(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】端子盤用増設ユニット
(51)【国際特許分類】
H01R 9/00 20060101AFI20230905BHJP
【FI】
H01R9/00 A
(21)【出願番号】P 2019013124
(22)【出願日】2019-01-29
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 努
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-042955(JP,A)
【文献】実開昭62-078003(JP,U)
【文献】特開2018-041654(JP,A)
【文献】実開昭55-082005(JP,U)
【文献】特開2018-133465(JP,A)
【文献】実開昭59-84829(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/00
H01R 9/15- 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端子を有する既設端子台が上下方向に延びて配設された端子盤に、複数の端子を有する新設端子台を増設するための端子盤用増設ユニットであって、
前記既設端子台の前方でかつ上方に略水平方向に延びて配設される第1のガイド部材と、
前記既設端子台の前方でかつ下方に略水平方向に延びて配設される第2のガイド部材と、
上下方向に延びて前記新設端子台を配設可能で、前記第1のガイド部材と前記第2のガイド部材に対してスライド自在に取り付けられる端子台配設部材と、を備え、
前記第1のガイド部材と前記第2のガイド部材にその長手方向に伸びる長孔が複数形成され、且つ、前記端子台配設部材にその長手方向に延びる長孔が複数形成されることによって、前記端子盤に対する増設位置を上下方向および左右方向に調節自在となっており、
前記端子盤の側壁に前記第1のガイド部材と前記第2のガイド部材とを固定することによって取り付けられる、
ことを特徴とする端子盤用増設ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多数の端子台の収容する配電盤、分電盤、制御盤等の既設の端子盤に、新設の端子台を増設するできる端子盤用増設ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電気設備には、高圧主回路機器、各種制御器具、リレー、スイッチ、回路遮断機、計器、ヒューズなどの機器があり、これら機器間、或いはこれら機器を中継接続したり、外部配線ケーブルと電気設備内配線ケーブルとを中継接続したりするための端子台がある。
【0003】
端子台は、配線ケーブルの各接続端が着脱可能に取り付けられ、この取付により所望の配線ケーブルの接続を行う複数個の端子部材を有し、これら端子部材が相互間を電気的に絶縁した状態で並列的に隣接配置した構造をしている(特許文献1)。
【0004】
このような端子台は、電気所内において作業性、メンテナンスなどを考慮して、1箇所にまとめた端子盤に集められ、コンパクト化が求められているため、比較的狭い収容スペース内に多数の端子台を収容する必要性が生じている。
【0005】
一方、作業者が端子台にアクセスしやすいように、また、配線ケーブルの接続作業やメンテナンス等の各種作業を行い易いように、収容スペース内に整列して配置するなどの工夫もされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、電気設備の機能向上に伴い、電気設備の増設や回線の増加などがあった場合など、端子盤に端子台を増設したい場合がある。
【0008】
このようなとき、上記のような端子盤にあっては、端子盤内のうち、既設端子台の前方に新設端子台を配設することが考えられるが、既設端子台の前方に新設端子台を配設してしまうと、既設端子台が新設端子台の後方に位置されてしまうため、既設端子台へのアクセルが悪くなり、メンテナンス性、作業性などが悪化してしまうという問題があった。
【0009】
そこで本発明は、上記課題を解決するために、既設端子台の前方に増設される新設端子台をスライド可能に配設する端子盤用増設ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、複数の端子を有する既設端子台が上下方向に延びて配設された端子盤に、複数の端子を有する新設端子台を増設するための端子盤用増設ユニットであって、前記既設端子台の前方でかつ上方に略水平方向に延びて配設される第1のガイド部材と、前記既設端子台の前方でかつ下方に略水平方向に延びて配設される第2のガイド部材と、上下方向に延びて前記新設端子台を配設可能で、前記第1のガイド部材と前記第2のガイド部材に対してスライド自在に取り付けられる端子台配設部材と、を備え、前記第1のガイド部材と前記第2のガイド部材にその長手方向に伸びる長孔が複数形成され、且つ、前記端子台配設部材にその長手方向に延びる長孔が複数形成されることによって、前記端子盤に対する増設位置を上下方向および左右方向に調節自在となっており、前記端子盤の側壁に前記第1のガイド部材と前記第2のガイド部材とを固定することによって取り付けられる、ことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、前方に配設する新設端子台が左右方向にスライドする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、既設端子台の前方に配設される新設端子台を左右方向にスライド自在にしたので、既設端子台の前方に新設端子台が配設されていても、新設端子台を左右方向にスライドさせることで、後方に位置する既設端子台が新設端子台に隠れることなく露出させることで、既設端子台が見やすくなり、ケーブル接続等の作業や点検などを効率的に行うことができる。さらに、作業性などを低下させることなく、端子台の収容数を増加することもできる。しかも、ユニットになっているため、既存の端子盤に本端子盤用増設ユニットを取り付けるだけで、作業性や点検性などを損なうことなく、容易に新設端子台を増設することが可能となる。
【0014】
また、請求項1の発明において、新設端子台の配設位置を上下方向に調整自在にしたので、後方に配設された既設端子台の前方のスペースを作業状況に合わせて適切な位置で確保することができ、新設端子台の増設に伴う既設端子台の作業性の悪化をさらに軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図2及び
図3とともにこの発明の実施の形態を示すもので、本図は全体の概略を示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図である。
【
図2】既設端子台が収容された端子盤にこの発明の実施の形態に係る増設ユニットに取付けた新設端子台をほぼ中央部に収容したもので、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【
図3】
図2の状態から新設端子台を左方へ移動した状態を示すもので、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【
図4】既設端子台が収容された端子盤を示すもので、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0017】
(実施の形態)
図1~
図3は、この実施の形態に係る増設ユニット10を示すもので、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図である。また、
図2及び
図3は、既設の端子盤内に新設端子台を取付けた増設ユニットを増設した状態を示すものである。
【0018】
具体的には、
図2は新設端子台を端子盤1内の左右方向のほぼ中央部に配置したもので、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【0019】
また、
図3は新設端子台を端子盤1内の左方にややずらせた位置に配置したもので、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【0020】
なお、本発明の実施の形態に係る増設ユニット10を説明する前に、既設端子盤について説明し、その後、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
また、この発明は、端子盤、端子台などに関するものであるため、本来、端子に接続される電線、ケーブルといった部材があるはずであるが、図面の見易さを優先してこれら電線、ケーブルの類については図示を省略する。
【0022】
先ず、
図4は2つの端子台が組み込まれた既設の端子盤を示すものであり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【0023】
端子盤収容スペース1内に、複数の端子6、6、…を有する端子台5が上下方向に延びて配設される。
【0024】
端子盤の左右側壁1R、1Lには支持柱2、2が設けられ、これら2本の支持柱2、2には、ほぼ水平方向に延びる支持梁3、3が上下に離間してそれぞれ配設されている。
図4(b)においては左右側壁の一部を記す。
【0025】
また、前記支持柱2、2の端子盤の左右側壁1R、1Lへの固定手段については図示を省略したが、例えば、ボルト、ナットやタッピングビスが考えられる。また、支持梁3、3の支持柱2、2への固定手段も図示は省略したが、同様に例えば、ボルト、ナットやタッピングビスが考えられる。
【0026】
なお、
図2~4では、図面をわかりやすくするために、ボルトの一部については図示を省略した部分もある。
【0027】
前記端子台5は、多数の端子6、6、…が左右2列で上下方向に延びるようには整列され、このような端子台5は上下に延びる端子台配設部材4に貼着され、端子台配設部材4の上下端部が前記支持梁3、3にボルトとナットで固定されている。
【0028】
このような端子台5は、
図4において2つ図示しているが、実際にはもっと多数の端子台5、5、…が端子盤収容スペース1内に配設され、既設の端子台5、5、…として配設されている。
【0029】
次に、この発明の実施の形態に係る端子盤用増設ユニット10について説明する(
図1参照)。
【0030】
増設ユニット10は、上方に略水平方向に延びて配設される第1のガイド部材11と、下方に略水平方向に延びて配設される第2のガイド部材12と、前記第1のガイド部材11と前記第2のガイド部材12に取り付けられる端子台配設部材13と、から成る。
【0031】
前記第1のガイド部材11及び前記第2のガイド部材12にはその長手方向に延びる長孔11a、11a、…、12a、12a、…が複数形成されており、前記端子台配設部材13は、その上下端部において第1のガイド部材11の長孔11a、第2のガイド部材12の長孔12aとそれぞれボルトとナットで結合され、ほぼ垂直方向に延びるように配設されている。
【0032】
これにより、前記ボルトとナットを緩めることにより、端子台配設部材13を左右方向にスライド自在になっている。
【0033】
また、端子台配設部材13にもその長手方向に延びる長孔13a、13a、…が形成されており、これは、後述する新設の端子台15の背面に設けられたボルト(図示は省略する)が貫通しナット(図示は省略する)によって取り付けられ、このボルト、ナットを緩めることにより端子台15が端子台配設部材13に対して上下方向に配設位置を調整自在とするためである。なお、端子台15が端子台配設部材13に対して上下方向に配設位置を調整自在にする構造としては、上記長孔13aに限らず、端子台配設部材13を適宜な位置で把持できる把持手段を端子台15に設けるようにしても良い。
【0034】
左右側壁1R、1Lの前記支持柱2、2よりも前方に寄った位置に、これら支持柱2、2とほぼ同じ支持柱14、14が設けられており、これら2本の支持柱14、14に、増設ユニット10の前記第1のガイド部材11、第2のガイド部材12がそれぞれ取り付けられている。なお、第1のガイド部材11、第2のガイド部材12の固定に関し、上述のような支持柱14、14は用いず、側壁1R、1Lに直接取り付けるようにしても良い。
【0035】
このようにして、増設ユニット10は端子盤収容スペース1の前記既設端子台5、5よりも前方の位置に配設され、上述のように、増設ユニット10に取り付けられた新設端子台15は、第1のガイド部材11及び第2のガイド部材12に対して左右方向にスライド自在にでき、また、端子台配設部材13に対して上下方向の配設位置を調整自在になっている。
【0036】
新設端子台15にも上記既設端子台5と同様に、多数の端子16、16、…が左右2列で上下方向に延びるようには整列されている。
【0037】
図2、
図3は、この実施の形態に係る増設ユニット10を用いて新設端子台15を既設の端子盤収容スペース1に配設したもので、
図2は、新設端子台15を2つの既設端子台5、5の前方であって左右方向のほぼ中央部に位置させた状態を示す。また、
図3は
図2の状態から新設端子台15を左方にスライドさせた状態を示す。
【0038】
このように新設端子台15を左方はスライドさせることにより、その後方に位置する既設端子台5、5のうち右側の端子台5の前方に大きなスペースができ、その分、右側端子台5に対して作業性を良好にすることができる。しかも、ユニットになっているため、既存の端子盤に本端子盤用増設ユニット10を取り付けるだけで、作業性や点検性などを損なうことなく、容易に新設端子台15を増設することが可能となる。
【0039】
なお、図示は省略したが、上述のように、新設端子台15を端子台配設部材13に対して上下方向に配設位置を調整自在にしたため、左右方向にスライド自在にしたことに加えて、さらに既設端子台の作業状況に合わせて適切な作業スペースの位置確保することができる。
【0040】
このような新設端子台15の端子16、16、…に接続する電線、ケーブル等は、新設端子台15が左右方向、或いは上下方向の配設位置を調整自在にしているため、ある程度余長があるようにすると良い。これにより、新設端子台15をスライド、位置調整したとき、電線、ケーブルにテンションが掛かったり、断線したりする事故を防止することができる。
【0041】
また、各図において、支持柱2と支持梁3、支持柱14とガイド部材11、12は、実際にはボルトとナットとにより固定されているが、図面ではその図示を省略した。
【0042】
さらにまた、このような固定手段はボルトとナットに限らず、既知の結合手段、例えば一方の部材に小孔を設け他方の部材にはネジ挿通孔を設けこの他方の部材側からタッピングネジを通して一方の部材の小孔に締め込むようにしても良い。
【0043】
これら第1のガイド部材11、第2のガイド部材12および端子台配設部材13は断面コ字状のチャンネル材からなり、強度、剛性を高めている。もちろん、この発明増設ユニット10を構成する各部材11、12、13などはコ字状のチャンネル材に限る必要はなく、当該位置に配設され、使用に供される強度があれば良い。
【0044】
以上、この発明の各実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、一方の部材が他方の部材に対してスライド自在にする手段として、長孔とボルト、ナットとによる結合手段を示したが、これに限らず、一方の部材に他方の部材を把持する把持手段を設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 端子盤
5 既設端子台
6 端子
10 端子盤用増設ユニット
11 第1のガイド部材
12 第2のガイド部材
13 端子台配設部材
15 新設端子台
16 端子