(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】車両の荷室構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20230905BHJP
B60R 5/04 20060101ALI20230905BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
B62D25/20 J
B60R5/04 T
B60R16/02 610B
(21)【出願番号】P 2019230099
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 昭久
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-064378(JP,A)
【文献】特開2015-101322(JP,A)
【文献】特開2019-145872(JP,A)
【文献】特開2012-109629(JP,A)
【文献】特開2000-013957(JP,A)
【文献】特開2011-152846(JP,A)
【文献】特開平08-108750(JP,A)
【文献】特開2008-012957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B60R 5/04
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷室フロアを構成するボードと、
前記ボードの下方域に設置される車載機器と、
前記ボードと前記車載機器との間に設けられ、前記車載機器を覆うカバーと
を備える車両の荷室構造であって、
前記ボードは、端部に設けられた切り欠きを有し、
前記カバーは、漸次低くなるように傾斜した上面を有し、
該上面には、上面視で前記切り欠きの凹部最深部とオーバーラップするとともに、前記上面の周縁のうち前記切り欠きの直下に位置する前記上面の高さよりも低い周縁に到る水路を有する、車両の荷室構造。
【請求項2】
前記切り欠きは、前記ボードの車両幅方向の端部に設けられ、
前記上面は、車両前後方向に漸次低くなるように傾斜し、
前記水路は、前記凹部最深部よりも車両幅方向内側から車両幅方向外側に到る、請求項1に記載の車両の荷室構造。
【請求項3】
前記水路は、前記カバーに設けられる補強ビードによって形成される、請求項1又は2に記載の車両の荷室構造。
【請求項4】
前記カバーの車載機器側にインシュレータが設置され、
前記切り欠きの直下よりも前記水路の上流側に前記インシュレータを取り付けるためのクリップの取付穴が設けられる、請求項1から3のうちいずれか一項に記載の車両の荷室構造。
【請求項5】
前記水路の深さは、前記クリップの挿入量よりも深い、請求項4に記載の車両の荷室構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の荷室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車の車体に取り付けられる車載機器が開示されている。かかる車載機器は、本体ケースと、本体ケースに被せる防水カバーとに夫々固定用のブラケットが突設され、防水カバーのブラケットにボルト穴が設けられると共に、本体ケースのブラケットにナットが固定され、ボルト穴に通したボルトをナットで締結固定して組み立てられ、ブラケットが傾斜した状態で、自動車の車体に取り付けられる。また、車載機器において、防水カバーより突設したブラケットのうち、突出端側が上端位置となり、防水カバーとの接続側が下端位置となるブラケットには、両側部に接続側から突出端側にかけて補強用リブが突設されていると共に、これら両側部の補強用リブと中央のボルト穴との間に、防水カバーとの接続側より上方突出端側に向かって、逆に下方傾斜させた凹状の排水溝を設けている。
【0003】
特許文献2には、筐体を有する電子機器が開示されている。かかる電子機器の筐体の上面には、水を右側面または左側面の側に誘導して排出させるための導水手段を設けられる。導水手段は、表面から窪んだ凹溝により水を誘導する導水路、又は、表面から突出した線状凸部により水の流れを遮って誘導する遮水体、の少なくとも一つから構成される。また、導水手段は、上方から見て直線状または曲線状をなして、「前面側の右側面から後面側の左側面へ向かう構成」または「前面側の左側面から後面側の右側面へ向かう構成」のいずれかからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-13957号公報
【文献】特許5382157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両の荷室構造においても、荷室フロアにこぼれた液体が荷室フロアの下方域に設置された車載機器に浸入すると、車載機器の故障の原因となるので好ましくない。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、荷室フロアにこぼれた液体が荷室フロアの下方域に設置された車載機器に浸入するのを防止できる車両の荷室構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
少なくとも一実施形態に係る車両の荷室構造は、荷室フロアを構成するボードと、前記ボードの下方域に設置される車載機器と、前記ボードと前記車載機器との間に設けられ、前記車載機器を覆うカバーとを備える車両の荷室構造であって、前記ボードは、端部に設けられた切り欠きを有し、前記カバーは、漸次低くなるように傾斜した上面を有し、該上面には、上面視で前記切り欠きの凹部最深部とオーバーラップするとともに、前記上面の周縁のうち前記切り欠きの直下に位置する前記上面の高さよりも低い周縁に至る水路を有する。
【0008】
上記の構成によれば、荷室フロアにこぼれた液体は荷室フロアを構成するボードの切り欠きからカバーの上面又は水路に滴下する。そして、カバーの上面又は水路に滴下した液体は水路を通りカバー上面の周縁から排出される。これにより、荷室フロアにこぼれた液体が荷室フロアの下方域に設置された車載機器に浸入するのを防止できる。
【0009】
一実施形態では、上記の構成において、前記切り欠きは、前記ボードの車両幅方向の端部に設けられ、前記上面は、車両前後方向に漸次低くなるように傾斜し、前記水路は、前記凹部最深部よりも車両幅方向内側から車両幅方向外側に到る。
【0010】
上記の構成によれば、荷室フロアにこぼれた液体は荷室フロアを構成するボードの切り欠きからカバーの上面又は水路に滴下する。そして、カバーの上面又は水路に滴下した液体は水路を通り車両幅方向外側に排出される。これにより、荷室フロアにこぼれた液体が荷室フロアの下方域に設置された車載機器に浸入するのをより確実に防止できる。
【0011】
一実施形態では、上記の構成において、前記水路は、前記カバーに設けられる補強ビードによって形成される。
【0012】
上記の構成によれば、水路はカバーに設けられた補強ビードによって形成されるので、補強ビードとは別に水路を設ける必要がない。
【0013】
一実施形態では、上記の構成において、前記カバーの車載機器側にインシュレータが設置され、前記切り欠きの直下よりも前記水路の上流側に前記インシュレータを取り付けるためのクリップの取付穴が設けられる。
【0014】
上記の構成によれば、取付穴は、切り欠きの直下よりも水路の上流側に設けられるので、荷室フロアにこぼれた液体が荷室フロアを構成するボードの切り欠きから滴下しカバーの上面を流れても取付穴から車載機器に滴下するのを防止できる。
【0015】
一実施形態では、上記の構成において、前記水路の深さは、前記クリップの挿入量よりも深い。
【0016】
上記の構成によれば、クリップの先端がカバーの上面から突出することがなく、カバーの上面から突出したクリップの先端を切断する等の後処理の必要がない。
【発明の効果】
【0017】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、荷室フロアにこぼれた液体が荷室フロアの下方域に設置された車載機器に浸入するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態に係る車両の荷室構造を概略的に示す図である。
【
図5】カバーにクリップで取り付けられるインシュレータの一例を示す断面図である。
【
図6】カバーにクリップで取り付けられるインシュレータの他の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0020】
図1に示すように、少なくとも一実施形態に係る車両の荷室構造1は、ボード11、車載機器12及びカバー13を備えている。
【0021】
ボード11は、荷室フロアを構成するものであり、上面と下面が平坦な板状体で構成される。
【0022】
車載機器12は、ボード11の下方域に設置される機器であり、例えば、車載充電器、インバータ等の電子機器、ジャンクションボックス等の中継器である。
【0023】
カバー13は、車載機器12を覆うものであり、ボード11と車載機器12との間に設けられる。カバー13は、例えば、下面が開口した箱状であって、例えば、板金をプレス加工等することにより製作される。
【0024】
図2に示すように、上述したボード11は、車両幅方向端部に切り欠き11aを有する。例えば、切り欠き11aは、ボード11を車両に取り付ける際に、荷室の車両幅方向外側の内壁面IWに固着されたストライカSがボード11を通り抜けるように設けられる。尚、ストライカSは、シート(図示せず)を固定するための部材であり、例えば、シートに設けられたラッチ(図示せず)と噛合可能である。
【0025】
図3及び
図4に示すように、上述したカバー13は、車両前後方向に漸次(徐々に)低くなる傾斜した上面13aを有し、該上面13aにボード11の切り欠き11aよりも車両幅方向内側をから車両幅方向外側に到る水路13bを有する。尚、カバー13が、一方向に漸次低くなる傾斜した上面13aを有し、水路13bが上面視でボード11の切り欠き11aの凹部最深部11bとオーバーラップし、上面13aの周縁のうち切り欠き11aの直下に位置する上面13aの高さよりも低い周縁に至るように設けられていれば、上面13aの傾斜方向及び水路13bの経路は上記形態と異なっていてもよい。また、切り欠き11aの形状は、円弧又はコの字、多角に形成されている場合が想定されるが、この場合、切り欠き11aの凹部最深部11bはそれぞれ、
図2及び
図7a及び
図7bに示すように、切り欠き11aの凹みの最も深い部分となる。
【0026】
水路13bは、例えば、上流から下流に向けて屈曲するように設けられ、その中程がボード11の切り欠き11aの直下に位置する。
【0027】
上述した少なくとも一実施形態に係る車両の荷室構造1によれば、荷室フロアにこぼれた液体WD(例えば水や飲料)は荷室フロアを構成するボード11の切り欠き11aからカバー13の上面又は水路13bに滴下する。そして、カバー13の上面又は水路13bに滴下した液体WDは水路13bを流れ車両幅方向外側に排出される。これにより、荷室フロアにこぼれた液体WDがボード11の下方域に設置された車載機器12に浸入するのを防止できる。
【0028】
一実施形態に係る車両の荷室構造1Aでは、上述した実施形態に係る車両の荷室構造1において、水路13bはカバー13に設けられる補強ビード13cによって形成される。補強ビード13cは、カバー13の剛性を高めるためにカバー13に設けられた凹凸であり、本実施形態に係る補強ビード13cは、車載機器側に突出するように設けられる。本実施形態に係る補強ビード13cは、カバー天面に対して断面台形状にくぼむように設けられ、このくぼんだ部分がカバー13の内側に突出する突条を構成する。本実施形態に係る補強ビード13cは、車両前後方向に沿って複数設けられ、その中で車両外側に位置する補強ビード13cが水路13bを形成する。水路13bを形成する補強ビード13cはほかの補強ビード13cと異なり、高い位置(上流)から低い位置(下流)に向けて屈曲するように設けられ、その下流端部が開放されている。
【0029】
上述した一実施形態に係る車両の荷室構造1Aによれば、水路13bはカバー13に設けられた補強ビード13cによって形成されるので、補強ビード13cとは別に水路13bを設ける必要がない。
【0030】
図1に示すように、一実施形態に係る車両の荷室構造1Bでは、上述した実施形態に係る車両の荷室構造1,1Aにおいて、カバー13の内側(車載機器側)にインシュレータ14が設置され、ボード11の切り欠き11aの直下よりも水路13bの上流側にインシュレータ14を取り付けるためのクリップ15の取付穴13b1が設けられる。
【0031】
インシュレータ14は、吸音を目的としたシート状の部材である。
図5及び
図6に示すように、インシュレータ14は、フェルト141,142,143やゴムシート144を積層して構成される。インシュレータ14には、貫通穴14aが設けられる。貫通穴14aはカバー13に設けられる取付穴13b1よりも僅かに大きく、貫通穴14aの周りに内側(車載機器側)となる面から一段へこんだ座14bが設けられている。
【0032】
クリップ15は、インシュレータ14をカバー13に貼着するためのものである。クリップ15は、インシュレータ14に設けられた貫通穴14aを通り、カバー13に設けられた取付穴13b1に嵌め込まれ、インシュレータ14をカバー13に取り付けられる。
【0033】
上述した一実施形態に係る車両の荷室構造1Bによれば、取付穴13b1は、ボード11の切り欠き11aの直下よりも水路13bの上流側に設けられるので、荷室フロアにこぼれた液体が荷室フロアを構成するボード11の切り欠き11aから滴下しカバー13の上面を流れても取付穴13b1から車載機器12に滴下するのを防止できる。
【0034】
図5及び
図6に示すように、一実施形態に係る車両の荷室構造1Cでは、上述した実施形態に係る車両の荷室構造1Bにおいて、水路13bの深さは、クリップ15の挿入量よりも深い。
【0035】
上述した一実施形態に係る車両の荷室構造1Cによれば、クリップ15の先端がカバー13の上面から突出することがなく、カバー13の上面から突出したクリップ15の先端を切断する等の後処理の必要がない。
【0036】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0037】
上述した実施形態では、車両幅方向外側に切り欠き11aを有する場合の例を示したが、切り欠き11aが設けられる位置はこれに限定されず、例えば、車両前後方向外側に設けられていてもよい。この場合、カバー13の上面13aは、車両幅方向に漸次低くなるように形成され、水路13bは上面視でボード11の切り欠き11aよりも車両前後方向内側を通り車両前後方向外側に至るように形成される。
【符号の説明】
【0038】
1,1A,1B、1C 車両の荷室構造
11 ボード
11a 切り欠き
11b 凹部最深部
12 車載機器
13 カバー
13a 上面
13b 水路
13b1 取付穴
13c 補強ビード
14 インシュレータ
141,142,143 フェルト
144 ゴムシート
14a 貫通穴
14b 座
15 クリップ
S ストライカ