距離Hm2が、主溝12の溝底からタイバー128の外側傾斜部128b2の幅方向端縁までの距離Hm3と同じ大きさに設定され、主溝12の溝底からタイバー130の内側傾斜部130b1の幅方向端縁までの距離Hs2が、主溝12の溝底からタイバー130の外側傾斜部130b2の幅方向端縁までの距離Hs3と同じ大きさに設定されているが、図6に示す本変更例のように、上記距離Hm2が上記距離Hm3より大きくても良い。また、上記距離Hs2が上記距離Hs3より大きくても良い。
【0063】
本変更例では、タイヤ赤道面CLから離れた位置にある中間陸部16及びショルダー陸部18に設けられた中間タイバー228及びショルダータイバー130において、主溝11,12の溝底から内側傾斜部228b1、230b1の幅方向端縁までの距離Hm2、Hs2が、主溝12の溝底から外側傾斜部228b2、230b2の幅方向端縁までの距離Hm3、Hs3より大きく設定されている。そのため、タイヤ接地時にタイヤに作用する外力分布に応じてブロック剛性を向上させることができ、タイヤ転動時に生じるブロックの変形を抑え、クラックの発生を抑えることができる。
【0064】
(他の実施形態)
上記の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0065】
例えば、主溝は、図1の主溝11,12のようにタイヤ周方向CDに直線状に延びるものでなくても良く、例えば屈曲しながらタイヤ周方向CDに延びるジグザグ状のものや、湾曲しながらタイヤ周方向CDに延びる波形状のものや、タイヤ周方向CDに対して斜めに延びるものであっても良い。また、横溝は、タイヤ幅方向Wに平行ではなく当該タイヤ幅方向Wに対して傾斜して延びるものであっても良い。
【0066】
また、上記の実施形態では、トレッド部10に4本の主溝11,12が設けられ、5列のブロック列を備える場合について説明したが、2本以上の主溝が設けられ、3列以上のブロック列を備えるものであっても良い。
【0067】
また、上記の実施形態では、中央陸部14,中間陸部16及びショルダー陸部18の全ての陸部においてタイバー26,28,30を設けたが、例えば、中間陸部16にタイバーを設けることなく中央陸部14とショルダー陸部18にタイバーを設けるなど、一部の陸部にタイバーを設けても良い。
【実施例
【0068】
タイヤサイズが235/65R16の空気入りタイヤをリムサイズが16×7.0のリムに装着し、内圧250kPaを充填して、試験車両に装着して実施例及び比較例を行った。
【0069】
実施例1は第1実施形態で説明したタイヤ、実施例2は第2実施形態で説明したタイヤ、実施例3は第2実施形態の変更例で説明したタイヤ、比較例は図8に示すようなタイヤであって、中央タイバー、中間タイバー及びショルダータイバーに傾斜部を設けていない点で実施例1と相違するがその他の構成は実施例1と共通するタイヤである。下記表1に示すように各諸元を設定して各実施例及び比較例のタイヤを試作した。各試作タイヤについて、制動性能、耐ヒールアンドトウ摩耗性、耐クラック性を評価した。評価方法は以下の通りである。
【0070】
・制動性能:車両に各タイヤを装着し、乾燥した状態の密粒度アスコンの路面において、時速60km/hからの制動距離を測定し、比較例1の結果を100とする指数で評価した。指数が大きいほど、ドライ路面での制動距離が短く制動性能が優れていることを示す。
【0071】
・耐ヒールアンドトウ摩耗性:車両に各タイヤを装着し、乾燥路面を60000km走行した後のヒールアンドトウ摩耗量(溝に関してタイヤの回転方向の前方側と後方側との摩耗量の差)を計測し、比較例1の結果を100とする指数で評価した。指数が大きいほど、耐ヒールアンドトウ摩耗性が優れていることを示す。
【0072】
・耐クラック性:車両に各タイヤを装着し、路面で乾燥路面を60000km走行し、クラック発生時の走行距離を測定し、比較例1の結果を100とする指数で評価した。指数が大きいほど、良好な結果を示す。
【0073】
【表1】
結果は、表1に示す通りである。傾斜部を設けていない比較例に対して、傾斜部を設けた実施例1~3では、制動性能、耐ヒールアンドトウ摩耗性及び耐クラック性が向上した。
【符号の説明】
【0074】
10…トレッド、11…センター主溝、12…ショルダー主溝、14…中央陸部、15…中央ブロック、16…中間陸部、17…中間ブロック、18…ショルダー陸部、19…ブロック、20……横溝、22……横溝、24……横溝、26…中央タイバー、26a…頂部、26b…傾斜部、26c…平坦突出部、28…中間タイバー、28a…頂部、28b1…内側傾斜部、28b2…外側傾斜部、30…ショルダータイバー、30a…頂部、30b1…内側傾斜部、30b2…外側傾斜部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8