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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】テープカセット
(51)【国際特許分類】
   B41J 15/04 20060101AFI20230905BHJP
   B65H 43/00 20060101ALI20230905BHJP
   B65H 19/12 20060101ALI20230905BHJP
   B41J 17/32 20060101ALI20230905BHJP
   B41J 3/36 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
B41J15/04
B65H43/00
B65H19/12 B
B41J17/32 A
B41J3/36 T
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019048035
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020146972
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】水谷 浩光
(72)【発明者】
【氏名】飯島 章太
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/033393(WO,A1)
【文献】特開2018-051774(JP,A)
【文献】特開2002-083482(JP,A)
【文献】特開2002-008342(JP,A)
【文献】特開平10-208436(JP,A)
【文献】特開2000-090637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 15/04
B65H 43/00
B65H 19/12
B41J 17/32
B41J 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも上壁及び下壁を有するカセットケースと、
前記カセットケース内において前記上壁及び前記下壁の間で支持され、第一テープが巻回された第一テープロールと、
前記カセットケース内において前記上壁及び前記下壁の間で支持され、前記第一テープが貼り付けられる第二テープが巻回された第二テープロールと、
前記上壁及び前記下壁の何れかに設けられた、無線通信でデータの読取り及び書込みが可能な、アンテナ及び記憶素子を少なくとも含むRFIDタグと
を備え、
前記第一テープ及び前記第二テープの何れかにキャラクタが印刷され、
前記RFIDタグの少なくとも一部は、前記第一テープロールの少なくとも一部と、前記第一テープロールの巻回中心が延びる所定方向に重複し、
前記第一テープロールは、前記カセットケース内に設けられた部品のうちで最も重量が大きいことを特徴とするテープカセット。
【請求項2】
少なくとも上壁及び下壁を有するカセットケースと、
前記カセットケース内において前記上壁及び前記下壁の間で支持され、キャラクタが印刷される第一テープが巻回された第一テープロールと、
前記上壁及び前記下壁の何れかに設けられた、無線通信でデータの読取り及び書込みが可能な、アンテナ及び記憶素子を少なくとも含むRFIDタグと
を備え
記RFIDタグの少なくとも一部は、前記第一テープロールの少なくとも一部と、前記第一テープロールの巻回中心が延びる所定方向に重複し、
前記第一テープロールは、前記カセットケース内に設けられた部品のうちで最も重量が大きい
ことを特徴とするテープカセット。
【請求項3】
少なくとも上壁及び下壁を有するカセットケースと、
前記カセットケース内において前記上壁及び前記下壁の間で支持され、キャラクタが印刷される第一テープが巻回された第一テープロールと、
前記上壁及び前記下壁の何れかに設けられた、無線通信でデータの読取り及び書込みが可能な、アンテナ及び記憶素子を少なくとも含むRFIDタグと
を備え、
前記RFIDタグには孔が設けられ、前記孔の少なくとも一部は、前記第一テープロールの少なくとも一部と、前記第一テープロールの巻回中心が延びる所定方向に重複し、
前記第一テープロールは、前記カセットケース内に設けられた部品のうちで最も重量が大きい
ことを特徴とするテープカセット。
【請求項4】
少なくとも上壁及び下壁を有するカセットケースと、
前記カセットケース内において前記上壁及び前記下壁の間で支持され、キャラクタが印刷される第一テープが巻回された第一テープロールと、
前記上壁及び前記下壁の何れかに設けられた、無線通信でデータの読取り及び書込みが可能な、アンテナ及び記憶素子を少なくとも含むRFIDタグと
を備え、
前記RFIDタグには孔が設けられ、前記RFIDタグの少なくとも一部は、前記第一テープロールの少なくとも一部と、前記第一テープロールの巻回中心が延びる所定方向に重複し、
前記第一テープロールは、前記カセットケース内に設けられた部品のうちで最も重量が大きい
ことを特徴とするテープカセット。
【請求項5】
前記カセットケース内において前記上壁及び前記下壁の間で支持され、インクリボンが巻回されたリボンロールと、
前記リボンロールが前記インクリボンを供給する正転方向とは反対の逆転方向に回転することを妨げる負荷を、前記リボンロールに与える金属製のクラッチと
を備え、
前記所定方向は、前記カセットケースの前後方向及び左右方向に直交する上下方向と平行であり、
前記カセットケースは、前記上下方向及び前記前後方向と平行に延び且つ前記カセットケースにおける前記左右方向の中心を通る第一仮想面と、前記上下方向及び前記左右方向と平行に延び且つ前記カセットケースにおける前記前後方向の中心を通る第二仮想面とによって、前記カセットケースを仕切った四つの分割領域を含み、
前記クラッチは、前記四つの分割領域のうちの一つである第一領域に設けられ、
前記RFIDタグは、前記四つの分割領域のうちで前記第一領域とは異なる第二領域に設けられる
ことを特徴とする請求項1からの何れかに記載のテープカセット。
【請求項6】
前記第二領域は、前記四つの分割領域のうちで、前記第一領域の対角に位置することを特徴とする請求項に記載のテープカセット。
【請求項7】
前記カセットケース内において前記上壁及び前記下壁の間で支持され、インクリボンが巻回されたリボンロールを備え、
前記所定方向は、前記カセットケースの上下方向と平行であり、
記上下方向と平行に延び且つ前記第一テープロールの巻回中心と前記リボンロールの巻回中心と結ぶ第三仮想面と、前記RFIDタグの少なくとも一部とは交差する
ことを特徴とする請求項1からの何れかに記載のテープカセット。
【請求項8】
前記カセットケース内において前記上壁及び前記下壁の間で支持され、未使用の前記インクリボンが巻回された供給リボンロールと、
前記カセットケース内において前記上壁及び前記下壁の間で支持され、前記供給リボンロールから引き出された前記インクリボンが巻回された巻取リボンロールと
を備え、
前記リボンロールは、前記供給リボンロール及び前記巻取リボンロールの何れかである
ことを特徴とする請求項に記載のテープカセット。
【請求項9】
前記第一テープロールと前記RFIDタグとの間に設けられた非磁性体であるシールド部材を備えたことを特徴とする請求項1からの何れかに記載のテープカセット。
【請求項10】
前記RFIDタグは、前記下壁のうちで前記カセットケースの外側を向く外面に配置され、且つ前記下壁の外面の一部が上方向に凹んだ凹部の内側に配置されることを特徴とする請求項1からの何れかに記載のテープカセット。
【請求項11】
前記RFIDタグは、前記下壁のうちで前記カセットケースの内側を向く内面に配置され、且つ前記下壁の内面のうちで前記第一テープロールと対向する位置に配置されることを特徴とする請求項1からの何れかに記載のテープカセット。
【請求項12】
前記カセットケースは、前記テープカセットがテープ印刷装置に装着された場合に、前記テープ印刷装置の印刷ヘッドが挿入されるヘッド開口を有し、
前記所定方向は、前記カセットケースの前後方向及び左右方向に直交する上下方向と平行であり、
前記ヘッド開口は、前記上下方向及び前記左右方向と平行に延び且つ前記カセットケースにおける前記前後方向の中心を通る仮想面によって、前記カセットケースを仕切った二つの分割領域の一方に設けられ、
前記RFIDタグは、前記二つの分割領域の他方に設けられる
ことを特徴とする請求項1から11の何れかに記載のテープカセット。
【請求項13】
前記カセットケースは、前記第一テープが排出される部位であって、前記テープカセットがテープ印刷装置に装着された場合に、前記テープ印刷装置のカッタの近傍に配置されるテープ排出部を有し、
前記所定方向は、前記カセットケースの前後方向及び左右方向に直交する上下方向と平行であり、
前記テープ排出部は、前記上下方向及び前記左右方向と平行に延び且つ前記カセットケースにおける前記前後方向の中心を通る仮想面によって、前記カセットケースを仕切った二つの分割領域の一方に設けられ、
前記RFIDタグは、前記二つの分割領域の他方に設けられる
ことを特徴とする請求項1から12の何れかに記載のテープカセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープカセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、データを記憶可能な記憶素子が設けられたテープカセットが知られている。例えば特許文献1は、無線回路記憶素子をケースの外周側壁面に設けたテープカセット(同文献の図4図6等参照)や、無線回路記憶素子をケースの底面部に設けたテープカセット(同文献の図80図82等参照)を開示する。テープ印刷装置は、テープカセットがテープ印刷装置に装着された状態で、無線回路記憶素子に対して無線通信でデータの読取り及び書込みを行うためのアンテナを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2006/033393号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、所謂ラミネートタイプのテープカセットでは、印刷に用いられるインクリボン、キャラクタが印刷されるフィルムテープ、印刷済みのフィルムテープに貼り付けられる粘着テープ等が、カセットケース内に収容される。ラミネートタイプのテープカセットにおいて最も重量が大きい部材は、粘着テープが巻回された粘着テープロールである。換言すると、ラミネートタイプのテープカセットの重心は、粘着テープロールの位置と略等しい。
【0005】
テープカセットがテープ印刷装置に装着された状態では、テープカセットの重心から遠く離れた部位ほど姿勢が不安定になりやすい。特許文献1のテープカセットでは、無線回路記憶素子が粘着テープロールから相対的に遠く離れた位置に設けられている。そのため、テープカセットがテープ印刷装置に装着された状態において、無線回路記憶素子の位置が不安定になりやすい。無線回路記憶素子の位置が不安定になると、無線回路記憶素子がテープ印刷装置のアンテナと適正な位置関係を維持できず、無線回路記憶素子とアンテナとの間で通信不良が生じるおそれがある。
【0006】
上記の通信不良を抑制するために、テープ印刷装置に装着されたテープカセットを開閉カバーで押さえることで、テープカセットの姿勢を安定させることが考えられる。しかしながら、開閉カバーが開かれた状態であっても、テープカセットの無線回路記憶素子とテープ印刷装置のアンテナとの間で無線通信を行う必要性が生じる場合がある。また、テープカセットを開閉カバーで押さえた場合でも、例えばテープカセットが傾いた姿勢でテープ印刷装置に装着されると、テープカセットを適正な姿勢で保持できないおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、例えばテープカセットがテープ印刷装置に装着された状態で、テープカセットに設けられたRFIDタグの位置をより安定させることができるテープカセットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一態様に係るテープカセットは、少なくとも上壁及び下壁を有するカセットケースと、前記カセットケース内において前記上壁及び前記下壁の間で支持され、第一テープが巻回された第一テープロールと、前記カセットケース内において前記上壁及び前記下壁の間で支持され、前記第一テープが貼り付けられる第二テープが巻回された、前記第一テープロールよりもロール径が小さい第二テープロールと、前記上壁及び前記下壁の何れかに設けられた、無線通信でデータの読取り及び書込みが可能な、アンテナ及び記憶素子を少なくとも含むRFIDタグとを備え、前記第一テープ及び前記第二テープの何れかにキャラクタが印刷され、前記RFIDタグの少なくとも一部は、前記第一テープロールの少なくとも一部と、前記第一テープロールの巻回中心が延びる所定方向に重複することを特徴とする。
【0009】
本発明の第二態様に係るテープカセットは、少なくとも上壁及び下壁を有するカセットケースと、前記カセットケース内において前記上壁及び前記下壁の間で支持され、キャラクタが印刷される第一テープが巻回された第一テープロールと、前記上壁及び前記下壁の何れかに設けられた、無線通信でデータの読取り及び書込みが可能な、アンテナ及び記憶素子を少なくとも含むRFIDタグとを備え、前記第一テープロールから引き出された前記第一テープは、他のテープが貼り合わせられることなく、前記カセットケースから排出され、前記RFIDタグの少なくとも一部は、前記第一テープロールの少なくとも一部と、前記第一テープロールの巻回中心が延びる所定方向に重複することを特徴とする。
【0010】
本発明の第三態様に係るテープカセットは、少なくとも上壁及び下壁を有するカセットケースと、前記カセットケース内において前記上壁及び前記下壁の間で支持され、キャラクタが印刷される第一テープが巻回された第一テープロールと、前記上壁及び前記下壁の何れかに設けられた、無線通信でデータの読取り及び書込みが可能な、アンテナ及び記憶素子を少なくとも含むRFIDタグとを備え、前記RFIDタグには孔が設けられ、前記孔の少なくとも一部は、前記スプールの少なくとも一部と、前記第一テープロールの巻回中心が延びる所定方向に重複することを特徴とする。
【0011】
本発明の第一~第三態様に係るテープカセットによれば、例えばテープカセットがテープ印刷装置に装着された状態で、テープカセットに設けられたRFIDタグの位置をより安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】カセットカバー6が開かれた状態にあるテープ印刷装置1の斜視図である。
図2】テープカセット30及びカセット装着部8を説明するための斜視図である。
図3】テープカセット30が装着されたカセット装着部8の平面図である。
図4】上ケース311を取り除いたテープカセット30の平面図である。
図5】テープカセット30の底面図である。
図6図5のI-I線矢視方向断面図である。
図7】上ケース311を取り除いた、第一変形例に係るテープカセット30Aの平面図である。
図8】第一変形例に係るテープカセット30Aの底面図である。
図9】第二変形例に係るテープカセット30BのI-I線矢視方向断面図である。
図10】第三変形例に係るテープカセット30CのI-I線矢視方向断面図である。
図11】第四変形例に係るテープカセット30DのI-I線矢視方向断面図である。
図12】第五変形例に係るテープカセット30Eの斜視図である。
図13】第五変形例に係るテープカセット30Eの底面図である。
図14】第六変形例に係るテープカセット30Fの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載される装置の構成などは、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。本実施形態の説明では、図1の左下側、右上側、右下側、左上側、上側、下側を、それぞれテープ印刷装置1の前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。図2の右下側、左上側、右上側、左下側、上側、下側を、それぞれテープカセット30の前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
【0014】
図1図3を参照して、テープ印刷装置1を説明する。説明の便宜上、図2及び図3では、カセット装着部8の周囲を形成する側壁が図示されている。図2に図示するギヤ91、93、94、97、98、101を含むギヤ群は、実際にはキャビティ811の底面により覆い隠されている。本実施形態のテープ印刷装置1は、1台でサーマルタイプ、レセプタタイプ、ラミネートタイプ等、各種のテープカセットを使用可能な汎用のテープ印刷装置である。サーマルタイプのテープカセットは、感熱紙テープを備える。レセプタタイプのテープカセットは、印刷テープとインクリボンとを備える。ラミネートタイプのテープカセットは、両面粘着テープとフィルムテープとインクリボンとを備える。
【0015】
図1に示すように、テープ印刷装置1は、略直方体形状の本体カバー2を備える。本体カバー2上面の前部には、キーボード3が配設される。キーボード3の後側には、ディスプレイ5が設けられる。ディスプレイ5の後側には、テープカセット30(図2参照)の交換時に開閉されるカセットカバー6が設けられる。本体カバー2の内部には、テープカセット30を着脱可能な領域であるカセット装着部8が設けられている。本体カバー2の左側面後方には、排出スリット111が設けられる。印刷済みのテープは、排出スリット111を介してカセット装着部8から排出される。
【0016】
図1及び図2に示すように、カセット装着部8は、キャビティ811及び角支持部812を含む。キャビティ811は、カセットケース31の底面302の形状と略対応するように凹設された、平面状の底面を有する凹部である。角支持部812は、キャビティ811の外縁から水平に延びる平面部である。角支持部812は、カセット装着部8に装着されたテープカセット30の周縁の下面を支持する。カセット装着部8の前部には、金属製のヘッドホルダ74が設けられる。ヘッドホルダ74は、発熱体(図示せず)を備えるサーマルヘッド10を搭載する。テープカセット30がカセット装着部8に装着された場合、ヘッドホルダ74はヘッド開口39に挿入される。
【0017】
カセット装着部8の外側には、テープ駆動モータ23が配設される。テープ駆動モータ23の駆動軸の下端には、ギヤ91が固着される。ギヤ91はギヤ93に噛み合う。ギヤ93はギヤ94に噛み合う。ギヤ94はギヤ97に噛み合う。ギヤ97はギヤ98に噛み合う。ギヤ98はギヤ101に噛み合う。ギヤ94の上面には、リボン巻取軸95が立設される。リボン巻取軸95は、リボン巻取スプール43に着脱可能な軸体である。ギヤ101の上面には、テープ駆動軸100が立設される。テープ駆動軸100は、テープ駆動ローラ46の孔部461に着脱可能な軸体である。
【0018】
テープカセット30がカセット装着部8に装着された状態で、テープ駆動モータ23が反時計回り方向にギヤ91を回転駆動すると、ギヤ93、ギヤ94を介して、リボン巻取軸95が反時計回り方向に回転駆動する。リボン巻取軸95は、リボン巻取軸95に装着されたリボン巻取スプール43を回転駆動する。更にギヤ94の回転は、ギヤ97、ギヤ98、ギヤ101を介してテープ駆動軸100に伝達されて、テープ駆動軸100が時計回り方向に回転駆動する。テープ駆動軸100は、テープ駆動軸100に装着されたテープ駆動ローラ46を回転駆動する。
【0019】
図3に示すように、ヘッドホルダ74の前側には、アーム状のプラテンホルダ12が設けられる。プラテンホルダ12は、軸支部121を中心に揺動可能に軸支される。プラテンホルダ12の先端側には、プラテンローラ15及び可動搬送ローラ14が回転可能に軸支される。プラテンローラ15は、サーマルヘッド10に対向して、サーマルヘッド10と接離可能である。可動搬送ローラ14は、テープ駆動軸100に装着されているテープ駆動ローラ46に対向して、テープ駆動ローラ46と接離可能である。
【0020】
プラテンホルダ12には、カセットカバー6の開閉に連動して左右方向に移動するリリースレバー(図示外)が連結される。カセットカバー6が開放されると、リリースレバーが右方向に移動して、プラテンホルダ12が図3に示す待機位置に向けて移動する。図3に示す待機位置では、プラテンホルダ12がカセット装着部8から離隔するので、ユーザがテープカセット30をカセット装着部8に対して着脱可能である。
【0021】
カセットカバー6が閉鎖されると、リリースレバーが左方向に移動して、プラテンホルダ12が印刷位置(図示せず)に向けて後方向に移動する。印刷位置では、プラテンホルダ12がカセット装着部8に近接する。テープカセット30がカセット装着部8に装着されている場合、プラテンローラ15がテープを介してサーマルヘッド10を押圧する。同時に、可動搬送ローラ14がテープを介してテープ駆動ローラ46を押圧する。印刷位置では、テープ印刷装置1がカセット装着部8に装着されているテープカセット30を使用して印刷を行うことが可能である。
【0022】
排出スリット111(図1参照)の右側には、カット機構17が設けられる。カット機構17は、テープカセットから排出されたテープを所定位置でカットする。カット機構17は、金属製の固定刃18及び移動刃19を有する。移動刃19は、固定刃18に対向して、前後方向(図3の上下方向)に移動可能である。
【0023】
テープ印刷装置1は、RFID(Radio frequency identification)タグに対するデータの読取り及び書込みを近距離無線通信で実行可能なRFIDリーダライタ200を備える。RFIDリーダライタ200は、公知のRFIDリーダライタと同様の構成であり、アンテナ201とリーダライタIC(図示外)とを備える。図1及び図2に示すように、アンテナ201は、キャビティ811の底面に設けられる。アンテナ201は、カセット装着部8に装着されたテープカセット30のRFIDタグ350(図4図6参照)と上下方向に対向する位置に設けられる。
【0024】
図2及び図3を参照して、テープカセット30の概略構成を説明する。テープカセット30は、内部に収納されるテープの種類を適宜変更することによって、サーマルタイプ、ラミネートタイプ、レセプタタイプ等に実装可能な汎用カセットである。本実施形態では、ラミネートタイプのテープカセット30を例示する。
【0025】
図2に示すように、テープカセット30は、その筐体であるカセットケース31を備えている。カセットケース31は、全体としては平面視で丸みを帯びた角部を有する略長方体状(箱型)である。カセットケース31は、上ケース311と下ケース312とを含む。下ケース312は、カセットケース31の底面302を有する下壁306を含む。上ケース311は、カセットケース31の上面301を有する上壁305を含む。上ケース311は、下ケース312の上部に固定される。
【0026】
カセットケース31には、カセットケース31内に装着されるローラやスプールを回転可能に支持する5つの支持部を有する。以下の説明では、カセットケース31の左側前部に設けられた支持部を、ローラ支持部64という。カセットケース31の左側後部、右側後部、右側前部に設けられた支持部を、それぞれ、第一テープ支持部65、第二テープ支持部66、リボン支持部67という。平面視で第一テープ支持部65とリボン支持部67との間に設けられた支持部を、巻取スプール支持部68という。
【0027】
ローラ支持部64は、テープ駆動ローラ46(図3参照)を回転可能に支持する。第一テープ支持部65は、第一テープスプール40(図3参照)を回転可能に支持する。第二テープ支持部66は、第二テープスプール41(図3参照)を回転可能に支持する。リボン支持部67は、リボン供給スプール42(図3参照)を回転可能に支持する。巻取スプール支持部68は、リボン巻取スプール43(図3参照)を回転可能に支持する。
【0028】
カセットケース31の前壁32は、アーム前面壁35を含む。アーム前面壁35は、カセットケース31の前端における左右方向中央を跨いで、左右方向に延びる。アーム前面壁35から後方へ離隔した位置には、カセットケース31の上下方向に亘って延びるアーム背面壁37が設けられる。アーム前面壁35とアーム背面壁37とで前後に規定される、テープカセット30の右前部から左方に延びる部位は、アーム部34である。アーム部34の左端部には、排出口341が設けられる。排出口341は、アーム前面壁35とアーム背面壁37との間で上下方向に延びる隙間である。
【0029】
アーム背面壁37の右端部から後方に延び、且つ、アーム背面壁37と平行に延びる周壁は、ヘッド周壁36である。アーム背面壁37とヘッド周壁36とによって規定される、テープカセット30を上下方向に貫通する平面視略長方形状の空間は、ヘッド開口39である。ヘッド開口39は、アーム部34の後側に隣接し、下壁306と上壁305とを上下方向に貫通している。ヘッド開口39は、カセットケース31の左右方向中心を跨いで左右方向に延びる。ヘッド開口39の左部は、露出部77を介して、テープカセット30の前側に露出する。ヘッド開口39には、サーマルヘッド10を支持するヘッドホルダ74が挿入される。
【0030】
図3に示すように、カセットケース31内には、両面粘着テープ58、フィルムテープ59、及びインクリボン60が収納される。フィルムテープ59は、インクリボン60を用いてキャラクタが印刷される透明なテープである。両面粘着テープ58は、両面に粘着層が形成され且つ一面に剥離紙が貼着されたテープであり、フィルムテープ59の印刷面に貼り合わされる。両面粘着テープ58、フィルムテープ59、及びインクリボン60は、夫々の幅方向がカセットケース31の上下方向と平行となるように、夫々の搬送経路上を搬送される。
【0031】
カセットケース31内には、テープを収納可能な領域である第一テープ領域400及び第二テープ領域410が設けられる。第一テープ領域400は、カセットケース31内の左側後部に設けられた、平面視略円形の領域である。本実施形態では、第一テープロール571が第一テープ領域400に収容される。第一テープロール571では、第一テープ支持部65によって支持された第一テープスプール40を中心として、両面粘着テープ58がその剥離紙を外側に向けて巻回される。
【0032】
第二テープ領域410は、カセットケース31内の右側後部に設けられた、平面視略円形の領域である。本実施形態では、第二テープロール572が第二テープ領域410に収容される。第二テープロール572では、第二テープ支持部66によって支持された第二テープスプール41を中心として、フィルムテープ59が巻回される。
【0033】
カセットケース31内の右側前部には、供給リボンロール573が収容される。供給リボンロール573では、リボン支持部67によって支持されたリボン供給スプール42を中心として、インクリボン60が巻回される。カセットケース31内のうち、第一テープ領域400、第二テープ領域410、リボン供給スプール42、及びヘッド開口39に囲まれた領域には、巻取リボンロール574が収容される。巻取リボンロール574では、巻取スプール支持部68によって支持されたリボン巻取スプール43を中心として、インクリボン60が巻回される。
【0034】
上述した第一テープロール571、第二テープロール572、供給リボンロール573、及び巻取リボンロール574は、各々の回転中心(即ち、巻回中心)が上下方向に延びる状態で、カセットケース31内において上壁305及び下壁306の間で支持される。第二テープロール572のロール径は、第一テープロール571のロール径よりも小さい。本実施形態のロール径は、各ロールの回転中心(即ち、巻回中心)を基準とした、上下方向と直交する径方向の長さである。
【0035】
テープカセット30は、金属製のクラッチ330、340を有する。クラッチ330は、供給リボンロール573がインクリボン60を供給する正転方向とは反対の逆転方向に回転することを妨げる負荷を、供給リボンロール573に与える。クラッチ340は、巻取リボンロール574がインクリボン60を巻取る正転方向とは反対の逆転方向に回転することを妨げる負荷を、巻取リボンロール574に与える。本実施形態では、クラッチ330は、リボン供給スプール42の下部に設けられた、リボン供給スプール42の逆転を抑制するコイルバネである。クラッチ340は、リボン巻取スプール43の下部に設けられた、リボン巻取スプール43の逆転を抑制するコイルバネである。
【0036】
ヘッド開口39の左側には、分離部61が設けられる。分離部61は、露出部77の左側(つまり、テープ搬送方向下流側)で、フィルムテープ59とインクリボン60とを分離する部位である。分離部61の左側には、ローラ支持部64によって支持されたテープ駆動ローラ46が設けられる。テープ駆動ローラ46の外周面の一部である前面は、カセットケース31の外部に露出する。テープ駆動ローラ46の左側には、印刷済テープ50をテープカセット30の外部に排出するためのテープ排出部49が設けられる。テープ排出部49は、テープカセット30がテープ印刷装置1に装着された場合に、カット機構17の近傍に配置される。
【0037】
図4図6を参照して、RFIDタグ350の詳細を説明する。本実施形態のテープカセット30では、無線通信でデータの読取り及び書込みが可能なRFIDタグ350が、下壁306に設けられる。RFIDタグ350の少なくとも一部は、第一テープロール571の少なくとも一部と、第一テープロール571の巻回中心AX1が延びる方向(本実施形態では上下方向)に重複する。巻回中心AX1は、第一テープロール571の平面視中心を通り、且つ上下方向に延びる仮想直線として表される。
【0038】
詳細には、RFIDタグ350は、シール基材351、記憶素子352、及びアンテナ353を有する。シール基材351は、表面に記憶素子352及びアンテナ353が配設され、且つ裏面に粘着層が形成された、円形のフィルムシートである。記憶素子352は、高周波回路、メモリ、電源回路を備えたICチップであり、シール基材351の平面中心に配置される。例えばメモリには、テープカセット30の識別番号、テープ種別、テープ幅、印刷色等を示すデータが記憶される。アンテナ353は、シール基材351上において記憶素子352を中心に巻回されたコイル状のアンテナである。RFIDタグ350は、平面視で第一テープ領域400よりも小さい。本実施形態のRFIDタグ350は、パッシブ型RFIDタグであるが、アクティブ型RFIDタグでもよい。
【0039】
下壁306には、第一テープロール571の下方に位置するタグ取付部306Aが形成される。タグ取付部306Aは、底面302の一部が上方向に凹んだ凹部であり、且つRFIDタグ350に対応する大きさの円形状である。図6に示すように、タグ取付部306Aの内側には、RFIDタグ350及びシールド部材360が配置される。シールド部材360は、公知の電磁遮蔽材で形成された、RFIDタグ350に対応する大きさの円形状シートである。シールド部材360は、タグ取付部306A内の天面に接着される。シールド部材360の下面に、RFIDタグ350が接着される。即ちシールド部材360は、第一テープロール571とRFIDタグ350との間に設けられた非磁性体である。
【0040】
このようにRFIDタグ350は、下壁306のうちでカセットケース31の外側を向く外面(底面302)に配置され、且つ底面302の一部が上方向に凹んだタグ取付部306Aの内側に配置される。シールド部材360とRFIDタグ350を重ねた厚みは、タグ取付部306Aの深さよりも小さい。従ってRFIDタグ350は、タグ取付部306Aの外側に突出することなく、タグ取付部306Aの内側に保持される。なお、タグ取付部306Aに配置されたRFIDタグ350の中心部(即ち、記憶素子352)は、平面視で第一テープロール571の巻回中心AX1の後方にある。
【0041】
図4及び図5に示すように、カセットケース31は、カセットケース31を第一仮想面C1と第二仮想面C2とによって仕切った四つの分割領域R1~R4を含む。第一仮想面C1は、上下方向及び前後方向と平行に延び、且つカセットケース31における左右方向の中心を通る。第二仮想面C2は、上下方向及び左右方向と平行に延び、且つカセットケース31における前後方向の中心を通る。第一仮想面C1と第二仮想面C2との交線は、テープカセット30の平面中心を通って上下方向に延びる仮想的な中心線Cである。
【0042】
分割領域R1は、カセットケース31のうちで中心線Cの左後側にある領域である。分割領域R2は、カセットケース31のうちで中心線Cの右後側にある領域である。分割領域R3は、カセットケース31のうちで中心線Cの右前側にある領域である。分割領域R4は、カセットケース31のうちで中心線Cの左前側にある領域である。本実施形態では、クラッチ330、340が分割領域R2、R3に設けられるのに対し、RFIDタグ350の全体が分割領域R2、R3とは異なる分割領域R1に設けられる。詳細には、分割領域R1は、四つの分割領域R1~R4のうちで分割領域R3の対角に位置する領域である。
【0043】
カセットケース31は、カセットケース31を第二仮想面C2によって仕切った二つの分割領域として、分割領域R1、R2を合わせた前側領域と、分割領域R3、R4を合わせた後側領域とを含む。ヘッド開口39は、第二仮想面C2によってカセットケース31を仕切った二つの分割領域の一方(前側領域)に設けられる。RFIDタグ350は、これら二つの分割領域の他方(後側領域)に設けられる。なおテープ排出部49も、これら二つの分割領域の他方(後側領域)に設けられる。
【0044】
RFIDタグ350の少なくとも一部は、仮想面V1及び仮想面V2と交差する位置に設けられる。仮想面V1は、第一テープロール571の巻回中心AX1と供給リボンロール573の巻回中心AX2と結ぶ、上下方向に延びる仮想面である。巻回中心AX2は、供給リボンロール573の平面視中心を通り、且つ上下方向に延びる仮想直線として表される。仮想面V2は、第一テープロール571の巻回中心AX1と巻取リボンロール574の巻回中心AX3と結ぶ、上下方向に延びる仮想面である。巻回中心AX3は、巻取リボンロール574の平面視中心を通り、且つ上下方向に延びる仮想直線として表される。
【0045】
図3を参照し、テープ印刷装置1の印刷動作を説明する。ユーザがラミネートタイプのテープカセット30をカセット装着部8に装着すると、RFIDタグ350はアンテナ201に対して上方から近接する。テープ印刷装置1は、RFIDリーダライタ200を介してRFIDタグ350からデータを読み取る。テープ印刷装置1は、RFIDタグ350から読み取ったデータ(例えばテープ種類やテープ幅)に応じて、以下の印刷動作を制御可能である。またテープ印刷装置1は、例えばキーボード3から入力されたデータを、RFIDリーダライタ200を介してRFIDタグ350に書込み可能である。
【0046】
印刷動作が開始されると、テープ駆動ローラ46及びリボン巻取スプール43が回転駆動される。テープ駆動ローラ46と可動搬送ローラ14との協働によって、第二テープロール572からフィルムテープ59が引き出され、且つ、第一テープロール571から両面粘着テープ58が引き出される。引き出されたフィルムテープ59は、カセットケース31の右前隅部に向けて搬送された後、供給リボンロール573の外側を通ってアーム部34内に向けて搬送される。引き出された両面粘着テープ58は、テープ駆動ローラ46の前面側に向けて搬送される。リボン巻取スプール43の回転に伴って、供給リボンロール573からインクリボン60が引き出される。引き出されたインクリボン60は、アーム部34内に向けて搬送される。
【0047】
アーム部34内を搬送されるフィルムテープ59及びインクリボン60は、排出口341で互いに重ね合わされて、露出部77に向けて排出される。露出部77では、サーマルヘッド10がフィルムテープ59と重ね合っているインクリボン60を使用して、フィルムテープ59にキャラクタを印刷する。印刷に使用されたインクリボン60は、分離部61によってフィルムテープ59から分離され、リボン案内壁38に沿って移動した後に、巻取リボンロール574に巻き取られる。インクリボン60が分離されたフィルムテープ59は、テープ駆動ローラ46の前面側に搬送される。
【0048】
フィルムテープ59及び両面粘着テープ58は、テープ駆動ローラ46と可動搬送ローラ14との間を経由して、テープ排出部49に向かって搬送される。このとき、両面粘着テープ58がフィルムテープ59の印刷面に貼り付けられることで、印刷済テープ50が得られる。印刷済テープ50は、テープ排出部49から外部に排出され、カット機構17によってカットされる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態のテープカセット30は、カセットケース31と、第一テープロール571と、第一テープロール571よりもロール径が小さい第二テープロール572と、RFIDタグ350とを備える。フィルムテープ59及び両面粘着テープ58の何れかにキャラクタが印刷される。RFIDタグ350の少なくとも一部は、第一テープロール571の少なくとも一部と、第一テープロール571の巻回中心AX1が延びる所定方向(上下方向)に重複する。
【0050】
これによれば、RFIDタグ350の少なくとも一部は、テープカセット30の構成部品のうちで最も重量の大きい第一テープロール571と所定方向に重複する。これにより、RFIDタグ350は、テープカセット30の重心に近い位置に配置される。例えばテープカセット30がテープ印刷装置1に装着された状態では、テープカセット30の重心から近い位置ほど姿勢が安定しやすいため、RFIDタグ350の位置をより安定させることができる。その結果、RFIDリーダライタ200とRFIDタグ350との間で、より良好な無線通信を実現できる。
【0051】
クラッチ330、340は分割領域R2、R3に設けられるのに対し、RFIDタグ350は分割領域R2、R3とは異なる分割領域R1に設けられる。これによれば、RFIDタグ350は、金属製部品であるクラッチ330、340から相対的に遠い位置に配置される。従って、RFIDリーダライタ200とRFIDタグ350との無線通信が、クラッチ330、340によって阻害されることを抑制できる。更に分割領域R1は、四つの分割領域R1~R4のうちで分割領域R3の対角に位置する領域である。これによれば、クラッチ330に対してRFIDタグ350をより遠く離れた位置に配置できるため、クラッチ330に起因する無線通信障害をより確実に抑制できる。
【0052】
RFIDタグ350の少なくとも一部は、仮想面V1及び仮想面V2の少なくとも一つと交差する位置に設けられる。これによれば、リボンロール(供給リボンロール573、巻取リボンロール574)は相対的に重量が重いため、テープカセット30の重心は第一テープロール571とリボンロールとの間に位置しやすい。従って、RFIDタグ350の少なくとも一部を仮想面V1及び仮想面V2の少なくとも一つと交差する位置に設けることで、RFIDタグ350をテープカセット30の重心により近い位置に配置できる。
【0053】
第一テープロール571とRFIDタグ350との間に、非磁性体であるシールド部材360が設けられる。これによれば、RFIDリーダライタ200とRFIDタグ350との無線通信に対するテープカセット30の金属製部品の影響を、シールド部材360によって確実に抑制できる。
【0054】
RFIDタグ350は、下壁306のうちでカセットケース31の外側を向く底面302に配置され、且つ底面302の一部が上方向に凹んだタグ取付部306Aの内側に配置される。これによれば、RFIDタグ350はタグ取付部306Aの外側に突出しないため、例えばテープカセット30の落下時などに、RFIDタグ350に歪みが生じることを抑制できる。
【0055】
ヘッド開口39は二つの分割領域の一方(前側領域)に設けられるのに対し、RFIDタグ350は二つの分割領域の他方(後側領域)に設けられる。これによれば、ヘッド開口39に挿入される金属製のヘッドホルダ74に対して、RFIDタグ350をより遠く離れた位置に配置できるため、ヘッドホルダ74に起因する無線通信障害をより確実に抑制できる。
【0056】
本発明は、上記実施形態に限定されず、各種変形が可能である。以下、各種変形例に係るテープカセット30を説明する。以下では、上記実施形態と同一構成については同一符号を付して説明を省略し、変形例に固有の部分を中心に説明する。
【0057】
図7及び図8を参照して、第一変形例に係るテープカセット30Aを説明する。テープカセット30Aは、上記実施形態と対比してテープ種類が異なる。図7及び図8に示すように、テープカセット30Aはレセプタタイプで実装されており、印刷テープ55及びインクリボン60がカセットケース31内に収納される。具体的には、カセットケース31内の右側部分に、第一テープスプール40を中心として印刷テープ55が巻回された第一テープロール571が収容される。本例の印刷テープ55は、印刷シートの片面に形成された接着層に剥離シートが貼り付けられた複数層のテープである。カセットケース31内の左側後部には、巻取リボンロール574が収容される。カセットケース31内のうち、第一テープロール571、巻取リボンロール574、及びヘッド開口39に囲まれた領域には、供給リボンロール573が収容される。
【0058】
テープカセット30Aでは、上記実施形態と同様に、RFIDタグ350が下壁306に設けられる。RFIDタグ350の少なくとも一部は、第一テープロール571の少なくとも一部と、第一テープロール571の巻回中心AX1が延びる方向に重複する。詳細には、第一テープロール571の下方に位置するタグ取付部306Aが、下壁306に形成される。タグ取付部306Aの内側には、RFIDタグ350及びシールド部材360が配置される(図6参照)。RFIDタグ350の少なくとも一部は、仮想面V1及び仮想面V2と交差する位置に設けられる。
【0059】
テープカセット30Aでは、上記実施形態と異なり、クラッチ330、340が分割領域R1、R4に設けられる。RFIDタグ350の全体は、分割領域R1、R4とは異なる分割領域R2に設けられる。分割領域R2は、四つの分割領域R1~R4のうちで分割領域R4の対角に位置する。カセットケース31は、カセットケース31を第一仮想面C1によって仕切った二つの分割領域として、分割領域R1、R4を合わせた左側領域と、分割領域R2、R3を合わせた右側領域とを含む。テープ排出部49は、第一仮想面C1によってカセットケース31を仕切った二つの分割領域の一方(左側領域)に設けられる。RFIDタグ350は、これら二つの分割領域の他方(右側領域)に設けられる。
【0060】
図示しないが、テープ印刷装置1のカセット装着部8には、テープカセット30Aのリボン巻取スプール43及びRFIDタグ350と対応する位置に、リボン巻取軸95及びアンテナ201が設けられる。レセプタタイプのテープカセット30Aがカセット装着部8に装着されると、上記実施形態と同様に、RFIDタグ350がアンテナ201に対して上方から近接し、RFIDタグ350に対するデータの読み書きが可能となる。印刷動作が開始されると、サーマルヘッド10はインクリボン60を使用して、第一テープロール571から引き出される印刷テープ55にキャラクタを印刷する。この印刷テープ55(印刷済テープ50)は、テープ排出部49からカセットケース31の外部に排出される。
【0061】
なお、テープカセット30Aは、インクリボン60を設けることなく、且つ印刷テープ55として感熱紙テープを用いることで、サーマルタイプで実装されてもよい。サーマルタイプのテープカセット30Aがカセット装着部8に装着されると、上記と同様にRFIDタグ350に対するデータの読み書きが可能となる。印刷動作が開始されると、サーマルヘッド10はインクリボン60を用いることなく、第一テープロール571から引き出される印刷テープ55に感熱印刷する。この印刷テープ55(印刷済テープ50)は、テープ排出部49からカセットケース31の外部に排出される。
【0062】
以上説明したように、第一変形例のテープカセット30は、カセットケース31と、第一テープロール571と、RFIDタグ350とを備える。第一テープロール571から引き出された印刷テープ55は、他のテープが貼り合わせられることなく、カセットケース31から排出される。RFIDタグ350の少なくとも一部は、第一テープロール571の少なくとも一部と、第一テープロール571の巻回中心AX1が延びる所定方向(上下方向)に重複する。これによれば、上記実施形態と同様に、RFIDタグ350の位置をより安定させることができるため、RFIDリーダライタ200とRFIDタグ350との間で、より良好な無線通信を実現できる。
【0063】
テープ排出部49は二つの分割領域の一方(左側領域)に設けられるのに対し、RFIDタグ350は二つの分割領域の他方(右側領域)に設けられる。これによれば、テープ排出部49の近傍に配置される金属製のカット機構17に対して、RFIDタグ350をより遠く離れた位置に配置できるため、カット機構17に起因する無線通信障害をより確実に抑制できる。
【0064】
図9図11を参照して、第二~第四変形例に係るテープカセット30B~30Dを説明する。テープカセット30B~30Dは、上記実施形態と対比してRFIDタグ350の装着位置が異なる。図9に示すように、第二変形例に係るテープカセット30Bでは、RFIDタグ350が平面視で上記実施形態と同じ位置に設けられる(図4図6参照)。ただし、テープカセット30BのRFIDタグ350は、下壁306の外面(底面302)ではなく、下壁306のうちでカセットケース31の内側を向く内面303に配置される。より詳細には、テープカセット30BのRFIDタグ350は、下壁306の内面303のうちで第一テープロール571と対向する位置に配置される。
【0065】
具体的には、第一テープロール571の下方に位置するタグ取付部306Bが、下壁306に形成される。タグ取付部306Bは、内面303の一部が下方向に凹んだ凹部であり、且つRFIDタグ350に対応する大きさの円形状である。タグ取付部306Bの内側には、RFIDタグ350及びシールド部材360が配置される。RFIDタグ350は、タグ取付部306B内の底面に接着される。RFIDタグ350の上面に、シールド部材360が接着される。即ちシールド部材360は、第一テープロール571とRFIDタグ350との間に設けられる。RFIDタグ350は、タグ取付部306Bの外側に突出することなく、タグ取付部306Bの内側に保持される。
【0066】
上述したように、テープカセット30BのRFIDタグ350は、下壁306のうちでカセットケース31の内側を向く内面303に配置され、且つ内面303のうちで第一テープロール571と対向する位置に配置される。これによれば、RFIDタグ350はカセットケース31内(詳細には、タグ取付部306B内)に保持されるため、例えばテープカセット30の落下時などに、RFIDタグ350に歪みが生じることを抑制できる。
【0067】
図10に示すように、第三変形例に係るテープカセット30Cでは、RFIDタグ350が平面視で上記実施形態と同じ位置に設けられる(図4図6参照)。ただし、テープカセット30CのRFIDタグ350は、下壁306の外面(底面302)ではなく、上壁305のうちでカセットケース31の外側を向く外面(上面301)に配置される。具体的には、第一テープロール571の上方に位置するタグ取付部305Aが、上壁305に形成される。タグ取付部305Aは、上面301の一部が下方向に凹んだ凹部であり、且つRFIDタグ350に対応する大きさの円形状である。
【0068】
タグ取付部305Aの内側には、RFIDタグ350及びシールド部材360が配置される。シールド部材360は、タグ取付部305A内の底面に接着される。シールド部材360の上面に、RFIDタグ350が接着される。即ちシールド部材360は、第一テープロール571とRFIDタグ350との間に設けられる。RFIDタグ350は、タグ取付部305Aの外側に突出することなく、タグ取付部305Aの内側に保持される。
【0069】
図11に示すように、第四変形例に係るテープカセット30Dでは、RFIDタグ350が平面視で第三変形例と同じ位置に設けられる(図10参照)。ただし、テープカセット30DのRFIDタグ350は、上壁305の外面(上面301)ではなく、上壁305のうちでカセットケース31の内側を向く内面304に配置される。具体的には、第一テープロール571の上方に位置するタグ取付部305Bが、上壁305に形成される。タグ取付部305Bは、内面304の一部が上方向に凹んだ凹部であり、且つRFIDタグ350に対応する大きさの円形状である。
【0070】
タグ取付部305Bの内側には、RFIDタグ350及びシールド部材360が配置される。RFIDタグ350は、タグ取付部305B内の天面に接着される。RFIDタグ350の下面に、シールド部材360が接着される。即ちシールド部材360は、第一テープロール571とRFIDタグ350との間に設けられる。RFIDタグ350は、タグ取付部305Bの外側に突出することなく、タグ取付部305Bの内側に保持される。
【0071】
図示しないが、テープカセット30C(又はテープカセット30D)が使用されるテープ印刷装置1では、アンテナ201(図1参照)がカセットカバー6(図1参照)の下面に設けられる。アンテナ201は、テープカセット30C(又はテープカセット30D)のRFIDタグ350と対応する位置に設けられる。テープカセット30C(又はテープカセット30D)がカセット装着部8に装着された状態でカセットカバー6が閉じられると、アンテナ201がRFIDタグ350に対して上方から近接し、RFIDタグ350に対するデータの読み書きが可能となる。
【0072】
図12図14を参照して、第五、第六変形例に係るテープカセット30E、30Fを説明する。テープカセット30E、30Fは、上記実施形態と対比してカセット全体の外観が異なる。図12に示すように、第五変形例に係るテープカセット30Eでは、カセットケース31は左右方向よりも前後方向に長い箱状である。テープカセット30Eは、レセプタタイプで実装されており、印刷テープ55及びインクリボン60がカセットケース31内に収納される。
【0073】
具体的には、カセットケース31内の後側部分に、印刷テープ55が巻回された第一テープロール571が収容される。カセットケース31内の右側前部には、供給リボンロール573が収容される。カセットケース31の左前部には、カセットケース31を上下方向に貫通するヘッド開口39が設けられる。ヘッド開口39の後側に隣接するように、テープ駆動ローラ46が支持される。カセットケース31内のうち、第一テープロール571、供給リボンロール573、及びヘッド開口39に囲まれた領域には、巻取リボンロール574が収容される。
【0074】
図13に示すように、テープカセット30Eでは、RFIDタグ370が下壁306に設けられる。テープカセット30EのRFIDタグ370は、上記実施形態のRFIDタグ350(図5参照)と同様に、円形のシール基材371、記憶素子372、及びアンテナ373を有する。ただし、シール基材371の平面中心には、シール基材371を厚み方向に貫通する孔371Aが形成される。記憶素子372は、シール基材371上の孔371Aに隣接して設けられる。アンテナ373は、シール基材371上における記憶素子372の外側で、孔371Aを中心に巻回される。
【0075】
下壁306には、第一テープロール571の下方に位置するタグ取付部306Aが形成される。タグ取付部306Aは、底面302の一部が上方向に凹んだ凹部であり、且つRFIDタグ370に対応する大きさの円形状である。上記実施形態と同様に、タグ取付部306Aの内側には、RFIDタグ370及びシールド部材360が重ねて収容される(図6参照)。第一テープロール571の巻回中心AX1は、タグ取付部306Aに配置されたRFIDタグ370の中心部(即ち、孔371A)を通る。即ち、孔371Aの少なくとも一部は、第一テープロール571の少なくとも一部と、第一テープロール571の巻回中心AX1が延びる上下方向に重複する。
【0076】
なお、RFIDタグ370は、第二変形例(図9参照)で例示したように、下壁306の内面303に設けられてもよい。RFIDタグ370は、第三変形例(図10参照)で例示したように、上壁305の外面(上面301)に設けられてもよい。例えば、図14に示す第六変形例のテープカセット30Fでは、RFIDタグ370が平面視で上記第五変形例と同じ位置に設けられる(図13参照)。ただし、テープカセット30FのRFIDタグ370は、下壁306の外面(底面302)ではなく、上面301に形成されたタグ取付部305Aに配置される。RFIDタグ370は、第四変形例(図11参照)で例示したように、上壁305の内面303に設けられてもよい。
【0077】
以上説明したように、第五、第六変形例のテープカセット30E、30Fは、カセットケース31と、第一テープロール571と、RFIDタグ370とを備える。RFIDタグ370には、孔371Aが設けられる。孔371Aの少なくとも一部は、第一テープロール571の少なくとも一部と、第一テープロール571の巻回中心AX1が延びる所定方向(上下方向)に重複する。これによれば、上記実施形態と同様に、RFIDタグ370の位置をより安定させることができるため、RFIDリーダライタ200とRFIDタグ370との間で、より良好な無線通信を実現できる。
【0078】
上記実施形態及び変形例において、両面粘着テープ58及び印刷テープ55の夫々が、本発明の「第一テープ」に相当する。フィルムテープ59が本発明の「第二テープ」に相当する。供給リボンロール573及び巻取リボンロール574の少なくとも一つが、本発明の「リボンロール」に相当する。仮想面V1、V2の少なくとも一つが、本発明の「第三仮想面」に相当する。
【0079】
なお、「第一テープ」は、上述した両面粘着テープ58や印刷テープ55に限定されず、各種テープを使用できる。例えば「第一テープ」は、印刷シートの片面に接着層が形成された複数層のテープ(所謂、セパレステープ)、印刷シートの片面に剥離シートが重ね合わされた複数層のテープ(所謂、ステンシルテープ)、単層の布テープ、単層のマグネットテープ、単層のチューブテープ等でもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 テープ印刷装置
10 サーマルヘッド
12 プラテンホルダ
30、30A、30B、30C、30D、30E、30F テープカセット
31 カセットケース
39 ヘッド開口
49 テープ排出部
55 印刷テープ
58 両面粘着テープ
59 フィルムテープ
60 インクリボン
305 上壁
306 下壁
330、340 クラッチ
350、370 RFIDタグ
352、372 記憶素子
353、373 アンテナ
360 シールド部材
371A 孔
571 第一テープロール
572 第二テープロール
573 供給リボンロール
574 巻取リボンロール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図12
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図14