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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20230905BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/14 605
B41J2/18
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019105537
(22)【出願日】2019-06-05
(65)【公開番号】P2020196238
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 啓太
【審査官】大関 朋子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-154067(JP,A)
【文献】特開2008-290292(JP,A)
【文献】国際公開第2018/056292(WO,A1)
【文献】特表2011-520671(JP,A)
【文献】特開2019-055493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に配列された複数の個別流路と、
前記第1方向に延びる第1共通流路及び第2共通流路と、を備え、
前記第1共通流路の開口と、前記第2共通流路の開口とが、前記第1方向において前記複数の個別流路に対して互いに同じ側にあり、
前記複数の個別流路は、それぞれ、
ノズルと、
前記ノズルに連通する2つの圧力室と、
前記2つの圧力室の一方と前記第1共通流路に連通する第1連通流路及び、前記2つの圧力室の他方と前記第1共通流路とに連通する第2連通流路と、
前記第2共通流路に連通する第3連通流路と、を含み、
前記第1方向において、前記第1共通流路における前記第1連通流路との接続位置である第1接続位置と前記第1共通流路における前記第2連通流路との接続位置である第2接続位置との中点が、前記第2共通流路における前記第3連通流路との接続位置である第3接続位置と一致することを特徴とする、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第1接続位置及び前記第2接続位置は、前記第1方向において一致することを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第1接続位置及び前記第2接続位置は、前記第1共通流路及び前記第2共通流路の幅方向である第2方向において一致することを特徴とする、請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第1接続位置及び前記第2接続位置は、前記第1共通流路及び前記第2共通流路の高さ方向である第3方向において一致することを特徴とする、請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記第1共通流路及び前記第2共通流路は、前記第1共通流路及び前記第2共通流路の高さ方向である第3方向において互いに重なり、前記第1共通流路及び前記第2共通流路の幅方向である第2方向の長さが互いに同じであり、かつ、前記第3方向の長さが互いに同じであり、
前記第3接続位置は、前記第2方向において、前記第1接続位置及び前記第2接続位置と一致することを特徴とする、請求項3又は4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第1連通流路、前記第2連通流路及び前記第3連通流路の少なくともいずれかは、前記第1方向と前記第1共通流路及び前記第2共通流路の幅方向である第2方向とに平行な面に沿って延びかつ前記面において湾曲した湾曲部を有する、湾曲流路であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記複数の個別流路は、それぞれ、ノズルと、前記ノズル及び前記湾曲流路に連通する圧力室と、を含み、
前記湾曲流路は、前記第2方向において、前記圧力室の領域内に配置されたことを特徴とする、請求項6に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の共通流路を備えた液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1において、複数の個別流路は、それぞれ、循環共通流路(第1共通流路)に連通する2つの循環個別流路(第1連通流路及び第2連通流路)と、インク供給路(第2共通流路)に連通する1つの個別供給路(第3連通流路)とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-188837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、循環共通流路の開口と、インク供給路の開口とが、W方向において複数の個別流路に対して互いに同じ側にあり、かつ、W方向において、循環共通流路における2つの循環個別流路との接続口の中点が、インク供給路における個別供給路との接続口と一致しない場合があり得る。この場合、各接続口に作用する圧力の関係により、個別流路内における圧力バランスが悪くなり、インク(液体)循環中に、ノズルに過大な圧力が作用し、ノズルからのインク吐出にばらつきが生じ得る。
【0005】
本発明の目的は、液体循環中にノズルに過大な圧力が作用するのを抑制できる、液体吐出ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液体吐出ヘッドは、第1方向に配列された複数の個別流路と、前記第1方向に延びる第1共通流路及び第2共通流路と、を備え、前記第1共通流路の開口と、前記第2共通流路の開口とが、前記第1方向において前記複数の個別流路に対して互いに同じ側にあり、前記複数の個別流路は、それぞれ、ノズルと、前記ノズルに連通する2つの圧力室と、前記2つの圧力室の一方と前記第1共通流路に連通する第1連通流路及び、前記2つの圧力室の他方と前記第1共通流路とに連通する第2連通流路と、前記第2共通流路に連通する第3連通流路と、を含み、前記第1方向において、前記第1共通流路における前記第1連通流路との接続位置である第1接続位置と前記第1共通流路における前記第2連通流路との接続位置である第2接続位置との中点が、前記第2共通流路における前記第3連通流路との接続位置である第3接続位置と一致することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1実施形態に係るヘッド1を備えたプリンタ100の平面図である。
図2】ヘッド1の平面図である。
図3図2のIII-III線に沿ったヘッド1の断面図である。
図4】ヘッド1内に形成された流路の一部を示す斜視図である。
図5】本発明の第2実施形態に係るヘッド201の平面図である。
図6】本発明の第3実施形態に係るヘッド301の平面図である。
図7図6のVII-VII線に沿ったヘッド301の断面図である。
図8】本発明の参考例に係るヘッド401の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1実施形態>
先ず、図1を参照し、本発明の第1実施形態に係るヘッド1を備えたプリンタ100の全体構成について説明する。
【0009】
プリンタ100は、4つのヘッド1を含むヘッドユニット1x、プラテン3、搬送機構4及び制御部5を備えている。
【0010】
プラテン3の上面に、用紙9が載置される。
【0011】
搬送機構4は、搬送方向にプラテン3を挟んで配置された2つのローラ対4a,4bを有する。制御部5の制御により搬送モータ(図示略)が駆動されると、ローラ対4a,4bが用紙9を挟持した状態で回転し、用紙9が搬送方向に搬送される。
【0012】
ヘッドユニット1xは、紙幅方向(搬送方向及び鉛直方向の双方と直交する方向)に長尺であり、位置が固定された状態でノズル21(図2図4参照)から用紙9に対してインクを吐出するライン式である。4つのヘッド1は、それぞれ紙幅方向に長尺であり、紙幅方向に千鳥状に配列されている。
【0013】
制御部5は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)を有する。ASICは、ROMに格納されたプログラムに従い、記録処理等を実行する。記録処理において、制御部5は、PC等の外部装置から入力された記録指令(画像データを含む。)に基づき、各ヘッド1のドライバIC及び搬送モータ(共に図示略)を制御し、用紙9上に画像を記録する。
【0014】
次いで、図2図4を参照し、ヘッド1の構成について説明する。
【0015】
ヘッド1は、図3に示すように、流路基板11及びアクチュエータ基板12を有する。
【0016】
流路基板11は、鉛直方向に積層されかつ互いに接着された12枚のプレート11a~11lで構成されている。各プレート11a~11lには、流路を構成する貫通孔が形成されている。当該流路は、複数の個別流路20、供給流路31及び帰還流路32を含む。
【0017】
複数の個別流路20は、図2に示すように、紙幅方向(第1方向)に千鳥状に配列され、第1個別流路群20A及び第2個別流路群20Bを構成している。各個別流路群20A,20Bは、第1方向に並ぶ複数の個別流路20で構成されている。第1個別流路群20Aと第2個別流路群20Bとは、搬送方向と平行な方向(第2方向:供給流路31及び帰還流路32の幅方向であり、第1方向と直交する方向)に並んでいる。
【0018】
供給流路31及び帰還流路32は、それぞれ、第1方向に延びている。供給流路31は、本発明の「第1共通流路」に該当する。帰還流路32は、本発明の「第2共通流路」に該当する。本実施形態において、供給流路31及び帰還流路32は、鉛直方向(第3方向:供給流路31及び帰還流路32の高さ方向であり、第1方向及び第2方向の双方と直交する方向)に並び、鉛直方向に互いに重なっている。供給流路31及び帰還流路32は、長さ(第1方向の長さ)、幅(第2方向の長さ)及び高さ(第3方向の長さ)が互いに略同じである。
【0019】
供給流路31及び帰還流路32は、それぞれの第1方向の一端(図2の下端)において、互いに連結されている。
【0020】
供給流路31及び帰還流路32は、それぞれの第1方向の他端(図2の上端)に設けられた供給口31x及び帰還口32xを介して、サブタンク(図示略)に連通している。供給口31xは、本発明の「第1共通流路の開口」に該当する。帰還口32xは、本発明の「第2共通流路の開口」に該当する。
【0021】
供給口31x及び帰還口32xは、第1方向において複数の個別流路20に対して互いに同じ側にあり、第1方向に並んでいる。第1方向において、複数の個別流路20と帰還口32xとの間に、供給口31xがある。つまり、帰還口32xと複数の個別流路20との第1方向の間隔は、供給口31xと複数の個別流路20との第1方向の間隔よりも大きい。
【0022】
供給口31x及び帰還口32xは、流路基板11の上面に開口している。供給口31xにはフィルタ31fが設けられているが、帰還口32xにはフィルタが設けられていない。
【0023】
サブタンクは、インクを貯留するメインタンクに連通し、メインタンクから供給されたインクを貯留する。サブタンク内のインクは、制御部5の制御によりポンプ(図示略)が駆動されることで、供給口31xから供給流路31に流入する。供給流路31に流入したインクは、供給流路31内を第1方向の他端(図2の上端)から一端(図2の下端)に向かって移動しつつ、各個別流路20に供給される。供給流路31の第1方向の一端(図2の下端)に到達したインク、及び、各個別流路20から流出したインクは、帰還流路32に流入する。帰還流路32に流入したインクは、帰還流路32内を第1方向の一端(図2の下端)から他端(図2の上端)に向かって移動し、帰還口32xを介してサブタンクに戻される。
【0024】
図3に示すように、供給流路31は、プレート11e,11fに形成された貫通孔で構成されている。帰還流路32は、プレート11iに形成された貫通孔で構成されている。第3方向において供給流路31と帰還流路32との間には、ダンパ室33が設けられている。ダンパ室33は、プレート11gに形成された凹部と、プレート11hに形成された凹部とで構成されている。プレート11gにおける凹部の底部は、供給流路31のダンパ膜31dとして機能する。プレート11hにおける凹部の底部は、帰還流路32のダンパ膜32dとして機能する。
【0025】
各個別流路20は、図2に示すように、1つのノズル21と、2つの圧力室(第1圧力室22a及び第2圧力室22b)と、1つの接続流路23と、2つの流入流路(第1流入流路24a及び第2流入流路24b)と、1つの流出流路24cとを含む。
【0026】
図3に示すように、ノズル21は、プレート11lに形成された貫通孔で構成され、流路基板11の下面に開口している。第1圧力室22a及び第2圧力室22bは、プレート11aに形成された貫通孔で構成され、流路基板11の上面に開口している。
【0027】
第1圧力室22a及び第2圧力室22bは、図2に示すように、互いに同じ形状及びサイズを有し、第1方向に並んでいる。各圧力室22a,22bは、第1方向と第2方向とに平行な面(第3方向と直交する面)において、第2方向に長尺な略矩形状である。第1圧力室22aに対し、第2方向の一端に接続流路23が接続し、第2方向の他端に第1流入流路24aが接続している。第2圧力室22bに対し、第2方向の一端に接続流路23が接続し、第2方向の他端に第2流入流路24bが接続している。
【0028】
接続流路23は、ノズル21、第1圧力室22a及び第2圧力室22bを互いに接続している。具体的には、接続流路23は、図4に示すように、第1圧力室22aに接続する第1接続部23aと、第2圧力室22bに接続する第2接続部23bと、第1接続部23aと第2接続部23bとを連結する連結部23cと、連結部23cから下方に延びかつ下端にノズル21が配置された延出部23dとを含む。
【0029】
各接続部23a,23bは、本実施形態では、各圧力室22a,22bの第2方向の一端から下方に延びる円柱状の流路であり、図3に示すように、プレート11b~11dに形成された貫通孔で構成されている。しかしながら、これに限定されず、例えば、連結部23cが圧力室22a,22bの直下に位置し(即ち、連結部23cと圧力室22a,22bとの間に、円柱状の流路等の他の流路が介在せず)、各接続部23a,23bが、各圧力室22a,22bと連結部23cとの界面(各圧力室22a,22bの下面に形成された開口)で構成されてもよい。
【0030】
連結部23cは、図3に示すように、プレート11eに形成された貫通孔で構成され、第3方向と直交する面に沿って、第1方向に延びている。
【0031】
延出部23dは、図3に示すように、プレート11f~11kに形成された貫通孔で構成され、第3方向に延びている。第3方向において、連結部23cに対して下方(第1圧力室22a及び第2圧力室22bと反対側)に、ノズル21が位置している。
【0032】
本実施形態では、図4に示すように、第1圧力室22a及び第2圧力室22bから連結部23cまでの第3方向の長さH1は、連結部23cからノズル21までの第3方向の長さH2未満である。つまり、連結部23cは、接続流路23が占める領域の上部(圧力室22a,22bに近い側)に位置している。
【0033】
図2に示すように、第1個別流路群20Aに属する各圧力室22a,22bは、供給流路31及び帰還流路32と第3方向に重なる部分と、供給流路31及び帰還流路32と第3方向に重ならず、供給流路31及び帰還流路32に対して第2方向の一方に位置する部分とを有する。第2個別流路群20Bに属する各圧力室22a,22bは、供給流路31及び帰還流路32と第3方向に重なる部分と、供給流路31及び帰還流路32と第3方向に重ならず、供給流路31及び帰還流路32に対して第2方向の他方に位置する部分とを有する。
【0034】
第1個別流路群20Aに属する接続流路23及びノズル21は、供給流路31及び帰還流路32に対して第2方向の一方に位置する。第2個別流路群20Bに属する接続流路23及びノズル21は、供給流路31及び帰還流路32に対して第2方向の他方に位置する。
【0035】
第1流入流路24aは、第1圧力室22aの第2方向の他端(接続流路23が接続する端部とは反対側の端部)に接続する一端と、供給流路31に接続する他端(個別流路20の入口20a)とを有する。第2流入流路24bは、第2圧力室22bの第2方向の他端(接続流路23が接続する端部とは反対側の端部)に接続する一端と、供給流路31に接続する他端(個別流路20の入口20b)とを有する。供給流路31は、第1流入流路24a及び第2流入流路24bのそれぞれを介して、第1圧力室22a及び第2圧力室22bに連通している。
【0036】
各流入流路24a,24bは、図3に示すように、プレート11b~11dに形成された貫通孔で構成されている。
【0037】
流出流路24cは、図3に示すように、プレート11j,11kに形成された貫通孔で構成され、延出部23dの下端に接続する一端と、帰還流路32に接続する他端(個別流路20の出口20c)とを有する。帰還流路32は、流出流路24cを介して、接続流路23に連通している。
【0038】
流入流路24a,24b及び流出流路24cは、それぞれ、各圧力室22a,22bの幅(第1方向の長さ)よりも小さい幅を有し、絞りとして機能する。
【0039】
第1流入流路24aが本発明の「第1連通流路」に該当し、第2流入流路24bが本発明の「第2連通流路」に該当し、流出流路24cが本発明の「第3連通流路」に該当する。また、入口20aは供給流路31における第1流入流路24aとの接続口であり、入口20aの位置が本発明の「第1接続位置」に該当する。入口20bは供給流路31における第2流入流路24bとの接続口であり、入口20bの位置が本発明の「第2接続位置」に該当する。出口20cは帰還流路32における流出流路24cとの接続口であり、出口20cの位置が本発明の「第3接続位置」に該当する。
【0040】
本実施形態では、流入流路24a,24b及び流出流路24cは、図2に示すように、それぞれ第2方向に延び、第1方向に等間隔で配置されている。第1方向において、入口20aと入口20bとの中央に、出口20cが配置されている。即ち、第1方向において、入口20aの位置(第1接続位置)と入口20bの位置(第2接続位置)との中点が、出口20cの位置(第3接続位置)と一致する
【0041】
入口20a,20bは、供給流路31における第2方向の中央と一端との間にあり、第2方向において互いに同じ位置にある。出口20cは、帰還流路32における第2方向の中央にあり、第2方向において入口20a,20bとは位置が異なっている。
【0042】
入口20a,20bは、供給流路31の上面に設けられており(図3参照)、第3方向において互いに同じ位置にある。出口20cは、帰還流路32の下面に設けられており、入口20a,20bよりも下方に位置する。
【0043】
供給流路31から各個別流路20に供給されたインクは、第1流入流路24a及び第2流入流路24bを通って第1圧力室22a及び第2圧力室22bにそれぞれ流入し、各圧力室22a,22b内を略水平に移動して、接続流路23に流入する。接続流路23に流入したインクは、第1接続部23a及び第2接続部23bを通って連結部23cに至り、延出部23dを通って下方に移動し、一部がノズル21から吐出され、残りが流出流路24cを通って帰還流路32に流入する。
【0044】
このようにサブタンクと流路基板11との間でインクを循環させることで、流路基板11に形成された供給流路31及び帰還流路32、さらには個別流路20における、エアの排出やインクの増粘防止が実現される。また、インクが沈降成分(沈降が生じ得る成分。顔料等)を含む場合、当該成分が攪拌されて沈降が防止される。
【0045】
アクチュエータ基板12は、図3に示すように、下から順に、振動板12a、共通電極12b、複数の圧電体12c及び複数の個別電極12dを含む。
【0046】
振動板12a及び共通電極12bは、流路基板11の上面(プレート11aの上面)に配置され、プレート11aに形成された全ての圧力室22a,22bを覆っている。一方、圧電体12c及び個別電極12dは、圧力室22a,22b毎に設けられており、圧力室22a,22bのそれぞれと第3方向に重なっている。
【0047】
共通電極12b及び複数の個別電極12dは、ドライバIC(図示略)と電気的に接続されている。ドライバICは、共通電極12bの電位をグランド電位に維持する一方、個別電極12dの電位を変化させる。具体的には、ドライバICは、制御部5からの制御信号に基づいて駆動信号を生成し、当該駆動信号を個別電極12dに付与する。これにより、個別電極12dの電位が所定の駆動電位とグランド電位との間で変化する。このとき、振動板12a及び圧電体12cにおいて個別電極12dと圧力室22a,22bとで挟まれた部分(アクチュエータ12x)が、圧力室22a,22bに向かって凸となるように変形することにより、圧力室22a,22bの容積が変化し、圧力室22a,22b内のインクに圧力が付与され、ノズル21からインクが吐出される。アクチュエータ基板12は、圧力室22a,22bのそれぞれに対応する複数のアクチュエータ12xを有する。
【0048】
以上に述べたように、本実施形態によれば、供給流路31及び帰還流路32が共に第1方向に延び、かつ、供給口31x及び帰還口32xが第1方向において複数の個別流路20に対して互いに同じ側にある(図2参照)。流路31,32内の圧力は第1方向(インクの流れ方向)において差が生じ得るところ、本実施形態の構成では、流路31,32のそれぞれからノズル21に対して対称に圧力が作用するようにできる。各個別流路20では、2つの入口20a,20bのうち、供給流路31の上流側にある入口20aに作用する圧力が、供給流路31の下流側にある入口20bに作用する圧力よりも大きく、2つの入口20a,20bに作用する圧力に差が生じ得る。本実施形態では、第1方向における2つの入口20a,20bの中央に出口20cを配置する(即ち、第1方向において、入口20aの位置(第1接続位置)と入口20bの位置(第2接続位置)との中点を、出口20cの位置(第3接続位置)と一致させる)ことによって、出口20cに作用する圧力(各入口20aに作用する圧力とは正負逆の圧力)が2つの入口20a,20bに作用する圧力差を相殺するようにしている。これにより、出口20cからノズル21に作用する圧力と、2つの入口20a,20bからノズル21に作用する圧力とのバランスが保たれ、インク循環中にノズル21に過大な圧力が作用するのを抑制できる。
【0049】
<第2実施形態>
続いて、図5を参照し、本発明の第2実施形態に係るヘッド201について説明する。
【0050】
第1実施形態(図2)では、各個別流路20の第1流入流路24a及び第2流入流路24bが、それぞれ第2方向に延びているが、本実施形態(図5)では、各個別流路220の第1流入流路224a及び第2流入流路224bが、それぞれ第1方向及び第2方向の双方に対して交差する斜め方向に延びている。
【0051】
第1実施形態(図2)では、入口20aと出口20cと入口20bとが、第1方向に等間隔で配置されているが、本実施形態(図5)では、入口220aと入口220bとが、1つの開口で構成されている。流入流路224a,224bは、上記1つの開口から分岐し、斜め方向に延びている。
【0052】
出口20cは、入口220a,220bの下方に位置し、入口220a,220bと第3方向に重なっている。
【0053】
入口220aの位置(第1接続位置)と入口220bの位置(第2接続位置)とは、第1方向、第2方向及び第3方向の各方向において、一致する。出口20cの位置(第3接続位置)は、第1方向及び第2方向において、入口220aの位置(第1接続位置)及び入口220bの位置(第2接続位置)と一致する。
【0054】
以上に述べたように、本実施形態によれば、第1実施形態と流入流路の構成が異なるものの、第1実施形態と同様の要件(第1方向において、入口220aの位置(第1接続位置)と入口220bの位置(第2接続位置)との中点が、出口20cの位置(第3接続位置)と一致する、という要件)を満たすことで、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0055】
さらに、本実施形態では、入口220aの位置(第1接続位置)と入口220bの位置(第2接続位置)とが、第1方向において一致する(図5参照)。入口220aの位置(第1接続位置)と入口220bの位置(第2接続位置)とが第1方向において一致しない場合、供給流路31内の第1方向における圧力差により、入口220aに作用する圧力と、入口220bに作用する圧力とに差が生じ得る。この場合、個別流路220内において、所望の流れとは異なる流れが生じる(例えば、入口220aから入口220bに向かうインクの流れが生じる)ことで、吐出が不安定になり得る。これに対し、本実施形態では、入口220aの位置(第1接続位置)と入口220bの位置(第2接続位置)とが第1方向において一致するため、入口220aに作用する圧力と入口220bに作用する圧力とに差が生じ難く、吐出が安定する。
【0056】
供給流路31内の圧力は、第1方向のみならず、第2方向においても、差が生じ得る。例えば、供給流路31内において、第2方向の中央は流速が大きく(圧力が大きく)、第2方向の端部は流速が小さく(圧力が小さく)なる傾向にある。そこで、本実施形態では、入口220aの位置(第1接続位置)と入口220bの位置(第2接続位置)とを、第1方向のみならず、第2方向においても一致させている(図5参照)。この場合、より確実に、入口220aに作用する圧力と入口220bに作用する圧力との差が生じ難くなり、吐出が安定する。
【0057】
供給流路31内の圧力は、第1方向や第2方向のみならず、第3方向においても、差が生じ得る。例えば、供給流路31内において、第3方向の中央は流速が大きく(圧力が大きく)、第3方向の端部は流速が小さく(圧力が小さく)なる傾向にある。そこで、本実施形態では、入口220aの位置(第1接続位置)と入口220bの位置(第2接続位置)とを、第1方向及び第2方向のみならず、第3方向においても一致させている。この場合、より確実に、入口220aに作用する圧力と入口220bに作用する圧力との差が生じ難くなり、吐出が安定する。しかも、本構成の場合、入口220a,220bを1つの開口で構成でき、構成の簡素化を実現できる。
【0058】
帰還流路32内の圧力も、供給流路31内の圧力と同様、第1方向のみならず、第2方向において、差が生じ得る。例えば、帰還流路32内において、第2方向の中央は流速が大きく(圧力が大きく)、第2方向の端部は流速が小さく(圧力が小さく)なる傾向にある。そこで、本実施形態では、出口20cの位置(第3接続位置)を、第2方向において、入口220aの位置(第1接続位置)及び入口220bの位置(第2接続位置)と一致させている(図5参照)。この場合、より確実に、出口20cに作用する圧力によって2つの入口220a,220bに作用する圧力差が相殺され、個別流路220における圧力バランスが保たれる。
【0059】
なお、接続位置が「一致する」とは、接続位置を構成する開口同士が、少なくとも部分的に重なることをいい、重ならない部分があってもよい。
【0060】
<第3実施形態>
続いて、図6及び図7を参照し、本発明の第3実施形態に係るヘッド301について説明する。
【0061】
第1実施形態(図2)では、各個別流路20の第1流入流路24a及び第2流入流路24bが、それぞれ第2方向に延びているが、本実施形態(図6)では、各個別流路320の第1流入流路324a及び第2流入流路324bが、第1方向と第2方向とに平行な面(第3方向と直交する面)において、L字状であり、湾曲している。
【0062】
第1実施形態(図2)では、入口20aと出口20cと入口20bとが、第1方向に等間隔で配置されているが、本実施形態(図6)では、入口320aと入口320bとが、第2実施形態の入口220a,220b(図5)と同様、1つの開口で構成されている。流入流路324a,324bは、上記1つの開口から分岐して、第1方向の一方及び他方にそれぞれ延び、さらに第2方向に延びている。
【0063】
第1流入流路324aは、第1圧力室22aに接続する一端324axと、供給流路31に接続する他端(個別流路320の入口320a)とを有する。第2流入流路324bは、第2圧力室22bに接続する一端324bxと、供給流路31に接続する他端(個別流路320の入口320b)とを有する。
【0064】
各流入流路324a,324bは、一端324ax,324bxから第2方向に延びる部分と、当該部分の先端から第1方向に延びて他端(入口320a,320b)に至る部分とを有し、これら部分の境界に湾曲部Cを有する。流入流路324a,324bは、本発明の「湾曲流路」に該当する。
【0065】
第1流入流路324aは、第2方向において第1圧力室22aの領域内に配置されている。第2流入流路324bは、第2方向において第2圧力室22bの領域内に配置されている。即ち、第2方向において、各圧力室22a,22bの占有領域内に、各流入流路324a,324bが収まっている。
【0066】
出口20cは、図7に示すように、入口320a,320bの下方に位置し、入口320a,320bと第2方向に並んでいる。入口320a,320bは、図6に示すように、流出流路24cと第3方向に重なっている。
【0067】
以上に述べたように、本実施形態によれば、第1実施形態と流入流路の構成が異なるものの、第1実施形態と同様の要件(第1方向において、入口320aの位置(第1接続位置)と入口320bの位置(第2接続位置)との中点が、出口20cの位置(第3接続位置)と一致する、という要件)を満たすことで、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0068】
さらに、本実施形態では、流入流路324a,324bが湾曲している(図6参照)。この場合、流入流路324a,324bの抵抗を効率よく上げることができる。ひいては、流入流路324a,324b内の流速が高まり、流入流路324a,324bを介した個別流路320へのインク供給がスムーズになる。
【0069】
流入流路324a,324bは、第2方向において圧力室22a,22bの領域内に配置されている(図6参照)。この場合、流入流路324a,324bが第2方向において圧力室22a,22bの領域外に配置された場合に比べ、個別流路320を第2方向に小型化でき、ひいてはヘッド301を第2方向に小型化できる
参考例
続いて、図8を参照し、本発明の参考例に係るヘッド401について説明する。
【0070】
第1実施形態(図2)では、供給流路31及び帰還流路32が、第3方向に並び、それぞれの第1方向の一端において互いに連結されているが、本参考例図8)では、供給流路431及び帰還流路432が、第2方向に並び、それぞれの第1方向の一端において互いに連結されていない。
【0071】
供給流路431及び帰還流路432は、それぞれ、第1方向に延びている。供給流路431は、本発明の「第2共通流路」に該当する。帰還流路432は、本発明の「第1共通流路」に該当する。供給流路431及び帰還流路432は、長さ(第1方向の長さ)、幅(第2方向の長さ)及び高さ(第3方向の長さ)が互いに同じである。
【0072】
供給口431x及び帰還口432xは、第1方向において複数の個別流路420に対して互いに同じ側にあり、第2方向に並んでいる。
【0073】
複数の個別流路420は、第2方向において供給流路431と帰還流路432との間で、第1方向に一列に配列されている。各個別流路420は、1つのノズル21と、1つの圧力室22と、2つの流出流路(第1流出流路424a及び第2流出流路424b)と、1つの流入流路424cとを含む。
【0074】
ノズル21は、圧力室22の直下に位置する。
【0075】
流入流路424cは、圧力室22の第2方向の一端に接続する一端と、供給流路431に接続する他端(個別流路420の入口420c)とを有する。供給流路431は、1つの流入流路424cを介して、圧力室22に連通している。
【0076】
第1流出流路424aは、圧力室22の第2方向の他端に接続する一端と、帰還流路432に接続する他端(個別流路420の出口420a)とを有する。第2流出流路424bは、圧力室22の第2方向の他端に接続する一端と、帰還流路432に接続する他端(個別流路420の出口420b)とを有する。帰還流路432は、第1流出流路424a及び第2流出流路424bを介して、圧力室22に連通している。
【0077】
第1流出流路424aが本発明の「第1連通流路」に該当し、第2流出流路424bが本発明の「第2連通流路」に該当し、流入流路424cが本発明の「第3連通流路」に該当する。また、出口420aは帰還流路432における第1流出流路424aとの接続口であり出口420aの位置が本発明の「第1接続位置」に該当する。出口420bは帰還流路432における第2流出流路424bとの接続口であり、出口420bの位置が本発明の「第2接続位置」に該当する。入口420cは供給流路431における流入流路424cとの接続口であり、入口420cの位置が本発明の「第3接続位置」に該当する。
【0078】
参考例では、流出流路424a,424b及び流入流路424cは、それぞれ第2方向に延び、第1方向に等間隔で配置されている。第1方向において、出口420aと出口420bとの中央に、入口420cが配置されている。即ち、第1方向において、出口420aの位置(第1接続位置)と出口420bの位置(第2接続位置)との中点が、入口420cの位置(第3接続位置)と一致する
【0079】
以上に述べたように、本参考例によれば、第1実施形態と流路構成が異なるものの、第1実施形態と同様の要件(第1方向において、出口420aの位置(第1接続位置)と出口420bの位置(第2接続位置)との中点が、入口420cの位置(第3接続位置)と一致する、という要件)を満たすことで、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0080】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0081】
第2実施形態(図5)において、入口220aと入口220bとが、第1方向には一致するが、第2方向には一致しない(即ち、第2方向に並ぶ)構成や、第3方向には一致しない(即ち、第3方向に並ぶ)構成であってもよい。
【0082】
第1共通流路及び第2共通流路は、幅(第2方向の長さ)や高さ(第3方向の長さ)が互いに異なってもよい。
【0083】
第3実施形態では、流入流路324a,324bが湾曲しているが、流出流路24cが湾曲してもよい。この場合、流出流路24cの抵抗を効率よく上げることができる。ひいては、流出流路24c内の流速が高まり、個別流路320からのエア排出がスムーズになる。
【0084】
帰還流路にフィルタが設けられてもよい。供給流路にフィルタが設けられなくてもよい。
【0085】
第1及び第2共通流路に対し、ダンパが設けられなくてもよい。
【0086】
ノズルは、連結部の長手方向の中央に位置することに限定されず、連結部の長手方向の任意の位置(例えば、連結部の長手方向の一端又は他端)に位置してよい。
【0087】
各個別流路に属するノズルの数は、上述の実施形態では1つであるが、2つ以上であってもよい。
【0088】
液体吐出ヘッドは、ライン式に限定されず、シリアル式(紙幅方向と平行な走査方向に移動しつつノズルから吐出対象に対して液体を吐出する方式)であってもよい。
【0089】
吐出対象は、用紙に限定されず、例えば布、基板等であってもよい。
【0090】
ノズルから吐出される液体は、インクに限定されず、任意の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってよい。
【0091】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出装置(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出装置)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0092】
1;201;301;401 ヘッド(液体吐出ヘッド)
20;220;320;420 個別流路
20a;220a 入口(第1接続位置)
20b;220b 入口(第2接続位置)
20c 出口(第3接続位置)
21 ノズル
22 圧力室
22a 第1圧力室
22b 第2圧力室
24a;224a;324a 第1流入流路(第1連通流路)
24b;224b;324b 第2流入流路(第2連通流路)
24c 流出流路(第3連通流路)
31 供給流路(第1共通流路)
31x 供給口(開口)
32 帰還流路(第2共通流路)
32x 帰還口(開口)
100 プリンタ
420a 出口(第1接続位置)
420b 出口(第2接続位置)
420c 入口(第3接続位置)
424a 第1流出流路(第1連通流路)
424b 第2流出流路(第2連通流路)
424c 流入流路(第3連通流路)
431 供給流路(第2共通流路)
431x 供給口(開口)
432 帰還流路(第1共通流路)
432x 帰還口(開口)
C 湾曲部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8