(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】制御装置及びモータ装置
(51)【国際特許分類】
H02K 11/33 20160101AFI20230905BHJP
H02K 5/04 20060101ALI20230905BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20230905BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
H02K11/33
H02K5/04
H02M7/48 Z
B62D5/04
(21)【出願番号】P 2019187921
(22)【出願日】2019-10-11
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】林 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕人
(72)【発明者】
【氏名】日比 勉
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-011385(JP,A)
【文献】国際公開第2017/149801(WO,A1)
【文献】特開2007-006549(JP,A)
【文献】特開2019-068543(JP,A)
【文献】特開2019-068542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに固定されている第1基板と、
前記第1基板と互いに板厚方向において対向して配置されているとともに前記ハウジングに固定されている第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配置されているとともに前記第1基板と前記第2基板とを接続する基板間コネクタとを備え、
前記基板間コネクタにおける前記第1基板に実装されている部位と前記基板間コネクタにおける前記第2基板に実装されている部位とは、前記第1基板及び前記第2基板が対向する対向方向において重なっており、
前記第1基板の前記ハウジングに対する固定部位のうち前記基板間コネクタに最も近接した固定部位と、前記第2基板の前記ハウジングに対する固定部位のうち前記基板間コネクタに最も近接した固定部位とは、前記対向方向において重なっている制御装置。
【請求項2】
前記基板間コネクタは、第1基板間コネクタ及び第2基板間コネクタを有し、
前記第1基板の前記ハウジングに対する固定部位のうち前記第1基板間コネクタに最も近接した固定部位と、前記第1基板の前記ハウジングに対する固定部位のうち前記第2基板間コネクタに最も近接した固定部位とは同一であり、
前記第2基板の前記ハウジングに対する固定部位のうち前記第1基板間コネクタに最も近接した固定部位と、前記第2基板の前記ハウジングに対する固定部位のうち前記第2基板間コネクタに最も近接した固定部位とは同一である請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記基板間コネクタは、前記対向方向及び前記対向方向と直交する方向に揺動可能なフローティングコネクタである請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の制御装置と、前記制御装置の制御対象であるモータとを備えるモータ装置において、
前記モータは、ステアリング装置に搭載されるモータであるモータ装置。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記モータを収容する有底筒状のモータハウジングと、前記モータハウジングの開口を覆うとともに放熱を促すヒートシンクと、前記ヒートシンクにおける前記モータと反対側の部分を覆うとともに外部機器との間で情報を授受する情報授受部とを有しており、
前記第1基板は、前記ヒートシンクに固定されているとともに、前記モータへ供給する電流を制御するパワー素子群が実装されているパワー基板であり、
前記第2基板は、前記情報授受部に固定されているとともに、前記モータの駆動を制御する制御素子群が実装されている制御基板である請求項4に記載のモータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置及びモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、制御基板とパワー基板とを基板間コネクタによって接続する制御装置が開示されている。パワー基板は、制御装置の放熱を促すヒートシンクに対して固定されている。制御基板は、その板厚方向においてパワー基板と対向している。制御基板は、外部機器との間で情報を授受する情報授受部に対して固定されている。基板間コネクタは、制御基板とパワー基板との間に配置されて、制御基板とパワー基板とを接続している。基板間コネクタは、制御基板とパワー基板との間で情報を授受する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
制御基板及びパワー基板は、振動が作用したときや温度変化に起因して熱膨張及び熱収縮が生じたときに、部分的にたわむことがある。各基板のたわみ量は、各基板における固定部位から離れた部分ほど大きくなる。このため、基板間コネクタが実装されている部位から基板間コネクタ近傍の固定部位までの距離は、基板ごとに異なることになる。したがって、制御基板における基板間コネクタが実装されている部位のたわみ量と、パワー基板における基板間コネクタが実装されている部位のたわみ量とがばらつくおそれがある。各基板のたわみ量がばらつくことによって、基板間コネクタにおける制御基板側の部分と基板間コネクタにおけるパワー基板側の部分とで異なる力が作用するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する制御装置は、ハウジングに固定されている第1基板と、前記第1基板と互いに板厚方向において対向して配置されているとともに前記ハウジングに固定されている第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置されているとともに前記第1基板と前記第2基板とを接続する基板間コネクタとを備え、前記基板間コネクタにおける前記第1基板に実装されている部位と前記基板間コネクタにおける前記第2基板に実装されている部位とは、前記第1基板及び前記第2基板が対向する対向方向において重なっており、前記第1基板の前記ハウジングに対する固定部位のうち前記基板間コネクタに最も近接した固定部位と、前記第2基板の前記ハウジングに対する固定部位のうち前記基板間コネクタに最も近接した固定部位とは、前記対向方向において重なっている。
【0006】
上記構成では、各基板の固定部位が対向方向において重なっていることから、各基板における基板間コネクタが実装されている部位から基板間コネクタに最も近接した固定部位までの距離は、第1基板と第2基板とで同程度にすることができる。このため、各基板にたわみが生じたときにおいて、第1基板における基板間コネクタが実装されている部位のたわみ量と、第2基板における基板間コネクタが実装されている部位のたわみ量とがばらつくことが抑えられている。これにより、各基板においてそれぞれ生じたたわみがばらつくことに起因する基板間コネクタへの影響を抑えることができる。
【0007】
上記の制御装置は、前記基板間コネクタは、第1基板間コネクタ及び第2基板間コネクタを有し、前記第1基板の前記ハウジングに対する固定部位のうち前記第1基板間コネクタに最も近接した固定部位と、前記第1基板の前記ハウジングに対する固定部位のうち前記第2基板間コネクタに最も近接した固定部位とは同一であり、前記第2基板の前記ハウジングに対する固定部位のうち前記第1基板間コネクタに最も近接した固定部位と、前記第2基板の前記ハウジングに対する固定部位のうち前記第2基板間コネクタに最も近接した固定部位とは同一であることが好ましい。
【0008】
上記構成では、第1基板間コネクタに最も近接した固定部位と、第2基板間コネクタに最も近接した固定部位とをそれぞれ別個に配置する場合に比べて、基板間コネクタに最も近接した固定部位に係る部品の点数を少なくすることが可能となる。
【0009】
上記の制御装置は、前記基板間コネクタは、前記対向方向及び前記対向方向と直交する方向に揺動可能なフローティングコネクタであることが好ましい。
上記構成では、基板間コネクタに各基板のたわみに応じた力が作用する場合であっても、基板間コネクタ自身が揺動可能とされていることから、各基板にたわみが生じたことに起因する基板間コネクタへの影響をさらに抑えることができる。
【0010】
上記の制御装置と、前記制御装置の制御対象であるモータとを備えるモータ装置において、前記モータは、ステアリング装置に搭載されるモータである。
モータ装置がステアリング装置に搭載されるものである場合、車両の走行に伴う振動が発生しやすいため、当該振動が各基板に伝わり易い。このため、上記構成を採用した制御装置を上記モータ装置に搭載することは好適である。
【0011】
上記のモータ装置は、前記ハウジングは、前記モータを収容する有底筒状のモータハウジングと、前記モータハウジングの開口を覆うとともに放熱を促すヒートシンクと、前記ヒートシンクにおける前記モータと反対側の部分を覆うとともに外部機器との間で情報を授受する情報授受部とを有しており、前記第1基板は、前記ヒートシンクに固定されているとともに、前記モータへ供給する電流を制御するパワー素子群が実装されているパワー基板であり、前記第2基板は、前記情報授受部に固定されているとともに、前記モータの駆動を制御する制御素子群が実装されている制御基板であることが好ましい。
【0012】
制御素子群とパワー素子群とが異なる基板に分かれて実装されている場合、制御素子群とパワー素子群との間で情報を授受する必要があるため、制御基板とパワー基板との間を接続する基板間コネクタが必要になる。このような基板間コネクタを備える制御装置について、上記構成を採用したものとすることは好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の制御装置及びモータ装置によれば、各基板においてそれぞれ生じたたわみがばらつくことに起因する基板間コネクタへの影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】
図1のIII-III線に沿って切断したモータ装置の断面図。
【
図4】情報授受部及び第2ヒートシンクを省略した状態のモータ装置の斜視図。
【
図5】情報授受部及び第2ヒートシンクを省略した状態のモータ装置の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
制御装置及びモータ装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び
図2に示すように、モータ装置1は、モータ2と、制御装置3と、ハウジング4とを備えている。モータ2は、制御装置3の制御対象である。ハウジング4は、モータ2及び制御装置3を収容している。モータ2は、例えば車両の電動パワーステアリング装置に搭載されるモータである。制御装置3は、パワー素子群30aが実装されている第1基板としてのパワー基板30と、制御素子群31aが実装されている第2基板としての制御基板31と、パワー基板30と制御基板31との間に配置されているとともにパワー基板30と制御基板31とを接続する基板間コネクタ32とを備えている。モータ装置1は、後述する第1系統のモータコイルに対応した第1系統の部分及び第2系統のモータコイルに対応した第2系統の部分の2系統から構成されている。なお、以下では、説明の便宜上、モータ2の回転軸2aの軸方向Xを基準として、制御装置3側を第1軸方向、モータ2側を第2軸方向という。軸方向Xは、モータ2の回転軸2aの延びる方向である。
【0016】
モータ2及びハウジング4の構成について説明する。
図3に示すように、ハウジング4は、モータハウジング40と、ヒートシンク41と、情報授受部42とを有している。モータハウジング40は、有底筒状体をなしている。モータハウジング40は、第1軸方向側に開口している。ヒートシンク41は、モータハウジング40の開口を閉塞している。ヒートシンク41は、モータ2及び制御装置3の放熱を促すために設けられている。情報授受部42は、ヒートシンク41におけるモータ2と反対側の部分を覆っている。情報授受部42は、外部機器との間で情報を授受するために設けられている。モータハウジング40と、ヒートシンク41及び情報授受部42により、モータ2及び制御装置3はハウジング4の内部に収容されている。モータハウジング40及びヒートシンク41は、金属製である。
【0017】
モータ2は、ハウジング4のモータハウジング40内に固定されたステータ21と、ステータ21の内周に回転可能に配置されたロータ22とを有している。
ステータ21は、モータハウジング40の筒状部の内壁面に固定された円筒状のステータコア23、及びステータコア23に巻回されたモータコイル24を有している。モータコイル24の接続端子24aは、バスバー25を介してパワー基板30に接続されている。モータコイル24は、第1系統のモータコイル及び第2系統のモータコイルから構成されている。また、バスバー25は、第1系統のバスバー及び第2系統のバスバーから構成されている。
【0018】
ロータ22は、回転軸2aと一体回転可能に固定された円筒状のロータコア26、及びロータコア26の外周に固定された複数の永久磁石27を備えている。永久磁石27は、その磁極がロータコア26の周方向において、N極及びS極が交互に入れ替わるように配置されている。
【0019】
モータハウジング40の底部の中央には、軸方向Xに貫通した第1凹部40aが形成されている。第1凹部40aは、軸方向Xから見たとき円形状に形成されている。モータハウジング40に形成された第1凹部40aには、第1軸受28が設けられている。第1軸受28は、第1凹部40aの内周面と回転軸2aの外周面との間に設けられている。第1軸受28は、モータハウジング40の第1凹部40aに対して回転軸2aの第2軸方向側の端部を回転可能に支持する。モータハウジング40の開口端部は、外壁面において略四角形状をなしているとともに、内壁面において略円形状をなしている。
【0020】
ヒートシンク41は、第1ヒートシンク50及び第2ヒートシンク51を有している。第1ヒートシンク50は、制御装置3とモータ2との間に配置されている。第2ヒートシンク51は、制御装置3のパワー基板30と制御基板31との間に配置されている。第1ヒートシンク50の中央には、第2凹部50aが形成されている。第2凹部50aは、軸方向Xから見たとき円形状に形成されている。第2凹部50aの中央は、軸方向Xに貫通している。第1ヒートシンク50に形成された第2凹部50aには、第2軸受29が設けられている。第2軸受29は、第1ヒートシンク50の第2凹部50aに対して回転軸2aの第1軸方向側の端部を回転可能に支持する。これにより、回転軸2aは、第1軸受28及び第2軸受29を介してハウジング4の内壁面に対して回転可能に支持されている。また、第1ヒートシンク50の外壁形状は、モータハウジング40の開口端部の内壁面と同形状の略円形状をなしている。第2ヒートシンク51の外壁形状は、モータハウジング40の開口端部と同形状の略四角形状をなしている。
図2及び
図3に示すように、第1ヒートシンク50は、ねじ90によって、モータハウジング40に対して固定されている。ねじ90は、軸部及び頭部を有している。軸部の外周面には、ねじ溝が形成されている。頭部は、半球状をなしている。頭部の外周面は、軸部よりも拡径している。第1ヒートシンク50に形成された貫通孔を挿通しているねじ90の軸部がモータハウジング40に螺着することにより、第1ヒートシンク50はモータハウジング40に固定されている。
図2及び
図3に示すように、第2ヒートシンク51は、パワー基板30と制御基板31との間に配置されている。
図1に示すように、第2ヒートシンク51は、ねじ91によって、モータハウジング40に対して固定されている。ねじ91は、軸部及び頭部を有している。第2ヒートシンク51に形成された貫通孔を挿通しているねじ91の軸部がモータハウジング40に螺着することにより、第2ヒートシンク51はモータハウジング40に固定されている。
【0021】
図2及び
図3に示すように、情報授受部42は、パワー基板30及び制御基板31の板厚方向に延びている複数の筒状部61と、筒状部61から軸方向Xと直交する方向に延びている蓋部62とを有している。蓋部62は、モータハウジング40の開口端部や第2ヒートシンク51と同形状の略四角形状をなしている。複数の筒状部61は、蓋部62よりも第1軸方向に突出している。複数の筒状部61は、蓋部62における外縁部寄りに配置されている。すなわち、蓋部62における中央部分には、筒状部61は配置されていない。情報授受部42は、ねじ92によって、第2ヒートシンク51に対して固定されている。ねじ92は、軸部及び頭部を有している。蓋部62に形成された貫通孔を挿通しているねじ92の軸部が第2ヒートシンク51に螺着することにより、情報授受部42は第2ヒートシンク51に固定されている。また、筒状部61には、外部機器としてのトルクセンサからの端子と接続可能に形成されているトルクセンサ用筒状部61aが設けられている。トルクセンサ用筒状部61aからは第2軸方向に向けて複数の接続端子61bが突出している。制御基板31には、複数の端子孔が形成されている。接続端子61bは、制御基板31に形成された端子孔を挿通するとともに、制御基板31に対して半田付けされている。
【0022】
制御装置3の構成について説明する。
図3に示すように、パワー基板30及び制御基板31は、軸方向Xにおいて並んで配置されている。制御基板31は、その板厚方向においてパワー基板30と対向して配置されている。すなわち、パワー基板30の板厚方向と制御基板31の板厚方向とは同じである。また、パワー基板30及び制御基板31が対向する対向方向は、軸方向Xと同じである。パワー基板30は、軸方向Xにおいて、第1ヒートシンク50と制御基板31との間に配置されている。制御基板31は、軸方向Xにおいて、パワー基板30と情報授受部42との間に配置されている。パワー基板30及び制御基板31は、ハウジング4に対して固定されている。詳しくは、パワー基板30は、パワー基板30に形成された貫通孔にねじ93が挿通することによって、第2ヒートシンク51に対して複数部位で固定されている。本実施形態では、パワー基板30は、パワー基板30に形成された3つの貫通孔にそれぞれねじ93が挿通することによって、第2ヒートシンク51に対して3箇所で固定されている。ねじ93は、軸部93a及び頭部93bを有している。パワー基板30に形成された貫通孔を挿通しているねじ93の軸部93aが第2ヒートシンク51に螺着することにより、パワー基板30は第2ヒートシンク51に固定されている。また、制御基板31は、制御基板31に形成された貫通孔にねじ94が挿通すること及び接続端子61bとの間の半田付けによって、情報授受部42に対して複数部位で固定されている。本実施形態では、制御基板31は、制御基板31に形成された3つの貫通孔にそれぞれねじ94が挿通することによって、情報授受部42に対して3箇所で固定されている。また、制御基板31は、制御基板31の表面に接続端子61bが半田付けされることによって、情報授受部42に対して固定されている。ねじ94は、軸部及び頭部を有している。制御基板31に形成された貫通孔を挿通しているねじ94の軸部が情報授受部42に螺着することにより、制御基板31は情報授受部42に固定されている。パワー基板30は、モータハウジング40の開口端部及びヒートシンク41の形状に対応した略四角形状の四隅が形成されていない形状をなしている。パワー基板30は、対向する2つの側辺から互いに離間する方向に延出する2つの延出部30bを有している。制御基板31は、モータハウジング40の開口端部及びヒートシンク41の形状に対応した略四角形状の四隅が形成されていない形状をなしている。制御基板31は、対向する2つの側辺から互いに離間する方向に延出する2つの延出部31bを有している。パワー基板30及び制御基板31は、表面に配線パターンが露出しているプリント基板である。
【0023】
パワー基板30には、複数のパワー素子からなるパワー素子群30aが実装されている。これらパワー素子群30aは、モータ2に駆動電流を供給するための素子群である。パワー素子群30aは、第1系統のパワー素子群及び第2系統のパワー素子群から構成されている。パワー素子群30aのうちインバータを構成するスイッチング素子については、パワー基板30における第1ヒートシンク50側の面に実装されている。また、パワー基板30には、磁気センサ71も実装されている。磁気センサ71は、パワー基板30における第1ヒートシンク50側の面に実装されている。回転軸2aにおけるパワー基板30と対向している端部、すなわち回転軸2aにおける第1軸方向側の端部には、磁石72が取り付けられている。磁気センサ71は、回転軸2aの軸方向Xにおいて、磁石72と隙間を介して対向している。磁気センサ71は、磁石72の回転に伴い変化する磁界に応じた電気信号を生成する。この電気信号は、モータ2の回転軸2aの回転角度の演算に用いられる。
【0024】
制御基板31には、複数の制御素子からなる制御素子群31aが実装されている。これら制御素子群31aは、モータ2の駆動を制御するための素子群である。制御素子群31aは、第1系統の制御素子群及び第2系統の制御素子群から構成されている。制御素子群31aのうち、モータ2に供給する駆動電流の目標値の演算を行うためのマイコンについては、制御基板31における情報授受部42側の面に実装されている。
【0025】
パワー基板30と制御基板31との間には、基板間コネクタ32が設けられている。パワー基板30と制御基板31とは、基板間コネクタ32を介して情報を授受している。具体的には、制御基板31に実装されているマイコンは、基板間コネクタ32を介してパワー基板30に実装されているスイッチング素子に対してスイッチング素子のオンオフを制御する制御信号を送信する。また、パワー基板30に実装されている磁気センサ71は、基板間コネクタ32を介して制御基板31に実装されているマイコンに対して、磁石72の回転に伴い変化する磁界に応じた電気信号を送信する。
【0026】
基板間コネクタ32は、第1系統の第1基板間コネクタ33及び第2系統の第2基板間コネクタ34を有している。第1基板間コネクタ33及び第2基板間コネクタ34は、軸方向Xにおいて、パワー基板30と制御基板31とを接続している。第1基板間コネクタ33及び第2基板間コネクタ34は、軸方向X及び軸方向Xに直交する方向に対して揺動可能に設けられているフローティングコネクタである。第1基板間コネクタ33は、第1系統のパワー素子と第1系統の制御素子との間の情報を授受するために設けられている。第2基板間コネクタ34は、第2系統のパワー素子と第2系統の制御素子との間の情報を授受するために設けられている。第1基板間コネクタ33は、パワー基板30側に実装されている第1雌接続部33aと制御基板31側に実装されている第1雄接続部33bとを嵌め合わせることによって構成されている。第1雄接続部33bは、制御基板31に対して揺動するフローティング側である。第1雌接続部33aは、パワー基板30に対して揺動しない非フローティング側である。第2基板間コネクタ34は、パワー基板30側に実装されている第2雌接続部34aと制御基板31側に実装されている第2雄接続部34bとを嵌め合わせることによって構成されている。第2雄接続部34bは、制御基板31に対して揺動するフローティング側である。第2雌接続部34aは、パワー基板30に対して揺動しない非フローティング側である。第1雌接続部33aは、略四角形状のパワー基板30における一つの角部に実装されている。第2雌接続部34aは、第1雌接続部33aが実装されている角部に隣接する角部に実装されている。第1雌接続部33a及び第2雌接続部34aは、軸方向Xにおいて、パワー基板30におけるパワー素子群30aが実装されている領域と重ならないように配置されている。第1雌接続部33aと第1雄接続部33bとは、軸方向Xにおいて対向している。第1雄接続部33bは、制御基板31における延出部31bではない一つの角部に実装されている。また、第2雌接続部34aと第2雄接続部34bとは、軸方向Xにおいて対向している。第2雄接続部34bは、第1雄接続部33bが実装されている角部に隣接する角部に実装されている。第1雄接続部33b及び第2雄接続部34bは、軸方向Xにおいて、制御基板31における制御素子群31aが実装されている領域と重ならないように配置されている。
【0027】
このように構成されたモータ装置1は、パワー基板30を介して駆動電流がモータコイル24に対して供給されると、ステータ21に回転磁界が発生し、その回転磁界に基づいてロータ22が回転する。
【0028】
各基板の基板間コネクタ32を実装している部位及び各基板の固定部位について説明する。
図4及び
図5に示すように、パワー基板30の第2ヒートシンク51に対する固定部位は3つある。パワー基板30の第2ヒートシンク51に対する固定部位のうち基板間コネクタ32に最も近接した固定部位ではない2つの固定部位は、2つの延出部30bにそれぞれ配置されている。パワー基板30の第2ヒートシンク51に対する固定部位のうち基板間コネクタ32に最も近接した固定部位100は、第1基板間コネクタ33と第2基板間コネクタ34との間に配置されている。詳しくは、固定部位100は、第1基板間コネクタ33と第2基板間コネクタ34とを結ぶ線分と直交するとともに当該線分の中点Pを通る中間線Lm上における当該線分よりもパワー基板30の外側の部分に配置されている。パワー基板30における第1基板間コネクタ33が実装されている部位と第1基板間コネクタ33に最も近接した固定部位100との間の距離は、パワー基板30における第2基板間コネクタ34が実装されている部位と第2基板間コネクタ34に最も近接した固定部位100との間の距離と等しく設定されている。すなわち、パワー基板30の第2ヒートシンク51に対する固定部位のうち第1基板間コネクタ33に最も近接した固定部位と、パワー基板30の第2ヒートシンク51に対する固定部位のうち第2基板間コネクタ34に最も近接した固定部位とは同一である。固定部位100は、パワー基板30に形成された貫通孔及びねじ93によって構成されている。
【0029】
制御基板31の情報授受部42に対する固定部位は4つある。制御基板31の情報授受部42に対する固定部位のうち基板間コネクタ32に最も近接した固定部位ではない固定部位は、2つの延出部31bにそれぞれ配置されている。また、制御基板31の情報授受部42に対する固定部位のうち基板間コネクタ32に最も近接した固定部位ではない固定部位は、制御基板31において基板間コネクタ32が配置される側の外縁部に配置されている。制御基板31の情報授受部42に対する固定部位のうち基板間コネクタ32に最も近接した固定部位101は、第1基板間コネクタ33と第2基板間コネクタ34との間に配置されている。詳しくは、固定部位101は、第1基板間コネクタ33と第2基板間コネクタ34とを結ぶ線分と直交するとともに当該線分の中点Pを通る中間線Lm上における当該線分よりも制御基板31の外側の部分に配置されている。制御基板31における第1基板間コネクタ33が実装されている部位と第1基板間コネクタ33に最も近接した固定部位101との間の距離は、制御基板31における第2基板間コネクタ34が実装されている部位と第2基板間コネクタ34に最も近接した固定部位101との間の距離と等しく設定されている。すなわち、制御基板31の情報授受部42に対する固定部位のうち第1基板間コネクタ33に最も近接した固定部位と、制御基板31の情報授受部42に対する固定部位のうち第2基板間コネクタ34に最も近接した固定部位とは同一である。
【0030】
図6に示すように、固定部位101は、制御基板31に形成された複数の端子孔と、複数の接続端子61bと、接続端子61bと制御基板31との間を接続するための半田61cとにより構成されている。接続端子61bが端子孔に挿通された状態で半田によって制御基板31に固定されている部分は複数形成されている。固定部位101は、複数の接続端子61bが制御基板31に対してそれぞれの箇所で固定されている部分の全体を囲う部位である。
【0031】
図5に示すように、固定部位100と固定部位101とは、軸方向Xにおいて、すなわちパワー基板30及び制御基板31が対向する対向方向において重なっている。固定部位100と固定部位101とが軸方向Xにおいて重なるとは、少なくとも固定部位100を構成するねじ93の頭部93bと固定部位101を構成する接続端子61bが制御基板31に対して固定されている複数の部分の全体を囲う部位とが軸方向Xにおいて重なることである。
【0032】
本実施形態の作用を説明する。
振動が作用することや温度変化に起因して熱膨張及び熱収縮が生じたときには、パワー基板30及び制御基板31は部分的にたわむことがある。この点、本実施形態では、パワー基板30の第2ヒートシンク51に対する固定部位のうち基板間コネクタ32に最も近接した固定部位100と、制御基板31の情報授受部42に対する固定部位のうち基板間コネクタ32に最も近接した固定部位101とは軸方向Xにおいて重なっている。このことから、各基板における基板間コネクタ32が実装されている部位から基板間コネクタ32に最も近接した固定部位までの距離は、パワー基板30と制御基板31とで同程度にすることができる。このため、パワー基板30及び制御基板31にたわみが生じたときにおいて、パワー基板30における基板間コネクタ32が実装されている部位のたわみ量と、制御基板31における基板間コネクタ32が実装されている部位のたわみ量とがばらつくことが抑えられている。
【0033】
本実施形態の効果を説明する。
(1)固定部位100と固定部位101とが軸方向Xにおいて重なっていることから、パワー基板30及び制御基板31においてそれぞれ生じたたわみがばらつくことに起因する基板間コネクタ32への影響を抑えることができる。
【0034】
(2)第1基板間コネクタ33に最も近接した固定部位と、第2基板間コネクタ34に最も近接した固定部位とをそれぞれ別個に配置する場合に比べて、基板間コネクタ32に最も近接した固定部位に係る部品の点数を少なくすることが可能となる。
【0035】
(3)基板間コネクタ32にパワー基板30及び制御基板31のたわみに応じた力が作用する場合であっても、基板間コネクタ32自身がフローティングコネクタとして構成されていることから、軸方向X及び軸方向Xに直交する方向に対して揺動可能に設けられている。このため、パワー基板30及び制御基板31にたわみが生じたことに起因する基板間コネクタ32への影響をさらに抑えることができる。
【0036】
(4)モータ装置1がステアリング装置に搭載されるものである場合、車両の走行に伴う振動が発生しやすいため、当該振動がパワー基板30及び制御基板31に伝わり易い。このため、本実施形態の制御装置3をモータ装置1に搭載することは好適である。
【0037】
(5)制御素子とパワー素子とが異なる基板に分かれて実装されている場合、制御素子とパワー素子との間で情報を授受する必要があるため、パワー基板30と制御基板31との間を接続する基板間コネクタ32が必要となる。このような基板間コネクタ32を備える制御装置3について、本実施形態の構成を採用したものとすることは好適である。
【0038】
(6)第1基板間コネクタ33及び第2基板間コネクタ34を、軸方向Xにおいて、パワー基板30におけるパワー素子群30aが実装されている領域と重ならないように配置している。このことから、パワー素子群30aに電流が流れることに起因するノイズが第1基板間コネクタ33及び第2基板間コネクタ34に影響を及ぼすことを抑えている。
【0039】
上記実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
・本実施形態では、基板間コネクタ32によってパワー基板30と制御基板31とを接続したが、基板間コネクタ32によって接続する2つの基板はこれに限らない。例えば、基板間コネクタ32は、第1系統のパワー素子及び制御素子が実装された基板と、第2系統のパワー素子及び制御素子が実装された基板とを接続するものであってもよい。
【0040】
・本実施形態では、基板間コネクタ32は、軸方向X及び軸方向Xと直交する方向に揺動可能なフローティングコネクタであったが、軸方向Xと直交する方向に揺動可能なフローティングコネクタであってもよいし、軸方向Xに揺動可能なフローティングコネクタであってもよいし、全方向に揺動可能なフローティングコネクタであってもよい。基板間コネクタ32は、全方向に揺動可能なフローティングコネクタである場合、軸方向Xと軸方向Xと直交する方向との間の斜め方向に揺動するようにしてもよい。また、基板間コネクタ32は、軸方向X及び軸方向Xと直交する方向に揺動しないコネクタであってもよい。
【0041】
・本実施形態では、第1雌接続部33aがパワー基板30側に実装され、第1雄接続部33bが制御基板31側に実装されていたが、第1雌接続部33aが制御基板31側に実装され、第1雄接続部33bがパワー基板30側に実装されていてもよい。また、第2雌接続部34aがパワー基板30側に実装され、第2雄接続部34bが制御基板31側に実装されていたが、第2雌接続部34aが制御基板31側に実装され、第2雄接続部34bがパワー基板30側に実装されてもよい。
【0042】
・本実施形態では、第1雄接続部33bは、制御基板31に対して揺動するフローティング側であり、第1雌接続部33aは、パワー基板30に対して揺動しない非フローティング側であったが、これに限らない。例えば、第1雄接続部33bは、制御基板31に対して揺動しない非フローティング側であり、第1雌接続部33aは、パワー基板30に対して揺動するフローティング側であってもよい。また、本実施形態では、第2雄接続部34bは、制御基板31に対して揺動するフローティング側であり、第2雌接続部34aは、パワー基板30に対して揺動しない非フローティング側であったが、これに限らない。例えば、第2雄接続部34bは、制御基板31に対して揺動しない非フローティング側であり、第2雌接続部34aは、パワー基板30に対して揺動しないフローティング側であってもよい。
【0043】
・本実施形態では、パワー基板30の第2ヒートシンク51に対する固定部位のうち第1基板間コネクタ33に最も近接した固定部位と、パワー基板30の第2ヒートシンク51に対する固定部位のうち第2基板間コネクタ34に最も近接した固定部位とは同一であったが、これに限らない。また、制御基板31の情報授受部42に対する固定部位のうち第1基板間コネクタ33に最も近接した固定部位と、制御基板31の情報授受部42に対する固定部位のうち第2基板間コネクタ34に最も近接した固定部位とは同一であったが、これに限らない。すなわち、パワー基板30における第1基板間コネクタ33に最も近接した固定部位と第2基板間コネクタ34に最も近接した固定部位とが異なっていてもよいし、制御基板31における第1基板間コネクタ33に最も近接した固定部位と第2基板間コネクタ34に最も近接した固定部位とが異なっていてもよい。
【0044】
・本実施形態では、基板間コネクタ32は、第1基板間コネクタ33及び第2基板間コネクタ34を有していたが、3つ以上の基板間コネクタを有していてもよいし、1つの基板間コネクタのみを有していてもよい。
【0045】
・第1基板間コネクタ33は、第1系統のパワー素子と制御素子との間の情報を授受し、第2基板間コネクタ34は、第2系統のパワー素子と制御素子との間の情報を授受していたが、これに限らない。第1基板間コネクタ33は、第2系統のパワー素子と制御素子との間の情報を授受し、第2基板間コネクタ34は、第1系統のパワー素子と制御素子との間の情報を授受してもよい。また、第1基板間コネクタ33は、第2系統のパワー素子と制御素子との間の情報の一部を授受するようにしてもよいし、第2基板間コネクタ34は、第1系統のパワー素子と制御素子との間の情報の一部を授受するようにしてもよい。例えば、第1基板間コネクタ33は、第1系統のパワー素子と制御素子との間の情報の全部を授受するとともに第2系統のパワー素子と制御素子との間の情報の一部を授受し、第2基板間コネクタ34は、第2系統のパワー素子と制御素子との間の情報の残りの一部を授受するようにしてもよい。また、例えば、第1基板間コネクタ33及び第2基板間コネクタ34は、同じ系統のパワー素子と制御素子との間の情報を授受してもよい。すなわち、第1基板間コネクタ33及び第2基板間コネクタ34は、基板間で情報の授受を行うものであればよい。
【0046】
・パワー基板30は、第2ヒートシンク51に対して固定されたが、これに限らない。例えば、パワー基板30は、第1ヒートシンク50に対して固定されてもよい。すなわち、パワー基板30は、ハウジング4に対して固定されていればよい。
【0047】
・制御基板31は、情報授受部42に対して固定されたが、これに限らない。例えば、制御基板31は、第2ヒートシンク51に対して固定されてもよい。すなわち、制御基板31は、ハウジング4に対して固定されていればよい。
【0048】
・固定部位100は、パワー基板30に形成された貫通孔及びねじ93によって構成されていたが、これに限らない。例えば、固定部位100は、パワー基板30に固定される接続端子と、当該接続端子とパワー基板30との間を接続するための半田とにより構成されていてもよい。
【0049】
・固定部位101は、制御基板31に形成された貫通孔と、接続端子61bと、接続端子61bと制御基板31との間を接続するための半田とにより構成されていたが、これに限らない。例えば、固定部位101は、制御基板31に形成された貫通孔及び当該貫通孔を挿通するねじによって構成されていてもよい。
【0050】
・第1基板をパワー基板30とし、第2基板を制御基板31としたが、第1基板を制御基板31とし、第2基板をパワー基板30としてもよい。
・パワー基板30における固定部位100の位置は、適宜変更可能である。また、制御基板31における固定部位101の位置は、適宜変更可能である。
【0051】
・パワー基板30及び制御基板31の形状を略四角形状としたが、この形状は適宜変更可能である。
・モータ装置1は、第1系統及び第2系統の2系統から構成されていたが、1系統から構成されていてもよいし、3系統以上から構成されていてもよい。
【0052】
・モータ装置1は、車両の電動パワーステアリング装置に搭載されるものに限らず、例えば車両の車輪を転舵させる転舵ユニットに搭載されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…モータ装置、2…モータ、2a…回転軸、3…制御装置、4…ハウジング、21…ステータ、22…ロータ、23…ステータコア、24…モータコイル、24a…接続端子、25…バスバー、26…ロータコア、27…永久磁石、28…第1軸受、29…第2軸受、30…パワー基板、30a…パワー素子群、31…制御基板、31a…制御素子群、32…基板間コネクタ、33…第1基板間コネクタ、33a…第1雌接続部、33b…第2雄接続部、34…第2基板間コネクタ、34a…第2雌接続部、34b…第2雄接続部、40…モータハウジング、40a…第1凹部、41…ヒートシンク、42…情報授受部、50…第1ヒートシンク、50a…第2凹部、51…第2ヒートシンク、61…筒状部、61a…トルクセンサ用筒状部、61b…接続端子、62…蓋部、71…磁気センサ、72…磁石、90~94…ねじ、93a…軸部、93b…頭部、100,101…固定部位、Lm…中間線、P…中点、X…軸方向。