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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】描画装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230905BHJP
   A45D 29/00 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
B41J2/01 301
A45D29/00
B41J2/01 451
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019035863
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020138437
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】堀 雅弘
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-56464(JP,A)
【文献】特開2004-188701(JP,A)
【文献】特開平9-327905(JP,A)
【文献】特開2014-69410(JP,A)
【文献】特開2011-879(JP,A)
【文献】特開2009-45912(JP,A)
【文献】特開平9-136424(JP,A)
【文献】特開2009-196253(JP,A)
【文献】特開平11-179891(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102514400(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
A45D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子及び受光素子を有し、一方向に搬送されたインクジェットヘッドの前記一方向の原点に関する位置を検出する位置センサと、
モータと、
前記モータの回転によって回転する駆動プーリーと、
従動プーリーと、
前記駆動プーリーと前記従動プーリーに架け渡された環状のベルトと、
前記ベルトが形成する環内に突出する突出部と、
前記インクジェットヘッドを前記一方向に搬送するキャリッジと、
を備え、
前記位置センサは、搬送される前記インクジェットヘッドのノズル面より高い位置に前記発光素子と前記受光素子が位置するように設置され、且つ、前記モータが回転することで前記インクジェットヘッドとともに前記環内を前記一方向へ移動し、
前記位置センサと前記インクジェットヘッドとの間には、前記キャリッジの側面に設けられた側面板が介在している、
ことを特徴とする描画装置。
【請求項2】
発光素子及び受光素子を有し、一方向に搬送されたインクジェットヘッドの前記一方向の原点に関する位置を検出する位置センサと、
モータと、
前記モータの回転によって回転する駆動プーリーと、
従動プーリーと、
前記駆動プーリーと前記従動プーリーに架け渡された環状のベルトと、
前記ベルトが形成する環内に突出する突出部と、
を備え、
前記位置センサは、搬送される前記インクジェットヘッドのノズル面より高い位置に前記発光素子と前記受光素子が位置するように設置され、且つ、前記モータが回転することで前記インクジェットヘッドとともに前記環内を前記一方向へ移動
前記位置センサと前記インクジェットヘッドとの間には、ベースに固定されたフレームが介在している、
ことを特徴とする描画装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の描画装置において、
前記位置センサは、前記インクジェットヘッドが搬送可能な搬送可能領域外に設けられている、
ことを特徴とする描画装置。
【請求項4】
請求項2に記載の描画装置において、
前記フレームは、前記位置センサと前記インクジェットヘッドとの間に、前記位置センサ側に傾いた補助フレームが設けられている、
ことを特徴とする描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、描画装置に関し、特に、インクジェット方式の描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
爪又はネイルチップに様々なデザインを描くインクジェット型の描画装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
描画装置は、描画装置に固定された指の爪に対して移動するインクジェットヘッドを備えている。描画装置は、インクジェットヘッドの位置を高精度で制御することで、所望のデザインを正確に描くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-56452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、描画装置の位置制御には、光学式のセンサを用いることがある。しかしながら、インクジェット型の描画装置では、インクジェットヘッドから吐出されたインクの一部が霧状になって描画装置内で拡散してしまうことがある。このため、光学式のセンサの発光面や受光面がインクで汚れてしまうことがあり、その場合、位置検出が妨げられてしまう。
【0006】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る利点は、描画装置の良好な動作を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る描画装置は、
発光素子及び受光素子を有し、一方向に搬送されたインクジェットヘッドの前記一方向の原点に関する位置を検出する位置センサと、
モータと、
前記モータの回転によって回転する駆動プーリーと、
従動プーリーと、
前記駆動プーリーと前記従動プーリーに架け渡された環状のベルトと、
前記ベルトが形成する環内に突出する突出部と、
前記インクジェットヘッドを前記一方向に搬送するキャリッジと、
を備え、
前記位置センサは、搬送される前記インクジェットヘッドのノズル面より高い位置に前記発光素子と前記受光素子が位置するように設置され、且つ、前記モータが回転することで前記インクジェットヘッドとともに前記環内を前記一方向へ移動し、
前記位置センサと前記インクジェットヘッドとの間には、前記キャリッジの側面に設けられた側面板が介在している
【0008】
本発明の別の態様に係る描画装置は、
発光素子及び受光素子を有し、一方向に搬送されたインクジェットヘッドの前記一方向の原点に関する位置を検出する位置センサと、
モータと、
前記モータの回転によって回転する駆動プーリーと、
従動プーリーと、
前記駆動プーリーと前記従動プーリーに架け渡された環状のベルトと、
前記ベルトが形成する環内に突出する突出部と、
を備え、
前記位置センサは、搬送される前記インクジェットヘッドのノズル面より高い位置に前記発光素子と前記受光素子が位置するように設置され、且つ、前記モータが回転することで前記インクジェットヘッドとともに前記環内を前記一方向へ移動
前記位置センサと前記インクジェットヘッドとの間には、ベースに固定されたフレームが介在している。
【発明の効果】
【0009】
上記の態様によれば、描画装置の良好な動作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る描画装置1の外観形状を示す図である。
図2】筐体上部を外したときの描画装置1の斜視図である。
図3図2に示す斜視図とは異なる角度から見たときの描画装置1の斜視図である。
図4】ホーム位置、ワイプ位置、パージ位置、描画位置を示した図である。
図5】描画装置1の機能構成図である。
図6】描画装置1で行われる処理の流れを示すフローチャートである。
図7】描画装置1の原点センサユニット23付近を拡大した拡大斜視図である。
図8】描画装置1のXZ断面における断面図である。
図9】原点センサユニット23とノズル面52の高さ関係を説明する図である。
図10】描画装置1の一部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態に係る描画装置1の外観形状を示す図である。図1に示す描画装置1は、インクジェット方式の描画装置である。以降では、描画装置1が爪や爪に装着されるネイルチップにデザインを描くネイルプリンタである場合を例に説明するが、描画装置1は、インクジェット方式の描画装置であればよく、描画対象物は爪やネイルチップに限らない。なお、以降では、爪やネイルチップに描画するデザインをネイルデザインと記す。
【0012】
描画装置1は、図1に示すように、ボックス形状を有するコンパクトな装置であり、筐体2の前面に指を入れるための開口3が形成されている。開口3内には、指を置くための指置き台3aが設けられている。また、描画装置1は、筐体2の上面に、ネイルデザイン等を選択するためのディスプレイ4を備えている。なお描画装置1は、スマートフォン等のディスプレイを備えた外部電子機器からネイルデザインのデータを受信することでネイルデザインを描画する場合、必ずしもディスプレイ4を備える必要はない。
【0013】
ディスプレイ4は、液晶ディスプレイであっても、有機エレクトロルミネッセンス(OLE)ディスプレイであってもよい。また、ディスプレイ4は、タッチパネルを含んでもよく、表示機能に加えて入力機能を備えてもよい。
【0014】
なお、本明細書では、描画装置1に開口3が形成されている面を正面と定義する。また、図1に示すようにXYZ直交座標系を定義し、必要に応じて、互いに直交するX方向を副走査方向、Y方向を主走査方向、Z方向を高さ方向とも記す。
【0015】
図2及び図3は、筐体2上部を外したときの描画装置1の斜視図であり、それぞれ異なる角度から描画装置1を見た図である。図4は、ホーム位置P1、ワイプ位置P2、パージ位置P3、爪を描画する描画位置P4、モータ8等によってインクジェットヘッド51を搬送可能な領域を示す搬送可能領域30(点線で囲まれた領域)、後述するインクジェットヘッド51におけるY方向の位置情報を検出する位置センサ22(発光素子22c及び受光素子22d)の移動可能領域34(一点鎖線で囲まれた領域)を示した図である。図2及び図3に示すように、描画装置1は、インクジェットヘッド51をX方向に搬送するキャリッジ15と、インクジェットヘッド51をY方向に搬送するキャリッジ14を備えている。なお、インクカートリッジ50は、インクジェットヘッド51(図5及び図9参照)に取り付けられているため、キャリッジ14とキャリッジ15は、それぞれインクジェットヘッド51をインクカートリッジ50とともに一軸方向に搬送するキャリッジである。以下では、インクジェットヘッド51を搬送するキャリッジの動作に注目して描画装置1の構造を説明する。なお、インクカートリッジ50はインクジェットヘッド51と分離されていてもよい。
【0016】
描画装置1の筐体2は、ベース5の正面中央部分に開口3を有し、開口3内には、指置き台3aが設けられている。図2及び図3において取り外れている筐体2上部には、図示しない撮影装置が設けられている。撮影装置は、指置き台3aに置かれた指を上方から撮影することで、爪領域の特定等に用いられる爪の画像を取得する。
【0017】
描画装置1は、Y方向に沿って延びる2つのフレーム(フレーム6a、フレーム6b)を備えている。フレーム6a及びフレーム6bは、YZ面に沿って略起立するようにベース5に固定されていて、フレーム6a及びフレーム6bには、Y方向に沿って延びるガイドシャフト(ガイドシャフト20a、ガイドシャフト20b)が固定されている。キャリッジ14の両側面には、図示しない貫通孔が形成された挿通部が設けられていて、ガイドシャフト20a及びガイドシャフト20bはそれらの挿通部に通されている。このような構造によって、フレーム6a及びフレーム6bは、キャリッジ14を、ガイドシャフト20a及びガイドシャフト20bを介して支持している。開口3に対して右側に位置するフレーム6aは、図2に示すように、後述するベルト7aよりも上方の位置で外側(右側)に折れ曲がるように傾いている補助フレーム6cを有し、同様に、開口3に対して左側に位置するフレーム6bは、図3図10に示すように、ベース5にネジ35で固定されている。フレーム6bは、後述するベルト7bよりも上方の位置で位置センサ22側(左側)に折れ曲がるように傾いている補助フレーム6dを有する。描画装置1の手前側に位置するとともに外側(右側)に突出した支持部25がベース5にネジ37で固定されており、描画装置1の手前側に位置するとともに外側(左側)に突出した支持部26がベース5にネジ36で固定されている。
【0018】
フレーム6a及びフレーム6bは、描画装置1の後端付近において、シャフト19を軸支している。シャフト19の両端には歯ありプーリー9a及び歯ありプーリー9bが取り付けられている。歯ありプーリー9aは、フレーム6aの前端付近に設けられた歯なしプーリー10aと対をなしている。歯ありプーリー9aと歯なしプーリー10aには、スプリング12aによって適度に張力が与えられた状態で、環状のベルト7aが架け渡されている。同様に、歯ありプーリー9bは、フレーム6bの前端付近に設けられた歯なしプーリー10bと対をなしている。歯ありプーリー9bと歯なしプーリー10bには、スプリング12bによって適度に張力が与えられた状態で、環状のベルト7bが架け渡されている。なお、プーリーホルダー11a、プーリーホルダー11bは、それぞれ、歯なしプーリー10a、歯なしプーリー10bのホルダであり、フレーム6a、フレーム6bに固定されている。
【0019】
歯ありプーリー9aは、モータ8の回転により駆動する駆動プーリーであり、歯ありプーリー9b、歯なしプーリー10a及び歯なしプーリー10bは、従動プーリーである。モータ8との間に設けられた歯車列によってモータ8の回転をより低速な回転に変換することにより、モータ8から十分なトルクが歯ありプーリー9aに伝達される。
【0020】
なお、モータ8は、例えば、ステッピングモータであるが、例えば、DCモータなどのその他のモータが使用されてもよい。
【0021】
ベルト7a及びベルト7bには、それぞれベルトクリップ13a及びベルトクリップ13bを介してキャリッジ14が固定されている。そのため、歯ありプーリー9aと、歯ありプーリー9aにシャフト19を介して接続されている歯ありプーリー9bとが、モータ8の回転によって回転することで、ベルト7a及びベルト7bがキャリッジ14をY方向に搬送する。その結果、キャリッジ14がインクジェットヘッド51をY方向に搬送する。
【0022】
キャリッジ14は、X方向に沿って延びるガイドシャフト16を備えていて、ガイドシャフト16を介してキャリッジ15を支持している。具体的には、キャリッジ15には、キャリッジ15の背面部分に図示しない貫通孔が形成された挿通部が設けられていて、ガイドシャフト16がその挿通部に通されている。ガイドシャフト16は、その一端がキャリッジ14の側面板14aに固定されている。
【0023】
キャリッジ14には、図示しないモータと一対のプーリーが設けられている。さらに、キャリッジ14は、モータの回転により循環移動する、一対のプーリーに架け渡されたベルト18を備えている。ベルト18にはキャリッジ15が固定されているため、モータの回転により、プーリーが回転することで、ベルト18がキャリッジ15をX方向に搬送する。その結果、キャリッジ15がインクジェットヘッド51をX方向に搬送する。
【0024】
なお、図示しないモータは、例えば、DCモータであるが、例えば、ステッピングモータなどのその他のモータが使用されてもよい。また、ガイドシャフト16とベルト18の間に設けられたフィルム17は、X方向に沿って光を透過するパターン(透過部)と光を透過しないパターン(遮光部)が一定の間隔で並んだフィルムであり、クローズドループ制御のため、キャリッジ15のX方向への変位を検出するエンコーダの一部を構成している。インクジェットヘッド51のX方向の移動をオープンループ制御する場合、エンコーダは不要となる。
【0025】
以上のように構成された描画装置1では、モータの駆動により、インクジェットヘッド51をX方向とY方向に独立して搬送することができる。従って、描画装置1は、インクジェットヘッド51を、例えば図4の矢印に示すように、ホーム位置P1、パージ位置P3、ワイプ位置P2及び描画位置P4に、適宜搬送して、必要な動作を行うことができる。さらに、描画装置1は、Y方向の位置制御にステッピングモータを用いたオープンループ制御を採用することで、インクジェットヘッド51をY方向に正確に移動することができ、X方向の位置制御にDCモータとエンコーダを用いたクローズドループ制御を採用することで、Y方向の移動速度に比べて高速にインクジェットヘッド51をX方向に移動しながら速やかな描画が可能となる。
【0026】
ホーム位置P1は、インクジェットヘッド51のノズル面52(図9参照)が図2に示すキャップ40でキャッピングされる位置である。ノズル面52の乾燥を抑制することができるため、ホーム位置P1は、描画装置1の不使用時におけるインクジェットヘッド51の待機位置として使用される。ワイプ位置P2は、ノズル面52を図示しないワイプ部材でワイプする位置である。ノズル面52をワイプ部材に接触させてノズル面52に残ったインクをワイプ部材に付着させて取り除くことでノズル面52の表面でのインクの固着を抑制することができるため、インクジェットヘッド51をメンテナンスするメンテナンス位置の一つとして使用される。パージ位置P3は、インクジェットヘッド51から廃インクタンク41(図8参照)へインクを強制的に吐出する位置である。描画完了後に不要に残ったインクや描画開始前のインクを強制的に吐出することでノズル内の目詰まりを防止できるため、インクジェットヘッド51をメンテナンスするメンテナンス位置の一つとして使用される。描画位置P4は、描画処理を開始する位置である。
【0027】
図5は、描画装置1の機能構成図である。図6は、描画装置1で行われる処理の流れを示すフローチャートである。以下、図5及び図6を参照しながら、電源投入後の初期化処理から描画処理までの、描画装置1で行われる基本的な処理について説明する。
【0028】
描画装置1は、図5に示すように、制御部100と、表示部110と、操作部120と、撮影部130と、描画部140と、位置検出部150を備えている。描画装置1は、制御部100がプログラムを実行することにより、図6に示す処理を行う。
【0029】
制御部100は、描画装置1の動作を制御する。制御部100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの処理回路と、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などの記憶回路を含む電子回路であり、1つ以上の制御基板上に構成される。表示部110は、例えば、上述したディスプレイ4を含み、ネイルデザインなどを表示する。操作部120は、例えば、上述したディスプレイ4に設けられたタッチパネルを含み、ネイルデザインの選択等に使用される。撮影部130は、例えば、上述した撮影装置を含み、爪の画像を取得する。描画部140は、例えば、上述したインクジェットヘッド51とインクジェットヘッド51を搬送する機構とを含み、インクジェットヘッド51を制御して、インクカートリッジ50から供給されるインクを吐出することで所望のネイルデザインを描画する。位置検出部150は、例えば、上述したエンコーダや後述する原点センサを含み、インクジェットヘッド51の位置を検出する。
【0030】
描画装置1では、電源がONになると、図6に示す処理が開始される。描画装置1は、まず、初期化処理を行う(ステップS1)。電源投入直後、描画装置1は、インクジェットヘッド51の位置を知らない。このため、制御部100は、原点位置を検出するために描画部140にインクジェットヘッド51を搬送させ、位置検出部150からの出力に基づいて原点位置を検出する。原点位置を検出すると、制御部100は、描画部140にホーム位置P1までインクジェットヘッド51を搬送させて、インクジェットヘッド51をキャッピングする。
【0031】
次に、描画装置1の利用者によってネイルデザインが選択されると、描画装置1は、利用者の爪を撮影する(ステップS2)。ここでは、制御部100は、撮影部130に撮影指示を出力し、撮影部130に指置き台3aを置かれた指の爪を撮影させる。
【0032】
爪が撮影されると、描画装置1は、ネイルデザインを爪に描画するための画像データを生成する(ステップS3)。ここでは、制御部100は、ステップS2で取得した爪の画像に基づいて、爪の輪郭検出等を行い、爪のサイズ、形状といった爪の情報を生成する。さらに、制御部100は、爪の情報に基づいて、利用者が選択したネイルデザインの画像データを補正して、描画用の画像データを生成する。
【0033】
描画用の画像データが生成されると、描画装置1は、メンテナンス処理を行う(ステップS4)。ここでは、制御部100は、描画部140にインクジェットヘッド51をパージ位置P3、ワイプ位置P2に順に搬送させ、各位置でパージ処理、ワイプ処理を行う。その後、制御部100は、描画部140にインクジェットヘッド51を描画位置P4に搬送させる。
【0034】
最後に、描画装置1は、ネイルデザインを爪に描画する(ステップS5)。ここでは、制御部100は、ステップS3で生成した画像データに基づいて、インクジェットヘッド51を制御して、描画部140にネイルデザインを描画させる。ステップS1~ステップS5までインクジェットヘッド51は、常に搬送可能領域30内に配置されている。一方、位置センサ22は、インクジェットヘッド51がどの位置にいても搬送可能領域30外の移動可能領域34内に配置されている。このため、インクジェットヘッド51からのインクが位置センサ22の発光素子22cまたは受光素子22dに付着されにくいレイアウトとなっている。
【0035】
以上の処理を行うことで、描画装置1は、爪に利用者が選択した所望のネイルデザインを描画することができる。なお、所望のネイルデザインの描画は、インクジェットヘッド51の位置を正しく認識して位置制御を行うことによって実現される。そのためには、インクジェットヘッド51の位置の基準となる原点位置の検出が欠かせない。
【0036】
図7は、描画装置1の原点センサユニット23付近を拡大した拡大斜視図である。図8は、描画装置1のXZ断面における断面図であり、原点センサユニット23がXZ断面で切断された様子が示されている。図9は、原点センサユニット23の発光素子22c及び受光素子22dとノズル面52との高さ関係を説明する図である。図10は、描画装置1の一部を示す模式図である。以下、図7から図10を参照しながら、Y方向についての原点位置を検出する原点センサユニット23の配置について詳細に説明する。
【0037】
原点センサユニット23は、図7に示すように、基板21とフォトインタラプタを有する位置センサ22を含んでいる。基板21は、位置センサ22から出力される信号を処理する処理回路が構築された回路基板である。位置センサ22は、光学センサであり、図10に示すように、XZ面方向における断面形状が略U字状となっており、発光素子22cが設けられた発光面22aと、発光面22aからの光を受光する受光素子22dが設けられた受光面22bとを含んでいる。発光面22aには、例えばLEDなどの発光素子22cが設けられ、受光面22bには、例えばフォトダイオードなどの受光素子22dが設けられている。発光素子22c及び受光素子22dが互いに対向するように発光面22aと受光面22bは、ともに位置センサ22の内側の面同士になっている。なお図中、発光面22aが上面で受光面22bが下面となっているが逆でもよい。
【0038】
原点センサユニット23は、キャリッジ14に搬送されたインクジェットヘッド51のY方向の位置に応じた受光面22bでの受光量の変化に基づいて、Y方向の原点に関する位置を検出する。より具体的には、位置センサ22は、発光面22aの発光素子22cからの光を受光面22bの受光素子22dで受光する受光状態と、発光面22aの発光素子22cと受光面22bの受光素子22dの間で光が遮断されて受光素子22dが受光しない遮光状態と、の間での状態変化を検出することで、Y方向の原点に関する位置を検出する。なお受光状態と遮光状態との状態変化を検出した位置を、Y方向の原点位置としてもよいし、受光状態と遮光状態との状態変化を検出した位置に所定の座標値を加えてなる位置を、Y方向の原点位置としてもよい。
【0039】
原点センサユニット23は、図7に示すように、基板固定プレート21aを介してキャリッジ14の側面板14aの外側面に固定されている。基板固定プレート21aは、キャリッジ14の側面からインクジェットヘッド51の図4に示す搬送可能領域の外部へ向って延びていて、その搬送可能領域30の外部で原点センサユニット23を支持している。詳細には、基板固定プレート21aが基板21を支持し、位置センサ22が基板固定プレート21aに支持された基板21に取り付けられている。基板21に取り付けられた位置センサ22は、基板21の面のうちフレーム6aとフレーム6bに挟まれたフレーム内領域に近い面に取り付けられていて、ベルト7bが形成する環内に向かって突出している。
【0040】
支持部26の上端部は、図7及び図8に示すように、外向きに突出した第1突出部31と第2突出部32をなしている。第1突出部31及び第2突出部32は、外向きの突出量が互いに異なり、それらの境界には境界部33が形成されている。第1突出部31、第2突出部32及び境界部33は、ベルト7bが形成する環内に位置している。第1突出部31は、第2突出部32よりも大きく外向きに突出している部分であり、環内に突出した位置センサ22の発光面22aと受光面22bの間で光を遮断する遮光部として機能する。一方、第2突出部32は、第1突出部31よりも突出量が小さく切り欠いた形状となっており、発光面22aと受光面22bの間まで突出していないため、遮光部として機能しない。なお、図7において、第1突出部31は、第2突出部32よりも描画装置1の手前側に位置しているが、第2突出部32よりも描画装置1の奥側に位置していてもよい。この場合、受光状態と遮光状態との間での状態変化が図7と比べて逆になる。いずれの場合も、第2突出部32は必ずしも突出してなくても投光部として機能するので、第2突出部32は設けられなくてもよい。
【0041】
以上のように構成された描画装置1では、モータ8が回転すると、キャリッジ14に固定された原点センサユニット23は、キャリッジ14のY方向への移動に伴って、Y方向へ移動する。つまり、発光面22a及び受光面22bを含む位置センサ22は、ベルト7bの環内をY方向へ移動する。この際、原点センサユニット23が、発光面22aと受光面22bの間に第1突出部31が存在する領域から第1突出部31が存在しない領域へ、又は、第1突出部31が存在しない領域から第1突出部31が存在する領域へ移動すると、受光状態と遮光状態との間での状態変化が検出される。これにより、原点センサユニット23では、Y方向の原点に関する位置が検出される。つまり、境界部33の通過に基づいて原点センサユニット23はY方向の原点位置を検出することができる。
【0042】
さらに、発光面22aの発光素子22cと受光面22bの受光素子22dを含む原点センサユニット23の位置センサ22は、インクジェットヘッド51の位置や印刷状態にかかわらず、上述したように、キャリッジ14に固定された基板固定プレート21aによって、搬送可能領域30外の位置センサ22の移動可能領域34内に位置している。また、原点センサユニット23は、図9に示すように、インクジェットヘッド51のノズル面52よりも高い位置に発光面22a及び受光面22bがそれぞれ位置するように、設置されている。つまり、発光面22aに設けられた発光素子22c及び受光面22bに設けられた受光素子22dはインクジェットヘッド51のノズル面52よりも常に高い位置に配置されている。なお、図9に示すレベルL1は、受光面22bの高さを示し、レベルL2は、発光面22aの高さを示している。加えてX方向において、移動可能領域34に位置する位置センサ22と、搬送可能領域30に位置するインクジェットヘッド51との間には、常に位置センサ22を支持する側面板14aが介在し、側面板14aがインクジェットヘッド51から吐出されたインクの立体障害となるよう機能している。
【0043】
これにより、描画装置1では、インクジェットヘッド51から吐出されたインクが霧状になって描画装置1内に拡散した場合であっても、原点センサユニット23はインクジェットヘッド51から離れた位置に設置されていて、さらに、ノズル面52よりも高い位置に設置されているため、位置センサ22がインクで汚れてしまう可能性を小さくすることができる。従って、描画装置1によれば、原点センサユニット23が有効に機能するため、良好な動作を実現することができる。
【0044】
また、Y方向に沿って延びたフレーム6a、フレーム6b、補助フレーム6c、及び、補助フレーム6dは、インクジェットヘッド51から吐出し拡散した霧状のインクに対して壁となるため、フレーム6aとフレーム6bに挟まれたフレーム内領域の外部へのインクの流出が妨げられる。特に、フレーム6b、補助フレーム6d、さらに側面板14aは、搬送可能領域30内のインクジェットヘッド51と、搬送可能領域30とは重ならない移動可能領域34内の位置センサ22との間に介在するので位置センサ22は、霧状のインクに触れる可能性が小さくなる。そしてさらに、位置センサ22の発光素子22c、受光素子22dとの間の空間には、第1突出部31が介在することもあり、第1突出部31が立体障害となって、位置センサ22の発光素子22c、受光素子22dとの間の空間への霧状のインクの拡散を抑制できる。さらに、フレーム6bは、インクだけではなく、開口3から入射した外光に対しても壁として機能する。このため、原点センサユニット23が迷光に晒される可能性を低減することができるため、光学素子を有する原点センサユニット23がより確実に有効に機能する。従って、描画装置1によれば、良好な動作を実現することができる。
【0045】
また、描画装置1では、原点センサユニット23はキャリッジ14に固定されていて、フレーム6bに設けられた第1突出部31が遮光部として機能する。第1突出部31のY方向の長さは、ベルト7bのY方向の長さよりも短く、従って、インクジェットヘッド51の搬送可能領域30のY方向の長さよりも短い。このため、キャリッジ14が搬送可能領域30内をY方向への端から端まで移動すると、原点センサユニット23は、どこかで必ず境界部33を通過することになる。従って、描画装置1によれば、確実に原点位置を検出することができる。
【0046】
さらに、描画装置1では、ベルト7bの環内を位置センサ22の発光素子22c及び受光素子22dが移動し、ベルト7bの環内に突出した第1突出部31及び第2突出部32を含む支持部26は、ベース5にネジ止めされているので、境界部33は位置ずれを起こしにくいので、原点位置を高い精度で検出することができる。従って、描画装置1によれば、より正確な位置制御が可能となる。
【0047】
さらに、描画装置1では、位置センサ22は、基板21の面の内側(左側)に取り付けられている。このため、筐体2から外光が漏れて入射した場合であっても、基板21が遮光し、位置センサ22に外光が入射する可能性を低く抑えることができる。従って、原点センサユニット23がより有効に機能するため、良好な動作を実現することができる。
【0048】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。描画装置は、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0049】
上述した実施形態では、主走査方向(Y方向)の原点センサユニット23に注目したが、副走査方向の原点センサユニットにも同様に適用可能である。また、原点センサユニット23が位置センサ22を含む例を示したが、原点センサユニット23は、フォトリフレクタなどの他の光学センサを含んでもよい。また、原点センサユニット23は、受光面22bが遮光部の下側に位置する例を示したが、発光面22aが遮光部の下側に位置してもよい。
【0050】
また、上述した実施形態では、インクジェットヘッド一体型のインクカートリッジ50を用いる描画装置1を例示したが、インクジェットヘッド独立型のインクカートリッジが用いられてもよい。また、原点センサユニット23は、搬送可能領域30外であって、描画装置1が有するインクジェットヘッドノズル面よりも高い位置に受光面と発光面が位置するように、配置されればよい。
【0051】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
発光素子及び受光素子を有し、一方向に搬送されたインクジェットヘッドの前記一方向の原点に関する位置を検出する位置センサ、を備え、
前記位置センサは、搬送される前記インクジェットヘッドのノズル面より高い位置に前記発光素子と前記受光素子が位置するように、設置された
ことを特徴とする描画装置。
[付記2]
付記1に記載の描画装置において、
前記位置センサは、前記インクジェットヘッドが搬送可能な搬送可能領域外に設けられている
ことを特徴とする描画装置。
[付記3]
付記1又は付記2に記載の描画装置において、
前記インクジェットヘッドを一方向に搬送するキャリッジをさらに備え、
前記位置センサと前記インクジェットヘッドとの間には、前記キャリッジの側面に設けられた側面板が介在している
ことを特徴とする描画装置。
[付記4]
付記1乃至付記3のいずれかに記載の描画装置において、
前記位置センサと前記インクジェットヘッドとの間には、ベースに固定されたフレームが介在している
ことを特徴とする描画装置。
[付記5]
付記4に記載の描画装置において、
前記フレームは、前記位置センサと前記インクジェットヘッドとの間に、前記位置センサ側に傾いた補助フレームが設けられている
ことを特徴とする描画装置。
[付記6]
付記1乃至付記5のいずれかに記載の描画装置において、さらに、
モータと、
前記モータの回転によって回転する駆動プーリーと、
従動プーリーと、
前記駆動プーリーと前記従動プーリーに架け渡された環状のベルトと、
前記ベルトが形成する環内に突出する突出部と、を備え、
前記位置センサは、前記モータが回転することで前記インクジェットヘッドとともに前記環内を前記一方向へ移動する
ことを特徴とする描画装置。
[付記7]
一方向及び他方向に搬送され、インクを吐出するインクジェットヘッドと、
発光素子及び受光素子を有し、搬送された前記インクジェットヘッドの前記一方向の原点に関する位置を検出する位置センサと、を備え、
前記位置センサは、常に前記インクジェットヘッドのノズル面より高い位置に前記発光素子と前記受光素子が位置するように、設置された
ことを特徴とする描画装置。
【符号の説明】
【0052】
1 描画装置
2 筐体
3 開口
3a 指置き台
4 ディスプレイ
5 ベース
6a、6b フレーム
6c、6d 補助フレーム
7a、7b、18 ベルト
8 モータ
9a、9b 歯ありプーリー
10a、10b 歯なしプーリー
11a、11b プーリーホルダー
12a、12b プリング
13a、13b ベルトクリップ
14、15 キャリッジ
16、20a、20b ガイドシャフト
17 フィルム
19 シャフト
21 基板
21a 基板固定プレート
22 位置センサ
22a 発光面
22b 受光面
22c 発光素子
22d 受光素子
23 原点センサユニット
31 第1突出部
32 第2突出部
33 境界部
40 キャップ
41 廃インクタンク
50 インクカートリッジ
51 インクジェットヘッド
52 ノズル面
100 制御部
110 表示部
120 操作部
130 撮影部
140 描画部
150 位置検出部
L1、L2 レベル
P1 ホーム位置
P2 ワイプ位置
P3 パージ位置
P4 描画位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10