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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】乳酸菌と脂肪酸を含む飼料及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A23K 10/16 20160101AFI20230905BHJP
   A23K 20/158 20160101ALI20230905BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20230905BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 31/194 20060101ALI20230905BHJP
   A61K 31/20 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230905BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230905BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20230905BHJP
   A23L 33/12 20160101ALI20230905BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230905BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20230905BHJP
【FI】
A23K10/16 ZNA
A23K20/158
A61K35/747
A61K31/19
A61K31/194
A61K31/20
A61P37/02
A61P37/04
A61P31/04
A23L33/135
A23L33/12
A23L2/00 F
A23L2/38 C
A23L2/52
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022551972
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2021034480
(87)【国際公開番号】W WO2022065268
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2020161335
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306019030
【氏名又は名称】ハウスウェルネスフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼竹 里依子
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 翼
(72)【発明者】
【氏名】廣▲瀬▼ 義隆
(72)【発明者】
【氏名】山口 実華
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/084923(WO,A1)
【文献】特開2002-080364(JP,A)
【文献】特開2008-195713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/10-50/15
A61K 35/744
A61K 35/747
A61K 31/19
A61P 37/04
A23L 33/135
A23L 33/12
A23L 2/00
A23L 2/38
A23L 2/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・プランタラムL-137株(Lactobacillus plantarum L-137)又はその処理物とギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、乳酸、ピルビン酸、カプロン酸、コハク酸、デカン酸、及びパルミトレイン酸からなる群より選択される少なくとも1種である脂肪酸又はその塩とを含む飼料。
【請求項2】
肪酸が、酸、プロピオン酸、酪酸、デカン酸、及びパルミトレイン酸からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項に記載の飼料。
【請求項3】
ラクトバチルス・プランタラムL-137株が死菌体である、請求項1又は2に記載の飼料。
【請求項4】
飼料全体に対するラクトバチルス・プランタラムL-137株又はその処理物の含有割合が0.0001質量%~0.1質量%である、請求項1~のいずれか1項に記載の飼料。
【請求項5】
飼料中のラクトバチルス・プランタラムL-137株又はその処理物と脂肪酸又はその塩の質量比が1:0.5~50000である、請求項1~のいずれか1項に記載の飼料。
【請求項6】
ラクトバチルス・プランタラムL-137株(Lactobacillus plantarum L-137)又はその処理物とギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、乳酸、ピルビン酸、カプロン酸、コハク酸、デカン酸、及びパルミトレイン酸からなる群より選択される少なくとも1種である脂肪酸又はその塩とを含むIL-12産生増強用組成物。
【請求項7】
ラクトバチルス・プランタラムL-137株(Lactobacillus plantarum L-137)又はその処理物とギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、乳酸、ピルビン酸、カプロン酸、コハク酸、デカン酸、及びパルミトレイン酸からなる群より選択される少なくとも1種である脂肪酸又はその塩とを含む免疫賦活用組成物。
【請求項8】
ラクトバチルス・プランタラムL-137株(Lactobacillus plantarum L-137)又はその処理物とギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、乳酸、ピルビン酸、カプロン酸、コハク酸、デカン酸、及びパルミトレイン酸からなる群より選択される少なくとも1種である脂肪酸又はその塩とを含む静菌用組成物。
【請求項9】
ラクトバチルス・プランタラムL-137株(Lactobacillus plantarum L-137)又はその処理物とギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、乳酸、ピルビン酸、カプロン酸、コハク酸、デカン酸、及びパルミトレイン酸からなる群より選択される少なくとも1種である脂肪酸又はその塩とを含有することを特徴とする組成物。
【請求項10】
乳酸菌又はその処理物とギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、乳酸、ピルビン酸、カプロン酸、コハク酸、デカン酸、及びパルミトレイン酸からなる群より選択される少なくとも1種である脂肪酸又はその塩とを含有することを特徴とする免疫賦活用組成物。
【請求項11】
組成物が、医薬、動物薬、医薬部外品、飼料、飲食品又は飲食品添加物である請求項10に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の乳酸菌又はその処理物と脂肪酸又はその塩との組み合わせを含む飼料及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン12(IL-12:Interleukin-12)は、活性化された貪食細胞(phagocytes)及び樹状細胞によって分泌されるサイトカインの1種であり、種々の免疫関連疾患の病因において重要な役割を果たす。ある種の乳酸菌は、免疫賦活作用やIL-12産生作用を有することが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-6801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乳酸菌ラクトバチルス・プランタラムL-137株(Lactobacillus plantarum L-137)又はその処理物と脂肪酸又はその塩とを組み合わせることで、IL-12産生及び/又は免疫賦活作用が増強されることや静菌作用が得られることは知られていない。また、この組み合わせを飼料に用いることもこれまでに知られていない。
本発明の目的は、(1)ラクトバチルス・プランタラムL-137株又はその処理物と脂肪酸又はその塩とを含む飼料、(2)ラクトバチルス・プランタラムL-137株又はその処理物と脂肪酸又はその塩とを含むIL-12産生増強用組成物、(3)ラクトバチルス・プランタラムL-137株又はその処理物と脂肪酸又はその塩とを含む免疫賦活用組成物、及び(4)ラクトバチルス・プランタラムL-137株又はその処理物と脂肪酸又はその塩とを含む静菌用組成物から選択される1つ以上を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、乳酸菌ラクトバチルス・プランタラムL-137株又はその処理物と脂肪酸又はその塩とを組み合わせることで、IL-12産生が増強されることや免疫賦活作用が増強されること、さらには、静菌作用が得られること、またこの組み合わせが飼料や組成物に好適であることを見出し、さらに、脂肪酸又はその塩と乳酸菌との組み合わせの中でもラクトバチルス・プランタラムL-137株が優れていることをも知得し、さらに検討を重ねて本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]ラクトバチルス・プランタラムL-137株(Lactobacillus plantarum L-137)又はその処理物と脂肪酸又はその塩とを含む飼料。
[2]脂肪酸が、短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸及び長鎖脂肪酸からなる群より選択される少なくとも1種の脂肪酸又はこれらの混合物である、[1]に記載の飼料。
[3]短鎖脂肪酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、乳酸、ピルビン酸、カプロン酸及びコハク酸からなる群より選択される少なくとも1種である、[2]に記載の飼料。
[4]ラクトバチルス・プランタラムL-137株が死菌体である、[1]~[3]のいずれかに記載の飼料。
[5]飼料全体に対するラクトバチルス・プランタラムL-137株又はその処理物の含有割合が0.0001質量%~0.1質量%である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の飼料。
[6]飼料中のラクトバチルス・プランタラムL-137株又はその処理物と脂肪酸又はその塩の質量比が1:0.5~50000である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の飼料。
[7]ラクトバチルス・プランタラムL-137株(Lactobacillus plantarum L-137)又はその処理物と脂肪酸又はその塩とを含むIL-12産生増強用組成物。
[8]ラクトバチルス・プランタラムL-137株(Lactobacillus plantarum L-137)又はその処理物と脂肪酸又はその塩とを含む免疫賦活用組成物。
[9]ラクトバチルス・プランタラムL-137株(Lactobacillus plantarum L-137)又はその処理物と脂肪酸又はその塩とを含む静菌用組成物。
[10]ラクトバチルス・プランタラムL-137株(Lactobacillus plantarum L-137)又はその処理物と脂肪酸又はその塩とを含有することを特徴とする組成物。
[11]乳酸菌又はその処理物と脂肪酸又はその塩とを含有することを特徴とする免疫賦活用組成物。
[12]組成物が、医薬、動物薬、医薬部外品、飼料、飲食品又は飲食品添加物である[11]に記載の組成物。
【発明の効果】
【0007】
本開示において、好ましくは、(1)ラクトバチルス・プランタラムL-137株又はその処理物と脂肪酸又はその塩とを含む飼料、(2)ラクトバチルス・プランタラムL-137株又はその処理物と脂肪酸又はその塩とを含むIL-12産生増強用組成物、(3)ラクトバチルス・プランタラムL-137株又はその処理物と脂肪酸又はその塩とを含む免疫賦活用組成物、及び(4)ラクトバチルス・プランタラムL-137株又はその処理物と脂肪酸又はその塩とを含む静菌用組成物から選択される1つ以上を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、免疫細胞株に、本発明の乳酸菌と脂肪酸(短鎖脂肪酸)又はその塩のいずれか又はこれらを同時に添加した場合のIL-12の産生を示す。図中のは、乳酸菌L-137単独添加と乳酸菌L-137と脂肪酸との同時添加を比較したT検定でのp値が「0.01≦p<0.05」の範囲にあることを示す。
図2図2は、免疫細胞株に、本発明の乳酸菌と脂肪酸(中鎖脂肪酸又は長鎖脂肪酸)のいずれか又はこれらを同時に添加した場合のIL-12の産生を示す。図中のは、乳酸菌L-137単独添加と乳酸菌L-137と脂肪酸との同時添加を比較したT検定でのp値が「0.01≦p<0.05」の範囲にあることを示す。
図3図3は、肉用ブロイラーへ本発明の乳酸菌と脂肪酸又はその塩のいずれか又はこれらを同時に混合した飼料を投与した場合のIL-12の遺伝子発現強度を示す。図中の**は、T1区とT3区を比較したT検定でのp値が「p<0.01」であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔乳酸菌ラクトバチルス・プランタラムL-137株〕
本発明で用いられる乳酸菌ラクトバチルス・プランタラムL-137株(Lactobacillus plantarum L-137)は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(現:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター;住所:郵便番号292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に、受託番号FERM BP-08607号(平成7年11月30日に寄託されたFERM P-15317号より移管)として寄託されている。なお、ラクトバチルス・プランタラムL-137の変異株であっても、ラクトバチルス・プランタラムL-137の特徴を備えるものはラクトバチルス・プランタラムL-137の範疇である。
なお、ラクトバチルス・プランタラムL-137株の代わりに又は共に他の乳酸菌、特に免疫賦活作用を有する乳酸菌が本発明に持ち入れられてよい。
【0010】
上記乳酸菌ラクトバチルス・プランタラムL-137株は、天然培地、合成培地及び半合成培地等の培地で培養したものいずれであってもよい。本発明において、乳酸菌の培養は、公知方法、自体公知の方法又はそれらに準じる方法に従って行われてよい。
【0011】
前記培地としては、特に限定されず、例えば、窒素源及び/又は炭素源を含有するものが好ましく用いられる。前記窒素源としては、特に限定されず、例えば、肉エキス、ペプトン、グルテン、カゼイン、酵母エキス、又はアミノ酸等が挙げられる。前記炭素源としては、特に限定されず、例えば、グルコース、キシロース、フラクトース、イノシトール、マルトース、水アメ、麹汁、澱粉、バガス、フスマ、糖蜜、又はグリセリン等が挙げられる。これらは1種で又は2種以上を組合せて用いてもよい。
【0012】
前記培地は、前記窒素源及び/又は炭素源に加えて、さらに、無機質を添加してもよい。前記無機質としては、特に限定されず、例えば、硫酸アンモニウム、リン酸カリウム、塩化マグネシウム、食塩、鉄、マンガン、モリブデン又は各種ビタミン類等が挙げられ、これらを1種で又は2種以上を組合せて用いてもよい。
【0013】
乳酸菌ラクトバチルス・プランタラムL-137株の培養温度及び培養時間は、培養が効率的に実施できれば特に限定されないが、本発明の1つの態様において、培養温度は、例えば、通常約25~40℃、好ましくは約27~35℃としてもよい、培養時間は、例えば、約12~48時間としてもよい。また、本発明の1つの態様において、乳酸菌の培養は、通気振盪により実施してもよい。また、培地のpHは、特に限定されないが、本発明の1つの態様において、通常約pH3~6、好ましくは約pH4~6としてもよい。
【0014】
〔乳酸菌ラクトバチルス・プランタラムL-137株の処理物〕
乳酸菌ラクトバチルス・プランタラムL-137株の「処理物」とは、好ましくは、当該乳酸菌を加工したもの又は当該乳酸菌の培養物であるが、これらに限定されない。また、菌は、生菌でもよく、死菌体でもよいが、安定性及び取扱いの容易性等の観点から、死菌体を用いることが好ましい。
本発明においては、このような処理物を、そのまま用いてもよく、凍結乾燥、低温乾燥、噴霧乾燥、又はL-乾燥等やこれらを組み合わせて粉末状にして用いてもよい。また、これらの処理物(培養物)は、適切な溶媒(水、アルコール、有機溶剤等)で希釈して用いてもよいし、適切な添加剤を加えて、ゲルや固形剤にして、用いてもよい。
【0015】
乳酸菌の死菌体を調製する方法について、具体的に説明する。
【0016】
本発明において、前記死菌体の調製方法は、本発明の効果を失しない限り、特に限定されないが、例えば、(I)培養終了後に乳酸菌の生菌体を培養液から分離した後に、前記生菌体を殺菌処理して死菌体の状態とする方法、(II)培養液中で乳酸菌の生菌体を殺菌処理して死菌体の状態とし、その後に前記死菌体を培養液から分離する方法等のいずれの方法によって調製してもよい。
培養液から菌体を分離する方法としては、この分野で通常用いられる種々の方法を採用してもよく、特に限定されない。本発明のひとつの態様において、具体的には、例えば、培養液に蒸留水を加えた後に遠心分離等の手段によって上清を除くことによって、培養液と菌体とを分離する方法等を採用してもよい。なお、この態様においては、培養液に蒸留水を加えて遠心分離を行った後に上清を除去した後、所望により、上清を除去した残留物にさらに蒸留水を加えて遠心分離を行う操作を何度か繰り返してもよい。本発明のひとつの態様において、分離操作として濾過工程を含んでいてもよい。
【0017】
続いて、乳酸菌の生菌体の殺菌処理方法について具体的に説明する。前記殺菌処理方法としては、特に限定されず、例えば、加熱、紫外線照射、ホルマリン処理等が挙げられる。なお、前記殺菌処理は、採取された生菌体に対して行ってもよく、生菌体を含んだ培養液に対して行ってもよい。
【0018】
前記加熱処理を行う場合、加熱温度は特に限定されないが、例えば、通常約60℃~100℃、好ましくは約70~90℃としてもよい。加熱手段としては、公知の方法を用いることができ、特に限定されないが、例えば、ヒーター等の手段であってもよい。加熱時間は、殺菌処理が十分に完了できれば特に限定されないが、例えば、加熱時間は所望の温度に達した後、通常約5~40分、好ましくは約10~30分としてもよい。
【0019】
上記の様にして得られた前記死菌体は、さらに摩砕、破砕又は凍結乾燥処理等を行い、死菌体処理物としてもよい。本発明においては、前記死菌体処理物も死菌体として好適に用いることができる。
【0020】
また、本発明には、乳酸菌の菌体に替えて又は菌体と共に、乳酸菌菌体の抽出物を用いてもよい。前記抽出物の抽出方法は特に限定されず、公知方法、自体公知方法又はそれらに準ずる方法に従って行ってもよい。具体的には、例えば、乳酸菌の生菌体又は死菌体を、(i)常圧又は加圧下で、室温又は加温した抽出溶媒中に加えて浸漬や撹拌しながら抽出する方法、(ii)抽出溶媒中で還流しながら抽出する方法等が挙げられる。抽出温度、抽出時間は、使用する抽出溶媒の種類は抽出条件によって適宜選択してよい。
【0021】
前記抽出溶媒としては、特に限定されず、例えば、水、有機溶媒又はこれらの任意の割合での混合溶媒を用いてもよい。前記有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール及びn-ブタノール等)、多価アルコール(例えば、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)等の室温で液体であるアルコール類;エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、プロピルエーテル等);エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等);ケトン類(例えば、アセトン、エチルメチルケトン等);炭化水素類(例えば、ヘキサン、キシレン、トルエン等);クロロホルム等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いてもよい。上記有機溶媒の中でも、操作性や環境に対する影響等の観点から、室温で液体であるアルコール類、例えば、炭素原子数1~4の低級アルコールを用いるのが好ましく、残留溶媒による安全性の観点からはエタノールを用いるのがより好ましい。
【0022】
本発明においては、前記抽出操作により得た抽出液及び残渣を含む混合物を所望により濾過又は遠心分離等に供し、残渣である固形成分を除去して得た抽出液をそのまま本発明の前記担体の調製に用いてもよいし、前記抽出液を濃縮、凍結乾燥又はスプレードライ等の方法により、乾燥、粉末化して使用してもよい。
【0023】
本発明の飼料又は組成物中の、乳酸菌又はその処理物の含有量は、本発明の効果を失わない限り、特に限定されないが、飼料又は組成物100質量%中、例えば、約0.0001質量%~0.1質量%の範囲であってもよく、好ましくは、0.001~0.01質量%の範囲であってよい。本発明の飼料又は組成物中の、乳酸菌又はその処理物と脂肪酸又はその塩の質量比は、本発明の効果を失わない限り、特に限定されないが、1:0.5~50000の範囲であってもよく、好ましくは1:0.5~2000の範囲で、さらに好ましくは、1:0.5~100であり、1:0.5~2.5の範囲が特に好ましい。
【0024】
〔脂肪酸〕
本発明における脂肪酸としては、例えば、飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖の脂肪酸を用いることができる。このような脂肪酸として、具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、エレオステアリン酸、ステアリドン酸、リシノール酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、エルカ酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が挙げられる。
【0025】
好ましい脂肪酸としては、例えば、短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸及び長鎖脂肪酸からなる群から選択される少なくとも1種の脂肪酸又はこれらの混合物が挙げられる。より好ましくは、短鎖脂肪酸又は中鎖脂肪酸であり、さらに好ましくは、短鎖脂肪酸である。
また、脂肪酸は置換基を有していてもよい。置換基は特に限定されないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、カルボキシル基、ケトン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、チオール基、ニトロ基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合等の、通常、医薬、動物薬、食品、化粧品等の分野で用いられる公知の基又は結合等が挙げられる。
さらに、本発明の脂肪酸の好ましい由来としては、例えば、大豆油、なたね油、綿実油、落花生油、パーム油、ひまわり油、小麦胚芽油、米ぬか油、コーン油、ごま油、サクランボ種子油、サフラワー油、アマニ油、アーモンドナッツ油、インカインチ油、エゴマ油、オリーブ油、オレンジ種子油、かぼちゃ種子油、シソ油、茶油、つばき油、ピーナツ油、ブドウ種子油、マカダミアナッツ油、牛脂、豚脂、卵黄油、イワシ、サケ、サバ、サンマ、ニシン、マグロ等から得られる魚油、イカ、スケソウダラ等の肝油、カツオ、マグロ等の眼窩油、アザラシ油、オキアミ油等から公知の方法又は自体公知の方法によって得られる動植物性遊離脂肪酸等であってもよく、化学合成等により得られる市販品の脂肪酸等が用いられてよい。
【0026】
(脂肪酸の塩)
本明細書において、脂肪酸は、公知の方法に従い、所望の塩の形態に変換することができる。このような塩の好ましい例としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム等の無機塩基との塩、例えば、アンモニア、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の有機塩等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
(短鎖脂肪酸)
本明細書において、短鎖脂肪酸は、通常、炭素数1~6の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖の脂肪酸である。好ましい短鎖脂肪酸の例としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、イソ吉草酸、乳酸、ピルビン酸、吉草酸、カプロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられ、より好ましくは、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、イソ吉草酸、乳酸、ピルビン酸、吉草酸、カプロン酸、コハク酸であり、さらに好ましくは、酢酸、プロピオン酸及び酪酸であるが、これらに限定されない。
なお、別の好ましい例としては、短鎖脂肪酸は、塩の形態で用いられる。このような塩としては、上記した無機塩基との塩が挙げられるが、より好ましくは、ナトリウム、カリウム又はカルシウム等である。
【0028】
(中鎖脂肪酸)
本明細書において、中鎖脂肪酸は、通常、炭素数7~11の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖の脂肪酸である。好ましい中鎖脂肪酸の例としては、例えば、デカン酸(カプリン酸)、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸等が挙げられる。好ましくは、中鎖脂肪酸は、直鎖又は飽和脂肪酸であることが好ましく、直鎖の飽和脂肪酸であることがより好ましい。
【0029】
(長鎖脂肪酸)
本明細書において、長鎖脂肪酸は、通常、炭素数12以上の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖の脂肪酸である。好ましい長鎖脂肪酸の例としては、例えば、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、バクセン酸、パウリン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、オレイン酸等が挙げられる。好ましくは、長鎖脂肪酸は、不飽和脂肪酸であり、より好ましくは、オメガ-3、オメガ-6、オメガ-7又はオメガ-9不飽和脂肪酸であり、さらに好ましくは、オメガ-7不飽和脂肪酸である。なお、「オメガ-X不飽和脂肪酸」とは、脂肪酸のメチル末端からX番目の結合が不飽和結合であるものを指す。
【0030】
[飼料(飼料用組成物)]
本発明の飼料(飼料用組成物)としては、例えば、ウシ、ウマ、ブタ等の家畜用飼料、ニワトリ、ウズラ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ等の家禽用飼料、ハマチ、ブリ、タイ、エビ、カキ、アサリ等の魚介等の養殖用飼料、イヌ、ネコ等のペット用飼料などが挙げられるが、これらに限定されない。家禽用飼料としては、好ましくは、ニワトリ、より好ましくは、ブロイラー、レイヤー、地鶏等のニワトリであるが、特に限定されない。本発明の飼料は、飼料中に本発明の乳酸菌及び脂肪酸を添加する以外は、一般的な飼料の製造方法により、適宜加工及び製造することができる。
【0031】
[IL-12産生増強用組成物及び免疫賦活用組成物]
本発明の組成物は、上記のように、好ましいことに、IL-12産生増強作用及び/又は免疫賦活作用を有することを特長とする。本発明の組成物は、単に飼料に限られるべきものではなく、別の好ましい例としては、飲食品用及び/又は医薬品用(動物薬も含む)である。さらなる別の好ましい例としては、本発明の組成物は、飲食品用の添加剤として使用される。
飲食品用、飲食品用添加剤用又は医薬品用である組成物は、上記した乳酸菌と脂肪酸と、さらに薬学的に許容される担体、添加剤等を適宜配合して製剤化等することができる。そのための製剤化方法や製剤化技術は従来十分に確立されているので、それに従ってよい。例えば、医薬品用の場合、具体的には、錠剤、被覆錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤等の経口剤、注射剤、輸液、坐剤、軟膏、パッチ剤等の非経口剤とすることができる。担体または添加剤の配合割合については、飲食品、医薬品又は獣医学分野において通常採用されている範囲に基づいて適宜設定すればよい。配合できる担体又は添加剤は特に制限されないが、例えば、水、生理食塩水、その他の水性溶媒、水性または油性基剤等の各種担体、酵素、pH調整剤、保存料、殺菌料、酸化防止剤、防カビ剤、日持向上剤、漂白剤、光沢剤、香料、甘味料、酸味料、調味料、苦味料、乳化剤、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊料、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、香料等の各種添加剤が挙げられるが、これらに限定されない。これらに関する技術は、従来十分に確立されているので、本発明において、それらに従ってよい。
なお、本発明のIL-12産生増強用組成物又は免疫賦活用組成物が投与される場合、その対象は、好ましくは、ヒトの他、上記の飼料の項で述べた家畜、家禽又はペット等の動物であるが、これらに限定されない。
【0032】
また、本発明の組成物が、飲食品用である場合、このような飲食品には、健康食品、機能性表示食品、特定保健用食品、病者用食品が含まれる。飲食品の形態は特に限定されないが、具体例には、例えば、いわゆる栄養補助食品またはサプリメントとしての錠剤、顆粒剤、散剤、ドリンク剤等を挙げることができる。これ以外には、例えば、茶飲料、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料、そば、うどん、中華麺、即席麺等の麺類、飴、キャンディー、ガム、チョコレート、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子およびパン類、ハム、ソーセージ、はんぺん、ちくわ等の水産・畜産加工食品、加工乳、発酵乳等の乳製品、サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂および油脂加工食品、ソース、たれ等の調味料、カレー、シチュー、丼、お粥、雑炊等のレトルトパウチ食品、アイスクリーム、シャーベット等の冷菓などを挙げることができるが、これらに限定されない。これらに関する技術は、従来十分に確立されているので、本発明において、それらに従ってよい。
【0033】
[静菌用組成物]
本発明の組成物は、好ましくは、細菌の増殖を抑制する静菌作用を有することを、さらなる特長とする。好ましくは、例えば、サルモネラ菌、チフス菌、パラチフス菌、O-157、O-111、O-121等を含む腸管出血性大腸菌、腸管毒素原性大腸菌、腸管組織侵入性大腸菌等の病原性大腸菌(Escherichia coli)、コレラ菌、赤痢菌、カンピロバクタ―菌、クロストリジウム菌、黄色ブドウ球菌、ウェルシュ菌、腸炎ビブリオ等の腸管感染症の原因となる菌が、本発明の組成物による静菌作用の対象となる細菌として挙げられるが、これらに限定されない。サルモネラ菌としては、例えば、チフス菌、パラチフス菌、腸炎菌が好ましく挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の組成物は、単に飼料に限られるべきものではなく、別の好ましい例としては、飲食品用及び/又は医薬品用(動物薬も含む)である。
飲食品用、飲食品用添加剤用又は医薬品用である組成物は、上記した乳酸菌と脂肪酸と、さらに薬学的に許容される担体、添加剤等を適宜配合して製剤化等することができる。そのための製剤化方法や製剤化技術は従来十分に確立されているので、それに従ってよい。例えば、医薬品用の場合、具体的には、錠剤、被覆錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤等の経口剤、注射剤、輸液、坐剤、軟膏、パッチ剤等の非経口剤とすることができる。担体または添加剤の配合割合については、飲食品、医薬品又は獣医学分野において通常採用されている範囲に基づいて適宜設定すればよい。配合できる担体又は添加剤は特に制限されないが、例えば、水、生理食塩水、その他の水性溶媒、水性または油性基剤等の各種担体、酵素、pH調整剤、保存料、殺菌料、酸化防止剤、防カビ剤、日持向上剤、漂白剤、光沢剤、香料、甘味料、酸味料、調味料、苦味料、乳化剤、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊料、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、香料等の各種添加剤が挙げられるが、これらに限定されない。これらに関する技術は、従来十分に確立されているので、本発明において、それらに従ってよい。
【0034】
また、本発明の組成物が、飲食品用である場合、このような飲食品には、健康食品、機能性表示食品、特定保健用食品、病者用食品が含まれる。飲食品の形態は特に限定されないが、具体例には、例えば、いわゆる栄養補助食品またはサプリメントとしての錠剤、顆粒剤、散剤、ドリンク剤等を挙げることができる。これ以外には、例えば、茶飲料、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料、そば、うどん、中華麺、即席麺等の麺類、飴、キャンディー、ガム、チョコレート、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子およびパン類、ハム、ソーセージ、はんぺん、ちくわ等の水産・畜産加工食品、加工乳、発酵乳等の乳製品、サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂および油脂加工食品、ソース、たれ等の調味料、カレー、シチュー、丼、お粥、雑炊等のレトルトパウチ食品、アイスクリーム、シャーベット等の冷菓などを挙げることができるが、これらに限定されない。これらに関する技術は、従来十分に確立されているので、本発明において、それらに従ってよい。
詳細は不明であるが、本発明においては、本発明の飼料又は組成物を対象に投与することにより、IL-12産生が増強された結果、及び/又は免疫が賦活された結果、サルモネラ菌等の増殖が抑制され、静菌作用が生じるものと考えられる。
なお、本発明の静菌用組成物が投与される場合、その対象は、好ましくは、ヒトの他、上記の飼料の項で述べた家畜、家禽又はペット等の動物であるが、これらに限定されない。
【0035】
〔その他の成分〕
本発明の飼料又は組成物には、本発明の効果を失しない限り、例えば、医学、薬学、獣医学又は食品等の分野で知られる任意の成分が含有されていてもよい。
そのような成分として、例えば、上記した以外の、免疫賦活活性を有することが知られる乳酸菌が用いられてよい。例えば、上記ラクトバチルス・プランタラムL-137株以外のラクトバチルス属、ストレプトコックス属、エンテロコッカス属、ラクトコッカス属、又はビフィズス属等に属する乳酸菌等を用いることができる。さらに詳しくは、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・デルブルッキー(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、エンテロコッカス・フェーカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・プランタラム(Lactococcus plantarum)又はビフィドバクテリウム・サーモフィラム(Bifidobacterium thermophilum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)又はビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
[投与量]
ラクトバチルス・プランタラムL-137の摂取量は、経口又は注射投与の場合は、摂取者の年齢及び体重、症状、投与時間、剤形、投与方法、薬剤の組み合わせ等に依存して決定できる。例えば、成人1人(約60kg)1日当たり、ラクトバチルス・プランタラムL-137を乾燥死菌体として、好ましくは約0.5~200mg、より好ましくは約1~100mg、さらに好ましくは約2~50mg摂取されるように設定するのが好ましい。または、成人1人(約60kg)1日当たり、ラクトバチルス・プランタラムL-137を生菌換算で、好ましくは約5×108~2×1011cfu(Colony forming unit;コロニー形成単位)、より好ましくは約1×109~1×1011cfu摂取されるように設定するのが好ましい。摂取回数は、1日1回又は複数回に分けて行うことができる。
外用塗布の場合は、適用する皮膚面積に応じて、ラクトバチルス・プランタラムL-137の塗布量を適宜選択することができるが、通常、当該塗布量は、適用部位の面積約10cm2に対して、1日につき、好ましくは約0.01~2.5mg、より好ましくは約0.02~1mgである。前記の投与用量を、1日あたり、1回又は数回に分けて投与ないし適用するとよい。
【0037】
[製造方法]
本発明は、例えば、ラクトバチルス・プランタラムL-137株(Lactobacillus plantarum L-137)又はその処理物及び脂肪酸と、所望により、その他の成分とを混合する工程を含有することを特徴とする、飼料などの本発明組成物の製造方法を包含する。混合する工程では、ラクトバチルス・プランタラムL-137株(Lactobacillus plantarum L-137)又はその処理物及び脂肪酸又はその塩と、その他の成分とが、飼料又は組成物全体において均一となるように、公知の方法又は自体公知の方法により混合又は撹拌することが好ましい。混合又は撹拌の方法は、当該分野において十分に確立されているので、その方法に従ってよい。
【0038】
〔IL-12産生増強効果、免疫賦活効果及び静菌効果の確認〕
本発明の飼料又は組成物の効果を確認する方法としては、例えば、ラクトバチルス・プランタラムL-137株(Lactobacillus plantarum L-137)又はその処理物及び脂肪酸又はその塩とを含有する本発明の飼料又はその他の組成物が、ラクトバチルス・プランタラムL-137株(Lactobacillus plantarum L-137)又はその処理物及び脂肪酸又はその塩のいずれも含有しない飼料又は組成物に比べて、IL-12産生、免疫賦活活性又は静菌効果に優れることを確認する方法が挙げられる。IL-12産生及び免疫賦活活性の確認方法は、ELISA等、当該分野において十分に確立されているので、その方法に従ってよい。静菌効果の確認方法は、菌の増殖の有無を目視又は顕微鏡等で確認する他、適切な培地で培養し増殖性を測定する、細菌類が産生する酵素量の測定、PCR法等、当該分野において十分に確立されているので、その方法に従ってよい。
なお、免疫賦活活性として、具体的には、例えば、B細胞、T細胞、マクロファージ・ナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞等の細胞のIL-12等のインターロイキン、又はIFN-β若しくはIFN-γ等のインターフェロン等のサイトカインの産生促進活性等が挙げられるが、これらに限定されない。
これらの上記方法の一例として、後述の実施例を参照することができる。
【0039】
本発明の組成物を飲食品、動物用飼料、医薬品(動物用医薬も含む)、又は医薬部外品の形態に調製した場合、当該飲食品、飼料、医薬品、若しくは医薬部外品、その添付説明書又はその包装箱等には、本発明の組成物の作用に鑑みて、IL-12産生増強作用又は免疫賦活活性を有する乳酸菌又はその処理物のである旨を表示することができる。
【0040】
本発明の飼料における、乳酸菌又はその処理物及び脂肪酸又はその塩の質量比(乳酸菌又はその処理物:脂肪酸又はその塩)は、例えば、1:0.5~50000であることが好ましく、1:0.5~2000であることがより好ましく、1:0.5~100であることがさらに好ましく、1:0.5~2.5であることが特に好ましい。
本発明の医薬品(動物用医薬も含む)、飲食品、医薬部外品等の組成物における、乳酸菌又はその処理物及び脂肪酸又はその塩の質量比(乳酸菌又はその処理物:脂肪酸又はその塩)は、例えば、1:0.5~50000であることが好ましく、1:0.5~2000であることがより好ましく、1:0.5~100であることがさらに好ましく、1:0.5~2.5であることが特に好ましい。
【実施例
【0041】
以下に実施例及び試験例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
[実施例1]免疫細胞株に本発明の乳酸菌と脂肪酸又はその塩を添加した場合のIL-12産生増強効果の確認
実験方法:ラクトバチルス・プランタラムL-137乾燥死菌体をPBSで2mg/mLになるように懸濁し、10%FBS含有RPMI1640培地を加えて40μg/mLになるように希釈して検液1とした。脂肪酸(中鎖、長鎖)又は脂肪酸のナトリウム塩(短鎖)をDnase free water(短鎖脂肪酸)もしくはEtOH(中鎖、長鎖脂肪酸)で0.5Mになるように溶解させた後、10%FBS含有RPMI1640培地を加えて400μMになるように希釈して検液2とした。マクロファージ様細胞株であるJ774.1細胞(細胞番号JCRB9108;国立研究開発法人 医薬基盤 健康 栄養研究所 JCRB細胞バンク)は、それぞれ1.0×106細胞/mLとなるように10%FBS含有RPMI1640培地に懸濁し、細胞株懸濁液とした。検液1、2を50μLずつと細胞株懸濁液を100μLずつ、96ウェル培養プレートに添加し(菌体終濃度:10μg/mL、脂肪酸終濃度:100μM、細胞終濃度:5.0×105/mL)、5%CO2インキュベーター内で37℃、48時間培養した。培養終了後の上清中のIL-12p40濃度は、ELISA法にて測定した。なお、検出限界濃度は0.07ng/mLであった。結果は下記の表1及び図1図2の通りであった。
使用した試薬等のメーカーおよび製品名は以下の通りである。
酢酸ナトリウム(S5636、シグマアルドリッチ)、プロピオン酸ナトリウム(P5436、シグマアルドリッチ)、N-酪酸ナトリウム(B5887、シグマアルドリッチ)、デカン酸(21409、シグマアルドリッチ)、パルミトレイン酸(P9417、シグマアルドリッチ)、FBS(SH30071.03、Hyclone)、RPMI1640培地(23400-021、Thermo Fisher Scientific)、ELISA用一次抗体(505202、Biolegend)、ELISA用二次抗体(BAF419、R&D Systems)、ELISA用標品(577009、Biolegend)
【0043】
【表1】
【0044】
結果及び考察:
上記の表1及び図1図2に示すように、脂肪酸を単独で添加した場合には、いずれの脂肪酸(短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸)又はその塩も、免疫細胞に対し、IL-12を産生させることは出来なかった。そして、乳酸菌ラクトバチルス・プランタラムL-137株(Lactobacillus plantarum L-137株)は、免疫細胞に対し、一定のIL-12産生効果を有したが、乳酸菌と脂肪酸を同時に添加した場合、脂肪酸単独添加の際には全く見られなかった、IL-12の産生が有意差を持って増強された。これらの結果から、乳酸菌と脂肪酸を組み合わせることにより、IL-12の産生が向上することが分かった。なお、IL-12の産生が向上することは、免疫賦活作用にも良い影響があると考えられる。
本発明は、単独ではIL-12産生活性を有しない脂肪酸を、乳酸菌ラクトバチルス・プランタラムL-137株(Lactobacillus plantarum L-137株)と組み合わせることにより、IL-12産生が有意差を持って増強されることを見出した、初めての例である。
【0045】
[実施例2]動物に本発明の乳酸菌と脂肪酸又はその塩を給与した場合のIL-12産生増強効果及び静菌効果の確認
さらに、実施例2では、ラクトバチルス・プランタラム L-137と脂肪酸を含有する飼料(試験食品)を、動物(ブロイラー)に給与し、その評価を行った。
【0046】
実験方法:
(1)試験準備及び飼育方法について
実施例2では、食肉用ブロイラー(Ross308、雄性、Charoen Pokphand Foods PCL., Lamphun, Thailandより入手)を64羽ごとに、以下の試験区(T1、T2及びT3)に分け、評価を行った。
ラクトバチルス・プランタラムL-137乾燥死菌体粉末及びプロピオン酸ナトリウム(100% Sodium Propionate、CALTECH CORPORATION LIMITED)のいずれも含まない試験食(粉末飼料)を給与する区(T1)、
ラクトバチルス・プランタラムL-137乾燥死菌体を試験食中10 ppmの濃度で混餌給与する区(T2)、
ラクトバチルス・プランタラムL-137乾燥死菌体を試験食中5 ppmとプロピオン酸ナトリウムを試験食中2000 ppmの濃度で混餌給与する区(T3)。
(以下の試験では、T3の有効性がT2と同等以上であれば、相乗効果が得られているとみなせることとする。)
各区試験食をブロイラーに1日齢から21日齢まで給与し、通常飼料で22日齢から42日齢まで飼育した。試験食及び通常飼料の詳細については、下記の表2の通りである。
【表2】
【0047】
(2)IL-12産生増強効果の確認
42日齢時に各区のブロイラー8羽より盲腸扁桃を採取し、RNA抽出を行った。当該RNA検体からcDNAを合成し、cDNAを鋳型に定量的PCRを実施した。用いたプライマーの配列は以下の表3の通りである。
【0048】
【表3】
【0049】
採取した盲腸扁桃遺伝子の発現解析を行い、IL-12の発現強度をT1区、T2区及びT3区のそれぞれのブロイラーにおいて計測及び集計した。結果は図3及び下記の表4の通りである。
【0050】
【表4】
【0051】
(3)サルモネラ菌(Salmonella spp.)に対する静菌効果の確認
42日齢時に各区のブロイラー6羽より盲腸内容物を無菌的に採取し、サルモネラ菌の菌数を計測した。結果は表5の通りである。表中の値は平均値である。
【0052】
【表5】
【0053】
結果及び考察:
盲腸扁桃遺伝子発現解析の結果(図3及び表4)からは、T2区と比較し、T3区において、有意にIL-12の発現量が高かった。また、盲腸内容物を採取し、分析したところ、サルモネラ菌(Salmonella spp.)数について、T2区と比較し、T3区において、菌数が少なかった。
すなわち、ラクトバチルス・プランタラム L-137乾燥死菌体とプロピオン酸を両方含む飼料を投与されたブロイラーにおいて、相乗的なIL-12発現作用及び静菌作用が認められた。詳細は不明であるが、ラクトバチルス・プランタラム L-137乾燥死菌体とプロピオン酸ナトリウムの併用により、宿主であるブロイラーのIL-12産生が増強された結果、サルモネラ菌の増殖が抑制され、静菌作用が生じるものと考えられる。
さらに、サルモネラ菌の菌数(表5)からは、乳酸菌ラクトバチルス・プランタラムL-137株(Lactobacillus plantarum L-137株)又はその処理物と脂肪酸又はその塩とを含有する組成物が、in vitroのみならず、動物 (in vivo) においてもIL-12産生増強作用と免疫賦活作用に有効であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の飼料及び組成物は、IL-12産生増強作用、免疫賦活作用又は静菌作用を有するため、飲食品、飼料、医薬品又は医薬部外品、及び化粧品等として有用である。
図1
図2
図3
【配列表】
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