(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】荷役車両の正対方法
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20230905BHJP
【FI】
B66F9/24 L
B66F9/24 Z
(21)【出願番号】P 2019191007
(22)【出願日】2019-10-18
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】安立 結香子
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-160900(JP,A)
【文献】特開2008-087891(JP,A)
【文献】特開2020-001863(JP,A)
【文献】特開2020-070121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00 - 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役車両の正対方法であって、
前記荷役車両は2つの前輪及び前記2つの前輪の車軸と、駆動輪及び操舵輪である後輪と、を有し、
前記荷役車両が荷役対象の前面に対して斜めに向いた第1状態において前記荷役対象の位置を計測し
、前記第1状態から前記荷役車両が直進する過程で、平面視において最短距離線が前記前面の中心と重なる第2状態になったことを示す第1ステップを有し、
前記最短距離線は、前記2つの前輪
を結ぶ線分の中点から、前記前面を含む
仮想平面への最短距離
を示す直線であり、
前記第1ステップで
前記第2状態になったことを示した後に、前記後輪を最大操舵角
としてその場旋回
する過程で、平面視において直交線が前記前面の中心と重なる第3状態になったことを示す第2ステップを有し、
前記直交線は、前記2つの前輪
を結ぶ線分の中点を通り、かつ前記
2つの前輪の車軸と直交する
、ことを特徴とする荷役車両の正対方法。
【請求項2】
前記荷役車両はフォークリフトであることを特徴とする請求項1に記載の荷役車両の正対方法。
【請求項3】
前記荷役対象はパレットであることを特徴とする請求項2に記載の荷役車両の正対方法。
【請求項4】
前記荷役車両の正対方法は、荷役車両用遠隔操作システムに用いられるものであって、
前記荷役車両用遠隔操作システムは、前記荷役車両と、遠隔操作装置とを備え、
前記荷役車両は、機台に荷役装置を備えるとともに車両通信部を有し、
前記遠隔操作装置は、前記車両通信部と無線通信を行う操作装置通信部を有し、前記荷役車両の走行及び前記荷役装置による荷役を遠隔操作するのに用いられることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の荷役車両の正対方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役車両の正対方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のフォークリフト車の旋回方法においては、フォークリフト車を直進走行させ、フォークリフト車の走行速度を落とし、フォークリフト車から光を照射し、所定位置に配置された旋回開始位置マークに光が重なったときにフォークリフト車の旋回を開始し、所定の旋回軌跡をとるようにフォークリフト車を操るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、荷取りの際の荷役対象であるパレットに対してパレット前面に平行に走行して90°旋回すれば正対させることができるが、パレットの前面に対して斜めに近づくと正しく正対できない。
【0005】
本発明の目的は、荷役対象の前面に対して斜めに近づいて正対させることができる荷役車両の正対方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための荷役車両の正対方法は、荷役車両の正対方法であって、前記荷役車両は2つの前輪及び前記2つの前輪の車軸と、駆動輪及び操舵輪である後輪と、を有し、前記荷役車両が荷役対象の前面に対して斜めに向いた第1状態において前記荷役対象の位置を計測し、前記第1状態から前記荷役車両が直進する過程で、平面視において最短距離線が前記前面の中心と重なる第2状態になったことを示す第1ステップを有し、前記最短距離線は、前記2つの前輪を結ぶ線分の中点から、前記前面を含む仮想平面への最短距離を示す直線であり、前記第1ステップで前記第2状態になったことを示した後に、前記後輪を最大操舵角としてその場旋回する過程で、平面視において直交線が前記前面の中心と重なる第3状態になったことを示す第2ステップを有し、前記直交線は、前記2つの前輪を結ぶ線分の中点を通り、かつ、前記2つの前輪の車軸と直交する、ことを要旨とする。
【0007】
これによれば、横ずれ防止のための第1ステップにおいて、荷役対象の位置を計測して、左右の前輪の中心を通り、かつ、荷役対象の前面を含む平面への最短距離線上に荷役対象の前面の中心を合わせる。第1ステップで最短距離線上に荷役対象の前面の中心を合わせた後に、角度ずれ防止のための第2ステップにおいて、最大操舵角で旋回して、左右の前輪の中心を通り、かつ、左右の前輪の車軸と直交する直交線を荷役対象の前面の中心に合わせる。よって、荷役対象の前面に対して斜めに近づいて正対させることができる。
【0008】
また、荷役車両の正対方法において、前記荷役車両はフォークリフトであるとよい。
また、荷役車両の正対方法において、前記荷役対象はパレットであるとよい。
また、前記荷役車両の正対方法は、荷役車両用遠隔操作システムに用いられるものであって、前記荷役車両用遠隔操作システムは、前記荷役車両と、遠隔操作装置とを備え、前記荷役車両は、機台に荷役装置を備えるとともに車両通信部を有し、前記遠隔操作装置は、前記車両通信部と無線通信を行う操作装置通信部を有し、前記荷役車両の走行及び前記荷役装置による荷役を遠隔操作するのに用いられるとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、荷役対象の前面に対して斜めに近づいて正対させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】フォークリフト用遠隔操作システムの電気的構成を示すブロック図。
【
図3】フォークリフトの一部を破断して示す概略斜視図。
【
図5】作業場でのパレット及びフォークリフトを示す概略平面図。
【
図7】作業場でのパレット及びフォークリフトを示す概略平面図。
【
図9】作業場でのパレット及びフォークリフトを示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
本実施形態では、荷役車両の正対方法は、荷役車両用遠隔操作システムとしてのフォークリフト用遠隔操作システムに用いられるものである。
【0012】
図1に示すように、フォークリフト用遠隔操作システム10は、荷役車両としてのリーチ式のフォークリフト20と、フォークリフト20の走行及び荷役装置による荷役を遠隔操作するのに用いられる遠隔操作装置40と、を備えている。フォークリフト20は作業場に配置される。そして、遠隔操作装置40を用いて操作室から作業場のフォークリフト20を遠隔操作することができるようになっている。
【0013】
作業場においてパレット等から離れた場所にフォークリフト20が位置している。この状態から、操作者はフォークリフト20を遠隔操作して、フォークリフト20をパレットに近づけてパレットの穴にフォークを差し込む動作等を行わせる。このようなパレットによる荷取りや荷置きを行うことができる。
【0014】
図2、
図3に示すように、フォークリフト20は機台21を備える。機台21の前側には左右一対のリーチレグ22a,22bが配置され、リーチレグ22a,22bは前方に向かって延びている。詳しくは、リーチレグ22aは進行方向右側に設けられ、リーチレグ22bは進行方向左側に設けられている。リーチレグ22a,22bの前部には前輪23a,23bが配設されている。詳しくは、右前輪23aは進行方向右側のリーチレグ22aに設けられ、左前輪23bは進行方向左側のリーチレグ22bに設けられている。このように、機台21の前側に左右一対の前輪23a,23bが設けられている。
【0015】
図2、
図3、
図4に示すように、機台21の後部には、後輪24とキャスタホイール(補助輪)25が配設されている。後輪24は機台21の左方に設けられており、キャスタホイール25は機台21の右方に設けられている。後輪24は、駆動輪及び操舵輪である。
【0016】
図2及び
図4に示すように、フォークリフト20は、2つの前輪23a,23b、及び、1つの後輪24の3つの車輪で走行する。
図2に示すように、機台21には、フォークリフト20の駆動源となる走行モータ26と、走行モータ26の電力源となるバッテリ27が搭載されている。そして、後輪24が走行モータ26により回転駆動される。
【0017】
図2に示すように、フォークリフト20は、機台21の前方に、荷役装置28を備える。荷役装置28は、リーチシリンダ(図示せず)の駆動により、各リーチレグ22a,22bに沿って前後動作するマスト29を備える。マスト29の前方には、左右一対のフォーク30a,30bがリフトブラケット31を介して設けられている。フォーク30a,30bは、前方、詳しくはティルト角が0の時に水平方向に延びる爪(以下、フォーク爪という)Nfを有する。フォーク30a,30bは、マスト29に沿って昇降する。即ち、フォークリフト20は、上下動する荷役部としてのフォーク爪Nfを備える。
【0018】
本実施形態のフォークリフト20は、運転者が着座して操作することが可能に構成されている。なお、運転席の無い無人フォークリフトであってもよい。
図3に示すように、フォークリフト20は、立席タイプの運転室32を機台21の後部に備える。運転室32の前方及び左方には、ステアリングテーブル33a,33bが設けられている。運転室32の前方に位置するステアリングテーブル33aには、フォークリフト20を走行動作させるディレクションレバー34、荷役装置28を動作させる複数の荷役レバー35が設けられている。ディレクションレバー34は、後輪24を回転駆動させて車両を走行させるべく操作される。運転室32の左方に位置するステアリングテーブル33bには、後輪24の操舵を行うハンドル36が設けられている。また、運転室32の床面にはブレーキペダル37が備えられている。
【0019】
図2及び
図3に示すように、機台21は2本のピラー38とヘッドガード39を有する。運転室32は、機台21において立設された2本のピラー38と、ピラー38の上端に固定されたヘッドガード39とにより囲まれている。ヘッドガード39は、水平方向に拡がる板状をなし、平面視において四角形をなしている。
【0020】
図1に示すように、フォークリフト20は、フォークリフト搭載機器50として、コントローラ51と、車両通信部としての無線ユニット52と、画像処理部53と、車両通信部としての無線機54と、2台のカメラ71,72を有する。
【0021】
遠隔操作装置40は、コントローラ61と、操作部62と、表示部(モニタ)63と、操作装置通信部としての無線機64,65を有する。遠隔操作装置40において、操作室側機器60として、コントローラ61と操作部62と表示部(モニタ)63を備える。
【0022】
遠隔操作装置40の無線機64は作業場に配置されている。また、遠隔操作装置40の無線機65は作業場に配置されている。操作室に配置されるコントローラ61は有線L1により作業場に配置した無線機64と接続されている。コントローラ61は有線L2により作業場に配置した無線機65と接続されている。
【0023】
作業場において、遠隔操作装置40の無線機64とフォークリフト搭載機器50の無線ユニット52とは双方向に無線通信できる。また、作業場において、フォークリフト搭載機器50の無線機54から遠隔操作装置40の無線機65に無線で通信できる。
【0024】
このようにして、フォークリフト20は無線ユニット52及び無線機54を有し、遠隔操作装置40は、無線ユニット52及び無線機54と無線通信を行う無線機64,65を有する。
【0025】
遠隔操作装置40のコントローラ61は操作部62及び表示部(モニタ)63と接続されている。操作部62は、操作者によりフォークリフト20を遠隔操作するためのものであり、操作者によるフォークリフト20の操作内容(リフト、リーチ、ティルトの操作指令値、及び、速度、加速度、操舵角の操作指令値等)がコントローラ61に送られる。コントローラ61は、リフト、リーチ、ティルトの操作指令値、及び、速度、加速度、操舵角の操作指令値等の車両制御信号を、無線機64を介してフォークリフト搭載機器50の無線ユニット52に無線送信する。
【0026】
フォークリフト搭載機器50において、コントローラ51と無線ユニット52と画像処理部53とは、それぞれ相互に通信(例えばCAN通信)可能に接続されている。コントローラ51は遠隔操作装置40側からの指示により走行系アクチュエータ(走行モータ26、図示しない操舵モータ等)及び荷役系アクチュエータ(図示しないリフトシリンダ、リーチシリンダ、ティルトシリンダ等)を駆動することができる。
【0027】
無線ユニット52は、フォークリフト20の車速等の車両情報、異常情報(障害物検知情報等)を、無線機64を介してコントローラ61に無線送信する。
図1において、コントローラ61は、無線機64、無線ユニット52及びコントローラ51を介してフォークリフト20の走行及び荷役装置28による荷役を遠隔操作することができるようになっている。つまり、
図3での操作部(ディレクションレバー34、荷役レバー35、ハンドル36、ブレーキペダル37等)に代わり遠隔操作装置40の操作部62により遠隔操作することができるようになっている。
【0028】
そして、遠隔操作装置40において、操作部62を用いて操作者が所望の操作を行うとコントローラ61により操作内容が無線機64を介してフォークリフト20側に送られる。フォークリフト20において、無線ユニット52で遠隔操作装置40からの操作内容が受信され、コントローラ51によりアクチュエータ部が駆動されて所望の動作が実行される。
【0029】
図2及び
図4に示すように、フォークリフト20においてリフトブラケット31の中央部にはカメラ71が設けられている。カメラ71は、荷役部としてのフォーク爪Nfの前方を撮像するためのものであり、前方下方を向くように取り付けられている。カメラ71は、走行中において車両周辺であるフォークリフト20の進行方向前方の下方を撮像する。また、左のリーチレグ22bの上面にはカメラ72が前方を向くように取り付けられており、カメラ72は、フォークリフト20の左前方を撮像する。即ち、カメラ72は、レグ先の障害物を監視するためのカメラである。
【0030】
図1に示すように、フォークリフト20において、カメラ71,72により撮像された画像はコントローラ51により画像処理部53及び無線機54を介して遠隔操作装置40側に送られる。遠隔操作装置40において、無線機65でフォークリフト20からのカメラ画像が受信される。そして、コントローラ61は、カメラ71,72にて撮像されたカメラ画像を、遠隔操作装置40に設けられる表示部63に表示する。表示部63は、例えばディスクトップ型ディスプレイである。操作者は表示部63におけるカメラ画像を見ながら操作することになる。
【0031】
図5において、符号Cpfにより、パレット100の前面101の中心を示す。符号Cfhにより、左右の前輪23a,23bの中心を示す。符号Axfhにより、左右の前輪23a,23bの車軸を示す。符号Lr1により、左右の前輪23a,23bの中心Cfhを通り、かつ、左右の前輪23a,23bの車軸Axfhと直交する直交線を示す。符号Lmiにより、左右の前輪23a,23bの中心Cfhを通り、かつ、パレット100の前面101を含む平面への最短距離線を示す。この最短距離線Lmi上に
図7に示すようにパレット100の前面101の中心Cpfを合わせることになる。これは、横ずれ防止のための動作である。
【0032】
図5に示すように、パレット100は右側のパレット穴102及び左側のパレット穴103を有し、パレット穴102,103は、断面長方形をなし、パレット100の前面101において開口している。
【0033】
図6に示すように、パレット100の前面101において、右側にはマーク104が付されるとともに、左側にはマーク105が付されている。このマーク104,105をカメラで読み取ることによりパレット100の位置及びパレット前面101の中心が分かるようになっている。
【0034】
コントローラ61は、カメラ画像に基づいて画像認識により荷役対象としてのパレット100の位置を計測する。
その場旋回、即ち、最大操舵角での旋回において、
図7に示す左右の前輪23a,23bの中心Cfhが旋回中心となる。その場旋回して、
図9に示すように、上述した直交線Lr1をパレット前面101の中心Cpfに合わせることになる。これは、角度ずれ防止のための動作である。
【0035】
重畳部としてのコントローラ61は、表示部63においてカメラ画像に、荷役作業を支援する情報である2つのマークGm1,Gm2(
図6参照)を重畳して表示させることができる。マークGm1,Gm2は、上述した最短距離線Lmi上にパレット前面101の中心Cpfが合ったこと、及び、上述した直交線Lr1がパレット前面101の中心Cpfに合ったことを知らせるためのガイドマークである。詳しくは、
図6に示すマークGm1は×の図形であり、マークGm2は菱形の図形である。マークGm1,Gm2は色を変えて表示することができる。マークGm2は、カメラ画像においてパレット前面101の中央に重畳して表示される。正対するとカメラ画像においてマークGm1とマークGm2が重なる。
【0036】
次に、作用について説明する。
以下、表示部63の表示内容として、カメラ71,72のうちのカメラ71によるカメラ画像を用いて説明する。
【0037】
図5では作業場でのパレット100及びフォークリフト20の概略平面を示し、パレット100の前面101に対して右斜め方向から近づいていく。その時の表示部63での表示内容を
図6に示す。
【0038】
図5に示す状況から、操作者による操作によって
図7に示す状況にされる。
図7では作業場でのパレット100及びフォークリフト20の概略平面を示し、その時の表示部63での表示内容を
図8に示す。
【0039】
図7に示す状況から、操作者による操作によって
図9に示す状況にされる。
図9では作業場でのパレット100及びフォークリフト20の概略平面を示し、その時の表示部63での表示内容を
図10に示す。
【0040】
図5、
図6に示すように、コントローラ61は、カメラ画像に基づいて画像認識により荷役対象としてのパレット100の位置を計測する。
図5での正対に対する横ずれ量ΔL及び角度ずれ量Δθに対し、以降の動作にて横ずれ量ΔL及び角度ずれ量Δθを無くす。
図5において横ずれ量ΔLは、パレット100の前面101の中心Cpfから延びる垂線と旋回中心との距離である。
図5において角度ずれ量Δθは、最短距離線Lmiと直交線Lr1とでなす角度である。
【0041】
このとき、
図6に示すように、表示部63のカメラ画像においてマークGm2はパレット前面中央に重畳して表示されるとともにマークGm1はパレット前面左端に重畳して表示され、マークGm1とマークGm2とは重ならない。また、表示部63のカメラ画像においてマークGm1は赤色にて表示されるとともにマークGm2も赤色にて表示される。
【0042】
この状態から、操作者は、第1ステップとして、
図7、
図8に示すように、荷役対象としてのパレット100の位置を計測して、左右の前輪23a,23bの中心Cfhを通り、かつ、パレット100の前面101を含む平面への最短距離線Lmi上にパレット100の前面101の中心Cpfを合わせる操作を行う。具体的には、
図5に示す状態から、フォークリフト20を所定量だけ直進走行させる。これにより、横ずれが防止される。即ち、
図5での正対に対する横ずれ量ΔLに対し、
図7では横ずれ量ΔLが無くなっている(ΔL=0)。
図7では正対に対し角度ずれ量Δθがある。
【0043】
このとき、マークGm2の色が変えられる。具体的には、マークGm2の色が、それまでの赤色から緑色に変えられる。これにより、最短距離線Lmi上にパレット前面101の中心Cpfが合ったことが分かる。また、
図8に示すように、表示部63のカメラ画像においてマークGm1とマークGm2とは重ならない。
【0044】
この状態から、操作者は、第2ステップとして、
図9、
図10に示すように、最大操舵角で右旋回して、左右の前輪23a,23bの中心Cfhを通り、かつ、左右の前輪23a,23bの車軸Axfhと直交する直交線Lr1をパレット100の前面101の中心Cpfに合わせる操作を行う。これにより、角度ずれが防止される。即ち、
図7での正対に対する角度ずれ量Δθに対し、
図9では角度ずれ量Δθが無くなっている(Δθ=0)。
【0045】
このとき、
図10に示すように、マークGm1とマークGm2が重なるとともに、マークGm1の色が変えられる。具体的には、マークGm1の色が、それまでの赤色から緑色に変えられる。これにより、最短距離線Lmi(
図7参照)上にパレット前面101の中心Cpfが合うとともに直交線Lr1(
図9参照)がパレット前面101の中心Cpfに合い、正対していることが分かる。
【0046】
操作者は表示画面を見ながらその場旋回させてフォークリフト20をパレット100に正対させた後、フォーク30a,30bを上動させてフォーク30a,30bの高さを調整した後にフォーク30a,30bを前方に移動させ、パレット100の穴102,103に差し込む。差し込みが終わったら操作者はパレット100を持ち上げる。さらに、操作者は車両を後方に移動させるとともに車両をパレット100と共に所望の場所に移動させる。
【0047】
このようにして、機台21がパレット100に正対すべくアプローチする際、横ずれと共に角度ずれが残ってしまい、高精度に横ずれと角度ずれが少ない状態でないとフォーク爪Nfをパレット穴102,103に差し込むことが難しい。
【0048】
本実施形態においては、最短距離線Lmi上にパレット前面101の中心Cpfを合わせ、その後に、最大操舵角で旋回して、直交線Lr1をパレット前面101の中心Cpfに合わせる。これにより、フォークリフト20をパレット100に、高精度に横ずれと角度ずれが少ない状態で正しく正対させることができ、フォーク爪Nfをパレット穴102,103に差し込むことが可能となる。このとき、カメラ画面に描画させたマークGm1,Gm2を用いて正対できたことが分かる。
【0049】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)荷役車両としてのフォークリフト20の正対方法として、荷役対象としてのパレット100の位置を計測して、左右の前輪23a,23bの中心Cfhを通り、かつ、パレット100の前面101を含む平面への最短距離線Lmi上にパレット100の前面101の中心Cpfを合わせる横ずれ防止のための第1ステップと、第1ステップで最短距離線Lmi上にパレット100の前面101の中心Cpfを合わせた後に、最大操舵角で旋回して、左右の前輪23a,23bの中心Cfhを通り、かつ、左右の前輪23a,23bの車軸Axfhと直交する直交線Lr1をパレット100の前面101の中心Cpfに合わせる角度ずれ防止のための第2ステップと、を有する。よって、荷取りの際の荷役対象であるパレット100の前面101に対して斜めに近づいて正対させることができる。
【0050】
(2)荷役車両はフォークリフト20であるので、フォークリフト20による荷取りの際の荷役対象であるパレット100の前面101に対して斜めに近づいて正対させることができる。
【0051】
(3)荷役対象はパレット100であるので、パレット100の前面101に対して斜めに近づいて正対させることができる。
(4)荷役車両としてのフォークリフト20の正対方法は、荷役車両用遠隔操作システムとしてのフォークリフト用遠隔操作システム10に用いられるものであって、フォークリフト用遠隔操作システム10は、荷役車両としてのフォークリフト20と、遠隔操作装置40とを備える。荷役車両としてのフォークリフト20は、機台21に荷役装置28を備えるとともに車両通信部としての無線ユニット52及び無線機54を有する。また、遠隔操作装置40は、無線ユニット52及び無線機54と無線通信を行う操作装置通信部としての無線機64,65を有し、フォークリフト20の走行及び荷役装置28による荷役を遠隔操作するのに用いられる。よって、カメラの画像のみにしたがって遠隔操作する際に、パレットの前面に対して斜めに近づいて正対させることができる。
【0052】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ パレット前面101にマーク104,105を付けてマーク104,105の読み込みに基づいてパレット前面101の中心Cpfを検知したが、これに限ることなくマークを用いることなく画像認識等によりパレットの輪郭からパレット前面101の中心Cpfを検知してもよい。
【0053】
〇 荷役対象は荷取りの際のパレット100であったが、荷そのものでもよい。
○ 荷取り作業を行う場合について説明したが、荷置き作業を行う場合でも同様であり、荷置き作業の場合は荷役対象はラックにおける荷を置く棚板の区画である。
【0054】
つまり、荷役対象はパレット100であったが、荷役対象はラックの棚板の区画であり、ラックの棚板において荷物と荷物の間の狭い空間に荷を置きたいときにラックの棚板にマークを付けておく。
【0055】
なお、
図4においてはカメラ71は荷取りを考慮してリフトブラケット31の中央部に設けたが、荷置き作業を行う場合、車両前方を撮像しにくくなるようであればリフトブラケット31の左右方向の端部にカメラを設けてもよい。
【0056】
〇 マークGm1,Gm2の色により最短距離線Lmi上にパレット前面101の中心Cpfが合ったこと、及び、直交線Lr1がパレット前面101の中心Cpfが合ったことが分かるようにした。これに代わり、例えば
図5における横ずれ量ΔL(パレット100の前面101の中心Cpfから延びる垂線と旋回中心との距離)、及び、角度ずれ量Δθ(最短距離線Lmiと直交線Lr1とでなす角度)をカメラ画面上において数値で表してもよい。
【0057】
○ カメラの設置場所、台数は問わない。
○ 荷役車両の正対方法はフォークリフト用遠隔操作システムに用いられるものであったが、これに限るものではない。例えば、有人フォークリフトに用いてもよい。つまり、カメラを搭載した無人フォークリフトと、表示部を有する遠隔操作装置とを備えるではなく、例えば、カメラと表示部を搭載した有人フォークリフトに適用してもよい。
【0058】
○ フォークリフトは、カウンタ式フォークリフトでもよい。
○ 荷役車両はフォークリフトであったが、フォークリフト以外の荷役車両に適用してもよい。
【符号の説明】
【0059】
10…フォークリフト用遠隔操作システム、20…フォークリフト、21…機台、23a…右前輪、23b…左前輪、28…荷役装置、40…遠隔操作装置、52…無線ユニット、54…無線機、64,65…無線機、100…パレット、101…前面、Axfh…車軸、Cfh…中心、Cpf…中心、Lmi…最短距離線、Lr1…直交線。