(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】バケット昇降機の監視装置
(51)【国際特許分類】
B65G 45/12 20060101AFI20230905BHJP
B65G 17/30 20060101ALN20230905BHJP
【FI】
B65G45/12 B
B65G17/30 A
(21)【出願番号】P 2019133824
(22)【出願日】2019-07-19
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮野 崇
(72)【発明者】
【氏名】川口 直樹
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3125546(JP,U)
【文献】特開昭51-083385(JP,A)
【文献】特開平10-283473(JP,A)
【文献】特開2007-025950(JP,A)
【文献】特開2012-056712(JP,A)
【文献】特開2017-226496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 45/12
B65G 17/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端ベルトに複数のバケットを備えたバケット昇降機の監視装置であって、
前記バケットの位置を検知するトリガ検知センサと、
前記バケットの撮影を行う撮影カメラと、
前記トリガ検知センサと前記撮影カメラとをそれぞれ制御可能な撮影制御手段と、を少なくとも備え、
前記撮影制御手段は、
前記トリガ検知センサによる検知信号に基づいて、前記撮影カメラによって前記バケットを撮影させる撮影指示部と、
前記撮影カメラが撮影した前記バケットの撮影画像に基づいて、該バケットにおける異常の有無を判定可能な状態判定部と、
前記トリガ検知センサによる検知信号に基づいて、各バケットに対して固有の識別情報を付与する識別情報設定部と、を有し、
前記状態判定部は、前記バケットの撮影画像から算出される該バケットの面積及び/又は該バケットの上端部の直線度合いを所定の閾値と比較することによって該バケットの異常状態を判定可能であ
り、該状態判定部による判定結果に対して前記識別情報を紐付ける
ことを特徴とするバケット昇降機の監視装置。
【請求項2】
さらに、前記撮影カメラによる前記バケットの撮影を可能にする透明監視窓と、該透明監視窓を清掃可能な窓清掃装置と、を備え、
前記撮影制御手段は、
前記窓清掃装置によって前記透明監視窓を清掃させる窓清掃指示部と、
前記トリガ検知センサによる検知信号の検知時間間隔を監視する検知間隔監視部と、を有し、
前記検知間隔監視部は、前記検知時間間隔を所定の時間閾値と比較した結果に基づいて、前記窓清掃装置によって前記透明監視窓を清掃させる
請求項1に記載のバケット昇降機の監視装置。
【請求項3】
前記撮影制御手段は、
前記トリガ検知センサによる検知信号の検知時間間隔を監視する検知間隔監視部を有し、
前記検知間隔監視部は、前記検知時間間隔を所定の時間閾値と比較し、特定の時間間隔で前記検知時間間隔が該所定の時間閾値を超えた場合に、前記バケットが脱落していると判断する
請求項1又は2に記載のバケット昇降機の監視装置。
【請求項4】
前記状態判定部は、
前記バケットの撮影画像から算出される該バケットの面積と所定の面積閾値との対比結果及び該バケットの上端部の直線度合いと所定の直線度合い閾値との対比結果とによって、該バケットの異常状態の種類を判定可能である
請求項1~3のいずれかに記載のバケット昇降機の監視装置。
【請求項5】
前記トリガ検知センサと、前記撮影カメラは、監視ユニットボックスに収容されるとともに、バケット昇降機の復路側の中間棹に一体的に設けられる
請求項1~4のいずれかに記載のバケット昇降機の監視装置。
【請求項6】
前記バケットの撮影画像は前記無端ベルトの撮影画像を含み、
前記状態判定部は、前記無端ベルトの撮影画像における色の濃度に基づいて該無端ベルトの劣化状態を判定可能である
請求項1~5のいずれかに記載のバケット昇降機の監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バケット昇降機における無端ベルトの劣化や、バケットの糠汚れ、摩耗や欠けなどの異常を検出することが可能な、バケット昇降機の監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、共同乾燥調製施設や精米工場などで、穀物を垂直方向へと搬送するバケット昇降機が知られており、大量の穀物を効率的に搬送することが可能となっている。ところで、このようなバケット昇降機においては、無端ベルト及びバケットは消耗部品であり、使用によって無端ベルトが劣化したり、バケットに摩耗や欠けなどが発生するため、例えば、特許文献1に記載の発明のように、バケット昇降機に点検窓を設けて目視点検を可能にしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来型の点検方法では、作業者がバケット昇降機の運転を停止するとともに、無端ベルトを手で動かしながら、無端ベルト及び多数のバケットの状態を一つ一つ目視確認しなければならず、時間と手間のかかる点検作業となっていた。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、無端ベルトの劣化や、バケットの糠汚れ、摩耗や欠けなどの状態を、撮影画像に基づく処理によって判定可能とする、バケット昇降機の監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1に係る発明は、無端ベルトに複数のバケットを備えたバケット昇降機の監視装置であって、前記バケットの位置を検知するトリガ検知センサと、前記バケットの撮影を行う撮影カメラと、前記トリガ検知センサと前記撮影カメラとをそれぞれ制御可能な撮影制御手段と、を少なくとも備え、前記撮影制御手段は、前記トリガ検知センサによる検知信号に基づいて、前記撮影カメラによって前記バケットを撮影させる撮影指示部と、前記撮影カメラが撮影した前記バケットの撮影画像に基づいて、該バケットにおける異常の有無を判定可能な状態判定部と、を有し、前記状態判定部は、前記バケットの撮影画像から算出される該バケットの面積及び/又は該バケットの上端部の直線度合いを所定の閾値と比較することによって該バケットの異常状態を判定可能であることを特徴とするバケット昇降機の監視装置である。
【0007】
本願請求項2に係る発明は、前記撮影制御手段は、前記トリガ検知センサによる検知信号に基づいて、各バケットに対して固有の識別情報を付与する識別情報設定部を有し、前記状態判定部による判定結果に対して前記識別情報を紐付ける請求項1に記載のバケット昇降機の監視装置である。
【0008】
本願請求項3に係る発明は、さらに、前記撮影カメラによる前記バケットの撮影を可能にする透明監視窓と、該透明監視窓を清掃可能な窓清掃装置と、を備え、前記撮影制御手段は、前記窓清掃装置によって前記透明監視窓を清掃させる窓清掃指示部と、前記トリガ検知センサによる検知信号の検知時間間隔を監視する検知間隔監視部と、を有し、前記検知間隔監視部は、前記検知時間間隔を所定の時間閾値と比較した結果に基づいて、前記窓清掃装置によって前記透明監視窓を清掃させる請求項1又は2に記載のバケット昇降機の監視装置である。
【0009】
本願請求項4に係る発明は、前記撮影制御手段は、前記トリガ検知センサによる検知信号の検知時間間隔を監視する検知間隔監視部を有し、前記検知間隔監視部は、前記検知時間間隔を所定の時間閾値と比較し、特定の時間間隔で前記検知時間間隔が該所定の時間閾値を超えた場合に、前記バケットが脱落していると判断する請求項1~3のいずれかに記載のバケット昇降機の監視装置である。
【0010】
本願請求項5に係る発明は、前記状態判定部は、前記バケットの撮影画像から算出される該バケットの面積と所定の面積閾値との対比結果及び該バケットの上端部の直線度合いと所定の直線度合い閾値との対比結果とによって、該バケットの異常状態の種類を判定可能である請求項1~4のいずれかに記載のバケット昇降機の監視装置である。
【0011】
本願請求項6に係る発明は、前記トリガ検知センサと、前記撮影カメラは、監視ユニットボックスに収容されるとともに、バケット昇降機30の復路側の中間棹に一体的に設けられる請求項1~5のいずれかに記載のバケット昇降機の監視装置である。
【0012】
本願請求項7に係る発明は、前記バケットの撮影画像は前記無端ベルトの撮影画像を含み、前記状態判定部は、前記無端ベルトの撮影画像における色の濃度に基づいて該無端ベルトの劣化状態を判定可能である請求項1~6のいずれかに記載のバケット昇降機の監視装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、トリガ検知センサ12によるバケット33の位置検知に基づいて、撮影カメラ11により、上記バケット33の撮影画像が取得されるように構成されている。そして、撮影制御手段110の状態判定部によって上記撮影画像から算出されるバケット33の面積及び/又はバケット33の上端部332の直線度合いを所定の閾値と比較することによって、バケット33の異常状態(糠汚れや、摩耗、欠けなど)が判定可能となっている。このような構成により、常にバケット33の異常状態等が監視されるので、適切なタイミングで異常状態にあるバケット33を交換することが可能となる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、さらに、撮影制御手段110は、トリガ検知センサ12による検知信号に基づいて、各バケット33に対して固有の識別情報を付与するように構成され、判定結果に対して当該識別情報を紐付けるように構成されている。このような構成により、交換や修理、清掃が必要なバケット33の位置を即座に特定することができ、交換作業などの作業性を向上させることが可能となる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、さらに、撮影カメラ11によるバケット33の撮影を可能にする透明監視窓22と、当該透明監視窓22を清掃可能な窓清掃装置24とを備えており、例えば、穀物の殻や浮遊糠、埃などによって透明監視窓22が汚れても、窓清掃装置24によって透明監視窓22の透明度が維持され、トリガ検知センサ12による誤検知を防ぐことが可能となる。また、鮮明な撮影画像が得られるため、バケット33の異常状態を正確に判定することが可能となる。
【0016】
加えて、撮影制御手段110は、トリガ検知センサ12による検知信号の検知時間間隔と、所定の時間閾値とを比較し、その結果に基づいて、窓清掃装置24によって透明監視窓22を清掃させることが可能となっている。
【0017】
すなわち、本来、一定間隔で配置されるバケット33は、一定の所定時間間隔でトリガ検知センサ12により検知されるはずであるが、上記したように、穀物の殻や糠、ホコリなどによって透明監視窓22が汚れていた場合は、トリガ検知センサ12がバケット33を検知できない場合がある。しかし、本構成によれば、窓清掃装置24による透明監視窓22の清掃を行わせ、継続してトリガ検知センサ12及び撮影カメラ11を正常に機能させることが可能となる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、さらに、撮影制御手段110は、トリガ検知センサ12による検知信号の検知時間間隔を所定の時間閾値と比較した結果に基づいて、バケット33が脱落したことを発見できるように構成されている。
【0019】
すなわち、本来、一定間隔で配置されるバケット33は、一定の所定時間間隔でトリガ検知センサ12により検知されるはずであるが、例えば、何らかの原因でバケット33が無端ベルト34から外れて脱落したような場合は、トリガ検知センサ12がバケット33を検知することができない。このような検知結果に基づいて、バケット33が脱落したことを判断できるので、直ちにバケット33の取付け補修作業を実施することが可能となる。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、バケット33の撮影画像から、バケット33の各面積(S1、S2、S3)及びバケット33の上端部332の各直線度合い(右側縦直線、左側縦直線、奥側横直線、前側横直線)を算出し、各算出結果を所定の各面積閾値及び各直線度合い閾値と対比した結果に基づいて、バケット33における異常状態の種類を判定することが可能となる。
【0021】
請求項6に係る発明によれば、少なくともトリガ検知センサ12と、撮影カメラ11とを収容した監視ユニットボックス10を、バケット昇降機30の復路側の中間棹31に一体的に設けることにより、汎用のバケット昇降機30に対して容易に監視装置を設置することが可能となる。さらに、上記監視ユニットボックス10をバケット昇降機30の復路側に設けることにより、搬送対象物を搬送中のバケット昇降機30であっても、搬送物に邪魔されることなく、バケット33の検知や撮影を行うことが可能となる。
【0022】
請求項7に係る発明によれば、さらに、バケット33の撮影画像に含まれる無端ベルト34の色の濃度に基づいて、無端ベルト34の劣化状態を判定することが可能となり、例えば、黒色の無端ベルト34が劣化して内部の白色の繊維材が表面に現れることで、無端ベルト34の色の濃度が変化するので、色の濃度の変化態様に基づいて無端ベルト34の劣化状態を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態における、バケット昇降機の監視装置の設置態様を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態における、バケット昇降機の監視装置の設置態様を示す側面の模式透視図(a)と、ブロック図(b)である。
【
図3】本発明の一実施形態における、バケットの状態監視の流れを示したフロー図である。
【
図4】本発明の一実施形態における、トリガ検知センサの異常判断処理の流れを示したフロー図である。
【
図5】本発明の一実施形態における、各バケットの位置を特定する方法を説明する模式透視図(a)と、トリガ検知センサの検出態様等を示したタイミングチャート(b)である。
【
図6】本発明の一実施形態における、バケットの直線度合いの算出箇所及び面積の算出箇所等を説明するためのバケット及び無端ベルトの撮影画像の一例である。
【
図7】本発明の一実施形態における、バケットの糠汚れ、摩耗や欠けなどの状態を判定する方法を説明するためのバケット及び無端ベルトの撮影画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のバケット昇降機30の監視装置における一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1には、本発明の一実施形態における、バケット昇降機30の監視装置の斜視図が図示され、
図2(a)には、バケット昇降機30の監視装置側面の模式透視図が図示されている。各図に示されるように、本実施形態では公知のバケット昇降機30の中間棹31に対し、監視ユニットボックス10が図示される態様で設置されている。
【0026】
(監視ユニットボックス10の構成)
より詳細に説明すると、本実施形態における監視ユニットボックス10は、複数のバケット33が収容される中間棹31と一体的に構成されており、さらに、監視ユニットボックス10の内部には、撮影カメラ11と、トリガ検知センサ12と、カメラ照明13とが、いずれも上下方向に角度調整可能に取り付けられている。
【0027】
そして、撮影カメラ11は、アクリル樹脂製(ガラス製でもよい。)の透明監視窓22に向けられ、上下方向に移動する各バケット33を正面から撮影することが可能となっている。また同様に、トリガ検知センサ12も上記透明監視窓22に向けられ、所定位置にあるバケット33を検知することが可能となっている。
【0028】
すなわち、上記トリガ検知センサ12が、所定位置にあるバケット33を検知したことを契機として、撮影カメラ11によるバケット33の撮影が行われるように構成されている。
【0029】
本実施形態では、トリガ検知センサ12としてカラーセンサを使用しており、撮影位置に近づいたバケット33の色を検知したタイミングで、撮影制御手段110に対して検知信号を出力している。また、本実施形態の監視ユニットボックス10は、搬送対象物(例えば米などの穀物類)が存在しない、バケット昇降機30の復路でバケット33が撮影されるように構成されている。したがって、バケット昇降機30が稼働して搬送対象物を搬送中であったとしても、搬送対象物に邪魔されることなく、バケット33の検知及び撮影が可能となっている。
【0030】
なお、本実施形態では、上記したようにトリガ検知センサ12としてカラーセンサを使用しているが、必ずしもこのようなセンサに限定されるものではなく、例えば、近接センサやフォトセンサ、光電センサ、レーザセンサなど、公知の物体を検知するセンサを適宜採用することが可能である。
【0031】
また、本実施形態の監視ユニットボックス10は、
図2(a)に図示されるように、透明監視窓22の上方に窓清掃装置24が設けられており、当該窓清掃装置24としてエアレーション装置を使用している。このような装置を設けることにより、透明監視窓22に付着した浮遊糠や埃を除去することが可能となっている。
【0032】
さらに、監視ユニットボックス10の下方には排出口25が設けられており、窓清掃装置24によって除去した上記浮遊糠や埃を外部に排出できるように構成されている。なお、上記窓清掃装置24は必ずしもエアレーション装置に限定されるものではなく、公知のワイパー装置等、適宜、他の代替清掃装置を使用することも可能である。
【0033】
上記のような構成により、例えば、バケット昇降機30で搬送する穀物の浮遊糠や埃等で透明監視窓22が汚れて、撮影カメラ11によるバケット33の撮影や、トリガ検知センサ12によるバケット33の検知が困難となった場合には、上記窓清掃装置24によって透明監視窓22を清掃させることによって、バケット33の状態監視が可能となっている。
【0034】
さらに、監視ユニットボックス10の上面には、
図1に示されるように、アクリル樹脂製(ガラス製でもよい。)の点検窓23が形成されており、当該監視ユニットボックス10内を外部から目視点検することが可能となっている。
【0035】
(制御ブロック構成)
続いて、
図2(b)には、本実施形態におけるバケット昇降機30の監視装置の制御ブロック図が図示されている。本実施形態では、撮影カメラ11及びトリガ検知センサ12は撮影制御手段110と相互通信可能に接続され、さらに当該撮影制御手段110は、撮影画像を含む種々のデータを送受信可能なデータサーバ120と、装置全体の制御を司る状態監視制御PC100と、窓清掃装置24の動作を制御する清掃装置制御部240にそれぞれ接続されている。
【0036】
なお、必ずしも上記したような制御ブロック構成に限定されるものではなく、例えば、データサーバ120を状態監視制御PC100に接続してもよいし、清掃装置制御部240を状態監視制御PC100に接続して制御することも可能である。
【0037】
続いて、
図2(a)の模式透視図及び
図6のバケット33の撮影画像の一例に基づいて、本実施形態におけるバケット昇降機30について説明する。バケット昇降機30の内部では、
図2(a)に示されるように、無端ベルト34に着脱可能に固定された複数のバケット33が、穀物等の搬送対象物を下から上へ搬送するように構成されている。そして、前述した監視ユニットボックス10は、バケット昇降機30の復路における中間棹31に、一体的に設けられている。
【0038】
また、
図6には、バケット33の撮影画像の一例が示されているが、本実施形態のバケット33は、無端ベルト34に固定部材333によって着脱可能に取付けられている。本実施形態のバケット33は金属素材によって成形され、外側面331は青色に着色されている。さらに、バケット33の四方には、金属色を有するフラットな上端面332が形成され、その中に、搬送対象物を収容する収容スペース334が形成されて、黒色に着色されている。
【0039】
なお、本実施形態では、上記したように金属素材から成るバケット33を使用したが、必ずしもこのような形態に限定されるものではなく、例えば、樹脂成形によって製造されたバケット33を使用すること可能である。
【0040】
(バケットの状態監視フロー)
続いて、
図3及び
図4に図示されたフローに基づいて、本実施形態におけるバケット昇降機30の監視装置の基本的な状態監視フローについて以下に説明する。
【0041】
バケット昇降機30の監視装置によるバケットの状態監視が開始されると、トリガ検知センサ12によるバケット33の位置検知(S101)が行われる。撮影位置近傍の所定位置において、トリガ検知センサ12によりバケット33が検知されると、トリガ検知センサ12から検知信号が撮影制御手段110に出力され、当該撮影制御手段110内の撮影指示部は撮影カメラ11に対して撮影指示信号を送信し、撮影カメラ11によるバケット33の撮影(S102)が行われる。
【0042】
なお、本実施形態では前述したように、トリガ検知センサ12としてカラーセンサを使用しており、バケット33の青色に着色された外側面331を検知したことによって、検知信号が出力されるように構成されている。
【0043】
撮影されたバケット33の撮影画像は、データサーバ120へ送信されて保存されると同時に、バケット33に糠汚れ、摩耗や欠けがないか状態判断処理(S103)が実行される。当該状態判断処理では、撮影された画像から、
図6に示されるように、正面の青色に着色された外側面331の面積S1と、黒色に着色された収容スペース334の面積S2、金属色を有する上端面332の面積S3が算出される。
【0044】
加えて、
図6に示されるように、バケット33の左側縦直線、右側縦直線、奥側横直線、前側横直線の、それぞれの直線度合いが算出される。
【0045】
上記したようにしてバケット33の撮影画像から算出された各面積及び各直線度合いは、事前に設定された各面積閾値、各直線度合い閾値との対比が行われ、糠汚れ、摩耗や欠けなどに起因する異常状態の有無が判定(S104)される。ここで、バケット33の交換などの対応が必要な異常状態にあると判断されると、図示しない警報報知手段において警報が報知(S105)される。以上が、基本的な状態監視のフローである。
【0046】
なお、本実施形態においては、上記状態判断処理を撮影制御手段110における状態判定部で実行しているが、必ずしもこのような形態に限定されるものではなく、例えば、状態監視制御PC100において処理を実行することも可能である。
【0047】
(バケットの脱落判定)
続いて、バケット33の脱落判定処理について説明する。本来、複数のバケット33が一定の間隔で設置され、所定のスピードで移動する場合は、当然ながら略一定の時間間隔でトリガ検知センサ12から検知信号が出力される。
【0048】
そこで、本実施形態では、トリガ検知センサ12から出力される検知信号の検知時間間隔を監視し、当該検知時間間隔が所定の時間閾値を超過した場合に、単に透明監視窓22が汚れていてバケット33を検知できなかったのか、それとも、バケット33が無端ベルト34から脱落した状態にあるのかが判定できるように構成されている。
【0049】
すなわち、
図3のフロー図に示されるように、トリガ検知センサ12の検知信号に基づく状態監視処理(S1011)が実行されており、検知信号の検知時間間隔に異常が認められると(S1012)、撮影制御手段110の窓清掃指示部から清掃装置制御部240に対して清掃指示の制御信号が送信され、当該清掃装置制御部240によって窓清掃装置24を動作(S1013)させて透明監視窓22を清掃するように構成している。
【0050】
そして、検知信号の検知時間間隔の異常が改善したか否かが判定(S1014)され、検知時間間隔が改善されれば、当該処理が終了する。一方、窓清掃装置24による清掃後も上記検知時間間隔が改善されなければ、バケット33が無端ベルト34から脱落した状態にある可能性が高いため、図示しない警報手段において警報が報知(S1015)されるように構成されている。
【0051】
図4には上記した検知時間間隔に対する判定処理態様がより詳細に図示されている。すなわち、本実施形態では、予め、時間閾値としてα1及びα2が設定されており、検知信号の検知時間間隔Δtが、α1≦Δtx≦α2の時間の範囲内であれば、バケット33の脱落等の可能性は無く、正常であると判断される。
【0052】
一方、Δtx<α1となった場合は、トリガ検知センサ12の検知感度が異常に高くなっているか、又は、透明監視窓22への異物の付着等によって誤検知が発生している可能性がある。したがって、このような場合は、撮影制御手段110から清掃装置制御部240に対し、窓清掃装置24による透明監視窓22の清掃を指示するように構成されている。
【0053】
そして、透明監視窓22の清掃後もα1≦Δtx≦α2の正常な時間間隔とならなければ、トリガ検知センサ12の検知感度が異常に高くなっている可能性が高いため、図示しない警報報知手段でセンサ感度調整警報を報知するように構成している。
【0054】
また、検知時間間隔がα2<Δtxとなった場合は、透明監視窓22への異物の付着等によって、正しくバケット33を検知できないか、或いは、バケット33が脱落してしまっている可能性があるため、撮影制御手段110から清掃装置制御部240に対し、窓清掃装置24による透明監視窓22の清掃を指示するように構成されている。
【0055】
そして、透明監視窓22の清掃後もα1≦Δtx≦α2の正常な時間間隔とならなければ、バケット33が脱落している可能性が高いので、図示しない警報報知手段で部材異常警報を報知するように構成している。
【0056】
なお、本実施形態においては、撮影制御手段110に設置された検知間隔監視部で、上記したようなバケット33の脱落判定処理を実行したが、必ずしもこのような形態に限定されるものではなく、例えば、検知間隔監視部を状態監視制御PC100に設置して脱落判定処理を実行することも可能である。
【0057】
(バケットの状態判断処理)
続いて、
図7に示されたバケット33の撮影画像に基づいて、バケット33に糠汚れ、摩耗や欠けがないかを判断する状態判断処理(S103)の方法について説明する。なお、
図7の撮影画像に示されるように、バケット33の右側上端部に欠けがあり、手前側に上端部から外側面331の一部にかけて糠汚れがある。
【0058】
前述したように、上記した状態判断処理では、撮影画像から算出される、正面の青色に着色された外側面331の面積S1と、黒色に着色された収容スペース334の面積S2、金属色を有する上端面332の面積S3のそれぞれに対して、予め設定された所定の面積閾値ST1、ST2、ST3との対比が行われるように構成されている。
【0059】
図7の撮影画像を例にすると、面積S2や面積S3の値が小さくなることによって、バケット33の上端面332に糠汚れが付着していることを判断することが可能となり、さらに、面積S1の値が小さくなることによって、バケット33の外側面331に糠汚れが付着しているか又はバケット33の外側面331が摩耗していることを判断することが可能となる。
【0060】
同様に、上記した状態判断処理では、撮影画像から算出される、左側縦直線、右側縦直線、奥側横直線、前側横直線の直線度合いに対して、予め設定された所定の直線度合い閾値との対比が行われるように構成されている。
【0061】
図7の撮影画像を例にすると、バケット33の右側の上端面332に欠けがあることから、撮影画像から算出された右側縦直線の直前度合いの値は、予め設定されている右側縦直線の直線度合い閾値よりも小さくなり、これによって欠けが生じていることを判断することが可能となる。
【0062】
以上のように、本実施形態では、各面積や各直線度合いの算出結果から、総合的にバケット33の状態を判断し、バケット33に生じている異常の種類を特定することが可能となっている。
【0063】
例えば、各面積や各直線度合いの算出の結果、面積S3が大きくなり、面積S1が小さくなる場合であって、さらに、前側横直線の直線度合いが高い場合は、糠汚れによる異常ではなく、バケット33の外側面331が摩耗して面積S1が小さくなり、同時に収容スペース334の面積S2が大きく撮影されたことによることが推測できる。つまり、外側面331が摩耗してきていることをより具体的に判断することが可能となる。
【0064】
加えて、バケット33の撮影画像において、色の濃淡を検出する機能を追加してもよく、このような機能により、バケット33に対するひび割れの発生状態についても判定することが可能となる。
【0065】
以上、説明したように、本実施形態では、所定の面積閾値や所定の直線度合い閾値が、撮影制御手段110に予め設定されており、これら閾値との対比結果を総合的に判定して、バケット33における異常の種類を特定し、図示しない警報報知手段において警報を報知するように構成されている。
【0066】
(異常判定されたバケットの特定処理)
以上、バケット33の状態判断や、脱落等による異常判定の方法について説明したが、当然、異常判定の結果に応じて、バケット33の交換や清掃、修理などの対処が必要となり、効率的にこれらの対処作業を行うためには、複数あるバケット33の内、対処の必要なバケット33の位置を特定することが必要となる。
【0067】
そこで、本実施形態では、複数あるバケット33のうち、任意の一のバケット33の一部に、
図6、
図7に示されるような赤色の起点マーキング35を施し、当該起点マーキング35のみを検知する図示しない特定トリガ検知センサ12Aを追加的に設置している。このような構成とすることで、複数あるバケット33の回転サイクルの起点を特定して設定することが可能となる。
【0068】
また、
図5(b)には、特定トリガ検知センサ12A及びトリガ検知センサ12のタイミングチャートに加えて、撮影画像判定結果のタイミングチャートが図示されている。本実施形態では、前述したように、上記特定トリガ検知センサ12Aの検知信号に基づいて、複数のバケット33の回転周期における起点が特定されるため、トリガ検知センサ12からの検知信号に対して、それぞれ固有の識別情報を付与することが可能となる。例えば、本実施形態の場合、各バケット33に対してX0~X19までの識別情報が付与され、併せて、各バケット33の撮影画像や、各面積、各直線度合いの算出結果、判定結果に対しても識別情報が紐づけされる。
【0069】
上記のような処理が撮影制御手段110の識別情報設定部において実行されることにより、撮影画像の判定結果として異常判定が行われると、図示されるように、対象となるバケット33が「X0」であることを即座に特定することが可能となる。
【0070】
また、本実施形態では、前述したようにトリガ検知センサ12による検知時間間隔(t1~t20)も監視しているので、検知時間間隔に異常が発生した場合(図示される例ではt2)においても、対象となるバケット33が「X2」であることを即座に特定することができるため、例えば、バケット33の脱落箇所を直ちに特定して、必要な処置を施すことが可能となる。
【0071】
[その他の実施形態]
以上、本発明のバケット昇降機30の監視装置における実施形態について説明したが、前述の実施形態に必ずしも限定されるものではなく、例えば以下のような種々の変形が可能である。
【0072】
例えば、前述の実施形態では、各バケット33への識別情報付与に際して、起点マーキング35のみを検知する特定トリガ検知センサ12Aを追加的に設置したが、必ずしもこのような形態に限られるものではない。
【0073】
すなわち、複数色の色を識別して検知することが可能なトリガ検知センサ12を採用することで、新たに別個の特定トリガ検知センサ12Aを設置する手間を削減することが可能である。
【0074】
さらに、起点マーキング35は必ずしもバケット33への設置に限られるものではなく、その近傍の無端ベルト34に設けることも可能である。また、上記のような着色されたマーキングではなく、タグや金属片などをバケット33又はその近傍の無端ベルト34に設けて、それらを検知可能なセンサを採用することも可能である。
【0075】
加えて、撮影カメラ11に、トリガ検知センサ12、12Aの機能を追加してもよく、これにより、撮影カメラ11によって各バケット33の検知と撮影を行わせるようにして、設備コストを低減することが可能となる。
【0076】
また、前述の実施形態では、
図2のブロック図に基づいて各処理構成を説明したが、あくまで一実施形態に過ぎず、各デバイスの接続や処理制御をどのようなデバイスで実行するようにするのかは、適宜設定することが可能である。
【0077】
また、前述の実施形態では、一のバケット昇降機30に対する監視装置の構成について説明したが、必ずしもこのような場合に限定されるものではなく、複数台のバケット昇降機30を一のデータサーバ120や一の状態監視制御PC100によって制御、監視するように構成することも可能である。さらに、バケット昇降機30を運転、コントロールするラインPCに、バケット昇降機30の監視装置の機能を付加するようにして、本発明のバケット昇降機30の監視装置をスリム化することも当然可能である。
【0078】
また、前述の実施形態では、バケット33の撮影画像から、前述した各面積及び各直線度合いを算出していたが、各面積及び各直線度合いのうち、いずれか一方を算出するようにすることも可能である。これにより、バケット33における状態判定処理を簡素化することが可能である。
【0079】
また、前述した実施形態では、バケット33の外側面331を青色、バケット33の収容スペース334を黒色、バケット33の上端面332を金属色としたが、必ずしもこのような色に限定されるものではなく、互いに異なる色であれば、適宜変更が可能である。
【0080】
また、前述の実施形態では、監視ユニットボックス10を、バケット昇降機30の復路側の中間棹31に一体的に設けたが、バケット昇降機30の往路側への設置を否定するものではなく、往路側へ監視ユニットボックス10を設置した場合であっても、搬送対象物を搬送していなければ、搬送物に邪魔されることなくバケット33の検知や撮影を行うことが可能である。
【0081】
また、前述の実施形態では、バケット33の糠汚れ、摩耗や欠けなどの異常状態をバケット33の撮影画像から判定する構成について説明したが、さらに、
図6、7の撮影画像に含まれる無端ベルト34についても、劣化状態を当該撮影画像から判定するように構成することも可能である。
【0082】
例えば、黒色の無端ベルト34が徐々に劣化することによって白色の繊維材が表面に現れてくると、黒色の濃度が低下してくるので、無端ベルト34の交換の目安となる濃度閾値を撮影制御手段110に設定し、撮影画像から算出された無端ベルト34の黒色の濃度が上記濃度閾値を超えた場合に、警報報知手段によって交換を促す報知を行うようにすることが可能である。なお、上記のようにして無端ベルト34の一部に劣化した箇所があることが判定された場合には、前述したようにバケット33の位置が識別情報によって特定可能となっているので、当該識別情報に紐付けて無端ベルト34の劣化した箇所を特定することが可能である。このような構成により、例えば、劣化した箇所に対して速やかに応急処置を施すことが可能である。
【0083】
また、前述したように、監視ユニットボックス10の内部には、アクリル樹脂製(ガラス製でもよい。)の透明監視窓22が設けられているが、バケット昇降機30の稼働中は、搬送物の一部が常に透明監視窓22の表面に接触して表面を傷つけてしまう。このような傷はトリガ検知センサ12の検知能力を低下させてしまい、さらに撮影画像を不鮮明なものにしてしまう虞がある。
【0084】
このような事態を未然に防ぐために、透明監視窓22の搬送通路側の表面に、図示しないシャッタ装置を設けることが可能であり、監視装置が機能し、トリガ検知センサ12によるバケット33の検知が行われている間のみ、シャッタ装置を開けるようにすることができる。
【0085】
また、本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。また、上記各実施形態に記載された具体的な数値範囲、デバイスの寸法形状・機能等は本発明の課題を解決する範囲において変更が可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 監視ユニットボックス
11 撮影カメラ
110 撮影制御手段
12 トリガ検知センサ
21 照明装置
22 透明監視窓
24 窓清掃装置
30 バケット昇降機
31 中間棹
33 バケット
34 無端ベルト