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特許7342604偏光ガラス板の製造方法及び偏光ガラス板用バスケット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】偏光ガラス板の製造方法及び偏光ガラス板用バスケット
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20230905BHJP
   C03C 23/00 20060101ALI20230905BHJP
   B08B 3/04 20060101ALI20230905BHJP
   B08B 11/04 20060101ALI20230905BHJP
   B08B 13/00 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
G02B5/30
C03C23/00 A
B08B3/04 A
B08B11/04
B08B13/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019191832
(22)【出願日】2019-10-21
(65)【公開番号】P2020076982
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2018206701
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹井 辰夫
(72)【発明者】
【氏名】乾 武志
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-258608(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1518490(EP,A1)
【文献】中国実用新案第205110305(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第108516692(CN,A)
【文献】特開平11-212072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
C03C 23/00
B08B 3/04
B08B 11/04
B08B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長辺及び短辺を有する略矩形板状のガラスからなる偏光板である偏光ガラス板を洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程の後、前記偏光ガラス板の前記長辺及び前記短辺の両方が水平方向に対して傾斜するように、前記長辺及び前記短辺をそれぞれ支持した状態において、前記偏光ガラス板を乾燥する乾燥工程とを備え
前記乾燥工程において、両方の前記長辺を支持した状態で前記偏光ガラス板を乾燥する、偏光ガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記偏光ガラス板が対向し合う第1の主面及び第2の主面を有し、
前記乾燥工程において、前記偏光ガラス板の前記第1の主面及び前記第2の主面が鉛直方向に平行となるように、前記偏光ガラス板を支持する、請求項1に記載の偏光ガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記偏光ガラス板が対向し合う第1の主面及び第2の主面を有し、
前記乾燥工程において、前記偏光ガラス板の前記第1の主面及び前記第2の主面が鉛直方向に対して傾斜するように、前記偏光ガラス板を支持する、請求項1に記載の偏光ガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記偏光ガラス板の板厚が0.2mm以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の偏光ガラス板の製造方法。
【請求項5】
長辺及び短辺を有する略矩形板状のガラスからなる偏光板である偏光ガラス板を洗浄及び乾燥するための偏光ガラス板用バスケットであって、
1対の側板と、前記1対の側板同士を接続している複数の直線状のフレームと、
前記偏光ガラス板の前記長辺が水平方向に対して傾斜するように前記長辺を支持する第1の支持部と、
前記偏光ガラス板の前記短辺が水平方向に対して傾斜するように前記短辺を支持する第2の支持部とを備え
前記偏光ガラス板を収納したときに、前記偏光ガラス板の前記長辺のうちの下方に位置する長辺を前記第1の支持部が支持しており、
前記偏光ガラス板を収納したときに、前記偏光ガラス板の前記長辺のうちの上方に位置する長辺を支持する上部フレームをさらに備える、偏光ガラス板用バスケット。
【請求項6】
前記上部フレームに、溝状の上側支持部が設けられており、前記偏光ガラス板を収納したときに、前記偏光ガラス板の前記長辺のうちの上方に位置する長辺を、前記上部フレームが前記上側支持部を介して支持する、請求項に記載の偏光ガラス板用バスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光ガラス板の製造方法及び偏光ガラス板用バスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
偏光ガラス板の製造に際し、複数のガラス板をバスケット状の保持具等に収容した状態において洗浄処理や乾燥処理が行われることがある。下記の特許文献1には、ガラス板の保持具の一例が開示されている。特許文献1の保持具においては、各ガラス板の下端は水平な下端支持部に支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-104099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような従来の保持具においては、偏光ガラス板は下端が水平な状態で保持される。そのため、洗浄後において、偏光ガラス板の下端から洗浄液が排出され難く、下端に洗浄液が残留し易い。よって、従来の保持具に収納した状態で偏光ガラス板の乾燥処理を行うと、偏光ガラス板の下端に洗浄液が残留した状態で乾燥処理が行われ、下端にシミが生じるおそれがある。このシミにより、洗浄後の偏光ガラス板において光の透過率が低下し、挿入損失が大きくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、洗浄後の偏光ガラス板の挿入損失を抑制することができる、偏光ガラス板の製造方法及び偏光ガラス板用バスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の偏光ガラス板の製造方法は、長辺及び短辺を有する略矩形板状の偏光ガラス板を洗浄する洗浄工程と、洗浄工程の後、偏光ガラス板の長辺及び短辺の両方が水平方向に対して傾斜するように、長辺及び短辺をそれぞれ支持した状態において、偏光ガラス板を乾燥する乾燥工程とを備えることを特徴とする。
【0007】
偏光ガラス板が対向し合う第1の主面及び第2の主面を有し、乾燥工程において、偏光ガラス板の第1の主面及び第2の主面が鉛直方向に平行となるように、偏光ガラス板を支持することが好ましい。
【0008】
偏光ガラス板が対向し合う第1の主面及び第2の主面を有し、乾燥工程において、偏光ガラス板の第1の主面及び第2の主面が鉛直方向に対して傾斜するように、偏光ガラス板を支持することが好ましい。
【0009】
乾燥工程において、両方の長辺を支持した状態で偏光ガラス板を乾燥することが好ましい。
【0010】
偏光ガラス板の板厚が0.2mm以下であることが好ましい。
【0011】
本発明の偏光ガラス板用バスケットは、長辺及び短辺を有する略矩形板状の偏光ガラス板を洗浄及び乾燥するための偏光ガラス板用バスケットであって、偏光ガラス板の長辺が水平方向に対して傾斜するように長辺を支持する第1の支持部と、偏光ガラス板の短辺が水平方向に対して傾斜するように短辺を支持する第2の支持部とを備えることを特徴とする。
【0012】
偏光ガラス板を収納したときに、偏光ガラス板の長辺のうちの下方に位置する長辺を第1の支持部が支持しており、偏光ガラス板を収納したときに、偏光ガラス板の長辺のうちの上方に位置する長辺を支持する上部フレームをさらに備えることが好ましい。この場合、上部フレームに、偏光ガラス板を収納したときに、偏光ガラス板の長辺のうちの上方に位置する長辺を支持する上側支持部が設けられていることがより好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る偏光ガラス板の製造方法及び偏光ガラス板用バスケットによれば、洗浄後の偏光ガラス板の挿入損失を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態に係るバスケットに偏光ガラス板が収納された状態を示す模式的斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るバスケットにおいて、偏光ガラス板が支持されている状態を示す模式図である。
図3】本発明の第1の実施形態における偏光ガラス板の一部を示す拡大斜視図である。
図4】本発明の図1に示す実施形態の変形例に係るバスケットに偏光ガラス板が収納された状態を示す模式的正面図である。
図5】比較例のバスケットにおいて、偏光ガラス板が支持されている状態を示す模式図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係るバスケットに偏光ガラス板が収納された状態を示す模式的斜視図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係るバスケットにおいて、偏光ガラス板が支持されている状態を示す模式図である。
図8】本発明の第2の実施形態における上部フレーム及び上側支持部の模式的正面図である。
図9】本発明の第2の実施形態の変形例に係るバスケットに偏光ガラス板が収納された状態を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0016】
(第1の実施形態)
(偏光ガラス板用バスケット)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るバスケットに偏光ガラス板が収納された状態を示す模式的斜視図である。図1に示すバスケット1は、略矩形板状の複数の偏光ガラス板2を収納し、複数の偏光ガラス板2を洗浄及び乾燥するための偏光ガラス板用バスケットである。
【0017】
バスケット1は、三角形の側板11a及び側板11bと、側板11a及び側板11bを接続する複数の直線状のフレーム12とを有する。なお、側板11a及び側板11bの形状は上記に限定されず、例えば矩形等であってもよい。
【0018】
図2は、第1の実施形態に係るバスケットにおいて、偏光ガラス板が支持されている状態を示す模式図である。図2に示すように、偏光ガラス板2は、対向し合う第1の主面3a及び第2の主面3bを有する。偏光ガラス板2は、第1の主面3a側または第2の主面3b側から見たときに、対向し合う長辺4a及び長辺4b並びに対向し合う短辺5a及び短辺5bを有する。偏光ガラス板2は、長辺4a及び短辺5aが接続する角部、長辺4a及び短辺5bが接続する角部、長辺4b及び短辺5aが接続する角部及び長辺4b及び短辺5bが接続する角部を有する。本実施形態では、偏光ガラス板2は、長辺4a及び短辺5aが接続する角部が他の全ての角部よりも下方に位置するようにバスケット1に収納される。なお、本明細書において、上方及び下方とは、鉛直方向において上方及び下方であることをいう。
【0019】
図3は、本発明の第1の実施形態における偏光ガラス板の一部を示す拡大斜視図である。図3に示すように、偏光ガラス板2は、第1の主面3a及び第2の主面3bを接続する側面を有する。上記側面は、長辺4aに位置する部分に相当する第1の側面6aを有する。偏光ガラス板2は、第1の側面6aと第1の主面3aとを接続する第1の稜線6b及び第1の側面6aと第2の主面3bとを接続する第2の稜線6cを有する。長辺4aは、第1の側面6a、第1の稜線6b及び第2の稜線6cを含む。
【0020】
偏光ガラス板2の上記側面は、短辺5aに位置する部分に相当する第2の側面7aを有する。偏光ガラス板2は、第2の側面7aと第1の主面3aとを接続する第3の稜線7b及び第2の側面7aと第2の主面3bとを接続する第4の稜線7cを有する。短辺5aは、第2の側面7a、第3の稜線7b及び第4の稜線7cを含む。
【0021】
偏光ガラス板2の板厚は、1mm以下、0.5mm以下、特に0.3mm以下であることが好ましい。偏光ガラス板2が薄いほど、上述した洗浄後のシミが生じ易い。そのため、偏光ガラス板2の板厚が上記範囲内である場合には、本発明に係る製造方法を用いることが特に好適である。なお、偏光ガラス板2の板厚は、0.05mm以上、特に0.1mm以上であることが好ましい。この場合には、偏光ガラス板2が破損し難い。
【0022】
偏光ガラス板2が薄いほど、上述した洗浄後のシミが生じ易い理由は以下のように説明される。後述する図5に示すように、洗浄後において、長辺4a付近のハッチングで示す領域Aに、表面張力により洗浄液が残留し易い。ここで、偏光ガラス板2の板厚が大きいと、洗浄液が図3に示す第1の側面6aに流れ易く、第1の主面3aまたは第2の主面3bに滞留し難い。一方、偏光ガラス板2の板厚が小さいと、洗浄液が第1の側面6aに流れ切らずに、第1の主面3aまたは第2の主面3bにも滞留しやすくなる。これにより、第1の主面3aまたは第2の主面3bにシミが生じ易くなる。
【0023】
図2に戻り、バスケット1は、偏光ガラス板2の長辺4aが水平方向に対して傾斜するように支持する第1の支持部13a及び第1の支持部13bを有する。バスケット1は、偏光ガラス板2の短辺5aが水平方向に対して傾斜するように支持する第2の支持部14を有する。さらに、バスケット1は、偏光ガラス板2の短辺5bを支持する第3の支持部15を有する。第1の支持部13aは、第1の支持部13bよりも短辺5b側に位置する。
【0024】
本実施形態では、第3の支持部15は第1の支持部13aよりも上方に設けられており、第1の支持部13aは第1の支持部13bよりも上方に設けられており、第1の支持部13bは第2の支持部14よりも上方に設けられている。これにより、偏光ガラス板2は、長辺4a及び短辺5aが接続する角部が他の全ての角部よりも下方に位置するように支持される。なお、各支持部の鉛直方向における位置関係は上記に限定されない。
【0025】
第1の支持部及び第2の支持部はそれぞれ少なくとも1つずつ設けられていればよい。第1の支持部のうち少なくとも1つは、第2の支持部よりも上方に設けられていることが好ましい。このようにすれば、偏光ガラス板2を安定して支持することができる。なお、第3の支持部は必ずしも設けられていなくともよい。
【0026】
ここで、図1に示すように、バスケット1は、側板11a及び側板11bを接続する第1の支持フレーム16A、第1の支持フレーム16B、第2の支持フレーム17及び第3の支持フレーム18を有する。第1の支持フレーム16Aに複数の偏光ガラス板2を支持する複数の上記第1の支持部13aが設けられている。同様に、第1の支持フレーム16Bには複数の上記第1の支持部13bが設けられており、第2の支持フレーム17には複数の上記第2の支持部14が設けられており、第3の支持フレーム18には複数の上記第3の支持部15が設けられている。
【0027】
図2では模式的に示しているが、第1の支持部13aは第1の支持フレーム16Aに設けられた溝の部分であり、それによって偏光ガラス板2を支持する。同様に、第1の支持部13b、第2の支持部14及び第3の支持部15も、第1の支持フレーム16B、第2の支持フレーム17及び第3の支持フレーム18にそれぞれ設けられた溝の部分である。なお、上記各支持部としての溝の形状は特に限定されず、例えば、矩形状、台形状、V字状または略半円形状等であってもよい。なお各支持部は、後述する第2の実施形態に示すような、耐熱樹脂に複数のV字状の溝が設けられた構成であってもよい。あるいは、各支持部は、上記各支持フレームに接合されており、かつ溝状の形状を有するように曲げ加工等された金属板等からなっていてもよい。
【0028】
本実施形態においては、第1の支持部13a、第1の支持部13b、第2の支持部14及び第3の支持部15は、偏光ガラス板2の第1の主面3a及び第2の主面3bが鉛直方向に平行となるように、偏光ガラス板2を支持するが、これに限定されない。
【0029】
図4は、図1に示す第1の実施形態の変形例に係るバスケットに偏光ガラス板が収納された状態を示す模式的正面図である。図4に示すように、バスケット21の第1の支持部13a、第1の支持部13b、第2の支持部14及び第3の支持部15は、偏光ガラス板2の第1の主面3a及び第2の主面3bが鉛直方向に対して傾斜するように、長辺4a、短辺5a及び短辺5bを支持している。なお、長辺4a及び短辺5aの両方が水平方向から傾斜するように支持されている。
【0030】
上記各支持部により偏光ガラス板2を支持することにより、第1の主面3a及び第2の主面3bを鉛直方向に対して傾斜させる角度は、45°以下、30°以下、特に15°以下とすることが好ましい。それによって、後述するように、洗浄液を偏光ガラス板2からより一層排出し易い。
【0031】
図1及び図2に示す、第1の実施形態のバスケット1を用いて洗浄後の偏光ガラス板2の乾燥を行うことにより、洗浄後の偏光ガラス板2の挿入損失を抑制することができる。これを、以下において、本発明に係る偏光ガラス板の製造方法の一例とともに説明をする。
【0032】
(偏光ガラス板の製造方法)
(洗浄工程)
本発明に係る偏光ガラス板の製造方法は、偏光ガラス板の洗浄工程及び乾燥工程に係るものである。
【0033】
バスケット1に複数の偏光ガラス板2を収納する。バスケット1において、各偏光ガラス板2の長辺4aが水平方向に対して傾斜するように、第1の支持部13a及び第1の支持部13bにより長辺4aを支持する。各偏光ガラス板2の短辺5aが水平方向に対して傾斜するように、第2の支持部14により短辺5aを支持する。さらに、短辺5bを第3の支持部15により支持する。なお、本実施形態では、長辺4a及び短辺5aが接続する角部が他の全ての角部よりも下方に位置するように偏光ガラス板2を支持する。
【0034】
偏光ガラス板2の長辺4aの水平方向に対する傾斜角は、10°以上、20°以上、特に25°以上であることが好ましい。このようにすることで、洗浄液を効率的に排出することが可能となる。ただし、当該傾斜角が大きすぎると、偏光ガラス板2を安定的に支持することが困難になったり、短辺5a付近に洗浄液が残留して排出され難かったりするおそれがある。よって、偏光ガラス板2の長辺4aの水平方向に対する傾斜角は、80°以下、60°以下、特に40°以下であることが好ましい。
【0035】
次に、複数の偏光ガラス板2が収納されたバスケット1を、洗浄液で満たされた洗浄槽に浸漬させる。洗浄液は、特に限定されないが、例えば、IPA(イソプロピルアルコール)等を用いることができる。
【0036】
次に、複数の偏光ガラス板2が収納されたバスケット1を蒸気槽に投入し、洗浄用の蒸気によって偏光ガラス板2を洗浄する。洗浄用の蒸気には、特に限定されないが、例えば、IPA等を用いることができる。
【0037】
なお、洗浄液をノズルから偏光ガラス板2に噴射する等、上記の洗浄の方法以外の方法により洗浄してもよい。
【0038】
洗浄工程は図4に示した変形例のバスケット21を用いて行ってもよい。バスケット21においては、偏光ガラス板2は、第1の主面3aが第2の主面3bよりも上方に位置するように傾斜している。よって、蒸気槽における洗浄において、洗浄液が偏光ガラス板2から流れ落ちる際に、第1の主面3aにおける洗浄液の滞留時間を長くすることができる。それによって、第1の主面3aをより確実に洗浄することができる。バスケット21を用いた洗浄は、洗浄後に第1の主面3aに反射防止膜等を成膜する場合等に特に好適である。
【0039】
本発明のバスケットを用いて洗浄工程を行うと、洗浄工程の後、乾燥工程の前に偏光ガラス板をバスケットに収納する工程を要しないため、偏光ガラス板が汚れ難いという利点がある。もっとも、洗浄工程は必ずしも本発明のバスケットを用いて行わなくともよい。
【0040】
(乾燥工程)
次に、図1及び図2に示すバスケット1に複数の偏光ガラス板2を収納した状態において、各偏光ガラス板2を乾燥させる。これにより、長辺4a及び短辺5aの両方が水平方向に対して傾斜するように長辺4a及び短辺5aをそれぞれ支持した状態において、各偏光ガラス板2を乾燥させる。偏光ガラス板2を乾燥させる温度は特に限定されないが、本実施形態では60℃~100℃程度において乾燥させる。
【0041】
本実施形態においては、バスケット1を用いて、長辺4a及び短辺5aの両方が水平方向に対して傾斜した状態において偏光ガラス板2を乾燥させることにより、洗浄液を偏光ガラス板2から十分に排出することができるため、洗浄後の偏光ガラス板2の挿入損失を抑制することができる。これを、本実施形態と比較例とを比較することにより説明する。
【0042】
図5は、比較例のバスケットにおいて、偏光ガラス板が支持されている状態を示す模式図である。比較例のバスケット101においては、偏光ガラス板2は複数の支持部103により支持されている。具体的には、長辺4aが水平方向に平行になるように、かつ長辺4aが長辺4bより下方に位置するように、偏光ガラス板2が支持されている。この場合には、洗浄後において、長辺4a付近のハッチングで示す領域Aに、表面張力により洗浄液が残留し易い。洗浄液が領域Aに残留した状態において偏光ガラス板2が乾燥されることにより、乾燥後に、領域A全体においてシミが生じるおそれがある。このシミにより、偏光ガラス板2における光の透過率が低下し、挿入損失が増加するおそれがある。
【0043】
これに対して、本実施形態においては、図2に示すバスケット1において、長辺4a及び短辺5aの両方が水平方向に対して傾斜するように長辺4a及び短辺5aをそれぞれ支持した状態において、各偏光ガラス板2を乾燥させる。これにより、洗浄液は長辺4a及び短辺5aを伝わり、長辺4a及び短辺5aが接続する角部に集中することとなる。そのため、比較例のような、長辺4a全体にわたり洗浄液が残留するという状態となることを抑制することができる。
【0044】
さらに、偏光ガラス板2に残留していた洗浄液を一箇所に集中させることができるため、洗浄液による液滴の重量を大きくすることができる。それによって、洗浄液を偏光ガラス板2から効果的に排出することができる。従って、洗浄後の偏光ガラス板2にシミが生じることを抑制することができ、偏光ガラス板2の挿入損失を抑制することができる。
【0045】
乾燥工程は図4に示した変形例のバスケット21を用いて行ってもよい。バスケット21においては、偏光ガラス板2は、第2の主面3bが第1の主面3aよりも下方に位置するように傾斜している。そのため、偏光ガラス板2における最も下方の部分を第2の主面3b、第1の側面6a及び第2の側面7aが接続する頂点とすることができる。この場合、例えば第1の主面3aにおける洗浄液が、第1の側面6aまたは第2の側面7aを介して第2の稜線6c又は第4の稜線7cへ流れ落ち、その後上記頂点に集まり易くなる。よって、洗浄液を偏光ガラス板2からより一層排出し易い。従って、洗浄後の偏光ガラス板2にシミが生じることを効果的に抑制することができ、偏光ガラス板2の挿入損失を効果的に抑制することができる。
【0046】
上述したように、バスケット21において、偏光ガラス板2の第1の主面3a及び第2の主面3bを鉛直方向に対して傾斜させる角度を45°以下、30°以下、特に15°以下とすることが好ましい。それによって、洗浄液の下方への流れ易さを損なわずして、偏光ガラス板2における最も下方の部分を第2の主面3b、第1の側面6a及び第2の側面7aが接続する頂点とすることができる。従って、偏光ガラス板2から洗浄液をより一層排出し易く、洗浄後の偏光ガラス板2の挿入損失をより一層確実に抑制することができる。
【0047】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態に係るバスケットに偏光ガラス板が収納された状態を示す模式的斜視図である。図7は、本発明の第2の実施形態に係るバスケットにおいて、偏光ガラス板が支持されている状態を示す模式図である。
【0048】
図6に示すように、本実施形態は、蓋部32を有する点において、第1の実施形態と異なる。蓋部32は、枠状部33と、上部フレーム34とを有する。枠状部33は、第1の辺33a、第2の辺33b、第3の辺33c及び第4の辺33dを有する。第1の辺33aと第3の辺33cとが対向し合っており、第2の辺33bと第4の辺33dとが対向し合っている。上部フレーム34は、第1の辺33a及び第3の辺33cを接続している。図6に示す本実施形態においては、バスケット31は上部フレーム34を1つ有するが、バスケット31は複数の上部フレーム34を有していてもよい。
【0049】
枠状部33の第1の辺33aは側板11aに接しており、第2の辺33bは図6における上方のフレーム12に接しており、第3の辺33cは側板11bに接しており、第4の辺33dは下方のフレーム12に接している。本実施形態においては、第2の辺33bがフレーム12に固定されている。第2の辺33bを回転軸として、蓋部32を開閉することができる。偏光ガラス板2をバスケット31に収納するときに蓋部32を開き、偏光ガラス板2をバスケット31に収納した後に蓋部32を閉じることができる。なお、蓋部32が固定されている場所は上方のフレーム12には限定されず、下方のフレーム12、側板11aまたは側板11bに固定されていてもよい。あるいは、蓋部32はフレーム12などに常に固定されていなくともよい。偏光ガラス板2をバスケット31に収納したときに、側板11a、側板11b及びフレーム12などに固定されていればよい。
【0050】
上部フレーム34には、図7に示す上側支持部35が設けられている。なお、上部フレーム34には、複数の偏光ガラス板2を支持する複数の上側支持部35が設けられている。具体的には、上側支持部35は、バスケット31に偏光ガラス板2を収納したときに、偏光ガラス板2の長辺4a及び長辺4bのうちの上方に位置する、長辺4bを支持する。
【0051】
図8は、第2の実施形態における上部フレーム及び上側支持部の模式的正面図である。上側支持部35は、上部フレーム34に接合されたV字状の溝を有する耐熱樹脂からなる。本実施形態においては、上記耐熱樹脂に複数のV字状の溝が設けられた構成とされており、複数の上側支持部35が一体とされている。もっとも、上側支持部35における溝の形状は特に限定されず、例えば、矩形状、台形状、または略半円形状等であってもよい。あるいは、上側支持部35は、上部フレーム34に接合されており、かつ溝状の形状を有するように曲げ加工等された金属板等からなっていてもよい。上部フレーム34自体に複数の溝が設けられていてもよい。もっとも、本実施形態のように、上側支持部35は耐熱樹脂からなることが好ましい。この場合には、上側支持部35が偏光ガラス板2に接しても、偏光ガラス板2に欠けが生じ難い。
【0052】
バスケット31の第1の支持部13a及び第1の支持部13bは、バスケット31に偏光ガラス板2を収納したときに、偏光ガラス板2の長辺4a及び長辺4bのうちの下方に位置する、長辺4aを支持する。さらに、本実施形態においては、上部フレーム34に上側支持部35が設けられていることにより、偏光ガラス板2を長辺4b側からもより確実に支持することができる。従って、偏光ガラス板2をより一層安定して支持することができる。
【0053】
なお、バスケット31を用いる場合には、偏光ガラス板2の両方の長辺を支持した状態で、洗浄工程及び乾燥工程を行うことが好ましい。
【0054】
バスケット31においても、第1の実施形態のバスケット1と同様に、各偏光ガラス板2の長辺4a及び短辺5aの両方が水平方向に対して傾斜するように長辺4a及び短辺5aをそれぞれ支持した状態において、各偏光ガラス板2を支持する。よって、洗浄後において、洗浄液を偏光ガラス板2から排出し易い。従って、洗浄後の偏光ガラス板2の挿入損失を抑制することができる。
【0055】
本実施形態のバスケット31は、板厚が0.2mm以下の偏光ガラス板2に用いる場合に好適であり、板厚が0.15mm以下の偏光ガラス板2に用いる場合により好適であり、板厚が0.1mm程度の偏光ガラス板2に用いる場合にさらに好適である。これを以下において説明する。
【0056】
偏光ガラス板の洗浄工程において、洗浄液で満たされた洗浄槽に浸漬させたときに、バスケットを上下方向に揺動させる場合がある。このとき、板厚が厚い偏光ガラス板の洗浄の際には、偏光ガラス板は重量が大きいため位置ずれし難い。しかしながら、偏光ガラス板の板厚が薄くなるほど偏光ガラス板は軽くなるため、バスケットの揺動に際し、偏光ガラス板が浮力により浮き上がり易くなる。特に、バスケットを揺動したときに洗浄液から偏光ガラス板の主面に加わる圧力により、偏光ガラス板がより一層浮き上がり易くなる。これらのような偏光ガラス板の浮き上がりにより、バスケットから偏光ガラス板が脱落し、偏光ガラス板が破損するおそれがある。加えて、偏光ガラス板の機械的強度は板厚が薄くなるほど低くなる。そのため、偏光ガラス板の主面に加わる上記圧力により、偏光ガラス板に割れが生じるおそれもある。特に、偏光ガラス板上方に位置する長辺が支持されていない場合は、当該部分において変形が生じ易く、割れ易い。
【0057】
これに対して、本実施形態においては、洗浄に際し、上部フレーム34により偏光ガラス板2を上部からも支持することができる。よって、洗浄槽内でバスケット31を揺動させた場合においても、偏光ガラス板2の浮き上がりが生じ難い。加えて、本実施形態においては、上部フレーム34の上側支持部35により、偏光ガラス板2の上部に位置する長辺4bを支持する。それによって、偏光ガラス板2の長辺4b側における変形を抑制することができる。従って、板厚が薄い偏光ガラス板2の洗浄に際し、偏光ガラス板2の破損を効果的に抑制することができる。
【0058】
なお、偏光ガラス板2の浮き上がりを抑制できさえすれば、上側支持部35は必ずしも偏光ガラス板2の長辺4bに接していなくてもよい(即ち、上側支持部35と偏光ガラス板2の長辺4bとの間に隙間が形成されていてもよい)。特に偏光ガラス板2の板厚が薄い場合は、わずかな応力で割れが発生するおそれがあるため、当該割れの発生を抑制する観点からは、むしろ上側支持部35が偏光ガラス板2の長辺4bに接していないほうが好ましい。
【0059】
ここで、長辺4bにおいて、長辺4bの略中央を支持するように、上部フレーム34が設けられていることが好ましい。それによって、洗浄に際し、偏光ガラス板2の脱落や割れを抑制し易くなる。ただし、必ずしもそれに限られず、偏光ガラス板2の長辺4bにおいて、長辺4bの中央から離れた位置を支持するように、上部フレーム34が設けられていてもよい。例えば、長辺4bの中央からの距離が、長辺4bの長さの40%以下、さらには20%以下となる位置を支持するように、上部フレーム34が設けられていてもよい。
【0060】
加えて、バスケット31が複数の上部フレーム34を有する場合には、長辺4bの複数の部分を支持することができるため、偏光ガラス板2の変形及び移動をより一層効果的に抑制することができる。
【0061】
なお、上部フレーム34には、必ずしも上側支持部35は設けられていなくともよい。この場合においても、偏光ガラス板2の洗浄に際し、上部フレーム34により偏光ガラス板2が浮き上がることを抑制することができる。
【0062】
図9は、本発明の第2の実施形態の変形例に係るバスケットに偏光ガラス板が収納された状態を示す模式的斜視図である。本変形例は、上部フレーム44が蓋部の一部として構成されていない点と、上部フレーム44が両端部において固定部46を有する点とにおいて、第2の実施形態と異なる。
【0063】
偏光ガラス板2がバスケット41に収納されている状態においては、上部フレーム44は、固定部46により側板11a及び側板11bに固定されている。固定部46の形態は特に限定されないが、例えば、側板11a及び側板11bを把持する把持部を有する樹脂からなるものなどであってもよい。それによって、本変形例においても、上部フレーム44により偏光ガラス板2を長辺4b側から支持することができる。従って、第2の実施形態と同様に、板厚が薄い偏光ガラス板2の洗浄に際し、偏光ガラス板2の破損を効果的に抑制することができる。
【0064】
もっとも、上部フレーム44は必ずしも固定部46を有していなくともよく、固定用治具により、上部フレーム44と側板11a及び側板11bとが固定されてもよい。なお、固定用治具は、上部フレーム44、側板11a及び側板11bからは独立した治具である。この場合においても、上記と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0065】
1…バスケット
2…偏光ガラス板
3a…第1の主面
3b…第2の主面
4a…長辺
4b…長辺
5a…短辺
5b…短辺
6a…第1の側面
6b…第1の稜線
6c…第2の稜線
7a…第2の側面
7b…第3の稜線
7c…第4の稜線
11a…側板
11b…側板
12…フレーム
13a…第1の支持部
13b…第1の支持部
14…第2の支持部
15…第3の支持部
16A…第1の支持フレーム
16B…第1の支持フレーム
17…第2の支持フレーム
18…第3の支持フレーム
21…バスケット
31…バスケット
32…蓋部
33…枠状部
33a…第1の辺
33b…第2の辺
33c…第3の辺
33d…第4の辺
34…上部フレーム
35…上側支持部
41…バスケット
44…上部フレーム
46…固定部
101…バスケット
103…支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9