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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】硬貨処理装置及び自動取引装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/10 20190101AFI20230905BHJP
   G07D 9/00 20060101ALI20230905BHJP
   G07F 19/00 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
G07D11/10
G07D9/00 Z
G07F19/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019037824
(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公開番号】P2020140649
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-11-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 雄太
【審査官】永田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-75058(JP,U)
【文献】特開2001-307174(JP,A)
【文献】特開平6-36105(JP,A)
【文献】特開2014-71633(JP,A)
【文献】実開平5-12978(JP,U)
【文献】特開平9-212708(JP,A)
【文献】特開平4-152491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00-3/16,9/00-13/00,
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨を重ねて集積可能な筒状の収納空間を備えた筒収納部と、
前記収納空間内を移動可能であり前記硬貨が集積される載置面が形成されたステージと、
前記ステージを上昇させるよう制御することで、前記ステージに集積された前記硬貨を前記ステージの上昇中に前記収納空間の天井部衝突させることにより前記硬貨の姿勢を変化させる制御部と
を備える硬貨処理装置。
【請求項2】
前記ステージに集積された前記硬貨のうち、最上位の硬貨を検出する上面検知センサ
をさらに備え、
前記制御部は、前記上面検知センサが前記最上位の硬貨を検出すると、前記ステージを所定量下降させるよう制御する
請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記ステージを下降させる際、前記上面検知センサの検出結果に基づいて、少なくとも第1の速度と、前記第1の速度よりも速い第2の速度との何れかの速度で下降させる
請求項2に記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
外部から前記収納空間に前記硬貨を集積させる集積動作中において、前記上面検知センサが前記最上位の硬貨を所定時間以上検出し続けると、前記第2の速度で前記ステージを下降させる
請求項3に記載の硬貨処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記ステージを所定量下降させた後、前記上面検知センサが所定時間以上前記硬貨を検出し続けたか否かに基づいて、前記収納空間内での集積不良の発生を検出する
請求項4に記載の硬貨処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記上面検知センサにより集積不良の発生を検出すると、前記ステージを上昇させて前記収納空間の前記天井部に前記硬貨を接触させるよう制御する
請求項2乃至請求項5の何れかに記載の硬貨処理装置。
【請求項7】
前記天井部の下面側には凹凸が形成されている
請求項6に記載の硬貨処理装置。
【請求項8】
前記凹凸は、外部から前記収納空間に前記硬貨が投入される投入口である
請求項7に記載の硬貨処理装置。
【請求項9】
使用者の操作を受け付ける操作部と、
請求項1乃至請求項の何れかに記載の硬貨処理装置と
を有する自動取引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬貨処理装置及び自動取引装置に関し、例えば顧客に紙幣や硬貨を投入させて所望の取引を行う現金自動預払機(ATM:Automatic Teller Machine)に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関等で使用される現金自動預払機等においては、顧客との取引内容に応じて、例えば顧客に紙幣や硬貨等の現金を入金させ、また顧客へ現金を出金するものが広く普及している。
【0003】
この現金自動預払機としては、例えば硬貨に関する処理を行う硬貨処理装置を内部に有するものがある。硬貨処理装置は、例えば顧客との間で硬貨の授受を行う入出金部と、硬貨を搬送する搬送部と、投入された硬貨の金種や真偽等を識別する識別部(認識部とも呼ぶ)と、金種毎に硬貨を収納する収納部(スタッカ部とも呼ぶ)等を有するものが提案されている。
【0004】
そのような硬貨処理装置においては、スタッカ部に上方から硬貨を収納するものが提案されている。(例えば、特許文献1参照)。またそのような硬貨処理装置においては、スタッカ部に上方から硬貨を投下し、盤面が水平方向を向いた状態で積み重なるようにステージ上に集積させるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-71633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような硬貨処理装置においては、硬貨が盤面を水平方向に向けずに立った状態で集積されてしまう硬貨立ちが発生してしまうことを防止し、スタッカ部に正常に硬貨を集積させることが望まれている。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、スタッカ部に正常に硬貨を集積させ得る硬貨処理装置及び自動取引装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明の硬貨収納装置においては、硬貨を重ねて集積可能な筒状の収納空間を備えた筒収納部と、収納空間内を移動可能であり硬貨が集積される載置面が形成されたステージと、ステージを上昇させるよう制御することで、ステージに集積された硬貨をステージの上昇中に前記収納空間の天井部衝突させることにより硬貨の姿勢を変化させる制御部とを設けるようにした。
【0009】
また本発明の自動取引装置においては、使用者の操作を受け付ける操作部と、上述した硬貨処理装置とを設けるようにした。
【0010】
本発明は、硬貨立ちとなっている硬貨の姿勢を変化させて硬貨立ちを解除できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、硬貨立ちとなっている硬貨の姿勢を変化させて硬貨立ちを解除でき、かくしてスタッカ部に正常に硬貨を集積させ得る硬貨処理装置及び自動取引装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】現金自動預払機の外観構成を示す斜視図である。
図2】硬貨処理装置の構成を示す右側面図である。
図3】スタッカユニットの構成を示す斜視図である。
図4】筒収納部回転体の構成(1)を示す斜視図である。
図5】筒収納部回転体の構成(2)を示す右側面図である。
図6】筒収納部回転体の構成(3)を示し、図5におけるA-A矢視断面図である。
図7】筒収納部回転体の構成(4)を示し、図6におけるA-A矢視断面図である。
図8】アッパガイドの構成を示し、(A)は底面視側の斜視図、(B)は平面視側の斜視図である。
図9】左側カバーの構成を示す斜視図である。
図10】右側カバーの構成を示し、(A)は右側面視側の斜視図、(B)は左側面視側の斜視図である。
図11】集積機構の構成を示す斜視図である。
図12】繰出機構の構成を示す斜視図である。
図13】集積硬貨がない場合のステージ位置出し制御を示す右側面図であり、(A)はステージ位置出し上昇制御、(B)はステージ位置出し降下制御である。
図14】集積硬貨がある場合のステージ位置出し制御を示す右側面図であり、(A)はステージ位置出し上昇制御、(B)はステージ位置出し降下制御である。
図15】硬貨立ち非発生時のステージ制御を示す右側面図であり、(A)はステージ通常降下制御、(B)はステージ高速降下制御前、(C)はステージ高速降下制御中、(D)はステージ高速降下制御後である。
図16】硬貨立ち発生時のステージ制御を示す右側面図であり、(A)はステージ通常降下制御、(B)はステージ高速降下制御前、(C)はステージ高速降下制御中、(D)はステージ高速降下制御後である。
図17】集積不良時ステージ上昇制御を示す右側面図であり、(A)はステージ上昇時、(B)は硬貨立ち解除時、(C)はステージ降下時である。
図18】集積不良時筒回転制御を示す断面図である。
図19】硬貨立ち確認制御を示す右側面図である。
図20】硬貨残留検知制御を示す右側面図である。
図21】集積処理手順(1)を示すフローチャートである。
図22】集積処理手順(2)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0014】
[1.現金自動預払機の全体構成]
図1に外観を示すように現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関や各種商業施設等に設置され、使用者(すなわち金融機関や商業施設の顧客等)との間で、入金処理や出金処理等の現金に関する取引を行う。
【0015】
筐体2は、その前側に使用者が対峙した状態で紙幣又は硬貨の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に応対部3が設けられている。応対部3は、カード入出口4、硬貨入出金口5、操作表示部6、テンキー7及びレシート発行口8が設けられており、使用者との間で例えば現金やカード等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行う。
【0016】
カード入出口4は、キャッシュカード等の各種カードが挿入又は排出される部分である。カード入出口4の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。硬貨入出金口5は、使用者によって入金される硬貨が投入されると共に、使用者へ出金する硬貨が排出される部分である。また硬貨入出金口5は、シャッタを駆動することにより開放又は閉塞する。因みに応対部3には、使用者により入金される紙幣が投入されると共に該使用者へ出金する紙幣が排出される紙幣入出金口(図示せず)等も設けられている。
【0017】
操作表示部6は、取引に際して操作画面や取引内容等を表示する液晶表示パネルと、使用者の入力操作を検知するタッチセンサとが一体化されたタッチパネルである。テンキー7は、「0」~「9」の数字等の入力を受け付ける物理キーであり、暗証番号や取引金額等の入力操作時に用いられる。レシート発行口8は、取引処理の終了時に取引内容等を印字したレシートを発行する部分である。
【0018】
以下では、現金自動預払機1のうち使用者が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、該前側に対峙した使用者から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
【0019】
筐体2の内部には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、取引対象である硬貨に関する種々の処理を行う硬貨処理装置10や、紙幣に関する種々の処理を行う紙幣処理装置(図示せず)等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理等の種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
【0020】
[2.硬貨処理装置の全体構成]
硬貨処理装置10は、図2に模式的な右側面図を示すように、硬貨処理装置筐体11の内部に、硬貨に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。この硬貨は、例えば銅及びニッケルの合金やアルミニウム等、十分な強度を有する種々の材料でなり、薄い円板状に形成されている。
【0021】
硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的上側ないし中央付近に、入出金部13、シュート部14、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17、ピンベルト搬送部18、6個のスタッカ部21、出金搬送部22及び一時保留部23が設けられている。また硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的下側に、硬貨制御部12、補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25、第2補充リジェクト庫26、リジェクト庫27、取忘取込庫28及び下分離部29が設けられている。
【0022】
硬貨制御部12は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金取引や出金取引等に関する種々の処理を行い、硬貨処理装置10を統括制御する。また硬貨制御部12は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
【0023】
[2-1.入出金部、シュート部及び上分離部の構成]
入出金部13は、使用者との間で硬貨を受け渡すことにより、該使用者に硬貨を入金させ、又は該使用者に硬貨を出金する。また入出金部13は、使用者により硬貨が投入されると、投入された硬貨をシュート部14に引き渡して該シュート部14内を下降させ、該シュート部14の下側に設けられた上分離部15内に到達させる。また入出金部13は、ピンベルト搬送部18から硬貨が搬送されてくると、該硬貨を集積した後、使用者に受け取らせる。
【0024】
シュート部14は、硬貨の直径よりも十分に大きい内径を有する筒状に形成されており、重力を利用して硬貨を入出金部13から上分離部15へ進行させる。すなわちシュート部14は、硬貨を1枚ずつに分離することなく、複数の硬貨が連なった状態やある程度まとまった状態のまま、複数の硬貨を短時間で移動させることができる。
【0025】
上分離部15は、大きく分けて、下側の比較的大きい容積を占める部分である集積分離部15Aと、該集積分離部15Aから上方に突出するように形成された分離搬送部15Bとにより構成されている。集積分離部15Aは、シュート部14から硬貨が落下してくると、この硬貨を集積空間内に集積する。また集積分離部15Aは、傾斜円盤15Cを図2の時計回りに回転させることにより、集積された硬貨を適宜撹拌しながら、突起に硬貨を1枚ずつ引っ掛け、該硬貨の盤面を該傾斜円盤15Cに対向(すなわち当接)させた姿勢で持ち上げていき、分離搬送部15Bに引き渡す。
【0026】
分離搬送部15Bは、硬貨を案内する搬送ガイドと、該搬送ガイドに沿って走行するピンベルトとを有している。搬送ガイドは、上方へ進行してから後ろ斜め下方向へ屈曲するような搬送経路に沿って形成されている。また搬送ガイドには、搬送経路の左側において硬貨の盤面と対向するガイド面を貫通するようにして、該搬送経路に沿った溝が形成されている。
【0027】
ピンベルトは、搬送ガイドの左側に配置されており、図示しないプーリ等によって搬送経路に沿って走行するように張架されている。このピンベルトは、走行方向に沿って所定間隔毎に搬送ピンが設けられており、搬送ピンの先端が搬送ガイドの溝に入り込むように、ガイド面よりも右側に突出している。分離搬送部15Bは、傾斜円盤15Cの回転と同期するようにピンベルトを走行させることにより、集積分離部15Aから引き渡された硬貨を搬送ガイドに沿って上方向へ搬送してから後ろ斜め下方へ搬送し、認識搬送部16に引き渡す。
【0028】
[2-2.認識搬送部及び受渡部の構成]
認識搬送部16は、シュート部14の右側(図2における紙面の手前側)に位置しており、上分離部15の分離搬送部15Bにより硬貨が搬送されてくると、これを圧接搬送ベルト(図示せず)と搬送ガイド(図示せず)の搬送面との間に挟み込み、圧接搬送ベルトの走行に伴ってこの硬貨を摺動させながら搬送面に沿って後方へ搬送する。やがて認識搬送部16は、この硬貨が撮像部(図示せず)の右側に到達すると、該撮像部により該硬貨を撮像して画像信号を生成し、これを硬貨制御部12へ供給すると共に、引き続き該圧接搬送ベルトの走行によりこの硬貨を後方へ搬送して、後側の受渡部17に引き渡す。
【0029】
受渡部17は、前側の認識搬送部16と後側のピンベルト搬送部18との間に位置しており、搬送ガイドにより硬貨を後ろ斜め下方へ進行させる。これにより受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨を、ピンベルト搬送部18による硬貨の搬送経路上に位置させて該ピンベルト搬送部18に引き渡す。このとき受渡部17は、硬貨を1枚ずつ受け渡す。すなわち受渡部17は、認識搬送部16において1枚ずつ認識された硬貨を、1枚ずつに分離された状態を維持したまま、且つ受け取った順序も維持したまま、ピンベルト搬送部18に順次引き渡す。
【0030】
[2-3.ピンベルト搬送部の構成]
ピンベルト搬送部18は、スタッカ部21の前側下部、下側、後側及び上側を取り囲むように配置されている。説明の都合上、以下ではピンベルト搬送部18の前側下部、下側、後側及び上側をそれぞれ前ピンベルト搬送部18F、下ピンベルト搬送部18D、後ピンベルト搬送部18B及び上ピンベルト搬送部18Uと呼ぶ。このうち下ピンベルト搬送部18Dの大部分は、出金搬送部22及び一時保留部23の左側、すなわち図2における紙面の奥側に位置している。
【0031】
ピンベルト搬送部18は、大きく分けて搬送ガイド及びピンベルト(図示せず)により構成されている。搬送ガイドは、硬貨の搬送面を形成し、搬送面を硬貨の盤面と当接させる。ピンベルト搬送部18のうち上ピンベルト搬送部18Uと下ピンベルト搬送部18Dとは、前後方向に沿って硬貨を案内する。また上ピンベルト搬送部18Uは、前端近傍において、前斜め下方向へ屈曲し、入出金部13と接続されている。一方、ピンベルト搬送部18のうち前ピンベルト搬送部18F及び後ピンベルト搬送部18Bは、概ね上下方向に沿って硬貨を案内する。
【0032】
ピンベルトは、搬送ベルト及び搬送ピン(図示せず)により構成されている。搬送ベルトは、可撓性を有する材料によって円環状に形成されている。一方、硬貨処理装置筐体11には、主に搬送ガイドが屈曲する箇所の近傍に、複数のプーリがそれぞれ回転可能に設けられている。搬送ベルトは、各プーリを順次結ぶように張架される。ピンベルト搬送部18は、図示しないモータから一部のプーリに駆動力が伝達されると、該プーリを反時計回りに回転させ、これに伴ってピンベルトを図の反時計回りとなるように走行させる。これに伴いピンベルト搬送部18は、搬送ガイドの搬送面に硬貨の盤面(すなわち左側面)を寄りかからせた状態で、搬送ピンにより該硬貨に対し搬送方向へ力を加え、該搬送ガイドに沿って進行させること、すなわち搬送することができる。
【0033】
このピンベルト搬送部18は、受渡部17から硬貨を受け取ると、この硬貨を前ピンベルト搬送部18Fに沿って下方へ進行させ、さらに下ピンベルト搬送部18Dに沿って後方へ進行させる。続いてピンベルト搬送部18は、この硬貨を後ピンベルト搬送部18Bに沿って上方へ進行させ、さらに上ピンベルト搬送部18Uに沿って前方へ進行させた後、入出金部13へ進行させる。すなわちピンベルト搬送部18は、認識搬送部16から受渡部17を介して受け渡された硬貨を、スタッカ部21の周囲を周回するようにして、概ね環状に形成された搬送経路に沿って入出金部13へ搬送する。
【0034】
かかる構成に加えてピンベルト搬送部18には、6箇所の分岐部が設けられている。この分岐部は、ピンベルト搬送部18を進行する硬貨の進行先を、それぞれ、補充回収庫24へ切り替え可能な前補回分岐部と、第1補充リジェクト庫25又は第2補充リジェクト庫26へ切り替え可能な前リジェクト分岐部と、一時保留部23へ切り替え可能な一時保留分岐部と、リジェクト庫27へ切り替え可能な後第1リジェクト分岐部と、取忘取込庫28へ切り替え可能な後第2リジェクト分岐部と、補充回収庫24が硬貨処理装置筐体11の後側に取り付けられた場合に該補充回収庫24へ切り替え可能な後補回分岐部とにより構成されている。
【0035】
各分岐部は、硬貨制御部12の制御に基づいて分岐板(図示せず)を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、又は該硬貨をピンベルト搬送部18から分岐させてそれぞれの搬送先へ進行させるかを切り替える。
【0036】
さらにピンベルト搬送部18には、6個のスタッカ部21のそれぞれ上側となる6箇所に、スタッカ分岐部が設けられている。各スタッカ分岐部は、搬送経路の方向に合わせて前補回分岐部を時計回りに90[°]回転させたように構成されている。スタッカ分岐部の左側には、硬貨をスタッカ部21へ案内する案内部31が設けられている。各スタッカ分岐部は、硬貨制御部12の制御に基づいて分岐板を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、又は該硬貨をピンベルト搬送部18から分岐させて各スタッカ部21へ進行させるかを切り替える。
【0037】
このようにピンベルト搬送部18は、認識搬送部16から受渡部17を介して受け渡された硬貨を搬送経路に沿って搬送し、該硬貨の搬送経路を分岐部又はスタッカ分岐部により適宜分岐させて補充回収庫24やスタッカ部21等へ進行させ、又は入出金部13へ進行させる。
【0038】
[2-4.スタッカ部、出金搬送部及び一時保留部の構成]
硬貨処理装置10には、前後方向に沿って6個のスタッカ部21(21A、21B、21C、21D、21E及び21F)が整列配置されている。各スタッカ部21は、それぞれ所定の金種の硬貨と対応付けられている。このスタッカ部21は、案内部31の下側においてスタッカ部21の大部分を占める収納部50と、該収納部50の下側に設けられた繰出機構69とにより構成されている。これらのスタッカ部21は、前後方向に隣接する2つのスタッカ部21毎に、1つのスタッカユニット44として一体化するようにまとめられている。具体的に硬貨処理装置10は、スタッカ部21A及び21Bで1つのスタッカユニット44を構成し、スタッカ部21C及び21Dで1つのスタッカユニット44を構成し、スタッカ部21E及び21Fで1つのスタッカユニット44を構成している。
【0039】
収納部50は、硬貨の盤面をほぼ水平とした姿勢で順次積み上げるようにして、上下方向に沿って集積するための集積空間が形成された円筒状の筒収納部56を有している。因みに収納部50では、3つの筒収納部56が設けられており、これらを水平面内で移動させ得るようになっている。案内部31は、スタッカ分岐部から引き渡される硬貨を筒収納部56の上端近傍へ案内し、該筒収納部56内に既に集積されている他の硬貨の上側に載置させる。
【0040】
繰出機構69は、筒収納部56の下端近傍において、該筒収納部56に集積されている硬貨のうち最も下側の1枚を繰り出す。具体的に繰出機構69は、筒収納部56の真下から右側にかけてベルト及びプーリの組み合わせでなる繰出搬送部を構成しており、このベルトの上面を右方向へ向けて走行させることにより、筒収納部56内に集積されている最も下側の硬貨を右方向へ搬送して繰り出す。
【0041】
ここで、スタッカ部21は下ピンベルト搬送部18Dのほぼ真上に位置している。またスタッカ部21における繰出機構69は、ベルトの右端を出金搬送部22の真上に、すなわち下ピンベルト搬送部18Dの右側に位置させている。このためスタッカ部21から繰り出された硬貨は、下ピンベルト搬送部18Dへ落下することなく、出金搬送部22又は一時保留部23へ落下する。
【0042】
出金搬送部22は、後側から4個のスタッカ部21、すなわちスタッカ部21C~21Fの右下側に位置している。この出金搬送部22は、上側及び前側が開放された中空の直方体のような形状となっており、内部に硬貨を収容し得る空間を形成している。この出金搬送部22は、硬貨制御部12の制御に基づいてプーリを回転させることにより、ベルトの上面を前方向へ進行させ、該ベルト上に載置若しくは集積されている硬貨を前方向へ搬送し、やがて一時保留部23内へ落下させる。このとき出金搬送部22は、硬貨を1枚ずつに分離することなく、複数の硬貨が連なった状態やある程度まとまった状態のまま、複数の硬貨を短時間で搬送する。
【0043】
一時保留部23は、硬貨を一時的に集積させる箇所であり、出金搬送部22の前側、すなわちスタッカ部21A及び21Bの右下側に位置している。一時保留部23は、スタッカ部21A及び21Bから硬貨が繰り出されて落下してくると、これらを内部空間に収容し、ベルト上に載置させ、若しくは他の硬貨と共に集積させる。また一時保留部23は、出金搬送部22から搬送されてきた硬貨も、内部空間のベルト上に載置若しくは集積させる。このため一時保留部23は、ピンベルト搬送部18から一時保留分岐部を介して硬貨が引き渡されると、この硬貨も内部空間のベルト上に載置若しくは集積させる。
【0044】
この一時保留部23は、ベルトを停止させている場合、内部空間に集積している硬貨をそのまま保持する。一方、一時保留部23は、硬貨制御部12の制御に基づいてベルトの上面を前上方向に走行させた場合、集積している硬貨を前斜め上方へ進行させていき、やがて該ベルトの前端部分から繰り出して上分離部15に受け渡すこと、すなわち認識搬送部16へ搬送させる。このとき一時保留部23は、出金搬送部22と同様に、硬貨を1枚ずつに分離することなく、複数の硬貨が連なった状態やある程度まとまった状態のまま、複数の硬貨を短時間で搬送する。
【0045】
[2-5.補充回収庫、リジェクト庫等及び下分離部の構成]
補充回収庫24は、硬貨処理装置筐体11の下部前側に設けられており、直方体における後上側部分を仕切って第1補充リジェクト庫25及び第2補充リジェクト庫26とした場合の残った部分となっている。この補充回収庫24は、ピンベルト搬送部18から前補回分岐部を介して硬貨が進行してくると、この硬貨を内部に進行させて集積する。また補充回収庫24は、ベルトを停止させている場合には、硬貨を集積した状態を保持する一方、硬貨制御部12の制御に基づいてベルトの上面を後方へ進行させるように走行させた場合、この硬貨を後方へ搬送して該ベルトの後端近傍から補充回収庫24の後方へ繰り出す。
【0046】
第1補充リジェクト庫25は、補充回収庫24の後上側における右側に位置しており、該補充回収庫24と比較して十分に小さい直方体状に形成されている。また第1補充リジェクト庫25は、補充回収庫24と同様に、内部に硬貨を集積する空間が形成されている。この第1補充リジェクト庫25は、ピンベルト搬送部18から前リジェクト分岐部を介して硬貨が進行してくると、この硬貨を内部に収容する。
【0047】
第2補充リジェクト庫26は、第1補充リジェクト庫25の左側に位置しており、該第1補充リジェクト庫25とほぼ同様に構成されている。この第2補充リジェクト庫26は、ピンベルト搬送部18から前リジェクト分岐部と、該前リジェクト分岐部よりも下側に設けられた前第2リジェクト分岐部とを順次介して硬貨が進行してくると、この硬貨を内部に収容する。
【0048】
リジェクト庫27は、第1補充リジェクト庫25と同様に構成されており、後第1リジェクト分岐部を介して硬貨が進行してくると、この硬貨を内部に収容する。取忘取込庫28は、リジェクト庫27の左側に設けられており、第2補充リジェクト庫26と同様に構成されており、後第2リジェクト分岐部を介して硬貨が進行してくると、この硬貨を内部に収容する。
【0049】
下分離部29は、硬貨処理装置筐体11の下部における中央付近であり、補充回収庫24の後側に隣接する位置に配置されている。この下分離部29は、上分離部15と類似した構成となっており、集積分離部15A、分離搬送部15B及び傾斜円盤15Cとそれぞれ対応する集積分離部29A、分離搬送部29B及び傾斜円盤29Cにより構成されている。集積分離部29Aは、内部の傾斜円盤29Cを回転させることにより、集積されている硬貨を1枚ずつに分離して分離搬送部29Bに引き渡す。分離搬送部29Bは、集積分離部29Aから受け取った硬貨を1枚ずつ上方へ持ち上げるように搬送し、一時保留部23の放出口から内部の空間へ放出する。
【0050】
このように下分離部29は、硬貨処理装置10内において比較的下側に位置する補充回収庫24から繰り出された硬貨を、これよりも上側に位置する一時保留部23へ搬送する。
【0051】
[3.各種処理における硬貨の搬送]
次に、硬貨処理装置10において硬貨の搬送を伴う種々の処理、すなわち入金処理及び出金処理等における硬貨の搬送や集積等について説明する。ここでは、現金自動預払機1と顧客との間で入金取引及び出金取引を行う場合における硬貨処理装置10での処理についてそれぞれ説明する。
【0052】
[3-1.入金取引における硬貨の搬送]
まず、現金自動預払機1(図1)において顧客との間で入金取引が行われる場合について説明する。この場合、硬貨処理装置10は、前段の入金計数処理により、顧客に入金された硬貨の金種等を認識しながら枚数を計数し、これに続く後段の入金収納処理により、各硬貨を適切な収納箇所へ搬送して収納する。
【0053】
具体的に硬貨処理装置10の硬貨制御部12は、現金自動預払機1の主制御部9(図1)と連携することにより、操作表示部6(図1)を介して顧客から入金取引を開始する旨の操作入力を受け付けると、入金計数処理を開始する。
【0054】
このとき硬貨制御部12は、まず主制御部9と連携して硬貨入出金口5(図1)のシャッタ及び入出金部13の上シャッタを開いて顧客に入出金部13内へ硬貨を投入させる。次に硬貨制御部12は、顧客から操作表示部6(図1)を介して硬貨の取り込みを開始する操作入力を受け付けると、硬貨入出金口5のシャッタ及び入出金部13の上シャッタを閉塞した上で、入出金部13からシュート部14を介して上分離部15に硬貨を引き渡す。
【0055】
上分離部15は、硬貨を1枚ずつに分離して繰り出し、認識搬送部16へ引き渡す。認識搬送部16は、硬貨を1枚ずつ搬送しながら認識し、受渡部17に引き渡すと共に、得られた認識結果を硬貨制御部12へ通知する。
【0056】
これに応じて硬貨制御部12は、通知された認識結果を基に、該硬貨を受け入れ得るか否かを判定すると共にその搬送先を決定し、さらに記憶する。このとき硬貨制御部12は、該硬貨が取扱可能な金種であり、且つ正当である(すなわち偽造されていない)と判定した場合にこれを受入可能とし、それ以外の場合を受入不可能とする。また硬貨制御部12は、受入可能と判定した硬貨の金額を逐次加算することにより合計金額を集計する。
【0057】
受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。ピンベルト搬送部18は、該硬貨が受入可能であれば、一時保留分岐部まで搬送して分岐させて一時保留部23へ進行させ、該一時保留部23に集積させる。またピンベルト搬送部18は、該硬貨が受入不可能であれば、入出金部13まで搬送して収容させる。
【0058】
やがて硬貨制御部12は、上分離部15から全ての硬貨を繰り出し終えると、入出金部13に受入不可能な硬貨を収容していれば、主制御部9(図1)と協働し上シャッタ等を開放させ、該硬貨を顧客に返却して確認させると共に、必要に応じて再投入させる。一方、硬貨制御部12は、入出金部13に受入不可能な硬貨を収容していなければ、入金計数処理を完了し、入金計数処理を完了したこと及び集計した合計金額(以下これを入金額と呼ぶ)を主制御部9に通知する。これに応じて現金自動預払機1の主制御部9は、所定の操作指示画面を操作表示部6(図1)に表示させ、顧客にこの入金額を提示すると共に入金取引を継続するか、又は中止するかを選択させる。
【0059】
ここで入金取引の中止が選択されると、主制御部9はこのことを硬貨制御部12に通知する。これに応じて硬貨制御部12は、入金返却処理を行うことにより、一時保留部23に集積している硬貨を入出金部13へ搬送して顧客に返却する。
【0060】
一方、顧客から入金取引の継続が選択されると、主制御部9はこのことを硬貨制御部12に通知する。これに応じて硬貨制御部12は、入金収納処理を行うことにより、一時保留部23に集積している硬貨をスタッカ部21へ搬送して金種毎に集積させる。
【0061】
具体的に硬貨制御部12は、一時保留部23のベルトを走行させることにより、一時保留部23内に集積している硬貨を前方へ搬送して繰り出し、上分離部15に順次引き渡す。上分離部15及び認識搬送部16は、硬貨を1枚ずつに分離してから認識すると共に、受渡部17へ引き渡す。
【0062】
これに応じて硬貨制御部12は、得られた認識結果を基に、該硬貨が再利用可能であるか否か、すなわち以降の出金処理において出金可能な硬貨であるか否かを判定し、該硬貨の搬送先を決定する。このとき硬貨制御部12は、該硬貨が再利用可能であれば、その金種に応じたスタッカ部21(21A~21F)を搬送先とし、再利用不可能であれば、リジェクト庫27を搬送先とする。因みに以下では、再利用不可能と判定された硬貨をリジェクト硬貨とも呼ぶ。
【0063】
受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。ピンベルト搬送部18は、該硬貨が再利用可能であれば、前ピンベルト搬送部18F、下ピンベルト搬送部18D及び後ピンベルト搬送部18Bにより該硬貨を順次搬送する。やがてピンベルト搬送部18は、該硬貨が上ピンベルト搬送部18Uに到達すると、金種に応じたスタッカ分岐部により該硬貨を分岐させ、案内部31を介して収納部50に集積させる。
【0064】
ところでスタッカ部21では、収納部50の筒収納部56に集積可能な硬貨の最大枚数が規定されており、既に最大枚数の硬貨が集積されている場合、新たな硬貨を集積することができない。このような場合、硬貨制御部12は、該硬貨を入出金部13まで搬送して繰り出し、さらにシュート部14を介して上分離部15へ進行させる。これにより該硬貨は、やがて搬送経路に沿って再びスタッカ部21まで搬送される。
【0065】
一方、スタッカ部21は、複数の筒収納部56を水平面内で移動させるための移動機構である図3に示す収納駆動部51を有しており、1個の筒収納部56に最大枚数の硬貨が集積された場合、該筒収納部56を案内部31の下側から他の箇所へ移動させると共に、他の筒収納部56を案内部31の下側に移動させる。すなわちスタッカ部21は、その内部において、案内部31の下側に位置する筒収納部56を交換する。これによりスタッカ部21は、次に硬貨が搬送されてきたときに、該硬貨を集積できる。
【0066】
一方、ピンベルト搬送部18は、該硬貨が再利用不可能であれば、後第1リジェクト分岐部まで搬送して分岐させてリジェクト庫27へ進行させ、収容させる。やがて硬貨制御部12は、一時保留部23に集積していた全ての硬貨をそれぞれの搬送先に搬送し終えると、入金収納処理を終了する。
【0067】
[4.スタッカユニットの全体構成]
3個のスタッカユニット44は何れもほぼ同様に構成されている。図3に示すように1つのスタッカユニット44は、前側のスタッカ部21の収納部50、集積機構59及び繰出機構69と、後側のスタッカ部21の収納部50、集積機構59及び繰出機構69とにより構成されている。以下では、前側のスタッカ部21の収納部50、集積機構59及び繰出機構69について主に説明する。
【0068】
[4-1.収納部の構成]
図3図4図5図6及び図7に示すように収納部50は、収納駆動部51と筒収納部回転体55とカバー57とにより構成されており、内部に硬貨を収納すると共に、収納駆動部51の駆動力により、筒収納部回転体55が回転する。
【0069】
[4-1-1.収納駆動部の構成]
収納駆動部51は、収納部モータ52と、ギア53及び54とにより構成されている。収納駆動部51は、収納部モータ52の回転駆動力をギア53とギア54とに順次伝達し、カバー57に設けられた孔部を介してギア54が筒収納部回転体55に噛み合うことにより、筒収納部回転体55を回転させる。
【0070】
[4-1-2.筒収納部回転体の構成]
筒収納部回転体55は、上下方向に延びる略円筒形状に構成されており、所定の1金種の硬貨を内部に収容する。この筒収納部回転体55は、中心に位置する回転軸55ARを中心として収納駆動部51の駆動力により、図6中時計回りである筒収納部回転体回転方向r1へ回転可能に構成されている。また筒収納部回転体55が回転する際の回転軌道の範囲は、上下方向の範囲が筒収納部回転体55の上端部から下端部までとなっている。
【0071】
また筒収納部回転体55の内周側には、回転軸55ARを中心とした円周上に沿って筒収納部56が互いに対し120[°]の回転角度で3つ形成されている。すなわち筒収納部回転体55は、硬貨を重ねて集積する筒収納部56が3個連結された構成となっている。筒収納部56は、収納する硬貨の直径よりも僅かに広い直径であり上下方向に延びる円筒形状の空間であり硬貨を収納する硬貨集積空間SP1が内部に形成されている。また筒収納部56は、硬貨集積空間SP1の下端部が筒収納部回転体55の外側と連通している。3つの筒収納部56は、互いに同一金種の硬貨を収納するため、互いに同一形状となっている。筒収納部回転体55の外周壁には、それぞれの筒収納部56の硬貨集積空間SP1と筒収納部回転体55の外部とを連通させるステージ入れ込みスリット55SLが筒収納部回転体55の上端部から下端部までに亘って形成されている。このステージ入れ込みスリット55SLは、筒収納部56における、回転軸55ARを中心とした半径方向の外周側に形成されている。筒収納部回転体55の上端に設けられたアッパガイド40には、120[°]毎に筒回転位置検知用ディテクタDT1が設けられている。
【0072】
また筒収納部回転体55には、図6に示すように筒収納部56にピンベルト搬送部18から硬貨を投入させる受入位置Prと、筒収納部56から出金搬送部22又は一時保留部23へ硬貨を繰り出す繰出位置Peとが設定されている。受入位置Prは、筒収納部回転体55の前端部における、ステージ67の硬貨集積面67pSの上方に設定されており、繰出位置Peは、受入位置Prに対し筒収納部回転体回転方向r1へ120[°]回転した、分離ベルト73の前端部の上方に設定されている。このように受入位置Prと繰出位置Peとは、平面視において異なる位置に設定されている。以下では、現在受入位置Prにある筒収納部56を受入対象筒収納部とも呼び、現在繰出位置Peにある筒収納部56を繰出対象筒収納部とも呼ぶ。
【0073】
硬貨処理装置10は、例えば入金取引等において、現在受入位置Prにある筒収納部56、すなわち受入対象筒収納部に硬貨を投入し集積させる集積動作と、例えば出金取引等において、現在繰出位置Peにある筒収納部56、すなわち繰出対象筒収納部から硬貨を繰り出す繰出動作とを行う。また硬貨処理装置10は、筒収納部回転体55を収納駆動部51により筒収納部回転体回転方向r1へ回転させることにより、受入位置Prにある筒収納部56を切り替えると共に、繰出位置Peにある筒収納部56を切り替える。具体的に硬貨処理装置10は、現在の受入対象筒収納部に最大枚数の硬貨が集積された状態であるフル状態になると、筒収納部回転体55を筒収納部回転体回転方向r1へ回転させ、現在受入位置Prにある筒収納部56に対し筒収納部回転体回転方向r1とは逆方向である筒収納部回転体逆回転方向r2側に位置する筒収納部56を受入位置Prへ移動させることにより、受入対象筒収納部を切り替える。
【0074】
図4に示すように、筒収納部回転体55の上端部よりも上方における筒回転位置検知用ディテクタDT1の移動経路上には、筒回転位置検知用ディテクタDT1を検知する筒回転位置検知用センサSE1が設けられている。筒回転位置検知用センサSE1は、筒回転位置検知用ディテクタDT1を通過させる溝を挟んで、検知光を発光する発光部と該検知光を受光する受光部とを対向させて配置したU字状の光学式のセンサである。この筒回転位置検知用センサSE1は、検知光の受光結果を硬貨制御部12に通知する。硬貨制御部12は、この受光結果を基に、筒収納部回転体55の回転位置を判断する。
【0075】
この筒収納部回転体55は、アッパガイド40と、サイドガイド46と、ロアガイド42と、回転軸55ARとにより構成されており、これらアッパガイド40、サイドガイド46及びロアガイド42によって囲まれた空間に、硬貨集積空間SP1が形成されている。
【0076】
[4-1-2-1.アッパガイドの構成]
図8に示すようにアッパガイド40は、筒収納部回転体55における上端部に配されており、全体として上下方向の厚さが薄い円盤形状である。アッパガイド40には、回転中心軸に位置する回転軸55ARを中心とした円周上に沿って投入口40Iが互いに対し120[°]の回転角度で3つ形成されている。投入口40Iは、自身の下方に位置している筒収納部56の硬貨集積空間SP1とアッパガイド40の上方とを連通し、案内部31から搬送された硬貨を筒収納部56の硬貨集積空間SP1へ投下させる。
【0077】
またアッパガイド40の下面である天井部としてのアッパガイド下面40dSは、全体として平面形状に形成されており、硬貨集積空間SP1の天井として機能する。このアッパガイド下面40dSには、投入口40Iの一部分であり、硬貨集積空間SP1へ投下される硬貨の移動をガイドする平面である硬貨ガイド40Igが、アッパガイド40の上面へ向かってアッパガイド下面40dSに対し傾斜するように形成されている。このようにアッパガイド下面40dSは、全体が平面形状でなく、例えば硬貨ガイド40Ig等により、一部分に傾斜形状や凹凸形状が存在している。
【0078】
[4-1-3.カバーの構成]
カバー57は、図9に示す左側カバー57Lと図10に示す右側カバー57Rとにより構成されており、前後方向に隣接する2つの筒収納部回転体55を覆うことにより、硬貨が筒収納部回転体55から外部に漏れることを防いでいる。以下では左側カバー57Lと右側カバー57Rとをまとめてカバー57とも呼ぶ。
【0079】
[4-1-3-1.左側カバーの構成]
左側カバー57L(図9)は、板状部材であり、2つの筒収納部回転体55の左側に位置し、2つの左側カバー面57LSが右面側に形成されている。左側カバー面57LSは、2つの筒収納部回転体55の外周部とほぼ同等の曲率で湾曲する横断面略半円周形状の面である。左側カバー57Lは、左側カバー面57LSを2つの筒収納部回転体55の左側と対向させるように配置され、2つの筒収納部回転体55の左側を覆うことにより、硬貨が筒収納部回転体55から外部に漏れることを防いでいる。また左側カバー面57LSには、左側カバー孔部57Laが形成されている。左側カバー孔部57Laは、略正方形状の孔部であり、左側カバー面57LSから左側カバー57Lの左側面まで貫通している。左側カバー孔部57Laは、例えば、保守作業時において左側カバー57Lの左側面から棒状の部材が左側カバー面57LS側へ挿入されることにより、筒収納部56に収納された硬貨の姿勢を変化させる際に用いられる。このように左側カバー面57LSは、全体が平坦面形状でなく、例えば左側カバー孔部57La等により、一部分に傾斜形状や凹凸形状が存在している。
【0080】
左側カバー面57LSと、サイドガイド46の外周面のサイドガイド外壁面46oS(図9及び図10)との隙間は、硬貨処理装置10において取り扱われる硬貨のうち最も厚さが薄い硬貨である最薄硬貨の厚さよりも狭い、1.0[mm]程度に設定されている。これにより収納部50は、筒収納部56から、左側カバー面57LSとサイドガイド外壁面46oSとの隙間に硬貨が入り込んでしまい、違算が発生してしまうことを防止する。
【0081】
[4-1-3-2.右側カバーの構成]
右側カバー57R(図10)は、板状部材であり、2つの筒収納部回転体55の右側に位置し、2つの右側カバー面57RSが左面側に形成されている。右側カバー面57RSは、2つの筒収納部回転体55の外周部とほぼ同等の曲率で湾曲する横断面略半円周形状の面である。右側カバー57Rは、右側カバー面57RSを筒収納部回転体組38の右側と対向させるように配置され、2つの筒収納部回転体55の右側を覆うことにより、硬貨が筒収納部回転体55から外部に漏れることを防いでいる。また右側カバー面57RSには、複数の右側カバー孔部57Raが上下方向に沿って形成されている。右側カバー孔部57Raは、略正方形状の孔部であり、右側カバー面57RSから右側カバー57Rの右側面まで貫通している。右側カバー孔部57Raは、例えば、保守作業時において右側カバー57Rの右側面から棒状の部材が右側カバー面57RS側へ挿入されることにより、筒収納部56に収納された硬貨の姿勢を変化させる際に用いられる。このように右側カバー面57RSは、全体が平坦面形状でなく、例えば右側カバー孔部57Ra等により、一部分に傾斜形状や凹凸形状が存在している。
【0082】
右側カバー面57RSと、サイドガイド46のサイドガイド外壁面46oS(図9及び図10)との隙間は、最薄硬貨の厚さよりも狭い、1.0[mm]程度に設定されている。これにより収納部50は、筒収納部56から、右側カバー面57RSとサイドガイド外壁面46oSとの隙間に硬貨が入り込んでしまい、違算が発生してしまうことを防止する。
【0083】
[4-2.集積機構の構成]
図11に示すように集積機構59は、集積駆動部60とステージ67とにより構成されており、集積駆動部60の駆動力により、案内部31から搬送されてくる硬貨を受入位置Prにある筒収納部56に集積させる。
【0084】
集積駆動部60は、集積機構モータ61と、ステージ駆動ベルト62と、ギア63及び64と、ステージ駆動ベルトプーリ65と、シャフト66とにより構成されている。集積駆動部60は、パルスモータである集積機構モータ61の回転駆動力をギア63とギア64とに順次伝達し、ギア64がステージ駆動ベルトプーリ65に噛み合うことにより、ステージ駆動ベルトプーリ65を回転させる。
【0085】
ステージ駆動ベルト62は、上端近傍及び下端近傍にそれぞれ配置されたステージ駆動ベルトプーリ65の周囲に掛け回された無端ベルトである。集積駆動部60は、硬貨制御部12の制御に基づき、ステージ駆動ベルトプーリ65を回転させることにより、ステージ駆動ベルト62を回転させ、その右面を上下方向に沿って走行させる。シャフト66は、円筒形状であり、ステージ駆動ベルト62の近傍において上下方向に沿って配設されている。
【0086】
ステージ67は、図6及び図11に示すように積置部67p、シャフト摺動部67g及び接続部67cが形成されている。積置部67pは、筒収納部56の内部の硬貨集積空間SP1を、硬貨が集積される上下方向である集積方向に沿って移動可能な大きさに形成されており、上面において硬貨を集積させる水平方向に沿った平面形状の硬貨集積面67pSが形成されている。シャフト摺動部67gは、シャフト66に円筒形状の孔部が摺動可能に嵌まり込んでおり、ステージ67の上下移動をガイドする。接続部67cは、積置部67pとシャフト摺動部67gとを接続しており、受入位置Prにある筒収納部56に形成されたステージ入れ込みスリット55SL内を上下方向に移動可能に構成されている。これによりステージ67は、ステージ入れ込みスリット55SLを介し筒収納部56の外部から内部へ入り込み、受入位置Prにある筒収納部56の集積空間内を上下移動する。
【0087】
図7に示すように、ステージ67及び硬貨の移動経路上には、硬貨集積面67pS又は最上位硬貨の上面を検知する上面検知センサとしての集積上面検知用センサSE2が設けられている。最上位硬貨は、ステージ67の硬貨集積面67pSに集積された硬貨CNのうち最上位に位置する硬貨CNである。集積上面検知用センサSE2は、硬貨集積空間SP1を挟んで、集積上面検知用センサ光軸L1に沿って検知光を発光する発光部と該検知光を受光する受光部とを左右に配置した光学式のセンサである。この集積上面検知用センサSE2は、検知光の受光結果を硬貨制御部12に通知する。硬貨制御部12は、この受光結果を基に、硬貨集積面67pS又は最上位硬貨の上面の位置が所定の集積上面位置にあるか否かを判断し、硬貨集積面67pS又は最上位硬貨の上面の位置が集積上面位置よりも下側にあるようにステージ67を制御する。
【0088】
筒収納部回転体55の下端部よりも下方におけるステージ67の移動経路上には、ステージ67を検知するステージボトムポジションセンサSE3が設けられている。ステージボトムポジションセンサSE3は、筒回転位置検知用センサSE1(図4)と同様の光学式のセンサである。このステージボトムポジションセンサSE3は、検知光の受光結果を硬貨制御部12に通知する。硬貨制御部12は、この受光結果を基に、ステージ67が所定の下限位置にあるか否かを判断する。具体的にステージボトムポジションセンサSE3は、ステージ67が下限位置にあると、検知光を受光していないことを示す受光結果(すなわちON状態)を硬貨制御部12に通知する。ステージ67が下限位置にあると、ステージ67は筒収納部回転体55が回転する際の回転軌道の範囲よりも下側へ退避するため、筒収納部回転体55が回転してもステージ67は筒収納部回転体55とは干渉しない。
【0089】
硬貨制御部12は、ステージボトムポジションセンサSE3と集積上面検知用センサSE2との両方から同時に、検知光を受光していないことを示す受光結果(すなわちON状態)を取得した場合、現在受入位置Prにある筒収納部56には上限枚数まで硬貨が集積された、すなわち筒収納部56がフル状態であると判断する。
【0090】
集積機構モータ61(図11)の出力軸には、集積回転位置検知用ディテクタDT4が設けられている。集積回転位置検知用ディテクタDT4の移動経路上には、集積回転位置検知用ディテクタDT4を検知する集積回転位置検知用センサSE4が設けられている。集積回転位置検知用センサSE4は、筒回転位置検知用センサSE1(図4)と同様の光学式のセンサである。この集積回転位置検知用センサSE4は、検知光の受光結果を硬貨制御部12に通知する。硬貨制御部12は、この受光結果を基に、集積機構モータ61の回転位置、すなわちステージ67の上下方向の位置を検出する。この集積回転位置検知用センサSE4と集積回転位置検知用ディテクタDT4とにより、ステージ67の移動量を制御するための回転検知手段39が形成されている。
【0091】
[4-3.繰出機構の構成]
図12に示すように繰出機構69は、繰出駆動部70と、繰出搬送部72とにより構成されており、繰出駆動部70の駆動力により、繰出位置Peにある筒収納部56に集積されている硬貨を外部に繰り出す。
【0092】
繰出駆動部70は、繰出機構モータ71により構成されている。繰出駆動部70は、繰出機構モータ71の回転駆動力を繰出搬送部72の分離ベルトプーリ74に伝達することにより、分離ベルトプーリ74を回転させる。
【0093】
繰出搬送部72は、分離ベルト73と分離ベルトプーリ74とにより構成されている。分離ベルト73は、左端近傍(図示せず)及び右端近傍にそれぞれ配置された分離ベルトプーリ74の周囲に掛け回された無端ベルトである。繰出搬送部72は、硬貨制御部12の制御に基づき、分離ベルトプーリ74を回転させることにより、分離ベルト73を図12中時計回りである分離回転方向に沿って回転させ、その上面を左右方向に沿って走行させる。筒収納部回転体55の下端部と分離ベルト73との間隔は、硬貨1枚分の厚さに設定されている。このため分離ベルト73は、分離回転方向に沿って回転することにより、繰出位置Peにある筒収納部56から硬貨を1枚ずつ繰り出して出金搬送部22又は一時保留部23(図2)へ向けて右方へ搬送する。
【0094】
[5.集積動作]
[5-1.ステージ位置出し制御]
かかる構成において集積動作を行う際、硬貨制御部12は、まずステージ位置出し制御を行う。
【0095】
[5-1-1.ステージ位置出し上昇制御]
ステージ位置出し制御を行う際、硬貨制御部12は、まずステージ位置出し上昇制御を行ってからステージ位置出し下降制御を行う。ステージ位置出し上昇制御を行う際、硬貨制御部12は、受入位置Prにある筒収納部56内部において、検知光を受光していないことを示す受光結果(すなわちON状態)を集積上面検知用センサSE2から取得するまでステージ67を上昇させる。
【0096】
ここで、ステージ67に未だ硬貨が集積されていない場合、硬貨制御部12は、図13(A)に示すように硬貨集積面67pSが集積上面検知用センサ光軸L1を遮るまでステージ67を上昇させる。一方、ステージ67に既に硬貨が集積されている場合、硬貨制御部12は、図14(A)に示すように最上位硬貨CNuが集積上面検知用センサ光軸L1を遮るまでステージ67を上昇させる。
【0097】
[5-1-2.ステージ位置出し降下制御]
続いてステージ位置出し降下制御を行う際、硬貨制御部12は、一定パルス分だけ集積機構モータ61を回転させることによりステージ67を位置出し降下速度Sdpで所定の位置出し降下量Adpだけ降下させる。この位置出し降下量Adpは、ステージ位置出し制御が行われた状態で、案内部31を介して硬貨が2、3枚集積されても、集積上面検知用センサSE2がON状態とならない程度の降下量である。
【0098】
ここで、ステージ67に未だ硬貨が集積されていない場合、硬貨制御部12は、図13(B)に示すように、硬貨が集積されていないステージ67を図13(A)から位置出し降下量Adpだけ降下させる。一方、ステージ67に既に硬貨が集積されている場合、硬貨制御部12は、図14(B)に示すように、硬貨が集積されているステージ67を図14(A)から位置出し降下量Adpだけ降下させる。
【0099】
[5-2.硬貨投入開始制御]
続いて硬貨処理装置10は、集積対象となる筒収納部回転体55に対応したスタッカ分岐部の分岐板を回動させ、ピンベルト搬送部18から案内部31内に硬貨CNを案内する。硬貨CNは案内部31内を滑落し、筒収納部56内に放出される。このとき、図15(A)に示すように、放出される硬貨CNが集積上面検知用センサ光軸L1を遮るため、硬貨制御部12は、ON状態を集積上面検知用センサSE2から定期的に取得することとなる。また放出される硬貨CNが集積上面検知用センサ光軸L1を横切るのは一瞬であるため、硬貨制御部12は、集積不良が発生していない正常な状態においては、一定時間内にOFF状態を集積上面検知用センサSE2から取得する。
【0100】
[5-3.ステージ通常降下制御]
続いて硬貨制御部12は、硬貨を1枚集積させる毎に、一定パルス分だけ集積機構モータ61を回転させることにより、図15(A)に示すように、ステージ67を第1の速度としての通常降下速度Sdnで所定の通常降下量Adnだけ降下させる、ステージ通常降下制御を行う。この通常降下量Adnは、集積される硬貨CNの厚さ(例えば1.5[mm])よりも僅かに小さい降下量(例えば1.4[mm])である。これにより硬貨制御部12は、ステージ67を一気に降下させ過ぎて、硬貨集積空間SP1における硬貨集積面67pS又は最上位硬貨CNuの上面よりも上方の空間である集積上面空間SP2の上下方向の長さである集積上面空間長さが広くなり過ぎ、硬貨立ちが発生してしまうことを防止している。
【0101】
[5-4.硬貨立ち非発生時のステージ制御]
ここで、通常降下量Adnが硬貨CNの厚さよりも僅かに小さい降下量であるため、硬貨立ちが発生していない場合であっても、ステージ位置出し制御を行った後に集積される硬貨CNの枚数が増加すると、図15(B)に示すように、集積された硬貨CNが集積上面検知用センサ光軸L1を遮るため、硬貨制御部12は、規定時間を超えたON状態を集積上面検知用センサSE2から取得する、すなわち一定時間内にOFF状態を集積上面検知用センサSE2から取得しないこととなる。このとき硬貨制御部12は、ステージ高速降下制御を行う。以下では、集積上面検知用センサSE2がON状態の時間をON時間とも呼ぶ。
【0102】
[5-4-1.硬貨立ち非発生時のステージ高速降下制御]
硬貨制御部12は、筒収納部56内への硬貨CNの放出を継続させながら、ステージ位置出し降下制御と同等のパルス分だけ集積機構モータ61を回転させることにより、図15(B)から図15(C)を介し図15(D)に示すように、ステージ67を第2の速度としての高速降下速度Sdhで所定の高速降下量Adhだけ降下させる、ステージ高速降下制御を行う。この高速降下量Adhは、ステージ高速降下制御が行われた状態で新たに硬貨CNが2、3枚集積されても、集積上面検知用センサSE2がON状態とならない程度の降下量であり、通常降下量Adnよりも大きな降下量である。また硬貨制御部12は、ステージ通常降下制御と同じ、硬貨CNを1枚集積させる毎のタイミングで、通常降下量Adnよりも大きな降下量だけステージ67を降下させるため、通常降下速度Sdnよりも速い高速降下速度Sdhでステージ67を降下させる。
【0103】
[5-4-2.硬貨立ち非発生時のステージ高速降下制御後のステージ制御]
ステージ高速降下制御を行うと、硬貨制御部12は、規定時間以内にON状態からOFF状態に遷移したことを集積上面検知用センサSE2から取得したか確認し、硬貨立ちが発生していない場合は、規定時間以内にON状態からOFF状態に遷移したことを集積上面検知用センサSE2から取得し、上述したステージ通常降下制御及びステージ高速降下制御を繰り返す。
【0104】
[5-5.硬貨立ち発生時のステージ制御]
一方、硬貨立ちが発生すると、図16(B)に示すように、硬貨立ちとなっている硬貨CNである立ち硬貨が集積上面検知用センサ光軸L1を遮るため、硬貨制御部12は、規定時間を超えたON状態を集積上面検知用センサSE2から取得する、すなわち一定時間内にOFF状態を集積上面検知用センサSE2から取得しないこととなる。このとき硬貨制御部12は、ステージ高速降下制御を行う。
【0105】
[5-5-1.硬貨立ち発生時のステージ高速降下制御]
硬貨制御部12は、筒収納部56内への硬貨CNの放出を継続させながら、ステージ位置出し降下制御と同等のパルス分だけ集積機構モータ61を回転させることにより、図16(B)から図16(C)を介し図16(D)に示すように、ステージ67を高速降下速度Sdhで所定の高速降下量Adhだけ降下させる、ステージ高速降下制御を行う。
【0106】
[5-5-2.硬貨立ち発生時のステージ高速降下制御後のステージ制御]
ステージ高速降下制御を行うと、硬貨制御部12は、規定時間以内にON状態からOFF状態に遷移したことを集積上面検知用センサSE2から取得したか確認し、硬貨立ちが発生している場合は、規定時間を超えたON状態を集積上面検知用センサSE2から取得し、後述する硬貨立ち解除動作を行う。
【0107】
このように硬貨制御部12は、ステージ通常降下制御の後に行うステージ高速降下制御の後に、集積上面検知用センサSE2からの受光結果を確認する。ここで硬貨制御部12は、規定時間以内にON状態からOFF状態に遷移したことを取得した場合は、硬貨立ちは発生しておらず正常に集積動作を行えていると判断し、ステージ通常降下制御及びステージ高速降下制御を引き続き行う。一方硬貨制御部12は、規定時間を超えたON状態を取得した場合は、硬貨立ちが発生したか、又は集積機構モータ61が一時的に動作していない脱調が発生しており正常に集積動作を行えていないと判断し、後述する硬貨立ち解除動作を行う。
【0108】
[5-6.硬貨立ち解除動作]
硬貨制御部12は、筒収納部56内への硬貨CNの放出を停止させてから、硬貨立ち解除動作として、まず後述する集積不良時ステージ上昇制御を行う。
【0109】
[5-6-1.集積不良時ステージ上昇制御]
集積不良時ステージ上昇制御を行う際、硬貨制御部12は、ステージ67を降下させる際とは逆方向へ所定のパルス分だけ集積機構モータ61を回転させることにより、図17(A)に示すように、下限位置からステージ67を所定の集積不良時ステージ上昇量だけ上昇させる。このとき、立ち硬貨は、アッパガイド40の下面に衝突した衝撃により姿勢が変化し、図17(B)に示すように、盤面が水平方向に沿い、正常に集積されている硬貨CNの上側に集積される可能性がある。これは特に、アッパガイド下面40dS(図8(A))が平面形状でなく、例えば投入口40Iの硬貨ガイド40Ig等が形成されており、一部分に傾斜形状や凹凸形状が存在しているため、収納部50は、硬貨CNの姿勢を崩しやすくなっている。
【0110】
続いて硬貨制御部12は、所定のパルス分だけ集積機構モータ61を逆回転させることにより、図17(C)に示すように、検知光を受光していないことを示す受光結果(すなわちON状態)をステージボトムポジションセンサSE3(図7)から取得するまでステージ67を降下させることにより、ステージ67を下限位置まで移動させる。このような集積不良時ステージ上昇制御を行うと、硬貨制御部12は、後述する硬貨立ち確認制御を行う。
【0111】
[5-6-2.硬貨立ち確認制御]
硬貨立ち確認制御を行う際、硬貨制御部12は、集積機構モータ61を回転させることにより、図19(A)に示した下限位置から、図19(B)に示したように検知光を受光していないことを示す受光結果(すなわちON状態)を集積上面検知用センサSE2から取得するまでステージ67を上昇させると共に、その際のステージ上昇量を取得する。硬貨制御部12は、硬貨集積空間SP1へ放出させた硬貨CNの枚数を記憶しているため、放出させた硬貨CNが全て正常に集積されている場合において、下限位置から、集積上面検知用センサSE2の検知結果がON状態となるまでに上昇させるステージ67の上昇量である硬貨立ち確認時正常上昇量Adcn1を認識している。
【0112】
これに対し、硬貨立ちが発生している場合、立ち硬貨は盤面を水平方向に対し鉛直方向へ傾斜させた状態となっているため、下限位置からステージ67が上昇すると、図19(B)に示すように硬貨立ち確認時正常上昇量Adcn1よりも小さいステージ上昇量である硬貨立ち確認時上昇量Adcで、集積上面検知用センサSE2の検知結果がON状態となる。このため硬貨制御部12は、下限位置からステージ67を上昇させて、硬貨立ち確認時正常上昇量Adcn1よりも小さいステージ上昇量で集積上面検知用センサSE2の検知結果がON状態となった場合、硬貨立ちは解消していないと判断する。
【0113】
一方硬貨制御部12は、下限位置からステージ67を上昇させて、図19(C)に示すように硬貨立ち確認時正常上昇量Adcn1と同等のステージ上昇量で集積上面検知用センサSE2の検知結果がON状態となった場合、硬貨立ちが解消したと判断する。集積不良時ステージ上昇制御によって硬貨立ちが解消されると、硬貨制御部12は、筒収納部56内への硬貨CNの放出を再開すると共に、ステージ通常降下制御及びステージ高速降下制御を繰り返す。
【0114】
[5-6-3.集積不良時筒回転制御]
一方、集積不良時ステージ上昇制御を行っても、硬貨CNが正常に集積できなかった場合、硬貨制御部12は、集積不良時筒回転制御を行う。集積不良時筒回転制御を行う際、硬貨制御部12は、図18に示すように筒収納部回転体55を回転軸55ARを中心として筒収納部回転体回転方向r1へ1周分だけ回転させる、すなわち1回転させる。
【0115】
このとき硬貨は、遠心力によって、ステージ入れ込みスリット55SL側に移動して、ステージ入れ込みスリット55SLよりも回転軸55ARを中心とした半径方向の外側に突出し、左側カバー57Lにおける左側カバー面57LS及び左側カバー孔部57La(図9)と、右側カバー57Rにおける右側カバー面57RS及び右側カバー孔部57Ra(図10)とに当接することとなる。
【0116】
このとき、左側カバー面57LSと左側カバー孔部57Laとの境目と、右側カバー面57RSと右側カバー孔部57Raとの境目、すなわちカバー57の内周面の凹凸を通過する際に、立ち硬貨は、衝撃により姿勢が変化し、盤面が水平方向に沿い、正常に集積されている硬貨の上側に集積される可能性がある。これは特に、カバー57の内周面が平坦面形状でなく、左側カバー孔部57La及び右側カバー孔部57Raが形成されており、一部分に傾斜形状や凹凸形状が存在しているため、収納部50は、硬貨CNの姿勢を崩しやすくなっている。
【0117】
このような集積不良時筒回転制御を行うと、硬貨制御部12は、上述した硬貨立ち確認制御を行う。
【0118】
硬貨制御部12は、集積不良が発生した場合、上述した集積不良時ステージ上昇制御及び集積不良時筒回転制御と硬貨立ち確認制御とを所定回数だけ繰り返し行い、それでも硬貨立ちを解消できない場合は、エラー又は脱調が発生したと判定し、集積動作を中断してエラー処理を行う。
【0119】
[5-6-4.硬貨残留検知制御]
ところで、硬貨CNが硬貨集積空間SP1に残留しているか否かを確認する際、硬貨制御部12は、硬貨残留検知制御を行う。硬貨残留検知制御を行う際、硬貨制御部12は、集積機構モータ61を回転させることにより、図20(A)に示す下限位置から、図20(B)に示すように、ステージ67に硬貨CNが集積されていなければ集積上面検知用センサSE2の検知結果がON状態とはならない、所定の残留検知時上昇量Adcn2だけステージ67を上昇させる。このとき図20(B)に示すようにステージ67に硬貨CNが集積されている、すなわち硬貨CNが残留している場合、集積上面検知用センサSE2の検知結果がON状態となるため、硬貨制御部12は、硬貨集積空間SP1に硬貨CNが残留していることを検出する。
【0120】
一方、残留検知時上昇量Adcn2だけステージ67を上昇させても集積上面検知用センサSE2の検知結果がON状態とはならず、ステージ67に硬貨CNが集積されていない、すなわち硬貨CNが残留していない場合、硬貨制御部12は、集積機構モータ61が脱調していなければ集積上面検知用センサSE2の検知結果がON状態とはなるはずの上昇量だけ図20(C)に示すようにステージ67をさらに上昇させる。
【0121】
[6.集積処理]
次に、硬貨処理装置10による集積処理の具体的な処理手順について、図21及び図22に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。硬貨処理装置10は、集積処理プログラムを実行することにより図21に示す集積処理手順RT1を開始し、位置出し制御を行って、ステップSP1へ移る。ステップSP1において硬貨制御部12は、筒収納部56内へ硬貨CNを放出させつつステージ67を通常降下させ、ステップSP2へ移る。ステップSP2において硬貨制御部12は、集積上面検知用センサSE2のON時間が規定値以内であるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは、ステージ通常降下制御を行っている間に次々と筒収納部56内に放出され集積された硬貨が、未だ集積上面検知用センサ光軸L1に達していないためステージ67を高速降下させる必要はないことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP3へ移る。ステップSP3において硬貨制御部12は、集積すべき硬貨を全て集積したため集積動作を終了させるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このとき硬貨制御部12はステップSP16へ移り、集積処理を終了する。
【0122】
一方ステップSP3において否定結果が得られると、このことは引き続き集積させるべき硬貨が存在することを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP2へ戻り、集積すべき硬貨を全て集積するまで上述した処理を繰り返す。
【0123】
一方ステップSP2において否定結果が得られると、このことは、ステージ通常降下制御を行っている間に次々と筒収納部56内に放出され集積された硬貨が集積上面検知用センサ光軸L1に達したためステージ67を高速降下させる必要があることを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP4へ移る。ステップSP4において硬貨制御部12は、ステージ67を高速降下させ、ステップSP5へ移る。ステップSP5において硬貨制御部12は、ステージ67を通常降下させ、ステップSP6へ移る。ステップSP6において硬貨制御部12は、集積上面検知用センサSE2のON時間が規定値以内であるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは、ステージ高速降下制御を行った後にステージ通常降下制御を行っている間に次々と筒収納部56内に放出され集積された硬貨が、未だ集積上面検知用センサ光軸L1に達していないことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP2へ戻り、集積すべき硬貨を全て集積するまで上述した処理を繰り返す。
【0124】
一方ステップSP6において否定結果が得られると、このことは、硬貨立ちが発生しているため、ステージ高速降下制御を行っても、硬貨立ちが集積上面検知用センサ光軸L1を遮り続けていることを表し、このとき硬貨制御部12は筒収納部56内への硬貨CNの放出を中断し、ステップSP7へ移る。ステップSP7において硬貨制御部12は、硬貨立ちの発生又は脱調の発生を検出し、ステップSP8へ移る。
【0125】
ステップSP8において硬貨制御部12は、集積不良時ステージ上昇制御を行い、ステップSP9へ移る。ステップSP9において硬貨制御部12は、硬貨立ち確認制御を行い、ステップSP10へ移る。ステップSP10において硬貨制御部12は、硬貨立ち確認制御を行い、硬貨立ちが解消されたか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは硬貨立ちが解消されたことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP1へ戻り、筒収納部56内への硬貨CNの放出を再開し、集積すべき硬貨を全て集積するまで上述した処理を繰り返す。
【0126】
一方ステップSP10において否定結果が得られると、このことは硬貨立ちが解消していないことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP11へ移る。ステップSP11において硬貨制御部12は、集積不良時筒回転制御を行い、ステップSP12(図22)へ移る。ステップSP12において硬貨制御部12は、硬貨立ち確認制御を再び行い、ステップSP13へ移る。ステップSP13において硬貨制御部12は、硬貨立ちが解消されたか否かを再び判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは硬貨立ちが解消されたことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP1(図21)へ戻り、筒収納部56内への硬貨CNの放出を再開し、集積すべき硬貨を全て集積するまで上述した処理を繰り返す。
【0127】
一方ステップSP13において否定結果が得られると、このことは集積不良時ステージ上昇制御及び集積不良時筒回転制御を行ったものの硬貨立ちが解消していないことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP14へ移る。ステップSP14において硬貨制御部12は、集積不良時ステージ上昇制御及び集積不良時筒回転制御を所定回数行ったか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは、集積不良時ステージ上昇制御及び集積不良時筒回転制御を再度行えば硬貨立ちは解消する可能性はあることを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP8(図21)へ戻り、硬貨立ちが解消するまで、集積不良時ステージ上昇制御及び集積不良時筒回転制御を所定回数まで行う。
【0128】
一方ステップSP15において肯定結果が得られると、このことは、集積不良時ステージ上昇制御及び集積不良時筒回転制御を所定回数行ったが硬貨立ちは解消しなかったことを表し、このとき硬貨制御部12はステップSP15へ移る。ステップSP15において硬貨制御部12は、所定のエラー処理を行い、ステップSP16へ移り、集積処理を終了する。
【0129】
[7.動作及び効果等]
以上の構成において硬貨処理装置10は、集積不良である硬貨立ちの発生を検出すると、硬貨立ち状態となっている硬貨をステージ67を上昇させてアッパガイド40における当接部としてのアッパガイド下面40dSに接触させた後にステージ67を下降させる集積不良時ステージ上昇制御を行うようにした。このため硬貨処理装置10は、アッパガイド下面40dSに衝突した衝撃により、硬貨立ちとなっている硬貨の姿勢を変化させ、盤面が水平方向に沿う正常な状態にでき、硬貨立ちを解除できる。
【0130】
また硬貨処理装置10は、アッパガイド40に投入口40Iの硬貨ガイド40Igを形成することにより、アッパガイド下面40dSの一部分に傾斜形状や凹凸形状を存在させるようにした。このため硬貨処理装置10は、平面形状だけの箇所に硬貨を衝突させる場合と比較して、より一層硬貨の姿勢を崩しやすくできる。
【0131】
さらに硬貨処理装置10は、アッパガイド40に元々形成されている硬貨ガイド40Igを、立ち硬貨の姿勢を崩すことに利用するため、硬貨の姿勢を崩すための機構を別途形成することなく、構成を複雑化させずに、硬貨の姿勢を崩しやすくできる。
【0132】
さらに硬貨処理装置10は、集積不良である硬貨立ちの発生を検出すると、硬貨立ち状態となっている硬貨を、筒収納部回転体55を筒収納部回転体回転方向r1へ1回転させて左側カバー57Lにおける当接部としての左側カバー面57LSと右側カバー57Rにおける当接部としての右側カバー面57RSとに接触させる集積不良時筒回転制御を行うようにした。このため硬貨処理装置10は、左側カバー面57LS及び右側カバー面57RSに衝突した衝撃により、硬貨立ちとなっている硬貨の姿勢を変化させ、盤面が水平方向に沿う正常な状態にでき、硬貨立ちを解除できる。
【0133】
また硬貨処理装置10は、左側カバー面57LSに左側カバー孔部57Laを、右側カバー面57RSに右側カバー孔部57Raを形成することにより、左側カバー面57LS及び右側カバー面57RSの一部分に傾斜形状や凹凸形状を存在させるようにした。このため硬貨処理装置10は、平坦面形状だけの箇所に硬貨を衝突させる場合と比較して、より一層硬貨の姿勢を崩しやすくできる。
【0134】
さらに硬貨処理装置10は、左側カバー面57LSに元々形成されている左側カバー孔部57Laと右側カバー面57RSに元々形成されている右側カバー孔部57Raとを、立ち硬貨の姿勢を崩すことに利用するため、硬貨の姿勢を崩すための機構を別途形成することなく、構成を複雑化させずに、硬貨の姿勢を崩しやすくできる。
【0135】
以上の構成によれば現金自動預払機1は、使用者の操作を受け付ける操作表示部6と、硬貨を重ねて集積可能な筒状の収納空間としての硬貨集積空間SP1を備えた筒収納部56と、硬貨集積空間SP1内を移動可能であり硬貨が集積される載置面としての硬貨集積面67pSが形成されたステージ67と、ステージ67に集積された硬貨を当接部としてのアッパガイド下面40dS、左側カバー面57LS又は右側カバー面57RSに当接させることにより硬貨の姿勢を変化させる硬貨制御部12とを設けるようにした。
【0136】
これにより現金自動預払機1は、硬貨立ちとなっている硬貨の姿勢を変化させて硬貨立ちを解除できる。
【0137】
[8.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、集積不良時ステージ上昇制御を行う際に、所定のパルス分だけ集積機構モータ61を回転させることにより、ステージ67を所定の集積不良時ステージ上昇量だけ上昇させる場合について述べた。本発明はこれに限らず、一定時間だけ集積機構モータ61を回転させてステージ67を所定の集積不良時ステージ上昇量だけ上昇させても良い。また、集積上面検知用センサSE2がON状態となるまで集積機構モータ61を回転させてステージ67を上昇させても良い。さらに、集積上面検知用センサSE2がON状態となるまで集積機構モータ61を回転させてステージ67を上昇させた後に、所定のステージ移動量分か、モータ動作量か又はモータ動作時間かだけ集積機構モータ61を回転させることにより、ステージ67を上昇させても良い。
【0138】
さらに、現在筒収納部56に収納されている硬貨の枚数と硬貨の厚さとから、全ての硬貨が正常に集積されている場合の最上位硬貨の上面である硬貨集積上面の位置を算出し、算出した硬貨集積上面の位置と、ステージ67が下限位置にある場合の集積上面空間長さとから、全ての硬貨が正常に集積されていれば硬貨集積上面がアッパガイド下面40dSにぶつかる直前の位置までステージ67を上昇させるステージ移動量か、モータ動作量か又はモータ動作時間かを算出して集積機構モータ61を回転させてステージ67を上昇させても良い。さらに、その後、所定のステージ移動量分か、モータ動作量か又はモータ動作時間かだけ集積機構モータ61を回転させることにより、ステージ67を上昇させても良い。
【0139】
さらに、集積機構モータ61の脱調を検知するまで集積機構モータ61を回転させてステージ67を上昇させても良い。さらに、集積機構モータ61の過電流を検知するまで集積機構モータ61を回転させてステージ67を上昇させても良い。さらに、回転検知手段39で集積機構モータ61の出力軸の回転を検知できなくなるまでステージ67を上昇させても良い。この場合、収納されている立ち硬貨がアッパガイド下面40dSに当接し、物理的にステージ67がそれ以上上昇しなくなったことを集積機構モータ61の出力軸の回転から判断できる。
【0140】
さらに上述した実施の形態においては、アッパガイド下面40dSに硬貨ガイド40Igを形成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、硬貨ガイド40Igに加えて、他の凹凸形状をアッパガイド下面40dSに形成しても良い。
【0141】
さらに上述した実施の形態においては、それぞれ左側カバー57Lの左側カバー面57LSに左側カバー孔部57Laを、右側カバー57Rの右側カバー面57RSに右側カバー孔部57Raを形成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、左側カバー孔部57La及び右側カバー孔部57Raに加えて、他の凹凸形状を左側カバー面57LS又は右側カバー面57RSの少なくとも何れか一方に形成しても良い。または、少なくとも左側カバー面57LSか右側カバー面57RSかの何れか一方にカバー孔部を形成せずに平坦面としても良い。
【0142】
さらに上述した実施の形態においては、集積不良時筒回転制御を行う際に筒収納部回転体55を1回転させる場合について述べた。本発明はこれに限らず、硬貨回転動作を行う際に筒収納部回転体55を2回転以上の任意の回転数だけ回転させても良い。
【0143】
さらに上述した実施の形態においては、正常に集積動作が行えなかった場合、硬貨立ち解除動作として、まず集積不良時ステージ上昇制御を1回行ってから硬貨立ち確認制御を行い、それでも硬貨立ちを解消できなかった場合、集積不良時筒回転制御を1回行う場合について述べた。本発明はこれに限らず、正常に集積動作が行えなかった場合、硬貨立ち解除動作として、まず集積不良時筒回転制御を1回行ってから硬貨立ち確認制御を行い、それでも硬貨立ちを解消できなかった場合、集積不良時ステージ上昇制御を1回行う等、集積不良時ステージ上昇制御と集積不良時筒回転制御とを、任意のタイミングで任意の回数行っても良い。
【0144】
さらに上述した実施の形態においては、筒収納部56を円周に沿った方向へ移動させ受入対象筒収納部と繰出対象筒収納部とを切り替える場合について述べた。本発明はこれに限らず、筒収納部56を直線状や曲線状等、種々の移動経路に沿って移動させ、受入対象筒収納部と繰出対象筒収納部とを切り替えても良い。
【0145】
さらに上述した実施の形態においては、1つの筒収納部回転体55に3つの筒収納部56を設ける場合について述べた。本発明はこれに限らず、1つの筒収納部回転体55に2つの又は4つ以上の任意の個数の筒収納部56を設けても良い。
【0146】
さらに上述した実施の形態においては、現金自動預払機1に組み込まれる硬貨処理装置10に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば自動券売機等のように顧客との間で硬貨に関する取引を行う種々の装置や、金融機関の職員や小売店の店員等が現金を管理するために使用する現金管理装置等に本発明を適用しても良い。
【0147】
さらに上述した実施の形態においては、操作部としての操作表示部6と、筒収納部としての筒収納部56と、制御部としての硬貨制御部12とによって、自動取引装置としての現金自動預払機1を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる操作部と、筒収納部と、制御部とによって、自動取引装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明は、例えば顧客との間で硬貨に関する取引処理を行う現金自動預払機等でも利用できる。
【符号の説明】
【0149】
1……現金自動預払機、2……筐体、3……応対部、4……カード入出口、5……硬貨入出金口、6……操作表示部、7……テンキー、8……レシート発行口、9……主制御部、10……硬貨処理装置、11……硬貨処理装置筐体、12……硬貨制御部、13……入出金部、14……シュート部、15……上分離部、15A……集積分離部、15B……分離搬送部、15C……傾斜円盤、16……認識搬送部、17……受渡部、18……ピンベルト搬送部、18F……前ピンベルト搬送部、18D……下ピンベルト搬送部、18B……後ピンベルト搬送部、18U……上ピンベルト搬送部、21……スタッカ部、22……出金搬送部、23……一時保留部、24……補充回収庫、25……第1補充リジェクト庫、26……第2補充リジェクト庫、27……リジェクト庫、28……取忘取込庫、29……下分離部、29A……集積分離部、29B……分離搬送部、29C……傾斜円盤、31……案内部、39……回転検知手段、40……アッパガイド、40I……投入口、40Ig……硬貨ガイド、40dS……アッパガイド下面、42……ロアガイド、44……スタッカユニット、46……サイドガイド、50……収納部、51……収納駆動部、52……収納部モータ、53、54……ギア、55……筒収納部回転体、56……筒収納部、55AR……回転軸、55SL……ステージ入れ込みスリット、57……カバー、57L……左側カバー、57LS……左側カバー面、57La……左側カバー孔部、57R……右側カバー、57RS……右側カバー面、57Ra……右側カバー孔部、59……集積機構、60……集積駆動部、61……集積機構モータ、62……ステージ駆動ベルト、63、64……ギア、65……ステージ駆動ベルトプーリ、66……シャフト、67……ステージ、67p……積置部、67pS……硬貨集積面、67g……シャフト摺動部、67c……接続部、69……繰出機構、70……繰出駆動部、71……繰出機構モータ、72……繰出搬送部、73……分離ベルト、74……分離ベルトプーリ、SP1……硬貨集積空間、SP2……集積上面空間、Pr……受入位置、Pe……繰出位置、SE1……筒回転位置検知用センサ、DT1……筒回転位置検知用ディテクタ、SE2……集積上面検知用センサ、L1……集積上面検知用センサ光軸、SE3……ステージボトムポジションセンサ、SE4……集積回転位置検知用センサ、DT4……集積回転位置検知用ディテクタ、Sdp……位置出し降下速度、Adp……位置出し降下量、Sdn……通常降下速度、Adn……通常降下量、Sdh……高速降下速度、Adh……高速降下量、Adcn1……硬貨立ち確認時正常上昇量、Adcn2……残留検知時上昇量、CN……硬貨、CNu……最上位硬貨。
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