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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20230905BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20230905BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
B60C11/03 100C
B60C11/12 A
B60C11/12 D
B60C11/13 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019201660
(22)【出願日】2019-11-06
(65)【公開番号】P2021075109
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】日比野 敦
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-147484(JP,A)
【文献】特開2013-49407(JP,A)
【文献】特開2013-1342(JP,A)
【文献】特開2007-326433(JP,A)
【文献】特開2012-20621(JP,A)
【文献】特開2015-229408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる周方向溝と、前記周方向溝に区分されたミドル陸部とを含み、
前記ミドル陸部は、前記ミドル陸部を横断する複数のミドル横サイプと、タイヤ周方向に延びる複数のミドル縦溝とを含み、
前記ミドル横サイプと、前記ミドル縦溝とは、タイヤ周方向に交互に配されており、
前記ミドル縦溝のそれぞれは、波状に延びており、
前記ミドル縦溝のそれぞれは、タイヤ周方向の一方側で前記ミドル横サイプの一つに連通する第1端と、タイヤ周方向の他方側で前記ミドル横サイプの一つに連通する第2端とを含み、
前記ミドル縦溝の前記第2端は、タイヤ軸方向において、前記ミドル縦溝の前記第1端とは異なる位置に設けられている、
タイヤ。
【請求項2】
前記トレッド部は、前記ミドル陸部に隣り合うクラウン陸部を含み、
前記クラウン陸部は、前記クラウン陸部を横断する複数のクラウン横サイプと、タイヤ周方向に連続して波状に延びるクラウン縦溝とを含む、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ミドル陸部のタイヤ軸方向の幅Wmに対する前記ミドル縦溝の前記第1端から前記第2端までのタイヤ軸方向の距離Lmの比率Lm/Wmは、前記クラウン陸部のタイヤ軸方向の幅Wcに対する前記クラウン縦溝のピークトゥピークの振幅量Acの比率Ac/Wcよりも大きい、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記比率Lm/Wmは、前記比率Ac/Wcの1.5~6.0倍である、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
比率Lm/Wmは、0.3~0.6である、請求項3又は4に記載のタイヤ。
【請求項6】
比率Ac/Wcは、0.1~0.2である、請求項3ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記クラウン縦溝の溝中心線は、前記クラウン陸部のタイヤ軸方向の中心位置を複数回横切っている、請求項2ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ミドル縦溝の最大の深さは、前記周方向溝の最大の深さの5%~30%である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記ミドル縦溝は、前記ミドル陸部のタイヤ軸方向の中心位置を横切っている、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記ミドル縦溝のそれぞれは、前記第1端側を延びる第1円弧部と、前記第2端側を延び、かつ、前記第1円弧部とは逆向きの凸で湾曲している第2円弧部とを含む、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記第1端は、前記ミドル陸部のタイヤ軸方向の中心位置よりもタイヤ軸方向外側に位置し、
前記第2端は、前記ミドル陸部の前記中心位置よりもタイヤ軸方向内側に位置し、
前記第1円弧部は、タイヤ軸方向外側に向かって凸に湾曲している、請求項10に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記ミドル横サイプは、前記タイヤ周方向の一方側に凸の第1凸部と、前記タイヤ周方向の他方側に凸の第2凸部とを含む、請求項1ないし11のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記ミドル横サイプは、前記タイヤ周方向の一方側に凸の第1凸部と、前記タイヤ周方向の他方側に凸の第2凸部とを含み、
前記第1端は、前記第2凸部に連通している、請求項1ないし12のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記ミドル横サイプは、前記タイヤ周方向の一方側に凸の第1凸部と、前記タイヤ周方向の他方側に凸の第2凸部とを含み、
前記第2端は、前記第1凸部に連通している、請求項1ないし13のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項15】
前記タイヤは重荷重車両用である、請求項1ないし14のいずれかに1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、溝の配置を改善することにより、ウェット性能及び耐摩耗性を向上させたタイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-210226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記タイヤは、タイヤ周方向に延びるエッジ成分が少なく、ウェット路面においてタイヤ軸方向の摩擦力が不足する傾向があった。一方、上記タイヤの陸部に、タイヤ周方向に連続して延びる溝が設けられると、陸部の剛性が低下し、偏摩耗を招くおそれがあった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、耐偏摩耗性能を維持しつつ優れたウェット性能を発揮し得るタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる周方向溝と、前記周方向溝に区分されたミドル陸部とを含み、前記ミドル陸部は、前記ミドル陸部を横断する複数のミドル横サイプと、タイヤ周方向に延びる複数のミドル縦溝とを含み、前記ミドル横サイプと、前記ミドル縦溝とは、タイヤ周方向に交互に配されており、前記ミドル縦溝のそれぞれは、波状に延びており、前記ミドル縦溝のそれぞれは、タイヤ周方向の一方側で前記ミドル横サイプの一つに連通する第1端と、タイヤ周方向の他方側で前記ミドル横サイプの一つに連通する第2端とを含み、前記ミドル縦溝の前記第2端は、タイヤ軸方向において、前記ミドル縦溝の前記第1端とは異なる位置に設けられている。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記トレッド部は、前記ミドル陸部に隣り合うクラウン陸部を含み、前記クラウン陸部は、前記クラウン陸部を横断する複数のクラウン横サイプと、タイヤ周方向に連続して波状に延びるクラウン縦溝とを含むのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記ミドル陸部のタイヤ軸方向の幅Wmに対する前記ミドル縦溝の前記第1端から前記第2端までのタイヤ軸方向の距離Lmの比率Lm/Wmは、前記クラウン陸部のタイヤ軸方向の幅Wcに対する前記クラウン縦溝のピークトゥピークの振幅量Acの比率Ac/Wcよりも大きいのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記比率Lm/Wmは、前記比率Ac/Wcの1.5~6.0倍であるのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、比率Lm/Wmは、0.3~0.6であるのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、比率Ac/Wcは、0.1~0.2であるのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記クラウン縦溝の溝中心線は、前記クラウン陸部のタイヤ軸方向の中心位置を複数回横切っているのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記ミドル縦溝の最大の深さは、前記周方向溝の最大の深さの5%~30%であるのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記ミドル縦溝は、前記ミドル陸部のタイヤ軸方向の中心位置を横切っているのが望ましい。
【0015】
本発明のタイヤにおいて、前記ミドル縦溝のそれぞれは、前記第1端側を延びる第1円弧部と、前記第2端側を延び、かつ、前記第1円弧部とは逆向きの凸で湾曲している第2円弧部とを含むのが望ましい。
【0016】
本発明のタイヤにおいて、前記第1端は、前記ミドル陸部のタイヤ軸方向の中心位置よりもタイヤ軸方向外側に位置し、前記第2端は、前記ミドル陸部の前記中心位置よりもタイヤ軸方向内側に位置し、前記第1円弧部は、タイヤ軸方向外側に向かって凸に湾曲しているのが望ましい。
【0017】
本発明のタイヤにおいて、前記ミドル横サイプは、前記タイヤ周方向の一方側に凸の第1凸部と、前記タイヤ周方向の他方側に凸の第2凸部とを含むのが望ましい。
【0018】
本発明のタイヤにおいて、前記ミドル横サイプは、前記タイヤ周方向の一方側に凸の第1凸部と、前記タイヤ周方向の他方側に凸の第2凸部とを含み、前記第1端は、前記第2凸部に連通しているのが望ましい。
【0019】
本発明のタイヤにおいて、前記ミドル横サイプは、前記タイヤ周方向の一方側に凸の第1凸部と、前記タイヤ周方向の他方側に凸の第2凸部とを含み、前記第2端は、前記第1凸部に連通しているのが望ましい。
【0020】
本発明のタイヤは、重荷重車両用であるのが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のタイヤのミドル陸部は、前記ミドル陸部を横断する複数のミドル横サイプと、タイヤ周方向に延びる複数のミドル縦溝とを含む。前記ミドル横サイプと、前記ミドル縦溝とは、タイヤ周方向に交互に配されている。本発明のタイヤは、ウェット走行時、前記ミドル横サイプのエッジによってタイヤ周方向の摩擦力を発揮し、前記ミドル縦溝によってタイヤ軸方向の摩擦力を発揮する。とりわけ、前記ミドル縦溝のそれぞれは、波状に延びているため、十分な長さが確保され、ウェット路面での旋回性能を効果的に高める。
【0022】
前記ミドル縦溝のそれぞれは、タイヤ周方向の一方側で前記ミドル横サイプの一つに連通する第1端と、タイヤ周方向の他方側で前記ミドル横サイプの一つに連通する第2端とを含む。これにより、ウェット走行時、前記ミドル縦溝内の水が前記ミドル横サイプを介して周方向溝側に排出され易くなるため、優れたウェット性能が発揮される。
【0023】
さらに、本発明のタイヤでは、前記ミドル縦溝の前記第2端は、タイヤ軸方向において、前記ミドル縦溝の前記第1端とは異なる位置に設けられているため、前記第1端又は前記第2端付近での偏摩耗を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1のミドル陸部の拡大図である。
図3図1のクラウン陸部の拡大図である。
図4図1のショルダー周方向溝の拡大図である。
図5】比較例のタイヤのトレッド部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の展開図が示されている。図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、例えば、重荷重車両用の空気入りタイヤとして好適に使用される。但し、本発明のタイヤは、このような態様に限定されるものではない。
【0026】
図1に示されるように、タイヤ1のトレッド部2には、タイヤ周方向に連続して延びる複数の周方向溝3が配されている。周方向溝3は、最もトレッド端Te側に配されたショルダー周方向溝4と、ショルダー周方向溝4よりもタイヤ赤道C側に配されたクラウン周方向溝5とを含む。
【0027】
「トレッド端Te」は、正規リム(図示せず)にリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも無負荷である正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。
【0028】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0029】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0030】
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0031】
本実施形態のトレッド部2には、トレッド端Te側に配された2本のショルダー周方向溝4と、タイヤ赤道Cの両側に配された2本のクラウン周方向溝5とが配されている。
【0032】
タイヤ赤道Cからショルダー周方向溝4の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの0.15~0.25倍であるのが望ましい。タイヤ赤道Cからクラウン周方向溝5の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離L2は、例えば、トレッド幅TWの0.05~0.15倍であるのが望ましい。トレッド幅TWは、前記正規状態のタイヤ1のトレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離である。
【0033】
本実施形態の周方向溝3は、例えば、直線状に延びている。但し、このような態様に限定されるものではなく、周方向溝3は、例えば、波状に延びるものでも良い。
【0034】
周方向溝3の溝幅W1は、少なくとも2mm以上であり、望ましくは3mm以上、より望ましくは4mm以上である。また、重荷重車両用の空気入りタイヤの場合、十分な排水性を確保するために、周方向溝3の溝幅W1は、トレッド幅TWの4.0%~7.0%であるのが望ましい。同様の観点から、ショルダー周方向溝4の溝深さは、10~25mmが望ましい。
【0035】
本実施形態のトレッド部2は、上述の周方向溝3により、1つのクラウン陸部6と、2つのミドル陸部7と、2つのショルダー陸部8とに区分されている。クラウン陸部6は、2本のクラウン周方向溝5の間に区分されている。ミドル陸部7は、クラウン周方向溝5とショルダー周方向溝4との間に区分され、クラウン陸部6と隣り合っている。ショルダー陸部8は、ショルダー周方向溝4のタイヤ軸方向外側に区分され、ミドル陸部7と隣り合っている。
【0036】
図2には、ミドル陸部7の拡大図が示されている。図2に示されるように、ミドル陸部7は、ミドル陸部7を横断する複数のミドル横サイプ10と、タイヤ周方向に延びる複数のミドル縦溝11とを含む。ミドル横サイプ10と、ミドル縦溝11とは、タイヤ周方向に交互に配されている。なお、本明細書において、「サイプ」とは、幅が1.5mm以下の切れ込みを意味する。
【0037】
本発明のタイヤは、ウェット走行時、ミドル横サイプ10のエッジによってタイヤ周方向の摩擦力を発揮し、ミドル縦溝11によってタイヤ軸方向の摩擦力を発揮する。とりわけ、ミドル縦溝11のそれぞれは、波状に延びているため、十分な長さが確保され、ウェット路面での旋回性能を効果的に高める。なお、ミドル縦溝11が波状に延びるとは、ある方向に凸に曲がった部分と、その反対方向に凸に曲がった部分とを少なくとも1つずつ含む態様を意味する。ミドル縦溝11は、正弦波状、矩形波状、円形波状及びジグザグ状等、種々の態様が採用され得る。
【0038】
ミドル縦溝11のそれぞれは、タイヤ周方向の一方側(図2では上側である。)でミドル横サイプ10の一つに連通する第1端11aと、タイヤ周方向の他方側(図2では下側である。)でミドル横サイプ10の一つに連通する第2端11bとを含む。これにより、ウェット走行時、ミドル縦溝11内の水がミドル横サイプ10を介して周方向溝3(図1に示され、以下、同様である。)側に排出され易くなるため、優れたウェット性能が発揮される。
【0039】
さらに、本発明のタイヤでは、ミドル縦溝11の第2端11bは、タイヤ軸方向において、ミドル縦溝11の第1端11aとは異なる位置に設けられているため、第1端11a又は第2端11b付近での偏摩耗を効果的に抑制することができる。
【0040】
本実施形態のミドル陸部7は、その両側の側壁7wに凹部13が配されている。ミドル横サイプ10のタイヤ軸方向の端は、凹部13に連通している。これにより、ウェット性能が向上する。
【0041】
ミドル横サイプ10は、例えば、ジグザグ状に延びている。本実施形態のミドル横サイプ10は、タイヤ軸方向に対して第1方向(図2では、右上がりである。)に傾斜する2つのサイプ片10aと、これら2つのサイプ片10aの間に配され、タイヤ軸方向に対して前記第1方向とは逆向きの第2方向(図2では、右下がりである。)に傾斜する1つのサイプ片10bとで構成されている。これにより、ミドル横サイプ10は、前記タイヤ周方向の一方側に凸の第1凸部16と、前記タイヤ周方向の他方側に凸の第2凸部17とを含む。本実施形態のミドル横サイプ10は、1つの第1凸部16及び1つの第2凸部17で構成されている。また、第1凸部16の頂点16tは、ミドル陸部7のタイヤ軸方向の中心位置よりもクラウン周方向溝5側であり、第2凸部17の頂点17tは、ミドル陸部7のタイヤ軸方向の中心位置よりもショルダー周方向溝4側である。このようなミドル横サイプ10は、ミドル陸部7の偏摩耗を抑制するのに役立つ。
【0042】
第1凸部16及び第2凸部17は、それぞれ、鈍角に折れ曲がっている。本実施形態の第1凸部16の折れ曲がり角度θ1及び第2凸部17の折れ曲がり角度θ2は、例えば、130~150°である。さらに望ましい態様では、前記角度θ1と前記角度θ2とが同一である。このような第1凸部16及び第2凸部17を有するミドル横サイプ10は、そのエッジ付近の偏摩耗を抑制し、かつ、互いに向き合うサイプ壁が接触したときにミドル陸部7の剛性を適度に高めることができる。これにより、耐偏摩耗性能がさらに向上し得る。
【0043】
ミドル横サイプ10のタイヤ周方向の1ピッチ長さP1は、例えば、ミドル陸部7のタイヤ軸方向の幅Wmの90%~120%である。このようなミドル横サイプ10は、ウェット性能と耐偏摩耗性能とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0044】
同様の観点から、ミドル横サイプ10の最大の深さは、周方向溝3の最大の深さの40%~80%であるのが望ましい。
【0045】
ミドル縦溝11は、例えば、ミドル陸部7のタイヤ軸方向の中心位置を横切っている。本実施形態のミドル縦溝11は、1か所のみで前記中心位置を横切っている。但し、ミドル縦溝11は、このような態様に限定されるものではない。
【0046】
ミドル縦溝11の第1端11aは、ミドル陸部7のタイヤ軸方向の中心位置よりもタイヤ軸方向外側に位置している。ミドル縦溝11の第2端11bは、ミドル陸部7の前記中心位置よりもタイヤ軸方向内側に位置している。
【0047】
ミドル縦溝11の第1端11aは、例えば、ミドル横サイプ10の第2凸部17に連通している。望ましい態様では、ミドル縦溝11の第1端11aは、ミドル横サイプ10の第2凸部17のタイヤ周方向の頂点17tに連通している。同様に、ミドル縦溝11の第2端11bは、例えば、ミドル横サイプ10の第1凸部16に連通している。望ましい態様では、ミドル縦溝11の第2端11bは、ミドル横サイプ10の第1凸部16のタイヤ周方向の頂点16tに連通している。これにより、ミドル縦溝11とミドル横サイプ10との間で水の移動が生じ易くなり、ウェット性能がさらに向上する。
【0048】
ミドル縦溝11のそれぞれは、第1端11a側を延びる第1円弧部18と、第2端11b側を延び、かつ、第1円弧部18とは逆向きの凸で湾曲している第2円弧部19とを含む。本実施形態のミドル縦溝11は、1つの第1円弧部18及び1つの第2円弧部19とで構成されている。第1円弧部18は、タイヤ軸方向外側(換言すれば、ショルダー周方向溝4側である。)に凸で湾曲している。第2円弧部19は、タイヤ軸方向内側(換言すれば、クラウン周方向溝5側である。)に凸で湾曲している。
【0049】
耐偏摩耗性能とウェット性能とをバランス良く高めるために、ミドル縦溝11のピークトゥピークの振幅量Amは、例えば、ミドル陸部7のタイヤ軸方向の幅Wmの10%~25%であるのが望ましい。
【0050】
同様の観点から、ミドル陸部7のタイヤ軸方向の幅Wmに対するミドル縦溝11の第1端11aから第2端11bまでのタイヤ軸方向の距離Lmの比率Lm/Wmは、例えば、0.3~0.6である。
【0051】
ミドル縦溝11は、例えば、周方向溝3よりも小さい溝幅及び溝深さを有している。ミドル縦溝11の最大の溝幅W2は、例えば、2.5mm以下であるのが望ましい。ミドル縦溝11の最大の溝深さは、周方向溝3の最大の深さの5%~30%であるのが望ましい。
【0052】
ミドル縦溝11の長さ方向と直行する断面の面積は、例えば、0.25mm2以上であり、望ましくは2.0~4.0mm2である。これにより、ミドル縦溝11の排水性を確保しつつ、ミドル陸部7の偏摩耗が抑制される。
【0053】
図3には、クラウン陸部6の拡大図が示されている。図3に示されるように、クラウン陸部6は、クラウン陸部6を横断する複数のクラウン横サイプ20と、タイヤ周方向に連続して延びるクラウン縦溝21とを含む。
【0054】
本実施形態のクラウン陸部6は、その両側の側壁6wに凹部23が配されている。クラウン横サイプ20のタイヤ軸方向の端は、凹部23に連通している。このようなクラウン横サイプ20の配置は、ウェット性能を高めるのに役立つ。
【0055】
クラウン横サイプ20は、例えば、ジグザグ状に延びている。本実施形態のクラウン横サイプ20は、例えば、タイヤ軸方向に対して前記第1方向に傾斜した2つの第1サイプ片20aと、これらの間の第2サイプ片20bとで構成されている。第2サイプ片20bは、前記第1方向に傾斜し、かつ、タイヤ軸方向に対して第1サイプ片20aよりも大きい角度で傾斜している。これにより、クラウン横サイプ20は、その全体がタイヤ軸方向に対して同じ方向(第1方向)に傾斜している。
【0056】
第1サイプ片20aのタイヤ軸方向に対する角度θ3は、例えば、10~20°である。第1サイプ片20aの前記角度θ3は、ミドル横サイプ10のサイプ片のタイヤ軸方向に対する角度よりも小さいのが望ましい。第2サイプ片20bのタイヤ軸方向に対する角度θ4は、例えば、40~50°である。第1サイプ片20aと第2サイプ片20bとの間の折れ曲がり角度θ5は、例えば、140~160°である。前記折れ曲がり角度θ5は、ミドル横サイプ10の第1凸部16の折れ曲がり角度θ1、又は、第2凸部17の折れ曲がり角度θ2よりも大きいのが望ましい。これにより、クラウン陸部6及びミドル陸部7の摩耗の進行が均一化し易くなる。
【0057】
第2サイプ片20bのタイヤ軸方向の長さL3は、例えば、ミドル縦溝11の第1端11aから第2端11bまでのタイヤ軸方向の距離Lm(図2に示す)よりも小さい。第2サイプ片20bの前記長さL3は、例えば、クラウン陸部6のタイヤ軸方向の幅Wcの10%~25%である。
【0058】
クラウン横サイプ20のタイヤ周方向の1ピッチ長さP2は、例えば、クラウン陸部6のタイヤ軸方向の幅Wmの90%~120%である。本実施形態では、クラウン横サイプ20の1ピッチ長さP2がミドル横サイプ10の1ピッチ長さP1と同じである。これにより、クラウン陸部6及びミドル陸部7の耐偏摩耗性能がさらに向上する。
【0059】
クラウン横サイプ20の最大の深さは、周方向溝3の最大の深さの40%~80%であるのが望ましい。
【0060】
クラウン縦溝21は、例えば、波状に延びている。本実施形態のクラウン縦溝21は、2本のクラウン横サイプ20の間に波の1周期が構成されている。本実施形態のクラウン縦溝21は、正弦波状に延びているが、このような態様に限定されるものではなく、矩形波状、円形波状又はジグザグ状等、種々の態様が採用され得る。
【0061】
クラウン縦溝21は、クラウン陸部6のタイヤ軸方向の中央部をタイヤ周方向に延びている。望ましい態様では、クラウン縦溝21の溝中心線は、クラウン陸部6のタイヤ軸方向の中心位置を複数回横切っている。
【0062】
クラウン縦溝21は、例えば、クラウン横サイプ20のタイヤ軸方向の中央部に連通している。具体的には、クラウン縦溝21は、クラウン横サイプ20の第2サイプ片20bに連通している。このようなクラウン縦溝21は、ウェット性能と耐偏摩耗性能とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0063】
クラウン陸部6のタイヤ軸方向の幅Wcに対するクラウン縦溝21のピークトゥピークの振幅量Acの比率Ac/Wcは、例えば、0.1~0.2である。また、クラウン縦溝21の前記振幅量Acは、ミドル縦溝11のピークトゥピークの振幅量Am(図2に示され、以下、同様である。)の80%~120%である。これにより、クラウン陸部6及びミドル陸部7の耐偏摩耗性能がさらに向上する。
【0064】
望ましい態様として、本実施形態では、ミドル陸部7のタイヤ軸方向の幅Wmに対するミドル縦溝11の第1端11aから第2端11bまでのタイヤ軸方向の距離Lmの比率Lm/Wmは、クラウン陸部6のタイヤ軸方向の幅Wcに対するクラウン縦溝21のピークトゥピークの振幅量Acの比率Ac/Wcよりも大きい。具体的には、前記比率Lm/Wmは、前記比率Ac/Wcの1.5~6.0倍である。これにより、大きな接地圧が作用するクラウン陸部6の偏摩耗が抑制され、かつ、ミドル縦溝11において優れたウェット性能が発揮される。
【0065】
クラウン縦溝21の溝幅、深さ及び断面積は、上述のミドル縦溝11の構成を適用することができる。
【0066】
図1に示されるように、ショルダー陸部8の踏面には、少なくとも、幅が1.5mmを超える溝が設けられていない。望ましい態様として、本実施形態のショルダー陸部8は、踏面の全体において前記溝及び幅が1.5mm以下のサイプが設けられていない平滑リブである。このようなショルダー陸部8は、高い剛性を有し、耐偏摩耗性能及び操縦安定性を高めるのに役立つ。
【0067】
図4には、ショルダー周方向溝4の拡大図が示されている。図4において、ショルダー周方向溝4の溝壁4wが着色されている。図4に示されるように、本実施形態のショルダー周方向溝4は、その溝底部4dがタイヤ軸方向に振幅しているのが望ましい。このようなショルダー周方向溝4は、優れた排水性を長期に亘って発揮できる。
【0068】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例
【0069】
図1の基本トレッドパターンを有するサイズ11R22.5の重荷重車両用の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例として、図5に示されるトレッドパターンを有するタイヤが試作された。図5に示されるように、比較例のタイヤのミドル陸部aには、ミドル陸部aを横断する複数の横サイプbと、タイヤ周方向に連続して波状に延びる縦溝cとが設けられている。比較例のトレッドパターンは、上述の構成を除き、図1に示されるものと実質的に同じである。各テストタイヤのウェット性能及び耐偏摩耗性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法等は、以下の通りである。
装着リム:22.5×7.50
タイヤ内圧:720kPa
テスト車両:10tトラック、荷台中央に標準積載量の50%の荷物を積載
テストタイヤ装着位置:全輪
【0070】
<ウェット性能>
上記テスト車両で、厚さ2mmの水膜を有するアスファルト路面からなる半径120mの周回路を周回したときのタイムが測定された。結果は、前記タイムの逆数であり、比較例を100とする指数で示されている。数値が大きい程、ウェット性能が優れていることを示す。
【0071】
<耐偏摩耗性能>
上記テスト車両で一定距離走行後、ミドル陸部の偏摩耗の程度が目視で評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、耐偏摩耗性能が優れていることを示す。
テスト結果が表1に示される。
【0072】
【表1】
【0073】
テストの結果、実施例のタイヤは、耐偏摩耗性能を維持しつつ優れたウェット性能を発揮していることが確認できた。
【符号の説明】
【0074】
2 トレッド部
3 周方向溝
7 ミドル陸部
10 ミドル横サイプ
11 ミドル縦溝
11a 第1端
11b 第2端
図1
図2
図3
図4
図5