(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】駆動伝達装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
F16H 7/02 20060101AFI20230905BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20230905BHJP
F16H 55/36 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
F16H7/02 Z
G03G21/16 147
F16H55/36 Z
(21)【出願番号】P 2019040477
(22)【出願日】2019-03-06
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃宏
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-096611(JP,U)
【文献】実開昭58-150659(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-0380588(KR,B1)
【文献】特開2009-080300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/02
G03G 21/16
F16H 55/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動プーリーと、
従動プーリーと、
前記駆動プーリーと前記従動プーリーとに巻き掛けられたベルトと、を備え、
前記駆動プーリーと前記従動プーリーとの少なくとも一方の外周面には、径方向の外側に膨らむ形状にクラウニングされた膨出部が全周にわたって形成されており、
前記膨出部の軸方向の両端部のうち
前記ベルトが駆動されたときに前記ベルトが寄る側の端部のクラウニングの曲率半径が、前記膨出部の前記軸方向の中央部のクラウニングの曲率半径よりも小さ
く、
前記膨出部の前記軸方向の両端部のうち前記ベルトが駆動されたときに前記ベルトが寄らない側の端部のクラウニングの曲率半径が、前記中央部のクラウニングの曲率半径に等しいことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
前記中央部の前記軸方向の幅は、前記ベルトの前記軸方向の幅に等しく、
前記両端部は、前記軸方向における前記中央部よりも外側の部分であることを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の駆動伝達装置と、
前記駆動伝達装置によって回転する感光体ドラムと、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトを用いて駆動力を伝達する駆動伝達装置及び駆動伝達装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置には、像担持体として感光体ドラムが備えられている。感光体ドラムに駆動力を伝達する装置としては、モーター側の駆動プーリーと感光体ドラム側の従動プーリーに金属ベルト(例えば、ステンレスベルト)が巻き掛けられた構成が一般的であるが、最も低コストで高剛性な構成として、モーターの出力軸にベルトを直接掛ける構成が知られている。ベルトの蛇行を防ぐためには少なくとも一方のプーリーにクラウニング形状を設けることが有効であるが、長期間の使用によりベルトが伸びてベルトの安定位置が中央からずれることでベルトに偏荷重が作用し、プーリーやベルトの耐久性に悪影響を及ぼすという問題がある。
【0003】
そこで、従来、長期にわたりベルトの蛇行を抑制する技術の検討が行われている。例えば、特許文献1には、プーリー幅方向において線膨張係数を異ならせ、ベルトが寄った際に膨張量を調整することにより蛇行を補正することが記載されている。特許文献2には、ベルト耐久時の熱膨張による周長変化による蛇行制御をベルトを冷却することでコントロールすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-159865号公報
【文献】特開2014-159866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された構成では、プーリーが高価になってしまう。特許文献2に記載された構成では、長期間の使用による塑性変形によるベルトの伸びに対しては対応できない。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮し、ベルトをプーリーの中央で安定走行させ、且つ、ベルトへの偏荷重の発生を抑制することのできる駆動伝達装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る駆動伝達装置は、駆動プーリーと、従動プーリーと、前記駆動プーリーと前記従動プーリーとに巻き掛けられたベルトと、を備え、前記駆動プーリーと前記従動プーリーとの少なくとも一方の外周面には、径方向の外側に膨らむ形状にクラウニングされた膨出部が全周にわたって形成されており、前記膨出部の軸方向の両端部のうち少なくとも一方の端部のクラウニングの曲率半径が、前記膨出部の前記軸方向の中央部のクラウニングの曲率半径よりも小さいことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る駆動伝達装置において、前記膨出部の前記軸方向の両端部のうち前記ベルトが駆動されたときに前記ベルトが寄る側の端部のクラウニングの曲率半径が、前記中央部のクラウニングの曲率半径よりも小さくてもよい。
【0009】
本発明に係る駆動伝達装置において、前記中央部の前記軸方向の幅は、前記ベルトの前記軸方向の幅に等しく、前記両端部は、前記軸方向における前記中央部よりも外側の部分であってもよい。
【0010】
本発明に係る駆動伝達装置において、前記中央部は、軸方向に対称な形状にクラウニングされていてもよい。
【0011】
本発明に係る駆動伝達装置において、前記膨出部の軸方向の両端部のうち前記ベルトが駆動されたときに前記ベルトが寄らない側の端部のクラウニングの曲率半径が、前記中央部のクラウニングの曲率半径に等しくてもよい。
【0012】
また、本発明に係る画像形成装置は、上記のいずれかの駆動伝達装置と、前記駆動伝達装置によって回転する感光体ドラムと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ベルトをプーリーの中央で安定走行させ、且つ、ベルトへの偏荷重の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプリンターの内部構成を模式的に示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る駆動伝達装置の側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る従動プーリーの側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態の変形例に係る従動プーリーの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るプリンター1(画像形成装置の一例)及び駆動伝達装置31について説明する。
【0016】
まず、
図1を参照して、画像形成装置としてのプリンター1の全体の構成について説明する。
図1はプリンター1の内部構成を模式的に示す正面図である。以下、
図1における紙面手前側をプリンター1の正面側(前側)とし、左右の向きはプリンター1を正面から見た方向を基準として説明する。各図において、U、Lo、L、R、Fr、Rrは、それぞれ上、下、左、右、前、後を示す。
【0017】
プリンター1の装置本体3には、用紙S(シートの一例)が収容される給紙カセット5と、給紙カセット5から用紙Sを送り出す給紙装置7と、用紙Sにトナー像を形成する画像形成部9と、トナー像を用紙Sに定着する定着装置11と、用紙Sを排紙する排紙装置13と、排紙された用紙Sが積載された排紙トレイ15と、が備えられている。さらに、装置本体3には、給紙装置7から、画像形成部9、定着装置11を経て排紙装置13に向かう用紙Sの搬送路17が形成されている。
【0018】
画像形成部9には、感光体ドラム19、帯電装置21、露光装置23、現像装置25、転写ローラー27及びクリーニング装置29が備えられている。感光体ドラム19は、後述する駆動伝達装置31(
図2参照)によって駆動され、
図1の時計回り方向に回転する。帯電装置21、現像装置25、転写ローラー27及びクリーニング装置29は、感光体ドラム19の周囲に、感光体ドラム19の回転方向に沿って配置されている。
【0019】
給紙装置7によって給紙カセット5から給紙された用紙Sは、搬送路17に沿って画像形成部9に搬送される。画像形成部9において、感光体ドラム19は駆動伝達装置31によって駆動されて回転しながら、帯電装置21によって所定の表面電位に帯電する。その後、露光装置23によって露光されて、感光体ドラム19に静電潜像が形成される。次に、現像装置25によって静電潜像が現像されることでトナー像が形成される。トナー像は、転写ローラー27によって用紙Sに転写される。トナー像が転写された用紙Sは搬送路17に沿って定着装置11に送られ、定着装置11でトナー像が用紙Sに定着される。トナー像が定着された用紙Sは排紙装置13による排紙トレイ15に積載される。感光体ドラム19の表面に残留したトナーは、クリーニング装置29で除去される。
【0020】
次に、
図2及び3を参照して、駆動伝達装置31について説明する。
図2は駆動伝達装置31の側面図である。
図3は、従動プーリー37の側面図である。
【0021】
駆動伝達装置31は、駆動源であるモーター33と、モーター33によって駆動される駆動プーリー35と、従動プーリー37と、駆動プーリー35と従動プーリー37とに巻き掛けられたベルト39と、を備えている。
【0022】
モーター33は、装置本体3の側板3aに固定されている。モーター33の出力軸33aは、側板3aを貫通して装置本体3の内側に突出している。
【0023】
本実施形態では、モーター33の出力軸33aが駆動プーリー35を兼ねている。駆動プーリー35は、非磁性材料で形成されている。なお、出力軸33aが駆動プーリー35を兼ねる構成に代えて、出力軸33aとは別の駆動プーリー35が出力軸33aに設けられてもよい。
【0024】
従動プーリー37は、感光体ドラム19の回転軸19aの端部に固定されている。従動プーリー37は、非磁性材料で形成され、駆動プーリー35よりも大きい径を有している。駆動プーリー35と従動プーリー37との少なくとも一方の外周面には、径方向の外側に膨らむ形状にクラウニングされた膨出部41が全周にわたって形成されている。本実施形態では、
図3に示されるように、従動プーリー37に膨出部41が形成されているが、駆動プーリー35に膨出部41が形成されていてもよい。
【0025】
膨出部41の軸方向の両端部のうち右側の第1端部411のクラウニングの曲率半径R1は、膨出部41の軸方向の中央部41Cのクラウニングの曲率半径RCよりも大きい。
図3に示されるCは、中央部41Cのクラウニングの曲率中心である。中央部41Cは、軸方向に対称な形状にクラウニングされている。膨出部41の軸方向の両端部のうち左側の第2端部412のクラウニングの曲率半径R2は、中央部41Cのクラウニングの曲率半径RCに等しい。ここで、中央部41Cの軸方向の幅は、ベルト39の軸方向の幅に等しく、第1端部411及び第2端部412は、軸方向における中央部41Cよりも外側の部分である。
【0026】
ベルト39は、シームレスの無端状ベルトである。ベルト39は、SUS304(オーステナイト系ステンレス鋼)等の、非磁性の金属材料で形成されている。ベルト39は、駆動プーリー35と従動プーリー37とに巻き掛けられている。
【0027】
次に、駆動伝達装置31の動作について説明する。モーター33が駆動プーリー35を回転させると、ベルト39が周回し、従動プーリー37に駆動力が伝達され、感光体ドラム19が回転する。従動プーリー37の膨出部41においては、外径が大きいほど周速度が速くなることでベルト39を中央に戻す力が発生するから、ベルト39の蛇行が抑制される。
【0028】
ここで、ベルト39には張力が付与されているため、駆動プーリー35が従動プーリー37側へ倒れ込む方向(
図2のA方向)に微小に撓む、いわゆる軸倒れが発生する場合がある。そのため、従来は、長期間の使用によりベルト39が伸びて張力が低下するにつれて、ベルト39が右方向にずれてベルト39に偏荷重が作用するため、駆動プーリー35及び従動プーリー37に摩耗が生じたり、ベルト39の耐久性に悪影響を及ぼしたりするおそれがあった。また、ベルト39が駆動プーリー35及び従動プーリー37から脱落するおそれがあった。
【0029】
これに対して、本実施形態では、膨出部41の軸方向の両端部のうち右側の第1端部411(ベルト39が駆動されたときにベルト39が寄る側の端部の一例)のクラウニングの曲率半径R1が、中央部41Cのクラウニングの曲率半径RCよりも小さい。この構成により、第1端部411においては中央部41Cと比べてベルト39を中央に戻す力が強くなる。
【0030】
以上説明した本実施形態に係る駆動伝達装置31によれば、ベルト39を駆動プーリー35及び従動プーリー37の中央で安定走行させ、且つ、ベルト39への偏荷重の発生を抑制することができる。
【0031】
また、本実施形態に係る駆動伝達装置31によれば、第1端部411(膨出部41の軸方向の両端部のうちベルト39が駆動されたときにベルト39が寄る側の端部の一例)のクラウニングの曲率半径R1が、中央部41Cのクラウニングの曲率半径RCよりも小さいから、ベルト39が寄る方向が第1端部411側である場合に、ベルト39を駆動プーリー35及び従動プーリー37の中央で安定走行させ、且つ、ベルト39への偏荷重の発生を抑制する効果を確実に得ることができる。
【0032】
また、本実施形態に係る駆動伝達装置31によれば、中央部41Cの軸方向の幅がベルト39の軸方向の幅に等しく、第1端部411及び第2端部412が軸方向における中央部41Cよりも外側の部分であるから、ベルト39が中央部41Cからずれた場合にベルト39を中央部41Cへ戻すことができる。
【0033】
また、本実施形態に係る駆動伝達装置31によれば、中央部41Cが軸方向に対称な形状にクラウニングされているから、ベルト39を中央部41Cで安定走行させることができる。
【0034】
また、本実施形態に係る駆動伝達装置31によれば、第2端部412(膨出部41の軸方向の両端部のうちベルト39が駆動されたときにベルト39が寄らない側の端部の一例)のクラウニングの曲率半径R2が、中央部41Cのクラウニングの曲率半径RCに等しいから、従動プーリー37の加工の手間を軽減することができる。
【0035】
上記実施形態は、以下のように変形されてもよい。
【0036】
図4は、変形例に係る従動プーリー37の側面図である。この例は、第2端部412のクラウニングの曲率半径R2が第1端部411のクラウニングの曲率半径R1と等しい例である。駆動プーリー35が従動プーリー37側へ倒れ込む方向の軸倒れに加えて、駆動プーリー35が前側又は後側へ倒れ込む方向の軸倒れが発生した場合(換言すれば、駆動プーリー35の軸方向と従動プーリー37の軸方向とがねじれの位置にある場合)に、左右両方向にベルト39の寄りが発生する可能性がある。本変形例によれば、ベルト39の寄りがどの方向に発生しても、ベルト39を駆動プーリー35及び従動プーリー37の中央で安定走行させ、且つ、ベルト39への偏荷重の発生を抑制することができる。
【0037】
ベルト39の寄りが右方向に発生する場合に、第2端部412がクラウニングされていなくてもよい。ベルト39の寄りが左方向に発生する場合に、第1端部411がクラウニングされていなくてもよい。
【0038】
中央部41Cの幅は、ベルト39の幅よりも広くてもよく、ベルト39の幅よりも狭くてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 プリンター(画像形成装置)
9 画像形成部
19 感光体ドラム
31 駆動伝達装置
35 駆動プーリー
37 従動プーリー
39 ベルト
41 膨出部
411 第1端部(ベルトが寄る側の端部)
412 第2端部(ベルトが寄らない側の端部)
41C 中央部