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  • 特許-ゴルフボール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
   A63B 37/00 20060101AFI20230905BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20230905BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20230905BHJP
   C08L 45/00 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
A63B37/00 512
A63B37/00 418
A63B37/00 422
A63B37/00 328
A63B37/00 332
A63B37/00 534
A63B37/00 644
C08L9/00
C08K5/09
C08L45/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018242102
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020103338
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(72)【発明者】
【氏名】瀧原 広規
(72)【発明者】
【氏名】永倉 光
(72)【発明者】
【氏名】林 界
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-219196(JP,A)
【文献】特開2016-019620(JP,A)
【文献】特開2001-212261(JP,A)
【文献】特開2016-190954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、前記コアを被覆する少なくとも一層の中間層と、前記中間層を被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記コアは、(a)ポリブタジエンを含有する基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3~8のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)架橋開始剤、および(d)テルペン系樹脂を含有するコア用ゴム組成物から形成されており、前記中間層の材料硬度(Hm)が、前記カバーの材料硬度(Hc)よりも高く、且つ前記中間層の材料硬度(Hm)がショアD硬度で60以上であり、前記カバーの材料硬度(Hc)がショアD硬度で50以上、70以下であり、前記中間層の厚みが2.0mm以下であり、前記カバーの厚みが2.0mm以下であり、前記中間層とカバーの合計厚みが3.6mm以下であり、前記コアの中心硬度(Ho)は、ショアC硬度で、40以上、75以下であり、前記ゴルフボールの直径は、40mm~45mmであり、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量は、2.0mm以上、4.0mm以下であり、前記コア用ゴム組成物は、(a)基材ゴム100質量部に対して、(b)共架橋剤として炭素数が3~8のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩を15質量部以上、50質量部以下、(d)テルペン系樹脂を0.5質量部以上、10質量部以下含有するものであることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
(d)前記テルペン系樹脂は、テルペン重合体、テルペン・フェノール共重合体、テルペン・スチレン共重合体、テルペン・フェノール・スチレン共重合体、水素添加テルペン・フェノール共重合体、水素添加テルペン・スチレン共重合体、水素添加テルペン・フェノール・スチレン共重合体よりなる群から選択される少なくとも一種である請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
前記テルペン系樹脂は、下記式(1)~(4)で表される構造を有する化合物から選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載のゴルフボール。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
[式(1)~(4)中、RおよびRは、それぞれ独立して、フェノール系化合物および/またはスチレン系化合物の二価の残基を表し、m~mは、それぞれ独立して、1~30の自然数を表し、n~nは、それぞれ独立して1~20の自然数を表す。]
【請求項4】
前記コア用ゴム組成物は、(a)基材ゴム100質量部に対して、(d)テルペン系樹脂を1質量部~5質量部含有するものである請求項1~3のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項5】
前記(d)テルペン系樹脂の軟化点は、60℃~150℃である請求項1~4のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項6】
前記ポリブタジエンは、シス-1,4-結合を90質量%以上含有するハイシスポリブタジエンである請求項1~5のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項7】
前記中間層の材料硬度と前記カバーの材料硬度との硬度差(Hm-Hc)は、ショアD硬度で4以上、20以下である請求項1~6のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項8】
前記カバーの材料硬度(Hc)は、ショアD硬度で、55超、70以下である請求項1~7のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【請求項9】
前記(d)テルペン系樹脂の軟化点は、120℃~150℃である請求項1~8のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
飛行性能に優れるゴルフボールが従来から望まれている。ゴルフボールの飛行性能を向上させる技術が多く提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、球状のコアと、このコアを被覆しかつ2以上の層を有するカバーとを備えており、上記コアの中心点から表面までをこのコアの半径の12.5%の間隔で区分して得られた9点の、中心点からの距離(%)とJIS-C硬度とがグラフにプロットされたとき、最小二乗法によって得られた線形近似曲線のRが0.95以上であり、上記カバーの最内層のJIS-C硬度Hiが、上記コアの表面のJIS-C硬度Hsと同じかこれより小さいゴルフボールが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、球状のコアと、このコアを被覆しかつ2以上の層を有するカバーとを備えており、上記コアが、ゴム組成物が架橋されることで得られたものであり、上記ゴム組成物が、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤、及び(d)カルボン酸塩を含んでおり、上記共架橋剤(b)が、(b1)その炭素数が3以上8以下であるα,β-不飽和カルボン酸又は(b2)その炭素数が3以上8以下であるα,β-不飽和カルボン酸の金属塩であり、上記カルボン酸塩(d)の量が、100質量部の基材ゴム(a)に対して1質量部以上40質量部未満であり、上記カバーの最内層のJIS-C硬度Hiが、上記コアの表面のJIS-C硬度Hsと同じかこれより小さいゴルフボールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-248262号公報
【文献】特開2013-009916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2は、ドライバーショットでの飛行性能及び打球感を向上させる技術であり、ロングアイアンショットでの飛行性能及び打球感について何ら検討されていない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ロングアイアンショットでの飛距離が大きく、打球感が良好なゴルフボールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のゴルフボールは、コアと、前記コアを被覆する少なくとも一層の中間層と、前記中間層を被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記コアは、(a)ポリブタジエンを含有する基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3~8のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)架橋開始剤、および(d)テルペン系樹脂を含有するコア用ゴム組成物から形成されており、前記中間層の材料硬度(Hm)が、前記カバーの材料硬度(Hc)よりも高く、且つ前記カバーの材料硬度(Hc)がショアD硬度で50以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明では、中間層の材料硬度をカバーの材料硬度よりも高く設定し、且つカバーの材料硬度をショアD硬度で50以上とすることで、ロングアイアンショットでの低スピン化を達成でき、飛距離の増大を実現できる。また、コアにテルペン系樹脂を含有することで、ロングアイアンショットでの打球感も良好となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロングアイアンショットでの飛距離が大きく、打球感も良好なゴルフボールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された一部切り欠き断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のゴルフボールは、コアと、前記コアを被覆する少なくとも一層の中間層と、前記中間層を被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記コアは、(a)ポリブタジエンを含有する基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3~8のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)架橋開始剤、および(d)テルペン系樹脂を含有するコア用ゴム組成物から形成されており、前記中間層の材料硬度(Hm)が、前記カバーの材料硬度(Hc)よりも高く、且つ前記カバーの材料硬度(Hc)がショアD硬度で50以上であることを特徴とする。
【0013】
まず、前記コア用ゴム組成物に使用される原料について説明する。
【0014】
[(a)基材ゴム]
本発明のコア用ゴム組成物に使用される(a)基材ゴムは、ポリブタジエンを含有するものが好ましい。前記ポリブタジエンとしては、シス-1,4-結合を90質量%以上含有するハイシスポリブタジエン(以下、単に「ハイシスポリブタジエン」と呼ばれることがある。)が好ましい。
【0015】
前記ハイシスポリブタジエンは、1,2-ビニル結合の含有量が2.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.7質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。1,2-ビニル結合の含有量が多すぎると反発性が低下する場合があるからである。
【0016】
前記ハイシスポリブタジエンは、希土類元素系触媒で合成されたものが好適であり、特に、ランタン系列希土類元素化合物であるネオジム化合物を用いたネオジム系触媒の使用が、1,4-シス結合が高含量、1,2-ビニル結合が低含量のポリブタジエンゴムを優れた重合活性で得られるので好ましい。
【0017】
前記ポリブタジエンは、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が、30以上であることが好ましく、より好ましくは32以上、さらに好ましくは35以上であり、140以下が好ましく、より好ましくは120以下、さらに好ましくは100以下、最も好ましくは80以下である。なお、本発明でいうムーニー粘度(ML1+4(100℃))とは、JIS K6300に準じて、Lローターを使用し、予備加熱時間1分間、ローターの回転時間4分間、100℃の条件下にて測定した値である。
【0018】
前記ポリブタジエンは、分子量分布Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が、2.0以上であることが好ましく、より好ましくは2.2以上、さらに好ましくは2.4以上、最も好ましくは2.6以上であり、6.0以下であることが好ましく、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下、最も好ましくは3.4以下である。ポリブタジエンの分子量分布(Mw/Mn)が小さすぎると作業性が低下し、大きすぎると反発性が低下するおそれがあるからである。なお、分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(東ソー社製、「HLC-8120GPC」)により、検知器として示差屈折計を用いて、カラム:GMHHXL(東ソー社製)、カラム温度:40℃、移動相:テトラヒドロフランの条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として算出した値である。
【0019】
反発性がより高いコアが得られる観点から、基材ゴム中におけるポリブタジエンの含有率は、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。(a)基材ゴムが、ポリブタジエンのみからなることも好ましい。
【0020】
前記(a)基材ゴムは、ポリブタジエンゴムに加えて、ほかのゴムを含んでも良い。ほかのゴムとしては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)などが挙げられる。これらは、1種用いても良く、2種以上を併用してもよい。
【0021】
[(b)共架橋剤]
前記コア用ゴム組成物に使用される(b)炭素数が3~8のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は、共架橋剤としてゴム組成物に配合されるものであり、基材ゴム分子鎖にグラフト重合することによって、ゴム分子を架橋する作用を有する。
前記炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等を挙げることができる。
【0022】
前記炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩を構成する金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの一価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属イオン;アルミニウムなどの三価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。前記金属成分は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。これらの中でも、前記金属成分としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの二価の金属が好ましい。炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の二価の金属塩を用いることにより、ゴム分子間に金属架橋が生じやすくなるからである。特に、二価の金属塩としては、得られるゴルフボールの反発性が高くなるということから、アクリル酸亜鉛が好適である。なお、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0023】
前記(b)炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、15質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、25質量部以上がさらに好ましく、50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましく、35質量部以下がさらに好ましい。(b)炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量が15質量部未満では、コア用ゴム組成物から形成されるコアを適当な硬さとするために、後述する(c)架橋開始剤の量を増加しなければならず、得られるゴルフボールの反発性が低下する傾向がある。一方、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩の含有量が50質量部を超えると、コア用ゴム組成物から形成されるコアが硬くなりすぎて、得られるゴルフボールの打球感が低下するおそれがある。
【0024】
[(c)架橋開始剤]
前記コア用ゴム組成物に使用される(c)架橋開始剤は、(a)基材ゴム成分を架橋するために配合されるものである。(c)架橋開始剤としては、有機過酸化物が好適である。前記有機過酸化物は、具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でもジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。
【0025】
前記(c)架橋開始剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、0.7質量部以上がさらに好ましく、5.0質量部以下が好ましく、2.5質量部以下がより好ましく、2.0質量部以下がさらに好ましい。架橋開始剤の含有量が0.2質量部未満では、コア用ゴム組成物から形成されるコアが柔らかくなりすぎて、得られるゴルフボールの反発性が低下する傾向があり、5.0質量部を超えると、コア用ゴム組成物から形成されるコアを適切な硬さにするために、前述した(b)共架橋剤の使用量を減少する必要があり、得られるゴルフボールの反発性が不足したり、耐久性が悪くなるおそれがある。
【0026】
[(d)テルペン系樹脂]
本発明で使用するテルペン系樹脂は、テルペン化合物を構成成分とする重合体であれば、特に限定されない。前記テルペン系樹脂は、例えば、テルペン重合体、テルペン・フェノール共重合体、テルペン・スチレン共重合体、テルペン・フェノール・スチレン共重合体、水素添加テルペン・フェノール共重合体、水素添加テルペン・スチレン共重合体、及び、水素添加テルペン・フェノール・スチレン共重合体よりなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0027】
前記テルペン重合体は、テルペン化合物を重合して得られるホモポリマーである。テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物である。前記テルペン化合物としては、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。前記テルペン化合物は、単独もしくは二種以上を混合して使用することができる。
【0028】
テルペン重合体は、例えば、前記テルペン化合物を重合して得られる。前記テルペン重合体としては、例えば、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、リモネン重合体、ジペンテン重合体、β-ピネン/リモネン重合体が挙げられる。
【0029】
テルペン・フェノール共重合体(「テルペンフェノール樹脂」と称する場合もある)は、例えば、前記テルペン化合物とフェノール系化合物との共重合体である。前記フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA等が挙げられる。テルペン・フェノール共重合体としては、テルペン化合物とフェノールとの共重合体が好ましい。
【0030】
前記テルペン・フェノール共重合体の酸価は、10mgKOH/g以上であることが好ましく、35mgKOH/g以上であることがより好ましく、60mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。また、前記テルペン・フェノール共重合体の酸価は、300mgKOH/g以下であることが好ましく、250mgKOH/g以下であることがより好ましく、200mgKOH/g以下であることがさらに好ましく、150mgKOH/g以下であることが特に好ましく、90mgKOH/g以下であることが最も好ましい。なお、本発明において、テルペン・フェノール共重合体の酸価とは、テルペン・フェノール共重合体1g中に含まれる酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JIS K 0070:1992)により測定した値である。
【0031】
テルペン・フェノール共重合体の水酸基価は、30mgKOH/g以上であることが好ましく、50mgKOH/g以上であることがより好ましい。テルペン・フェノール共重合体の水酸基価は、150mgKOH/g以下であることが好ましく、100mgKOH/g以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、水酸基価とは、樹脂1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JIS K 0070:1992)により測定した値である。
【0032】
テルペン・スチレン共重合体は、例えば、前記テルペン化合物とスチレン系化合物との共重合体である。前記スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。テルペン・スチレン共重合体としては、前記テルペン化合物とα-メチルスチレンとの共重合体が好ましい。
【0033】
テルペン・フェノール・スチレン共重合体は、例えば、前記テルペン化合物と前記フェノール系化合物と前記スチレン系化合物との共重合体である。テルペン・フェノール・スチレン共重合体としては、前記テルペン化合物とフェノールとα-メチルスチレンとの共重合体が好ましい。
【0034】
水素添加テルペン・フェノール共重合体は、前記テルペン・フェノール共重合体を水素添加して得られるものである。水素添加テルペン・スチレン共重合体は、前記テルペン・スチレン共重合体を水素添加して得られるものである。水素添加テルペン・フェノール・スチレン共重合体は、前記テルペン・フェノール・スチレン共重合体を水素添加して得られるものである。
【0035】
(d)前記テルペン系樹脂としては、下記式(1)~(4)で表される構造を有する化合物から選択される少なくとも1種であるものが好ましい。
【0036】
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
[式(1)~(4)中、RおよびRは、それぞれ独立して、フェノール系化合物および/またはスチレン系化合物の二価の残基を表す、m~mは、それぞれ独立に1~30の自然数を表し、n~nは、それぞれ独立に1~20の自然数を表す。]
【0037】
前記式(1)~(4)で表される構造を有する化合物は、いずれも分子中にピネンに由来する構造を有する。
【0038】
式(1)で表される構造を有する化合物は、α-ピネンに由来する構造部分と、このα-ピネンに由来する構造部分に結合するRとからなる繰り返し単位を有する。Rは、フェノール系化合物および/またはスチレン系化合物が有するベンゼン環から2個の水素が除去された二価の残基であることが好ましい。式(1)で表される構造を有する化合物としては、例えば、α-ピネンとフェノール系化合物および/またはスチレン系化合物との共重合体を挙げることができる。
【0039】
前記フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA等が挙げられる。前記スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0040】
式(1)中、mは、α-ピネンに由来する構造単位の重合度を表し、1~30の自然数であることが好ましい。mは、1以上が好ましく、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、30以下が好ましく、より好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下である。
【0041】
式(1)中、nは、α-ピネンに由来する構造部分と、このα-ピネンに由来する構造部分に結合するRとからなる繰り返し単位の重合度を表し、1~20の自然数であることが好ましい。前記nは、1以上が好ましく、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、20以下が好ましく、より好ましくは18以下、さらに好ましくは15以下である。
【0042】
式(2)で表される構造を有する化合物は、分子中にβ-ピネンに由来する構造部分と、この構造部分に結合するRとからなる繰り返し単位を有する。式(2)で表される構造を有する化合物としては、例えば、β-ピネンとフェノール系化合物および/またはスチレン系化合物との共重合体を挙げることができる。Rは、フェノール系化合物および/またはスチレン系化合物が有するベンゼン環から2個の水素が除去された2価の残基である。
【0043】
前記フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA等が挙げられる。前記スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0044】
式(2)中、mは、β-ピネンに由来する構造単位の重合度を表し、1~30の自然数であることが好ましい。mは、1以上が好ましく、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、30以下が好ましく、より好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下である。
【0045】
式(2)中、nは、β-ピネンに由来する構造部分と、この構造部分に結合するRとからなる繰り返し単位の重合度を表し、1~20の自然数であることが好ましい。前記nは、1以上が好ましく、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、20以下が好ましく、より好ましくは18以下、さらに好ましくは15以下である。
【0046】
式(3)で表される構造を持つ化合物は、α-ピネンに由来する構造単位を有する重合体であり、α-ピネンに由来する構造単位のみを有する重合体であることがより好ましい。
【0047】
式(3)中、mは、α-ピネンに由来する構造単位の重合度を表し、1~30の自然数であることが好ましい。mは、1以上が好ましく、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、30以下が好ましく、より好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下である。
【0048】
式(4)で表される構造を持つ化合物は、分子中にβ-ピネンに由来する構造単位を有するβ-ピネン重合体であり、β-ピネンに由来する構造単位のみを有する重合体であることがより好ましい。
【0049】
式(4)中、mは、β-ピネンに由来する構造単位の重合度を表し、1~30の自然数であることが好ましい。mは、1以上が好ましく、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、30以下が好ましく、より好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下である。
【0050】
前記(d)テルペン系樹脂として特に好ましいのは、α-ピネン・フェノール共重合体、α-ピネン・α-メチルスチレン共重合体、α-ピネン・α-メチルスチレン・フェノール共重合体、β-ピネン・フェノール共重合体、β-ピネン・α-メチルスチレン共重合体、β-ピネン・α-メチルスチレン・フェノール共重合体である。前記(d)テルペン系樹脂として、これらの共重合体を単独使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
前記(d)テルペン系樹脂の軟化点は、60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましく、150℃以下が好ましく、130℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることがさらに好ましい。軟化点が前記範囲にある(d)テルペン系樹脂を使用することにより、ゴム混練中の樹脂分散性が良くなるからである。なお、前記(d)テルペン系樹脂の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0052】
前記(d)テルペン系樹脂としては、市販品を使用でき、例えば、KRATON社製のSylvaresTP2019、Sylvatraxx6720;ヤスハラケミカル社製のYSレジンPX1150Nなどが挙げられる。
【0053】
前記(d)テルペン系樹脂の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、0.8質量部以上がより好ましく、1質量部以上がさらに好ましく、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。(d)成分の含有量が0.5質量部未満では、(d)成分を添加した効果が小さくなり、ロングアイアンショットをした時の打球感向上効果が得られないことがある。一方、(d)成分の含有量が10質量部を超えると、得られるコアが全体的に柔らかくなりすぎて、反発性が低下し、ロングアイアンショットでの飛距離が低下する場合がある。また、ロングアイアンショットでの打球感が低下する場合がある。
【0054】
前記(b)成分と前記(d)成分との配合比率((b)成分/(d)成分)は、質量比で、2.0以上が好ましく、より好ましくは3.0以上、さらに好ましくは5.0以上であり、40.0以下が好ましく、より好ましくは38.0以下、さらに好ましくは35.0以下である。(b)成分と(d)成分との配合比率((b)成分/(d)成分)が前記範囲であれば、ロングアイアンショットをしたときの飛距離と打球感が両立できるゴルフボールが得られる。
【0055】
[(e)有機硫黄化合物]
前記コア用ゴム組成物は、さらに(e)有機硫黄化合物を含有することが好ましい。(e)有機硫黄化合物を含有することにより、得られるコアの反発性が向上する。
【0056】
前記(e)有機硫黄化合物としては、チオール類(チオフェノール類、チオナフトール類)、ポリスルフィド類、チウラム類、チオカルボン酸類、ジチオカルボン酸類、スルフェンアミド類、ジチオカルバミン酸塩類、および、チアゾール類よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物が好ましい。
【0057】
チオール類としては、例えば、チオフェノール類、チオナフトール類が挙げられる。前記チオフェノール類としては、例えば、チオフェノール;4-フルオロチオフェノール、2,4-ジフルオロチオフェノール、2,5-ジフルオロチオフェノール、2,6-ジフルオロチオフェノール、2,4,5-トリフルオロチオフェノール、2,4,5,6-テトラフルオロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノールなどのフルオロ基で置換されたチオフェノール類;2-クロロチオフェノール、4-クロロチオフェノール、2,4-ジクロロチオフェノール、2,5-ジクロロチオフェノール、2,6-ジクロロチオフェノール、2,4,5-トリクロロチオフェノール、2,4,5,6-テトラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノールなどのクロロ基で置換されたチオフェノール類;4-ブロモチオフェノール、2,4-ジブロモチオフェノール、2,5-ジブロモチオフェノール、2,6-ジブロモチオフェノール、2,4,5-トリブロモチオフェノール、2,4,5,6-テトラブロモチオフェノール、ペンタブロモチオフェノールなどのブロモ基で置換されたチオフェノール類;4-ヨードチオフェノール、2,4-ジヨードチオフェノール、2,5-ジヨードチオフェノール、2,6-ジヨードチオフェノール、2,4,5-トリヨードチオフェノール、2,4,5,6-テトラヨードチオフェノール、ペンタヨードチオフェノールなどのヨード基で置換されたチオフェノール類;または、これらの金属塩が挙げられる。金属塩としては、亜鉛塩が好ましい。
【0058】
前記チオナフトール類(ナフタレンチオール類)としては、2-チオナフトール、1-チオナフトール、1-クロロ-2-チオナフトール、2-クロロ-1-チオナフトール、1-ブロモ-2-チオナフトール、2-ブロモ-1-チオナフトール、1-フルオロ-2-チオナフトール、2-フルオロ-1-チオナフトール、1-シアノ-2-チオナフトール、2-シアノ-1-チオナフトール、1-アセチル-2-チオナフトール、2-アセチル-1-チオナフトール、またはこれらの金属塩を挙げることができ、2-チオナフトール、1-チオナフトール、またはこれらの金属塩が好ましい。金属塩としては、好ましくは2価の金属塩、より好ましくは亜鉛塩である。金属塩の具体的としては、例えば、1-チオナフトールの亜鉛塩、2-チオナフトールの亜鉛塩が挙げられる。
【0059】
ポリスルフィド類とは、ポリスルフィド結合を有する有機硫黄化合物であり、例えば、ジスルフィド類、トリスルフィド類、テトラスルフィド類が挙げられる。前記ポリスルフィド類としては、ジフェニルポリスルフィド類が好ましい。
【0060】
ジフェニルポリスルフィド類としては、ジフェニルジスルフィドの他;ビス(4-フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4-クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4-ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4-ヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタヨードフェニル)ジスルフィド等のハロゲン基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4-メチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(4-t-ブチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリ-t-ブチルフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタ-t-ブチルフェニル)ジスルフィド等のアルキル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;などが挙げられる。
【0061】
チウラム類としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィドなどのチウラムモノスルフィド類、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドなどのチウラムジスルフィド類、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどのチウラムテトラスルフィド類が挙げられる。チオカルボン酸類としては、例えば、ナフタレンチオカルボン酸が挙げられる。ジチオカルボン酸類としては、例えば、ナフタレンジチオカルボン酸が挙げられる。スルフェンアミド類としては、例えば、N-シクロへキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドが挙げられる。
【0062】
前記(e)有機硫黄化合物としては、チオフェノール類および/またはその金属塩、チオナフトール類および/またはその金属塩、ジフェニルジスルフィド類、チウラムジスルフィド類が好ましく、より好ましくは2,4-ジクロロチオフェノール、2,6-ジフルオロチオフェノール、2,6-ジクロロチオフェノール、2,6-ジブロモチオフェノール、2,6-ジヨードチオフェノール、2,4,5-トリクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール、1-チオナフトール、2-チオナフトール、ジフェニルジスルフィド、ビス(2,6-ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドである。
【0063】
前記(e)有機硫黄化合物は、単独もしくは二種以上を混合して使用することができる。
【0064】
前記(e)有機硫黄化合物の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.2質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下、さらに好ましくは2.0質量部以下である。(e)有機硫黄化合物の含有量が0.05質量部未満では、(e)有機硫黄化合物を添加した効果が得られず、ゴルフボールの反発性が向上しないおそれがある。また、(e)有機硫黄化合物の含有量が5.0質量部を超えると、得られるゴルフボールの圧縮変形量が大きくなって、反発性が低下するおそれがある。
【0065】
[(f)金属化合物]
前記コア用ゴム組成物は、共架橋剤として炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸のみを含有する場合、さらに(f)金属化合物を含有することが好ましい。コア用ゴム組成物中で炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸を金属化合物で中和することにより、共架橋剤として炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩を使用する場合と実質的に同様の効果が得られるからである。なお、共架橋剤として、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とその金属塩とを併用する場合においては、任意成分として、(f)金属化合物を用いてもよい。
【0066】
前記(f)金属化合物としては、コア用ゴム組成物中において(b)炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸を中和することができるものであれば、特に限定されない。前記(f)金属化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化銅などの金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸化物が挙げられる。前記(f)金属化合物として好ましいのは、二価金属化合物であり、より好ましくは亜鉛化合物である。二価金属化合物は、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸と反応して、金属架橋を形成するからである。また、亜鉛化合物を用いることにより、反発性の高いゴルフボールが得られる。
【0067】
前記(f)金属化合物は単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。また、前記(f)金属化合物の含有量は、所望とする(b)炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の中和度に応じて、適宜調整すればよい。
【0068】
本発明に用いられるコア用ゴム組成物は、必要に応じて、顔料、重量調整などのための充填剤、老化防止剤、しゃく解剤、軟化剤などの添加剤を含有してもよい。
【0069】
コア用ゴム組成物に用いる充填剤としては、主として最終製品として得られるゴルフボールの重量を調整するための重量調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。前記充填剤として特に好ましいのは、酸化亜鉛である。酸化亜鉛は、加硫助剤として機能して、コア全体の硬度を高めるものと考えられる。前記充填剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上であって、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。充填剤の含有量が0.5質量部未満では、重量調整が難しくなり、30質量部を超えるとゴム成分の重量分率が小さくなり反発性が低下する傾向があるからである。
【0070】
前記老化防止剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
【0071】
[コア]
本発明のゴルフボールが有するコアは、前述のコア用ゴム組成物を混合、混練し、金型内で成形することにより得ることができる。この際の条件は、特に限定されないが、通常は130℃~200℃、圧力2.9MPa~11.8MPaで10分間~60分間で行われる。例えば、前記コア用ゴム組成物を130℃~200℃で10分間~60分間加熱するか、あるいは、130℃~150℃で20分間~40分間加熱した後、160℃~180℃で5分間~15分間の2段階で加熱することが好ましい。
【0072】
前記コアの形状は、球状であることが好ましい。また、前記コアの構造は、単層構造と多層構造のいずれもよいが、単層構造であることが好ましい。単層構造のコアは、多層構造の界面における打撃時のエネルギーロスがなく、反発性が向上するからである。
【0073】
本発明のゴルフボールのコアの表面硬度(Hs)は、ショアC硬度で、60以上であることが好ましく、65以上であることがより好ましく、70以上であることがさらに好ましく、85以下であることが好ましく、82以下であることがより好ましく、80以下であることがさらに好ましい。前記コアの表面硬度(Hs)が、ショアC硬度で60以上であれば、コアの反発性がより良好になる。また、前記コアの表面硬度(Hs)が、ショアC硬度で85以下であれば、耐久性が良好である。
【0074】
前記コアの中心硬度(Ho)は、ショアC硬度で、40以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましく、60以上であることがさらに好ましい。コアの中心硬度(Ho)がショアC硬度で40以上であれば、軟らかくなりすぎず、反発性が良好となる。また、コアの中心硬度(Ho)は、ショアC硬度で75以下が好ましく、70以下であることがより好ましく、68以下であることがさらに好ましい。前記中心硬度(Ho)がショアC硬度で75以下であれば、硬くなり過ぎず、打球感が良好となる。
【0075】
前記コアの表面硬度(Hs)と中心硬度(Ho)との硬度差(Hs-Ho)は、ショアC硬度で、5以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、8以上であることがさらに好ましく、35以下であることが好ましく、25以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。コアの表面硬度(Hs)と中心硬度(Ho)との硬度差(Hs-Ho)がショアC硬度で5以上であれば、反発性の良いゴルフボールが得られる。また、コアの表面硬度(Hs)と中心硬度(Ho)との硬度差(Hs-Ho)がショアC硬度で35以下であれば、耐久性が良好である。
【0076】
前記コアの直径は、34.8mm以上であることが好ましく、36.8mm以上であることがより好ましく、38.6mm以上であることがさらに好ましく、42.2mm以下であることが好ましく、41.8mm以下であることがより好ましく、41.2mm以下であることがさらに好ましく、40.8mm以下であることが最も好ましい。前記コアの直径が34.8mm以上であれば、中間層とカバーの厚みが厚くなり過ぎず、反発性がより良好となる。一方、コアの直径が42.2mm以下であれば、中間層とカバーが薄くなり過ぎず、中間層とカバーの機能がより発揮される。
【0077】
前記コアは、直径34.8mm~42.2mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にコアが縮む量)が、2.0mm以上であることが好ましく、2.5mm以上であることがより好ましく、3.0mm以上であることがさらに好ましく、5.0mm以下が好ましく、4.5mm以下であることがより好ましく、4.0mm以下であることがさらに好ましい。前記圧縮変形量が、2.0mm以上であれば打球感がより良好となり、5.0mm以下であれば、反発性がより良好となる。
【0078】
[中間層]
本発明のゴルフボールは、前記コアを被覆する少なくとも一層の中間層を有する。前記中間層は、少なくとも一層であればよく、単層であってもよく、2層以上であってもよい。
【0079】
本発明のゴルフボールの中間層の材料硬度(Hm)は、カバーの材料硬度(Hc)よりも高い。中間層の材料硬度(Hm)がカバーの材料硬度(Hc)よりも高くなることで、ロングアイアンショットでの低スピン化が達成でき、飛行性能が向上するゴルフボールが得られる。なお、複数の中間層を有する場合には、最も硬い中間層の材料硬度(Hm)が、カバーの材料硬度(Hc)よりも高ければよい。
【0080】
前記中間層の材料硬度(Hm)とカバーの材料硬度(Hc)との硬度差(Hm-Hc)は、ショアD硬度で、4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、8以上であることがさらに好ましい。中間層の材料硬度(Hm)とカバーの材料硬度(Hc)との硬度差(Hm-Hc)が、ショアD硬度で4以上であれば、ロングアイアンショットでの低スピン化効果が大きくなり、飛距離がより大きくなる。また、前記中間層の材料硬度(Hm)とカバーの材料硬度(Hc)との硬度差(Hm-Hc)の上限は、特に限定されないが、ショアD硬度で、25であることが好ましく、20であることがより好ましく、18であることがさらに好ましい。
【0081】
前記中間層の材料硬度(Hm)は、ショアD硬度で、60以上であることが好ましく、62以上であることがより好ましく、65以上であることがさらに好ましい。中間層の材料硬度(Hm)が、ショアD硬度で60未満では、ロングアイアンショットでの低スピン化効果が得られず、十分な飛距離が得られない場合があるからである。また、前記中間層の材料硬度(Hm)の上限は、特に限定されないが、ショアD硬度で、85であることが好ましく、80であることがより好ましく、75であることがさらに好ましい。なお、前記中間層の材料硬度は、中間層を形成する中間層組成物をシート状に成形して測定したスラブ硬度である。複数の中間層を有する場合は、各層の材料硬度は、同一であっても良く、異なっても良いが、すべての中間層の硬度が、前記範囲にあることが好ましい。
【0082】
前記中間層の厚みは、2.0mm以下であることが好ましく、1.9mm以下であることがより好ましく、1.8mm以下であることがさらに好ましい。中間層の厚みが2.0mmよりも厚いと、ロングアイアンショットでの打球感が低下する場合があるからである。また、前記中間層の厚みは、0.5mm以上であることが好ましく、0.6mm以上であることがより好ましく、0.7mm以上であることがさらに好ましい。中間層の厚みが0.5mmよりも薄いと、ゴルフボールの耐久性が悪化したり、中間層の成型が困難になったりする場合があるからである。なお、複数の中間層の場合は、各層の厚みは、同一であっても良く、異なっても良いが、すべての中間層の合計厚みが、前記範囲にあることが好ましい。
【0083】
[カバー]
本発明のゴルフボールは、前記少なくとも一層の中間層を被覆するカバーを有する。前記カバーは、塗膜を除くゴルフボール本体の最外層を構成する層である。本発明のゴルフボールが有するカバーの材料硬度(Hc)は、ショアD硬度で、50以上であることが好ましく、52以上であることがより好ましく、55以上であることがさらに好ましく、70以下であることが好ましく、68以下であることがより好ましく、66以下であることがさらに好ましい。カバーの材料硬度(Hc)が、ショアD硬度で50未満では、ロングアイアンショットでの反発性能が低下し、十分な飛距離が得られない場合がある。また、カバーの材料硬度(Hc)が、ショアD硬度で70超では、ロングアイアンショットでの打球感が低下する場合がある。なお、前記カバーの材料硬度は、カバーを形成するカバー用組成物をシート状に成形して測定したスラブ硬度である。
【0084】
前記カバーの厚みは、2.0mm以下であることが好ましく、1.9mm以下であることがより好ましく、1.8mm以下であることがさらに好ましい。カバーの厚みが2.0mmよりも厚いと、ロングアイアンショットでの打球感が低下する場合があるからである。また、前記カバーの厚みは、0.5mm以上であることが好ましく、0.6mm以上であることがより好ましく、0.7mm以上であることがさらに好ましい。カバーの厚みが0.5mmよりも薄いと、ゴルフボールの耐久性が悪化したり、カバーの成型が困難になったりする場合があるからである。
【0085】
前記中間層とカバーの合計厚みは、3.6mm以下であることが好ましく、3.5mm以下であることがより好ましく、3.4mm以下であることがさらに好ましい。中間層とカバーの合計厚みが3.6mmよりも厚いと、ロングアイアンショットでの打球感が低下する場合があるからである。
【0086】
[中間層およびカバーの材料]
本発明のゴルフボールの中間層およびカバーは、樹脂成分を含有する組成物から形成される。樹脂成分としては、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂のいずれであってもよいが、熱可塑性樹脂であることが好ましい。なお、中間層を形成する樹脂組成物を、「中間層用組成物」と称し、カバーを形成する樹脂組成物を「カバー用組成物」と称する場合がある。
【0087】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、アイオノマー樹脂、熱可塑性オレフィン共重合体、熱可塑性ポリウレタン樹脂、熱可塑性ポリアミド樹脂、熱可塑性スチレン系樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂を挙げることができる。熱可塑性樹脂の中でも、ゴム弾性を有する熱可塑性エラストマーが好ましい。前記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性スチレン系エラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性アクリル系エラストマーなどを挙げることができる。
【0088】
[アイオノマー樹脂]
前記アイオノマー樹脂としては、オレフィンと、炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂;オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂;または、これらの混合物を挙げることができる。
【0089】
なお、本発明において、「オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂」を単に「二元系アイオノマー樹脂」と称し、「オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂」を単に「三元系アイオノマー樹脂」と称する場合がある。
【0090】
前記オレフィンとしては、炭素数が2~8個のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができ、特にエチレンであることが好ましい。前記炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また、α,β-不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。
【0091】
前記二元系アイオノマー樹脂としては、エチレン-(メタ)アクリル酸二元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。前記三元系アイオノマー樹脂としては、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
【0092】
前記二元系アイオノマー樹脂中の炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸成分の含有率は、15質量%以上が好ましく、16質量%以上がより好ましく、17質量%以上がさらに好ましく、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸成分の含有率が、15質量%以上であれば、得られる構成部材を所望の硬度にしやすくなるからである。また、炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸成分の含有率が、30質量%以下であれば、得られる構成部材の硬度が高くなり過ぎず、耐久性と打球感が良好になるからである。
【0093】
前記二元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、15モル%以上が好ましく、20モル%以上が好ましく、100モル%以下が好ましい。中和度が15モル%以上であれば、得られるゴルフボールの反発性および耐久性が良好になる。なお、前記二元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、下記式で求めることができる。また、理論上のアイオノマー樹脂中のカルボキシル基の中和度が100モル%を超えるように金属成分を含有する場合がある。
【0094】
二元系アイオノマー樹脂の中和度(モル%)=100×二元系アイオノマー樹脂中の中和されているカルボキシル基のモル数/二元系アイオノマー樹脂中のカルボキシル基の総モル数
【0095】
前記二元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。
【0096】
前記二元系アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井・デュポン・ポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM7311(Mg)、ハイミランAM7329(Zn)など」が挙げられる。
【0097】
さらにデュポン社から市販されている「サーリン(Surlyn)(登録商標)(例えば、サーリン8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6910(Mg)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li))」などが挙げられる。
【0098】
またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、「アイオテック(Iotek)(登録商標)(例えば、アイオテック8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn))」などが挙げられる。
【0099】
前記二元系アイオノマー樹脂は、例示のものをそれぞれ単独または2種以上の混合物として用いてもよい。前記商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。
【0100】
前記三元系アイオノマー樹脂中の炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸成分の含有率は、2質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下である。
【0101】
前記三元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、20モル%以上が好ましく、より好ましくは30モル%以上であり、100モル%以下が好ましい。中和度が20モル%以上であれば、熱可塑性樹脂組成物を用いて得られるゴルフボールの反発性および耐久性が良好になる。なお、アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、下記式で求めることができる。また、理論上のアイオノマー樹脂中のカルボキシル基の中和度が100モル%を超えるように金属成分を含有する場合がある。
アイオノマー樹脂の中和度(モル%)=100×アイオノマー樹脂中の中和されているカルボキシル基のモル数/アイオノマー樹脂中のカルボキシル基の総モル数
【0102】
前記三元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。
【0103】
前記三元系アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井・デュポン・ポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(例えば、ハイミランAM7327(Zn)、ハイミラン1855(Zn)、ハイミラン1856(Na)、ハイミランAM7331(Na)など)」が挙げられる。さらにデュポン社から市販されている三元系アイオノマー樹脂としては、「サーリン6320(Mg)、サーリン8120(Na)、サーリン8320(Na)、サーリン9320(Zn)、サーリン9320W(Zn)、HPF1000(Mg)、HPF2000(Mg)など)」が挙げられる。またエクソンモービル化学(株)から市販されている三元系アイオノマー樹脂としては、「アイオテック7510(Zn)、アイオテック7520(Zn)など)」が挙げられる。なお、商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Mgなどは、中和金属イオンの種類を示している。前記三元系アイオノマー樹脂は、単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0104】
[熱可塑性オレフィン共重合体]
前記熱可塑性オレフィン共重合体としては、例えば、オレフィンと、炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体;オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体;または、これらの混合物を挙げることができる。前記熱可塑性オレフィン共重合体は、そのカルボキシル基が中和されていない非イオン性のものである。
【0105】
なお、本発明において、「オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体」を単に「二元共重合体」と称し、「オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体」を単に「三元共重合体」と称する場合がある。
【0106】
前記オレフィンとしては、アイオノマー樹脂を構成するオレフィンと同一のものを挙げることができ、特にエチレンであることが好ましい。前記炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸およびそのエステルとしては、アイオノマー樹脂を構成する炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸およびそのエステルと同一のものを挙げることができる。
【0107】
前記二元共重合体としては、エチレンと(メタ)アクリル酸との二元共重合体が好ましい。前記三元共重合体としては、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの三元共重合体が好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
【0108】
前記二元共重合体または三元共重合体中の炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸成分の含有率は、4質量%以上が好ましく、より好ましくは5質量%以上であり、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下である。
【0109】
前記二元共重合体の具体例を商品名で例示すると、例えば、三井・デュポン・ポリケミカル社から商品名「ニュクレル(NUCREL)(登録商標)(例えば、「ニュクレルN1050H」、「ニュクレルN2050H」、「ニュクレルN1110H」、「ニュクレルN0200H」)」で市販されているエチレン-メタクリル酸共重合体、ダウケミカル社から商品名「プリマコール(PRIMACOR)(登録商標)5980I」で市販されているエチレン-アクリル酸共重合体などを挙げることができる。
【0110】
前記三元共重合体の具体例を商品名で例示すると、三井・デュポン・ポリケミカル社から市販されている商品名「ニュクレル(NUCREL)(例えば、「ニュクレルAN4318」「ニュクレルAN4319」)」、デュポン社から市販されている商品名「ニュクレル(NUCREL)(例えば、「ニュクレルAE」)」、ダウケミカル社から市販されている商品名「プリマコール(PRIMACOR)(例えば、「PRIMACOR AT310」、「PRIMACOR AT320」)」などを挙げることができる。前記二元共重合体または三元共重合体は、単独または二種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0111】
[熱可塑性ポリウレタン樹脂および熱可塑性ポリウレタンエラストマー]
熱可塑性ポリウレタン樹脂および熱可塑性ポリウレタンエラストマーとしては、分子の主鎖にウレタン結合を複数有する熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマーを挙げることができる。前記ポリウレタンは、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応させて得られるものが好ましい。前記熱可塑性ポリウレタンエラストマーとしては、例えば、BASFジャパン(株)社製の商品名「エラストラン(登録商標)XNY85A」、「エラストランXNY90A」、「エラストランXNY97A」、「エラストランET885」、「エラストランET890」などが挙げられる。
【0112】
[熱可塑性スチレン系エラストマー]
熱可塑性スチレン系エラストマーとしては、スチレンブロックを含有する熱可塑性エラストマーを好適に使用できる。前記スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントとしてのポリスチレンブロックと、ソフトセグメントとを備えている。典型的なソフトセグメントは、ジエンブロックである。ジエンブロックの構成成分としては、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン及び2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンが例示される。ブタジエン及びイソプレンが好ましい。2以上の構成成分が併用されてもよい。
【0113】
スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーには、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、SBSの水添物、SISの水添物及びSIBSの水添物が含まれる。SBSの水添物としては、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)が挙げられる。SISの水添物としては、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)が挙げられる。SIBSの水添物としては、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)が挙げられる。
【0114】
前記スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーにおけるスチレン成分の含有率は10質量%以上が好ましく、12質量%以上がより好ましく、15質量%以上が特に好ましい。得られるゴルフボールの打球感の観点から、この含有率は50質量%以下が好ましく、47質量%以下がより好ましく、45質量%以下が特に好ましい。
【0115】
前記スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーには、SBS、SIS、SIBS、SEBS、SEPS及びSEEPS、並びに、これらの水添物からなる群から選択された1種又は2種以上と、ポリオレフィンとのアロイが含まれる。このアロイ中のオレフィン成分は、アイオノマー樹脂との相溶性向上に寄与すると推測される。このアロイが用いられることにより、ゴルフボールの反発性能が向上する。好ましくは、炭素数が2以上10以下のオレフィンが用いられる。好適なオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン及びペンテンが例示される。エチレン及びプロピレンが特に好ましい。
【0116】
ポリマーアロイの具体例としては、三菱化学社製「テファブロック(登録商標)T3221C」、「テファブロックT3339C」、「テファブロックSJ4400N」、「テファブロックSJ5400N」、「テファブロックSJ6400N」、「テファブロックSJ7400N」、「テファブロックSJ8400N」、「テファブロックSJ9400N」及び「テファブロックSR04」が挙げられる。スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーの他の具体例としては、ダイセル化学工業社製「エポフレンドA1010」及びクラレ社製「セプトンHG-252」が挙げられる。
【0117】
[熱可塑性ポリアミド樹脂および熱可塑性ポリアミドエラストマー]
前記熱可塑性ポリアミドとしては、分子の主鎖中にアミド結合(-NH-CO-)を複数有する熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、例えば、ラクタムを開環重合させたり、ジアミン成分とジカルボン酸成分とを反応させたりすることによって、アミド結合が分子内に形成された生成物が挙げられる。
【0118】
前記ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド9T、ポリアミドM5T、ポリアミド612などの脂肪族系ポリアミド;ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド、ポリ-m-フェニレンイソフタルアミドなどの芳香族系ポリアミドが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12などの脂肪族系ポリアミドが好適である。
【0119】
前記ポリアミド樹脂の具体例を商品名で示すと、例えば、アルケマ社から市販されている「リルサン(登録商標)B(例えば、リルサンBESN TL、リルサンBESN P20 TL、リルサンBESN P40 TL、リルサンMB3610、リルサンBMF O、リルサンBMN O、リルサンBMN O TLD、リルサンBMN BK TLD、リルサンBMN P20 D、リルサンBMN P40 Dなど)」などが挙げられる。
【0120】
ポリアミドエラストマーは、ポリアミド成分からなるハードセグメント部分とソフトセグメント部分とを有する。ポリアミドエラストマーのソフトセグメント部分としては、例えば、ポリエーテルエステル成分又はポリエーテル成分を挙げることができる。前記ポリアミドエラストマーとしては、例えば、ポリアミド成分(ハードセグメント成分)と、ポリオキシアルキレングリコール及びジカルボン酸からなるポリエーテルエステル成分(ソフトセグメント成分)との反応で得られるポリエーテルエステルアミド;ポリアミド成分(ハードセグメント成分)と、ポリオキシアルキレングリコールの両末端をアミノ化又はカルボキシル化したものとジカルボン酸又はジアミンとからなるポリエーテル(ソフトセグメント成分)との反応で得られるポリエーテルアミドが例示される。
【0121】
前記ポリアミドエラストマーとして、例えば、アルケマ社製の「ペバックス(PEBAX)(登録商標)2533」、「ペバックス3533」、「ペバックス4033」、「ペバックス5533」などを挙げることができる。
【0122】
[熱可塑性ポリエステル樹脂および熱可塑性ポリエステルエラストマー]
前記熱可塑性ポリエステル樹脂は、分子の主鎖にエステル結合を複数有するものであれば特に限定されず、例えば、ジカルボン酸とジオールとを反応させることにより得られるものが好ましい。熱可塑性ポリエステルエラストマーとしては、例えば、ポリエステル成分からなるハードセグメントと、ソフトセグメントとを有するブロック共重合体を挙げることができる。ハードセグメントを構成するポリエステル成分としては、例えば、芳香族ポリエステルを挙げることができる。ソフトセグメント成分としては、脂肪族ポリエーテルや、脂肪族ポリエステルを挙げることができる。
【0123】
前記ポリエステルエラストマーの具体例としては、東レ・デュポン社製の「ハイトレル(登録商標)3548」、「ハイトレル4047」、三菱化学社製の「プリマロイ(登録商標)A1606」,「プリマロイB1600」、「プリマロイB1700」などを挙げることができる。
【0124】
[熱可塑性(メタ)アクリル系エラストマー]
前記熱可塑性(メタ)アクリル系エラストマーとしては、エチレンと(メタ)アクリル酸エステルとを共重合してなる熱可塑性エラストマーを挙げることができる。前記熱可塑性(メタ)アクリル系エラストマーの具体例としては、例えば、クラレ社製「クラリティ(メタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルのブロック共重合体)」を挙げることができる。
【0125】
前記中間層用組成物およびカバー用組成物は、樹脂成分として、アイオノマー樹脂を含有することが好ましい。前記中間層用組成物およびカバー用組成物は、樹脂成分として、アイオノマー樹脂のみを含有しても良いが、アイオノマー樹脂をその他の樹脂成分と併用してもよい。
【0126】
中間層用組成物およびカバー用組成物は、さらに、添加材を含有してもよい。前記添加材としては、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料などの顔料成分、重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを挙げることができる。前記重量調整剤としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。
【0127】
カバー用組成物中における白色顔料(例えば、酸化チタン)の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、得られるカバーに隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部超になると、得られるカバーの耐久性が低下する場合があるからである。
【0128】
中間層を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、中間層用組成物を予め半球殻状のハーフシェルに成形し、それを2枚用いて球体を包み、加圧成形する方法、または、中間層用組成物を直接球体上に射出成形して球体を包み込む方法などを挙げることができる。
【0129】
中間層用組成物を球体上に射出成形して中間層を成形する場合、成形用上下金型としては、半球状キャビティを有しているものを使用することが好ましい。射出成形による中間層の成形は、ホールドピンを突き出し、被覆球体を投入してホールドさせた後、加熱溶融された中間層用組成物を注入して、冷却することにより中間層を成形することができる。
【0130】
圧縮成形法により中間層を成形する場合、ハーフシェルの成形は、圧縮成形法または射出成形法のいずれの方法によっても行うことができるが、圧縮成形法が好適である。中間層用組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、20MPa以下の圧力で、中間層用組成物の流動開始温度に対して、-20℃以上、+70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みをもつハーフシェルを成形できる。ハーフシェルを用いて中間層を成形する方法としては、例えば、球体を2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法を挙げることができる。ハーフシェルを圧縮成形して中間層に成形する条件としては、例えば、0.5MPa以上、25MPa以下の成形圧力で、中間層用組成物の流動開始温度に対して、-20℃以上、+70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みを有する中間層を成形できる。
【0131】
なお、成形温度とは、型締めから型開きの間に、下型の凹部の表面が到達する最高温度を意味する。また組成物の流動開始温度は、島津製作所の「フローテスター CFT-500」を用いて、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を、プランジャー面積:1cm、DIE LENGTH:1mm、DIE DIA:1mm、荷重:588.399N、開始温度:30℃、昇温速度:3℃/分の条件で測定することができる。
【0132】
カバー用組成物を用いてカバーを成形する態様は、特に限定されないが、カバー用組成物をコアと中間層とからなる球体上に直接射出成形する態様、あるいは、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアと中間層とからなる球体を複数のシェルで被覆して圧縮成形する態様(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアと中間層とからなる球体を2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)を挙げることができる。カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、マークを形成することもできる。
【0133】
カバーには、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。カバーに形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0134】
前記カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。
【0135】
[ゴルフボール]
本発明のゴルフボールの構造は、コアと、前記コアを被覆する少なくとも一層の中間層と、前記中間層を被覆する少なくとも一層のカバーとを有するものであれば、特に限定されない。図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール1が示された一部切り欠き断面図である。ゴルフボール2は、コア104と、コア104を被覆する中間層106と、前記中間層106を被覆するカバー112とを有する。このカバー112の表面には、多数のディンプル114が形成されている。このゴルフボールの表面のうち、ディンプル114以外の部分は、ランド116である。このゴルフボールは、カバーの外側にペイント層およびマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
【0136】
本発明のゴルフボールとしては、例えば、単層コアと、前記単層コアを被覆するように配設された単層の中間層と、前記中間層を被覆するように配設された単層のカバーとからなるスリーピースゴルフボール;単層コアと、前記単層コアを被覆するように配設された2層の中間層と、前記中間層を被覆するように配設された単層のカバーとからなるフォーピースゴルフボール;単層コアと、前記単層コアを被覆するように配設された3層以上の中間層と、前記中間層を被覆するように配設された単層のカバーとからなるファイブピース以上のマルチピースゴルフボールなどを挙げることができる。上記いずれの構造のゴルフボールにも本発明を好適に利用できる。
【0137】
本発明のゴルフボールの直径は、40mmから45mmが好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。また、本発明のゴルフボールの質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
【0138】
本発明のゴルフボールは、直径40mm~45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)は、2.0mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.3mm以上、さらに好ましくは2.5mm以上であり、4.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは3.8mm以下、さらに好ましくは3.5mm以下である。前記圧縮変形量が2.0mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、圧縮変形量を4.0mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
【実施例
【0139】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0140】
[評価方法]
(1)圧縮変形量
コアまたはゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にコアまたはゴルフボールが縮む量)を測定した。
【0141】
(2)コア硬度(ショアC硬度)
自動硬度計(H.バーレイス社製、デジテストII)を用いて、コア硬度を測定した。検出器は、「Shore C」を用いた。コアの表面部において測定した硬度をコア表面硬度とした。また、コアを半球状に切断し、切断面の中心において硬度を測定した。
【0142】
(3)スラブ硬度(ショアD硬度)
中間層用組成物またはカバー用組成物を加熱プレスするにより、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、自動硬度計(H.バーレイス社製、デジテストII)を用いて硬度を測定した。検出器は、「Shore D」を用いた。
【0143】
(4)スピン量および飛距離
ゴルフラボラトリー社製のスイングマシンに、5番アイアン(ダンロップスポーツ社製、商品名「XXIO FORGED」、シャフト硬度:S、ロフト角:24°)を取り付け、ヘッドスピード40m/秒でゴルフボールを打撃し、打撃直後のゴルフボールのスピン量、ならびに飛距離(発射始点から静止地点までの距離)を測定した。測定は、各ゴルフボールについて12回ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの測定値とした。なお、打撃直後のゴルフボールのスピン量は、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによって測定した。
【0144】
(5)打球感
プレーヤー20人により、5番アイアンを用いた実打テストを行って、打撃時のフィーリングがソフトであると回答したプレーヤーの人数に基づいて、下記基準により打球感へ格付けを行った。
評価基準
◎:16名以上
○:10名以上、15名以下
△:3名以上、9名以下
×:2名以下
【0145】
[ゴルフボールの作製]
(1)コアの作製
表1に示す配合のゴム組成物を混練ロールにより混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で170℃、20分間加熱プレスすることにより直径38.6mmの球状コアを得た。なお、硫酸バリウムは、得られるゴルフボールの質量が、45.6gとなるように適量加えた。
【0146】
【表1】
【0147】
表1で用いた材料は下記の通りである。
ポリブタジエン:JSR社製ハイシスポリブタジエンゴムBR730(シス-1,4-結合含有量=95質量%、1,2-ビニル結合含有量=1.3質量%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))=55、分子量分布(Mw/Mn)=3)
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製「銀嶺R」
アクリル酸亜鉛:日触テクノファインケミカル社製ZN-DA90S
硫酸バリウム:堺化学社製「硫酸バリウムBD」
PBDS:川口化学工業社製ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド
ジクミルパーオキサイド:東京化成工業社製
TP2019(SylvaresTP2019):KRATON社製ピネン・フェノール共重合体(軟化点:125℃)
【0148】
(2)中間層用組成物およびカバー用組成物の調製
表2に示した配合の材料を二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状の樹脂組成物(中間層用組成物またはカバー用組成物)を調製した。押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160~240℃に加熱された。
【0149】
【表2】
【0150】
表2で用いた材料は以下の通りである。
ハイミランAM7337:三井・デュポンポリケミカル社製、ナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
ハイミランAM7329:三井・デュポンポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
ハイミラン1605:三井・デュポンポリケミカル社製、ナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
ハイミラン1555:三井・デュポンポリケミカル社製、ナトリウムイオン中和エチレン-アクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
ハイミラン1557:三井・デュポンポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
サーリン8150:デュポン社製、ナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
サーリン9150:デュポン社製、亜鉛イオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂
ポリアミド6:東レ社製
テファブロックT3221C:三菱化学社製、熱可塑性スチレン系エラストマー
二酸化チタン:石原産業社製、「A-220」
JF-90:城北化学社製、光安定剤
【0151】
(3)ゴルフボールの作製
前記中間層用組成物を上述のようにして得られた球状コア上に射出成形して、中間層被覆球体を得た。得られた中間層被覆球体を、キャビティ面に多数のディンプルを備えたファイナル金型に投入し、前記カバー用組成物を、ファイナル金型に投入した中間層被覆球体上に射出成形して、カバーにはキャビティ面のディンプルの形状が反転した形状のディンプルが多数形成されたゴルフボールを得た。得られたゴルフボールについて評価した結果を、表3に示した。
【0152】
【表3】
【0153】
表3に示すように、コアと、前記コアを被覆する少なくとも一層の中間層と、前記中間層を被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記コアは、(a)ポリブタジエンを含有する基材ゴム、(b)共架橋剤として炭素数が3~8のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩、(c)架橋開始剤、および(d)テルペン系樹脂を含有するコア用ゴム組成物から形成されており、前記中間層の材料硬度(Hm)が、前記カバーの材料硬度(Hc)よりも高く、且つ前記カバーの材料硬度(Hc)がショアD硬度で50以上である本発明のゴルフボールは、いずれもロングアイアンショットでの飛距離が大きく、打球感も良好である。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明のゴルフボールは、ロングアイアンショットでの飛距離が大きく、打球感も良好である。
【符号の説明】
【0155】
2:ゴルフボール、104:球状コア、106:中間層、112:カバー、114:ディンプル、116:ランド
図1