(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】建築物
(51)【国際特許分類】
E04H 1/02 20060101AFI20230905BHJP
E04H 1/04 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
E04H1/02
E04H1/04 A
(21)【出願番号】P 2019157566
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-04-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年1月2日に積水ハウス株式会社のウェブサイトにて、梶彩子及び廣瀬文郁が発明した「建築物」を公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年1月2日にシャーウッド宇都宮西展示場リーフレットにて、梶彩子及び廣瀬文郁が発明した「建築物」を公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年4月1日に住宅展示場(シャーウッド宇都宮西展示場)にて梶彩子及び廣瀬文郁が発明した「建築物」を公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】梶 彩子
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 文郁
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-101690(JP,A)
【文献】特開2015-083755(JP,A)
【文献】特開2005-220562(JP,A)
【文献】特開2018-053552(JP,A)
【文献】特開2015-031033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/00-1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外スペースと、
前記屋外スペースと屋内との間に設けられる第1開口部と、
前記屋内に設けられる室と、
前記室に設けられる第2開口部と、
前記第1開口部および前記第2開口部に面する吹き抜け階段とを備え、
前記吹き抜け階段と前記屋外スペースの一部とが隣接し、
前記第1開口部は、前記吹き抜け階段と前記屋外スペースとの間の壁に設けられ、
前記吹き抜け階段と前記室の一部とが隣接し、
前記第2開口部は、前記吹き抜け階段と前記室との間の壁に設けられ、
前記屋外スペースおよび前記室は前記第1開口部、前記吹き抜け階段および前記第2開口部を介して一方から他方を視認できるように構成さ
れ、
前記第1開口部および前記第2開口部の高さは、前記屋外スペースおよび前記室において座っている利用者の一方と他方との視線が一致しやすく、かつ、前記屋外スペースおよび前記室において立っている利用者の一方と他方との視線が一致しにくい高さに設定され、
前記第1開口部および前記第2開口部の高さは、それぞれ、下端から上端までの高さであり、
前記第1開口部の上端は、前記第1開口部の下端から1200mm以上1500mm以下の高さに位置し、
前記第2開口部の上端は、前記第2開口部の下端から1200mm以上1500mm以下の高さに位置する
建築物。
【請求項2】
前記屋外スペースの外から前記第1開口部を介して前記屋内を視認できないように前記屋外スペースに設けられる壁部をさらに備える、
請求項1に記載の建築物。
【請求項3】
前記屋外スペースは前記室に隣接され、
前記屋外スペースと前記室とを繋ぐ出入口をさらに備える、
請求項1または2に記載の建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は屋外スペースを備える建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
バルコニー等の屋外スペースを備える建築物が知られている。例えば、特許文献1は共有空間(10)、共有空間(10)に隣接されるリビング(2)、および、共有空間(10)とリビング(2)との間に設けられる窓(8)を備える住宅(T1)を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記住宅(T1)では、共有空間(10)の利用者、および、リビング(2)の利用者は共通の窓(8)を介して互いの様子を確認できるため、互いの存在を強く意識し、ストレスを感じるおそれがある。このため、快適な居住空間を提供する点について、なお改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明に関する建築物は屋外スペースと、前記屋外スペースと屋内との間に設けられる第1開口部と、前記屋内に設けられる室と、前記室に設けられる第2開口部とを備え、前記屋外スペースおよび前記室は前記第1開口部および前記第2開口部を介して一方から他方を視認できるように構成される。
上記建築物によれば、複数の開口部を介して屋外スペースおよび室の一方から他方の様子を確認できる。屋外スペースの利用者と室の利用者とが適度な距離感で繋がることができるため、快適な居住空間を提供できる。
【0006】
(2)好ましい例では(1)に記載の建築物において、前記第1開口部および前記第2開口部の高さは前記屋外スペースおよび前記室において座っている利用者の一方と他方との視線が一致しやすく、かつ、前記屋外スペースおよび前記室において立っている利用者の一方と他方との視線が一致しにくい高さに設定される。
上記建築物によれば、屋外スペースの利用者、および、室の利用者は座っている状態では視線が一致しやすく、立っている状態では視線が一致しにくいため、より適度な距離感で繋がることができる。
【0007】
(3)好ましい例では(1)または(2)に記載の建築物において、前記屋外スペースの外から前記第1開口部を介して前記屋内を視認できないように前記屋外スペースに設けられる壁部をさらに備える。
上記建築物によれば、屋外スペースの利用者、および、室の利用者のプラバシーが保護される。
【0008】
(4)好ましい例では(1)~(3)のいずれか一項に記載の建築物において、前記屋外スペースは前記室に隣接され、前記屋外スペースと前記室とを繋ぐ出入口をさらに備える。
上記建築物によれば、第1開口部および第2開口部とは別に出入口が設けられるため、屋外スペースと室とを容易に移動できる。
【0009】
(5)好ましい例では(1)~(4)のいずれか一項に記載の建築物において、前記第1開口部および前記第2開口部に面する吹き抜け階段をさらに備える。
上記建築物によれば、吹き抜け階段の利用者、屋外スペースの利用者、および、室の利用者が互いに存在を認識できるため、これらの利用者が必要に応じてコミュニケーションをとることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に関する建築物によれば、快適な居住空間を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】
図2の第1開口部および第2開口部、ならびに、その周辺の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
図1および
図2を参照して、建築物10の一例について説明する。建築物10の一例は個別住宅または集合住宅である。
図1等に示される例では、建築物10は複数の階を含む個別住宅である。
図1は個別住宅の1階の室内構造20を示す平面図である。
図2は個別住宅の2階の室内構造30を示す平面図である。建築物10の外壁11により囲まれる領域10Aは複数の壁12により区画される。領域10Aのうち複数の壁12により区画された箇所には、室内構造20、30を構成する主な要素である玄関40、室50、通路60、および、階段70が設けられる。
【0013】
室50、通路60、および、階段70の数、ならびに、配置は任意に選択可能である。一例では、室50はサニタリー51、パントリー52、キッチン53、ダイニング54、リビング55、第1打ち合わせ室56、第2打ち合わせ室57、事務室58、および、洋室59を含む。
図1に示されるように、サニタリー51、パントリー52、キッチン53、ダイニング54、および、リビング55は建築物10の1階に設けられる。サニタリー51は洗面室51Aおよび浴室51Bを含む。
図2に示されるように、第1打ち合わせ室56、第2打ち合わせ室57、事務室58、および、洋室59は建築物10の2階に設けられる。
【0014】
建築物10は屋外スペース81および室82をさらに備える。屋外スペース81および室82が設けられる階は任意に選択可能である。
図2等に示される例では、屋外スペース81および室82は建築物10の2階に設けられる。屋外スペース81および室82の配置は任意に選択可能である。
図2等に示される例では、屋外スペース81は室82に隣接される。屋外スペース81の具体的な種類は任意に選択可能である。屋外スペース81は例えば、バルコニー、ベランダ、テラス、および、ルーフバルコニーである。
図2等に示される例では、屋外スペース81はバルコニーである。室82の具体的な種類は任意に選択可能である。室82は例えば、寝室、リビング、ダイニング、および、リビングダイニングである。
図2等に示される例では、室82は寝室である。
【0015】
階段70は居住者が建築物10の1階と2階とを移動するために設けられる。階段70の具体的な構成は任意に選択可能である。一例では、階段70は吹き抜け階段である。階段70は第1階段71、第2階段72、および、第1階段71と第2階段72との間に設
けられる踊り場73を含む。
【0016】
通路60は第1通路61、第2通路62、および、第3通路63を含む。
図1に示されるように、第1通路61および第2通路62は建築物10の1階に設けられる。第1通路61は玄関40、サニタリー51、パントリー52、および、リビング55に面する。第2通路62は玄関40、第1階段71、ダイニング54、および、リビング55に面する。
図2に示されるように、第3通路63は建築物10の2階に設けられる。第3通路63は第1打ち合わせ室56、第2打ち合わせ室57、事務室58、第2階段72、洋室59、および、室82に面する。
【0017】
建築物10は屋外スペース81の利用者と室82の利用者とが適度な距離感で繋がることができるように構成される。屋外スペース81は屋内との間に設けられる第1開口部81Aを備える。室82は第2開口部82Aを備える。屋外スペース81および室82は第1開口部81Aおよび第2開口部82Aを介して一方から他方を視認できるように構成される。
【0018】
第1開口部81Aおよび第2開口部82Aの形状は任意に選択可能である。
図4等に示される第1例では、第1開口部81Aおよび第2開口部82Aの形状は長方形である。第2例では、第1開口部81Aおよび第2開口部82Aの形状は正方形、三角形、五角形以上の多角形、円、または、楕円である。第1開口部81Aおよび第2開口部82Aの形状は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0019】
第1開口部81Aおよび第2開口部82Aには、建具90が設けられる。建具90の種類は第1開口部81Aおよび第2開口部82Aを介して屋外スペース81および室82の一方から他方を視認できるものから任意に選択可能である。一例では、建具90は窓である。窓は例えば、開閉窓またはFIX窓である。以下では、第1開口部81Aに設けられる建具90を第1建具91と称し、第2開口部82Aに設けられる建具90を第2建具92と称する場合がある。
【0020】
第1開口部81Aおよび第2開口部82Aは階段70に面するように設けられる。階段70が吹き抜け階段である場合、階段70の利用者、屋外スペース81の利用者、および、室82の利用者が互いに存在を認識できるため、これらの利用者が必要に応じてコミュニケーションをとることができる。
【0021】
第1開口部81Aおよび第2開口部82Aは室82を構成する壁12を介して交差するように配置される。第1開口部81Aと第2開口部82Aとのなす角θAは任意に選択可能である。好ましい例では、なす角θAは0°超~90°未満の範囲に含まれる。このため、屋外スペース81の利用者、および、室82の利用者は第1開口部81Aおよび第2開口部82Aを介して一方から他方の様子を容易に確認できる。
【0022】
図3に示されるように、第1開口部81Aは下端81AXが屋外スペース81の床81Bと実質的に面一となるように設けられる。第2開口部82Aは下端82AXが室82の床82Bと実質的に面一となるように設けられる。第1開口部81Aの下端81AXから上端81AYまでの高さLA(以下では、「高さLA」という)は任意に選択可能である。第2開口部82Aの下端82AXから上端82AYまでの高さLB(以下では、「高さLB」という)は任意に選択可能である。好ましい例では、高さLA、LBは屋外スペース81および室82において座っている利用者の一方と他方との視線が一致しやすく、かつ、屋外スペース81および室82において立っている利用者の一方と他方との視線が一致しにくい高さに設定される。利用者としては、例えば、標準的な身長の成人が想定される。標準的な身長の一例は170cmである。視線が一致しにくいとは例えば、屋外スペー
ス81において立っている利用者が室82を向いた場合に、第1開口部81Aの上端81AYよりも上方に設けられる壁によって視界が遮られ、室82において立っている利用者の顔を視認しにくい状態である。同様に、視線が一致しにくいとは例えば、室82において立っている利用者が屋外スペース81を向いた場合に、第2開口部82Aの上端82AYよりも上方に設けられる壁によって視界が遮られ、屋外スペース81において立っている利用者の顔を視認しにくい状態である。屋外スペース81で座っている利用者は屋外スペース81の床81Bに座っている利用者、および、屋外スペース81に設置される椅子81Dに座っている利用者の少なくとも一方を含む。室82で座っている利用者は室82の床82Bに座っている利用者、および、室82に設置される椅子82D(
図7参照)に座っている利用者の少なくとも一方を含む。
【0023】
高さLA、LBの最大値の好ましい一例は1500mmである。高さLA、LBが1500mm以下の範囲に含まれる場合、屋外スペース81および室82において立っている利用者の一方と他方との視線が一致しにくい。高さLA、LBの最小値の好ましい一例は1200mmである。高さLA、LBが1200mm以上の範囲に含まれる場合、屋外スペース81および室82において座っている利用者の一方と他方との視線が一致しやすい。高さLA、LBの取り得る範囲の好ましい例は1200mm~1500mmである。好ましい例では、高さLA、LBは1251.5mmである。
【0024】
図5に示されるように、屋外スペース81は壁部81Cおよび椅子81Dをさらに備える。壁部81Cは屋外スペース81の外から第1開口部81Aを介して屋内を視認できないように、少なくとも第1建具91に面する位置に設けられる。このため、屋外スペース81の利用者、および、室82の利用者のプラバシーが保護される。壁部81Cの上端81CXは第1開口部81Aの上端81AYよりも高い。椅子81Dは屋外スペース81の利用者が腰掛けることができるように屋外スペース81に設けられる。椅子81Dは少なくとも一部が第1建具91と面するように配置される。このため、屋外スペース81の利用者は椅子81Dに腰掛けた状態で第1開口部81Aおよび第2開口部82Aを介して室82の様子を確認できる。
【0025】
図6および
図7に示されるように、室82には、収納棚82Cおよび椅子82Dが設けられる。収納棚82Cおよび椅子82Dは階段70(
図2参照)と平行に設けられる。収納棚82Cには、例えば飲料200が収納される。室82の利用者は椅子82Dに腰掛けた状態で飲料200を飲むことができる。室82に収納棚82Cおよび椅子82Dが設けられているため、室82の一部がラウンジとして機能する。椅子82Dは室82の利用者が椅子82Dに腰掛けた状態で、第2開口部82Aおよび第1開口部81Aを介して屋外スペース81の様子を確認できるように配置される。
【0026】
図2に示されるように、建築物10は屋外スペース81と室82とを繋ぐ出入口100をさらに備える。第1開口部81Aおよび第2開口部82Aとは別に出入口100が設けられるため、屋外スペース81と室82とを容易に移動できる。
【0027】
建築物10によれば、次のような作用および効果が得られる。
第1開口部81Aおよび第2開口部82Aを介して屋外スペース81および室82の一方から他方の様子を確認できる。屋外スペース81の利用者と室82の利用者とが適度な距離感で繋がることができるため、快適な居住空間を提供できる。
【0028】
(変形例)
上記実施形態は本発明に関する建築物が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関する建築物は実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した
形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の一例を示す。
【0029】
・屋外スペース81の床81Bに対する第1開口部81Aの下端81AXの位置は任意に変更可能である。変形例の建築物10では、第1開口部81Aの下端81AXは屋外スペース81の床81Bよりも高いまたは低い。同様に、室82の床82Bに対する第2開口部82Aの下端82AXの位置は任意に変更可能である。変形例の建築物10では、第2開口部82Aの下端82AXは室82の床82Bよりも高いまたは低い。
【0030】
・高さLAと高さLBとの関係は任意に変更可能である。変形例の建築物10では、高さLAと高さLBとが異なる。
【符号の説明】
【0031】
10 :建築物
70 :階段(吹き抜け階段)
81 :屋外スペース
81A:第1開口部
81C:壁部
82 :室
82A:第2開口部
100:出入口