(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20230905BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
G03G15/16 103
G03G21/14
(21)【出願番号】P 2019215418
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩野谷 道彬
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-134440(JP,A)
【文献】特開2017-116805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部材により駆動可能な環状の転写ベルトと、
前記転写ベルトの内周面側に設けられ、転写電圧が印加される転写体と、
前記転写ベルトに対向し、
前記転写ベルトが駆動を開始してからの前記転写ベルトの駆動量が1回転以上であるときの前記転写ベルトの表面温度である第1の温度を検出し、
前記転写ベルトが駆動を開始してからの前記転写ベルトの駆動量が1回転未満であるときの前記転写ベルトの表面温度である第2の温度を検出する
第1の温度センサと、
前記転写体に流れる電流を検出する電流検出を行うかどうかを判断するときに、前記第2の温度と前回の前記電流検出を行ったときの前記第1の温度との差分と所定値とを比較することにより、前記電流検出を行うかどうかを判断する制御部と
を備え、
前記所定値は、前記転写ベルトの駆動停止後の第1の期間において第1の閾値であり、前記転写ベルトの駆動停止後であり、かつ、前記第1の期間より前である期間および前記第1の期間より後である期間を含む第2の期間において第2の閾値である
画像形成装置。
【請求項2】
前記転写体の温度を測定する第2の温度センサをさらに備え、
前記第1の期間において前記第2の温度が
前記第2の温度センサにより測定される前記転写体の温度よりも
低い場合には、前記第1の閾値は前記第2の閾値よりも大きく、
前記第1の期間において前記第2の温度が前記転写体の温度よりも
高い場合には、前記第1の閾値は前記第2の閾値よりも小さい
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2の期間の前記第1の期間より後である期間において前記転写体の温度と前記第2の温度との差が所定の値以下である
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写体の温度を測定する第2の温度センサをさらに備え、
前記第1の閾値は、前回の前記電流検出を行ったときの前記第1の温度と、
前記第2の温度センサにより測定される前記転写体の温度と前回の前記電流検出を行ったときの前記第1の温度との温度差が前記第2の閾値であるタイミングにおける前記第2の温度との温度差である
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記電流検出により検出された電流に基づいて前記転写体に印加される転写電圧を決定する
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1の温度は、前記制御部が前記転写電圧を決定するときに前記温度センサにより検出された温度である
請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
印刷ジョブを受け付ける通信部をさらに備え、
前記制御部は、前記通信部が前記印刷ジョブを受け付けるとき、前記電流検出を行うかどうかを判断する
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記転写体は転写ローラである
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
駆動部材により駆動可能な環状の転写ベルトと、
前記転写ベルトの内周面側に設けられ、転写電圧が印加される転写体と、
前記転写ベルトに対向し、
前記転写ベルトが駆動を開始してからの前記転写ベルトの駆動量が1回転以上であるときの前記転写ベルトの表面温度である第1の温度を検出し、
前記転写ベルトが駆動を開始してからの前記転写ベルトの駆動量が1回転未満であるときの前記転写ベルトの表面温度である第2の温度を検出する温度センサと、
前記転写体の電流検出を行うかどうかを判断するときに、前記転写ベルトの駆動停止後の第1の期間において前記第2の温度を補正した補正温度と所定値とを比較することにより、前記電流検出を行うかどうかを判断し、前記転写ベルトの駆動停止後であり、かつ、前記第1の期間より前である期間および前記第1の期間より後である期間を含む第2の期間において前記第2の温度と前記所定値とを比較することにより、前記電流検出を行うかどうかを判断する制御部と
を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置では、転写ローラに転写電圧を印加することにより、記録媒体にトナー像を形成する。例えば特許文献1には、推定された転写ローラの温度に基づいて転写電圧を制御する画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、画像形成装置では、例えば、画像形成動作を行う際、転写ローラに流れる電流を検出する電流検出を行うことにより転写電圧を調整する。このような画像形成装置では、例えば、画像形成動作を行う際、過去に調整された転写電圧を用いればよい場合には、転写電圧を調整する処理を省くことが望まれる。無駄な処理を省くことにより、画像形成動作の所要時間を短縮することが期待されている。
【0005】
画像形成動作の所要時間を短縮できる画像形成装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施の形態における画像形成装置は、転写ベルトと、転写体と、第1の温度センサと、制御部とを備える。転写ベルトは、駆動部材により駆動可能であり環状に構成される。転写体は、転写ベルトの内周面側に設けられ、転写電圧が印加されるように構成される。第1の温度センサは、転写ベルトに対向し、転写ベルトが駆動を開始してからの転写ベルトの駆動量が1回転以上であるときの転写ベルトの表面温度である第1の温度を検出し、転写ベルトが駆動を開始してからの転写ベルトの駆動量が1回転未満であるときの転写ベルトの表面温度である第2の温度を検出するように構成される。制御部は、転写体に流れる電流を検出する電流検出を行うかどうかを判断するときに、第2の温度と前回の電流検出を行ったときの第1の温度との差分と所定値とを比較することにより、電流検出を行うかどうかを判断するように構成される。上記所定値は、転写ベルトの駆動停止後の第1の期間において第1の閾値であり、転写ベルトの駆動停止後であり、かつ、第1の期間より前である期間および第1の期間より後である期間を含む第2の期間において第2の閾値である。
【0007】
本発明の一実施形態としての画像形成装置では、電流検出を行うかどうかを判断するときに、第2の温度と前回の電流検出を行ったときの第1の温度との差分と所定値とを比較することにより、電流検出を行うかどうかを判断する。これにより、電流検出を実行しなくてもよい場合に電流検出の実行を防ぐことができる。
【0008】
本発明の一実施の形態における画像形成装置は、転写ベルトと、転写体と、温度センサと、制御部とを備える。転写ベルトは、駆動部材により駆動可能であり環状に構成される。転写体は、転写ベルトの内周面側に設けられ、転写電圧が印加されるように構成される。温度センサは、転写ベルトに対向し、転写ベルトが駆動を開始してからの転写ベルトの駆動量が1回転以上であるときの転写ベルトの表面温度である第1の温度を検出し、転写ベルトが駆動を開始してからの転写ベルトの駆動量が1回転未満であるときの転写ベルトの表面温度である第2の温度を検出するように構成される。制御部は、転写体の電流検出を行うかどうかを判断するときに、転写ベルトの駆動停止後の第1の期間において第2の温度を補正した補正温度と所定値とを比較することにより、電流検出を行うかどうかを判断し、転写ベルトの駆動停止後であり、かつ、第1の期間より前である期間および第1の期間より後である期間を含む第2の期間において第2の温度と所定値とを比較することにより、電流検出を行うかどうかを判断するように構成される。
【0009】
本発明の一実施形態としての画像形成装置では、転写体の電流検出を行うかどうかを判断するときに、転写ベルトの駆動停止後の第1の期間において第2の温度を補正した補正温度と所定値とを比較することにより、電流検出を行うかどうかを判断し、転写ベルトの駆動停止後であり、かつ、第1の期間より前である期間および第1の期間より後である期間を含む第2の期間において第2の温度と所定値とを比較することにより、電流検出を行うかどうかを判断する。これにより、電流検出を実行しなくてもよい場合に電流検出の実行を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施の形態における画像形成装置によれば、電流検出を実行しなくてもよい場合に電流検出の実行を防ぐことができるので、画像形成動作の所要時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施の形態に係る画像形成装置の一構成例を表す構成図である。
【
図2】
図1に示した画像形成装置の制御系の一例を表すブロック図である。
【
図3】
図2に示した閾値データの一例を表す説明図である。
【
図4】
図1に示した画像形成装置における処理の一例を表すフローチャートである。
【
図5】
図1に示した画像形成装置における処理の一例を表す他のフローチャートである。
【
図6】
図1に示した転写ベルトおよび転写ローラの温度変化を表す説明図である。
【
図7】
図1に示した転写ベルトおよび転写ローラの温度変化を表す他の説明図である。
【
図8】比較例に係る画像形成装置の制御系の一例を表すブロック図である。
【
図9】比較例に係る画像形成装置の閾値データの一例を表す説明図である。
【
図10】比較例に係る画像形成装置における処理の一例を表すフローチャートである。
【
図11】比較例に係る画像形成装置の転写ローラおよび転写ベルトの温度変化を表す説明図である。
【
図12】変形例に係る画像形成装置の一構成例を表す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.一実施の形態
1.1 画像形成装置の構成
1.2 画像形成装置の動作
(A)基本動作
(B)電流検出の実行判断処理
(C)電流検出および転写電圧の調整
(D)閾値データの決定方法
1.3 画像形成装置の作用
1.4 効果
2.変形例
【0013】
<1.一実施の形態>
[1.1 画像形成装置1の構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係る画像形成装置1の一構成例を表す構成図である。画像形成装置1は、例えば電子写真方式を用いたプリンタであり、トナーなどの現像剤を用いて画像形成動作を行うことにより、紙などの記録媒体PMに白黒画像やカラー画像を形成するように構成される。この際、画像形成装置1は、転写ローラ44(後述)に転写電圧を印加し転写電流を流すことにより、記録媒体PMにトナー像を転写する。すなわち、転写電流の電流値のばらつきは形成されるトナー像の品質に影響を及ぼす。転写電流の電流値は、転写電圧の電圧値と転写ローラ44に流れる電流の経路における合成抵抗(以下、転写ローラ44の抵抗)の抵抗値とに基づいて決定されるが、この抵抗値は、転写ローラ44の温度に応じて変化する。転写電流の電流値の変動を抑制するためには、転写ローラ44の温度に応じて転写電圧が調整されることが望ましい。このため、画像形成装置1は、転写ローラ44に流れる電流を検出する電流検出の実行判断処理を行い、この判断結果に基づいて、電流検出および転写電圧の調整を行うようになっている。なお、本明細書では、記録媒体PMが搬送される搬送経路上における任意の位置から見て用紙収容カセット10(後述)に近い位置、または用紙収容カセット10へ向かう方向を上流という。さらに、搬送経路上における任意の位置から見て、記録媒体PMが排出されて積載されるスタッカ4(後述)に近い位置、もしくはスタッカ4へ向かう方向を下流という。
【0014】
画像形成装置1は、用紙収容カセット10と、ホッピングローラ11と、レジストローラ12と、ピンチローラ13と、4つの画像形成ユニット20(画像形成ユニット20K,20Y,20M,20C)と、4つのトナーカートリッジ27(トナーカートリッジ27K,27Y,27M,27C)と、4つのLED(Light Emitting Diode)ヘッド30(LEDヘッド30K,30Y,30M,30C)と、転写機構40と、定着機構50とを備えている。
【0015】
用紙収容カセット10は、例えば給紙トレイであり、記録媒体PMを収容する収容部である。用紙収容カセット10では、複数の記録媒体PMが積載可能となっている。用紙収容カセット10の下流には、ホッピングローラ11が設けられている。
【0016】
ホッピングローラ11は、用紙収容カセット10に積載された記録媒体PMの表面に圧接し、その記録媒体PMを1枚ずつ下流へ繰り出す回転部材である。ホッピングローラ11は、ホッピングローラ11の中心軸を回転軸として、ホッピングモータ86(後述)から伝達された動力により回転する。ホッピングローラ11は、記録媒体PMを搬送する経路であるガイド2に沿って、記録媒体PMを搬送するようになっている。ホッピングローラ11の下流には、レジストローラ12およびピンチローラ13が設けられている。
【0017】
レジストローラ12およびピンチローラ13は、記録媒体PMを挟持しつつ、記録媒体PMを4つの画像形成ユニット20に向けて搬送するように構成される。レジストローラ12およびピンチローラ13は、記録媒体PMを搬送する際、レジストローラ12とピンチローラ13との対向部分に記録媒体PMの先端部分が突き当てられることにより、記録媒体PMの斜行を矯正する。レジストローラ12は、レジストモータ87(後述)から伝達された動力により回転する回転部材である。レジストローラ12は、レジストローラ12の中心軸を回転軸として回転するようになっている。ピンチローラ13は、レジストローラ12に対向配置され、記録媒体PMに圧力を付与するとともにレジストローラ12に従動して回転する回転部材である。ピンチローラ13は、ピンチローラ13の中心軸を回転軸として回転するようになっている。レジストローラ12およびピンチローラ13の下流には、4つの画像形成ユニット20が設けられている。
【0018】
(画像形成ユニット20)
4つの画像形成ユニット20(画像形成ユニット20K,20Y,20M,20C)は、制御部72(後述)からの指示に基づいて、トナーを用いてトナー像を形成する機構である。4つの画像形成ユニット20は、それぞれ感光ドラム21と、除電部22と、帯電ローラ23と、現像ローラ24と、現像ブレード25と、供給ローラ26とを有している。感光ドラム21は、表面(表層部分)に静電潜像を担持するように構成される。感光ドラム21は、ドラムモータ85(後述)から伝達された動力により回転する。感光ドラム21は、帯電ローラ23により帯電し、対応するLEDヘッド30により露光される。具体的には、画像形成ユニット20Kの感光ドラム21は、LEDヘッド30Kにより露光され、画像形成ユニット20Yの感光ドラム21は、LEDヘッド30Yにより露光され、画像形成ユニット20Mの感光ドラム21は、LEDヘッド30Mにより露光され、画像形成ユニット20Cの感光ドラム21は、LEDヘッド30Cにより露光される。これにより、感光ドラム21の表面には、静電潜像が形成される。そして、現像ローラ24によりトナーが供給されることにより、感光ドラム21には、静電潜像に応じたトナー像が形成(現像)されるようになっている。除電部22は、感光ドラム21の表面に光を照射することにより感光ドラム21の表面を除電するように構成される。帯電ローラ23は、感光ドラム21の表面(表層部分)を帯電させるように構成される。帯電ローラ23は、感光ドラム21の表面(周面)に接するように配置されるとともに、所定の押し付け量により感光ドラム21に押し付けられるように配置されている。帯電ローラ23は、感光ドラム21の回転に応じて回転する。帯電ローラ23には、帯電電圧生成部81(後述)により所定の帯電電圧が印加されるようになっている。現像ローラ24は、帯電したトナーを表面に担持するように構成される。現像ローラ24は、感光ドラム21の表面(周面)に接するように配置されるとともに、所定の押し付け量により感光ドラム21に押し付けられるように配置されている。現像ローラ24は、ドラムモータ85(後述)から伝達された動力により回転する。現像ローラ24には、現像電圧生成部82(後述)により所定の現像電圧が印加されるようになっている。現像ブレード25は、現像ローラ24の表面に担持されたトナーを掻き取る部材である。現像ブレード25は、現像ローラ24の表面に担持されたトナーの厚さを調整するようになっている。供給ローラ26は、対応するトナーカートリッジ27内に収容されたトナーを、現像ローラ24に対して供給するように構成される。供給ローラ26は、現像ローラ24の表面(周面)に接するように配置されるとともに、所定の押し付け量により現像ローラ24に押し付けられるように配置されている。供給ローラ26は、ドラムモータ85(後述)から伝達された動力により回転する。これにより、供給ローラ26の表面と現像ローラ24の表面との間には摩擦が生じ、トナーが、いわゆる摩擦帯電により帯電する。供給ローラ26には、供給電圧生成部83(後述)により所定の供給電圧が印加されるようになっている。
【0019】
4つのトナーカートリッジ27(トナーカートリッジ27K,27Y,27M,27C)は、トナーを収容するように構成される。具体的には、トナーカートリッジ27Kは黒色のトナーを収容し、トナーカートリッジ27Yは黄色のトナーを収容し、トナーカートリッジ27Mはマゼンタ色のトナーを収容し、トナーカートリッジ27Cはシアン色のトナーを収容するようになっている。
【0020】
4つのLEDヘッド30(LEDヘッド30K,30Y,30M,30C)は、LEDヘッド制御部74(後述)からの指示に基づいて、4つの画像形成ユニット20の感光ドラム21に対して光をそれぞれ照射する機構である。LEDヘッド30は、例えば、LEDアレイ、LEDアレイを駆動する駆動IC(Integrated Circuit)、LEDアレイの光を集光するレンズ、データを保持するレジスタ群を搭載した基板などを含んで構成される。LEDヘッド30におけるレンズとしては、例えばセルフォック(登録商標)レンズが好適に用いられる。
【0021】
(転写機構40)
転写機構40は、4つの画像形成ユニット20K,20Y,20M,20Cにより形成されたトナー像を、記録媒体PMの被転写面上に転写するとともに、記録媒体PMを定着機構50に向けて搬送するように構成される。転写機構40は、転写ベルト41と、駆動ローラ42と、従動ローラ43と、4つの転写ローラ44(転写ローラ44K,44Y,44M,44C)とを有している。転写ベルト41は、例えば継ぎ目なく形成された高抵抗の半導電性プラスチックフィルムを含んで構成された環状のベルトである。転写ベルト41は、画像形成ユニット20により形成されたトナー像を担持可能である。転写ベルト41は、駆動ローラ42および従動ローラ43により張設されている。転写ベルト41は、搬送された記録媒体PMを静電吸着しつつ記録媒体PMを搬送するようになっている。駆動ローラ42は、ベルトモータ88(後述)から伝達された動力により記録媒体PMを定着機構50に向けて搬送するように回転する回転部材であり、転写ベルト41を循環回転させるようになっている。すなわち、転写ベルト41は、駆動ローラ42により駆動可能である。従動ローラ43は、駆動ローラ42とともに転写ベルト41を張架しつつ転写ベルト41に付与される張力を調整する部材である。従動ローラ43は、駆動ローラ42と同方向へ回転するようになっている。4つの転写ローラ44は、対応する画像形成ユニット20の感光ドラム21の表面に形成されたトナー像を、記録媒体PMの被転写面上に転写する部材である。転写ローラ44Kは、転写ベルト41を介して画像形成ユニット20Kの感光ドラム21に対して対向配置されており、転写ローラ44Yは、転写ベルト41を介して画像形成ユニット20Yの感光ドラム21に対向配置されており、転写ローラ44Mは、転写ベルト41を介して画像形成ユニット20Mの感光ドラム21に対向配置されており、転写ローラ44Cは、転写ベルト41を介して画像形成ユニット20Cの感光ドラム21に対向配置されている。すなわち、4つの転写ローラ44は、転写ベルト41の内周面側に設けられている。4つの転写ローラ44のそれぞれには、転写電圧生成部80(後述)により演算部77(後述)により決定された転写電圧が印加される。これにより、画像形成装置1では、画像形成ユニット20により形成されたトナー像が、記録媒体PMの被転写面上に転写されるようになっている。
【0022】
(定着機構50)
定着機構50は、転写機構40から搬送された記録媒体PM上に転写されたトナー像に対し熱と圧力とを付与することにより、そのトナー像を記録媒体PM上に定着させる機構である。定着機構50は、ヒートローラ51と、ヒータ52と、サーミスタ53と、加圧ローラ54とを有している。ヒートローラ51は、記録媒体PM上のトナーに対して熱を付与するように構成される。ヒートローラ51は、ヒータモータ89(後述)から伝達された動力により回転するようになっている。ヒータ52は、機構制御部75(後述)からの指示に基づいて、ヒートローラ51を加熱するように構成され、例えば、ハロゲンヒータやセラミックヒータなどを用いて構成される。サーミスタ53は、ヒートローラ51の表面温度を検出するように構成される。加圧ローラ54は、ヒートローラ51との間に圧接部が形成されるように配置され、記録媒体PM上のトナーに対して圧力を付与するように構成される。定着機構50により搬送された記録媒体PMは、記録媒体PMを搬送する経路であるガイド3に沿って、スタッカ4に排出される。ここで、スタッカ4は、トナー像が定着された記録媒体PMを積載する部位である。
【0023】
画像形成装置1は、さらに濃度センサ60と、カバー61と、サーミスタ62と、クリーニングブレード63と、廃トナータンク64と、搬送センサ65~68とを備えている。
【0024】
濃度センサ60は、例えば反射型光センサであり、この例では、1の発光センサと2の受光センサとを含んで構成される。濃度センサ60は、転写ベルト41に対向配置される。濃度センサ60は、機構制御部75(後述)からの指示に基づいて、転写ベルト41に形成されたトナー像における反射光の強度を測定することによりこのトナー像のトナー量(濃度)を検出するようになっている。
【0025】
カバー61は、トナーや紙粉などから濃度センサ60を保護する保護部材である。カバー61は、例えば、プラスチックを含んで構成される。カバー61は、転写機構40と濃度センサ60との間に配置され、濃度センサ60を使用しない場合には、濃度センサ60の上部を覆い、濃度センサ60を使用する場合には、濃度センサ60の上部を覆わないようになっている。
【0026】
サーミスタ62は、転写ベルト41に対向配置され、転写ベルト41の表面温度を検出するように構成される。具体的には、例えば、転写ベルト41の駆動量が1回転以上である場合、サーミスタ62は、転写ベルト41の温度を検出する。この場合、転写ベルト41とサーミスタ62との間の熱移流の寄与が大きくなり、転写ベルト41と4つの転写ローラ44のそれぞれとにおいて熱平衡が保たれる。このため、サーミスタ62により検出された温度の測定値Tは、転写ベルト41の温度を示すとともに4つの転写ローラ44の温度と略同一の温度を示す。すなわち、測定値Tは、転写ローラ44の温度の正確な測定値である。また、転写ベルト41の駆動量が1回転未満である場合、サーミスタ62は、同様に、転写ベルト41の温度を検出する。すなわち、転写ベルト41が停止している場合、または転写ベルト41が駆動する場合でも転写ベルト41の駆動量が少ない場合には、転写ベルト41とサーミスタ62との間の熱移流の寄与が小さいため、転写ベルト41と4つの転写ローラ44のそれぞれとにおいて熱平衡が保たれない。このため、サーミスタ62により検出された温度の測定値Tは、転写ベルト41の温度を示し、4つの転写ローラ44の温度と乖離する。すなわち、測定値Tは、転写ローラ44の温度の誤差を含む推定値である。画像形成装置1が電流検出の実行判断処理を行う場合、画像形成装置1は転写ベルト41が停止しているときの測定値Tを取得することにより、転写ベルト41が駆動しているときの測定値Tを取得するよりも、電流検出の実行判断処理を迅速に行うことができる。ここで、熱移流の要因は、例えば、画像形成動作におけるヒートローラ51の熱、記録媒体PMと転写ベルト41との摩擦熱、冷却ファン(図示せず)による空気流、転写ベルト41自体の熱伝達率と転写ローラ44自体の熱伝達率との差異などである。
【0027】
クリーニングブレード63は、例えば可撓性のゴムやプラスチック材を含み、転写ベルト41の表面上に残存した廃トナーを掻き取りクリーニングする部材である。クリーニングブレード63は、転写ベルト41を介して従動ローラ43に対向配置される。廃トナータンク64は、クリーニングブレード63により掻き取られた廃トナーを回収し、貯蔵する部材である。
【0028】
搬送センサ65~68は、搬送された記録媒体PMの位置と紙詰まりとを検出するように構成される。搬送センサ65は、ホッピングローラ11と、レジストローラ12およびピンチローラ13との間に設けられている。搬送センサ66は、レジストローラ12およびピンチローラ13と、4つの画像形成ユニット20との間に設けられている。搬送センサ67は、4つの画像形成ユニット20と定着機構50との間に設けられている。搬送センサ68は、定着機構50の下流に設けられている。
【0029】
(画像形成装置1の制御系)
図2は、画像形成装置1の制御系の一例を表すブロック図である。画像形成装置1は、記憶部70と、通信部71と、制御部72と、転写電圧生成部80と、帯電電圧生成部81と、現像電圧生成部82と、供給電圧生成部83と、4つの電流測定部84と、4つのドラムモータ85と、ホッピングモータ86と、レジストモータ87と、ベルトモータ88と、ヒータモータ89とを有している。
【0030】
記憶部70は、画像形成装置1において用いられる各種設定などの様々なデータを記憶するように構成される。記憶部70は、例えば、不揮発性のメモリを含んで構成される。記憶部70は、閾値データTDを記憶している。また、図示しないが、転写ベルト41の温度の基準値TR(後述)を記憶するようになっている。
【0031】
図3は、閾値データTDの一例を表す説明図である。閾値データTDは、転写ローラ44の温度に関する予め設定された閾値Tthが使用される期間についての情報と、閾値Tthについての情報とを含む。すなわち、閾値Tthは、転写ローラ44の温度の範囲を規定する。この例では、転写ベルト41の停止以後の経過時間tが“0”分以上であり、かつ、経過時間tが“t1”分未満である期間において、閾値Tthが“Tth1”である。また、転写ベルト41の停止以後の経過時間tが“t1”分以上であり、かつ、経過時間tが“t2”分未満である期間において、閾値Tthが“Tth1+ΔTth1”℃である。また、転写ベルト41の停止以後の経過時間tが“t2”分以上である期間において、閾値Tthが“Tth1”℃である。
【0032】
通信部71は、例えばパーソナルコンピュータなどの上位装置と通信を行うことにより印刷データなど様々なデータを受信するように構成される。この例では、通信部71は、コネクタや通信ICなどを含んで構成される。そして、通信部71は、受信した印刷データをコマンド処理部73(後述)に送信するようになっている。
【0033】
制御部72は、各ブロックの動作を制御することにより、画像形成装置1の動作を制御するように構成される。制御部72は、例えば、プログラムを実行可能なプロセッサやRAM(Random Access Memory)を用いて構成することができる。制御部72の機能は、例えば、ハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェアにより実現してもよい。制御部72は、コマンド処理部73と、LEDヘッド制御部74と、機構制御部75と、高圧制御部79とを有している。
【0034】
コマンド処理部73は、通信部71から送信された印刷データに対する処理を行うように構成される。この例では、コマンド処理部73は、マイクロプロセッサ、RAM、およびミドルウェアを含んで構成される。具体的には、例えば、コマンド処理部73は、印刷データに含まれるコマンドを解釈するとともに、コマンドの内容に基づいて、機構制御部75を制御する。また、コマンド処理部73は、印刷データに含まれる画像データをビットマップに展開するとともに、ビットマップに展開された画像データをLEDヘッド制御部74に送信するようになっている。
【0035】
LEDヘッド制御部74は、コマンド処理部73から送信された、ビットマップに展開された画像データ、および機構制御部75からの指示に基づいて、4つのLEDヘッド30を制御するように構成される。この例では、LEDヘッド制御部74は、セミカスタムLSI(Large Scale Integration)およびRAMを含んで構成される。具体的には、例えば、LEDヘッド制御部74は、ビットマップに展開された画像データを4つのLEDヘッド30それぞれが利用できるように加工する。そして、LEDヘッド制御部74は、加工された画像データおよび機構制御部75からの指示に基づいて、光を照射するように4つのLEDヘッド30を制御する。すなわち、LEDヘッド制御部74は、黒色の画像データ信号をLEDヘッド30Kに入力し、黄色の画像データ信号をLEDヘッド30Yに入力し、マゼンタ色の画像データ信号をLEDヘッド30Mに入力し、シアン色の画像データ信号をLEDヘッド30Cに入力する。これにより、LEDヘッド制御部74は、画像形成ユニット20の感光ドラム21に対して光を照射するように4つのLEDヘッド30を制御するようになっている。
【0036】
機構制御部75は、コマンド処理部73からの指示および各種センサ(サーミスタ53,62、濃度センサ60、搬送センサ65~68、4つの電流測定部84)の出力結果に基づいて、画像形成装置1の全体の動作を制御するように構成される。この例では、機構制御部75は、セミカスタムLSI(Large Scale Integration)またはマイクロプロセッサ、およびRAMを含んで構成される。具体的には、例えば、機構制御部75は、コマンド処理部73からの指示および各種センサの出力結果に基づいて、LEDヘッド制御部74を制御する。また、機構制御部75は、コマンド処理部73からの指示および各種センサの出力結果に基づいて、高圧制御部79を制御する。また、機構制御部75は、コマンド処理部73からの指示および搬送センサ65~68の出力結果に基づいて、4つのドラムモータ85、ホッピングモータ86、レジストモータ87、ベルトモータ88、およびヒータモータ89を制御する。また、機構制御部75は、コマンド処理部73からの指示およびサーミスタ53の出力結果に基づいて、ヒータ52を制御する。また、機構制御部75は、コマンド処理部73からの指示に基づいて、濃度センサ60を制御する。また、機構制御部75は、コマンド処理部73からの指示に基づいて、転写ローラ44に流れる電流を検出する電流検出の実行判断処理を行う。機構制御部75は、電流検出を行うことが決定された場合、電流検出および転写電圧の調整を行うように制御する。この際、機構制御部75は、サーミスタ62により検出された温度の測定値Tを転写ローラ44の温度の基準値TRとして記憶部70に保存する。すなわち、機構制御部75は、画像形成装置1が電流検出および転写電圧の調整を行うときの転写ローラ44の温度の正確な測定値を保存するようになっている。機構制御部75は、時間測定部76と、演算部77と、電流検出部78とを有している。
【0037】
時間測定部76は、コマンド処理部73からの指示に基づいて、時間を測定するとともに所定の時間が経過したかどうかを判定するように構成される。具体的には、例えば、画像形成装置1が電流検出の実行判断処理を行う場合、時間測定部76は、転写ベルト41の停止以後の経過時間tを測定する。また、時間測定部76は、経過時間tが“t1”分以内であるかどうかを判定する。また、時間測定部76は、経過時間tが“t2”分以内であるかどうかを判定するようになっている。
【0038】
演算部77は、コマンド処理部73からの指示に基づいて、電流検出の実行判断処理、電流検出および転写電圧の調整における様々な演算を行うように構成される。具体的には、例えば、画像形成装置1が電流検出の実行判断処理を行う場合、演算部77は、サーミスタ62により検出された転写ベルト41の駆動量が1回転未満であるときの測定値Tと、基準値TRと、閾値データTDにおける閾値Tthとに基づいて、転写ローラ44に流れる電流を検出する電流検出を行うかどうかを判定するように構成される。この例では、演算部77は、サーミスタ62により検出された転写ベルト41の駆動量が1回転未満であるときの測定値Tと基準値TRとの差と閾値Tthとを比較することにより、電流検出を行うかどうかを判定する。すなわち、演算部77は、転写ローラ44の温度の推定値としての測定値Tと基準値TRとの差と閾値Tthとを比較することにより、電流検出を行うかどうかを判定する。また、画像形成装置1が電流検出および転写電圧の調整を行う場合、演算部77は、電流測定部84の測定結果に基づいて、電流測定部84に対応する転写ローラ44の抵抗の抵抗値を算出する。すなわち、演算部77は、転写ローラ44の温度の正確な測定値としての測定値Tに応じた、転写ローラ44の抵抗の抵抗値を算出する。そして、演算部77は、この抵抗値に基づいて、4つの転写ローラ44のそれぞれに印加される転写電圧の電圧値を決定するようになっている。
【0039】
電流検出部78は、演算部77の判定結果に基づいて、電流検出を制御するように構成される。具体的には、例えば、画像形成装置1が電流検出の実行判断処理を行う場合、電流検出部78は、演算部77の判定結果に基づいて、電流検出を行うことを決定する。また、画像形成装置1が電流検出および転写電圧の調整を行う場合、電流検出部78は、4つの転写ローラ44のそれぞれに電流検出のために予め決定された転写電圧を印加するように高圧制御部79に指示する。また、電流検出部78は、電流測定部84が対応する転写ローラ44から感光ドラム21までの間に流れる電流を測定するように制御するようになっている。
【0040】
高圧制御部79は、機構制御部75からの指示に基づいて、様々な電圧の生成を制御するように構成される。具体的には、例えば、画像形成装置1が画像形成動作を行う場合、高圧制御部79は、演算部77により決定された転写電圧を生成するように転写電圧生成部80を制御し、帯電電圧を生成するように帯電電圧生成部81を制御し、現像電圧を生成するように現像電圧生成部82を制御し、供給電圧を生成するように供給電圧生成部83を制御する。この際、転写電圧は、例えば記録媒体PMの厚さなど、印刷データに含まれる様々なパラメータに基づいて微調整されてもよい。また、画像形成装置1が電流検出を行う場合、高圧制御部79は、電流検出のために予め決定された転写電圧を生成するように転写電圧生成部80を制御するようになっている。
【0041】
転写電圧生成部80は、高圧制御部79からの指示に基づいて、転写電圧を生成するとともに4つの転写ローラ44に転写電圧を供給するように構成される。帯電電圧生成部81は、高圧制御部79からの指示に基づいて、帯電電圧を生成するとともに4つの画像形成ユニット20の帯電ローラ23に帯電電圧を供給するように構成される。現像電圧生成部82は、高圧制御部79からの指示に基づいて、現像電圧を生成するとともに4つの画像形成ユニット20の現像ローラ24に現像電圧を供給するように構成される。供給電圧生成部83は、高圧制御部79からの指示に基づいて、供給電圧を生成するとともに4つの画像形成ユニット20の供給ローラ26に供給電圧を供給するように構成される。
【0042】
4つの電流測定部84のそれぞれは、例えば電流センサであり、電流検出部78からの指示に基づいて、対応する転写ローラ44に流れる電流を測定するように構成される。4つの電流測定部84のそれぞれは、転写ローラ44と感光ドラム21との間の電流が流れる経路上に設けられる。4つのドラムモータ85のそれぞれは、機構制御部75からの指示に基づいて、対応する画像形成ユニット20の感光ドラム21に動力を伝達するように構成される。ホッピングモータ86は、機構制御部75からの指示に基づいて、ホッピングローラ11に動力を伝達するように構成される。レジストモータ87は、機構制御部75からの指示に基づいて、レジストローラ12に動力を伝達するように構成される。ベルトモータ88は、機構制御部75からの指示に基づいて、駆動ローラ42に動力を伝達するように構成される。ヒータモータ89は、機構制御部75からの指示に基づいて、ヒートローラ51に動力を伝達するように構成される。
【0043】
ここで、駆動ローラ42は、本発明における「駆動部材」の一具体例に対応する。転写ベルト41は、本発明における「転写ベルト」の一具体例に対応する。転写ローラ44K,44Y,44M,44Cは、本発明における「転写体」の一具体例に対応する。制御部72は、本発明における「制御部」の一具体例に対応する。
[1.2 画像形成装置1の動作]
(A.基本動作)
この画像形成装置1では、以下のようにして、記録媒体PMに対してトナー像が転写される。
【0044】
まず、
図1,2を参照して、画像形成装置1の全体の動作について説明する。画像形成装置1は、通信部71が上位装置から印刷データを受信すると、コマンド処理部73が印刷データの処理を行い、コマンド処理部73からの指示に基づいて、印刷データに含まれるコマンドを解釈するとともに、コマンドの内容に基づいて、機構制御部75を制御する。また、コマンド処理部73は、印刷データに含まれる画像データをビットマップに展開するとともに、ビットマップに展開された画像データをLEDヘッド制御部74に送信する。機構制御部75は、コマンド処理部73からの指示および各種センサの出力結果に基づいて、画像形成装置1の全体の動作を制御する。LEDヘッド制御部74は、コマンド処理部73から送信された、ビットマップに展開された画像データ、および機構制御部75からの指示に基づいて、4つのLEDヘッド30を制御する。高圧制御部79は、機構制御部75からの指示に基づいて、転写電圧生成部80、帯電電圧生成部81、現像電圧生成部82、供給電圧生成部83を制御する。画像形成装置1は、このように4つのLEDヘッド30、転写電圧生成部80、帯電電圧生成部81、現像電圧生成部82、供給電圧生成部83、4つのドラムモータ85、ホッピングモータ86、レジストモータ87、ベルトモータ88、ヒータモータ89、およびヒータ52を制御することにより、記録媒体PMに対して画像形成動作を行う。
【0045】
画像形成装置1では、LEDヘッド30が画像形成ユニット20において表面が帯電した感光ドラム21に対して選択的に光を照射することにより、感光ドラム21の表面には、静電潜像が形成される。そして、感光ドラム21には、静電潜像に応じてトナー像が形成される。
【0046】
ホッピングローラ11は、ホッピングモータ86の駆動により、用紙収容カセット10に積載された記録媒体PMを下流に向けて供給する。記録媒体PMは、ガイド2に沿ってレジストローラ12およびピンチローラ13に向けて搬送される。その際、記録媒体PMは、レジストローラ12およびピンチローラ13の対向部分に記録媒体PMの前方端縁が突き当てられることにより記録媒体PMの斜行が矯正される。そののち、レジストローラ12およびピンチローラ13は、記録媒体PMを挟持しつつ回転することにより、記録媒体PMを画像形成ユニット20に向けて搬送する。
【0047】
こののち、転写ベルト41は、循環回転することにより、記録媒体PMを定着機構50へ向けて搬送する。その際、記録媒体PMは、感光ドラム21と転写ローラ44との間を通過する。画像形成装置1では、画像形成ユニット20においてトナー像が感光ドラム21の表面に形成されると、転写機構40が転写処理を行う。その際、転写機構40では、転写ベルト41が記録媒体PMを搬送しながら、転写ローラ44が感光ドラム21の表面に形成されたトナー像を引き寄せる。その結果、トナー像が感光ドラム21から記録媒体PMへ転写される。
【0048】
定着機構50は、記録媒体PMが搬送されると、定着処理を行う。その際に、定着機構50は、記録媒体PMの表面に転写されたトナー像に対する加熱と加圧とを行い、そのトナー像を溶融させて記録媒体PMに定着させる。画像形成装置1は、トナー像が記録媒体PMに定着されると、記録媒体PMをスタッカ4に向けて搬送し、記録媒体PMをスタッカ4の上に排出する。
【0049】
画像形成装置1の全体の動作は、以上の通りである。
【0050】
(B.電流検出の実行判断処理)
以下に、画像形成装置1における電流検出の実行判断処理について詳細に説明する。この例では、まず、画像形成装置1に電源が投入されることにより、画像形成装置1が初期化処理を行う。初期化処理では、機構制御部75は、コマンド処理部73からの指示に基づいて、高圧制御部79、4つのドラムモータ85、およびベルトモータ88を制御することにより、4つの画像形成ユニット20および転写機構40の動作を制御する。すなわち、画像形成ユニット20の各ローラおよび転写ローラ44が回転するとともに、転写ベルト41が1回転以上駆動することにより、所定の時間が経過すると転写ベルト41と4つの転写ローラ44において熱平衡が保たれる。そして、機構制御部75は、電流検出および転写電圧の調整を行うように制御する。この際、機構制御部75は、サーミスタ62により検出された温度の測定値Tを転写ローラ44の温度の基準値TRとして記憶部70に保存する。そして、画像形成装置1は電流検出の実行判断処理を開始する。
【0051】
図4は、画像形成装置1における電流検出の実行判断処理の一動作例を表す。電流検出の実行判断処理では、画像形成装置1は、サーミスタ62により検出された転写ベルト41の駆動量が1回転未満であるときの測定値Tと、基準値TRと、閾値Tthとに基づいて、電流検出を行うかどうかを判定し、この判定結果に基づいて電流検出を行うことを決定する。以下に、この動作について詳細に説明する。
【0052】
まず、機構制御部75は、コマンド処理部73からの指示に基づいて、転写ベルト41を停止するように制御する(ステップS101)。具体的には、例えば、機構制御部75は、コマンド処理部73からの指示に基づいて、初期化処理において駆動された4つのドラムモータ85、およびベルトモータ88を停止するように制御する。すなわち、駆動ローラ42により駆動される転写ベルト41が停止する。そして、時間測定部76は、転写ベルト41の停止以後の経過時間tの測定を開始する。
【0053】
次に、通信部71は、上位装置から印刷データを受信し、印刷データをコマンド処理部73に送信する(ステップS102)。
【0054】
次に、時間測定部76は、コマンド処理部73からの指示に基づいて、経過時間tが“t1”以内かどうかを判定する(ステップS103)。経過時間tが“t1”を超える場合(ステップS103において“N”)、ステップS107の処理に進む。
【0055】
経過時間tが“t1”以内である場合、演算部77は、サーミスタ62の測定値Tと基準値TRとの差の絶対値を算出する(ステップS104)。具体的には、例えば、演算部77は、サーミスタ62から測定された温度の測定値Tを取得するとともに記憶部70から保存された基準値TRを取得することにより、測定値Tと基準値TRとの差の絶対値を算出する。
【0056】
次に、演算部77は、測定値Tと基準値TRとの差の絶対値が“Tth1”より大きいかどうかを判定する(ステップS105)。具体的には、例えば、演算部77は、記憶部70の閾値データTDから閾値Tthである“Tth1”を取得することにより、測定値Tと基準値TRとの差の絶対値と“Tth1”とを比較する。これにより、演算部77は、測定値Tと基準値TRとの差の絶対値が“Tth1”より大きいかどうかを判定する。測定値Tと基準値TRとの差の絶対値が“Tth1”以下である場合(ステップS105において“N”)、この処理は終了する。
【0057】
測定値Tと基準値TRとの差の絶対値が“Tth1”より大きい場合(ステップS105において“Y”)、電流検出部78は、演算部77の判定結果に基づいて、電流検出を行うことを決定する(ステップS106)。
【0058】
経過時間tが“t1”を超える場合(ステップS103において“N”)、時間測定部76は、経過時間tが“t2”以内かどうかを判定する(ステップS107)。経過時間tが“t2”を超える場合(ステップS107において“N”)、ステップS111の処理に進む。
【0059】
経過時間tが“t2”以内である場合、ステップS104と同様に、演算部77は、サーミスタ62の測定値Tと基準値TRとの差の絶対値を算出する(ステップS108)。
【0060】
次に、演算部77は、測定値Tと基準値TRとの差の絶対値が“Tth1+ΔTth1”より大きいかどうかを判定する(ステップS109)。具体的には、例えば、演算部77は、記憶部70の閾値データTDから閾値Tthである“Tth1+ΔTth1”を取得することにより、測定値Tと基準値TRとの差の絶対値と“Tth1+ΔTth1”とを比較する。これにより、演算部77は、測定値Tと基準値TRとの差の絶対値が“Tth1+ΔTth1”より大きいかどうかを判定する。測定値Tと基準値TRとの差の絶対値が“Tth+ΔTth1”以下である場合(ステップS109において“N”)、この処理は終了する。
【0061】
測定値Tと基準値TRとの差の絶対値が“Tth1+ΔTth1”より大きい場合(ステップS109において“Y”)、電流検出部78は、ステップS106と同様に、演算部77の判定結果に基づいて、電流検出を行うことを決定する(ステップS110)。
【0062】
経過時間tが“t2”を超える場合(ステップS107において“N”)、ステップS104と同様に、演算部77は、サーミスタ62の測定値Tと基準値TRとの差の絶対値を算出する(ステップS111)。
【0063】
次に、演算部77は、ステップS105と同様に、測定値Tと基準値TRとの差の絶対値が“Tth1”より大きいかどうかを判定する(ステップS112)。測定値Tと基準値TRとの差の絶対値が“Tth1”以下である場合(ステップS112において“N”)、この処理は終了する。
【0064】
測定値Tと基準値TRとの差の絶対値が“Tth1”より大きい場合(ステップS112において“Y”)、電流検出部78は、ステップS106と同様に、演算部77の判定結果に基づいて、電流検出を行うことを決定する(ステップS113)。
【0065】
以上で、このフローは終了する。
【0066】
なお、この例では、初期化処理において転写電圧が調整された後、電流検出の実行判断処理を開始するようにしたが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、初期化処理以外のタイミングにおいて転写電圧が調整された後に電流検出の実行判断処理を開始するようにしてもよい。
【0067】
(C.電流検出および転写電圧の調整)
図5は、電流検出および転写電圧の調整の一動作例を表す。ステップS106,S110,S113において電流検出部78が電流検出を行うことを決定する場合、画像形成装置1は、電流検出および転写電圧の調整を行う。以下にこの動作について、詳細に説明する。
【0068】
まず、制御部72は、電流検出部78の決定に基づいて、転写ベルト41を駆動するように制御する(ステップS201)。具体的には、例えば、機構制御部75は、コマンド処理部73からの指示に基づいて、高圧制御部79、4つのドラムモータ85、およびベルトモータ88を制御することにより、4つの画像形成ユニット20および転写機構40の動作を制御する。すなわち、画像形成ユニット20の各ローラおよび転写ローラ44が回転するとともに、転写ベルト41が1回転以上駆動することにより、所定の時間が経過すると転写ベルト41と4つの転写ローラ44において熱平衡が保たれる。
【0069】
次に、制御部72は、転写電圧生成部80が転写ローラ44に転写電圧を印加するように制御する(ステップS202)。具体的には、例えば、電流検出部78は、4つの転写ローラ44のそれぞれに電流検出のために予め決定された転写電圧を印加するように高圧制御部79に指示する。高圧制御部79は、電流検出部78からの指示に基づいて、電流検出のために予め決定された転写電圧を生成するように転写電圧生成部80を制御する。そして、転写電圧生成部80は転写ローラ44に転写電圧を印加する。
【0070】
次に、電流検出部78は、電流測定部84が転写ローラ44に流れる電流を測定するように制御する(ステップS203)。そして、電流測定部84は電流を測定する。
【0071】
次に、演算部77は、4つの電流測定部84の測定結果に基づいて、電流測定部84に対応する転写ローラ44の抵抗の抵抗値を算出する(ステップS204)。具体的には、例えば、演算部77は、ステップS202において印加された転写電圧の電圧値とステップS203において測定された電流の電流値との比を転写ローラ44の抵抗の抵抗値として算出する。この抵抗値は、温度に相関し、温度が高くなるほど小さくなる。
【0072】
次に、演算部77は、この抵抗値に基づいて、4つの転写ローラ44のそれぞれに印加される転写電圧の電圧値を決定する(ステップS205)。具体的には、例えば、転写電圧の電圧値は転写ローラ44の抵抗の抵抗値に比例するため、演算部77は、所定の一次式に算出された抵抗値を代入することにより転写電圧の電圧値を決定する。
【0073】
次に、機構制御部75は、サーミスタ62により検出された温度の測定値Tを転写ローラ44の温度の新たな基準値TRとして記憶部70に保存する(ステップS206)。
【0074】
以上で、このフローは終了する。
【0075】
(D.閾値データの決定方法)
閾値データTDにおける“ΔTth1”、“t1”、“t2”は、例えば実験により予め決定される。以下に、“ΔTth1”、“t1”、“t2”の決定方法について詳細に説明する。
【0076】
(転写ベルト41の温度が転写ローラ44の温度よりも低い場合)
図6は、転写ベルト41および転写ローラ44の温度変化を表す説明図である。この例では、転写ベルト41の温度は、サーミスタ62により検出された温度の測定値Tであり、転写ローラ44の温度は、“ΔTth1”を決定するために転写ローラ44に設けられた温度センサの測定値である。
図6において横軸が時間を表し縦軸が温度を表す。タイミングtm0は、転写ベルト41が停止するタイミングである。すなわち、この例では、タイミングtm0以前においてサーミスタ62により検出された温度の測定値Tは、転写ベルト41の温度を示すとともに4つの転写ローラ44の温度と略同一の温度を示す。また、タイミングtm0より後においてサーミスタ62により検出された温度の測定値Tは、転写ベルト41の温度を示し、4つの転写ローラ44の温度と乖離し、転写ベルト41の温度は、転写ローラ44の温度よりも低くなる。転写ローラ44の温度の基準値TRは、例えば、タイミングtm0における温度であり、“TR1”℃である。タイミングtm1は、基準値TRと転写ローラ44の温度との差が“Tth1”になるタイミングとして決定される。“ΔTth1”は、タイミングtm1における転写ローラ44の温度と転写ベルト41の温度との差として決定される。タイミングtm0より後において、時間が経過すると転写ローラ44の温度と転写ベルト41の温度との差が徐々に大きくなる。さらに時間が経過すると転写ローラ44の温度と転写ベルト41の温度との差は徐々に小さくなり、転写ローラ44の温度および転写ベルト41の温度のいずれも環境温度に近づく。タイミングtm2は、タイミングtm1より後において、転写ローラ44の温度と転写ベルト41の温度との差が所定の温度差以下になるタイミングとして決定される。この場合、閾値データTDにおいて、“t1”はタイミングtm0からタイミングtm1までの時間であり、“t2”はタイミングtm1からタイミングtm2までの時間である。すなわち、転写ベルト41の停止以後の経過時間tが“t1”分以上であり、かつ、経過時間tが“t2”分未満である期間において、閾値Tthは“Tth1+ΔTth1”であり、“Tth1”よりも大きい。
【0077】
(転写ベルト41の温度が転写ローラ44の温度よりも高い場合)
図7は、転写ベルト41および転写ローラ44の温度変化を表す説明図である。この例では、タイミングtm0より後の時間においてサーミスタ62により検出された温度の測定値Tは、転写ベルト41の温度を示し、4つの転写ローラ44の温度と乖離し、転写ベルト41の温度は、転写ローラ44の温度よりも高くなる。この例では、転写ローラ44の温度の基準値TRは、例えば、タイミングtm0における温度であり、“TR1”℃である。タイミングtm1は、基準値TRと転写ローラ44の温度との差が“Tth1”になるタイミングとして決定される。“ΔTth1”は、タイミングtm1における転写ベルト41の温度と転写ローラ44の温度との差として決定される。タイミングtm0より後において、時間が経過すると転写ベルト41の温度と転写ローラ44の温度との差が徐々に大きくなる。さらに時間が経過すると転写ベルト41の温度と転写ローラ44の温度との差は徐々に小さくなり、転写ローラ44の温度および転写ベルト41の温度のいずれも環境温度に近づく。タイミングtm2は、タイミングtm1より後において、転写ベルト41の温度と転写ローラ44の温度との差が所定の温度差以下になるタイミングとして決定される。この場合、閾値データTDにおいて転写ベルト41の停止以後の経過時間tが“t1”分以上であり、かつ、経過時間tが“t2”分未満である期間において、閾値Tthは“Tth1-ΔTth1”であり、“Tth1”よりも小さい。
【0078】
[1.3 画像形成装置1の作用]
次に、比較例と対比して、本実施の形態の作用を説明する。本比較例に係る画像形成装置1Rは、時間によらず同一の大きさである閾値Tthに基づいて電流検出の実行判断処理を行うように構成される。
【0079】
図8は、画像形成装置1Rの制御系の一例を表すブロック図である。画像形成装置1Rは、記憶部70Rと、制御部72Rとを有している。記憶部70Rは、閾値データTDRを記憶している。
【0080】
図9は、画像形成装置1Rの閾値データTDRの一例を表す説明図である。
図8において横軸が経過時間tを表し縦軸が温度を表す。画像形成装置1Rにおいて閾値データTDRの閾値Tthは時間によらず“Tth1”である。一方、画像形成装置1では、経過時間tが“0”分以上であり、かつ、経過時間tが“t1”分未満である期間および経過時間tが“t2”分以上である期間において、閾値データTDの閾値Tthは“Tth1”である。また、経過時間tが“t1”分以上であり、かつ、経過時間tが“t2”分未満である期間において、閾値Tthは“Tth1+ΔTth1”である。
【0081】
制御部72Rは、機構制御部75Rを有している。機構制御部75Rは、時間測定部76Rと、演算部77Rとを有している。時間測定部76Rは、コマンド処理部73からの指示に基づいて時間を測定する。演算部77Rは、画像形成装置1Rが電流検出の実行判断処理を行う場合、サーミスタ62により検出された転写ベルト41の駆動量が1回転未満であるときの測定値Tと、基準値TRと、閾値データTDRにおける閾値Tthとに基づいて、転写ローラ44に流れる電流を検出する電流検出を行うかどうかを判定する。
【0082】
図10は、画像形成装置1Rにおける電流検出の実行判断処理の一動作例を表す。以下に、この動作について詳細に説明する。
【0083】
まず、機構制御部75Rは、コマンド処理部73からの指示に基づいて、転写ベルト41を停止するように制御する(ステップS101)。次に、通信部71は、上位装置から印刷データを受信し、印刷データをコマンド処理部73に送信する(ステップS102)。次に、演算部77Rは、サーミスタ62の測定値Tと基準値TRとの差の絶対値を算出する(ステップS104)。具体的には、例えば、演算部77Rは、サーミスタ62から測定された温度の測定値Tを取得するとともに記憶部70から保存された基準値TRを取得することにより、測定値Tと基準値TRとの差の絶対値を算出する。次に、演算部77Rは、測定値Tと基準値TRとの差の絶対値が“Tth1”より大きいかどうかを判定する(ステップS105R)。測定値Tと基準値TRとの差の絶対値が“Tth1”以下である場合(ステップS105Rにおいて“N”)、この処理は終了する。測定値Tと基準値TRとの差の絶対値が“Tth1”より大きい場合(ステップS105Rにおいて“Y”)、電流検出部78は、演算部77Rの判定結果に基づいて、電流検出を行うことを決定する(ステップS106)。以上で、このフローは終了する。
【0084】
図11は、画像形成装置1Rの転写ベルト41および転写ローラ44の温度変化を表す説明図である。この例では、転写ベルト41の温度は、サーミスタ62により検出された温度の測定値Tであり、転写ローラ44の温度は、画像形成装置1Rにおいて未知の情報である。
図11において横軸が時間を表し縦軸が温度を表す。
図6と同様に、タイミングtm0は、転写ベルト41が停止するタイミングである。タイミングtm0以前においてサーミスタ62により検出された温度の測定値Tは、転写ベルト41の温度を示すとともに4つの転写ローラ44の温度と略同一の温度を示す。また、タイミングtm0より後においてサーミスタ62により検出された温度の測定値Tは、転写ベルト41の温度を示し、4つの転写ローラ44の温度と乖離し、転写ベルト41の温度は、転写ローラ44の温度よりも低くなる。転写ローラ44の温度の基準値TRは、この例では、タイミングtm0より前に転写電圧が調整されたタイミングにおける温度であり、“TR2”℃である。
【0085】
タイミングtm3において、転写ローラ44の温度が“T31”℃であり、転写ベルト41の温度が“T32”℃である。この例では、転写ローラ44の温度である“T31”と基準値TRである“TR2”との差は閾値Tthである“Tth1”よりも小さい。また、転写ベルト41の温度である“T32”と基準値TRである“TR2”との差は閾値Tthである“Tth1”よりも大きい。この場合、転写ローラ44の温度が基準値TRに近いため、すでに調整された転写電圧を使用することが望ましいが、演算部77Rは“T32”と“TR2”との差と“Tth1”とを比較するため、電流検出部78は、電流検出を実行することを決定する。すなわち、画像形成装置1Rは、電流検出および転写電圧の調整を行う。
【0086】
一方、画像形成装置1では、例えばタイミングtm3が、タイミングtm0から“t1”分以後であり、かつ、タイミングtm0から“t2”分より前である場合、演算部77は測定値Tである“T32”と基準値TRである“TR2”との差と閾値Tthである“Tth1+ΔTth1”とを比較する。“T32”と“TR2”との差が“Tth1”よりも小さくても“Tth1+ΔTth1”よりも大きい場合には電流検出部78が電流検出を実行することを決定することなく、電流検出の実行判断処理が終了する。この場合、画像形成装置1は、電流検出および転写電圧の調整を行わなくてよい。このように、画像形成装置1は、すでに調整された転写電圧を使用することが望ましい場合に、電流検出の実行を防ぐことができる。
【0087】
[1.4 効果]
以上のように本実施の形態の画像形成装置1では、演算部77は、サーミスタ62により検出された転写ベルト41の駆動量が1回転未満であるときの測定値Tと前回の電流検出および転写電圧の調整を行ったときの基準値TRとの差と閾値Tthとを比較することにより、電流検出を行うかどうかを判定するようにした。転写ベルト41の停止以後の経過時間tが“t1”分以上であり、かつ、経過時間tが“t2”分未満である期間において、閾値Tthが“Tth1+ΔTth1”℃であるようにした。経過時間tが“t1”未満である期間および“t2”分以上である期間を含む期間において、閾値Tthが“Tth1”℃であるようにした。これにより、例えば、経過時間tが“t1”分以上であり、かつ、経過時間tが“t2”分未満である期間において、測定値Tと基準値TRの差が“Tth1”よりも大きくても“Tth1+ΔTth1”以下である場合には電流検出の実行を防ぐことができる。この結果、例えば画像形成動作において、転写ベルト41を再駆動する場合、電流検出および転写電圧の調整を省くことができるので、画像形成動作の所要時間を短縮できる。このため、ユーザの利便性を向上することができる。また、電流検出および転写電圧の調整を省くことができるので、電力の消費を抑えることができる。
【0088】
また、本実施の形態の画像形成装置1では、演算部77は、電流検出により検出された電流に基づいて転写ローラ44に印加される転写電圧の電圧値を決定するようにした。これにより、転写ローラ44の温度に応じた、転写ローラ44の抵抗の抵抗値に基づいて転写電圧を設定することができる。すなわち、例えば、サーミスタ62の温度の測定値Tに応じて転写ローラ44の抵抗値を推定し、推定された抵抗値により転写電圧を設定する場合、サーミスタ62の温度は、転写ローラ44の温度と乖離する可能性がある。この場合、推定された抵抗値の誤差が大きくなり、転写される画像の品質が低下する可能性がある。一方、画像形成装置1では、電流検出により検出された電流に基づいて、例えば転写ローラ44の温度の測定値に応じた、転写ローラ44の抵抗の抵抗値を算出することにより、転写ローラ44に印加される転写電圧の電圧値を決定することができるので、転写される画像の品質を高めることができる。
【0089】
<2.変形例>
[変形例1]
上記実施の形態では、画像形成ユニット20が形成したトナー像を、記録媒体PMに直接転写するようにしたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、画像形成ユニット20が形成したトナー像を、一旦中間転写ベルトに転写し、中間転写ベルトに転写されたトナー像を記録媒体PMに転写してもよい。
【0090】
図12は本変形例に係る画像形成装置100の一構成例を表す構成図である。画像形成装置100は、ロール紙フィーダ110と、5つの画像形成ユニット20(画像形成ユニット20W,20Y,20M,20C,20K)と、5つのトナーカートリッジ27(トナーカートリッジ27W,27Y,27M,27C、27K)と、5つのLEDヘッド30(LEDヘッド30W,30Y,30M,30C,30K)と、転写機構140と、定着機構50とリワインダ116とを備えている。なお、この例では、記録媒体PMはロール紙である。
【0091】
ロール紙フィーダ110は、記録媒体PMの給紙を行う機構である。ロール紙フィーダ110は、記録媒体PMを繰り出す繰出ローラ111と、記録媒体PMを切断するカッター112と、記録媒体PMを搬送する搬送ローラ113とを有している。画像形成ユニット20Wは、他の画像形成ユニット20と同様に、感光ドラム21と、除電部22と、帯電ローラ23と、現像ローラ24と、現像ブレード25と、供給ローラ26とを有している。画像形成ユニット20Wの感光ドラム21は、LEDヘッド30Wにより露光される。トナーカートリッジ27Wは白色のトナーを収容する。転写機構140は、5つの画像形成ユニット20により形成されたトナー像を記録媒体PMの被転写面上に転写するように構成される。転写機構140は、中間転写ベルト141と、駆動ローラ42と、従動ローラ43と、5つの転写ローラ44(転写ローラ44W,44Y,44M,44C,44K)と、二次転写対向ローラ145と、二次転写ローラ146とを有している。中間転写ベルト141は、継ぎ目なく形成された環状のベルトであり、画像形成ユニット20により形成されたトナー像を担持可能である。中間転写ベルト141は、駆動ローラ42、従動ローラ43、および二次転写対向ローラ145により張設されている。二次転写対向ローラ145は、中間転写ベルト141を介して二次転写ローラ146に対向配置されている。転写ローラ44Wは、中間転写ベルト141を介して画像形成ユニット20Wの感光ドラム21に対して対向配置されている。転写ローラ44Wには、他の画像形成ユニット20と同様に、所定の転写電圧が印加される。二次転写ローラ146は、中間転写ベルト141を介して二次転写対向ローラ145に対して対向配置されている。二次転写ローラ146には、所定の転写電圧が印加される。リワインダ116は、搬送された記録媒体PMを収容する。画像形成装置100は、さらに、搬送ローラ114と、排出ローラ115と、サーミスタ162とを備えている。搬送ローラ114は、ロール紙フィーダ110により搬送された記録媒体PMを転写機構140に向けて搬送する。排出ローラ115は、定着機構50により搬送された記録媒体PMをリワインダ116に向けて排出する。サーミスタ162は、中間転写ベルト141に対向配置され、中間転写ベルト141の表面温度を検出する。
【0092】
画像形成装置100では、ロール紙フィーダ110により給紙された記録媒体PMが、搬送ローラ114により搬送され、転写機構140における二次転写対向ローラ145と二次転写ローラ146との間を通過する。この際、転写機構140において、5つの画像形成ユニット20により形成されたトナー像が5つの転写ローラ44により中間転写ベルト141に転写され、中間転写ベルト141に転写されたトナー像がさらに二次転写ローラ146により記録媒体PMに転写される。これにより、記録媒体PMにはトナー像が形成され、定着機構50によりトナー像が記録媒体PMに定着される。そして、記録媒体PMが排出ローラ115によりリワインダ116に排出され、リワインダ116は記録媒体PMを収容する。このように構成された画像形成装置100においても、画像形成装置1と同様に、電流検出の実行判断処理を行うことができる。
【0093】
[変形例2]
上記実施の形態では、ステップS102において、通信部71が上位装置から印刷データを受信する場合にステップS103以降の電流検出の実行判断処理を行うようにしたが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、通信部71による印刷データの受信する場合に限らずステップS103以降の電流検出の実行判断処理を行うようにしてもよい。この場合、サーミスタ62の測定値Tと基準値TRとの差の絶対値が閾値Tthより大きい場合に都度転写電圧の調整が行われる。このため、通信部71が印刷データを受信することにより画像形成動作を行う際に、転写電圧の調整を省略することができるので、ユーザの利便性を向上することができる。
【0094】
[変形例3]
上記実施の形態では、ステップS109において、演算部77が測定値Tと基準値TRとの差の絶対値が“Tth1+ΔTth1”より大きいかどうかを判定するようにしたが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、“ΔTth1”を測定値Tに加算することにより補正された測定補正値と基準値TRとの差の絶対値が“Tth1より大きいかどうかを判定するようにしてもよい。すなわち、本変形例に係る演算部は、例えば、転写ベルト41の停止以後の経過時間tが“t1”分以上であり、かつ、経過時間tが“t2”分未満である期間において、補正された測定補正値と基準値TRとの差と閾値Tthとを比較することにより、電流検出を行うかどうかを判定するようにしてもよい。
【0095】
[その他の変形例]
また、これらの変形例のうちの2以上を組み合わせてもよい。
【0096】
以上、いくつかの実施の形態および変形例を挙げて本技術を説明したが、本技術はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0097】
例えば、上記の実施の形態等では、電子写真方式により、記録媒体PMに画像を形成したが、これに限定されるものではなく、どのような方式で画像を形成してもよい。また、上記の実施の形態等では、4つの画像形成ユニット20により黒色、黄色、マゼンタ色、およびシアン色の4色の画像を形成できるようにしたが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、1以上の画像形成ユニットにより画像を形成できるようにしてもよい。
【0098】
例えば、上記の実施の形態等では、本技術を単機能のプリンタに適用したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、コピー機能、ファックス機能、スキャン機能、プリント機能などを有する、いわゆる多機能周辺装置(MFP;Multi Function Peripheral)に適用してもよい。
【符号の説明】
【0099】
1,1R,100…画像形成装置、2,3…ガイド、4…スタッカ、10…用紙収容カセット、11…ホッピングローラ、12…レジストローラ、13…ピンチローラ、20,20C,20K,20M,20W,20Y…画像形成ユニット、21…感光ドラム、22…除電部、23…帯電ローラ、24…現像ローラ、25…現像ブレード、26…供給ローラ、27,27C,27K,27M,27W,27Y…トナーカートリッジ、30,30C,30K,30M,30W,30Y…LEDヘッド、40,140…転写機構、41…転写ベルト、42…駆動ローラ、43…従動ローラ、44,44C,44K,44M,44W,44Y…転写ローラ、50…定着機構、51…ヒートローラ、52…ヒータ、53,62,162…サーミスタ、54…加圧ローラ、60…濃度センサ、61…カバー、63…クリーニングブレード、64…廃トナータンク、65,66,67,68…搬送センサ、70,70R…記憶部、71…通信部、72,72R…制御部、73…コマンド処理部、74…LEDヘッド制御部、75,75R…機構制御部、76,76R…時間測定部、77,77R…演算部、78…電流検出部、79…高圧制御部、80…転写電圧生成部、81…帯電電圧生成部、82…現像電圧生成部、83…供給電圧生成部、84…電流測定部、85…ドラムモータ、86…ホッピングモータ、87…レジストモータ、88…ベルトモータ、89…ヒータモータ、110…ロール紙フィーダ、111…繰出ローラ、112…カッター、113,114…搬送ローラ、115…排出ローラ、116…リワインダ、141…中間転写ベルト、145…二次転写対向ローラ、146…二次転写ローラ。