(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】壁体、壁構造及び木製ブロック
(51)【国際特許分類】
E04B 2/02 20060101AFI20230905BHJP
E04C 1/00 20060101ALI20230905BHJP
E04B 2/12 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
E04B2/02 200
E04C1/00 E
E04B2/12
E04B2/02 110
(21)【出願番号】P 2019181943
(22)【出願日】2019-10-02
【審査請求日】2022-06-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年7月20日 一般社団法人 日本建築学会発行 「2019年度大会(北陸)学術講演梗概集・建築デザイン発表梗概集(DVD版)」にて公開 令和1年9月3日 一般社団法人 日本建築学会主催 「2019年度 日本建築学会大会(北陸)」にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 圭一
(72)【発明者】
【氏名】掛 悟史
(72)【発明者】
【氏名】福原 武史
(72)【発明者】
【氏名】井戸硲 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 道和
(72)【発明者】
【氏名】樋口 成康
(72)【発明者】
【氏名】梅野 圭介
(72)【発明者】
【氏名】島田 潤
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-035592(JP,A)
【文献】米国特許第05241795(US,A)
【文献】実開昭60-089330(JP,U)
【文献】特開昭59-081372(JP,A)
【文献】特開昭54-052828(JP,A)
【文献】特開2009-228257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/02,2/08,2/12
E04C 1/00
E04G 23/00-23/08
C09J 1/00 -5/10,
9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製ブロックを上下左右に積み重ねて、前記木製ブロックの上面、下面及び側面を接着剤で接合して構築された壁体であって、
前記木製ブロックの前記上面における前記壁体の面外方向の外側に前記接着剤が溜る溝部が左右方向に沿って形成され、
前記木製ブロックの前記側面に前記接着剤が溜る凹部が形成され
、
前記木製ブロックは、正面視において、鉛直方向に対して千鳥状に上下左右に積み重ねられ、
正面視において、前記木製ブロックは、前記上面及び前記下面に、左右方向の両側から中央に向かうに従って上下方向の厚さが小さくなるように傾斜する傾斜部が形成され、
前記木製ブロックは、前記傾斜部同士が上下に重なるよう積まれた、
壁体。
【請求項2】
柱と水平部材とで構成された架構内に、請求項1に記載の壁体が設けられた壁構造。
【請求項3】
上下左右に積み重ねて上面、下面及び側面を接着剤で接合して壁体を構築する木製ブロックであって、
前記上面における前記壁体の面外方向の外側に前記接着剤が溜る溝部が左右方向に沿って形成され、
前記側面に前記接着剤が溜る凹部が形成され、
前記壁体の正面視において、前記上面及び前記下面に、左右方向の両側から中央に向かうに従って上下方向の厚さが小さくなるように傾斜する傾斜部が形成されている、
木製ブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁体、壁構造及び木製ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
ブロックを上下左右に積み重ねて壁体を構築する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、コンクリートブロック積みによる既存建物の耐震補強方法に関する技術が開示されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、柱と水平部材とで構成された架構と、この架構内に木製ブロックを積み重ねて形成された壁体と、を備えた壁構造に関する技術が開示されている。この先行技術では、木製ブロックの積み重ね面は、中央から左右に傾斜している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公昭57-12832号公報
【文献】特開2018-35592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、コンクリートブロックを積み重ねた壁体に関する技術である。コンクリートブロックは、重量が重いので、積み重ね作業に手間がかかる。
【0007】
特許文献2には、木製ブロックを積み重ねて接着剤で接合する壁体が開示されている。木製ブロックは、コンクリートブロックよりも軽量であるので、積み重ね作業の手間が低減される。しかし、接着剤の目地からのはみ出しによる美観が損なわれないようにする対策が必要である。
【0008】
本発明は、上記事実に鑑み、木製ブロックを上下左右に積み重ねて接着剤で接合する際の接着剤のはみ出しを防止又は抑制することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一態様は、木製ブロックを上下左右に積み重ねて、前記木製ブロック同士を接着剤で接合して構築された壁体であって、前記木製ブロックの接着面における前記壁体の面外方向の外側に前記接着剤が溜る凹部が形成された壁体である。
【0010】
第一態様の壁体では、木製ブロックを上下左右に積み重ねて、木製ブロック同士を接着剤で接合する際に、余分な接着剤が接着面における壁体の面外方向の外側に形成された凹部に入り溜まる。よって、壁体の目地からの接着剤のはみ出しが防止又は抑制される。また、凹部に余分な接着剤が入り溜まることで、接着剤の厚みが薄く均一になり、接着強度が向上する。
【0011】
第二態様は、前記接着面に形成された前記凹部は、正面視において、左右方向又は上下方向に沿って形成された溝である、第一態様に記載の壁体である。
【0012】
第二態様の壁体では、接着面に形成された凹部を左右方向又は上下方向に沿って形成された溝とすることで、凹部が穴である場合と比較し、接着剤のはみ出しがより効果的に防止又は抑制される。
【0013】
第三態様は、正面視において、前記木製ブロックは、対向する一方の面及び他方の面に、左右方向又は上下方向の両側から中央に向かうに従って厚さが小さくなるように傾斜する傾斜部が形成されている、第一態様又は第二態様に記載の壁体である。
【0014】
第三態様の壁体では、上下左右に積み重ねられた木製ブロックの傾斜部同士が係合し合うことで、木製ブロックを適正な位置に配置することができるので、施工性が向上する。
【0015】
第四態様は、柱と水平部材とで構成された架構内に、第三態様に記載の壁体が設けられた壁構造である。
【0016】
第四態様の壁構造では、壁体の上側角部に入力された水平力は、木製ブロックの傾斜部に作用する圧縮力によって下側角部に伝達され、壁体の対角方向に圧縮ストラット(圧縮束)が形成される。そして、この圧縮ストラットによって、架構の変形が効果的に抑制される。
【0017】
第五態様は、上下左右に積み重ねて接着剤で接合して壁体を構築する木製ブロックであって、接着面における前記壁体の面外方向の外側に前記接着剤が溜る凹部が形成された木製ブロックである。
【0018】
第五態様の木製ブロックでは、上下左右に積み重ねて、木製ブロック同士を接着剤で接合する際に、余分な接着剤が接着面における壁体の面外方向の外側に形成された凹部に入り溜まる。よって、目地からの接着剤のはみ出しが防止又は抑制される。また、凹部に余分な接着剤が入り溜まることで、接着剤の厚みが薄く均一になり、接着強度が向上する。
【0019】
第六態様は、前記壁体の正面視において、対向する一方の面及び他方の面に、左右方向又は上下方向の両側から中央に向かうに従って厚みさが小さくなるように傾斜する傾斜部が形成されている、第五態様に記載の木製ブロックである。
【0020】
第六態様の木製ブロックでは、上下左右に積み重ねられる木製ブロックの傾斜部同士が係合し合うことで、木製ブロックを適正な位置に配置することができるので、施工性が向上する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、木製ブロックを上下左右に積み重ねて接着剤で接合する際の接着剤のはみ出しを防止又は抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態の壁構造が適用された架構及び壁体の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施形態>
本発明の一実施形態について説明する。なお、水平方向の直交する二方向をX方向及びY方向とし、それぞれ矢印X及び矢印Yで示す。X方向及びY方向に直交する鉛直方向をZ方向とし、矢印Zで示す。また、後述する壁体の面外方向がY方向であり、面外方向から見ることを正面視とし、正面視における左右方向がX方向である。木製ブロックを単体で説明する際の方向は、積み重ねて壁体となった状態での方向で説明する。壁体の面外方向(Y方向)を木製ブロックの「幅方向」とする。
【0024】
[壁体及び壁構造]
先ず壁体及び壁構造について説明する。
【0025】
図1に示すように、壁構造10は、架構20と、架構20内に木製ブロック100を上下左右に積み重ねて接着剤S(
図4参照)で接合した壁体50と、を備えている。
【0026】
架構20は、正面視における左右の柱22と、水平部材の一例としての上下の梁24と、で構成されている。なお、架構20を構成する水平部材は梁24以外、例えばスラブであってもよい。また、本実施形態の架構20は、鉄筋コンクリート製であるが、これに限定されない。架構20は、鉄筋コンクリート製以外、例えば、鉄骨鉄筋コンクリート製、鉄骨製及び木製であってもよい。
【0027】
本実施形態の壁体50は、木製ブロック100を鉛直方向に対して千鳥状に上下左右に積み重ねて接着剤S(
図4参照)で接合されて構築されている。
【0028】
本実施形態では、架構20における下側の梁24と壁体50とは接着剤S(
図4参照)で接合されている。また、架構20における上側の梁24及び左右の柱22と壁体50との隙間は、モルタル等の充填材Jが充填され、接合されている。なお、木製ブロック100及び壁体50の具体的な構築方法については、後述する。
【0029】
[木製ブロック]
次に木製ブロック100について説明する。
【0030】
図3に示す木製ブロック100は、ひき板を繊維方向が直交するように積層接着した直交集成板で構成されている。なお、木製ブロック100は、直交集成板以外の木質材、例えば、単板を繊維方向を揃えて積層接着した単板積層材や無垢材等を用いてもよい。
【0031】
木製ブロック100は、上面112、下面114、正面122、背面124、第一側面132及び第二側面134で構成されている。
【0032】
木製ブロック100のY方向に対向する正面122及び背面124は、互いに平行である。また、木製ブロック100のX方向に対向する左右の第一側面132及び第二側面134は、互いに平行である。
【0033】
木製ブロック100における上面112及び下面114は、壁体50(
図1、
図2及び
図4参照)を構築する際の積み重ね面である。また、木製ブロック100の上面112及び下面114には、正面視において左右方向の両端部から中央部に向かうに従って上下方向厚さが小さくなる上側傾斜部150U及び下側傾斜部150Lがそれぞれ形成され、これにより木製ブロック100は正面視において蝶々形になっている。
【0034】
上面112の上側傾斜部150Uは、左右方向の両端部から中央部に向かって下り勾配となった第一上側傾斜面152UA及び第二上側傾斜面152UBで構成され、V字状となっている。下面114の下側傾斜部150Lは、左右方向の両端部から中央部に向かって上り勾配となった第一下側傾斜面152LA及び第二下側傾斜面152LBで構成され、逆V字状となっている。
【0035】
なお、本実施形態の木製ブロック100は、正面視において左右対称且つ上下対称になっている。
【0036】
木製ブロック100における上面112及び下面114と、第一側面132及び第二側面134と、は、それぞれ隣接する木製ブロック100同士が接着剤Sで接着接合される接着面である。
【0037】
木製ブロック100の上面112の幅方向(Y方向、壁体50の面外方向)の外側(
図4も参照)には、接着剤S(
図4を参照)が溜る溝部180A、180Bが形成されている。
【0038】
接着剤S(
図4を参照)が溜まる凹部の一例としての溝部180A、180Bは、上面112における幅方向外側のそれぞれの辺部113A及び辺部113Bに沿って、平行に形成されている。また、溝部180A、180Bの深さは一定であり、溝底面182A、182Bは第一上側傾斜面152UA及び第二上側傾斜面152UBと平行であり、V字状になっている。
【0039】
また、木製ブロック100は、積み上げる際に位置決めする位置決め機構200を有している。位置決め機構200は、第一長溝210、第二長溝212A、212B及び木片部材220を有している。
【0040】
第一長溝210は、木製ブロック100の上面112の幅方向(Y方向)の中央部且つ左右方向(X方向)の中央部に、左右方向に延在するように形成されている。第二長溝212A、212Bは、木製ブロック100の下面114の幅方向(Y方向)の中央部且つ左右方向の両端部に左右方向に延在するように形成されている。第一長溝210の底面211及び第二長溝212A、212Bの底面213A、213Bは、水平方向に沿っている。そして、これら第一長溝210及び第二長溝212A、212Bには、位置決め部材の一例としての木製で直方体状の木片部材220が挿入される。
【0041】
また、木製ブロック100の第一側面132における面外方向両端部には、上下方向に沿ってテープ300A、300Bが貼られている。本実施形態のテープ300A、300Bは、厚み0.8mm~1.0mmであるが、これに限定されるものではない。
【0042】
[壁体の構築方法]
次に、壁体50の構築方法の一例について説明する。
【0043】
図1、
図2及び
図4に示すように、架構20内に木製ブロック100を鉛直方向に対して千鳥状に上下左右に積み重ねて、木製ブロック100同士を接着剤S(
図4参照)で接着接合して、壁体50を構築する。下側の木製ブロック100の上側傾斜部150Uに上側の木製ブロック100の下側傾斜部150Lが係合する。
【0044】
図4に示すように、接着剤Sは、木製ブロック100の上面112の溝部180Aと溝部180Bとの間に塗布する。また、木製ブロック100の第一側面132に貼られたテープ300Aとテープ300Bとの間に接着剤Sを塗布する。
【0045】
木製ブロック100の上面112の第一長溝210に木片部材220を挿入し、この木製ブロック100の上に積み重ねる上側の木製ブロック100の下面114の第二長溝212A及び第二長溝212B(
図3参照)に木片部材220を挿入することで、木製ブロック100が位置決めされ、積み重ねられる。
【0046】
そして、上面112に塗布された接着剤Sによって、上下に隣接する木製ブロック100の上面112と下面114とが接合される(
図2も参照)。
【0047】
より具体例には、
図2に示すように、下側左の木製ブロック100の上面112の上側傾斜部150Uの第一上側傾斜面152UAに、上側の木製ブロック100の下面114の下側傾斜部150Lの第二下側傾斜面152LBが接合される。同様に下側右の木製ブロック100の上面112の上側傾斜部150Uの第二上側傾斜面152UBに、上側の木製ブロック100の下面114の下側傾斜部150Lの第一下側傾斜面152LAが接合される。
【0048】
そして、
図4に示す木製ブロック100の上面112及び下面114に付着した接着剤Sは、木製ブロック100に圧をかけた際に、上面112に形成された溝部180A、180Bに溜まる。よって、接着剤Sの壁体50の面外方向(Y方向)へのはみ出し、つまり壁体50の目地からのはみ出しが防止又は抑制される。
【0049】
また、
図4に示すように、木製ブロック100の第一側面132に上下方向に沿って貼られたテープ300Aとテープ300Bと間に塗布された接着剤Sによって、左右に隣接する一方の木製ブロック100の第一側面132と他方の木製ブロック100の第二側面134(
図2参照)とが接合される。
【0050】
なお、木製ブロック100の第一側面132に貼られたテープ300A、300Bによって、接着剤Sの壁体50の面外方向(Y方向)へのはみ出し、つまり壁体50の目地からのはみ出しが防止又は抑制される。また、接着剤Sが上方にはみ出すことで、接着剤Sの充填確認を行う。
【0051】
図1及び
図4に示すように、壁体50の下端部を構成する木製ブロック100は下面が平面であり、接着剤Sで下側の梁24に接着接合する。
【0052】
図1に示すように、壁体50の上端部を構成する木製ブロック100は上面が平面である。また、壁体50の左右の端部を構成する一部の木製ブロック100は、正面視で横向きの台形状となっている。そして、前述したように、木製ブロック100を上下左右に積み上げて接着剤Sで接合した壁体50と、架構20を構成する柱22及び上側の梁24と、の隙間に、モルタル等の充填剤Jを充填し、接合する。
【0053】
<作用及び効果>
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0054】
木製ブロック100を上下左右に積み重ねて、木製ブロック100同士を接着剤Sで接合する際に、上面112の幅方向外側に形成された溝部180A、180Bに余分な接着剤Sが入り溜まる。よって、壁体50の目地からの接着剤Sのはみ出しが防止又は抑制される。また、溝部180A、180Bに余分な接着剤Sが入り溜まることで、接着剤Sの厚みが薄く均一になり、接着強度が向上する。
【0055】
また、接着剤Sが溜まる凹部を溝部180A、180Bとすることで、凹部が穴である場合と比較し、接着剤Sのはみ出しがより効果的に防止又は抑制される。
【0056】
更に、木製ブロック100の第一側面132の幅方向外側に、上下方向に沿って貼られたテープ300A、300Bによって、壁体50の目地から接着剤Sのはみ出しが防止又は抑制される。また、接着剤Sが上方にはみ出すことで、左右に隣り合う木製ブロック100間の隙間に接着剤Sが十分に充填されていることの充填確認を容易に行うことができる。
【0057】
また、木製ブロック100の上面112に形成された第一長溝210に木片部材220を挿入して、その上に積み重ねる木製ブロック100の下面に形成された第二長溝212A、212Bを木片部材220にはめ込むことで、木製ブロック100が位置決めされる。よって、木製ブロック100を積み重ねる際の木製ブロック100の位置ずれ、特に壁体50の面外方向(Y方向)に対する位置ずれが防止又は抑制される。
【0058】
本実施形態では、第一長溝210及び第二長溝212A、212Bは長溝であり、木片部材220は直方体形状の長状部材であるので、木片部材220一つで、木製ブロック100の回転を防止することができる。
【0059】
また、下側の木製ブロック100の第一長溝210と、上側の左右の木製ブロック100第二長溝212A、212Bと、を同じ位置に形成することで、一つの木片部材220によって、隣接する三つの木製ブロック100を位置決めすることができる
【0060】
本実施形態の木製ブロック100は、上面112及び下面114には、左右方向の両側から中央に向かうに従って厚さが小さくなるように傾斜する上側傾斜部150U及び下側傾斜部150Lが形成され、蝶々形となっている。よって、木製ブロック100の積み重ね向きが容易に判る。また、木製ブロック100間に形成される隙間を埋める別部材が不要である。したがって、木製ブロックを積み重ねる際の施工性が向上する。
【0061】
また、上下左右に積み重ねられた下側の木製ブロック100の上側傾斜部150Uに上側の木製ブロック100の下側傾斜部150Lが係合することで、木製ブロック100を適正な位置に配置することができるので、施工性が向上する。
【0062】
更に、木製ブロック100は、コンクリートブロックよりも軽量であるので、積み重ね作業の手間が低減される。
【0063】
また、上下左右に積み重ねられた下側の木製ブロック100の上側傾斜部150Uに上側の木製ブロック100の下側傾斜部150Lが係合することで、横ずれが防止されるので、効率的に地震力が伝達される。
【0064】
また、壁体50の上側角部に入力された水平力は、木製ブロック100の上側傾斜部150U及び下側傾斜部150Lに作用する圧縮力によって下側角部に伝達され、壁体50の対角方向に圧縮ストラット(圧縮束)が形成される。そして、この圧縮ストラットによって、架構20の変形が効果的に抑制される。
【0065】
なお、木製ブロック100の上側傾斜部150U及び下側傾斜部150Lによって左右方向に力が伝達する際に、テープ300A、300Bを介して伝達されるので、接着剤Sで伝達するよりも効果的に伝達することができる。
【0066】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0067】
例えば、上記実施形態では、接着剤Sが溜まる溝部180A、180Bは、木製ブロック100の上面112に形成されていたが、これに限定されない。溝部180A、180Bは、木製ブロック100の下面114に形成されていてもよいし、上面112と下面114の両面に形成されていてもよい。
【0068】
また、例えば、上記実施形態では、接着剤Sが溜まる溝部180A、180Bは、木製ブロック100の上面112の幅方向外側の両辺部113A、113Bに沿って二本形成されていたが、これに限定されない。溝部180A及び溝部180Bのいずれか
一本のみ形成されていてもよいし、三本以上溝部が形成されていてもよい。
【0069】
また、例えば、上記実施形態では、接着剤Sが溜まる凹部の一例は、溝部180A、180Bであったが、これに限定されない。接着剤Sが溜まる凹部は、例えば、辺部113A、113Bに沿って間隔をあけて並んで形成された複数の穴であってもよい。
【0070】
また、上記実施形態では木製ブロック100の上面112に接着剤Sが溜まる溝部180A、180Bが形成されていたが、これに限定されない。木製ブロック100の第一側面132又は第二側面134に、接着剤Sが溜まる凹部が形成されていてもよい。
【0071】
また、例えば、上記実施形態では、第一長溝210、第二長溝212A、212B及びと木片部材220で位置決め機構200を構成していたが、これに限定されない。木製ブロック100の上面112及び下面114に位置決め用の凹部が形成され、この凹部に位置部材が挿入される構成であればよい。
【0072】
また、例えば、位置決め用の凹部の位置は、上面112及び下面114のどこに形成してもよい。また、位置決め用の凹部は、どのような形状であってもよい。例えば、位置決め用の凹部は、一又は複数の穴であってもよい。また、位置決め部材は、どのような形状であってもよい、例えば軸方向を上下方向に沿って設置される棒状部材であってもよい。また、位置決め部材は、木質以外の材質、例えば金属製であってもよい。
【0073】
要は、位置決め機構は、木製ブロックの対向する一方の面及び他方の面に、位置決め部材が挿入される位置決め用の凹部が形成されていればよい。
【0074】
また、位置決め機構は、隣接する一方の木製ブロックの隣接面に位置決め用の凹部が形成され、隣接する他方の木製ブロックの隣接面に位置決め用の凹部に挿入される凸部が形成された構成であってもよい。
【0075】
また、接着剤Sが溜まる凹部と位置決め用の凹部とが共用されていてもよい。例えば、上記実施形態の木製ブロック100における上面112の一方の溝部180Aの中央部分に、位置決め用の第一長溝210が重なって形成されていてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、木製ブロック100の第一側面132における幅方向(Y方向)の両端部に、上下方向に沿ってテープ300A、300Bを貼ったが、これに限定されない。木製ブロック100の第二側面134にテープ300A、300Bを貼ってもよい。木製ブロック100の上面112又は下面114にテープ300A、300Bを貼ってもよい。また、テープ300A及びテープ300Bの一方のみを貼ってもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、木製ブロック100は、上面112及び下面114に正面視において、左右方向の両端部から中央部に向かうに従って上下方向厚さが狭くなる上側傾斜部150U及び下側傾斜部150Lが形成された蝶々形であったが、これに限定されない。
【0078】
例えば、蝶々形の木製ブロックの角部及び入隅部にフラット面を設けることで、積みやすさ及び積み精度を向上させてもよい。また、上記実施形態の蝶々形の木製ブロックを、左右方向が狭くなるように、90°回転させて設置してもよい。
【0079】
また、例えば、木製ブロックは、蝶々形以外の形状、例えば、正面視で、V字形状、逆V字形状、N字形状、六角形状、菱形形状、八角形状、平行四辺形状、台形状、正方形状及び長方形状等であってもよい。また、木製ブロックは、左右非対称又は上下非対称であってもよい。
【0080】
また、木製ブロックが、上記実施形態の上側傾斜部150U及び下側傾斜部150L等の傾斜部を有する形状である場合、傾斜部は湾曲面で形成されていてもよい。
【0081】
また、例えば、通行、窓、配管及び配線等のために、壁体50の一部に開口部を設けてもよい。
【0082】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【符号の説明】
【0083】
10 壁構造
20 架構
50 壁体
100 木製ブロック
112 上面(接着面の一例、隣接面の一例)
114 下面(接着面の一例、隣接面の一例)
132 第一側面(接着面の一例)
134 第二側面(接着面の一例)
150L 下側傾斜部(傾斜部の一例)
150U 上側傾斜部(傾斜部の一例)
180A 溝部(接着剤が溜る凹部の一例)
180B 溝部(接着剤が溜る凹部の一例)
200 位置決め機構
210 第一長溝(位置決め用の凹部の一例)
212A 第二長溝(位置決め用の凹部の一例)
212B 第二長溝(位置決め用の凹部の一例)
220 木片部材(位置決め部材の一例)
300A テープ
300B テープ
S 接着剤