(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷システム、印刷方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230905BHJP
【FI】
B41J2/01 109
B41J2/01 107
B41J2/01 451
B41J2/01 203
(21)【出願番号】P 2019172235
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 修一
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-1688(JP,A)
【文献】特開2013-230576(JP,A)
【文献】特開2019-98099(JP,A)
【文献】特開平10-58668(JP,A)
【文献】特開2001-96735(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0208019(US,A1)
【文献】特表2018-507796(JP,A)
【文献】特開2004-174817(JP,A)
【文献】特開2016-124266(JP,A)
【文献】特開2003-72049(JP,A)
【文献】特開2017-222099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部に曲面を有する印刷媒体に対して第1の方向に移動しながら第1の液滴を吐出させるとともに、前記第1の方向と逆向きの第2の方向に移動しながら前記印刷媒体に対して前記第1の液滴に対応する第2の液滴を吐出させる吐出部と、
前記印刷媒体と前記吐出部との間の距離に対応する補正レベル情報を取得する補正レベル取得部と、
前記第1の液滴に対応する第1印刷データと前記第2の液滴に対応する第2印刷データとを参照して前記吐出部による前記第1の液滴及び前記第2の液滴の吐出制御を行う吐出制御部と、
を有
し、
前記吐出制御部は、前記吐出部が吐出した前記第1の液滴の前記印刷媒体への着弾位置と前記吐出部が吐出した前記第2の液滴の前記印刷媒体への着弾位置とが略一致するように、前記第1の液滴に対応する第1印刷データ又は前記第2の液滴に対応する第2印刷データを前記補正レベル取得部により取得された前記補正レベル情報に基づいて変更することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記補正レベル取得部は、前記印刷媒体に対して前記第1の液滴又は前記第2の液滴を前記吐出部が吐出するタイミングにおける前記印刷媒体と前記吐出部との間の距離に対応する前記補正レベル情報を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記吐出制御部は、前記吐出部が前記第1の方向に移動しながら吐出した前記第1の液滴の前記印刷媒体への着弾位置に、前記吐出部が前記第2の方向に移動しながら移動しながら吐出した前記第2の液滴の着弾位置が略一致するように、前記補正レベル取得部により取得された補正レベル情報に基づいて、前記吐出部による前記第2の液滴の吐出のみを制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記吐出制御部は、前記吐出部が前記第1の液滴の前記印刷媒体への着弾位置に前記第2の液滴が略一致するように、前記第2の液滴に対応する第2印刷データのみを、前記補正レベル取得部により取得された補正レベル情報に基づいて変更することを特徴とする請求項
1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第1印刷データは、前記印刷媒体と前記吐出部との間の基準距離に基づいて、前記第1の
液滴の吐出すべきタイミングが印刷画素毎に決定された印刷データであり、
前記第2印刷データは、前記印刷媒体と前記吐出部との間の前記基準距離に基づいて、前記第2の
液滴の吐出すべきタイミングが印刷画素毎に決定された印刷データであり、
前記吐出制御部は、前記補正レベル取得部により取得された補正レベル情報に基づいて、前記第1印刷データによる前記第1の液滴又は前記第2印刷データによる前記第2の液滴の吐出すべきタイミングを一画素分以上ずらすことを特徴とする請求項
1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記補正レベル取得部は、前記印刷媒体と前記吐出部との間の距離及び前記印刷媒体を幅方向に複数領域に分けて各領域毎に補正レベルを対応付けた参照用データに基づいて前記補正レベル情報を取得することを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記参照用データは、前記印刷媒体の曲面の曲率の程度に応じて複数種類用意されることを特徴とする請求項
6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記吐出制御部は、前記補正レベル情報に基づいて、前記吐出部から本来液滴を吐出させるべき吐出位置よりも前記吐出部の移動方向手前側から液滴を吐出させるように前記吐出部の吐出制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項9】
一部に曲面を有する印刷媒体に対して第1の方向に移動しながら第1の液滴を吐出させるとともに、前記第1の方向と逆向きの第2の方向に移動しながら前記印刷媒体に対して前記第1の液滴に対応する第2の液滴を吐出させる吐出部と、
前記第1の液滴に対応する第1印刷データと前記第2の液滴に対応する第2印刷データとを参照して前記吐出部による前記第1の液滴及び前記第2の液滴の吐出制御を行う吐出制御部と、を有する印刷装置と、
前記印刷装置と通信可能に構成された通信部を有する端末装置と、を備える印刷システムであって、
前記印刷媒体と前記吐出部との間の距離に対応する補正レベル情報を取得する補正レベル取得部と、
前記補正レベル取得部により取得された補正レベル情報に基づいて、前記吐出部の吐出制御を行うための印刷情報を生成する印刷情報生成部と、
を有し、
前記印刷装置の
前記吐出制御部は、前記吐出部が吐出した前記第1の液滴の前記印刷媒体への着弾位置と前記吐出部が吐出した前記第2の液滴の前記印刷媒体への着弾位置とが略一致するように、前記第1の液滴に対応する第1印刷データ又は前記第2の液滴に対応する第2印刷データを前記補正レベル取得部により取得された前記補正レベル情報に基づいて変更することを特徴とする印刷システム。
【請求項10】
一部に曲面を有する印刷媒体に対して第1の方向に移動しながら第1の液滴を吐出させるとともに、前記第1の方向と逆向きの第2の方向に移動しながら前記印刷媒体に対して前記第1の液滴に対応する第2の液滴を吐出させる吐出部と、
前記第1の液滴に対応する第1印刷データと前記第2の液滴に対応する第2印刷データとを参照して前記吐出部による前記第1の液滴及び前記第2の液滴の吐出制御を行う吐出制御部と、前記印刷媒体と前記吐出部との間の距離に対応する補正レベル情報を取得する補正レベル取得部と、を備える印刷装置の印刷方法であって、
前記吐出部が吐出した前記第1の液滴の前記印刷媒体への着弾位置と前記吐出部が吐出した前記第2の液滴の前記印刷媒体への着弾位置とが略一致するように、前記第1の液滴に対応する第1印刷データ又は前記第2の液滴に対応する第2印刷データを前記補正レベル取得部により取得された前記補正レベル情報に基づいて変更することを特徴とする印刷方法。
【請求項11】
一部に曲面を有する印刷媒体に対して第1の方向に移動しながら第1の液滴を吐出させるとともに、前記第1の方向と逆向きの第2の方向に移動しながら前記印刷媒体に対して前記第1の液滴に対応する第2の液滴を吐出させる吐出部と、
前記第1の液滴に対応する第1印刷データと前記第2の液滴に対応する第2印刷データとを参照して前記吐出部による前記第1の液滴及び前記第2の液滴の吐出制御を行う吐出制御部と、前記印刷媒体と前記吐出部との間の距離に対応する補正レベル情報を取得する補正レベル取得部と、を備える印刷装置のコンピュータに、
前記吐出部が吐出した前記第1の液滴の前記印刷媒体への着弾位置と前記吐出部が吐出した前記第2の液滴の前記印刷媒体への着弾位置とが略一致するように、前記第1の液滴に対応する第1印刷データ又は前記第2の液滴に対応する第2印刷データを前記補正レベル取得部により取得された前記補正レベル情報に基づいて変更する機能を実現させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷システム、印刷方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式でインクを吐出させる印刷ヘッドを、左から右、右から左と交互に移動させながらシングリング印刷を利用して印刷媒体に印刷を行うことが知られている。
この場合、印刷ヘッドから吐出されたインクは印刷ヘッドが左から右に移動する場合(例えば往路)には吐出位置よりも右側に流れ、右から左に移動する場合(例えば復路)には吐出位置より左側に流れるため、インクの着弾位置が目標とする位置からずれてしまう。このため、往路と復路とでインク吐出時の印刷ヘッドの位置は同じであっても、インクの着弾位置が重ならず、印刷品質が低下する。そこでインクの吐出タイミングの補正値を設定し、着弾位置が同じになるようにしている。
【0003】
しかし、指の爪のように、印刷面が曲面を含む印刷媒体である場合には、印刷ヘッドのインク吐出面と印刷媒体との間の間隔距離が主走査方向で連続的に変化する。
このため、印刷ヘッドから着弾位置までの距離が一定の場合を前提とし、印刷ヘッドの移動方向に応じたインク流れに対処する一般的な補正では、往路で吐出されたインクとそれに対応する復路で吐出されたインクとの着弾位置のずれを解消することができない。
【0004】
この点、例えば特許文献1には、印刷ヘッドのインク吐出面と印刷媒体との間の間隔距離が主走査方向で変化する場合に、印刷ヘッドからのインクの吐出タイミング及び吐出速度の少なくともいずれか一方を調整することで、インク吐出面と印刷媒体との間の間隔距離の変化によるインクの着弾位置ずれを抑えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の構成は、シングリング印刷時に生じる印刷ヘッドの移動方向に応じたインク流れ、及びインク吐出面と印刷媒体との間の間隔距離の変化によるインクの着弾位置のずれを考慮して、インクの着弾位置のずれを良好に回避できるような構成を実現するものではなかった。
【0007】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、曲面を有する印刷媒体に対して良好な印刷を実現することができる印刷装置、印刷システム、印刷方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の印刷装置は、
一部に曲面を有する印刷媒体に対して第1の方向に移動しながら第1の液滴を吐出させるとともに、前記第1の方向と逆向きの第2の方向に移動しながら前記印刷媒体に対して前記第1の液滴に対応する第2の液滴を吐出させる吐出部と、
前記印刷媒体と前記吐出部との間の距離に対応する補正レベル情報を取得する補正レベル取得部と、
前記第1の液滴に対応する第1印刷データと前記第2の液滴に対応する第2印刷データとを参照して前記吐出部による前記第1の液滴及び前記第2の液滴の吐出制御を行う吐出制御部と、
を有し、
前記吐出制御部は、前記吐出部が吐出した前記第1の液滴の前記印刷媒体への着弾位置と前記吐出部が吐出した前記第2の液滴の前記印刷媒体への着弾位置とが略一致するように、前記第1の液滴に対応する第1印刷データ又は前記第2の液滴に対応する第2印刷データを前記補正レベル取得部により取得された前記補正レベル情報に基づいて変更することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、曲面を有する印刷媒体に対して良好な印刷を実現することができるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態におけるネイルプリント装置の外観構成を示す斜視図である。
【
図2】第1の実施形態におけるネイルプリント装置の制御構成を示した要部ブロック図である。
【
図3】インク吐出面、基準面及びインクの着弾位置を示す説明図である。
【
図4】インク吐出面、基準面及びインクの着弾位置を示す説明図である。
【
図5】インク吐出面、基準面及びインクの着弾位置を示す説明図である。
【
図6】基準面とインクの着弾面との距離とインクの着弾ずれとの関係を示すグラフである。
【
図7】(a)は、補正レベル分けの一例を示す爪の模式図であり、(b)は、(a)に示す補正レベル分けに従った場合の印刷のデータを補正する手法を説明する説明図である。
【
図8】補正レベルの決定に必要な要素を説明する説明図である。
【
図9】補正レベルのテーブル例を示す図であり、(a)は、補正レベルとして対応付けられる項目を示し、(b)は、各項目の実際の数値例を示したものである。
【
図10】(a)~(c)は、爪のパターン例を示す説明図である。
【
図11】爪のパターン例と各例における補正レベルの領域分けの一例を示すテーブル例である。
【
図12】第1の実施形態における印刷処理を示すフローチャートである。
【
図13】本実施形態におけるシングリングデータ生成処理を示すフローチャートである。
【
図14】第2の実施形態における印刷システムの制御構成を示した要部ブロック図である。
【
図15】第2の実施形態における印刷処理を示すフローチャートである。
【
図16】印刷のデータの補正例を説明する説明図である。
【
図17】印刷のデータの補正例の変形例を説明する説明図である。
【
図18】位置ずれを補正するための手法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る印刷装置、端末装置及びこれらを備える印刷システムの実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
また、以下の実施形態では、印刷装置が手の指の爪を印刷対象としてこれに印刷するネイルプリント装置である場合を例に説明するが、本発明における印刷装置は手の指の爪に印刷を施すもの限るものではなく、例えば足の指の爪を印刷対象としてもよい。また、本発明の印刷装置はその一部に曲面を有する印刷媒体に対して印刷を行うものに広く適用することができ、ネイルチップや各種アクセサリの表面等、爪以外のものを印刷対象とするものでもよい。
【0012】
[第1の実施形態]
まず、
図1から
図13を参照しつつ、本発明が単体の印刷装置によって構成されるものである場合を第1の実施形態として説明する。
【0013】
図1は、本実施形態における印刷装置であるネイルプリント装置の外観構成を示す斜視図である。
なお、以下の実施形態において、上下、左右及び前後は、
図1に示した向きをいうものとする。また、X方向、Y方向は、
図1に示した方向をいうものとする。
【0014】
図1に示すように、本実施形態のネイルプリント装置1は、ほぼ箱形に形成された筐体2を有している。
筐体2の上面(天板)には操作部21が設置されている。
操作部21は、ユーザが各種入力を行うものである。
操作部21には、例えば、ネイルプリント装置1の電源をONする電源スイッチ釦、動作を停止させる停止スイッチ釦、印刷開始を指示する印刷開始釦等、各種の入力を行うための操作釦が配置されている。
操作部21が操作されると操作信号が制御装置30に出力され、制御装置30が操作信号に従った制御を行い、ネイルプリント装置1の各部を動作させる。
また、後述する表示部22にタッチパネル式の入力部が設けられている場合には、操作部21はタッチパネル式の入力部を含んでもよい。
【0015】
また、筐体2の上面(天板)には表示部22が設置されている。
表示部22は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のフラットディスプレイ等で構成されている。
本実施形態の表示部22の表面には、タッチパネルが一体的に構成されていてもよい。この場合には、ユーザが指先や図示しない専用のペン等によって表示部22の表面をタッチするタッチ操作によって各種の入力を行うことができるように構成され、タッチパネル式の入力部が操作部21として機能する。
本実施形態において、この表示部22には、例えば、印刷対象となる爪Tに対応する指である印刷指(図示せず)を撮影して得た爪画像(すなわち、爪Tの画像を含む印刷指の画像)、この爪画像中に含まれる爪Tの輪郭形状やそのうち印刷が予定されている範囲(印刷領域)等の画像、爪Tの印刷領域に印刷すべきネイルデザインを選択するためのデザイン選択画面、デザイン確認用のサムネイル画像、各種の指示を表示させる指示画面、告知画面、警告画面等が適宜表示される。
【0016】
さらに、筐体2の前面側(
図1において手前側)であって装置のX軸方向(
図1におけるX方向、ネイルプリント装置1の左右方向)のほぼ中央部には、ネイルプリント装置1による印刷時に指を挿入する開口部である指挿入口23が形成されている。指挿入口23は、後述の指置部6に対応する位置に設けられている。本実施形態では、指置部6に1本ずつ指を載置可能となっており、指挿入口23は、指を装置内に挿入することができる程度の幅(X軸方向の長さ)及び高さに形成されている。
指挿入口23の大きさ等はこれに限定されず、指置部6の大きさ、形状等に応じて適宜設定される。
【0017】
また筐体2の一部には、印刷ヘッド41を交換することができる開口部24が設けられている。開口部24には図示しないヒンジ等によって開閉可能に構成された蓋部25が設けられている。蓋部25を閉状態とすることで開口部24が塞がれて装置内部に埃等が浸入するのを防ぐことができる。
開口部24は、蓋部25が開状態となった場合に、ユーザが装置外から装置内部に対してアクセス可能となっている。
なお、開口部24を閉状態とする蓋部25は、ユーザが手動で開閉させるものでもよいし、図示しないボタン等を押すことで自動的に開閉するように構成されていてもよい。
開口部24が設けられる位置は、後述する印刷部40の印刷ヘッド41が対応位置まで移動してくることが可能な位置であり、本実施形態では
図1に示すように、装置の上部右側に開口部24が形成されている。なお、開口部24の位置や大きさは適宜設定される。
すなわち、本実施形態の印刷ヘッド41はキャリッジ42から取り外して交換することが可能に構成されており、開口部24は、印刷ヘッド41の着脱、装置内からの取出し等を円滑に行うことができる位置及び大きさに形成される。
【0018】
筐体2の内部には、図示しない装置本体が収容されている。
装置本体は、基台上に各構成部が組み付けられて構成されている。
基台上であって装置手前側には、前述の指挿入口23に対応する位置に、指挿入口23から挿入された印刷指を載置する指置部6が設けられている。ここで印刷指とは、印刷部40による印刷対象となる爪Tに対応する指である。
【0019】
指置部6の下側面には、指置部6内に挿入される印刷指の腹部分を載置させる載置部材62が設けられている。
載置部材62は、指置部6内において印刷指を下側から支持するものであり、例えば柔軟性を有する樹脂等で形成されている。
本実施形態の載置部材62には、指置部6内に挿入可能な指の本数に応じてY軸方向に沿って窪んだ形状となった窪み部62aが形成されている(
図1参照)。
これにより、印刷指を載置部材62上に載置した際に、印刷指の腹部分を窪み部62aが受けて、左右方向に各印刷指がガタつくのを防止することができる。
なお、載置部材62は上下動可能に構成されていてもよく、この場合には、印刷指の太さ等に応じて載置部材62の高さを調整することができる。
また、指置部6の天面奥側は開口しており、この開口部分からは指置部6内に挿入された印刷指の爪Tが露出するようになっている。本実施形態では、当該開口している領域において、後述の印刷部40により印刷が行われるようになっている。
【0020】
また、装置本体には、印刷指の爪T(爪Tの表面)に印刷を施す印刷部40と、爪Tを含む印刷指の撮影画像(爪Tを含む爪画像)を取得する撮影部50等が設けられている(
図2参照)。
【0021】
印刷部40は、一部に曲面を有する印刷媒体に対して印刷を行うものであり、本実施形態では、爪Tの表面に対して印刷を行う。印刷部40は、図示しないキャリッジ等に支持された印刷ヘッド41と、印刷ヘッド41をX軸方向(
図1におけるX軸方向、ネイルプリント装置1の左右方向)、Y軸方向(
図1におけるY軸方向、ネイルプリント装置1の奥行方向、前後方向)に移動させるためのヘッド移動機構49(
図2参照)等を備えている。
ヘッド移動機構49は、印刷ヘッド41をX方向及びY方向に適宜移動させるための駆動部としてのX方向移動モータ46とY方向移動モータ48等で構成されている。
印刷部40は、後述する制御装置30の印刷制御部315(
図2参照)に接続され、該印刷制御部315によって制御される。
【0022】
本実施形態において、印刷ヘッド41は、指置部6に保持された印刷指の爪Tの上(すなわち、爪表面の上方)を移動しながら、爪Tの表面にインクを吐出させ、ネイルデザインを印刷する吐出部である。
一部に曲面を有する印刷媒体である爪Tの表面に対して第1の方向(例えば主走査X方向の左から右に向かう方向)に移動しながら第1の液滴を吐出させるとともに、第1の方向と逆向きの第2の方向(例えば主走査X方向の右から左に向かう方向)に移動しながら印刷媒体である爪Tの表面に対して第1の液滴に対応する第2の液滴を吐出させる。
印刷ヘッド41は、爪Tの表面に対向する面がインクを吐出させる複数のノズル口を備えたインク吐出面411となっており、インクを微滴化し、インク吐出面411から爪Tの表面に対して直接にインクを吹き付けて印刷を行うインクジェット方式のヘッドである。
印刷ヘッド41は、例えば、各色のインクを内蔵したカートリッジ一体型となっており、イエロー(Y;YELLOW)、マゼンタ(M;MAGENTA)、シアン(C;CYAN)のインクを吐出可能となっている。なお、印刷ヘッド41が吐出可能なインクはこれらに限定されない。例えば、黒色(K;BLACK)のインクをも内蔵し、黒色(K)のインクも吐出可能となっていてもよい。また、印刷ヘッド41の構成等もここに例示したものに限定されない。例えば、印刷ヘッド41はカートリッジと別体に構成されていてもよい。
【0023】
撮影部50(
図2参照)は、撮像装置51と、照明装置52とを備えている。
撮像装置51は、例えば、200万画素程度以上の画素を有する固体撮像素子とレンズ(いずれも図示せず)等を備えて構成された小型カメラである。また、照明装置52は、例えば白色LED等で構成される照明灯である。
撮影部50は、指置部6に配置された印刷指の爪Tを照明装置52によって照明する。そして、撮像装置51によってその印刷指の爪Tに対応する領域を撮影して、爪画像(爪Tの画像を含む印刷指の画像)を得る。
撮影部50は、後述する制御装置30の撮影制御部312(
図2参照)に接続され、該撮影制御部312によって制御されるようになっている。
撮影部50によって取得された撮影画像は、後述する記憶部32に記憶されてもよい。
【0024】
図2は、本実施形態におけるネイルプリント装置の制御構成の要部を示すブロック図である。
図2に示すように、ネイルプリント装置1は、制御装置30を備えている。
制御装置30は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成される制御部31と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)で構成される記憶部32とを備えるコンピュータである。
制御装置30は、例えば筐体2の天面の下面側等に配置された図示しない基板等に設置されている。
【0025】
記憶部32には、ネイルプリント装置1を動作させるための図示しない各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的には、例えば記憶部32のROMに、印刷処理を行うための印刷プログラム等の各種プログラムが格納されており、制御部31がこれらのプログラムを読み出してRAMのワークエリア等に展開し実行することによって、ネイルプリント装置1の各部が統括制御されるようになっている。
また、本実施形態の記憶部32には、ネイルデザインのデータを記憶するデザイン記憶領域321や、撮影部50によって取得された爪画像のデータ、後述の爪情報取得部313が爪画像を解析することで得られる各種のデータが記憶される爪情報記憶領域322等が設けられている。爪情報取得部313が爪画像を解析することで取得するデータとしては、例えば爪Tの領域を画する輪郭(爪Tの輪郭形状を示す座標等)や爪Tの領域内に含まれる印刷領域(印刷データにしたがってネイルデザインが印刷される領域)の範囲を画する座標、爪Tの曲率(湾曲度合を示すデータ)、補正レベル取得部として爪情報取得部313が取得した補正レベル情報等がある。なお、記憶部32に記憶されるデータはここに例示したものに限定されない。
【0026】
制御部31は、機能的に見た場合、表示制御部311、撮影制御部312、爪情報取得部313、印刷データ生成部314、印刷制御部315等を備えている。これら表示制御部311、撮影制御部312、爪情報取得部313、印刷データ生成部314、印刷制御部315等としての機能は、制御部31のCPUと記憶部32のROMに記憶されたプログラムとの協働によって実現される。
【0027】
表示制御部311は、表示部22を制御して表示部22に各種の表示画面を表示させるものである。
例えば、表示制御部311は、爪Tに印刷したいネイルデザインを選択するようユーザに促すデザイン選択画面を表示部22に表示させる。デザイン選択画面にネイルデザインを表示させる場合、ネイルデザインは記憶部32に記憶されているものでもよいし、例えば外部の端末装置やクラウドコンピューティングサービスを提供するサーバ装置等から取得されるものであってもよい。表示制御部311は、デザイン選択画面においてネイルデザインを順次又は一覧に表示部22に表示させることが好ましい。
さらに、表示制御部311は、爪Tの画像に、ユーザが選択したネイルデザインを重畳した画像を表示部22に表示させて、実際の印刷開始前にユーザが仕上がりイメージを確認できるようにし、気に入らない場合にはネイルデザインを選び直すことができるようにしてもよい。
その他、表示制御部311は、ユーザに対する各種メッセージや各種指示等を表示部22に表示させてもよい。
【0028】
撮影制御部312は、撮影部50の撮像装置51及び照明装置52を制御して撮像装置51により、指置部6に載置された印刷指を撮影させ、爪Tの画像を含む爪画像を取得させるものである。
撮影部50により取得された爪画像のデータは記憶部32に記憶されてもよい。
【0029】
また、爪情報取得部313は、印刷指の爪Tの輪郭形状(印刷領域)等、印刷部40によって印刷すべき範囲を特定する。
爪情報取得部313が印刷領域を検出する具体的な手法は特に限定されないが、例えば、爪T及び指(印刷指)と異なる色の下地を塗布した爪Tを撮影して得られた爪画像を解析して下地が塗布されている領域を検出し、印刷領域として設定する。
すなわち、爪Tは、何も塗られていない状態では指等、周囲の皮膚の色と区別がつきづらい。このため、本実施形態では爪Tの表面に予め白色等の下地や白色インクを塗布しておき、爪情報取得部313は、爪画像について輝度や明度、色合い等を解析することにより、下地等の塗られている部分とそれ以外の部分とを区別して認識する。そして、爪情報取得部313は、下地等が塗られている領域を印刷すべき範囲(爪Tの輪郭)として検出する。
なお、爪情報取得部313が印刷指の爪Tについて印刷領域を特定するための情報は、爪画像に限定されない。例えば爪Tの配置されている領域を検出するセンサ等を設けた場合には、当該センサによる検出情報等であってもよい。
また、爪情報取得部313が、取得する情報として爪情報もある。爪情報とは、例えば、爪Tの輪郭(爪形状、爪Tの水平位置のXY座標等)、爪Tの表面の、XY平面に対する傾斜角度(爪Tの傾斜角度、爪曲率)等である。
なお、撮像装置51によって撮影された画像等から爪Tの高さ(爪Tの垂直方向の位置)を取得できる場合には、爪Tの高さも爪情報に含まれる。
爪情報取得部313によって取得された印刷領域を画する輪郭の座標、爪Tの輪郭の座標や曲率等の情報は、記憶部32の爪情報記憶領域322に記憶される。
【0030】
本実施形態において、爪情報取得部313は印刷媒体である爪Tの表面と吐出部である印刷ヘッド41のインク吐出面411との間の距離(
図3等において間隔Sd)に対応する補正レベル情報を取得する補正レベル取得部としても機能する。
印刷装置は、一般に印刷媒体(本実施形態では爪T)の表面を基準面とし、印刷ヘッドのインク吐出面とこの基準面との間の距離(間隔Sd)を一定に保つようにして印刷動作を行う。印刷動作は印刷ヘッドを左右方向に移動させながらインクを吐出させることで行われる。この場合、移動に伴う慣性によってインクが流れ、基準面に斜め方向から着弾する。このとき、左から右に移動しながら吐出されたインク液滴と右から左に移動しながら吐出されたインク液滴とが、どちらも基準面上では正しい位置に着弾するように、インクの吐出タイミング等を調整してインク液滴の着弾位置の補正値が適宜設定され、着弾位置がずれないようにしている。これにより、位置ずれせずに高精細な印刷をすることができるようになっている。
【0031】
この点、本実施形態のネイルプリント装置1は、爪Tのような、一部に曲面を有する印刷媒体に対して印刷を行うものであり、
図3に示すように、印刷媒体である爪Tの曲面の最も高い部分(すなわち爪Tの最も高くなっている部分)に基準面を設定している。
このため、基準面上にインク液滴が着弾する場合には位置ずれせずにほぼ同じ位置に着弾するようになっている。
なお、
図3等において、X方向における左から右への移動を「第1の方向」の移動とし、この「第1の方向」に移動しながら吐出されるインク液滴を以下において「第1のインク液滴Ldp」とする(なお、これを単に「第1の液滴Ldp」、「インク液滴Ldp」ともいう。)。
また、第1の液滴Ldpに対応する、右から左に移動を「第2の方向」の移動とし、この「第2の方向」に移動しながら吐出されるインク液滴を以下において「第2のインク液滴Rdp」とする(なお単に「第2の液滴Rdp」、「インク液滴Rdp」ともいう。)。
【0032】
図3に示すように、「第1の方向」に移動しながら吐出される「第1のインク液滴Ldp」を本来着弾すべき位置(目標とする着弾位置Cp)に着弾するように制御された吐出位置(
図3において実線円で示す)から吐出させ、当該第1の液滴Ldpに対応する、「第2の方向」に移動しながら吐出される「第2のインク液滴Rdp」を本来着弾すべき位置(目標とする着弾位置Cp)に着弾するように制御された吐出位置(
図3において破線円で示す)から吐出させると、基準面上では位置ずれせずにほぼ同じ位置に着弾する。すなわち、第1の液滴Ldpと第2の液滴Rdpとが、ほぼ同じ着弾位置LIp,RIpに重なり合うようになっている。
【0033】
しかし、第1の液滴Ldp及び第2の液滴Rdpは、上記のように基準面において正しい着弾位置Cpに着弾する(すなわち、着弾位置LIp,RIpが着弾位置Cpにほぼ一致する)ように調整されている。
このため、基準面とインク吐出面411との距離が間隔Sdよりも広くなると、
図4に示すように、その分着弾位置LIp,RIpがずれてしまう。すなわち、本来であれば破線で示した目標とする着弾位置Cpに着弾して重なり合うべきインク液滴がそれぞれ異なる着弾位置LIp,RIpに着弾してしまい、両者は重なり合わない。
そしてこの着弾位置LIp,RIpのずれは、
図5に示すように、第1の液滴Ldp及び第2の液滴Rdpの着弾する面が基準面から離れるほど大きくなる。
【0034】
図6に、着弾位置LIp,RIpのずれの程度の一例を示す。
図6では、横軸にインク液滴の着弾する面(着弾面)の基準面からのずれ量(mm)をとり、縦軸に着弾位置LIp,RIpのずれの程度(μm)を示している。
図6において、「0」は、第1の液滴Ldp及び第2の液滴Rdpが着弾する着弾面が丁度基準面にあるときを意味する。この場合には両者の着弾位置にずれはなく、走査方向(X方向)の左右に移動しながらインクを吐出させた場合にほとんど位置ずれのない高精細な印刷を行うことができる
【0035】
しかし、着弾面が基準面から離れるにしたがって着弾位置LIp,RIpのずれが大きくなり、
図6に示す例では、着弾面が基準面から2mm離れるとおよそ40μmのずれが生じている。また、着弾面が基準面から4mm離れるとおよそ80μmのずれが生じている。
例えば600dpiで印刷動作を行う場合、1画素(1ドット)はおよそ42.3μmであり、着弾位置LIp,RIpのずれが40μmとなると、ほぼ1画素分のずれを生じることとなる。また、着弾面が基準面から4mm離れ、着弾位置LIp,RIpのずれが80μmとなると、ほぼ2画素分のずれを生じることとなる。
【0036】
そこで、補正レベル取得部としての爪情報取得部313は、第1の液滴Ldp及び第2の液滴Rdpの着弾位置ずれを解消させるための補正データの補正レベル情報を取得する。本実施形態の印刷装置の印刷媒体である爪Tは、幅方向における表面が弧状の曲面となっている。このため、印刷する位置(インク液滴の着弾予定位置)が爪Tの幅方向のどこであるかにより曲率が異なるため、基準位置(基準面の位置)との距離(間隔Sd)も異なる。具体的には、爪Tの幅方向の端部に行くほど深さが深くなり、基準位置(基準面の位置)との距離(間隔Sd)が離れていく。
補正レベル情報は、どの位置に印刷する場合にどの程度補正する必要があるかを対応付ける情報である。
本実施形態では、後述するシングリングデータ生成部316がシングリングデータを生成する際に左右方向の着弾位置ずれを解消するための補正を行うようになっており、補正レベル情報は、シングリングデータ生成部316においてデータ生成の際に参照される。
【0037】
図7(a)は、補正レベル分けの一例を示す爪の模式図であり、
図7(b)は、
図7(a)に示す補正レベル分けに従った場合の補正レベル取得部としての爪情報取得部が取得する補正レベル情報に応じた補正データによる補正例を示す説明図である。
図7(b)では、
図7(a)に示すような補正レベル分けを行った爪Tの横方向に、爪Tの幅方向のデータの配列を示し、縦方向に基準面からのインク液滴の着弾面の距離(間隔Sd)を模式的に示している。図示例では50画素分のデータ(丸囲み数字1~50と示す)が爪Tの爪幅方向の1ラインに印刷されるデータとして用意されている。
図7(b)において、細線丸囲みの数字は、印刷ヘッド41が左から右に移動(「第1の方向」の移動)しながら吐出されるインク液滴(「第1のインク液滴Ldp」)の印刷データを意味し、太線丸囲みの数字は、印刷ヘッド41が右から左に移動(「第2の方向」の移動)しながら吐出されるインク液滴(「第2のインク液滴Rdp」)の印刷データを意味する。
なお、ここでは、印刷ヘッド41が左から右に移動(「第1の方向」の移動)しながら吐出させるインク液滴(「第1のインク液滴Ldp」)の着弾位置を基準とし、印刷ヘッド41が右から左に移動(「第2の方向」の移動)しながら吐出させるインク液滴(「第2のインク液滴Rdp」)の印刷データのみを第1のインク液滴Ldpの着弾位置に合うように補正する場合を例示する。
【0038】
例えば
図7(a)及び
図7(b)において「CASE3」は爪Tの幅方向の中央部付近における処理を意味する。
「CASE3」において示す領域では、インク液滴の着弾面と基準面とがほぼ一致している。このような領域では、「第1の方向」に移動しながらインク液滴(「第1のインク液滴Ldp」)が吐出された後、特に補正することなく(本来の印刷位置からずらすことなく)「第2の方向」に移動しながらインク液滴(「第2のインク液滴Rdp」)を吐出させる。補正を行わなくても「第1のインク液滴Ldp」と「第2のインク液滴Rdp」とは同じ着弾位置に重なって着弾し、位置ずれを生じない。
【0039】
また例えば
図7(a)及び
図7(b)において「CASE2」及び「CASE4」において示す領域は爪Tの幅方向の「CASE3」に隣接する領域であり、爪の湾曲形状により、着弾面が基準面よりも低くなっている領域における処理を意味する。
「CASE2」及び「CASE4」において示す領域では、インク液滴の着弾面が基準面よりも2mm程度離れている。このような領域では、着弾面が爪Tの高さ方向に深くなった分、「第2のインク液滴Rdp」を吐出させる印刷データとして本来の印刷位置から1画素分先の印刷データを吐出させるようにデータを補正する。
これにより、基準面においては1画素分のずれを生じているように見えるが、実際にインク液滴Ldp,Rdpが着弾する基準面よりも2mm深い位置(着弾面)では、「第2のインク液滴Rdp」が「第1のインク液滴Ldp」と重なる位置に着弾し、位置ずれのない状態となる。
【0040】
また例えば
図7(a)及び
図7(b)において「CASE1」及び「CASE5」は爪Tの幅方向の端部に位置する領域であり、爪の湾曲が最も大きく、着弾面が基準面よりも最も低くなっている領域における処理を意味する。
「CASE1」及び「CASE5」において示す領域では、インク液滴の着弾面が基準面よりも4mm程度離れている。このような領域では、着弾面が爪Tの高さ方向に深くなった分、「第2のインク液滴Rdp」を吐出させる印刷データとして本来の印刷位置から2画素分先の印刷データを吐出させるようにデータを補正する。
これにより、基準面においては2画素分のずれを生じているように見えるが、実際にインク液滴Ldp,Rdpが着弾する基準面よりも4mm深い位置(着弾面)では、「第2のインク液滴Rdp」が「第1のインク液滴Ldp」と重なる位置に着弾し、位置ずれのない状態となる。
【0041】
なお、このように、爪Tの端部ではインク液滴の着弾面が基準面より大きく下がっているため、上記のように2画素先のデータを吐出させるとした場合、爪Tの最端部において印刷すべきデータが足りなくなるおそれがある。
そこで、予め、爪Tの輪郭を爪幅方向に2画素分広げて印刷すべきデータを用意しておくことが好ましい。これにより、2画素分ずつ先のデータをずらしながら印刷を行っても爪Tの最端部において印刷すべきデータが足りなくなることがない。
【0042】
上記のような補正を行うための補正レベル情報を爪情報取得部313が取得する手法は特に限定されない。
例えば爪情報取得部313は、爪幅の情報から補正レベルを取得してもよい。
すなわち、爪情報取得部313は爪画像から爪幅Wを取得することができる。そこで、爪幅Wに応じて爪Tを幅方向において複数の領域に分割し、各領域に補正レベルを対応付けてもよい。
【0043】
図8に示すように、爪幅Wが検出されると、一般的な人の爪の形状傾向や各種の統計データ等から、例えば幅広の爪であれば中央部のある程度広い領域が比較的湾曲の少ない平坦な領域であり、端部側の何%程度の湾曲が強い等、ある程度の傾向を推測することができる。このため、爪幅Wに応じて、補正レベルの領域分けをデフォルトで予め決めておいてもよい。
この場合、各補正レベルに対応する爪Tの深さレベル及び各深さレベルにおけるずらしレベルを設定したテーブルを用意しておくことが好ましい
【0044】
図9(a)にテーブルの構成例を示す。
例えば比較的平坦で補正のいらない領域と、補正の必要な領域とを分けた場合に、
図9(a)では補正の必要な領域をさらに「補正レベル1」と「補正レベル2」にレベル分けする場合を例示している。
また
図9(b)では、「補正レベル1」と「補正レベル2」における具体的な深さレベルの例と、各場合のずらしレベルの例を示している。深さレベルとは、印刷しようとしている箇所におけるインク着弾位置の基準面からの距離である。基準面から離れるほど左右の位置ずれを生じやすく、補正を行う量(ずらし量)を上げる必要がある。
図9(b)に示す例では、「補正レベル1」の場合、深さレベルは2mmで、補正で画素をずらすべきずらし量は1画素分となり、「補正レベル2」の場合、深さレベルは4mmで、補正で画素をずらすべきずらし量は2画素分となる場合を示している。
【0045】
なお、補正レベルは、補正無しと「補正レベル1」、「補正レベル2」の3つの段階に分けられる場合に限定されない。例えばより細かく領域を分けてそれぞれの補正レベルを変えてもよい。また、補正を行うか行わないかの2段階に分割してもよい。
【0046】
また、より正確に補正レベルを分けるために、例えば、爪情報取得部313が撮影部50によって取得された爪画像等に基づいて爪幅方向の曲面形状を取得し、取得された曲率に応じて爪のパターンを複数段階に分け、各爪パターンごとに補正レベルを対応付けてもよい。
例えば
図10(a)~
図10(c)では、3種類のパターンの爪Tを例示している。
図11は、
図10(a)~
図10(c)において示した爪パターンごとの補正レベルの各領域の例を示したものである。なお、
図11における分類で使用した1~50の数値は、爪幅方向に50画素分のデータが用意されている
図7の例にならっている。
【0047】
図10(a)は、全体がなだらかに傾斜した円弧状であり、爪幅方向の中央部に平坦な部分が少ない。この場合には「補正レベル0(すなわち補正無し)」、「補正レベル1」、「補正レベル2」の各領域が均等に近い配分で分割される。
他方
図10(b)は、爪幅方向の中央部の広い範囲が平坦な部分となっており、両端部が大きく落ち込んでいる。この場合には、「補正レベル0(すなわち補正無し)」の領域が広く、「補正レベル1」の領域が少なく、大きく補正する必要のある「補正レベル2」の領域が両端部に設けられる。
また
図10(c)は、全体に平坦で大きく湾曲している領域が少ない。この場合には、「補正レベル0(すなわち補正無し)」の領域が広く、「補正レベル2」の領域がほとんどない。
【0048】
ネイルプリント装置1において、爪Tの曲率に応じた曲面補正を行う場合、曲面補正のレベルを決定するための参照データとしてこのようなテーブルを有している場合もある。この場合には曲面補正用に用意されている参照テーブルを、シングリングデータを生成するための補正レベルを設定するための参照テーブルとして兼用して参照してもよい。
なお、爪パターンを分類するテーブルはここに例示した3種類に限定されず、これより多くても少なくてもよい。また、
図9(a)及び
図9(b)で示した補正レベルの領域を決定するための参照テーブルとして
図11に示すテーブルに、
図10(a)~
図10(c)で示した爪パターンのいずれか1つに関するテーブルを備えていてもよい。例えば一般的な爪Tに多い形状の爪パターンを1つ登録しておいてもよい。また、ユーザが複数提示された爪パターンの中から自分の爪Tに最も近いと思うものを選んで装置に登録すると、これが
図11のような参照テーブルとして登録されてもよい。
【0049】
なお、
図9(a)及び
図9(b)で示したテーブルや
図10(a)~
図10(c)で示したテーブルを用いてシングリングデータを生成した場合には、選択されたテーブルにユーザ名と指種等を対応付けて記憶させてもよい。
このようにすることで、同じユーザの同じ指の爪Tに印刷を行う際には同じテーブルを用いて同様の処理を行うことにより、補正レベルを取得する処理時間を省いて迅速かつよりユーザの爪Tに適したシングリングデータを生成することができる。
【0050】
印刷データ生成部314は、爪情報取得部313によって取得された爪Tの輪郭形状等に対応して印刷データを生成する。
具体的には、印刷データ生成部314は、爪情報取得部313により爪Tの輪郭、領域が設定(特定)されると、当該爪Tの領域に合わせてネイルデザインデータ(元データ)を切り出し、適宜形状やサイズ等を調整して合わせ込み、印刷データを生成する。
また、爪情報取得部313によって、爪Tの曲率等の爪情報が検出された場合には、印刷データ生成部314は、これら爪情報も加味して、曲面補正等適宜必要な補正等を行い、ネイルデザインデータ(元データ)から印刷部40が印刷領域に印刷を行うための印刷データを生成する。
【0051】
印刷制御部315は、印刷部40のヘッド移動機構49(ヘッド移動機構49を構成するX方向移動モータ46及びY方向移動モータ48等)、吐出部である印刷ヘッド41等を制御する制御部である。
本実施形態の印刷制御部315は、シングリングデータ生成部316及び吐出制御部317を含んでいる。
【0052】
シングリングデータ生成部316は、補正レベル取得部である爪情報取得部313により取得された補正レベル情報に基づいて、印刷ヘッド41の吐出制御を行うための印刷情報を生成する印刷情報生成部である。シングリングデータ生成部316は、印刷データ生成部314によって生成された印刷データについて、印刷ヘッド41による走査ごとに主走査1ライン分のデータ(シングリングデータ)を生成する。
本実施形態では、シングリングデータ生成部316は、補正レベル取得部としての爪情報取得部313によって取得された印刷対象の爪Tの補正レベル情報を参照して、補正が必要なデータについて適宜補正を行い、印刷位置に応じたシングリングデータを生成する。
なお、具体的なシングリングデータの生成方法については後述する。
【0053】
吐出制御部317は、シングリングデータ生成部316によって生成されたデータ(印刷データに基づくシングリングデータ)にしたがって印刷媒体である爪Tの表面にネイルデザインを印刷するように印刷部40の吐出部である印刷ヘッド41の吐出制御を行う。
なお、印刷制御部315による具体的な印刷処理については後述する。
【0054】
次に、
図12及び
図13を参照しつつ、本実施形態のネイルプリント装置1の印刷方法について説明する。
図12は、本実施形態における印刷処理の概要を示すフローチャートである。
【0055】
本実施形態のネイルプリント装置1の電源がONとなると、例えば表示部22にネイルデザインを選択するよう指示するメッセージ等が表示される。ユーザは、操作部21やタッチパネル等を操作することで爪Tに印刷するネイルデザインを選択する。
これにより、操作信号が制御装置30に送られ、
図12に示すように、所望のネイルデザインが爪Tに印刷するネイルデザインとして選択される(ステップS1)。
【0056】
ユーザによってネイルデザインが選択されると、制御部31(表示制御部311)は、印刷したい爪Tに下地(又は白色が含まれる場合には白色インク)を塗布した上で、当該爪T(及びその印刷指)をネイルプリント装置1の指置部6内に挿入するよう指示する指示画面を表示部22に表示させてユーザに印刷指をセットするように促す。
印刷指が指置部6にセットされると、制御部31は、印刷指の爪を含む印刷指を撮影部50により撮影させ、爪画像を取得する(ステップS2)。
【0057】
爪画像が取得されると、爪情報取得部313は当該爪画像について画像解析を行い、当該爪Tの輪郭形状(印刷領域)を特定する。具体的には爪情報取得部313は、印刷領域を画する輪郭のXY座標を取得する(ステップS3)。
また、爪情報取得部313は、当該爪画像に基づいて爪Tの曲率等その他の爪情報を取得する。
【0058】
さらに、爪情報取得部313は、補正レベル取得部として当該爪Tの補正レベル情報を取得する。例えば爪Tの曲率や爪幅等の爪情報に基づいて印刷対象である爪が
図10(a)~
図10(c)に示すいずれの爪パターンに近いかを判断し、
図11のうちから対応する爪パターンの補正レベルの領域分けを読み出し、さらに、各補正レベルにおけるずらしレベルを取得する。これにより、爪情報取得部313は、爪Tのどの位置を印刷する際に何画素ずらすか等の補正レベル情報を取得する。
【0059】
爪情報取得部313によって取得された印刷領域の輪郭のXY座標や爪先側端部のY座標Na1、付根側端部のY座標Nb1、その他各種の情報は爪情報記憶領域322に記憶される。爪情報取得部313によって各種の爪情報が取得されると、印刷データ生成部314がネイルデザインを印刷領域に合わせ込み、適宜補正等を行って印刷データを生成する(ステップS4)。
印刷データが生成されると、シングリングデータ生成部316が、印刷データに基づいて、シングリングデータを生成する(ステップS5)。
【0060】
具体的には、
図13に示すように、シングリングデータ生成部316は、まず、次に予定されている印刷が、主走査方向を右から左に向かう方向(すなわち「第2の方向」)の印刷であるか否かを判断する(ステップS11)。
本実施形態では、主走査方向を左から右に向かう方向(すなわち「第1の方向」)の印刷を基準とする。このため、当該移動方向における印刷の場合には補正を行わずに固定とし、これに対応する逆側(すなわち「第2の方向」)の印刷についてのみ「第1の方向」の印刷で吐出され着弾したインク液滴と同じ位置にインク液滴が着弾するように補正を行う。
このため、印刷が、主走査方向を右から左に向かう方向(「第2の方向」)の印刷でない場合(すなわち「第1の方向」の印刷である場合、ステップS11;NO)には、当該印刷位置に相当する画像データをそのまま(補正せずに)シングリングデータとしてセットし(ステップS12)、シングリングデータ生成処理を終了する。
【0061】
他方、印刷が、主走査方向を右から左に向かう方向(「第2の方向」)の印刷である場合(ステップS11;YES)には、シングリングデータ生成部316は、当該印刷における印刷位置の爪深さni(又は印刷高さhi)を取得する(ステップS13)。
そして、爪深さniが補正レベル1に対応付けられている深さレベル「深さ1」と同じかこれよりも大きいか否かを判断する(ステップS14)。爪深さniが「深さ1」よりも小さい場合(ステップS14;NO)には、補正が不要な場合であり、シングリングデータ生成部316は、当該印刷位置に相当する画像データをそのまま(補正せずに)シングリングデータとしてセットし(ステップS12)、シングリングデータ生成処理を終了する。
【0062】
他方、爪深さniが「深さ1」と同じかこれよりも大きい場合(ステップS14;YES)には、さらに、爪深さniが補正レベル2に対応付けられている深さレベル「深さ2」と同じかこれよりも大きいか否かを判断する(ステップS15)。爪深さniが「深さ2」よりも小さい場合(ステップS15;NO)には、補正レベル1が適用され、シングリングデータ生成部316は、ずらし量1画素分、先の画像データをシングリングデータとしてセットし(ステップS16)、シングリングデータ生成処理を終了する。
【0063】
一方、爪深さniが「深さ2」と同じかこれよりも大きい場合(ステップS15;YES)には、補正レベル2が適用され、シングリングデータ生成部316は、ずらし量2画素分、先の画像データをシングリングデータとしてセットし(ステップS17)、シングリングデータ生成処理を終了する。
【0064】
図12に戻り、シングリングデータが生成され、セットされると、印刷制御部315の吐出制御部317は、当該シングリングデータに基づいて吐出部である印刷ヘッド41からインクを吐出させ、印刷を行うよう、印刷ヘッド41の吐出制御を行う(ステップS6)。制御部31は、当該爪Tについての全画像データについて処理が終了したか否かを判断し(ステップS7)、処理が終了していない場合(ステップS7;NO)には、ステップ5に戻り、処理を繰り返す。
他方全画像データについて処理が終了している場合(ステップS7;YES)には、印刷処理を終了する。
【0065】
以上のように、本実施形態によれば、一部に曲面を有する印刷媒体である爪Tに対して第1の方向(例えば左から右)に移動しながら第1の液滴を吐出させるとともに、この第1の方向と逆向きの第2の方向(例えば右から左)に移動しながら爪Tに対して第1の液滴に対応する第2の液滴を吐出させる吐出部としての印刷ヘッド41と、爪Tと印刷ヘッド41(印刷ヘッド41のインク吐出面411)との間の距離に対応する補正レベル情報を取得する補正レベル取得部としての爪情報取得部313と、印刷ヘッド41が第1の方向に移動しながら吐出した第1の液滴の爪Tへの着弾位置と、印刷ヘッド41が第2の方向に移動しながら吐出した第2の液滴の着弾位置とが略一致するように、爪情報取得部313により取得された補正レベル情報に基づいて、印刷ヘッド41による第1の液滴の吐出及び印刷ヘッド41による第2の液滴の吐出のうち少なくともいずれか一方の吐出制御を行う吐出制御部317と、を有している。
このため、左右方向(爪幅方向)に往復しながら爪Tに印刷を行う場合に左右方向でインク液滴の着弾位置がずれるのを防ぐことができ、高精細な画像形成を可能とする。
【0066】
また本実施形態では、吐出制御部317は、印刷ヘッド41が第1の方向(例えば左から右)に移動しながら吐出した第1の液滴の爪Tへの着弾位置に、印刷ヘッド41が第2の方向(例えば右から左)に移動しながら吐出した第2の液滴の着弾位置が略一致するように、爪情報取得部313により取得された補正レベル情報に基づいて、印刷ヘッド41による第2の液滴の吐出のみを制御する。
このように、印刷ヘッド41が第2の方向(例えば右から左)に移動しながら吐出した第2の液滴の着弾位置のみを補正することにより、演算処理の負担が軽減され、処理時間を短くすることができるとともに、制御装置30を比較的簡易な構成とすることができる。
【0067】
また本実施形態では、吐出制御部317は、第1の液滴に対応する第1印刷データと第2の液滴に対応する第2印刷データとを参照して印刷ヘッド41による第1の液滴及び第2の液滴の吐出制御を行い、吐出制御部317は、印刷ヘッド41が吐出した第1の液滴の爪Tへの着弾位置と印刷ヘッド41が吐出した第2の液滴の爪Tへの着弾位置とが略一致するように、第1の液滴に対応する第1印刷データ又は第2の液滴に対応する第2印刷データを爪情報取得部313により取得された補正レベル情報に基づいて変更する。
例えば左右方向での着弾位置ずれをインクの吐出タイミングを変えて行おうとする場合、爪幅の端部等において他の部分よりも1画素分、2画素分早く吐出させる高周波対応をする必要がある。この点、本実施形態では印刷データ自体を補正して着弾位置の調整を行う。このため、高周波対応を行う制御の必要がなく、左右方向で着弾位置がずれるのを回避する処理を簡易に行うことができる。
【0068】
また本実施形態では、吐出制御部317は、印刷ヘッド41が第1の液滴の爪Tへの着弾位置に第2の液滴が略一致するように、第2の液滴に対応する第2印刷データを、爪情報取得部313により取得された補正レベル情報に基づいて変更する。
このように、印刷ヘッド41が第2の方向(例えば右から左)に移動しながら吐出した第2の液滴の着弾位置のみを補正することにより、演算処理の負担が軽減され、処理時間を短くすることができるとともに、制御装置30を比較的簡易な構成とすることができる。
【0069】
また本実施形態では、第1印刷データは、爪Tと印刷ヘッド41(印刷ヘッド41のインク吐出面411)との間の基準距離Sdに基づいて、第1のインクの吐出すべきタイミングが印刷画素毎に決定された印刷データであり、第2印刷データは、爪Tと印刷ヘッド41(印刷ヘッド41のインク吐出面411)との間の基準距離Sdに基づいて、第2のインクの吐出すべきタイミングが印刷画素毎に決定された印刷データであり、吐出制御部313は、爪情報取得部313により取得された補正レベル情報に基づいて、第1印刷データによる第1の液滴又は第2印刷データによる第2の液滴の吐出すべきタイミングを1画素分以上ずらすようになっている。
例えば左右の着弾位置が40μm程度ずれると、ほぼ1画素分のずれを生じ、この場合には人の目でもずれを目視することのできるレベルとなる。
この点吐出のタイミングを1画素以上ずらすことで着弾位置ずれによる印刷品質の低下を防止することができる。
【0070】
また、本実施形態では、爪情報取得部313は、爪Tを幅方向に複数領域に分けて各領域毎に補正レベルを対応付けた参照用データから補正レベル情報を取得してもよい。
この場合には、補正レベル情報を容易かつ迅速に取得することができ、演算処理の負担を軽減することができる。
【0071】
また、この場合、参照用データは、例えば爪Tを幅方向に複数領域に分けて各領域毎に補正レベルを対応付けたテーブルである。参照用データは、爪Tの曲面の曲率の程度に応じて複数種類用意されていてもよい。
このようにすることで、よりユーザの爪Tに即した補正レベル情報を取得することができ、適切な補正を行うことができる。
【0072】
また、本実施形態では、吐出制御部317は、補正レベル情報に基づいて、印刷ヘッド41から本来液滴を吐出させるべき吐出位置よりも印刷ヘッド41の移動方向手前側から液滴を吐出させるように印刷ヘッド41の吐出制御を行ってもよい。
このようにすることで印刷位置ずれをも解消することが可能となる。
【0073】
[第2の実施形態]
次に
図14を参照しつつ、本発明が印刷装置であるネイルプリント装置1と端末装置8とで構成される印刷システム100である場合を第2の実施形態として説明する。
【0074】
図14は、本実施形態における印刷システムの要部構成を示すブロック図である。
図14に示すように、本実施形態の印刷システム100は、ネイルプリント装置1と端末装置8とで構成される。ネイルプリント装置1は、制御構成の他は第1の実施形態とほぼ同様の構成を備えるものである。このため、本実施形態では、特に第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0075】
また、
図14に示すように、本実施形態の印刷システム100を構成するネイルプリント装置1は、操作部22、通信部14、印刷部40、撮影部50と、制御部31aや記憶部32を備える制御装置30a等を備えている。
なお、操作部21、印刷部40及び撮影部50については第1の実施形態で示した印刷部40及び撮影部50と同様であるため、同一の箇所には同一の符号を付して説明を省略する。
なお、本実施形態では端末装置8側のみに表示部85を備えている場合を例示するが、本実施形態においてもネイルプリント装置1が表示部を備えていてもよい。この場合、ネイルプリント装置1の表示部と端末装置8側の表示部85とはともに端末装置8の制御装置30aの制御にしたがって同じ内容の表示を行ってもよいし、それぞれの制御装置30,30aの制御にしたがって互いに異なる内容の表示を行うようにしてもよい。
【0076】
本実施形態のネイルプリント装置1が備えている通信部14は、端末装置8との間で通信可能な無線通信モジュール等を備えており、情報の送受信が可能に構成されたものである。
ネイルプリント装置1と端末装置8との間での通信は、例えばインターネット等のネットワーク回線を使うものであってもよいし、例えばBluetooth(登録商標)やWi-Fi等の近距離無線通信規格に基づく無線通信を行うものであってもよい。ネットワークを介して通信を行う場合、通信に用いるネットワークはどのような回線を利用するものでもよい。また、ネイルプリント装置1と端末装置8との間の通信は無線に限定されず、有線接続により両者間で各種データの送受信が可能な構成としてもよい。
なお、通信部14は、端末装置8との間で通信を行うことのできるものであればよく、端末装置8の通信部86の通信規格と合致するものが適用される。
通信部14は、制御装置30の通信制御部316に接続され、該通信制御部316によって制御される。
【0077】
通信制御部316は、通信部14の動作を制御するものである。本実施形態では、端末装置8との間での通信を制御し、端末装置8から印刷データ等が送信された場合にこれを受信する。
なお、その他ネイルプリント装置1の構成については第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0078】
本実施形態の印刷システム100を構成する端末装置8は、操作部84、表示部85、通信部86、制御装置80等を備えている。
端末装置8は、例えばスマートフォン等の携帯端末装置である。なお、端末装置8はスマートフォンに限定されない。例えばタブレット型のパーソナルコンピュータ(以下において「PC」とする。)やノート型のPC、据置型のPC、ゲーム用の端末装置等であってもよい。
【0079】
操作部84は、ユーザの操作に応じて各種の入力・設定等を行うことができるようになっており、操作部84が操作されると、当該操作に対応する入力信号が制御部81に送信される。なお、本実施形態では表示部85の表面にタッチパネルが一体的に設けられており、ユーザはタッチパネルへのタッチ操作によっても各種の入力・設定等の操作を行うことができるようになっている。
表示部85に構成されているタッチパネルは、後述する表示制御部812の制御にしたがって各種の表示画面を表示させる。
なお、各種の入力・設定等の操作を行う操作部84はタッチパネルである場合に限定されない。例えば各種の操作ボタンやキーボード、ポインティングデバイス等が操作部84として設けられていてもよい。
【0080】
本実施形態では、ユーザが操作部84を操作することで、端末装置8からネイルプリント装置1に対して印刷開始等の各種指示が出力されるようになっており、端末装置8はネイルプリント装置1の操作部としても機能する。
また、ユーザが操作部84を操作することで、爪Tに印刷するネイルデザインを選択すること等ができるようになっている。
【0081】
表示部85は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のフラットディスプレイ等で構成されている。
なお、表示部85の表面に各種の入力を行うためのタッチパネルが一体的に構成されていてもよい。この場合には、タッチパネルが操作部84として機能する。
本実施形態では、ユーザが操作部71から入力・選択したネイルデザインや、各種の案内画面、警告表示画面等が表示部85に表示可能となっている。
【0082】
通信部86は、ネイルプリント装置1に対して印刷データを送信することが可能となっている。また、ネイルプリント装置1から爪画像や爪画像の解析結果である印刷領域等の各種データが送信されたときには、通信部86はこれを受信する。通信部86は、ネイルプリント装置1の通信部14との間で通信可能な無線通信モジュール等を備えている。
なお、前述のように、ネイルプリント装置1と端末装置8との間での通信は、相互にデータを送受信可能なものであればよく、通信部86としては、ネイルプリント装置1の通信部14の通信規格と合致するものが適用される。
【0083】
図14に示すように、本実施形態の端末装置8の制御装置80は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成される制御部81と、図示しないROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等で構成される記憶部82とを備えるコンピュータである。
記憶部82を構成するROMとしては、例えばNAND FLASHメモリ等の不揮発性記憶素子のフラッシュメモリを適用することができる。また、RAMとしては例えばDDR等のメモリチップを適用することができる。
【0084】
記憶部82には、端末装置8の各部を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的には、本実施形態のROM等で構成されるプログラム記憶領域821には、端末装置8の各部を統括制御するための動作プログラム821aの他、ネイルプリント装置1を用いたネイルプリントを行うためのネイルプリントアプリケーションプログラム821b(以下「ネイルプリントAP」とする。)等の各種プログラムが格納されており、制御装置80がこれらのプログラムを例えばRAMの作業領域に展開して実行することによって、端末装置8が制御されるようになっている。
また、本実施形態の記憶部82には、ネイルデザインのデータを格納するデザイン記憶領域822、ネイルプリント装置1から爪Tの画像(爪画像)や爪画像の解析結果である印刷領域(すなわち爪画像中、下地が塗布された領域を特定した情報)、爪Tの位置・範囲の情報(爪情報)等が送られた場合にこれらを格納する爪情報記憶領域823等が設けられている。
なお、デザイン記憶領域822に格納されるネイルデザインは、予め用意された既存のデザインであってもよいし、ユーザが自ら作成したデザインであってもよい。また、図示しない外部のネットワーク等から適宜取得されたものであってもよい。
【0085】
端末装置8の制御部81は、機能的に見た場合、通信制御部811、表示制御部812、爪情報取得部813、印刷データ生成部814等を備えている。これら通信制御部811、表示制御部812、爪情報取得部813、印刷データ生成部814等としての機能は、制御部81のCPUと記憶部82のプログラム記憶領域821に記憶されたプログラムとの協働によって実現される。なお、端末装置8の制御部81が備える機能はこれに限定されず、その他各種の機能部を備えていてもよい。
【0086】
通信制御部811は、通信部86の動作を制御するものである。本実施形態では、ネイルプリント装置1との間での通信を制御し、ネイルプリント装置1に対して各爪Tの印刷領域に対応した印刷データ等を送信する。なお、ネイルプリント装置1側から爪画像や爪情報のデータ等が送信された場合には、通信制御部811は通信部86を制御して、これを受信させる。
【0087】
表示制御部812は、表示部85を制御して表示部85に各種の表示画面を表示させるものである。
本実施形態では、表示制御部812は、例えばユーザに爪Tに印刷したいネイルデザインを選択するよう促すデザイン選択画面を表示部85に表示させる。デザイン選択画面を表示させる場合、表示制御部812はデザイン記憶領域822に記憶されているネイルデザインを順次又は一覧に表示部85に表示させることが好ましい。
さらに、表示制御部812は、爪Tの画像に、ユーザが選択したネイルデザインを重畳した画像を表示部72に表示させて、実際の印刷開始前に仕上がりイメージをユーザが確認できるようにし、気に入らない場合にはネイルデザインを選び直すことができるようにしてもよい。
その他、表示制御部812は、ユーザに対するメッセージや各種指示等を表示部85に表示させてもよい。
【0088】
爪情報取得部813は、ネイルプリント装置1の撮影部50によって取得された爪画像を画像解析することにより爪Tの輪郭形状(印刷領域)や爪Tの曲率等、各種の爪情報を検出するものである。
すなわち、本実施形態では、ネイルプリント装置1の撮影部50により印刷前の爪Tを含む印刷指が撮影され、爪画像が取得されると当該爪画像のデータが端末装置8側に通信部86をして送信されるようになっている。爪情報取得部813は、この爪画像から下地等の塗られた領域を爪Tの輪郭形状(印刷領域)として検出する。
【0089】
また、本実施形態では、爪情報取得部813は、印刷データの補正レベルを決めるための補正レベル情報を取得する補正レベル取得部としても機能する。
なお、記憶部82には、爪情報取得部813が補正レベル情報を取得するための各種テーブル等(第1の実施形態における
図9(a)、
図9(b)及び
図11参照)が記憶されていてもよい。この場合には爪情報取得部813は適宜テーブルを参照しつつ補正レベル情報を取得する。
爪情報取得部813によって爪の輪郭形状(印刷領域)が特定され、各種の爪情報、補正レベル情報等が検出されると、通信制御部811は、これらの情報をネイルプリント装置1側に送信する。
なお、爪情報取得部813が補正レベル取得部として補正レベル情報を取得する手法は第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0090】
印刷データ生成部814は、爪Tの輪郭形状(印刷領域)が検出されると、当該印刷領域に対応するようにネイルデザインデータ(元データ)を切り抜き、印刷領域に合わせ込んで印刷データを生成する。
また、本実施形態では、爪画像解析部313によって爪情報が検出され、当該検出結果が、通信部14,86を介して端末装置8に送られるようになっている。
爪情報は、具体的には爪Tの形状(爪Tの輪郭形状)や爪Tの曲率等であり、印刷データ生成部813は、こうした爪情報も加味して、曲面補正等適宜必要な補正等を行い、ネイルデザインデータ(元データ)からネイルプリント装置1の印刷部40が印刷領域に印刷を行うための印刷データを生成する。
【0091】
印刷データ生成部813によって生成された印刷データは、通信部14,86を介してネイルプリント装置1側に送信され、印刷データに基づくネイルデザインの印刷が、ネイルプリント装置1の印刷ヘッド41によって印刷指の爪Tに対して行われる。
【0092】
次に
図15を参照しつつ、本実施形態の印刷システム100の作用について説明する。
本実施形態のネイルプリント装置1を用いてネイルプリントを行う場合には、ユーザは、ネイルプリント装置1の操作部21等を操作して電源を入れ起動させる。
また、端末装置8についても電源を入れて端末装置8の操作部84からネイルプリント処理の実行を選択する。これによりネイルプリントAP821bが起動する。
ネイルプリントAP821bが起動すると、端末装置8の表示制御部812は表示部85にネイルデザインの一覧と所望のデザインを選択するよう指示するメッセージ等を表示させる。次にユーザは、タッチパネル、その他の操作部84を操作することで爪Tに印刷するネイルデザインを選択する。
これにより、操作信号が制御装置80に送られ、
図15に示すように、所望のネイルデザインが爪Tに印刷するネイルデザインとして選択される(ステップS21)。
【0093】
ユーザによってネイルデザインが選択されると、その旨が端末装置8からネイルプリント装置1に送信される(ステップS22)。ネイルプリント装置1の制御部31は、撮影部50によって印刷指を撮影し、爪画像を取得する(ステップS23)。
そして制御部31は、取得された爪画像のデータを端末装置8に送信する(ステップS24)。
【0094】
爪画像のデータを受けた端末装置8では、爪情報取得部813が各種爪情報を取得するとともに、補正レベル情報を取得する(ステップS25)。
そして印刷データ生成部814が、選択されたネイルデザインを印刷領域に合わせ込み、当該印刷指の爪Tの印刷領域に対応する印刷用の画像データを生成する(ステップS26)。
端末装置8で取得された爪情報等や補正レベル情報、端末装置8で生成された印刷データはネイルプリント装置1に送信される(ステップS27)。
ネイルプリント装置1では、補正レベル情報を参照して適宜補正を行いつつ1ラインごとのシングリングデータが生成され(ステップS28)、これに基づいて印刷が行われる(ステップS29)。
制御部31aは、当該爪Tについての全画像データについて処理が終了したか否かを判断し(ステップS30)、処理が終了していない場合(ステップS30;NO)には、ステップ28に戻り、処理を繰り返す。
他方全画像データについて処理が終了している場合(ステップS30;YES)には、印刷処理を終了する。
【0095】
なお、その他の点については、第1の実施形態と同様であることから、その説明を省略する。
【0096】
以上のように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得られる他、以下の効果を得ることができる。
すなわち、本実施形態では、補正レベル情報の取得や印刷データの生成等を端末装置8側で行うことができる。これにより、ネイルプリント装置1の制御部31をとり簡易なものとすることができる。
また、高精度の演算処理を行うことが可能であり、演算速度も速くなるため、より迅速かつ高精度の印刷処理を行うことが期待できる。
【0097】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0098】
例えば、本記実施形態では、
図16等に示すように、左から右に移動する第1の方向への移動の際の第1のインク液滴のインク吐出を固定とし、右から左に移動する第2の方向への移動の際の第2のインク液滴のインク吐出のみを第1のインク液滴のインク吐出に合わせるように補正する場合を例示したが、
図17に示すように、左右いずれの方向に移動する場合にもそのインク吐出を補正して両者の着弾位置を合わせるようにしてもよい。
この場合には、R2Lの移動時において深さレベルが深さ2である場合には、画像を1画素分早くずらす補正を行う。また、L2Rの移動時においては、深さレベルが深さ1,2にいずれのときにも、画像を-1する補正を行う。
このように左右方向の移動のいずれの場合にも補正を行うことで、一方向の移動の場合を固定とする場合と比べて、爪Tの端部側の画像のずれが減少する効果を得ることができる。なお、右から左に移動する第2の方向への移動の際の第2のインク液滴のインク吐出を固定とし、左から右に移動する第1の方向への移動の際の第1のインク液滴のインク吐出のみを第2のインク液滴のインク吐出に合わせるように補正するようにしてもよいことは勿論である。
【0099】
また、本実施形態で述べた左右方向の着弾位置ずれを解消する補正を行った上で、さらに、
図18に示すように、基準面から離れた爪Tの端部側に行くほど印刷画像のデータを本来の位置よりも早い位置で打つ補正を行ってもよい。
すなわち、L2R時の印刷範囲を仮想的に左側にずらしてデータを打つようにする。また同様に、R2L時の印刷範囲を仮想的に右側にずらしてデータを打つようにする。これにより、爪Tの端部側では印刷範囲が仮想的に広がった状態となり、爪Tの端部まで塗残しのないきれいな印刷に仕上げることができる。
【0100】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
一部に曲面を有する印刷媒体に対して第1の方向に移動しながら第1の液滴を吐出させるとともに、前記第1の方向と逆向きの第2の方向に移動しながら前記印刷媒体に対して前記第1の液滴に対応する第2の液滴を吐出させる吐出部と、
前記印刷媒体と前記吐出部との間の距離に対応する補正レベル情報を取得する補正レベル取得部と、
前記吐出部が前記第1の方向に移動しながら吐出した前記第1の液滴の前記印刷媒体への着弾位置と、前記吐出部が前記第2の方向に移動しながら吐出した前記第2の液滴の着弾位置とが略一致するように、前記補正レベル取得部により取得された前記補正レベル情報に基づいて、前記吐出部による前記第1の液滴の吐出及び前記吐出部による前記第2の液滴の吐出のうち少なくともいずれか一方の吐出制御を行う吐出制御部と、
を有することを特徴とする印刷装置。
<請求項2>
前記補正レベル取得部は、前記印刷媒体に対して前記第1の液滴又は前記第2の液滴を前記吐出部が吐出するタイミングにおける前記印刷媒体と前記吐出部との間の距離に対応する前記補正レベル情報を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
<請求項3>
前記吐出制御部は、前記吐出部が前記第1の方向に移動しながら吐出した前記第1の液滴の前記印刷媒体への着弾位置に、前記吐出部が前記第2の方向に移動しながら移動しながら吐出した前記第2の液滴の着弾位置が略一致するように、前記補正レベル取得部により取得された補正レベル情報に基づいて、前記吐出部による前記第2の液滴の吐出のみを制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
<請求項4>
前記吐出制御部は、前記第1の液滴に対応する第1印刷データと前記第2の液滴に対応する第2印刷データとを参照して前記吐出部による前記第1の液滴及び前記第2の液滴の吐出制御を行い、
前記吐出制御部は、前記吐出部が吐出した前記第1の液滴の前記印刷媒体への着弾位置と前記吐出部が吐出した前記第2の液滴の前記印刷媒体への着弾位置とが略一致するように、前記第1の液滴に対応する第1印刷データ又は前記第2の液滴に対応する第2印刷データを前記補正レベル取得部により取得された補正レベル情報に基づいて変更することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項5>
前記吐出制御部は、前記吐出部が前記第1の液滴の前記印刷媒体への着弾位置に前記第2の液滴が略一致するように、前記第2の液滴に対応する第2印刷データのみを、前記補正レベル取得部により取得された補正レベル情報に基づいて変更することを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
<請求項6>
前記第1印刷データは、前記印刷媒体と前記吐出部との間の基準距離に基づいて、前記第1のインクの吐出すべきタイミングが印刷画素毎に決定された印刷データであり、
前記第2印刷データは、前記印刷媒体と前記吐出部との間の前記基準距離に基づいて、前記第2のインクの吐出すべきタイミングが印刷画素毎に決定された印刷データであり、
前記吐出制御部は、前記補正レベル取得部により取得された補正レベル情報に基づいて、前記第1印刷データによる前記第1の液滴又は前記第2印刷データによる前記第2の液滴の吐出すべきタイミングを一画素分以上ずらすことを特徴とする請求項4又は5に記載の印刷装置。
<請求項7>
前記補正レベル取得部は、前記印刷媒体と前記吐出部との間の距離及び前記印刷媒体を幅方向に複数領域に分けて各領域毎に補正レベルを対応付けた参照用データに基づいて前記補正レベル情報を取得することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項8>
前記参照用データは、前記印刷媒体の曲面の曲率の程度に応じて複数種類用意されることを特徴とする請求項7に記載の印刷装置。
<請求項9>
前記吐出制御部は、前記補正レベル情報に基づいて、前記吐出部から本来液滴を吐出させるべき吐出位置よりも前記吐出部の移動方向手前側から液滴を吐出させるように前記吐出部の吐出制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項10>
一部に曲面を有する印刷媒体に対して第1の方向に移動しながら第1の液滴を吐出させるとともに、前記第1の方向と逆向きの第2の方向に移動しながら前記印刷媒体に対して前記第1の液滴に対応する第2の液滴を吐出させる吐出部を有する印刷装置と通信可能に構成された通信部と、
前記印刷媒体と前記吐出部との間の距離に対応する補正レベル情報を取得する補正レベル取得部と、
前記補正レベル取得部により取得された補正レベル情報に基づいて、前記吐出部の吐出制御を行うための印刷情報を生成する印刷情報生成部と、
を備え、
前記通信部は、前記印刷情報生成部により生成された印刷情報情報を前記印刷装置に送信することを特徴とする端末装置。
<請求項11>
一部に曲面を有する印刷媒体に対して第1の方向に移動しながら第1の液滴を吐出させるとともに、前記第1の方向と逆向きの第2の方向に移動しながら前記印刷媒体に対して前記第1の液滴に対応する第2の液滴を吐出させる吐出部と、前記吐出部の吐出制御を行う吐出制御部と、を有する印刷装置と、
前記印刷装置と通信可能に構成された通信部を有する端末装置と、を備える印刷システムであって、
前記印刷媒体と前記吐出部との間の距離に対応する補正レベル情報を取得する補正レベル取得部と、
前記補正レベル取得部により取得された補正レベル情報に基づいて、前記吐出部の吐出制御を行うための印刷情報を生成する印刷情報生成部と、
を有し、
前記印刷装置の前記吐出制御部は、前記端末装置から印刷情報を受信して、前記吐出部が前記第1の方向に移動しながら吐出した前記第1の液滴の前記印刷媒体への着弾位置と、前記吐出部が前記第2の方向に移動しながら吐出した前記第2の液滴の着弾位置とが略一致するように、前記吐出部による前記第1の液滴の吐出及び前記吐出部による前記第2の液滴の吐出のうち少なくともいずれか一方の吐出制御を行うことを特徴とする印刷システム。
<請求項12>
一部に曲面を有する印刷媒体に対して第1の方向に移動しながら第1の液滴を吐出させるとともに、前記第1の方向と逆向きの第2の方向に移動しながら前記印刷媒体に対して前記第1の液滴に対応する第2の液滴を吐出させる吐出部を備える印刷装置の印刷方法であって、
前記印刷媒体と前記吐出部との間の距離に対応する補正レベル情報に基づいて、前記吐出部が前記第1の方向に移動しながら吐出した前記第1の液滴の前記印刷媒体への着弾位置と、前記吐出部が前記第2の方向に移動しながら吐出した前記第2の液滴の着弾位置とが略一致するように、前記吐出部による前記第1の液滴の吐出及び前記吐出部による前記第2の液滴の吐出のうち少なくともいずれか一方の吐出制御を行うことを特徴とする印刷方法。
<請求項13>
一部に曲面を有する印刷媒体に対して第1の方向に移動しながら第1の液滴を吐出させるとともに、前記第1の方向と逆向きの第2の方向に移動しながら前記印刷媒体に対して前記第1の液滴に対応する第2の液滴を吐出させる吐出部を備える印刷装置のコンピュータに、
前記印刷媒体と前記吐出部との間の距離に対応する補正レベル情報に基づいて、前記吐出部が前記第1の方向に移動しながら吐出した前記第1の液滴の前記印刷媒体への着弾位置と、前記吐出部が前記第2の方向に移動しながら吐出した前記第2の液滴の着弾位置とが略一致するように、前記吐出部による前記第1の液滴の吐出及び前記吐出部による前記第2の液滴の吐出のうち少なくともいずれか一方の吐出制御を行う機能を実現させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0101】
1 ネイルプリント装置
6 指置部
7 端末装置
40 印刷部
41 印刷ヘッド
31 制御部
32 記憶部
50 撮影部
313 爪情報取得部
314 印刷データ生成部
315 印刷制御部
316 シングリングデータ生成部
317 吐出制御部
T 爪