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特許7342340環境評価支援装置及び環境評価支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】環境評価支援装置及び環境評価支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20230905BHJP
   E04B 1/92 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
G06F30/13
E04B1/92 ESW
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019125365
(22)【出願日】2019-07-04
(65)【公開番号】P2021012472
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】松岡 正明
(72)【発明者】
【氏名】沢田 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】徐 天舒
(72)【発明者】
【氏名】永田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】村井 絢香
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-164003(JP,A)
【文献】特開2003-027586(JP,A)
【文献】特開2019-057214(JP,A)
【文献】特開2010-210232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/13
E04B 1/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象とする建物の内外部に関する内外部情報を取得する内外部情報取得部と、
前記建物の内部における、評価対象とする移動経路を示す経路情報を取得する経路情報取得部と、
前記内外部情報取得部によって取得された内外部情報に基づいて、前記経路情報取得部によって取得された経路情報が示す移動経路を移動している場合の、光に関する光環境要素及び当該光環境要素を除く非光環境要素を含む各環境要素の変化の状態を示す状態情報を導出する導出部と、
前記導出部によって導出された状態情報が示す各環境要素の変化の状態を提示する提示部と、
を備え
前記提示部は、前記各環境要素の変化の状態として、前記各環境要素そのものの値、及び当該各環境要素の変化率を提示する、
環境評価支援装置。
【請求項2】
前記各環境要素の変化に影響する前記建物のパラメータの変更を受け付ける受付部、を更に備え、
前記導出部は、前記受付部によって受け付けられた前記建物のパラメータの変更に応じて更新された前記状態情報である更新状態情報を更に導出し、
前記提示部は、前記更新状態情報が示す各環境要素の変化の状態を更に提示する、
請求項1に記載の環境評価支援装置。
【請求項3】
前記光環境要素は、照度及び輝度の少なくとも一方を含み、前記非光環境要素は、温度、風速、湿度、及び天空率の少なくとも1つを含む、
請求項1又は請求項2に記載の環境評価支援装置。
【請求項4】
前記内外部情報取得部は、前記建物が建築される位置における気候を示す気候情報を更に取得し、
前記導出部は、前記内外部情報取得部が取得した気候情報により示される気候に応じた前記状態情報を導出する、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の環境評価支援装置。
【請求項5】
前記内外部情報は、前記建物及び当該建物が建築される敷地の全体的な形状を示す内外部モデルであり、
前記受付部は、前記内外部モデルに対する前記パラメータを変更する操作に応じて当該パラメータの変更を受け付ける、
請求項2に記載の環境評価支援装置。
【請求項6】
評価対象とする建物の内外部に関する内外部情報、及び前記建物の内部における、評価対象とする移動経路を示す経路情報を取得し、
取得した内外部情報に基づいて、取得した経路情報が示す移動経路を移動している場合の、光に関する光環境要素及び当該光環境要素を除く非光環境要素を含む各環境要素の変化の状態を示す状態情報を導出し、
導出した状態情報が示す各環境要素の変化の状態として、前記各環境要素そのものの値、及び当該各環境要素の変化率を提示する、
処理をコンピュータに実行させるための環境評価支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境評価支援装置及び環境評価支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物内の連続空間における環境状態を評価するための技術として、特許文献1には、建物内の光環境を設定する手段と、建物内の移動ルートを設定する手段と、移動ルートの照度変化を算出する手段と、移動ルートの照度変化に伴う光環境評価指標を用いて照度評価結果を表示する手段とを備えることを特徴とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-164003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、光に関する環境要素のみを対象としているため、必ずしも効果的に建物の環境評価を行うことができるとは限らなかった。
【0005】
本開示は、以上の事情を鑑みて成されたものであり、光に関する環境要素のみを考慮する場合に比較して、より効果的に建物の環境評価を行うことができる環境評価支援装置、及び環境評価支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る環境評価支援装置は、評価対象とする建物の内外部に関する内外部情報を取得する内外部情報取得部と、前記建物の内部における、評価対象とする移動経路を示す経路情報を取得する経路情報取得部と、前記内外部情報取得部によって取得された内外部情報に基づいて、前記経路情報取得部によって取得された経路情報が示す移動経路を移動している場合の、光に関する光環境要素及び当該光環境要素を除く非光環境要素を含む各環境要素の変化の状態を示す状態情報を導出する導出部と、前記導出部によって導出された状態情報が示す各環境要素の変化の状態を提示する提示部と、を備え、前記提示部は、前記各環境要素の変化の状態として、前記各環境要素そのものの値、及び当該各環境要素の変化率を提示する
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る環境評価支援装置によれば、評価対象とする移動経路を移動している場合の、光に関する光環境要素及び当該光環境要素を除く非光環境要素を含む各環境要素の変化の状態を提示することで、光に関する環境条件のみを考慮する場合に比較して、より効果的に建物の環境評価を行うことができる。
【0008】
請求項2に記載の本発明に係る環境評価支援装置は、請求項1に記載の環境評価支援装置であって、前記各環境要素の変化に影響する前記建物のパラメータの変更を受け付ける受付部、を更に備え、前記導出部は、前記受付部によって受け付けられた前記建物のパラメータの変更に応じて更新された前記状態情報である更新状態情報を更に導出し、前記提示部は、前記更新状態情報が示す各環境要素の変化の状態を更に提示する。
【0009】
請求項2に記載の本発明に係る環境評価支援装置によれば、建物のパラメータの変更に応じて更新された各環境要素の変化の状態を更に提示することで、建物を設計する場合における、より快適な建物を設計することを支援することができる。
【0010】
請求項3に記載の本発明に係る環境評価支援装置は、請求項1又は請求項2に記載の環境評価支援装置であって、前記光環境要素は、照度及び輝度の少なくとも一方を含み、前記非光環境要素は、温度、風速、湿度、及び天空率の少なくとも1つを含む。
【0011】
請求項3に記載の本発明に係る環境評価支援装置によれば、光環境要素に、照度及び輝度の少なくとも一方を含ませ、非光環境要素に、温度、風速、湿度、及び天空率の少なくとも1つを含ませることで、建物を設計する場合において、適用した環境要素に関して、より快適な建物を設計することを支援することができる。
【0012】
請求項4に記載の本発明に係る環境評価支援装置は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の環境評価支援装置であって、前記内外部情報取得部は、前記建物が建築される位置における気候を示す気候情報を更に取得し、前記導出部は、前記内外部情報取得部が取得した気候情報により示される気候に応じた前記状態情報を導出する。
【0013】
請求項4に記載の本発明に係る環境評価支援装置によれば、気候情報により示される気候に応じた状態情報を導出して提示することで、より実態に即した建物の環境評価を行うことができる。
請求項5に記載の本発明に係る環境評価支援装置は、請求項2に記載の環境評価支援装置であって、前記内外部情報は、前記建物及び当該建物が建築される敷地の全体的な形状を示す内外部モデルであり、前記受付部は、前記内外部モデルに対する前記パラメータを変更する操作に応じて当該パラメータの変更を受け付ける。
【0014】
請求項に記載の本発明に係る環境評価支援プログラムは、評価対象とする建物の内外部に関する内外部情報、及び前記建物の内部における、評価対象とする移動経路を示す経路情報を取得し、取得した内外部情報に基づいて、取得した経路情報が示す移動経路を移動している場合の、光に関する光環境要素及び当該光環境要素を除く非光環境要素を含む各環境要素の変化の状態を示す状態情報を導出し、導出した状態情報が示す各環境要素の変化の状態として、前記各環境要素そのものの値、及び当該各環境要素の変化率を提示する、処理をコンピュータに実行させる。
【0015】
請求項に記載の本発明に係る環境評価支援プログラムによれば、評価対象とする移動経路を移動している場合の、光に関する光環境要素及び当該光環境要素を除く非光環境要素を含む各環境要素の変化の状態を提示することで、光に関する環境条件のみを考慮する場合に比較して、より効果的に建物の環境評価を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、光に関する環境要素のみを考慮する場合に比較して、より効果的に建物の環境評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る環境評価支援装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る環境評価支援装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図3A】実施形態に係る内外部情報データベースの構成の一例を示す模式図(斜視図)である。
図3B】実施形態に係る内外部情報データベースの構成の一例を示す模式図(平面図)である。
図4】実施形態に係る気候情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
図5】実施形態に係る経路情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
図6】実施形態に係る環境評価支援処理の一例を示すフローチャートである。
図7】実施形態に係る対象情報入力画面の構成の一例を示す正面図である。
図8】実施形態に係る経路情報を入力する前の経路情報入力画面の構成の一例を示す正面図である。
図9】実施形態に係る経路情報を入力した後の経路情報入力画面の構成の一例を示す正面図である。
図10】実施形態に係る建物のパラメータを変更する前の結果画面の構成の一例を示す正面図である。
図11】実施形態に係る建物のパラメータを変更した後の結果画面の構成の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態例を詳細に説明する。
【0019】
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態に係る環境評価支援装置10の構成を説明する。なお、環境評価支援装置10の例としては、パーソナルコンピュータ及びサーバコンピュータ等の情報処理装置が挙げられる。
【0020】
本実施形態に係る環境評価支援装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、一時記憶領域としてのメモリ12、不揮発性の記憶部13、キーボードとマウス等の入力部14、液晶ディスプレイ等の表示部15、媒体読み書き装置(R/W)16及び通信インタフェース(I/F)部18を備えている。CPU11、メモリ12、記憶部13、入力部14、表示部15、媒体読み書き装置16及び通信I/F部18はバスB1を介して互いに接続されている。媒体読み書き装置16は、記録媒体17に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体17への情報の書き込みを行う。
【0021】
記憶部13はHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部13には、環境評価支援プログラム13Aが記憶されている。環境評価支援プログラム13Aは、環境評価支援プログラム13Aが書き込まれた記録媒体17が媒体読み書き装置16にセットされ、媒体読み書き装置16が記録媒体17からの環境評価支援プログラム13Aの読み出しを行うことで、記憶部13へ記憶される。CPU11は、環境評価支援プログラム13Aを記憶部13から読み出してメモリ12に展開し、環境評価支援プログラム13Aが有するプロセスを順次実行する。
【0022】
また、記憶部13には、内外部情報データベース13B、気候情報データベース13C及び経路情報データベース13Dが記憶される。内外部情報データベース13B、気候情報データベース13C及び経路情報データベース13Dについては、詳細を後述する。
【0023】
次に、図2を参照して、本実施形態に係る環境評価支援装置10の機能的な構成について説明する。図2に示すように、環境評価支援装置10は、内外部情報取得部11A、経路情報取得部11B、受付部11C、導出部11D及び提示部11Eを含む。環境評価支援装置10のCPU11が環境評価支援プログラム13Aを実行することで、内外部情報取得部11A、経路情報取得部11B、受付部11C、導出部11D及び提示部11Eとして機能する。
【0024】
本実施形態に係る内外部情報取得部11Aは、評価対象とする建物(以下、「評価対象建物」という。)の内外部に関する内外部情報を取得する。本実施形態では、上記内外部情報として、予め定められた3次元CAD(Computer Aided Design)ソフトウェアを用いて作成された、評価対象建物、及び当該評価対象建物が建築される敷地の全体的な形状を示すモデル(以下、「内外部モデル」という。)を適用している。ここで、本実施形態に係る内外部モデルには、評価対象建物及び敷地の全体的な形状を示す情報の他、評価対象建物の壁面の材質(コンクリート、硝子、大理石等)を示す情報、敷地内の樹木、池等の存在物を示す情報が含まれる。また、本実施形態では、上記3次元CADソフトウェアとして、ライノセラス(Rhinoceros)(登録商標)を適用しているが、これに限らない。例えば、レビット(Revit)(登録商標)等の他のソフトウェアを上記3次元CADソフトウェアとして適用する形態としてもよい。
【0025】
また、本実施形態に係る経路情報取得部11Bは、評価対象建物の内部における、評価対象とする移動経路(以下、「評価対象移動経路」という。)を示す経路情報を取得する。なお、ここでいう「評価対象建物の内部」には、評価対象建物内の各室内や廊下等の通路、エントランス等の壁によって囲まれた領域の他、テラス、バルコニー、ベランダ、屋上等といった評価対象建物の外部に面する領域も含む。
【0026】
また、本実施形態に係る導出部11Dは、内外部情報取得部11Aによって取得された内外部モデルに基づいて、経路情報取得部11Bによって取得された経路情報が示す評価対象移動経路を移動している場合の、光に関する光環境要素及び当該光環境要素を除く非光環境要素を含む各環境要素の変化の状態を示す状態情報を導出する。なお、本実施形態では、光環境要素として、照度及び輝度を適用し、非光環境要素として、温度、風速、湿度、及び天空率を適用しているが、これに限らない。例えば、光環境要素として、照度及び輝度の何れか一方のみを適用する形態としてもよいし、非光環境要素として、温度、風速、湿度、及び天空率の少なくとも1つを適用する形態としてもよい。さらに、光環境要素として、上述した照度及び輝度以外の、昼光率、遮蔽率といった光に関する他の環境要素を適用する形態としてもよいし、非光環境要素として、光環境要素を除き、かつ、上述した温度、風速、湿度、及び天空率を除く環境要素を適用する形態としてもよい。また、本実施形態では、導出部11Dによる状態情報の導出を、上記ライノセラス(登録商標)に設けられている機能であるグラスホッパー(Grasshopper)(登録商標)を用いて行っているが、これに限らない。例えば、ダイナモ(Dynamo)(登録商標)等の他のソフトウェアを、上記状態情報を導出するソフトウェアとして適用する形態としてもよい。
【0027】
そして、本実施形態に係る提示部11Eは、導出部11Dによって導出された状態情報が示す各環境要素の変化の状態を提示する。なお、本実施形態に係る提示部11Eでは、上記各環境要素の変化の状態の提示を、表示部15による表示によって行っているが、これに限らない。例えば、音声による発声、画像形成装置(所謂プリンタ)を用いた印刷等によって、上記各環境要素の変化の状態を提示する形態としてもよい。さらに、通信I/F部18を介して、他の装置に上記各環境要素の変化の状態を示す情報を送信することにより当該変化の状態を提示する形態としてもよい。
【0028】
一方、本実施形態に係る受付部11Cは、光環境要素及び非光環境要素の各環境要素の変化に影響する評価対象建物のパラメータの変更を受け付ける。なお、本実施形態では、評価対象建物のパラメータとして、評価対象建物の庇の長さを適用しているが、これに限らない。例えば、庇の位置、窓の大きさ及び位置、壁面の材質及び厚さ等、光環境要素及び非光環境要素の各環境要素の変化に影響する他のパラメータを適用する形態としてもよい。
【0029】
受付部11Cが評価対象建物のパラメータの変更を受け付けると、本実施形態に係る導出部11Dは、受付部11Cによって受け付けられた評価対象建物のパラメータの変更に応じて更新された上記状態情報である更新状態情報を更に導出する。そして、本実施形態に係る提示部11Eは、更新状態情報が示す各環境要素の変化の状態を更に提示する。
【0030】
なお、本実施形態に係る内外部情報取得部11Aは、評価対象建物が建築される位置における気候を示す気候情報を更に取得し、導出部11Dは、内外部情報取得部11Aが取得した気候情報により示される気候に応じた上記状態情報を導出する。なお、本実施形態に係る内外部情報取得部11Aでは、上記気候情報として、EWP(EnergyPlus Weather Data)フォーマットの気象データを取得しているが、これに限らない。例えば、拡張アメダス気象データ(所謂EA(Expanded Amedas)気象データ)等の他の気象データを上記気候情報として取得する形態としてもよい。
【0031】
次に、図3A及び図3Bを参照して、本実施形態に係る内外部情報データベース13Bについて説明する。図3A及び図3Bに模式的に示すように、本実施形態に係る内外部情報データベース13Bは、評価対象建物50及び敷地70の全体的な形状を示す、上述した内外部モデル80が記憶されている。なお、図3Aは評価対象建物50及び敷地70を模式的に示した斜視図であり、図3Bは評価対象建物50及び敷地70を模式的に示した平面図である。以下では、評価対象建物50として、図3A及び図3Bに示すように、庇52を有する建物を適用した場合について説明する。
【0032】
また、図示は省略するが、内外部情報データベース13Bに記憶される内外部モデル80には、上述したように、評価対象建物50及び敷地70の全体的な形状を示す情報の他、評価対象建物50の壁面の材質を示す情報、敷地内の樹木、池等の存在物を示す情報が含まれている。
【0033】
次に、図4を参照して、本実施形態に係る気候情報データベース13Cについて説明する。図4に示すように、本実施形態に係る気候情報データベース13Cは、地域、日時、及び環境要素の各情報が関連付けられて記憶されている。これらの気候情報データベース13Cに記憶される情報が、上述した気候情報に相当する。
【0034】
上記地域は、評価対象建物50が建築される地点を含む、予め定められた領域(本実施形態では、日本)内の予め定められた区分領域毎の位置(本実施形態では、住所)を示す情報である。また、上記日時は、予め定められた期間(本実施形態では、1年間)における所定時間毎の時刻を示す情報である。また、上記環境要素は、対応する地域で、かつ、対応する日時における、上述した光環境要素及び非光環境要素の値を導出する際の元となる各種環境要素の平均的な値(以下、「環境要素値」という。)を示す情報である。
【0035】
次に、図5を参照して、本実施形態に係る経路情報データベース13Dについて説明する。図5に示すように、本実施形態に係る経路情報データベース13Dは、位置順及び位置情報の各情報が関連付けられて記憶される。
【0036】
上記位置順は、環境評価支援装置10のユーザ(以下、単に「ユーザ」という。)によって入力された評価対象移動経路における、予め設定された複数の位置毎の移動順を示す情報であり、上記位置情報は、対応する位置順に対応する位置を示す情報である。ここで設定される複数の位置が光環境要素及び非光環境要素の状態を導出する位置であり、当該複数の位置を、以下では「解析点」という。なお、図5に示すように、本実施形態では、上記位置情報として、予め定められた位置(本実施形態では、内外部モデル80における所定の原点位置)を原点とした3次元座標により示される情報を適用している。図5に示す例では、例えば、ユーザによって入力された評価対象移動経路における出発点(位置順が「0」である地点)の位置が(X1,Y1,Z1)であることを示している。但し、位置順及び位置情報ともに以上の形態に限るものでなく、ユーザによって入力された評価対象移動経路が移動方向も含めて特定される情報であれば、如何なる情報も適用できることは言うまでもない。
【0037】
次に、図6図11を参照して、本実施形態に係る環境評価支援装置10の作用を説明する。ユーザによって環境評価支援プログラム13Aの実行を開始する指示入力が入力部14を介して行われた場合に、環境評価支援装置10のCPU11が当該環境評価支援プログラム13Aを実行することにより、図6に示す環境評価支援処理が実行される。なお、ここでは、錯綜を回避するために、評価対象建物50に関する内外部情報データベース13B、及び気候情報データベース13Cが構築済みである場合について説明する。
【0038】
図6のステップ200で、内外部情報取得部11Aは、評価対象建物50に関する内外部モデル80を内外部情報データベース13Bから読み出すことにより内外部情報を取得する。次のステップ202で、CPU11は、予め定められた構成とされた対象情報入力画面を表示するように表示部15を制御し、ステップ204で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0039】
図7には、本実施形態に係る対象情報入力画面の一例が示されている。図7に示すように、本実施形態に係る対象情報入力画面では、評価対象に関する情報の入力を促すメッセージと共に、評価対象建物の建築場所、評価対象とする日時、及び評価対象とする環境要素の各情報を入力するための入力領域15A~15Cが表示される。
【0040】
一例として図7に示す対象情報入力画面が表示部15に表示されると、ユーザは、上記建築場所、評価対象とする日時、及び評価対象とする環境要素を、対応する入力領域に入力した後、終了ボタン15Dを指定する。これに応じて、ステップ204が肯定判定となって、ステップ206に移行する。ここで、ユーザは、評価対象とする環境要素として、上述した光環境要素及び非光環境要素の何れの環境要素についても、少なくとも1つの環境要素を入力するようにする。
【0041】
ステップ206で、内外部情報取得部11Aは、対象情報入力画面を介して入力された建築場所及び評価対象とする日時に対応し、かつ、対象情報入力画面を介して入力された評価対象とする環境要素の値を導出するために必要な環境要素値を気候情報データベース13Cから読み出すことにより取得する。
【0042】
ステップ208で、経路情報取得部11Bは、予め定められた構成とされた経路情報入力画面を表示するように表示部15を制御し、ステップ210で、経路情報取得部11Bは、上述した評価対象移動経路を示す経路情報が入力されるまで待機する。
【0043】
図8には、本実施形態に係る経路情報入力画面の一例が示されている。図8に示すように、本実施形態に係る経路情報入力画面では、評価対象移動経路の入力を促すメッセージと共に、ステップ200の処理によって取得した内外部モデル80により示される評価対象建物50が表示される。
【0044】
一例として図8に示す経路情報入力画面が表示部15に表示されると、ユーザは、評価対象移動経路を、移動する順に入力した後、終了ボタン15Dを指定する。これに応じて、ステップ210が肯定判定となって、ステップ212に移行する。ここで、評価対象移動経路を入力する際に、ユーザは、当該評価対象移動経路における解析点を指定する。ここで指定した各解析点に対して上述した位置順が、評価対象移動経路の上流側から下流側に向けてCPU11により設定される。以上の位置順を示す情報及び各位置順に対応する3次元の位置を示す位置情報が上述した経路情報に相当する。
【0045】
図9には、ユーザにより評価対象移動経路が入力された後の経路情報入力画面の一例が示されている。なお、図9に示す例では、評価対象建物50の図9正面視手前側の右端部付近の位置を評価対象移動経路の出発点(位置順「0」)として、位置順「0」から評価対象移動経路の最終点である位置順「65」に向かって、庇52の下部を通過する区間、上部が庇52に覆われていない領域を通過する区間、評価対象建物50の内部を通過する区間等を有する経路として、評価対象移動経路の入力がなされている。
【0046】
このように、本実施形態では、各解析点をユーザが入力しているが、これに限らない。例えば、ユーザは移動経路のみを入力し、環境評価支援装置10が、入力された移動経路の出発点から最終点までの間を所定の距離毎に複数の区間に分割し、各分割区間の境界位置を解析点とする形態としてもよい。
【0047】
ステップ212で、経路情報取得部11Bは、経路情報入力画面において入力された経路情報を経路情報データベース13Dに登録する。
【0048】
ステップ214で、導出部11Dは、以上の処理によって得られた内外部モデル80、気候情報、評価対象とする環境要素、及び評価対象移動経路を示す経路情報を、上述した状態情報を導出するソフトウェア(本実施形態では、グラスホッパー(登録商標))に入力することにより、入力された評価対象移動経路を対象とした環境シミュレーションを実行する。
【0049】
ステップ216で、提示部11Eは、以上の処理によって導出された状態情報を示す情報を予め定められた構成とされた結果画面として、表示部15に表示する制御を行い、ステップ218で、提示部11Eは、結果画面において所定情報が入力されるまで待機する。図10には、本実施形態に係る結果画面の一例が示されている。
【0050】
図10に示すように、本実施形態に係る結果画面では、庇の長さが変更可能である旨を示すメッセージが表示されると共に、内外部モデル80における評価対象建物50の側面断面図が表示される。また、本実施形態に係る結果画面では、対象情報入力画面において入力された環境要素(図7に示す例では、「温度」、「照度」、「天空率」等)の値及び変化率を示すグラフが表示される。図10では、4つのグラフが表示されており、左上のグラフが「温度」そのものの値を示すグラフであり、左下のグラフが「温度」の変化率を示すグラフである。また、図10における右上のグラフが「照度」そのものの値を示すグラフであり、右下のグラフが「照度」の変化率を示すグラフである。ここで、各グラフにおける横軸は、経路情報入力画面において入力された経路情報により示される評価対象移動経路の解析点の位置順(図10では、「解析点」と表記。)を示している。なお、上記変化率とは、直前の解析点における値に対する変化の割合を表す。
【0051】
一例として図10に示す結果画面を参照することにより、ユーザは、評価対象建物50の形状を把握することができると共に、設定した評価対象移動経路を移動している場合における、設定した環境要素の変化の状態を、容易に把握することができる。
【0052】
なお、上述したように、本実施形態に係る環境評価支援装置10では、評価対象建物50における変更可能なパラメータとして庇の長さを適用している。このため、図10に示す結果画面では、評価対象建物50の庇52に覆われていない領域から庇52に覆われている領域に対応する範囲である、位置順が「32」から「42」までの範囲の移動経路を対象として各グラフを表示しているが、これに限らない。例えば、グラフの表示範囲をユーザが予め設定し、設定した表示範囲の移動経路を表示対象とする形態等としてもよい。
【0053】
ユーザは、結果画面を参照した結果、評価対象建物50における変更可能なパラメータ(本実施形態では、庇の長さ)を変更したい場合は、一例として図11に示すように、当該パラメータを変更する操作を行う。
【0054】
例えば、環境要素として温度及び照度に注目した場合、一例として図10及び図11に示すように、移動経路上の移動に応じた照度の変化率は庇52の長さに殆ど左右されないが、温度の変化率は庇52が長いほど大きくなる。従って、この場合、評価対象移動経路における移動に伴う温度の変化が少ない方が好ましい場合は、庇52の長さを長くする方が、照度に対する悪影響が限定的であって好ましい。一方で、庇52の長さを長くする程、天空率は低下するため、天空率を重視する設計においては、庇52の長さは短い方が好ましい。ユーザは、以上のような各環境要素に関する重視すべき条件等を考慮して、評価対象建物50の変更可能なパラメータを変更することで、評価対象建物50の好ましい設計を行うことができる。
【0055】
ユーザによって上記パラメータが変更されるか、又は終了ボタン15Dが指定されると、ステップ218が肯定判定となってステップ220に移行する。
【0056】
ステップ220で、受付部11Cは、ユーザによって上記パラメータが変更されたか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ222に移行する。ステップ222で、受付部11Cは、ユーザによって行われたパラメータの変更を評価対象建物50の内外部モデル80に反映するように内外部情報データベース13Bを更新した後、ステップ214に戻る。なお、ステップ214~ステップ220の処理を繰り返し実行する際に、導出部11Dは、ステップ214において適用する内外部モデル80を、直前のステップ222の処理によって更新されたものとする。図11に示す結果画面におけるグラフは、パラメータが変更された後のものであり、本発明の更新状態情報に相当する。
【0057】
一方、ステップ220で否定判定となった場合、受付部11Cは、ユーザによって結果画面で終了ボタン15Dが指定されたと見なして本環境評価支援処理を終了する。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、評価対象とする建物の内外部に関する内外部情報を取得する内外部情報取得部11Aと、上記建物の内部における、評価対象とする移動経路を示す経路情報を取得する経路情報取得部11Bと、内外部情報取得部11Aによって取得された内外部情報に基づいて、経路情報取得部11Bによって取得された経路情報が示す移動経路を移動している場合の、光に関する光環境要素及び当該光環境要素を除く非光環境要素を含む各環境要素の変化の状態を示す状態情報を導出する導出部11Dと、導出部11Dによって導出された状態情報が示す各環境要素の変化の状態を提示する提示部11Eと、を備えている。従って、光に関する環境要素のみを考慮する場合に比較して、より効果的に建物の環境評価を行うことができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、各環境要素の変化に影響する建物のパラメータの変更を受け付ける受付部11Cを更に備え、導出部11Dは、受付部11Cによって受け付けられた建物のパラメータの変更に応じて更新された状態情報である更新状態情報を更に導出し、提示部11Eは、上記更新状態情報が示す各環境要素の変化の状態を更に提示する。従って、建物を設計する場合における、より快適な建物を設計することを支援することができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、上記光環境要素を、照度及び輝度を含むものとし、上記非光環境要素を、温度、風速、湿度、及び天空率を含むものとしている。従って、建物を設計する場合において、適用した環境要素に関して、より快適な建物を設計することを支援することができる。
【0061】
さらに、本実施形態によれば、内外部情報取得部11Aにより、建物が建築される位置における気候を示す気候情報を更に取得し、導出部11Dにより、内外部情報取得部11Aが取得した気候情報により示される気候に応じた状態情報を導出する。従って、より実態に即した建物の環境評価を行うことができる。
【0062】
なお、上記実施形態では、図10及び図11に示す結果画面において4つのグラフのみを表示した場合について説明したが、これに限定されない。例えば、他の設定した環境要素に関するグラフを、スクロール表示や、画面切り替え表示等によって表示する形態としてもよい。
【0063】
また、上記実施形態において、例えば、内外部情報取得部11A、経路情報取得部11B、受付部11C、導出部11D、及び提示部11Eの各処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0064】
処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0065】
処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0066】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0067】
10 環境評価支援装置
11 CPU
11A 内外部情報取得部
11B 経路情報取得部
11C 受付部
11D 導出部
11E 提示部
12 メモリ
13 記憶部
13A 環境評価支援プログラム
13B 内外部情報データベース
13C 気候情報データベース
13D 経路情報データベース
14 入力部
15 表示部
15A~15C 入力領域
15D 終了ボタン
16 媒体読み書き装置
17 記録媒体
18 通信I/F部
50 評価対象建物
52 庇
70 敷地
80 内外部モデル
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11