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  • 特許-コンベヤ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】コンベヤ装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 21/22 20060101AFI20230905BHJP
   B65G 17/06 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
B65G21/22 B
B65G17/06 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018119892
(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2020001841
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越智 裕文
(72)【発明者】
【氏名】徳田 誠
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-137490(JP,A)
【文献】実開昭63-032819(JP,U)
【文献】実開平04-070809(JP,U)
【文献】国際公開第2017/216825(WO,A1)
【文献】特開2012-101885(JP,A)
【文献】特開昭61-086912(JP,A)
【文献】特開平11-079351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 21/00 - 21/22
B65G 17/00 - 17/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームに軸回転可能に取り付けられた駆動スプロケットおよび従動スプロケットと、
前記駆動スプロケットと前記従動スプロケットの間に掛け渡された無端チェーンと、
前記フレームに固定され、前記無端チェーンを支持するガイドレールと、
前記駆動スプロケットと前記従動スプロケットの間の位置において、前記フレームに軸回転可能に取り付けられた中間スプロケットと、を有するコンベヤ装置であって、
前記中間スプロケットは、前記無端チェーンを構成する相互に対向したリンクの間の空間に歯を進入させて、前記無端チェーンに係合して回転し、
前記ガイドレールは、前記無端チェーンを構成する相互に対向した前記リンクに挟まれた領域に収まっており、
前記中間スプロケットが取り付けられている位置においては、局所的に前記ガイドレールが設けられておらず、
前記フレームは、前記駆動スプロケット側と前記従動スプロケット側で、メインフレームと、従動側フレームとに分割されており、
前記従動側フレームは、前記従動スプロケット、および前記従動スプロケットに固定された従動軸を収容しており、前記従動スプロケットおよび前記従動軸を含め、収容している各部材と一体に、前記メインフレームに対して着脱可能であり、
前記ガイドレールは、前記メインフレームおよび前記従動側フレームに固定されており、
前記コンベヤ装置は、水を貯留した水槽中で金属部材を保持して前記金属部材に対してプラズマ切断を行う水プラズマ切断装置の前記水槽の底部に、前記無端チェーンが運動する経路の少なくとも一部を有し、プラズマ切断によって前記金属部材の本体から切り離された切断片を前記水槽の外に搬出し
前記従動側フレームは、前記水槽中に設けられ、前記水槽中においては、前記水槽中での前記金属部材のプラズマ切断によって生じた金属片または金属粉が水中に分散することを特徴とするコンベヤ装置。
【請求項2】
前記中間スプロケットは、前記無端チェーンが前記駆動スプロケットと前記従動スプロケットの間を往復する往路および復路のいずれか一方において、前記無端チェーンに係合していることを特徴とする請求項1に記載のコンベヤ装置。
【請求項3】
前記従動スプロケットから前記駆動スプロケットに向かって、前記無端チェーンが斜め上方へと運動する経路を有し、その斜め上方へと運動する経路において対象搬送物である前記切断片が搬送され、
前記中間スプロケットは、前記斜め上方へと運動する経路の中途部に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のコンベヤ装置。
【請求項4】
前記従動スプロケットに固定された従動軸を支持するベアリングは、オイルシールを施したドライベアリングよりなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のコンベヤ装置。
【請求項5】
前記駆動スプロケット側と前記従動スプロケット側の両方に、前記無端チェーンの緊張を調整可能な緊張調整機構が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のコンベヤ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤ装置に関し、さらに詳しくは、チェーンの運動によって対象物を搬送するチェーンコンベヤ型のコンベヤ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の加工装置に、コンベヤ装置が備えられる。例えば、特許文献1に、水槽の内部に被切断材を配置して水プラズマ切断を行うための切断定盤において、水槽の内部に設けた被切断材を載置する載置部の下方に、傾斜面を構成し、該傾斜面の最下部に上方が開放されたケーシングを載置台に沿って配置すると共に、ケーシングの内部に、無限搬送部材を設ける構成が開示されている。水プラズマ切断に伴って発生し水槽に落下したノロやスクラップが、無限搬送部材によって常時搬出される。具体的な無限搬送装置としては、1本のチェーンに、略一定のピッチで複数の円板状の搬送板を取り付けたものを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-74195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チェーンの運動によって対象物を搬送するチェーンコンベヤにおいては、チェーンが、蛇行することなく所定の経路を運動するように、ガイドレールが設けられる。ガイドレールは、チェーンを支持し、所定の経路に沿ったチェーンの運動を誘導する。しかし、チェーンの摩耗や伸び、またガイドレールの摩耗が進行すると、チェーンがガイドレールから外れ、脱線が起こる場合がある。すると、チェーンコンベヤにおいて、正常な搬送が行えなくなる。
【0005】
特許文献1に開示される形態においては、チェーンコンベヤの一部が水中に配置されており、しかも水槽から脱出する部分の経路が、重力方向に対して斜めに設定されている。このような場合には、チェーンに印加される負荷が大きくなり、ガイドレールからの脱線が起こりやすい。なかでも、特許文献1のように、水プラズマ切断を行う水槽にチェーンコンベヤを配置している場合には、水プラズマ切断に伴って生じる金属粉や金属片が水に混ざり込んでおり、そのような水の中でチェーンコンベヤを運転することで、チェーンの摩耗による脱線が、特に起こりやすくなる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、チェーンの運動によって対象物を搬送するコンベヤ装置において、ガイドレールからチェーンが外れにくくなったコンベヤ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかるコンベヤ装置は、フレームと、前記フレームに軸回転可能に取り付けられた駆動スプロケットおよび従動スプロケットと、前記駆動スプロケットと前記従動スプロケットの間に掛け渡された無端チェーンと、前記フレームに固定され、前記無端チェーンを支持するガイドレールと、前記駆動スプロケットと前記従動スプロケットの間の位置において、前記フレームに軸回転可能に取り付けられた中間スプロケットと、を有し、前記中間スプロケットは、前記無端チェーンを構成する相互に対向したリンクの間の空間に歯を進入させて、前記無端チェーンに係合して軸回転するものである。
【0008】
ここで、前記中間スプロケットは、前記無端チェーンが前記駆動スプロケットと前記従動スプロケットの間を往復する往路および復路のいずれか一方において、前記無端チェーンに係合しているとよい。
【0009】
前記コンベヤ装置は、前記従動スプロケットから前記駆動スプロケットに向かって、前記無端チェーンが斜め上方へと運動する経路を有するとよい。
【0010】
前記フレームは、前記駆動スプロケット側と前記従動スプロケット側で、メインフレームと、従動側フレームとに分割されており、前記従動側フレームは、前記従動スプロケット、および前記従動スプロケットに固定された従動軸を収容しており、前記従動スプロケットおよび前記従動軸を含め、収容している各部材と一体に、前記メインフレームに対して着脱可能であるとよい。
【0011】
前記無端チェーンが運動する経路の少なくとも一部が、水を貯留可能な水槽中に配置されるとよい。この場合に、前記従動スプロケットは、前記水槽の中に設けられ、前記従動スプロケットに固定された従動軸を支持するベアリングは、オイルシールを施したドライベアリングよりなるとよい。
【0012】
前記駆動スプロケット側と前記従動スプロケット側の両方に、前記無端チェーンの緊張を調整可能な緊張調整機構が設けられているとよい。
【発明の効果】
【0013】
上記発明にかかるコンベヤ装置においては、ガイドレールが無端チェーンを支持し、無端チェーンが駆動スプロケットと従動スプロケットの間を蛇行せずに運動するように、無端チェーンを誘導する。そして、中間スプロケットが設けられ、無端チェーンのリンクの間の空間に歯を進入させて、無端チェーンに係合しているため、負荷の印加等により、無端チェーンの摩耗や伸び、またガイドレールの摩耗が生じた場合にも、無端チェーンがガイドレールから外れにくくなっている。そのため、大きな負荷が印加される状況でも、コンベヤ装置による対象物の搬送を、安定に進めることができる。
【0014】
ここで、中間スプロケットが、無端チェーンが駆動スプロケットと従動スプロケットの間を往復する往路および復路のいずれか一方において、無端チェーンに係合している場合には、同一の中間スプロケットが、往路および復路の両方で無端チェーンに係合する場合とは異なり、無端チェーンに摩耗や伸びが生じた場合でも、中間スプロケットが無端チェーンに安定に係合した状態を維持しやすい。
【0015】
コンベヤ装置が、従動スプロケットから駆動スプロケットに向かって、無端チェーンが斜め上方へと運動する経路を有する場合には、その斜め上方へと運動する経路において、無端チェーンやガイドレールに大きな負荷がかかる。そのため、負荷の印加によって、無端チェーンの摩耗や伸び、またガイドレールの摩耗が起こりやすいが、コンベヤ装置に中間スプロケットを設けておくことで、それら摩耗や伸びが、ガイドレールからの無端チェーンの脱線につながるのを、抑制することができる。
【0016】
フレームが、駆動スプロケット側と従動スプロケット側で、メインフレームと、従動側フレームとに分割されており、従動側フレームが、従動スプロケット、および従動スプロケットに固定された従動軸を収容しており、従動スプロケットおよび従動軸を含め、収容している各部材と一体に、メインフレームに対して着脱可能である場合には、従動側フレームを収容部材と一体にメインフレームから取り外すことで、従動スプロケットや従動軸等、従動側の部材のメンテナンスを、簡便に行うことができる。特に、それら従動側の部材が水槽の中に設けられている場合には、水の影響により、頻繁なメンテナンスが必要になるが、空間の限られた水槽の中から、それらの部材を従動側フレームごと取り外して水槽の外に出せることで、メンテナンスにおいて高い利便性が得られる。
【0017】
無端チェーンが運動する経路の少なくとも一部が、水を貯留可能な水槽中に配置される場合には、無端チェーンが水中を運動することにより、大気中のみを運動する場合と比較して、無端チェーンやガイドレールに大きな負荷が印加されやすい。なかでも、水槽が、水プラズマ切断に用いられるものである場合には、水中に金属片や金属粉が分散されるため、その負荷が特に大きくなる。しかし、コンベヤ装置に中間スプロケットが設けられることで、そのように大きな負荷が印加される状況でも、無端チェーンがガイドレールから脱線するのを、抑制することができる。
【0018】
この場合に、従動スプロケットが、水槽の中に設けられ、従動スプロケットに固定された従動軸を支持するベアリングが、オイルシールを施したドライベアリングよりなれば、水の影響によるベアリングや従動軸のメンテナンスの頻度を、抑えることができる。
【0019】
駆動スプロケット側と従動スプロケット側の両方に、無端チェーンの緊張を調整可能な緊張調整機構が設けられている場合には、駆動スプロケット側にのみ緊張調整機構が設けられている場合よりも、無端チェーンに伸びが生じた場合に、無端チェーンの緊張の調整を行いやすい。よって、中間スプロケットを係合させることの効果と合わせて、無端チェーンの伸びがガイドレールからの脱線につながるのを、効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態にかかるコンベヤ装置を、水プラズマ切断装置とともに示す斜視図である。
図2】上記コンベヤ装置の主要部の構成を示す断面図である。
図3】無端チェーンとガイドレールおよび中間スプロケットとの係合構造を説明する図であり、(a)は無端チェーンの上方から見た平面図、(b)は(a)中のA-A断面図、(c)は(a)中のB-B断面図である。
図4】無端チェーンと中間スプロケットとの係合構造を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態にかかるコンベヤ装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
[コンベヤ装置の構成]
最初に、本発明の一実施形態にかかるコンベヤ装置について、全体構成の概略を説明する。図1に、本発明の一実施形態にかかるコンベヤ装置1を、コンベヤ装置1と組み合わせて用いられる水プラズマ切断装置9とともに示す。また、図2に、コンベヤ装置1の主要部の断面図を示す。
【0023】
まず、水プラズマ切断装置9について簡単に説明する。水プラズマ切断装置9は、水槽91と、プラズマ切断機92とを有している。水槽91に水Wを貯留した状態で、水槽91の中に設置された保持治具(図略)によって、切断対象の金属部材を、水槽91の中で保持する。そして、プラズマ切断機92のプラズマトーチ93を、金属部材の上方で移動させながら、プラズマ切断を行う。切断によって金属部材の本体から切り離されて生じた廃材である切断片Pは、水Wの中を沈降する。水槽91の底部に達した切断片Pが、コンベヤ装置1によって、水槽91の外に搬出される。水槽91は、直方体形の本体部91aと、三角部91bとを、一体に連続して有している。三角部91bにおいては、本体部91aから離れるに従って徐々に水深が浅くなる傾斜が、底面に設けられている。
【0024】
コンベヤ装置1は、チェーンコンベヤの一種であるエプロンコンベヤとして構成されている。搬送対象物である切断片Pを搬送する搬送経路は、Z型に設定されている。つまり、下方平坦部1aから、傾斜部1bを経て、上方平坦部1cに至っている。下方平坦部1aおよび上方平坦部1cの搬送面は、傾斜をほぼ有しておらず、上方平坦部1cが、下方平坦部1bよりも重力方向上方に形成されている。傾斜部1bは、下方平坦部1aと上方平坦部1cの間をつないで、搬送面が、重力方向に対して斜め上方に傾斜して上昇する搬送経路として、構成されている。下方平坦部1aの全域と、傾斜部1bの下端側の一部は、水槽91の中に設けられており、水槽91に水Wを貯留すると、水中に配置されることになる。下方平坦部1aは、水槽91の本体部91aの底面に沿って設置されている。傾斜部1bは、三角部91bの底面に沿って設けられており、上端側の領域は、上方平坦部1cの全域とともに、水槽91の外に出て配置されている。
【0025】
コンベヤ装置1は、フレーム10と、駆動ユニット20と、従動ユニット30と、無端チェーン40と、パン50と、ガイドレール60と、中間スプロケット70と、を有している。
【0026】
フレーム10は、コンベヤ装置1を構成する他の構成部材を収容し、支持する基体であり、搬送経路に沿って、底面と、両側方の面を構成している。フレーム10は、搬送経路に沿って、上流側(駆動ユニット20側)と下流側(従動ユニット30側)で、メインフレーム11と従動側フレーム12とに、分割されている。メインフレーム11は、フレーム10の大部分、具体的には、下側平坦部1aの先端側の一部を除く領域を構成しており、床面に据え付けられる支持脚15に対して、固定されている。従動側フレーム12は、フレーム10のうち、下側平坦部1aの先端側の一部の領域を構成するものであり、メインフレーム11の先端側に連続させて取り付けられているが、メインフレームに対して、着脱可能となっている。メインフレーム11と従動側フレーム12の間の分割箇所を、図2中に破線で表示している。
【0027】
フレーム10の幅方向両側に、駆動ユニット20と、従動ユニット30と、無端チェーン40が、1組ずつ設けられている。そして、両側の無端チェーン40の間に渡されて、パン50が設置されている。
【0028】
駆動ユニット20は、コンベヤ装置1の上方平坦部1cに配置されている。駆動ユニット20には、駆動軸21と、駆動スプロケット22と、モータ23と、減速機24と、緊張調整機構25が含まれている。駆動軸21は、駆動スプロケット22の中心に固定されており、ベアリング26を介して、メインフレーム11に、軸回転可能に取り付けられている。モータ23の回転が、減速機24を介して駆動スプロケット22に伝達される。これにより、駆動スプロケット22および駆動軸21が、軸回転する。緊張調整機構(テークアップ機構)25は、駆動スプロケット22に掛けられた無端チェーン40の緊張を調整するものである。
【0029】
従動ユニット30は、下方平坦部1aに配置されている。従動ユニット30には、従動軸31と、従動スプロケット32と、緊張調整機構33が含まれている。従動軸31は、従動スプロケット32の中心に固定されており、ベアリング34を介して、従動側フレーム12に、軸回転可能に取り付けられている。従動ユニット30の各構成部材は、従動側フレーム12に収容されており、従動側フレーム12がメインフレーム11に対して着脱される時、それら各構成部材も、従動側フレーム12と一体に着脱される。
【0030】
駆動スプロケット22と従動スプロケット32の間には、無端チェーン40(以下単に、チェーンと称する場合がある)が、掛け渡されている。駆動スプロケット22の回転を駆動すると、その回転がチェーン40に伝達され、チェーン40が、その長手方向に沿って、駆動スプロケット22と従動スプロケット32の間を、環状に運動する。この際、チェーン40の運動が、従動スプロケット32にも伝達され、従動スプロケット32も軸回転する。駆動スプロケット22の回転方向は、重力方向上側のチェーン40が、駆動スプロケット22から従動スプロケット32に向かって、傾斜部1bを上昇する方向に運動するように、設定されている。
【0031】
メインフレーム11には、チェーン40の運動を誘導するガイドレール60と、チェーン40がガイドレール60から外れるのを防止する複数の中間スプロケット70が設けられている。ガイドレール60および中間スプロケット70の構成については、後に詳しく説明する。
【0032】
メインフレーム11の幅方向両側に設けられた1組のチェーン40の間には、短冊状の金属板よりなるパン50が、渡されている。パン50は、チェーン40に対して固定されており、チェーン40とともに運動する。パン50の上面が、切断片Pを搬送する搬送面となる。
【0033】
水プラズマ切断装置9において、金属部材の切断が行われ、切断片Pが発生すると、発生した切断片Pは、水槽91に貯留された水Wの中を沈降する。そして、水槽91の底面に設けられたコンベヤ装置1の下方平坦部1aの搬送面に達し、その搬送面に載置される。この状態で、駆動スプロケット22の軸回転を駆動すると、載置された切断片Pが、搬送経路に沿って、下方平坦部1a、傾斜部1b、上方平坦部1cを順に通って、水槽91の外へと搬送される。上方平坦部1cの端部の下方には、図示しない切断片集積容器が開口しており、コンベヤ装置1の上端部に達した切断片Pは、切断片集積容器に落下して、集積される。このように、切断によって生じた切断片Pを、コンベヤ装置1によって水槽91の外へと搬出することで、多数の金属部材に対して切断を行う場合にも、水槽91の底部に切断片Pを堆積させることなく、切断を継続することができる。コンベヤ装置1を、パン50を備えたエプロンコンベヤとして構成していることで、金属製のパン50よりなる搬送面に空隙が生じにくく、搬送中に、切断片Pが搬送面の空隙に引掛かって、円滑な搬送を妨げる事態が起こりにくい。
【0034】
[ガイドレールおよび中間スプロケットによる無端チェーンの誘導]
上記のように、本実施形態にかかるコンベヤ装置1には、チェーン40を誘導するために、ガイドレール60が設けられており、さらに、ガイドレール60からチェーン40が外れるのを防止するために、中間スプロケット70が設けられている。以下、ガイドレール60と中間スプロケット70の構成および機能について説明する。ここでは、主に、図3,4を参照しながら説明を行う。図3(a)はチェーン40の上方から見た状態、つまりコンベヤ装置1の載置面の上方側から、チェーン40の近傍を見た状態を示しており、図3(b),(c)は(a)中に示したA-A断面およびB-B断面を示している。図4は、斜視図であり、ローラ44を省略している。
【0035】
図3,4に示すように、チェーン40は、相互に対向した1対の内側リンク41,41と、それら内側リンク41,41の外側に配置した1対の外側リンク42,42とが、長手方向両端部で、ピン43によって相互に接続された構造を有している。さらに、1対の内側リンク41,41で挟まれた領域に、ローラ44が設けられている。ローラ44は、ピン43の外周に、ピン43に対して回転自在に支持されている。
【0036】
ガイドレール60は、コンベヤ装置1において、チェーン40が蛇行や弛緩を起こさずに通過すべき位置に沿って、敷設されている。ガイドレール60は、断面四角形の長尺状の部材として構成されており、フレーム10(メインフレーム11および従動側フレーム12)の側面の内側に固定されている。ガイドレール60の断面寸法および位置は、図3(a),(b)に示すように、チェーン40が所定の通過すべき位置に配置された状態で、ガイドレール60が、1対の内側リンク41,41に挟まれた領域に収まり、かつ上面61がローラ44に接触するように、設定されている。このように、ガイドレール60は、チェーン40を、所定の通過すべき位置において、内側リンク41,41の内側から、支持するものとなる。
【0037】
運動方向Dに沿ってチェーン40の運動が駆動された際に、ローラ44が、ガイドレール60の上面61の上を転動することで、チェーン40がガイドレール60に沿って、滑らかに運動する。この際、内側リンク41,41とガイドレール60の側面62,62との当接により、チェーン40が、1対の内側リンク41,41の間に、ガイドレール60を挟みこんだ状態が維持される。これにより、チェーン40の横方向(図3(a)の上下方向;図3(b)の左右方向)への運動が規制される。その結果、チェーン40が、蛇行等を起こさずに、ガイドレール60に沿って、所定の経路を運動するようになる。
【0038】
さらに、本実施形態にかかるコンベヤ装置1には、従動スプロケット32と駆動スプロケット22の間をチェーン40が運動する経路の途中に、複数の中間スプロケット70が設けられている。中間スプロケット70は、チェーン40が、従動スプロケット32から駆動スプロケット22へ向かって移動する往路(重力方向上側の経路)と、駆動スプロケット22から従動スプロケット32へ向かって移動する復路(重力方向下側の経路)の両方に、複数ずつ設けられている。図2に示した形態では、往路に3個、復路に2個の中間スプロケット70が設けられている。
【0039】
中間スプロケット70は、メインフレーム11の側面の内側に、チェーン40の運動方向Dに沿った回転方向Rに軸回転可能に、取り付けられている。図3(a)に示すように、中間スプロケット70が取り付けられている位置においては、局所的にガイドレール60が設けられておらず、ガイドレール60と中間スプロケット70は干渉しない。中間スプロケット70の歯数およびピッチ円直径は、チェーン40のピッチに対応して設定されている。また、中間スプロケット70の回転軸72は、チェーン40が通過すべき経路の近傍に取り付けられており、図3(a),(c)および図4に示すように、中間スプロケット70の歯71のうちの1枚が、チェーン40を構成する1対の内側リンク41,41の間、および1対の外側リンク42,42の間の空間Sに、進入可能となっている。
【0040】
中間スプロケット70が、このような構成と配置を有していることにより、駆動スプロケット22の回転により、チェーン40の運動を駆動すると、中間スプロケット70が、チェーン40に係合した状態で、チェーン40の運動方向Dに沿った回転方向Rに、軸回転することになる。つまり、中間スプロケット70の歯71の1つが、チェーン40を構成するあるリンク対(内側リンク対41,41または外側リンク対42,42)の間の空間Sに進入した状態で、チェーン40が1ピッチ分運動すると、中間スプロケット70の次の歯71が、チェーン40の次のリンク対の間の空間Sに進入する、という過程を繰り返して、中間スプロケット70が、回転方向Rに回転し続ける。
【0041】
このように、チェーン40が運動している間、中間スプロケット70がチェーン40に係合した状態が維持されることで、チェーン40がガイドレール60から外れること(脱線)が、抑制される。上記のように、チェーン40が、1対の内側リンク41,41の間に、ガイドレール60を挟みこんだ状態で、運動方向Dに運動するため、チェーン40がガイドレール60に対して横方向に位置ずれを起こすのが、規制されている。しかし、コンベヤ装置1の長時間の運転や、重量物の搬送等によって、チェーン40に大きな負荷が印加されると、ピン43を介したリンク41,42の接合部等において、摩耗や伸びが生じてしまう。また、ガイドレール60にも、チェーン40からの荷重の印加によって、摩耗が生じる。このように、チェーン40の摩耗や伸び、また、ガイドレール60の摩耗が進行した際に、もし中間スプロケット70が設けられていないとすれば、ガイドレール60によって、チェーン40の横方向への位置ずれを、阻止しきれなくなる場合がある。すると、ガイドレール60を乗り越えてチェーン40が横方向に移動し、チェーン40の脱線が起こる。脱線が生じることで、チェーン40が、蛇行等を起こして、所定の経路に沿って運動できなくなると、搬送対象物の安定な搬送に支障が生じる。
【0042】
しかし、本実施形態にかかるコンベヤ装置1においては、中間スプロケット70が設けられ、チェーン40に係合しているため、チェーン40を横方向に移動させようとする力が働いたとしても、チェーン40に対する中間スプロケット70の係合により、その運動が阻止され、チェーン40が、ガイドレール60を乗り越えて、横方向に移動できなくなる。このように、チェーン40と中間スプロケット70の係合により、チェーン40がガイドレール60から外れて脱線するのを、防止することができる。よって、負荷の印加によって、チェーン40の摩耗や伸び、またガイドレール60の摩耗が進行したとしても、それらの現象が、チェーン40の脱線につながるのを抑制して、長期にわたって、チェーン40が所定の経路に沿って運動し、搬送対象物を安定して搬送できる状態を、維持することができる。
【0043】
本実施形態においては、コンベヤ装置1が傾斜部1bを備え、従動スプロケット32から駆動スプロケット22に向かって、チェーン40が斜め上方へと運動する。このように、斜め上方に向かって、搬送対象物を搬送する経路においては、チェーン40に大きな負荷が印加されやすい。なかでも、傾斜部1bが、水槽91の中から外へと切断片Pを排出する経路に設けられていることで、傾斜部1bの距離が長くなりやすい。切断片Pがパン50の間に引掛かることがあると、とりわけ大きな負荷が生じることになる。また、チェーン40が運動する経路の一部が、水槽91の中に配置されており、水中を運動するため、水の抵抗や、水との接触による構成部材の変性等の影響により、大気中を運動する場合よりも、大きな負荷が印加される。特に、本実施形態においては、水槽91が水プラズマ切断に用いられるものであるため、切断時に生じた金属片や金属粉が、水Wの中に多量に分散され、チェーン40の構成部材の摩耗が進行しやすい状態となっている。このように、本実施形態にかかるコンベヤ装置1は、設置環境に起因して、チェーン40の摩耗や伸び、ガイドレール60の摩耗を特に起こしやすい条件にあると言えるが、上記のように、中間スプロケット70を備えていることにより、それらの現象が、チェーン40の脱線につながるのを、効果的に抑制することができる。
【0044】
なお、チェーン40への負荷の印加に伴い、中間スプロケット70にもある程度の負荷が印加されるが、中間スプロケット70は、ガイドレール60とは異なり、軸回転運動によって、その負荷を分散させることができる。よって、中間スプロケット70に摩耗が生じ、チェーン40との係合が維持できなくなることは、ガイドレール60の摩耗による脱線との比較において、ほぼ起こらないと言える。中間スプロケット70の歯71は、チェーン40との係合を強固に維持するために、ピン43の中心の位置よりも深く、リンク対の間の空間Sに進入させた状態で、係合させておくことが好ましい。
【0045】
上記実施形態においては、往路と復路のそれぞれで、独立した中間スプロケット70をチェーン40に係合させている。往路と復路の両方で、共通の中間スプロケット70を係合させることも可能ではあるが、その場合には、チェーン40の伸びが進行し、往路と復路で、各ピッチを構成するリンク41,42の位置に不整合が生じると、往路と復路の両方のリンク対の間の空間Sに、共通の中間スプロケット70の歯71を進入させることが難しくなる。よって、上記のように、往路と復路で独立の中間スプロケット70を係合させておく方が、チェーン40の伸びや摩耗が進行しても、長期にわたって、中間スプロケット70が安定にチェーン40に係合した状態を維持し、高い脱線防止効果を得ることができる。
【0046】
[従動ユニットのメンテナンス性]
従来一般のチェーンコンベヤにおいては、駆動スプロケット側には、チェーンの緊張を調整するための緊張調整機構が設けられ、チェーンの伸びが進行した際に、チェーンの緊張を回復させるために、使用されることが多い。従動スプロケット側には、緊張調整機構が設けられない。
【0047】
しかし、本実施形態にかかるコンベヤ装置1においては、駆動ユニット20だけでなく、従動ユニット30にも、緊張調整機構33が設けられている。上記のように、本実施形態にかかるコンベヤ装置1は、長い傾斜部1bを有すること、また金属粉や金属片が分散される水Wの中に搬送経路の一部が設けられていることにより、チェーン40に大きな負荷が印加されやすく、その結果、チェーン40の伸びが起こりやすい。このような場合に、駆動ユニット20に設けられた緊張調整機構25だけでは、長いチェーン40の全域に対して、十分な緊張を、均一性高く与えることが難しい場合がある。
【0048】
そこで、本実施形態にかかるコンベヤ装置1においては、緊張調整機構33を従動ユニット30にも設け、駆動スプロケット22側および従動スプロケット32側の両方のチェーン40の端部において、緊張の調整を可能としておくことで、チェーン40に伸びが発生した際に、チェーン40の全域に対して、均一性高く、十分な緊張を与えやすくなっている。中間スプロケット70をチェーン40に係合させておくことで、ある程度チェーン40の伸びが進行した状態でも、コンベヤ装置1の運転を継続することができる。しかし、チェーン40の伸びが進行しすぎると、中間スプロケット70への過剰な負荷の印加につながる可能性や、中間スプロケット70でチェーン40の脱線を防ぎきれなくなる可能性もあるので、適時に、駆動ユニット20および従動ユニット30の緊張調整機構25,33を用いて、チェーン40の緊張を回復させることで、コンベヤ装置1の安定な運転を、長期にわたって継続することができる。
【0049】
駆動ユニット20および従動ユニット30の緊張調整機構25,33の具体的な構成は特に限定されず、従来のチェーンコンベヤにおいて、駆動側に設けられてきた緊張調整機構と同様のものを、適宜採用すればよい。例えば、従動ユニット30側の緊張調整機構33として、従動側フレーム12に対して、搬送経路に沿って進退可能に取り付けた支持板に、従動軸31を支持するベアリング34を取り付けておけばよい。チェーン40に伸びが発生した際には、その支持板を、搬送経路に沿って、駆動ユニット20から遠ざける方向に移動させることで、チェーン40の緊張を回復させることができる。
【0050】
さらに、本実施形態にかかるコンベヤ装置1においては、従動ユニット30が水槽91の底部に配置され、水槽91に水Wが貯留されている間は、常に水中に置かれた状態となっている。よって、空気中に置かれている場合に比べて、従動ユニット30の構成部材に対して、メンテナンスが要求される頻度が、高くなってしまう。そこで、フレーム10をメインフレーム11と従動側フレーム12に分割し、従動側フレーム12を、従動ユニット30の各構成部材と一体に、メインフレーム11から取り外せるように構成しておくことで、メンテナンスの簡便性が高くなる。もし、水槽91の底部という、作業が困難な限られた空間において、メンテナンスのための構成部材の分解や交換を行うとすれば、その作業は、労力と時間を要するものとなる。しかし、従動スプロケット32からチェーン40を外したうえで、従動ユニット30全体を、従動側フレーム12ごと、メインフレーム11から分離して水槽91の外に取り出し、必要なメンテナンスを完了した後で、再度、従動ユニット30を収容した従動側フレーム12を、メインフレーム11に取り付けることで、メンテナンスに要する労力と時間を、大幅に削減することができる。
【0051】
このように、従動スプロケット32および従動軸31を含め、従動ユニット30の各構成部材を従動側フレーム12と一体に着脱可能とすることで、各部材のメンテナンスを簡便に行うことができるが、その場合でも、各部材が、水中での長期間の運転に耐える高い耐久性を備え、メンテナンスの頻度を下げられる方が望ましい。その観点から、従動軸31を支持するベアリング34としては、オイルシールを施したドライベアリングを用いることが好ましい。ドライベアリングを用いることで、大きな負荷が印加される状況で長期間運転しても、焼き付き等の不具合を起こしにくくなり、高い耐久性を得ることができる。そして、オイルシールを施すことで、耐水性を高め、水中でも、そのような高い耐久性を長期にわったって維持しやすくなる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 コンベヤ装置
1a 下方平坦部
1b 傾斜部
1c 上方平坦部
10 フレーム
11 メインフレーム
12 従動側フレーム
20 駆動ユニット
21 駆動軸
22 駆動スプロケット
25 緊張調整機構
30 従動ユニット
31 従動軸
32 従動スプロケット
33 緊張調整機構
34 ベアリング
40 チェーン
41 内側リンク
42 外側リンク
43 ピン
44 ローラ
50 パン
60 ガイドレール
70 中間スプロケット
71 歯
72 回転軸
9 水プラズマ切断装置
91 水槽
92 プラズマ切断機
D チェーンの運動方向
P 切断片
R 中間スプロケットの回転方向
S リンク対の間の空間
W 水
図1
図2
図3
図4