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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】ブロックポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20230905BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20230905BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
C08F293/00
C08G18/42
C08G18/48
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019231081
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021098799
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大宅 徹
(72)【発明者】
【氏名】石井 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】方田 大遥
(72)【発明者】
【氏名】澤口 壽一
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109666093(CN,A)
【文献】米国特許第04401794(US,A)
【文献】特開昭61-145268(JP,A)
【文献】特開2017-002222(JP,A)
【文献】特開2001-040319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F293
C08G18
C09J
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両末端にイソシアナト基を有するウレタンプレポリマーユニット(A)とエチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)とが、分子内にイソシアナト基と反応し得る官能基とスルファニル基とを有する連鎖移動剤の残基により連結されてなるブロックポリマーであって、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)が、イソシアナト基を有するエチレン性不飽和単量体(C)由来の構成単位を有することを特徴とするブロックポリマー。
【請求項2】
両末端にイソシアナト基を有するウレタンプレポリマーユニット(A)と連鎖移動剤残基との連結部分が、ウレア結合を有することを特徴とする請求項1に記載のブロックポリマー。
【請求項3】
エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)100質量部中、イソシアナト基を有するエチレン性不飽和単量体(C)由来の構成単位が、5~100質量部含まれることを特徴とする請求項1または2に記載のブロックポリマー。
【請求項4】
ブロックポリマー100質量部中、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)が、10~75質量部含まれることを特徴とする請求項1~3いずれか1項に記載のブロックポリマー。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載のブロックポリマーの硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックポリマーおよびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
分子内にイソシアナト基を有する樹脂は、空気中の水分と反応して硬化するため、湿気硬化性接着剤として自動車、建材、船舶、航空機、光学機器等の分野で広く利用されている。形態としては、液状やホットメルト等のシート状で用いられており、接着強度と柔軟性のバランスに優れる湿気硬化ウレタン樹脂の検討が盛んに行われている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
しかしながら、一般に湿気硬化ウレタン樹脂はポリオールとジイソシアネートの縮合体であり、イソシアナト基はウレタン樹脂の末端部にのみに存在するため、過剰の水分がある環境では架橋が阻害され接着強度が低下するという課題が知られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-039942号公報
【文献】特開2018-104487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、接着強度と柔軟性に優れ、高い湿度の環境下においても十分な硬化性を有する、湿気硬化性のブロックポリマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の実施態様は、ウレタンユニット(A)とエチレン性不飽和単量体ユニット(B)とが、分子内にイソシアナト基と反応し得る官能基とスルファニル基とを有する連鎖移動剤の残基により連結されてなるブロックポリマーであって、エチレン性不飽和単量体ユニット(B)が、イソシアナト基を有するエチレン性不飽和単量体(C)由来の構成単位を有することを特徴とするブロックポリマーである。
【0007】
また、本発明の実施態様は、ウレタンユニット(A)と連鎖移動剤残基との連結部分が、ウレア結合を有する上記ブロックポリマーである。
【0008】
また、本発明の実施態様は、エチレン性不飽和単量体ユニット(B)100質量部中、イソシアナト基を有するエチレン性不飽和単量体(C)由来の構成単位が、5~100質量部含まれる上記ブロックポリマーである。
【0009】
また、本発明の実施態様は、ブロックポリマー100質量部中、エチレン性不飽和単量体ユニット(B)が、10~75質量部含まれる上記ブロックポリマーである。
【0010】
また、本発明の実施態様は、上記ブロックポリマーの硬化物である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、接着強度と柔軟性に優れ、高い湿度の環境下においても十分な硬化性を有する、湿気硬化性のブロックポリマーを提供できた。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明するが、まず本明細書で用いられる用語について説明する。本明細書では、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイルオキシ」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリルまたはメタクリル」、「アクリロイルまたはメタクリロイル」、「アクリル酸またはメタクリル酸」、「アクリレートまたはメタクリレート」、「アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ」を表すものとする
【0013】
本発明のブロックポリマーは、ウレタンユニット(A)とエチレン性不飽和単量体ユニット(B)とが、分子内にイソシアナト基と反応し得る官能基とスルファニル基とを有する連鎖移動剤の残基により連結した構造を有しており、エチレン性不飽和単量体ユニット(B)が、イソシアナト基を有するエチレン性不飽和単量体(C)由来の構成単位を有している。
【0014】
ブロックポリマーは、例えば、次のような方法で製造できる。まず、ポリオールとイソシアナト基含有化合物とを反応させて両末端にイソシアナト基を有するウレタンプレポリマーが合成される。次いで、ウレタンプレポリマーと分子内にイソシアナト基と反応しうる官能基とスルファニル基とを有する連鎖移動剤とを反応させて両末端にスルファニル基を持つウレタンユニット(A)が合成される。この合成過程では、ウレタンプレポリマーと連鎖移動剤とは、ウレタンプレポリマー中のイソシアナト基と連鎖移動剤中のイソシアナト基と反応しうる官能基とが選択的に反応する。
その後、得られたウレタンユニット(A)とイソシアナト基を有するエチレン性不飽和単量体(C)を含むエチレン性不飽和単量体とを、反応させてブロックポリマーが合成される。この合成過程では、得られたウレタンユニット(A)中のスルファニル基とエチレン性不飽和単量体とが連鎖移動によって重合が進行するため、エチレン性不飽和単量体ユニット(B)が形成されながら重合が進行することになる。このようにして、ウレタンユニット(A)とエチレン性不飽和単量体ユニット(B)とが、分子内にイソシアナト基と反応し得る官能基とスルファニル基とを有する連鎖移動剤の残基により連結したブロックポリマーを得ることができる。
【0015】
<ポリオール>
ポリオールとしては、例えば代表的なものとして、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、植物油系ポリオール、その他ポリオール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、酸化メチレン、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフラン等の重合体または共重合体、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン/プロピレン)グリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。また、ヘキサンジオール、メチルヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオールあるいはこれらの混合物の縮合によるポリエーテルポリオール類等が挙げられる。
【0017】
さらにポリエーテルポリオールとしては、低分子ポリオール、脂肪族アミン化合物類、芳香族アミン化合物類、アルカノールアミン類、ビスフェノール類のような2個以上の活性水素基を有する化合物を出発原料として、これに酸化メチレン、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン、テトラヒドロフラン、もしくはポリオキシテトラメチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させて得られるポリオールが挙げられる。
【0018】
2個以上の活性水素基を有する化合物の内、低分子ポリオールとしては、2官能の低分子ポリオール(ジオール)、3官能以上の低分子ポリオールが挙げられる。
【0019】
2官能の低分子ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、ポリオキシエチレングリコール(付加モル数10以下)、ポリオキシプロピレングリコール(付加モル数10以下)、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール、ビスフェノールA、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。
【0020】
3官能以上の低分子ポリオールとしては、特に限定されないが、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,1,1-トリメチロールブタン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,6-ブタントリオール、トリメチロールブテン、トリメチロールペンテン、トリメチロールヘキセン、トリメチロールヘプテン、トリメチロールオクテン、トリメチロールノネン、トリメチロールデセン、トリメチロールウンデセン、トリメチロールドデセン、トリメチロールトリデセン、トリメチロールペンタデセン、トリメチロールヘキサデセン、トリメトロールヘプタデセン、トリメチロールオクタデセン、1,1,1-トリメチロール-2-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-2-エチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-エチル-ヘキサン、トリメチロールヘキセン、1,2,3-オクタントリオール、1,3,7-オクタントリオール、3,7-ジメチル-1,2,3-オクタントリオール、1,1,1-、1,1,1-トリメチロールデカン、1,2,10-デカントリオール、1,1,1-トリメチロールイソヘプタデカン、1,1,1-トリメチロール-sec-ブタン、1,1,1-トリメチロール-tert-ペンタン、1,1,1-トリメチロール-tert-ノナン、1,1,1-トリメチロール-tert-トリデカン、1,1,1-トリメチロール-tert-ヘプタデカン、1,1,1-トリメチロール-2-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-2-エチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-エチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロールイソヘプタデカン、1,2,3,4-ブタンテトラオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ベンゼン-1,3,5-トリオール、ベンゼン-1,2,3-トリオール、スチルベン-3,4’、5-トリオール、シュークロース、イノシトール、ソルビタン、ソルビトール、マンニトール、サッカロース、セルロース、キシリトール等が挙げられる。
【0021】
2個以上の活性水素基を有する化合物の内、脂肪族アミン化合物類としては、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリアミノプロパン等が挙げられる。芳香族アミン化合物類としては、例えば、トルエンジアミン、ジフェニルメタンー4,4-ジアミン等が挙げられる。アルカノールアミン類としては、例えば、エタノールアミンおよびジエタノールアミン等が挙げられる。ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF等が挙げられる。
【0022】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、上述の低分子ポリオールと二塩基酸成分とが縮合反応したポリエステルポリオールが挙げられる。
【0023】
二塩基酸成分としては、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族あるいは芳香族二塩基酸、およびそれらの無水物が挙げられる。
また、ε-カプロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等のラクトン類等の環状エステル化合物の開環重合により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0024】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上述の低分子ポリオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート等のカーボネート化合物との反応により得られるものを挙げることができる。
また、ジアルキルカーボネートとしてはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等を、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネート等を、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネート等を挙げることができる。
【0025】
ポリオレフィンポリオールとしては、水酸基含有ポリブタジエン、水添した水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン、水添した水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有塩素化ポリプロピレン、水酸基含有塩素化ポリエチレン等が挙げられる。
【0026】
植物油系ポリオールとしては、植物由来のひまし油、ダイマー酸、もしくは大豆油を原料としたポリオールが挙げられる。
【0027】
これらの中でもポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが好ましい。
【0028】
これらのポリオールの分子量としては、好ましくは数平均分子量で500以上、5,000未満であり、さらに好ましくは700以上、3,500未満である。
【0029】
さらに、ウレタン結合濃度の調節や各種官能基導入を目的として上述の低分子ポリオールを併用することができる。
【0030】
<イソシアナト基含有化合物>
ウレタンユニット(A)を構成するイソシアナト基含有化合物としては、例えば、芳香族、脂肪族、脂環式のイソシアナト基含有化合物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。イソシアナト基含有化合物は、分子内にイソシアナト基を2つ以上有する化合物(ポリイソシアネート)を含むことが好ましく、分子内にイソシアナト基を2つ有する化合物(ジイソシアネート)を含むことがより好ましい。
【0031】
芳香族イソシアナト基含有化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアナネート、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシレンジイソシアナート、p-テトラメチルキシレンジイソシアナート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0032】
脂肪族イソシアナト基含有化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートテトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0033】
脂環式イソシアナト基含有化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、水添キシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等が挙げられる。
【0034】
ポリオールとイソシアネナト基含有化合物との反応は、溶剤中で行っても無溶剤中で行ってもよく、公知のウレタン化反応を用いることができる。反応速度を調整する目的で触媒を併用しても構わない。
【0035】
<溶剤>
溶剤としては、イソシアネナト基と反応しないものであれば任意のものを使用することができ、以下の例には限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、トルエン、キシレン、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、m-クレゾール、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
<触媒>
触媒としては、公知の金属系触媒、アミン系触媒が使用できる。金属系触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、オクトエ酸錫、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキソエート)、2-エチルヘキソエート鉛、チタン酸2-エチルヘキシル、チタンエチルアセテート、2-エチルヘキソエート鉄、2-エチルヘキソエートコバルト、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、テトラ-n-ブチル錫等が挙げられる。アミン系触媒としてはテトラメチルブタンジアミン等の3級アミン等が挙げられる。これらの触媒はポリオールに対して0.05~1モル%の範囲で使用される。
【0037】
<分子内にイソシアナト基と反応し得る官能基とスルファニル基とを有する連鎖移動剤>
連鎖移動剤としては、分子内にイソシアナト基と反応し得る官能基とスルファニル基とをそれぞれ有するものであれば特に限定されない。ここで、イソシアナト基と反応し得る官能基としては、置換されていても良いアミノ基、水酸基、カルボキシ基等が挙げられる。置換アミノ基としては、アミノ基上の水素原子がアルキル基やアリール基等の有機残基で一つ置換されたモノ置換アミノ基が挙げられ、例えば、N-アルキルアミノ基、N-アリールアミノ基等が挙げられる。また、水酸基としては、一級水酸基、二級水酸基、三級水酸基が挙げられる。これら官能基の内、イソシアナト基との反応性が良好なことから、アミノ基が好ましい。したがって、連鎖移動剤としては、分子内にアミノ基と反応し得る官能基とスルファニル基とを有する連鎖移動剤が好ましく、分子内に1つのアミノ基と1つのスルファニル基を含有する連鎖移動剤がより好ましい。
【0038】
分子内に1つのアミノ基と1つのスルファニル基を含有する化合物としては、以下の例に限定されないが、例えば、2-アミノエタンチオール、3-アミノプロピル-1-チオール、1-アミノプロピル-2-チオール、4-アミノ-1-ブタンチオール等のアミノアルカンチオール類;
2-アミノチオフェノール、3-アミノチオフェノール、4-アミノチオフェノール等のアミノベンゼンチオール類等が挙げられる。これらの中でも、2-アミノエタンチオールが特に好ましい。
【0039】
ウレタンユニット(A)の数平均分子量は、特に限定されないが、3,000~200,000が好ましい。3,000以上であると、得られる硬化物の接着性に優れ、200,000以下であると粘度の調整が容易である。
【0040】
<エチレン性不飽和単量体ユニット(B)>
エチレン性不飽和単量体ユニット(B)は、イソシアナト基を有するエチレン性不飽和単量体(C)を含むエチレン性不飽和単量体由来の構成単位を有する。
【0041】
<イソシアナト基を有するエチレン性不飽和単量体(C)>
イソシアナト基を有するエチレン性不飽和単量体(C)としては、以下の例に限定されないが、好ましいものとして(メタ)アクリロイルイソシアネート、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート、1,1-(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、m-(メタ)アクリロイルフェニルイソシアネート等のイソシアナト基を有する(メタ)アクリレート類が挙げられる。また、α,α-ジメチル-4-イソプロペニルベンジルイソシアネートも好ましいものとして挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
イソシアナト基を有するエチレン性不飽和単量体(C)は、エチレン性不飽和単量体ユニット(B)100質量部中、5~100質量部含むことが好ましい。イソシアナト基を有するエチレン性不飽和単量体(C)が、5~100質量部であると、高い湿度の存在下での硬化性に優れる。
【0043】
エチレン性不飽和単量体ユニット(B)は、イソシアナト基を有するエチレン性不飽和単量体(C)以外に、その他エチレン性不飽和単量体が含まれていてもよい。
その他エチレン性不飽和単量体としては、以下の例には限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖または分岐アルキル(メタ)アクリレート類;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャリブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート類;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-オキセタニル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート類;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、またはノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリレート類;
メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、n-ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルキルエーテル基を有する(メタ)アクリレート類の他、スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル等のビニル類等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
エチレン性不飽和単量体ユニット(B)はブロックポリマー100質量部のうち、10~75質量部含まれることが好ましい。エチレン性不飽和単量体ユニット(B)が10~75質量部であると、高い湿度の環境下での硬化性に優れる。
【0045】
<重合開始剤>
重合開始剤としては、公知のアゾ系化合物や有機過酸化物を用いることができる。アゾ系化合物としては、以下の例には限定されないが、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカーボキシレート)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、または2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられ、有機過酸化物としては、以下の例には限定されないが、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサエート、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
重合開始剤は、エチレン性不飽和単量体ユニット(B)100質量部に対して、0.001~15質量部の範囲で使用することが好ましい。0.001~15質量部の範囲であると、効果的に連鎖移動重合が進行するため好ましい。
【0047】
<エチレン性不飽和単量体ユニット(B)の数平均分子量>
エチレン性不飽和単量体ユニット(B)の数平均分子量は、特に限定されないが、2,000~200,000が好ましい。2,000以上であると得られる硬化物の破断強度に優れ、200,000以下であると粘度の調整が容易である。
【0048】
<ブロックポリマーの数平均分子量>
ブロックポリマーの数平均分子量は、特に限定されないが、5,000~300,000が好ましい。5,000以上であると得られる硬化物の破断強度に優れ、300,000以下であると粘度の調整が容易である。
【0049】
<硬化物>
本発明のブロックポリマーは、水分が存在する環境下で湿気硬化して硬化物を形成するため、接着剤、接着シート、コーティング剤、フィルム基材等の分野で有用であり、接着剤および接着シートとしての利用が特に好ましい。硬化前の形態としては、液状でもシート状でもよく、液状の場合は溶剤を含んでも構わない。ブロックポリマーは単独で用いてもよいが、硬化物の接着強度や柔軟性等を調整する目的で、上述のイソシアナト基含有化合物や、反応促進剤、シランカップリング剤、リン酸またはリン酸誘導体、レベリング剤または消泡剤、充填剤、噴射剤、可塑剤、超可塑剤、湿潤剤、難燃剤、粘度調整剤、保存剤、安定剤および着色剤等の公知の添加剤を配合してもよい。
【0050】
反応促進剤としては、たとえば、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレート等金属系触媒;
1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の3級アミン;トリエタノールアミンのような反応性3級アミン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。反応促進剤の添加量は、ブロックポリマー100質量部に対し、好ましくは0.005~5重量部である。
【0051】
接着剤および接着シートとして使用するに際しては、従来公知の湿気硬化性接着剤と同様に使用することができる。以下の例に限定されないが、例えば、液状の接着剤として用いる場合は、基材上に塗布した後、必要に応じて溶剤等の揮発分をオーブンで乾燥させて接着剤層を形成し、ここに別の基材を重ねて硬化させる。接着シートとして用いる場合は、同種あるいは異なる基材間に接着シートを挟み、熱プレス等によりシートを軟化させて密着させ、硬化させる。硬化温度は20~150℃程度が好ましく、接着剤層の厚みは0.1μm~300mmであることが好ましい。
【0052】
基材としては、以下の例には限定されないが、アルミニウムなどの金属、ポリエチレン、ポリロピレン、ポリウレタン、ポリアクリレートおよびポリカーボネートおよびそれらのコポリマーなどの熱可塑性ポリマー、加硫ゴムなどの熱硬化性ポリマー、尿素-ホルムアルデヒドフォーム、メラミン樹脂、木材、炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチックおよびその他の繊維強化プラスチック等であり、それらの基材において同一、類似、または異なる基材を接着することができる。
【0053】
硬化物のゲル分率は、好ましくは80%以上である。80%以上であると得られる硬化物の破断強度に優れる。
【実施例
【0054】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、特に断りのない限り、実施例における「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。また、実施例中の樹脂固形分濃度、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)の測定方法は次の通りである。
【0055】
<樹脂固形分濃度>
JISK5601-1-2に準拠し、加熱温度150℃、加熱時間20分で測定した時の加熱残分を樹脂固形分濃度(%)とした。
【0056】
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)>
樹脂の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により測定した分子量既知のポリスチレンによる換算値である。装置としてGPC-8020(東ソー社製)、溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとしてTSKgelSuperHM-M(東ソー社製)を3本直列に連結し、流速0.6ml/分、注入量10μl、カラム温度40℃で測定した。
【0057】
(実施例1)
窒素ガス導入管、攪拌装置、温度計、還流器を備えた反応容器に、ポリオールとして、ポリエステルポリオールA(アジピン酸と1,6-ヘキサンジオールの重縮合物、平均水酸基数2、数平均分子量2000)13部、ポリエステルポリオールB(アジピン酸とエチレングリコールの重縮合物、平均水酸基数2、数平均分子量2000)50部、ポリエステルポリオールC(イソフタル酸とネオペンチルグリコールの重縮合物、平均水酸基数2、数平均分子量2000)12部、ポリエーテルポリオールD(ポリプロピレングリコール、平均水酸基数2、数平均分子量2000)25部、イソシアナト基含有化合物としてジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)16.9部、メチルエチルケトン(MEK)を56.9部、触媒としてチタンジイソプロポキシビズ(エチルアセトアセテート)を0.02部仕込み、均一に撹拌した後、窒素雰囲気下90℃で5時間反応させてウレタンプレポリマーを得た。次に60℃まで冷却し、連鎖移動剤として2-アミノエタンチオール2.6部を加え、75℃で2時間反応させウレタンユニットを得た。この段階でウレタンプレポリマーと連鎖移動剤とが反応し、ウレア結合が形成されたことになる。反応の終点は、FT-IRによりイソシアナト基由来のピーク(2270cm-1付近)の消失により確認した。続いてイソシアナト基を有するエチレン性不飽和単量体として2-イソシアナトエチルメタアクリレート(AOI)13.3部を加えて均一に撹拌した後、窒素雰囲気下で75℃に昇温させ、ここに重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.1部を30分毎に10回分割して加え、重合開始剤の添加後にさらに1時間反応させることで、実施例1のブロックポリマーを得た。得られたブロックポリマー中のエチレン性不飽和単量体ユニット(B)の割合(%)、エチレン性不飽和単量体ユニット(B)中のイソシアナト基を有するエチレン性不飽和単量体(C)の割合(%)、ブロックポリマーの数平均分子量、および樹脂固形分濃度は表1の通りである。
【0058】
(実施例2~4)
表1に示す配合組成に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2~4のブロックポリマーをそれぞれ得た。得られたブロックポリマー中のエチレン性不飽和単量体ユニット(B)の割合(%)、エチレン性不飽和単量体ユニット(B)中のイソシアナト基を有するエチレン性不飽和単量体(C)の割合(%)、ブロックポリマーの数平均分子量、および樹脂固形分濃度は表1の通りである。
【0059】
(比較例1)
窒素ガス導入管、攪拌装置、温度計、還流器を備えた反応容器に、ポリオールとして、ポリエステルポリオールA(アジピン酸と1,6-ヘキサンジオールの重縮合物、平均水酸基数2、数平均分子量2000)13部、ポリエステルポリオールB(アジピン酸とエチレングリコールの重縮合物、平均水酸基数2、数平均分子量2000)50部、ポリエステルポリオールC(イソフタル酸とネオペンチルグリコールの重縮合物、平均水酸基数2、数平均分子量2000)12部、ポリエーテルポリオールD(ポリプロピレングリコール、平均水酸基数2、数平均分子量2000)25部、イソシアナト基含有化合物としてMDI16.9部、MEKを50.1部、触媒としてチタンジイソプロポキシビズ(エチルアセトアセテート)を0.02部仕込み、均一に撹拌した後、窒素雰囲気下90℃で5時間反応させ比較例1のウレタン樹脂を得た。数平均分子量および樹脂固形分濃度を表1に示す。尚、表1中、特に断りのない限り、数値は「部」を表し、空欄は配合していないことを意味する。
【0060】
<樹脂の評価>
実施例1~4で得られたブロックポリマー、および比較例1で得られたウレタン樹脂について、次のような試験を行った。判定結果を表1に記載する。
【0061】
<ゲル分率測定>
まず実施例1~4で得られたブロックポリマー、および比較例1で得られたウレタン樹脂を、乾燥後の膜厚が100μmとなるようガラス基材上に塗工し、100℃の熱オーブンで乾燥させた後、低湿度環境として温度23℃、湿度30%RH、高湿度環境として温度60℃、湿度85%の2水準の条件で、FT-IRによりイソシアナト基由来のピークが消失するまでそれぞれ硬化させた。続いて、得られた硬化物について、約0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチルを30ml加えて24時間振とうした後、該サンプル瓶の内容物を200メッシュのステンレス製金網にてろ別し、金網上の残留物を100℃で1時間乾燥させて乾燥重量を測定し、次式[1]よりゲル分率を求めた。
[式1]
ゲル分率(%)=(乾燥重量/採取重量)×100
【0062】
[ゲル分率の評価]
低湿度環境と高湿度環境のゲル分率の差を求め、以下の基準で判定した

(評価基準)
○ :ゲル分率の差が10%未満である。良好。
△ :ゲル分率の差が10%以上、20%未満である。実用範囲内。
× :ゲル分率の差が20%以上である。不良。
【0063】
<接着強度>
実施例1~4で得られたブロックポリマー、および比較例1で得られたウレタン樹脂を、ポリカーボネート基材(長さ90mm×幅75mm×厚さ2mm)上に塗工し、100℃のオーブンで乾燥させ長さ40mm×幅25mm×厚さ100μmの接着剤層を形成した。続いて当該接着剤層の上に、縦250mm×横25mm×厚さ100μmのポリカーボネートフィルムを圧着して試験片を作製し、温度23℃、湿度50%の環境下において7日間養生後、90°ピール試験(ピール速度:200mm/分)を行い、接着強度(N/25mm)を測定した。
【0064】
<破断時の伸び率>
実施例1~4で得られたブロックポリマー、および比較例1で得られたウレタン樹脂を型枠に充填し、表面を整えて乾燥させ、乾燥後の厚さが2mmのシートを作製した。これを温度23℃、湿度50%で7日間養生後、ダンベル型枠で打ち抜き、ダンベル型試験片を作成した。このダンベル片を用いて、引張速度50mm/分で引張試験を行い、破断時の伸び率(%)を測定した。伸び率の大きいもの程、柔軟性に優れるものと判断した。
【0065】
実施例で得られたブロックポリマーは、いずれも接着強度および柔軟性に優れ、高湿度環境と低湿度環境でのゲル分率の差も小さい結果となったことから、高湿度環境においても十分な硬化性を有することが明らかとなった。これに対して、比較例で得られたウレタン樹脂は、高湿度環境での硬化性に劣ることが明らかとなった。
【0066】
【表1】