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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】埋設物検出装置および埋設物検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/12 20060101AFI20230905BHJP
   G01S 13/88 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
G01V3/12 B
G01S13/88 200
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019127692
(22)【出願日】2019-07-09
(65)【公開番号】P2021012160
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【弁理士】
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】鶴巣 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】有竹 裕介
(72)【発明者】
【氏名】清水 良治
(72)【発明者】
【氏名】藤尾 康平
(72)【発明者】
【氏名】岡村 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡本 曜
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-092261(JP,A)
【文献】特開平08-194057(JP,A)
【文献】特開平08-189971(JP,A)
【文献】特開2011-185792(JP,A)
【文献】特公平03-065872(JP,B2)
【文献】米国特許第04951055(US,A)
【文献】実開平05-038585(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00-99/00
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に向かって放射した電磁波の反射波に関するデータを用いて対象物内の埋設物を検出する埋設物検出装置であって、
本体部と、
前記本体部に設けられ、前記電磁波を放射する放射部と、
前記本体部に設けられ、前記電磁波の反射波を受信する受信部と、
前記受信部において前記反射波をサンプリングするサンプリングパルスの遅延時間を設定する可変遅延部と、
前記受信部において受信された前記反射波の1ライン分の第1データを取得するとともに、前記反射波の1ライン分の波形の振幅最大値の中点となるサンプリングのステップ位置の前後所定ステップ数の範囲のデータを微分した計算結果を示すグラフに基づいて、前記波形にノイズが含まれるか否かを判定する制御部と、
を備えている埋設物検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記反射波の波形の振幅最大値の中点となるサンプリングのステップ位置の前後所定ステップ数の範囲のデータを微分した計算結果を示すグラフにおいて、プラスマイナスの変化点が所定の個数以上ある場合に、前記波形にノイズが含まれると判定する、
請求項1に記載の埋設物検出装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記波形にノイズが含まれない判定した場合に、前記本体部が前記対象物の表面から持ち上げられたことを検出して前記放射部からの前記電磁波の放射を停止させる持ち上げ判定処理を実施する、
請求項1または2に記載の埋設物検出装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記反射波の振幅最大値が所定の第1閾値より大きいか否かを判定し、前記第1閾値よりも大きいと判定した場合には、金属板上を走査されていると判断する、
請求項3に記載の埋設物検出装置。
【請求項5】
前記本体部に取り付けられており、前記対象物の表面に接触した状態で回転する車輪と、
前記本体部に設けられ、前記車輪に接続されており、前記車輪の回転に関する情報を検出する回転検出部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記回転検出部において検出される前記車輪の回転が停止してから所定時間経過後に、再度、1ライン分の第2データを取得して、前記波形にノイズが含まれるか否かを判定する、
請求項4に記載の埋設物検出装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1データの波形における振幅最大値をサンプリングしたステップ位置における前記第2データの波形の振幅値と、前記第1データの波形の前記振幅最大値とを比較して、所定値以上の差がある場合には、金属板上において前記本体部が前記対象物の表面から持ち上げられたことを検出して前記放射部からの前記電磁波の放射を停止させる持ち上げ判定処理を実施する、
請求項5に記載の埋設物検出装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記反射波の振幅最大値が前記第1閾値より大きいか否かを判定し、前記第1閾値よりも小さいと判定した場合には、誘電体上を走査されていると判断する、
請求項に記載の埋設物検出装置。
【請求項8】
前記本体部に取り付けられており、前記対象物の表面に接触した状態で回転する車輪と、
前記本体部に設けられ、前記車輪に接続されており、前記車輪の回転に関する情報を検出する回転検出部と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記回転検出部において検出される前記車輪の回転が停止してから所定時間経過後に、再度、1ライン分の第2データを取得して、前記波形にノイズが含まれるか否かを判定する、
請求項7に記載の埋設物検出装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1データの波形における振幅最大値の半分の振幅を持つ中点の振幅値をサンプリングしたステップにおける前記第2データの波形の振幅値と、前記第1データの波形の前記中点の振幅値とを比較して、所定値以上の差がある場合には、誘電体上において前記本体部が前記対象物の表面から持ち上げられたことを検出して前記放射部からの前記電磁波の放射を停止させる持ち上げ判定処理を実施する、
請求項8に記載の埋設物検出装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1データと前記第2データとの前記中点の振幅値をサンプリングしたステップ位置における振幅値の比較において前記所定値以上の差がない場合には、前記第1データの波形における振幅最大値と、前記第1データの波形における振幅最大値をサンプリングしたステップ位置における前記第2データの波形の振幅値とを比較して、所定値以上の差がある場合には、誘電体の直下に金属製の前記埋設物が存在する状態において、前記本体部が前記対象物の表面から持ち上げられたことを検出して前記放射部からの前記電磁波の放射を停止させる持ち上げ判定処理を実施する、
請求項9に記載の埋設物検出装置。
【請求項11】
対象物に向かって放射した電磁波の反射波に関するデータを用いて対象物内の埋設物を検出する埋設物検出装置を用いた埋設物検出方法であって、
放射部から前記電磁波を放射する放射ステップと、
前記反射波をサンプリングするサンプリングパルスの遅延時間を設定する遅延時間設定ステップと、
前記遅延時間設定ステップにおいて設定された前記遅延時間に基づいて、受信部において前記電磁波の反射波を受信する受信ステップと、
前記受信ステップにおいて受信された前記反射波の1ライン分の第1データを取得するとともに、前記反射波の1ライン分の波形の振幅最大値の中点となるサンプリングのステップ位置の前後所定ステップ数の範囲のデータを微分した計算結果を示すグラフに基づいて、前記波形にノイズが含まれるか否かを判定する判定ステップと、
を備えている埋設物検出方法。
【請求項12】
前記判定ステップでは、前記反射波の波形の振幅最大値の中点となるサンプリングのステップ位置の前後所定ステップ数の範囲のデータを微分した計算結果を示すグラフにおいて、プラスマイナスの変化点が所定の個数以上ある場合に、前記波形にノイズが含まれると判定する、
請求項1に記載の埋設物検出方法。
【請求項13】
前記判定ステップにおいて前記波形にノイズが含まれない判定された場合に、前記埋設物検出装置が前記対象物の表面から持ち上げられたことを検出して前記放射部からの前記電磁波の放射を停止させる持ち上げ判定処理を実施する持ち上げ判定ステップを、さらに備えている、
請求項1または1に記載の埋設物検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋設物検出装置および埋設物検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、壁内あるいは地中に埋設されたガス管、パイプ等の探知表面下の位置特定物体の位置特定データを検出する装置として、探知表面に向かって電磁波を照射し、その反射波を受信して位置特定物体を検出する位置特定システム(埋設物検出装置)、特に、ハンドヘルド型の位置特定器が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2017-532528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の位置特定システム(埋設物検出装置)は、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記従来の装置では、位置特定物体(埋設物)の検出時以外に電磁波が外部へ放射されないようにするために、例えば、位置特定器を探知表面から持ち上げたことを載置認識装置によって検出している。
【0005】
しかし、この載置認識装置として、例えば、赤外線センサが用いられた場合には、位置特定物体(埋設物)を検出するために受信する反射波の受信波形に影響を及ぼし、位置特定物体の検出精度が低下してしまうおそれがある。
また、装置の持ち上げを検出するために赤外線センサを用いる以外の方法として、探知表面から装置を持ち上げた際の反射波の受信強度の変化を検出する方法も考えられる。
【0006】
しかし、このような方法では、Wi-fi(登録商標)電波等の外来ノイズの影響を受けて、装置の持ち上げを誤認識してしまうおそれがある。
さらに、位置を検出する埋設物を含む対象物の表面付近に金属板が存在する場合、石膏ボード等の誘電体の直下に金属製の埋設物がある場合等でも、単に、反射波の波形の変化を確認するだけでは、装置の持ち上げを正確に検出できないおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、例えば、外来ノイズの影響を抑制し、または埋設物の検出状況に関わらず、装置の持ち上げを正確に検出することが可能な埋設物検出装置および埋設物検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る埋設物検出装置は、対象物に向かって放射した電磁波の反射波に関するデータを用いて対象物内の埋設物を検出する埋設物検出装置であって、本体部と、放射部と、受信部と、可変遅延部と、制御部と、を備えている。放射部は、本体部に設けられ、電磁波を放射する。受信部は、本体部に設けられ、電磁波の反射波を受信する。可変遅延部は、受信部において反射波をサンプリングするサンプリングパルスの遅延時間を設定する。制御部は、受信部において受信された反射波の1ライン分の第1データを取得するとともに、反射波の1ライン分の波形の振幅最大値の中点となるサンプリングのステップ位置の前後所定ステップ数の範囲のデータを微分した計算結果を示すグラフに基づいて、波形にノイズが含まれるか否かを判定する。
【0009】
ここでは、対象物に向かって放射した電磁波の反射波に関するデータを用いて対象物内の埋設物を検出する埋設物検出装置において、受信部において受信された反射波の1ライン分の波形の振幅最大値の中点となるサンプリングのステップ位置を中心とする±所定ステップ数の範囲のデータを微分した計算結果を示すグラフに基づいて、波形にノイズが含まれるか否かを判定する。
【0010】
これにより、受信部において反射波を受信した際に、例えば、無線LAN等のノイズも受信した場合でも、反射波の1ライン分の波形の振幅最大値の中点となるサンプリングのステップ位置の前後所定ステップ数の範囲のデータを微分した計算結果を示すグラフを用いて、受信した反射波がノイズを含むか否かを容易に判定することができる。
この結果、ノイズを含むと判定された場合には、例えば、この結果を装置の持ち上げ判定処理から排除することで、ノイズの影響を抑制して、装置の持ち上げを正確に検出することができる。
【0011】
第2の発明に係る埋設物検出装置は、第1の発明に係る埋設物検出装置であって、制御部は、反射波の波形の振幅最大値の中点となるサンプリングのステップ位置の前後所定ステップ数の範囲のデータを微分した計算結果を示すグラフにおいて、プラスマイナスの変化点が所定の個数以上ある場合に、波形にノイズが含まれると判定する。
ここで、プラスマイナスの変化点とは、反射波の波形の振幅最大値の中点となるサンプリングのステップ位置の前後所定ステップ数の範囲のデータを微分した計算結果を示すグラフにおいて、グラフの傾きがプラスからマイナスに変化した点、あるいはマイナスからプラスに変化した点を意味している。
これにより、ノイズによる影響を、グラフにおけるプラスマイナスの変化点の数として検出することで、ノイズを含むか否かを容易に判定することができる。
【0012】
第3の発明に係る埋設物検出装置は、第1または第2の発明に係る埋設物検出装置であって、制御部は、波形にノイズが含まれない判定した場合に、本体部が対象物の表面から持ち上げられたことを検出して放射部からの電磁波の放射を停止させる持ち上げ判定処理を実施する。
【0013】
これにより、上述したノイズ判定処理においてノイズを含まないと判定された場合のみ、埋設物検出装置(本体部)が対象物の表面から持ち上げられたことを検出して電磁波の放射を停止させる持ち上げ判定処理を実施することができる。
すなわち、上述したノイズ判定処理において、ノイズを含むと判定された場合には、この測定結果を、持ち上げ判定処理から排除することができる。このため、持ち上げ判定処理をノイズの影響が少ない結果だけを用いて実施することで、持ち上げ判定処理を高精度に実施することができる。
【0014】
第4の発明に係る埋設物検出装置は、第3の発明に係る埋設物検出装置であって、制御部は、反射波の振幅最大値が所定の第1閾値より大きいか否かを判定し、第1閾値よりも大きいと判定した場合には、金属板上を走査されていると判断する。
これにより、持ち上げ判定処理において、対象物の直下に配置された金属板(板金)上を走査されている場合に現れる第1閾値よりも大きい振幅最大値(ピーク)の有無を検出することで、金属板(板金)上における走査中であることを前提とした持ち上げ判定処理を実施することができる。
【0015】
第5の発明に係る埋設物検出装置は、第4の発明に係る埋設物検出装置であって、本体部に取り付けられており、対象物の表面に接触した状態で回転する車輪と、本体部に設けられ、車輪に接続されており、車輪の回転に関する情報を検出する回転検出部と、をさらに備えている。制御部は、回転検出部において検出される車輪の回転が停止してから所定時間経過後に、再度、1ライン分の第2データを取得して、波形にノイズが含まれるか否かを判定する。
【0016】
ここでは、上述した金属板(板金)上の走査であるか否かを判定する際に、エンコーダ等の回転検出部によって車輪の回転が停止して所定時間が経過してから、再度、1ライン分の第2データを取得して、ノイズの有無を判定する。
これにより、1ライン分の第1データを取得し、車輪の回転が停止してから所定時間経過後に取得された第2データにノイズを含むと判定された場合には、その第2データを、金属板(板金)上における持ち上げ判定処理の判定から排除することができる。
この結果、より高精度な持ち上げ判定処理を実施することができる。
【0017】
第6の発明に係る埋設物検出装置は、第5の発明に係る埋設物検出装置であって、制御部は、第1データの波形における振幅最大値をサンプリングしたステップ位置における第2データの波形の振幅値と、第1データの波形の最大振幅値とを比較して、所定値以上の差がある場合には、金属板上において本体部が対象物の表面から持ち上げられたことを検出して放射部からの電磁波の放射を停止させる持ち上げ判定処理を実施する。
【0018】
これにより、上述した第2データにノイズが含まれるか否かの判定において、ノイズを含まないと判定された場合において、第1データの波形における最大振幅値(ピーク)と、第1データの波形における振幅最大値をサンプリングしたステップ位置における第2データの波形の振幅値とを比較して所定値以上の差があると判定された場合に、金属板(板金)上において埋設物検出装置が持ち上げられたと判断し、電磁波の放射を停止させることができる。
【0019】
第7の発明に係る埋設物検出装置は、第1から第3の発明のいずれか1つに係る埋設物検出装置であって、制御部は、反射波の振幅最大値が第1閾値より大きいか否かを判定し、第1閾値よりも小さいと判定した場合には、誘電体上を走査されていると判断する。
これにより、持ち上げ判定処理において、対象物の直下に配置された誘電体上を走査されている場合に現れる第1閾値よりも小さい振幅最大値(ピーク)の差の有無を検出することで、誘電体上における走査中であることを前提とした持ち上げ判定処理を実施することができる。
【0020】
第8の発明に係る埋設物検出装置は、第7の発明に係る埋設物検出装置であって、本体部に取り付けられており、対象物の表面に接触した状態で回転する車輪と、本体部に設けられ、車輪に接続されており、車輪の回転に関する情報を検出する回転検出部と、をさらに備えている。制御部は、回転検出部において検出される車輪の回転が停止してから所定時間経過後に、再度、1ライン分の第2データを取得して、波形にノイズが含まれるか否かを判定する。
これにより、1ライン分の第1データを取得し、車輪の回転が停止してから所定時間経過後に取得された第2データにノイズを含むと判定された場合には、その第2データを、誘電体上における持ち上げ判定処理の判定から排除することができる。
この結果、より高精度な持ち上げ判定処理を実施することができる。
【0021】
第9の発明に係る埋設物検出装置は、第8の発明に係る埋設物検出装置であって、制御部は、第1データの波形における振幅最大値の半分の振幅を持つ中点の振幅値をサンプリングしたステップにおける第2データの波形の振幅値と、第1データの波形の中点の振幅値とを比較して、所定値以上の差がある場合には、誘電体上において本体部が対象物の表面から持ち上げられたことを検出して放射部からの電磁波の放射を停止させる持ち上げ判定処理を実施する。
【0022】
ここで、誘電体上において埋設物検出装置が持ち上げられると、データの波形における振幅最大値の半分の振幅を持つ中点の振幅が所定値以上変化することが知られている。
これにより、第1データの波形における振幅最大値の半分の振幅を持つ中点の振幅値と、第1データの波形における振幅最大値の半分の振幅を持つ中点の振幅値をサンプリングしたステップにおける第2データの波形の振幅値と、を比較することで、その差が所定値以上であるか否かに応じて、誘電体上における持ち上げ判定処理を実施するか否かを判定することができる。
【0023】
第10の発明に係る埋設物検出装置は、第9の発明に係る埋設物検出装置であって、制御部は、第1データと第2データとの中点の振幅値をサンプリングしたステップ位置における振幅値の比較において所定値以上の差がない場合には、第1データの波形における振幅最大値と、第1データの波形における振幅最大値をサンプリングしたステップ位置における第2データの波形の振幅値とを比較して、所定値以上の差がある場合には、誘電体の直下に金属製の埋設物が存在する状態において、本体部が対象物の表面から持ち上げられたことを検出して放射部からの電磁波の放射を停止させる持ち上げ判定処理を実施する。
【0024】
ここで、誘電体の直下に金属が存在する場合に埋設物検出装置が持ち上げられると、上述した誘電体上における持ち上げ時とは異なり、データの波形における振幅最大値の半分の振幅を持つ中点の振幅が所定値以上変化しないことが知られている。
これにより、第1データの波形の振幅最大値の中点の振幅値と、第1データの波形の振幅最大値の中点の振幅値をサンプリングしたステップ位置における第2データの振幅値との比較において所定値以上の差がない場合には、第1データの波形における振幅最大値と、第1データの波形における振幅最大値をサンプリングしたステップ位置における第2データの波形の振幅値とを比較して、所定値以上の差がある場合には、誘電体の直下に金属製の埋設物が存在する状態において、本体部が対象物の表面から持ち上げられたことを検出する。
この結果、誘電体の直下に金属が存在する場合でも埋設物検出装置が持ち上げられたことを正確に判定することができる。
【0025】
第11の発明に係る埋設物検出装置は、対象物に向かって放射した電磁波の反射波に関するデータを用いて対象物内の埋設物を検出する埋設物検出装置であって、本体部と、放射部と、受信部と、可変遅延部と、車輪と、回転検出部と、制御部と、を備えている。放射部は、本体部に設けられ、電磁波を放射する。受信部は、本体部に設けられ、電磁波の反射波を受信する。可変遅延部は、受信部において反射波をサンプリングするサンプリングパルスの遅延時間を設定する。車輪は、本体部に取り付けられており、対象物の表面に接触した状態で回転する。回転検出部は、本体部に設けられ、車輪に接続されており、車輪の回転に関する情報を検出する。制御部は、受信部において受信された反射波の1ライン分の第1データを取得するとともに、回転検出部において検出される車輪の回転が停止してから所定時間経過後に、再度、1ライン分の第2データを取得し、第1データの波形における振幅最大値と、第1データの波形における振幅最大値をサンプリングしたステップ位置における第2データの波形の振幅値とを比較して、所定値以上の差がある場合には、金属板上において本体部が対象物の表面から持ち上げられたことを検出して放射部からの電磁波の放射を停止させる持ち上げ判定処理を実施する。
【0026】
ここでは、対象物に向かって放射した電磁波の反射波に関するデータを用いて対象物内の埋設物を検出する埋設物検出装置において、受信部において受信された反射波の1ライン分の第1データを取得するとともに、回転検出部において検出される車輪の回転が停止してから所定時間経過後に、再度、1ライン分の第2データを取得し、第1データの波形における振幅最大値と、第1データの波形における振幅最大値をサンプリングしたステップ位置における第2データの波形の振幅値とを比較して、金属板上において本体部が対象物の表面から持ち上げられたか否かを判定する。
これにより、第1データの波形における最大振幅値(ピーク)と、第1データの波形における振幅最大値をサンプリングしたステップ位置における第2データの波形の振幅値とを比較して所定値以上の差があると判定された場合に、金属板(板金)上において埋設物検出装置が持ち上げられたと判断し、電磁波の放射を停止させることができる。
【0027】
第12の発明に係る埋設物検出装置は、対象物に向かって放射した電磁波の反射波に関するデータを用いて対象物内の埋設物を検出する埋設物検出装置であって、本体部と、放射部と、受信部と、可変遅延部と、車輪と、回転検出部と、制御部と、を備えている。放射部は、本体部に設けられ、電磁波を放射する。受信部は、本体部に設けられ、電磁波の反射波を受信する。可変遅延部は、受信部において反射波をサンプリングするサンプリングパルスの遅延時間を設定する。車輪は、本体部に取り付けられており、対象物の表面に接触した状態で回転する。回転検出部は、本体部に設けられ、車輪に接続されており、車輪の回転に関する情報を検出する。制御部は、受信部において受信された反射波の1ライン分の第1データを取得するとともに、回転検出部において検出される車輪の回転が停止してから所定時間経過後に、再度、1ライン分の第2データを取得し、第1データの波形における振幅最大値の半分の振幅を持つ中点の振幅値と、第1データの波形における中点の振幅値をサンプリングしたステップ位置における第2データの波形の振幅値とを比較して所定値以上の差がない場合には、第1データの波形における振幅最大値と、第1データの波形における振幅最大値をサンプリングしたステップ位置における第2データの波形の振幅値と、を比較して、所定値以上の差がある場合に、誘電体の直下に金属製の埋設物が存在する状態において、本体部が対象物の表面から持ち上げられたことを検出して放射部からの電磁波の放射を停止させる持ち上げ判定処理を実施する。
【0028】
ここでは、対象物に向かって放射した電磁波の反射波に関するデータを用いて対象物内の埋設物を検出する埋設物検出装置において、受信部において受信された反射波の1ライン分の第1データを取得するとともに、回転検出部において検出される車輪の回転が停止してから所定時間経過後に、再度、1ライン分の第2データを取得し、第1データの波形における振幅最大値の半分の振幅を持つ中点の振幅値と、第1データの波形における中点の振幅値をサンプリングしたステップ位置における第2データの波形の振幅値とを比較して所定値以上の差がない場合には、第1データの波形における振幅最大値と、第1データの波形における振幅最大値をサンプリングしたステップ位置における第2データの波形の振幅値とを比較した結果に基づいて、誘電体の直下に金属製の埋設物が存在する状態において、本体部が対象物の表面から持ち上げられたか否かを判定する。
【0029】
ここで、誘電体の直下に金属が存在する場合に埋設物検出装置が持ち上げられると、上述した誘電体上における持ち上げ時とは異なり、データの波形における振幅最大値の半分の振幅を持つ中点の振幅が所定値以上変化しないことが知られている。
これにより、第1データの中点の振幅値と、第1データの波形における中点の振幅値をサンプリングしたステップ位置における第2データの波形の振幅値との比較において所定値以上の差がない場合には、第1データの波形における振幅最大値と、第1データの波形における振幅最大値をサンプリングしたステップ位置における第2データの波形の振幅値とを比較して、所定値以上の差がある場合には、誘電体の直下に金属製の埋設物が存在する状態において、本体部が対象物の表面から持ち上げられたことを検出する。
この結果、誘電体の直下に金属が存在する場合でも埋設物検出装置が持ち上げられたことを正確に判定して、電磁波の放射を停止させることができる。
【0030】
第13発明に係る埋設物検出方法は、対象物に向かって放射した電磁波の反射波に関するデータを用いて対象物内の埋設物を検出する埋設物検出装置を用いた埋設物検出方法であって、放射ステップと、遅延時間設定ステップと、受信ステップと、判定ステップと、を備えている。放射ステップは、放射部から電磁波を放射する。遅延時間設定ステップは、反射波をサンプリングするサンプリングパルスの遅延時間を設定する。受信ステップは、遅延時間設定ステップにおいて設定された遅延時間に基づいて、受信部において電磁波の反射波を受信する。判定ステップは、受信ステップにおいて受信された反射波の1ライン分の第1データを取得するとともに、反射波の1ライン分の波形の振幅最大値の中点となるサンプリングのステップ位置の前後所定ステップ数の範囲のデータを微分した計算結果を示すグラフに基づいて、波形にノイズが含まれるか否かを判定する。
【0031】
ここでは、対象物に向かって放射した電磁波の反射波に関するデータを用いて対象物内の埋設物を検出する埋設物検出装置を用いた埋設物検出方法において、受信部において受信された反射波の1ライン分の波形の振幅最大値の中点となるサンプリングのステップ位置を中心とする±所定ステップ数の範囲のデータを微分した計算結果を示すグラフに基づいて、波形にノイズが含まれるか否かを判定する。
【0032】
これにより、受信部において反射波を受信した際に、例えば、無線LAN等のノイズも受信した場合でも、反射波の1ライン分の波形の振幅最大値の中点となるサンプリングのステップ位置の前後所定ステップ数の範囲のデータを微分した計算結果を示すグラフを用いて、受信した反射波がノイズを含むか否かを容易に判定することができる。
この結果、ノイズを含むと判定された場合には、例えば、この結果を装置の持ち上げ判定処理から排除することで、ノイズの影響を抑制して、装置の持ち上げを正確に検出することができる。
【0033】
第14の発明に係る埋設物検出方法は、第13の発明に係る埋設物検出方法であって、判定ステップでは、反射波の波形の振幅最大値の中点となるサンプリングのステップ位置の前後所定ステップ数の範囲のデータを微分した計算結果を示すグラフにおいて、プラスマイナスの変化点が所定の個数以上ある場合に、波形にノイズが含まれると判定する。
ここで、プラスマイナスの変化点とは、反射波の波形の振幅最大値の中点となるサンプリングのステップ位置の前後所定ステップ数の範囲のデータを微分した計算結果を示すグラフにおいて、グラフの傾きがプラスからマイナスに変化した点、あるいはマイナスからプラスに変化した点を意味している。
これにより、ノイズによる影響を、グラフにおけるプラスマイナスの変化点の数として検出することで、ノイズを含むか否かを容易に判定することができる。
【0034】
第15の発明に係る埋設物検出方法は、第13または第14の発明に係る埋設物検出方法であって、判定ステップにおいて波形にノイズが含まれない判定された場合に、埋設物検出装置が対象物の表面から持ち上げられたことを検出して放射部からの電磁波の放射を停止させる持ち上げ判定処理を実施する持ち上げ判定ステップを、さらに備えている。
【0035】
これにより、上述したノイズ判定処理においてノイズを含まないと判定された場合のみ、埋設物検出装置(本体部)が対象物の表面から持ち上げられたことを検出して電磁波の放射を停止させる持ち上げ判定処理を実施することができる。
すなわち、上述したノイズ判定処理において、ノイズを含むと判定された場合には、この測定結果を、持ち上げ判定処理から排除することができる。このため、持ち上げ判定処理をノイズの影響が少ない結果だけを用いて実施することで、持ち上げ判定処理を高精度に実施することができる。
【0036】
第16の発明に係る埋設物検出方法は、対象物に向かって放射した電磁波の反射波に関するデータを用いて対象物内の埋設物を検出する埋設物検出装置を用いた埋設物検出方法であって、放射ステップと、遅延時間設定ステップと、受信ステップと、判定ステップと、を備えている。放射ステップは、放射部から電磁波を放射する。遅延時間設定ステップは、反射波をサンプリングするサンプリングパルスの遅延時間を設定する。受信ステップは、遅延時間設定ステップにおいて設定された遅延時間に基づいて、受信部において電磁波の反射波を受信する。回転検出ステップは、埋設物検出装置の本体部に取り付けられ対象物の表面に接触した状態で回転する車輪に接続されており、車輪の回転に関する情報を検出する。判定ステップは、受信ステップにおいて受信された反射波の1ライン分の第1データを取得するとともに、回転検出ステップにおいて検出される車輪の回転が停止してから所定時間経過後に、再度、1ライン分の第2データを取得し、第1データの波形における振幅最大値と、第1データの波形における振幅最大値をサンプリングしたステップ位置における第2データの波形の振幅値とを比較して、所定値以上の差がある場合には、金属板上において本体部が対象物の表面から持ち上げられたことを検出して放射部からの電磁波の放射を停止させる持ち上げ判定処理を実施する。
【0037】
ここでは、対象物に向かって放射した電磁波の反射波に関するデータを用いて対象物内の埋設物を検出する埋設物検出装置において、受信部において受信された反射波の1ライン分の第1データを取得するとともに、回転検出部において検出される車輪の回転が停止してから所定時間経過後に、再度、1ライン分の第2データを取得し、第1データの波形における振幅最大値と、第1データの波形における振幅最大値をサンプリングしたステップ位置における第2データの波形の振幅値とを比較して、金属板上において本体部が対象物の表面から持ち上げられたか否かを判定する。
これにより、第1データの波形における最大振幅値(ピーク)と、第1データの波形における振幅最大値をサンプリングしたステップ位置における第2データの波形の振幅値とを比較して所定値以上の差があると判定された場合に、金属板(板金)上において埋設物検出装置が持ち上げられたと判断し、電磁波の放射を停止させることができる。
【0038】
第17の発明に係る埋設物検出方法は、対象物に向かって放射した電磁波の反射波に関するデータを用いて対象物内の埋設物を検出する埋設物検出装置を用いた埋設物検出方法であって、放射ステップと、遅延時間設定ステップと、受信ステップと、判定ステップと、を備えている。放射ステップは、放射部から電磁波を放射する。遅延時間設定ステップは、反射波をサンプリングするサンプリングパルスの遅延時間を設定する。受信ステップは、遅延時間設定ステップにおいて設定された遅延時間に基づいて、受信部において電磁波の反射波を受信する。回転検出ステップは、埋設物検出装置の本体部に取り付けられ対象物の表面に接触した状態で回転する車輪に接続されており、車輪の回転に関する情報を検出する。判定ステップは、受信ステップにおいて受信された反射波の1ライン分の第1データを取得するとともに、回転検出ステップにおいて検出される車輪の回転が停止してから所定時間経過後に、再度、1ライン分の第2データを取得し、第1データの波形における振幅最大値の半分の振幅を持つ中点の振幅値と、第1データの波形における中点の振幅値をサンプリングしたステップ位置における第2データの波形の振幅値とを比較して所定値以上の差がない場合には、第1データの波形における振幅最大値と、第1データの波形における振幅最大値をサンプリングしたステップ位置における第2データの波形の振幅値と、を比較して、所定値以上の差がある場合に、誘電体の直下に金属製の埋設物が存在する状態において、本体部が対象物の表面から持ち上げられたことを検出して放射部からの電磁波の放射を停止させる持ち上げ判定処理を実施する。
【0039】
ここでは、対象物に向かって放射した電磁波の反射波に関するデータを用いて対象物内の埋設物を検出する埋設物検出装置において、受信部において受信された反射波の1ライン分の第1データを取得するとともに、回転検出部において検出される車輪の回転が停止してから所定時間経過後に、再度、1ライン分の第2データを取得し、第1データの波形における振幅最大値の半分の振幅を持つ中点の振幅値と、第1データの波形における中点の振幅値をサンプリングしたステップ位置における第2データの波形の振幅値とを比較して所定値以上の差がない場合には、第1データの波形における振幅最大値と、第1データの波形における振幅最大値をサンプリングしたステップ位置における第2データの波形の振幅値とを比較した結果に基づいて、誘電体の直下に金属製の埋設物が存在する状態において、本体部が対象物の表面から持ち上げられたか否かを判定する。
【0040】
ここで、誘電体の直下に金属が存在する場合に埋設物検出装置が持ち上げられると、上述した誘電体上における持ち上げ時とは異なり、データの波形における振幅最大値の半分の振幅を持つ中点の振幅が所定値以上変化しないことが知られている。
これにより、第1データの中点の振幅値と、第1データの波形における中点の振幅値をサンプリングしたステップ位置における第2データの波形の振幅値との比較において所定値以上の差がない場合には、第1データの波形における振幅最大値と、第1データの波形における振幅最大値をサンプリングしたステップ位置における第2データの波形の振幅値とを比較して、所定値以上の差がある場合には、誘電体の直下に金属製の埋設物が存在する状態において、本体部が対象物の表面から持ち上げられたことを検出する。
【0041】
この結果、誘電体の直下に金属が存在する場合でも埋設物検出装置が持ち上げられたことを正確に判定して、電磁波の放射を停止させることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明に係る埋設物検出装置によれば、例えば、外来ノイズの影響を抑制し、または埋設物の検出状況に関わらず、装置の持ち上げを正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の一実施形態に係る埋設物検出装置の構成を示す斜視図。
図2図1の埋設物検出装置の構成を示すブロック図。
図3図2のインパルス制御モジュールの構成を示すブロック図。
図4図3のMPUが取得する反射波のデータを示す図。
図5図2のメイン制御モジュールの構成を示すブロック図。
図6図1の埋設物検出装置によって実施される埋設物検出方法の処理の流れを示すフローチャート。
図7図6の埋設物検出方法に含まれる電磁波の放射開始制御の処理の流れを示すフローチャート。
図8】(a)は、図1の埋設物検出装置が探査面(コンクリートの表面)に接触した状態を示す模式図。(b)は、図1の埋設物検出装置が探査面(コンクリートの表面)から持ち上げられた(離間した)状態を示す模式図。
図9図8(a)および図8(b)の状態において取得されたディレイICのステップ数と反射波のデータ(ディジタル値)との関係を示すグラフ。
図10図1の埋設物検出装置の受信アンテナにおいて受信されたデータにノイズが含まれる場合の変化を示すために、ディレイICとのステップ数と反射波のデータ(ディジタル値)との関係を示すグラフ。
図11】(a)は、図1の埋設物検出装置においてコンクリート中に存在する埋設物からの反射波を受信する状態を示す模式図。(b)は、図1の埋設物検出装置においてコンクリートの表面に板金が存在する状態を示す模式図。
図12】(a)は、図11(a)の状態において取得された反射波のデータを示すグラフ。(b)は、図11(b)の状態において取得された反射波のデータを示すグラフ。
図13】(a)は、図1の埋設物検出装置によって走査される誘電体の直下に金属製の埋設物が存在する状態を示す模式図。(b)は、図1の埋設物検出装置によって走査される誘電体の直下に金属製の埋設物が存在する状態において埋設物検出装置を持ち上げた状態を示す模式図。
図14図13(a)および図13(b)の状態において取得したディレイICのステップ数と反射波のデータ(ディジタル値)との関係を示すグラフ。
図15図6の電磁波の放射停止制御の処理の流れを示すシーケンス図。
図16図6の埋設物検出方法に含まれる電磁波の放射停止制御の処理の流れを示すフローチャート。
図17】本発明の一実施形態に係る埋設物検出方法における持ち上げ判定処理の流れを示すフローチャート。
図18】本発明の一実施形態に係る埋設物検出方法における板金上の持ち上げ判定処理の流れを示すフローチャート。
図19】本発明の一実施形態に係る埋設物検出方法における誘電体上の持ち上げ判定処理の流れを示すフローチャート。
図20】本発明の一実施形態に係る埋設物検出方法における誘電体直下の金属製の埋設物上の持ち上げ判定処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の一実施形態に係る埋設物検出装置1および埋設物検出方法について、図1図20を用いて説明すれば以下の通りである。
図1は、本実施形態の埋設物検出装置1をコンクリート(対象物)100上に配置した状態を示す斜視図である。図2は、本実施形態の埋設物検出装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0045】
(1-1.埋設物検出装置1の構成)
本実施形態の埋設物検出装置1は、コンクリート100等の対象物の表面100aを移動しながらコンクリート100に向かってインパルス波(電磁波)を放射し、その反射波を受信して解析することによって、コンクリート100内の埋設物101a,101b,101c,101dの位置を検出する。そして、図1では、埋設物検出装置1の移動方向が、矢印Aで示されている。
【0046】
なお、図1に示す例では、埋設物101a,101b,101c,101dは、鉄筋であって、例えば、コンクリート100の表面100aから20cm,15cm,10cm,5cmの深さ位置にそれぞれ埋設されている。図1では、コンクリート100の深さ方向が矢印Bで示されており、その反対向き(表面方向)が矢印Cで示されている。
コンクリート100内に埋設された4本の鉄筋(埋設物101a~101d)は、それぞれ、コンクリート100の表面100aに略平行な方向に沿って、埋設物検出装置1の移動方向に交差する向きで配置されている。
【0047】
埋設物検出装置1は、図2に示すように、本体部2と、把手3と、4つの車輪4と、インパルス制御モジュール5と、メイン制御モジュール6と、エンコーダ(回転検出部)7と、表示部8と、を備えている。
把手3は、作業者(ユーザ)によって把持される取っ手部分であって、本体部2の上面に設けられている。4つの車輪は、回転可能な状態で、本体部2の下部に取り付けられている。作業者は、コンクリート100内部の埋設物101を検出する際には、把手3を把持して車輪4を回転させながら、コンクリート100の表面100a上で埋設物検出装置1を移動させる。
【0048】
インパルス制御モジュール5は、コンクリート100の表面100aに向けてインパルス波を放射するタイミング、および放射したインパルス波の反射波を受信するタイミング等の制御を行う。
エンコーダ7は、車輪4に接続されており、車輪4の回転に関する情報を検出し、その検出された情報に基づいて、インパルス制御モジュール5に対して、インパルス波の放射タイミングおよび反射波の受信タイミングを制御するための信号を送信する。
メイン制御モジュール6は、インパルス制御モジュール5で受信された反射波に関するデータを受け取り、埋設物101の検出を行う。
表示部8は、本体部2の上面に設けられており、埋設物101a,101b,101c,101dの位置を示す画像等を表示する。
【0049】
(1-2.インパルス制御モジュール5)
図3は、インパルス制御モジュール5の構成を示すブロック図である。
【0050】
インパルス制御モジュール5は、図3に示すように、制御部10と、送信アンテナ(送信部)11と、受信アンテナ(受信部)12と、インパルス生成回路13と、ディレイIC14と、サンプリングパルス生成回路15と、高速サンプル・ホールド回路16と、A/Dコンバータ17と、記憶部18と、を有している。
制御部10は、MPU(Micro Processing Unit)等によって構成されており、エンコーダ入力をトリガとして、インパルス生成回路13にインパルス波の発生を指令する。
【0051】
また、制御部10は、受信アンテナ12において反射波を受信するタイミングおよび期間を設定するサンプリングパルスを調整するディレイIC14を制御する。
さらに、制御部10は、受信アンテナ12において受信した反射波のデータに外来ノイズが含まれるか否かを判定するとともに、埋設物検出装置1が探査面(コンクリート100の表面100a)上から持ち上げられたか否かを判定する。なお、ノイズ判定処理および持ち上げ判定処理については、後段にて詳述する。
【0052】
送信アンテナ11は、本体部2の底面側に設けられており、パルスの周期に基づいて、一定周期でインパルス波を放射する。
受信アンテナ12は、本体部2の底面側に設けられており、主に、送信アンテナ11から放射されたインパルス波の反射波を受信する。具体的には、例えば、送信アンテナ11から放射されたインパルス波がコンクリート100内を往復する時間を5ns(=5000ps)とすると、受信アンテナ12は、送信アンテナ11からインパルス波が放射されてから5ns(5000ps)間に受信される反射波を受信することで、図4に示すような受信波形を得ることができる。
【0053】
インパルス生成回路13は、制御部10によって制御されており、制御部10を介して入力されたエンコーダ7の入力をトリガとし、MPUからの指令に基づいてインパルス波を所定の時間間隔で所定の回数(例えば、10ps間隔で500回)だけ発生させ、送信アンテナ11に出力する。
ディレイIC14は、制御部10によって制御されており、ディジタル信号によって、受信アンテナ12において反射波をサンプリングするサンプリングパルスの遅延時間およびサンプリング期間を設定する。
【0054】
サンプリングパルス生成回路15は、ディレイIC14によって設定された遅延時間に基づいて、受信アンテナ12において受信した反射波を取り込むように、高速サンプル・ホールド回路16にサンプリングパルスを送信する。
高速サンプル・ホールド回路16は、サンプリングパルス生成回路15からサンプリングパルスを受信して、受信アンテナ12において受信した反射波を取り込んで、A/Dコンバータ17へ送信する。
【0055】
A/Dコンバータ17は、高速サンプル・ホールド回路16から受信した反射波の信号を、A/D(Analog/Digital)変換して制御部10へ送信する。
記憶部18は、制御部10に接続されており、受信アンテナ12において受信した1ライン分に相当する、例えば、0~511ステップまでのサンプリングデータを保存する。
本実施形態の埋設物検出装置1では、以上の構成により、インパルス制御モジュール5が、エンコーダか7からの入力をトリガとして、送信アンテナ11からインパルス波を複数回出力する。そして、インパルス制御モジュール5は、ディレイIC14を用いて、インパルス波が放射されてからの遅延時間を設定し、反射波の取得タイミングを遅らせることで、コンクリート100の表面100aからの距離ごとの反射波のデータを取得することができる。
【0056】
ここで、図4は、MPUが取得する反射波のデータを示す図である。縦軸は、受信した反射波を2の12乗の分解能でA/D変換し、中央値の2048階調を軸Oとして、0~4095階調のディジタルデータで示しており、矢印方向がマイナス側を示す。横軸は、受信アンテナ12との距離を示し、矢印方向(深さ方向Bに対応)が受信アンテナ12からの距離が長いことを示す。また、距離が長いとは、深さが大きいことに相当する。
【0057】
なお、図4に示す波形W1には、コンクリート10 0内に放射されずにアンテナで反射した反射波も含まれる(p1等)ため、基準波形との差分を算出することにより、コンクリート100内からの反射波のデータの変化が抽出される。
また、図4に示すデータは、エンコーダ7の入力があった後、エンコーダ7から次の入力があるまでの受信信号の強度を示すデータである。ディレイIC14によって設定された遅延時間に基づいて、反射波の取得タイミングを除々に遅らせることによって、受信アンテナ12からの距離が長い位置からの反射波を受信するが、エンコーダ7からの入力があると、受信タイミングの遅延が元に戻され、再び受信タイミングを除々に遅らせる。すなわち、移動方向Aにおける所定の計測位置(エンコーダ7からの入力があった位置)における深さ方向Bの反射波を受信する。このような図4に示すエンコーダ7の入力があった後、次のエンコーダの入力があるまでに受信した反射波のデータを、1ライン分のデータという。制御部10は、1ライン分のデータが貯まるごとに、その1ライン分のRF(Radio Frequency)データをメイン制御モジュール6へ送信する。
【0058】
なお、埋設物検出装置1は、作業者(ユーザ)によってコンクリート100の表面100a上を移動しているため、計測位置は厳密に同じ位置ではなく、深さ方向Bもコンクリート100の表面100aに対して厳密に垂直な方向ではない。
(1-3.メイン制御モジュール6)
図5は、メイン制御モジュール6の構成を示すブロック図である。
【0059】
メイン制御モジュール6は、図5に示すように、受信部21と、RFデータ管理部22と、埋設物判定部24と、判定結果登録部25と、表示制御部26と、を有している。
受信部21は、インパルス制御モジュール5の制御部10から送信されるごとに、1ライン分のRFデータを受信する。
RFデータ管理部22は、受信部21が受信した1ライン分のRFデータを記憶する。
【0060】
埋設物判定部24は、RFデータ管理部22において記憶された1ライン分のRFデータを用いて、埋設物101の有無を判定するとともに、埋設物101の位置を検出する。
なお、埋設物判定部24における埋設物101の検出処理については、受信アンテナ12において受信した複数の1ライン分のRFデータに基づいて、既知の方法を用いて実施すればよい。具体的には、例えば、埋設物101が鉄筋等の金属である場合には、送信アンテナ11から放射されたインパルス波は、その表面において反射される。このため、受信アンテナ12において、このような埋設物101の表面で反射された反射波の速度(強度)と、反射波を受信するまでの時間とを検出することで、コンクリート100内の埋設物101の有無およびその位置を検出することができる。
【0061】
判定結果登録部25は、埋設物判定部24によって検出された埋設物101の位置をRFデータ管理部22に登録する。
表示制御部26は、移動方向Aと深さ方向Bの平面において信号強度を色で階調処理した画像、および埋設物101の位置を表示するように、表示部8の制御を行う。
<埋設物検出処理の流れ>
本実施形態の埋設物検出方法では、上述した埋設物検出装置1を用いて、図6に示すフローチャートに従って、例えば、コンクリート100内の埋設物101の検出を行う。
【0062】
すなわち、ステップS1では、初期化処理を実施して、エンコーダ7、タイマ(図示せず)からの入力をトリガとして、送信アンテナ11および受信アンテナ12を制御して、1ライン分のRFデータを受信する。
次に、ステップS2では、制御部10が、エンコーダ7から受信した車輪4の回転に関する情報に基づいて、送信アンテナ11からインパルス波(電磁波)を放射するか否かを判定する電磁波放射開始制御を実施する。
【0063】
なお、電磁波放射開始制御については、図7を用いて後段にて詳述する。
次に、ステップS3では、ステップS2において、インパルス波の放射開始条件を満たしておりインパルス波の放射が開始された後、受信アンテナ12において受信した反射波の波形の変化に基づいて、インパルス波の放射停止制御を実施する。
次に、ステップS4では、ステップS3において、インパルス波の放射を停止させるか否かを決定した後、コンクリート100内の埋設物101の探索を終了するか否かを判定する。
【0064】
ここで、引き続き探索を継続する場合には、ステップS2へ戻り、探索を終了する場合にはステップS5へ進む。
次に、ステップS5では、受信アンテナ12において受信された反射波の1ライン分のRFデータを用いて、コンクリート100内における埋設物101の有無、およびその位置を検出して、処理を終了する。
【0065】
<電磁波放射開始制御の流れ>
本実施形態の埋設物検出方法では、上述した図6のステップS2の電磁波放射開始制御を、図7に示すフローチャートに従って実施する。
すなわち、本実施形態の埋設物検出装置1では、上述したように、インパルス制御モジュール5に含まれる制御部10が、エンコーダ7からの入力状況に基づいて、送信アンテナ11からインパルス波の放射を開始するか否かを決定する。
【0066】
より具体的には、ステップS11では、まず、制御部10が、エンコーダ7からの入力があるか否かを判定する。ここで、エンコーダ7からの入力がある場合には、ステップS12へ進み、入力があるまでステップS11を繰り返す。
次に、ステップS12では、制御部10は、エンコーダ7から、同じ方向にN回以上連続して入力されたか否かを検出することで、コンクリート100の表面100aにおいて車輪4の回転が安定しているか否かを判定する。
【0067】
次に、ステップS13では、制御部10は、ステップS12において、エンコーダ7からの入力が安定したこと、つまり、車輪4の回転が安定していると判定したため、仮のインパルス波を所定時間だけ放射するように、インパルス生成回路13を介して送信アンテナ11を制御する。
次に、ステップS14では、ステップS13において送信アンテナ11から放射されたインパルス波の反射波を受信した1ライン分のデータを、受信アンテナ12から受信する。
【0068】
次に、ステップS15では、制御部10は、受信アンテナ12から受信した仮のインパルス波の反射波の波形を用いて、空気中を示すデータである(埋設物検出装置1が持ち上げられた状態である)か否かを判定する。
ステップS15において、反射波の波形に基づいて、埋設物検出装置1がコンクリート100の表面100aから持ち上げられていないと判定されると、ステップS16へ進む。一方、埋設物検出装置1が持ち上げられた状態であると判定されると、ステップS17へ進む。
【0069】
ここで、空気中を示すデータは、作業者によって埋設物検出装置1が持ち上げられる等して、コンクリート100の表面100aから離間した状態を意味する。
また、埋設物検出装置1がコンクリート100の表面100aから離間したことを検出するための原理について説明する。
例えば、埋設物検出装置1の車輪4がコンクリート100の表面100aに接触している状態では、図8(a)に示すように、放射されたインパルス波は、コンクリート100の表面100aから内部を通過して、その反射波が受信アンテナ12で受信される。
【0070】
このとき、空気の誘電率を1とすると、コンクリート100の誘電率7であることから、コンクリート100中を移動したインパルス波は減衰されて空気中を移動するよりも速度が遅くなる。
一方、埋設物検出装置1の車輪4がコンクリート100の表面100aから離間した状態では、図8(b)に示すように、放射されたインパルス波は、空気中を移動して受信アンテナ12で受信される。
【0071】
同様に、空気の誘電率を1とすると、コンクリート100の誘電率7であることから、空気中を移動したインパルス波はほとんど減衰されず、コンクリート100内を通過したインパルス波よりも速度が速くなる。
図9は、図8(a)および図8(b)に示す状態において、コンクリート100の表面100aからの深さ(横軸)に対する反射波のデータ(ディジタル値)(縦軸)を示している。
【0072】
ここで、図8(a)に示す状態における反射波のデータ(実線)と、図8(b)に示す状態における反射波のデータ(一点鎖線)との差分は、図9に示すグラフとして示される。すなわち、埋設物検出装置1をコンクリート100の表面100aから持ち上げた場合には、誘電体の誘電率によって受信アンテナ12における受信波形が、持ち上げる前と後とで位相がずれる。
【0073】
本実施形態の埋設物検出装置1では、このような持ち上げ時において受信波形の位相がずれることを利用して、例えば、受信波形の振幅最大値(ピーク値)の半分の値を取る中点のステップ位置において、振幅の変化がディジタル値で所定値(例えば、35)以上となるか否かで、持ち上げありと判定する。
ここで、このような持ち上げ判定処理において、受信アンテナ12において受信した波形に、例えば、Wi-fi(登録商標)等の外来ノイズが含まれる場合には、図10に示すように、ノイズを含まない波形(実線)と比較して、ノイズを含む波形(点線)は、受信強度が上下に変動してしまう。
【0074】
このため、ノイズを含む波形を用いて持ち上げ判定処理を実施すると、実際には埋設物検出装置1が持ち上げられていないにもかかわらず、持ち上げられたと誤判定してしまうおそれがある。この場合、作業者(ユーザ)が埋設物検出装置1を使用中に、持ち上げありと誤判定された結果、送信アンテナ11からインパルス波の放射が停止され、表示部8における表示も消えてしまう等の不具合が生じてしまう。
【0075】
そこで、本実施形態の埋設物検出装置1および埋設物検出方法では、ステップS15における持ち上げ判定処理において、受信アンテナ12において受信した波形にノイズが含まれるか否かを判定するノイズ判定処理を実施する。
なお、ノイズ判定処理の詳細については、後段にて詳述する。
また、持ち上げ判定処理の誤判定が生じる別の要因として、図11(a)および図11(b)に示すように、コンクリート100の表面100aに沿って埋設物検出装置1を走査する際に、表面100a付近に、板金(金属板)が配置されている構成が考えられる。
【0076】
具体的には、図11(b)に示すように、コンクリート100の表面100a付近の板金において、送信アンテナ11から放射されたインパルス波が反射されてしまい、その下にある埋設物101を検出することが困難になる。
そして、持ち上げ判定処理においても、図11(a)に示す状態で受信した受信波形(図12(a)参照)は、図11(b)に示す状態では、埋設物検出装置1をコンクリート100の表面100aから持ち上げた際に生じる受信波形と比較して、最初のピークとなる部分が近似した波形(図12(b)参照)となるおそれがある。よって、高精度に持ち上げ判定処理を実施することが困難である。
【0077】
そこで、本実施形態の埋設物検出装置1および埋設物検出方法では、ステップS15における持ち上げ判定処理において、板金上における持ち上げ判定処理であるか否かを判定する処理を実施する。
なお、板金上における持ち上げ判定処理の詳細については、後段にて詳述する。
さらに、持ち上げ判定処理の誤判定が生じるさらに別の要因として、図13(a)および図13(b)に示すように、埋設物検出装置1が走査される石膏ボード等の誘電体の直下に金属製の埋設物101が存在する構成が考えられる。
【0078】
具体的には、図13(a)に示すように、誘電体の直下に金属製の埋設物101が存在する場合には、図13(b)に示すように、埋設物検出装置1を持ち上げたとしても、図14に示すように、受信波形の位相ずれが生じない。
このため、位相ずれを利用した図9に示す通常の持ち上げ判定方法では、埋設物検出装置1が持ち上げられたことを検出することが困難である。
【0079】
そこで、本実施形態の埋設物検出装置1および埋設物検出方法では、ステップS15における持ち上げ判定処理において、誘電体の直下に設けられた金属製の埋設物101上における持ち上げ判定処理であるか否かを判定する処理を実施する。
なお、誘電体直下の金属製の埋設物101上における持ち上げ判定処理の詳細については、後段にて詳述する。
【0080】
次に、ステップS16では、ステップS15において、埋設物検出装置1がコンクリート100の表面100a付近にあると判定されたため、制御部10は、埋設物検出装置1が安定して移動しており、かつコンクリート100の表面100a付近にあると判断し、送信アンテナ11からインパルス波を放射するように制御を行う。
これにより、コンクリート100内の埋設物101の検出を開始する際に、作業者による操作なしで自動的にインパルス波を放射することができる。
【0081】
なお、ここで放射されるインパルス波と、ステップS13において放射される仮のインパルス波は、同じ強度であってもよいし、例えば、仮のインパルス波の強度を弱くする等、異なる強度であってもよい。
次に、ステップS17では、ステップS15において、埋設物検出装置1がコンクリート100の表面100aから離間して空気中にあると判定されたため、制御部10は、送信アンテナ11を制御して、インパルス波の放射を停止させる。
【0082】
これにより、コンクリート100内の埋設物101の検出を開始する際に、埋設物検出装置1がコンクリート100の表面100aから離間した状態、すなわち、埋設物検出装置1が持ち上げられた状態であると判定されると、作業者による操作なしで自動的にインパルス波の放射を停止させることができる。
<電磁波放射停止制御の流れ>
本実施形態の埋設物検出方法では、上述した埋設物検出装置1を用いて、図15に示すシーケンス図および図16に示すフローチャートに従って、送信アンテナ11からのインパルス波の放射停止制御を行う。
【0083】
すなわち、ステップS21では、インパルス波が放射されているか否かを検出する。ここで、インパルス波の放射が確認されると、ステップS22へ進み、インパルス波の放射がすでに停止されている場合には、処理を終了する。
ここで、インパルス波の放射は、図15に示すように、コンクリート100の表面100aにおいて、作業者が埋設物検出装置1を操作することでエンコーダ7から制御部10に対して入力が有り、制御部10が送信アンテナ11に対してインパルス波放射指示を送信することで行われる。
【0084】
そして、コンクリート100の表面100aにおいて、作業者が埋設物検出装置1を操作するたびに、エンコーダ7から制御部10に対して入力が有り、エンコーダ7からの入力があるたびに、受信アンテナ12から制御部10に対して反射波のデータが送信される。
次に、ステップS22では、インパルス波が放射されていることが検出されたため、エンコーダ7からの入力が停止したか否かを検出する。ここで、エンコーダ7からの入力が停止している場合には、ステップS23へ進み、エンコーダ7からの入力が継続している場合には、エンコーダ7からの入力が停止するまで待機する。
【0085】
次に、ステップS23では、埋設物検出装置1がコンクリート100の表面100aから離間していることを検出するために用いられる探査面離間比較データが初期化されているか否かを判定する。ここで、初期化されている場合には、ステップS24へ進む。一方、初期化されていない場合には、ステップS25へ進み、1ラインデータによって比較データを初期化する。
【0086】
なお、探査面離間比較データとしては、例えば、上述した埋設物検出装置1がコンクリート100の表面100aに接触した状態における反射波のデータを示すグラフ(図9参照)等を用いることができる。
次に、ステップS24では、受信アンテナ12において受信された反射波の1ライン分のデータ(図9の実線)と、予め記憶されている探査面離間比較データ(図9の一点鎖線)とを比較して、所定の閾値以上の差(変化)があったか否かを判定する。ここで、所定の閾値以上の差(変化)があった場合には、ステップS26へ進む。
【0087】
より具体的には、図15に示すように、エンコーダ7からの制御部10への入力が停止してから100msごとに行われる受信アンテナ12からのデータ送信(1)~(3)のうち、(1)のデータと(3)のデータとが所定の閾値以上の差(変化)があると判断した場合に、ステップS26へ進む。
なお、埋設物検出装置1がコンクリート100の表面100aに接触している状態(図8(a)参照)を基準にして、表面100aから離間した状態(図8(b)参照)であるか否かを判定する処理については、上述した図9に示すグラフを用いて同様に実施することができる。
【0088】
次に、ステップS26では、制御部10は、ステップS21においてインパルス波の放射を確認し、ステップS22においてエンコーダ7からの入力の停止を確認し、かつ、ステップS24において反射波のデータが比較データと所定の閾値以上の差があることを確認したことで、埋設物検出装置1がコンクリート100の表面100aから離間したと判断し、インパルス波の放射を停止させるように、インパルス生成回路13を介して送信アンテナ11を制御する。
【0089】
これにより、コンクリート100内の埋設物101の検出作業を終了する際に、作業者による操作なしで、自動的にインパルス波の放射を停止することができる。また、作業中以外にインパルス波が放射されることを防止することで、無駄な電力消費を抑制し、送信アンテナ11の回路素子等の部品の寿命劣化を防止することができる。
<埋設物検出装置1の持ち上げ判定処理の流れ>
本実施形態の埋設物検出装置1および埋設物検出方法では、図9に示す反射波の波形の位相ずれの検出による持ち上げ判定処理に加えて、以下の示す方法により、埋設物検出装置1が対象物の表面から持ち上げられたか否かを正確に判定する。
【0090】
すなわち、図16に示す電磁波放射停止制御では、受信アンテナ12において受信した反射波のデータに外来ノイズ等が含まれている場合(図10参照)、コンクリート100の表面100a付近に設けられた板金上を走査される場合(図11(b)参照)、コンクリート100等の誘電体の直下に配置された金属製の埋設物101上を走査される場合(図13(b)参照)等には、埋設物検出装置1の持ち上げ判定を正確に実施することができないおそれがある。
【0091】
そこで、本実施形態の埋設物検出装置1および埋設物検出方法では、図17図20のフローチャートに従って、持ち上げ判定処理を実施する。
なお、図17図20に示すフローチャートは、図7のステップS15の内容を詳細に記載したものである。
具体的には、図17に示すように、ステップS31では、制御部10が、受信アンテナ12において受信し、高速サンプル・ホールド回路16において取得され、A/Dコンバータ17においてA/D変換された1ラインデータ(ディジタル値)を記憶部18に保存させる。
【0092】
次に、ステップS32では、制御部10は、記憶部18に保存させた1ラインデータから、0~511ステップ分のディジタル値を取得する。
次に、ステップS33では、制御部10は、取得したディジタル値のデータから、0~511ステップまでの振幅最大値とそのステップ位置とを取得する。
次に、ステップS34では、制御部10は、0~511ステップまでの振幅最大値が3500(ディジタル値)(第1閾値)よりも大きいか否かを判定する。
【0093】
なお、ステップS34における判定は、持ち上げ判定の精度を低下させるおそれがある状況のいずれかに該当するかを判定する処理である。
具体的には、ステップS34において、0~511ステップまでの振幅最大値が3500(ディジタル値)よりも大きいと判定された場合には、制御部10は、図11(b)に示す板金上における走査であって、図12(b)に示すように、受信波形の振幅最大値が、図11(a)に示す誘電体上の走査状態の受信波形(図12(a)参照)よりも大きくなっていると判断し、板金上における持ち上げ判定処理へ進む。
【0094】
一方、ステップS34において、0~511ステップまでの振幅最大値が3500(ディジタル値)以下であると判定された場合には、制御部10は、板金上における走査状態ではないと判断し、誘電体上(誘電体上または誘電体直下の金属上)における持ち上げ判定処理へ進む。
そして、ステップS34において、板金上における持ち上げ判定処理へ進むと、制御部10は、図18に示すフローチャートに従って、板金上における持ち上げ検知処理を実施する。
【0095】
すなわち、ステップS41では、まず、受信波形にノイズが含まれるか否かを判定するために、制御部10は、ステップS33において取得した振幅最大値のステップ位置の中点から±30ステップの範囲内のデータを微分した計算結果について、±の変化点が10個(10ステップ)以下であるか否かを判定する。
なお、±の変化点とは、微分した計算結果のグラフの傾きがプラスからマイナスへ変化する点、およびマイナスからプラスへ変化する点を意味している。
【0096】
ここで、ステップS41において、±の変化点が10個以下であると判定されると、制御部10は、持ち上げ判定の精度を低下させる程度のノイズの混入はないと判断し、ステップS42へ進む。
一方、図10に示すように、±の変化点が10個より多いと判定されると、制御部10は、持ち上げ判定の精度を低下させるノイズの混入が認められるため、ステップS16へ進み、このデータを持ち上げ判定処理の対象から除外し、持ち上げ判定処理を実施せずに、インパルス波(電磁波)の放射を開始させる。
【0097】
次に、ステップS42では、制御部10は、エンコーダ7の停止(車輪4の回転停止)から200msec経過したか否かを判定する。
ここで、経過している場合には、ステップS43へ進み、経過していない場合には、制御部10は、埋設物検出装置1がコンクリート100の表面100aに接触して使用中であると判断し、ステップS16へ進み、電磁波の放射を開始させる。
【0098】
次に、ステップS43では、制御部10は、1走査上におけるステップS33の振幅最大値のステップ位置における次の1ラインデータ(第2データ)を取得する。
次に、ステップS44では、第2データとしての1ラインデータについて受信波形にノイズが含まれるか否かを判定するために、制御部10は、ステップS33において取得した振幅最大値のステップ位置の中点から±30ステップの範囲内のデータを微分した計算結果について、±の変化点が10個(10ステップ)以下であるか否かを判定する。
【0099】
ここで、ステップS44において、±の変化点が10個以下であると判定されると、制御部10は、持ち上げ判定の精度を低下させる程度のノイズの混入はないと判断し、ステップS45へ進む。
一方、図10に示すように、±の変化点が10個より多いと判定されると、制御部10は、持ち上げ判定の精度を低下させるノイズの混入が認められるため、ステップS16へ進み、このデータを持ち上げ判定処理の対象から除外し、持ち上げ判定処理を実施せずに、インパルス波(電磁波)の放射を開始させる。
【0100】
次に、ステップS45では、板金上における持ち上げが行なわれたか否かを判定するために、制御部10は、ステップS43で取得した第2データのステップ位置における振幅値から、ステップS33で取得した第1データのステップ位置における振幅最大値を減算し、所定の閾値(-200)以下であるか否かを判定する。
なお、この所定の閾値(-200)を用いた判定は、送信アンテナ11および受信アンテナ12の直下に板金がある構成では大きな振幅変化が生じることを利用して、埋設物検出装置1の持ち上げによって振幅の変化が生じていることを検出することで、板金上における埋設物検出装置1の持ち上げを検出するものである。
【0101】
ここで、-200以下と判定されると、ステップS46へ進み、制御部10は、板金上において埋設物検出装置1の持ち上げがあったと判断する。そして、制御部10は、ステップS17において、送信アンテナ11からのインパルス波(電磁波)の放射を停止させる。
一方、-200より大きいと判定されると、制御部10は、埋設物検出装置1が板金上において持ち上げられておらず使用中であると判断し、ステップS16へ進み、電磁波の放射を開始させる。
【0102】
さらに、ステップS45において、誘電体上における持ち上げ判定処理へ進むと、制御部10は、図19に示すフローチャートに従って、誘電体上における持ち上げ検知処理を実施する。
すなわち、ステップS51では、制御部10が、ステップS31において記憶部18に保存されたディジタルデータのうち、0~100ステップまでの振幅最大値とそのステップ位置とを取得する。
【0103】
次に、ステップS52では、1ラインデータについて受信波形にノイズが含まれるか否かを判定するために、制御部10は、0~100ステップまでの振幅最大値とそのステップ位置の中点から±30ステップの範囲内のデータを微分した計算結果について、±の変化点が10個(10ステップ)以下であるか否かを判定する。
ここで、ステップS52において、±の変化点が10個以下であると判定されると、制御部10は、持ち上げ判定の精度を低下させる程度のノイズの混入はないと判断し、ステップS53へ進む。
【0104】
一方、図10に示すように、±の変化点が10個より多いと判定されると、制御部10は、持ち上げ判定の精度を低下させるノイズの混入が認められるため、ステップS16へ進み、このデータを持ち上げ判定処理の対象から除外し、持ち上げ判定処理を実施せずに、インパルス波(電磁波)の放射を開始させる。
次に、ステップS53では、制御部10は、取得した受信波形について、振幅最大値に対して基準となる中点を算出するために、以下の計算式(1)を用いる。
【0105】
(振幅最大値-2048)/2+2048 ・・・・・(1)
次に、ステップS54では、制御部10は、ステップS53において算出された中点のステップ位置とそのデータ値とを取得する。
次に、ステップS55では、制御部10は、エンコーダ7の停止(車輪4の回転停止)から200msec経過したか否かを判定する。
【0106】
ここで、経過している場合には、ステップS56へ進み、経過していない場合には、制御部10は、埋設物検出装置1がコンクリート100の表面100aに接触して使用中であると判断し、ステップS16へ進み、電磁波の放射を開始させる。
次に、ステップS56では、1走査上におけるステップS53の振幅最大値のステップ位置における次の1ラインデータ(第2データ)を取得する。
【0107】
次に、ステップS57では、第2データとしての1ラインデータについて受信波形にノイズが含まれるか否かを判定するために、制御部10は、第2データの0~100ステップまでの振幅最大値のステップ位置の中点から±30ステップの範囲内のデータを微分した計算結果について、±の変化点が10個(10ステップ)以下であるか否かを判定する。
【0108】
ここで、ステップS57において、±の変化点が10個以下であると判定されると、制御部10は、持ち上げ判定の精度を低下させる程度のノイズの混入はないと判断し、ステップS58へ進む。
一方、図10に示すように、±の変化点が10個より多いと判定されると、制御部10は、持ち上げ判定の精度を低下させるノイズの混入が認められるため、ステップS16へ進み、このデータを持ち上げ判定処理の対象から除外し、持ち上げ判定処理を実施せずに、インパルス波(電磁波)の放射を開始させる。
【0109】
次に、ステップS58では、誘電体上における持ち上げが行なわれたか否かを判定するために、制御部10は、ステップS56で取得した第2データのステップ位置における振幅値から、ステップS54で取得した第1データのステップ位置における振幅最大値を減算し、所定の閾値(35)以上であるか否かを判定する。
ここで、35以上と判定されると、ステップS59へ進み、制御部10は、誘電体上において埋設物検出装置1の持ち上げがあったと判断する。そして、制御部10は、ステップS17において、送信アンテナ11からのインパルス波(電磁波)の放射を停止させる。
【0110】
一方、35未満と判定されると、制御部10は、埋設物検出装置1が誘電体直下の金属上における持ち上げ(図13(b)参照)の可能性があると判断し、図20へ示すフローへ進む。
そして、図20に示すフローチャートにおいて、ステップS61では、ステップS51において取得した0~100ステップまでの振幅最大値とそのステップ位置とを含むデータ取得する。
【0111】
次に、ステップS62では、受信波形にノイズが含まれるか否かを判定するために、ステップS51において取得したデータの振幅最大値とそのステップ位置の中点から±30ステップの範囲内のデータを微分した計算結果について、±の変化点が10個(10ステップ)以下であるか否かを判定する。
ここで、ステップS62において、±の変化点が10個以下であると判定されると、制御部10は、持ち上げ判定の精度を低下させる程度のノイズの混入はないと判断し、ステップS63へ進む。
【0112】
一方、図10に示すように、±の変化点が10個より多いと判定されると、制御部10は、持ち上げ判定の精度を低下させるノイズの混入が認められるため、ステップS16へ進み、このデータを持ち上げ判定処理の対象から除外し、持ち上げ判定処理を実施せずに、インパルス波(電磁波)の放射を開始させる。
次に、ステップS63では、図13(b)に示す誘電体直下の金属製の埋設物101上における持ち上げ判定を実施するために、制御部10は、ステップS61で取得した第2データのステップ位置における振幅値から、ステップS51で取得した第1データのステップ位置における振幅最大値を減算し、所定の閾値(-40)以下であるか否かを判定する。
【0113】
なお、ステップS63における判定は、上述した誘電体の直下に配置された金属製の埋設物101上において埋設物検出装置1を持ち上げても、一般的な持ち上げ時における受信波形の位相ずれが生じないことを考慮して、図14に示すように、0~100ステップの振幅最大値の差を所定の閾値(-40)と比較するものである。
ここで、-40以下と判定されると、ステップS64へ進み、制御部10は、誘電体の直下に配置された金属製の埋設物101上において埋設物検出装置1の持ち上げがあったと判断する。そして、制御部10は、ステップS17において、送信アンテナ11からのインパルス波(電磁波)の放射を停止させる。
【0114】
一方、-40より大きいと判定されると、制御部10は、誘電体の直下に配置された金属製の埋設物101上において埋設物検出装置1の持ち上げはないと判断し、ステップS16へ進み、インパルス波(電磁波)の放射を開始させる。
本実施形態の埋設物検出装置1および埋設物検出方法では、以上のように、埋設物検出装置1が探査面から持ち上げられた状態を正確に検出するために、制御部10が、受信波形に含まれるノイズの有無を判定し、ノイズが所定量以上含まれると判定した場合には、このデータを持ち上げ判定の処理から除外する。
【0115】
これにより、Wi-fi(登録商標)等の外来ノイズを含む受信波形に基づく持ち上げ判定処理が実施された結果、持ち上げられていないにもかかわらず持ち上げられたと誤判定してしまうことを抑制することができる。
また、本実施形態の埋設物検出装置1および埋設物検出方法では、以上のように、埋設物検出装置1が探査面から持ち上げられた状態を正確に検出するために、制御部10が、持ち上げ検知の難易度が高くなる状態(板金上、あるいは誘電体直下に配置された金属上)を検出し、それぞれの状態において適切に持ち上げ判定を実施できるように制御を行う。
【0116】
これにより、例えば、板金上において持ち上げが行われた場合でも、適切な判定処理を実施することで、持ち上げ判定処理を正確に実施することができる。
また、例えば、誘電体直下に配置された金属製の埋設物101上において持ち上げが行われた場合についても同様に、適切な判定処理を実施することで、持ち上げ判定処理を正確に実施することができる。
【0117】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、ノイズ判定処理において、1ラインデータの受信波形の振幅最大値の中点となるサンプリングのステップ位置の前後30ステップの範囲内のデータを微分した計算結果を示すグラフにおいて、プラスマイナスの変化点が10個以上ある場合に、波形にノイズが含まれると判定する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ノイズ判定に用いられるプラスマイナスの変化点の個数に関する閾値は、10個に限定されるものではなく、9個以下でもよいし、11個以上であってもよい。
【0118】
(B)
上記実施形態では、受信波形にノイズが含まれるか否かを判定するために、制御部10が、取得した振幅最大値のステップ位置の中点から±30ステップの範囲内のデータを微分した計算結果を用いて判定を行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、取得した振幅最大値のステップ位置の中点からの前後のステップ数は、±30ステップに限らず、より広い範囲であってもよいし、より狭い範囲であってもよい。
【0119】
(C)
上記実施形態では、板金上あるいは誘電体上における走査であるか否かの判定に用いられる振幅最大値の差に関する第1閾値として、3500が用いられた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、板金上あるいは誘電体上における走査であるか否かの判定に用いられる振幅最大値の差に関する第1閾値として他の数値が用いられてもよい。
【0120】
(D)
上記実施形態では、第1データの受信波形の振幅最大値と、第1データの受信波形における振幅最大値をサンプリングしたステップ位置における第2データの受信波形の振幅値とを比較して、板金上における持ち上げ判定処理用の所定値として-200が用いられた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0121】
例えば、板金上における持ち上げ判定に用いられる所定値は、他の値であってもよい。
同様に、第1データの受信波形の振幅最大値と、第1データの受信波形における振幅最大値をサンプリングしたステップ位置における第2データの受信波形の振幅値とを比較して、誘電体直下に配置された金属上における持ち上げ判定処理用の所定値として35が用いられた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、誘電体直下に配置された金属上における持ち上げ判定に用いられる所定値は、他の値であってもよい。
【0122】
(E)
上記実施形態では、送信アンテナ11から放射される電磁波として、インパルス波を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、送信アンテナからサイン波等の他の形態の電磁波を放射する構成であってもよい。
【0123】
(F)
上記実施形態では、本体部2に4つの車輪4が取り付けられた埋設物検出装置1を用いて、コンクリート100内の埋設物101を検出する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本体部に取り付けられる車輪は、4つに限らず、1つ、2つ、3つあるいは5つ以上であってもよい。
【0124】
(G)
上記実施形態では、埋設物検出装置1によって検出される埋設物101として、コンクリート100内の鉄筋を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、他の材料中の異物を検出する用途に使用されてもよい。
【0125】
(H)
上記実施形態では、本発明を、埋設物検出装置1および埋設物検出方法として実現した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、上述した埋設物検出方法における各ステップをコンピュータに実行させる埋設物検出プログラムとして、本発明を実現してもよい。
【0126】
この埋設物検出プログラムは、記憶部に保存されており、CPUが記憶部に保存されたプログラムを読み込むことで、ハードウェアに各ステップを実行させる。
あるいは、この埋設物検出プログラムを格納した記録媒体として、本発明を実現してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の埋設物検出装置は、例えば、外来ノイズの影響を抑制し、または埋設物の検出状況に関わらず、装置の持ち上げを正確に検出することができるという効果を奏することから、各種埋設物の検出を行う装置に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0128】
1 埋設物検出装置
2 本体部
3 把手
4 車輪
5 インパルス制御モジュール
6 メイン制御モジュール
7 エンコーダ(回転検出部)
8 表示部
10 制御部
11 送信アンテナ(放射部)
12 受信アンテナ(受信部)
13 インパルス生成回路
14 ディレイIC(可変遅延部)
15 サンプリングパルス生成回路
16 高速サンプル・ホールド回路
17 A/Dコンバータ
18 記憶部
21 受信部
22 RFデータ管理部
24 埋設物判定部
25 判定結果登録部
26 表示制御部
100 コンクリート
100a 表面
101a~101d 埋設物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20