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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】車両の検査システム
(51)【国際特許分類】
   B62D 65/18 20060101AFI20230905BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
B62D65/18 D
G05B19/418 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019152562
(22)【出願日】2019-08-23
(65)【公開番号】P2021030860
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】神戸 重雄
(72)【発明者】
【氏名】丸地 里奈
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-199263(JP,A)
【文献】特許第3585212(JP,B2)
【文献】特開2002-236941(JP,A)
【文献】特開2007-179452(JP,A)
【文献】特開2005-301682(JP,A)
【文献】特開2009-098859(JP,A)
【文献】特開2005-301681(JP,A)
【文献】特開2000-141138(JP,A)
【文献】特開平11-044530(JP,A)
【文献】特許第5134536(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 65/18
G05B 19/418
B23Q 41/08
G05B 23/02
G06F 17/60
G06Q 50/04
G06K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外観建付け検査及び塗装検査の対象車両の車種及び車体番号を含む車両情報と、三次元CADデータに基づき作成された前記車種ごとの三次元モデルとを記憶したサーバーと、
前記サーバーと通信して取得した前記三次元モデルを表示するディスプレイ、及び、前記ディスプレイに対する入力操作を検出する入力部を有する検査用端末と、を備え、
前記三次元CADデータは、前記車種の形状データと三次元座標データと部品名称とを含み、
前記三次元モデルには、前記対象車両が完成車状態で目視可能な外装部品及び内装部品に対し、前記三次元座標データ及び前記部品名称が紐付けられ、
前記検査用端末は、前記サーバーから前記三次元モデルとともに前記車両情報を取得し、前記ディスプレイに複数の不具合種別を表示し、作業者の前記入力操作により指摘された前記対象車両の不具合箇所を前記三次元座標データ及び前記部品名称とともに記録するとともに、前記作業者の前記入力操作により選択された前記不具合種別を前記不具合箇所とともに記録するものであり、
前記不具合種別が二部品によって生じる不具合である場合、前記部品の数だけ前記不具合箇所として指摘される
ことを特徴とする、車両の検査システム。
【請求項2】
前記検査用端末は、前記作業者の前記入力操作に応じて、前記三次元モデルを回転させ、あるいは、前記三次元モデルを拡大縮小表示する
ことを特徴とする、請求項1記載の車両の検査システム
【請求項3】
前記検査用端末は、前記不具合箇所及び当該不具合箇所とともに記録した情報を不具合情報として前記車体番号と紐づけて前記サーバーに送信し、
前記サーバーは、前記検査用端末から受信した前記車体番号及び前記不具合情報を記録する
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の車両の検査システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の製造ラインの外観建付け検査及び塗装検査において主に利用される検査システム及び検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の製造ラインには様々な検査工程が設定されており、各検査工程において作業者(検査員)による検査が実施されている。一般的に、検査に必要な情報(検査項目,検査手順等)はサーバーに記憶されており、この情報は作業者の所持する端末機器にダウンロードされて検査に活用される。例えば特許文献1には、検査する車種の型式をオペレータ(検査員)に通知する機能を持った検査管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-301681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、製造ラインの検査工程のなかには、車載機器が正常に作動するか否かのように、OKかNGかを判断する検査工程以外に、外観建付けや塗装を検査する工程が存在する。この外観建付け検査及び塗装検査は、OKかNGかの判断ではなく、どの箇所にどういった不具合が存在するかを判断しなければならないため、検査の仕方が特殊である。そのため、これまでは、紙のチェックシートを使って不具合箇所と不具合内容とを指摘する検査方法が採用されてきた。
【0005】
しかしながら、チェックシートによる検査では、作業者が手書きで情報を入力する必要があり、さらにチェックシートの管理も煩雑であることから、作業者の負担が大きい。また、他の検査工程で使用している端末機器を利用できないため、端末機器のみですべての検査を完結できないという課題がある。さらには、不具合箇所の集計や分析といった、検査工程とは別の作業で外観建付け及び塗装検査の結果を活用することが難しいという課題もある。
【0006】
本件の車両の検査システム及び検査プログラムは、このような課題に鑑み案出されたもので、紙のチェックシートによる検査を廃止して作業者の負担を軽減することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)ここで開示する車両の検査システムは、外観建付け検査及び塗装検査の対象車両の車種及び車体番号を含む車両情報と、三次元CADデータに基づき作成された前記車種ごとの三次元モデルとを記憶したサーバーと、前記サーバーと通信して取得した前記三次元モデルを表示するディスプレイ、及び、前記ディスプレイに対する入力操作を検出する入力部を有する検査用端末と、を備える。前記三次元CADデータは、前記車種の形状データと三次元座標データと部品名称とを含む。前記三次元モデルには、前記対象車両が完成車状態で目視可能な外装部品及び内装部品に対し、前記三次元座標データ及び前記部品名称が紐付けられる。前記検査用端末は、前記サーバーから前記三次元モデルとともに前記車両情報を取得し、前記ディスプレイに複数の不具合種別を表示し、作業者の前記入力操作により指摘された前記対象車両の不具合箇所を前記三次元座標データ及び前記部品名称とともに記録するとともに、前記作業者の前記入力操作により選択された前記不具合種別を前記不具合箇所とともに記録するものであり、前記不具合種別が二部品によって生じる不具合である場合、前記部品の数だけ前記不具合箇所として指摘される
【0008】
(2)前記検査用端末は、前記作業者の前記入力操作に応じて、前記三次元モデルを回転させ、あるいは、前記三次元モデルを拡大縮小表示することが好ましい
【0009】
)前記検査用端末は、前記不具合箇所及び当該不具合箇所とともに記録した情報を不具合情報として前記車体番号と紐づけて前記サーバーに送信することが好ましい。この場合、前記サーバーは、前記検査用端末から受信した前記車体番号及び前記不具合情報を記録することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
開示した検査システム及び検査プログラムによれば、紙のチェックシートによる検査を廃止して作業者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る検査システムを示すブロック図である。
図2】検査用端末のディスプレイに表示される画面の一例を示す模式図である。
図3】実施形態に係る検査プログラムの工程(検査方法)を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、実施形態としての車両の検査システム及び検査プログラムについて説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0014】
[1.検査システム]
本実施形態の検査システムは、車両の製造ラインに適用され、外観建付け検査及び塗装検査を行うシステムである。図1に示すように、検査システムは、サーバー2と、サーバー2とネットワーク3を介して通信可能に設けられた検査用端末1とから構成される。検査用端末1は、複数の作業者(図示略)のそれぞれに付与されるものであり、例えばタブレット端末のように手で持った状態で操作する端末や、HMD(Head Mounted Display)のようなハンズフリーインターフェースである。図1には、いずれも同様に構成された複数の検査用端末1を例示する。
【0015】
検査用端末1には、制御装置10とディスプレイ18とタッチパネル19とが設けられる。制御装置10は、ディスプレイ18に表示される画像を制御するための電子制御装置(コンピューター)である。制御装置10は、図1に例示するように、プロセッサ11,メモリ12,記憶装置13,インターフェース装置14,通信装置15,記録媒体ドライブ16などのハードフェア資源を内蔵し、内部バス17を介して互いに通信可能に接続される。
【0016】
プロセッサ11は、制御ユニット(制御回路)や演算ユニット(演算回路),キャッシュメモリ(レジスタ群)などを内蔵する中央処理装置である。また、メモリ12は、プログラムや作業中のデータが格納される記憶装置であり、例えばROM,RAMがこれに含まれる。一方、記憶装置13は、メモリ12よりも長期的に保持されるデータやファームウェアが格納されるストレージであり、例えばフラッシュメモリや不揮発性メモリがこれに含まれる。
【0017】
インターフェース装置14は、制御装置10と外部との間の入出力(I/O)を司るものである。制御装置10には、ディスプレイ18及びタッチパネル19が接続される。これらの各種装置18,19との情報の授受がインターフェース装置14を介してなされる。通信装置15は、無線の送受信装置であり、サーバー2から情報を受信(取得)するとともに、サーバー2に対して情報を送信する。
【0018】
記録媒体ドライブ16は、光ディスクや半導体メモリなどの記録媒体9(リムーバブルメディア)に記録,保存された情報を読み取る読取装置である。制御装置10で実行される検査プログラム4は、例えばメモリ12内に記録,保存されてもよいし、記憶装置13の内部に記録,保存されてもよい。あるいは、記録媒体9上に検査プログラム4が記録,保存され、その記録媒体9に書き込まれている検査プログラム4が、記録媒体ドライブ16を介して制御装置10に読み込まれてもよい。
【0019】
サーバー2は、プロセッサ,メモリ,記憶装置,インターフェース装置(いずれも図示略)などを内蔵したコンピューターである。サーバー2には、データベース20が設けられる。データベース20は、検査の対象車両の車種と車体番号とを含む車両情報21、及び、対象車両の車種ごとに作成された3Dモデル22(三次元モデル)を記憶するものである。車体番号は対象車両ごとに付与される識別番号(固有の番号)である。
【0020】
3Dモデル22は、対象車両の車種の三次元CAD(Computer Aided Design)データに基づき作成される。このCADデータには、車種の形状データに加え、三次元(X,Y,Z)の座標データと部品名称とが含まれる。三次元座標データは、車両の一点(例えば左前輪の中央位置)を基準座標(0,0,0)としたときの座標値である。部品名称は、車両を構成する部品の名称である。
【0021】
3Dモデル22には、対象車両が完成車の状態で目視可能な外装部品(エクステリア)及び内装部品(インテリア)に対し、三次元座標データ及び部品名称が紐付けられる。本検査は、外観建付け検査及び塗装検査であることから、目で見える部品に対して行われる。そのため、少なくとも完成車状態で目視可能な部分の部品名称と三次元座標データとが紐付けられていればよい。なお、3Dモデル22は、本検査システムを開発する段階で作成される。
【0022】
図2は、検査用端末1のディスプレイ18に表示される画面の一例である。ディスプレイ18は、サーバー2と通信して取得した3Dモデル22を表示する装置であり、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの平面ディスプレイである。タッチパネル19(入力部)は、ディスプレイ18の表面に対する作業者の入力操作(タッチ,ピンチ,スワイプなど)を検出するための入力装置である。本実施形態の検査用端末1は、ディスプレイ18とタッチパネル19とが一体化されたタッチパネル式ディスプレイとして設けられる。
【0023】
図2に示すように、ディスプレイ18の表示画面は複数の領域に区画される。ディスプレイ18の表示画面のほぼ中央には最も大きな領域18aが設けられ、この領域18aに3Dモデル22が表示される。また、領域18aの上側には、車体番号が表示される領域18bと、選択した検査工程が表示される領域18cとが設けられる。領域18aの下側には、検査を担当する作業者名が表示される領域18dが設けられる。また、領域18aの右側には、検査項目に関するアイコンを表示する領域18eが設けられる。なお、これらの領域18a~18e以外に、車種や型式,ボディーカラーを選択する表示や、検査部品を選択するアイコン等が設けられてもよい。
【0024】
図2に例示する領域18eには、8つの不具合種別を示すアイコンK1~K8が設けられる。不具合種別としては、例えば、キズ,汚れ,段付,平行度,浮き,隙間,水漏れ,塗装などが挙げられる。また、この領域18eには、操作を取り消すためのアイコン(C)や操作を最初からやり直すためのアイコン(R)等が設けられてもよい。図2には、アイコンK1に示す不具合種別が選択されている場合を例示している。
【0025】
本実施形態の検査用端末1では、ディスプレイ18の領域18aに表示される3Dモデル22が、タッチパネル19に対するタップ操作やピンチ操作(ピンチイン,ピンチアウト)等の入力操作に応じて、回転、移動、拡大縮小表示される。これにより、検査対象の車両の全体を検査可能である。また、ディスプレイ18には、対象車両の内装表示と外装表示(外観表示)とを選択するためのアイコンが設けられ、作業者が選択したアイコンに従って3Dモデル22の表示が切り替わる。
【0026】
検査用端末1は、サーバー2から3Dモデル22とともに車両情報21を取得し、作業者の入力操作により指摘された対象車両の不具合箇所を三次元座標データ及び部品名称とともに記録する。例えば、作業者は、対象車両の左フロントドアに傷を見つけた場合には、検査用端末1のアイコンK1~K8の中から「キズ」を示すアイコンを選択し、3Dモデル22における、左フロントドアの傷がついている箇所に対応する位置23(不具合箇所)をタップする。また、対象車両の左前後のドアに段付きを見つけた場合には、検査用端末1のアイコンK1~K8の中から「段付」を示すアイコンを選択し、3Dモデル22における、左ドアの段付き箇所に対応する位置24(不具合箇所)をタップする。なお、段付きや隙間は、二部品によって生じる不具合であるため、二点をタップすることで指摘する。
【0027】
検査用端末1は、このタップ操作を検出すると、タップされた位置(不具合箇所)の三次元座標データと部品名称(この場合「左フロントドア」)とを記録する。本実施形態では、作業者の入力操作により選択された不具合種別(キズ)を不具合箇所とともに記録する。さらに本実施形態の検査用端末1は、不具合箇所と、この不具合箇所とともに記録した情報(三次元座標データ,部品名称,不具合種別)とを「不具合情報」として車体番号と紐づけてサーバー2に送信する。サーバー2は、検査用端末1から受信した車体番号と不具合情報とを紐づけた状態で記録する。サーバー2に記録された情報は、検査用端末1以外の通信機器からも取得可能であり、これにより、他の作業者による不具合情報の管理,分析等が実施される。
【0028】
上述した外観建付け検査及び塗装検査を実施する検査プログラム4(コンピュータープログラム)の機能を図1中に模式的に示す。この検査プログラム4には、取得部4A,表示部4B,検出部4C,記録部4Dが設けられる。これらの各要素は、電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
【0029】
取得部4Aは、サーバー2と通信し、サーバー2から車両情報21及び3Dモデル22を取得する。表示部4Bは、取得部4Aで取得された3Dモデル22をディスプレイ18に表示させる。検出部4Cは、ディスプレイ18に対する作業者の入力操作を検出する。なお、ここで検出される入力操作には、少なくとも不具合箇所を指摘するタップ操作が含まれる。記録部4Dは、検出部4Cにより検出された入力操作に基づき、指摘された不具合箇所を確定させ、この不具合箇所を三次元座標データ及び部品名称とともに記録する。また、本実施形態の記録部4Dは、不具合種別も同時に記録する。
【0030】
[2.フローチャート]
図3は、上述した検査用端末1に実行させる検査プログラム4の工程(検査工程)を例示するフローチャートである。このフローチャートは、外観建付け検査及び塗装検査を実施する対象車両ごとに実施される。
【0031】
ステップS1では、サーバー2と通信を行い、サーバー2に記憶されている上記の車両情報21及び3Dモデル22を取得する(取得工程)。ステップS2では、取得した3Dモデル22を検査用端末1のディスプレイ18に表示する(表示工程)。表示工程では、例えば図2に示すように、3Dモデル22が所定の領域18aに表示され、作業者の入力操作により回転や拡大縮小表示される。また、表示工程では、内装表示と外装表示(外観表示)とが入力操作に応じて切り替えられる。
【0032】
ステップS3では、3Dモデル22が表示されたディスプレイ18に対する作業者の入力操作を検出する(検出工程)。検出工程では、作業者により選択された不具合種別のアイコンK1~K8,タップ操作された位置などが検出される。これにより、不具合箇所が指摘,確定される。ステップS4では、入力操作により指摘された対象車両の不具合箇所を、三次元座標データ及び部品名称とともに記録する(記録工程)。本実施形態の記録工程では、不具合種別も同時に記録される。なお、本実施形態の検査プログラムは、記録工程で記録された不具合箇所及び各種情報を「不具合情報」として車体番号と紐づけてサーバー2に送信する(ステップS5,出力工程)。
【0033】
[3.効果]
(1)上述した検査システムによれば、作業者が検査用端末1のディスプレイ18を操作して不具合箇所を指摘するだけで、その不具合箇所の位置(三次元座標データ)と部品名称とが一緒に記録されることから、作業者の検査負担を軽減できる。また、紙のチェックシートを用いて検査する従来の方法と比較して、不具合箇所の集計,管理,分析等を容易に行うことができる。
【0034】
さらに、三次元座標データと部品名称とを含む三次元CADデータに基づいて3Dモデル22が作成されるため、絵や写真等に基づいて三次元モデルを作成する場合と比べて、事前の準備工程(座標値や部品名称の記録作業等)が必要ない。このため、検査システムを開発する開発者の負担をも大幅に軽減できる。
【0035】
(2)上述した検査システムでは、検査用端末1のディスプレイ18に表示される3Dモデル22が、作業者の入力操作に応じて回転したり拡大縮小されたりする。このように、作業者の入力操作に応じて表示される3Dモデル22の向きや大きさが容易に変わることから、作業性を向上させることができ、作業者の検査負担をより軽減できる。
【0036】
(3)上述した検査システムでは、検査用端末1のディスプレイ18に複数の不具合種別(アイコンK1~K8)が表示されているため、作業者はこれらの不具合種別表示のなかから該当する不具合種別を選択すればよい。検査用端末1では、作業者の入力操作によって選択された不具合種別が不具合箇所とともに記録されることから、作業者の検査負担をより軽減できる。
【0037】
(4)上述した検査システムでは、検査用端末1で記録された不具合情報が車体番号と紐づけされた状態でサーバー2に送信され、サーバー2において、検査用端末1から受信した車体番号及び不具合情報が記録される。このように、サーバー2において、車体番号と紐づけて不具合情報を管理できるため、他の工程の作業者(例えば、不具合を管理,分析する作業者)との間で簡単に情報共有できる。
【0038】
(5)上述した検査プログラム4によれば、外観建付け検査及び塗装検査において、検査用端末1に上述した検査工程を実施させることができるため、作業者の検査負担を軽減できる。また、外観建付け検査及び塗装検査において検査用端末1を使って検査を実施できることから、他の検査工程(例えば、従来から実施されている、OKかNGかを判断する検査工程)で使用している端末機器をそのまま使用できる。あるいは、従来の端末機器に検査プログラム4を実行させることもできる。どちらの場合であっても、共通の端末機器(検査用端末1)のみですべての検査を完結でき、検査に要する時間の短縮やコストの低減にも寄与できる。
【0039】
[4.その他]
上述した検査システム及び検査プログラムは一例である。例えば、上記の検査用端末1は、ディスプレイ18にタッチパネル19が一体で設けられているが、ディスプレイ18に対する入力操作を検出する手段(入力部)はタッチパネルに限られず、キーボード入力やマウス入力,音声入力などの入力操作を検出する手段を設けてもよい。また、検査用端末1のディスプレイ18に表示される3Dモデル22が、回転して表示される代わりに、表示方向が切り替わるように構成されてもよい。ディスプレイ18への3Dモデル22の表示方法や、表示内容(領域18a~18eの区画など)は上述したものに限られない。
【0040】
上述した不具合情報には、不具合箇所,三次元座標データ,部品名称,不具合種別が含まれているが、少なくとも、不具合箇所と三次元座標データと部品名称とが含まれていればよい。また、サーバー2での不具合情報の管理方法は上述したものに限られない。
【0041】
検査用端末1は、タブレット端末に限られない。検査用端末1としてHMDを用いる場合には、頭部に装着するディスプレイに3Dモデル22を表示し、作業者のジェスチャーによる3Dモデル操作をセンサー(入力部)により検出することで、上述した実施形態と同様の構成とすることができる。あるいは、検査用端末1として、タッチ操作式プロジェクターを用いる場合には、壁や車体などの面に投影される表示(ディスプレイ)に対する入力操作を検出することで、上述した実施形態と同様の構成とすることができる。
【0042】
なお、上述した検査システムは、外観建付け検査及び塗装検査の対象車両にできるものであり、製造ラインの検査工程のうち「外観建付け検査及び塗装検査」の工程以外で実施されてもよい。言い換えると、検査システムが利用される検査工程は限定されず、例えば、シートやステアリングを組み付ける工程において、作業者が、完成車状態で目視可能な内装部品に傷を発見した場合には、検査用端末1のディスプレイ18を操作して「外観建付け検査及び塗装検査」を選択し、ディスプレイ18に表示された3Dモデル22における、傷を発見した箇所に対応する位置をタップして不具合箇所を記録してもよい。このように、製造ラインの検査工程を共通の検査用端末1を用いて完結できるという特徴を利用して、他の検査工程で「外観建付け検査及び塗装検査」を実施でき、どの検査段階から不具合箇所が存在していたのかをも把握することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 検査用端末
2 サーバー
3 ネットワーク
4 検査プログラム
4A 取得部
4B 表示部
4C 入力部
4D 記録部
9 記録媒体
10 制御装置
11 プロセッサ
12 メモリ
13 記憶装置
14 インターフェース装置
15 通信装置
16 記録媒体ドライブ
17 内部バス
18 ディスプレイ
18a~18e 領域
19 タッチパネル(入力部)
20 データベース
21 車両情報
22 3Dモデル(三次元モデル)
23,24 位置(不具合箇所)
図1
図2
図3