(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】経路生成装置
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20230905BHJP
【FI】
G05D1/02 H
(21)【出願番号】P 2019237004
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中田 翔
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-190897(JP,A)
【文献】国際公開第2018/220787(WO,A1)
【文献】特開2017-083919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリッドマップに基づき移動体の概略経路を生成し、前記概略経路に基づき前記移動体の詳細経路を生成する経路生成装置であって、
前記経路生成装置は、
前記グリッドマップに設定された前記移動体が通過できる最小の幅となるグリッド数である移動体グリッド数に応じて前記グリッドマップの解像度を下げた低解像度グリッドマップを生成する第1処理と、
前記低解像度グリッドマップのグリッドのうち障害物が設定されているグリッドに障害物があることを示す情報である第1情報を設定する第2処理と、
前記第1情報が設定されていないグリッド
と、当該第1情報が設定されていないグリッドを挟み込む前記第1情報が設定された
少なくとも2つのグリッド
とにより形成される
領域のうち最も小さい範囲を前記低解像度グリッドマップの第1領域と
設定するとともに、前記第1領域に対応する位置
を前記グリッドマップの
解像度で表現したものを前記グリッドマップの第2領域と
設定し、前記グリッドマップの前記第2領域に
おいて、前記第1情報が設定された一方のグリッドに対応する位置に存在する障害物が設定されている第1障害物グリッドと、前記第1情報が設定された他方のグリッドに対応する位置に存在する障害物が設定されているグリッドであって前記第1領域の前記第1情報が設定されていないグリッドに対応する位置に存在するグリッドを挟み込んで前記第1障害物グリッドに対向する第2障害物グリッドと、の間のグリッド数
を求め、当該求められたグリッド数が前記移動体グリッド数を下回る
ことがあった場合
に、前記第1領域の前記第1情報が設定されていないグリッドに前記移動体が移動できないことを示す第2情報を設定し、前記低解像度グリッドマップにおいて前記第1情報及び前記第2情報が設定されていないグリッドにより形成されるとともに前記移動体が移動できる領域である移動領域と、前記第1情報が設定されたグリッド及び前記第2情報が設定されたグリッドにより形成されるとともに前記移動体が移動できない領域である非移動領域と、を区別する第3処理と、
前記移動領域において、前記移動体が移動を開始する開始点と、前記移動体の移動の目標点との間で前記概略経路を生成する第4処理と、を実施することを特徴とする経路生成装置。
【請求項2】
前記移動体グリッド数が偶数である場合、前記低解像度グリッドマップのグリッドは、前記移動体グリッド数を「2」で除した数の前記グリッドマップにおけるグリッドを縦横に有していることを特徴とする請求項1に記載の経路生成装置。
【請求項3】
前記移動体グリッド数が奇数である場合、前記低解像度グリッドマップのグリッドは、前記移動体グリッド数に「1」を加算した数を「2」で除した数の前記グリッドマップにおけるグリッドを縦横に有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の経路生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載される経路生成装置が知られている。
経路生成装置は、グリッドマップを縮小した縮小マップを生成するマップ縮小部と、縮小マップに基づき移動体の概略経路を生成する概略経路生成部と、概略経路に基づき詳細経路を生成する移動体の詳細経路を生成する詳細経路生成部とを有する経路生成部を含んでいる。
【0003】
マップ縮小部は、グリッドマップの複数のグリッドをグルーピングして、該グルーピングされた複数のグリッドを平均することにより縮小マップを生成している。マップ縮小部は、複数のグリッドの平均値が臨界値以上である場合、障害物があることを示す情報である「1」を平均化されたグリッドに設定し、複数のグリッドの平均値が臨界値未満である場合、障害物がないことを示す情報である「0」を平均化されたグリッドに設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数のグリッドの平均値が臨界値未満である場合に障害物がないことを示す情報が平均化されたグリッドに設定されていると、平均化されたグリッドに対応する現実の位置には、移動体が移動できないように配置された障害物が存在する虞がある。そのため、移動体が経路生成装置により生成された経路を移動しているときに移動体が立ち往生してしまうことがある。
【0006】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、移動体が円滑に移動できる経路を生成できる経路生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する経路生成装置は、グリッドマップに基づき移動体の概略経路を生成し、前記概略経路に基づき前記移動体の詳細経路を生成する経路生成装置であって、前記経路生成装置は、前記グリッドマップに設定された前記移動体が移動できる最小の幅となるグリッド数である移動体グリッド数に応じて前記グリッドマップの解像度を下げた低解像度グリッドマップを生成する第1処理と、前記低解像度グリッドマップのグリッドのうち障害物が設定されているグリッドに障害物があることを示す情報である第1情報を設定する第2処理と、前記低解像度グリッドマップにおいて、前記第1情報が設定されていないグリッドと、当該第1情報が設定されていないグリッドを挟み込む前記第1情報が設定された少なくとも2つのグリッドとにより形成される領域のうち最も小さい範囲を前記低解像度グリッドマップの第1領域と設定するとともに、前記第1領域に対応する位置を前記グリッドマップの解像度で表現したものを前記グリッドマップの第2領域と設定し、前記グリッドマップの前記第2領域において、前記第1情報が設定された一方のグリッドに対応する位置に存在する障害物が設定されている第1障害物グリッドと、前記第1情報が設定された他方のグリッドに対応する位置に存在する障害物が設定されているグリッドであって前記第1領域の前記第1情報が設定されていないグリッドに対応する位置に存在するグリッドを挟み込んで前記第1障害物グリッドに対向する第2障害物グリッドと、の間のグリッド数を求め、当該求められたグリッド数が前記移動体グリッド数を下回ることがあった場合に、前記第1領域の前記第1情報が設定されていないグリッドに前記移動体が移動できないことを示す第2情報を設定し、前記低解像度グリッドマップにおいて前記第1情報及び前記第2情報が設定されていないグリッドにより形成されるとともに前記移動体が移動できる領域である移動領域と、前記第1情報が設定されたグリッド及び前記第2情報が設定されたグリッドにより形成されるとともに前記移動体が移動できない領域である非移動領域と、を区別する第3処理と、前記移動領域において、前記移動体が移動を開始する開始点と、前記移動体の移動の目標点との間で前記概略経路を生成する第4処理と、を実施する。
【0008】
これによれば、低解像度グリッドマップのグリッドにおいて障害物が設定されているグリッドには、障害物があることを示す第1情報が設定され、低解像度グリッドマップにおいて移動体が移動できないグリッドには、第2情報を設定している。そのため、概略経路を生成するときに移動体が移動できない経路を表現することができる。そして、低解像度グリッドマップにおいて、第1情報及び第2情報が設定されていないグリッドにより移動体が移動できる移動領域が明確になる。すなわち、生成した概略経路上に移動体の移動を妨げる要因がなくなる。当該概略経路に基づき詳細経路を生成するため、移動体が円滑に移動できる経路を生成できる。
【0009】
上記の経路生成装置において、前記移動体グリッド数が偶数である場合、前記低解像度グリッドマップのグリッドは、前記移動体グリッド数を「2」で除した数の前記グリッドマップにおけるグリッドを縦横に有しているとよい。
【0010】
上記の経路生成装置において、前記移動体グリッド数が奇数である場合、前記低解像度グリッドマップのグリッドは、前記移動体グリッド数に「1」を加算した数を「2」で除した数の前記グリッドマップにおけるグリッドを縦横に有しているとよい。
【0011】
これらによれば、第3処理において、低解像度グリッドマップの第1領域は、最も小さい範囲で2つの第1情報が設定されたグリッドと、1つの第1情報が設定されていないグリッドとにより形成される。そのため、グリッドマップにおいて第1領域の最も小さい範囲に対応する位置を第2領域とすれば、グリッドマップ上では複数の第2領域が形成される。経路生成装置は、複数の第2領域それぞれに対して第2領域に存在する障害物間のグリッド数が移動体グリッド数よりも下回るか否かを判断する。これは、経路生成装置がグリッドマップ全域において障害物間のグリッド数が移動体グリッド数を下回るか否かを一括で判断する場合と比較して、移動体が移動できるか否かを判断するために使用するグリッド数が少ないため、経路生成装置の処理容量が少なくなる。よって、経路生成装置の演算負荷をより低減させることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、移動体が円滑に移動できる経路を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】経路生成装置で用いられるグリッドマップを示した概略図。
【
図9】経路生成装置の詳細経路生成処理を示した概略図。
【
図10】経路生成装置の詳細経路生成処理を示した概略図。
【
図11】経路生成装置の詳細経路生成処理を示した概略図。
【
図12】経路生成装置の詳細経路生成処理を示した概略図。
【
図13】経路生成装置の詳細経路生成処理を示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、経路生成装置を具体化した一実施形態を
図1~
図13にしたがって説明する。なお、本実施形態の経路生成装置は、荷を搬送する搬送台車等の自律走行車に適用されている。そのため、自律走行車についての説明の中で経路生成装置について説明する。
【0015】
図1に示すように、自律走行車1は、経路生成装置10と、移動体として車体20とを備えている。経路生成装置10は、車体20に搭載された制御装置である。経路生成装置10は、CPU11と、RAM及びROM等からなるメモリ12とを有している。メモリ12には、車体20を制御するための種々のプログラムが記憶されている。経路生成装置10は、メモリ12に記憶されているプログラムをCPUに実行させることにより車体20を制御する。
【0016】
経路生成装置10は、地図情報と車体20の位置とに基づき車体20を移動させる機能を有している。地図情報は、メモリ12に記憶されている。地図情報は、例えば約500メートル四方で囲まれる広範囲における障害物の情報、車体20が移動できる走行可能路の情報、及び車体20が移動できない走行不能路の情報が含まれた情報である。経路生成装置10は、車体20の位置をGPSにより検出してもよいが、距離センサ等の車体20に搭載されるセンサを用いて車体20の周囲の物体を検出して地図情報と比較して推定してもよい。経路生成装置10は、検出された車体20の位置を開始点Sとして、車体20の移動の目標点Gに向かうための経路を生成し、当該経路に沿って車体20を移動させる。
【0017】
図2に示すように、経路生成装置10は、車体20が走行するための経路を生成するにあたり、第1処理S101、第2処理S102、第3処理S103、第4処理S104、及び第5処理S105を実施する。各処理S101,S102,S103,S104は、車体20の概略経路Roを生成するまでの処理である概略経路生成処理である。第5処理S105は、概略経路Roに基づき車体20の詳細経路Rdを生成する処理である。
【0018】
図3に示すように、経路生成装置10は、概略経路生成処理と、詳細経路生成処理とを実施するにあたり、グリッドマップM1を使用する。グリッドマップM1とは、メモリ12に記憶された地図情報を等間隔の縦横線で格子状に区切られたグリッドに分割して表現したマップである。なお、グリッドマップM1の外枠部分は、自律走行車1が適用される工場等の壁部を示している。そのため、本実施形態では、グリッドマップM1の外枠部分には、障害物があるものとして取り扱う。
【0019】
各処理S101,S102,S103,S104について
図3~
図8にしたがって説明する。なお、
図4,5,7,8には、後述する低解像度グリッドマップM2を示しているが、説明の便宜上、グリッドマップM1のグリッドも記載している。
【0020】
図4に示すように、第1処理S101は、グリッドマップM1から低解像度グリッドマップM2を生成する処理である。
図3に示すように、経路生成装置10は、低解像度グリッドマップM2を生成するにあたり、車体20をグリッドマップM1に設定したときに車体20の幅に対応するグリッド数を確認する。本実施形態では、例えば車体20の幅に対応するグリッド数を「6」とする。経路生成装置10は、障害物Ob間を車体20が安全に移動できるときの車体20と障害物Obとの隙間等を考慮して、グリッドマップM1に設定された車体20が移動できる最小の幅となるグリッド数である移動体グリッド数Nを確認する。本実施形態における移動体グリッド数Nは、「8」である。移動体グリッド数Nは、グリッドマップM1に車体20を設定したときの車体20の幅に対応するグリッド数よりも大きく設定される。なお、障害物Ob間を車体20が安全に移動できるときの車体20と障害物Obとの間の隙間の大きさは、車体20の種類や経路生成装置10を採用する顧客によって適宜変更される。そのため、グリッドマップM1に車体20を設定したときの車体20の幅に対応するグリッド数から移動体グリッド数Nへの増加量は、適宜変更される。
【0021】
図4に示すように、経路生成装置10は、グリッドマップM1における移動体グリッド数Nに応じてグリッドマップM1の解像度を下げた低解像度グリッドマップM2を生成する。低解像度グリッドマップM2は、移動体グリッド数Nが「8」であるため、移動体グリッド数Nを「2」で除した数のグリッドマップM1におけるグリッドを縦横に有するグリッドを有している。
図4では、黒色中太の線で区切られたグリッドが、低解像度グリッドマップM2のグリッドである。
【0022】
ここで、概略経路生成処理において低解像度グリッドマップM2を使用する理由を説明する。
地図情報のサイズが大きいほどグリッドマップM1に地図情報を設定するために使用するメモリ12の容量が多くなる。上記の地図情報は、500メートル四方という広範囲の情報であるため、グリッドマップM1のまま車体20の概略経路Roを生成してしまうと、使用するメモリ12の容量が多いため、経路生成装置10の演算負荷が増え、ひいては経路生成装置10の演算速度も遅くなる。すなわち、低解像度グリッドマップM2を使用する理由は、車体20の概略経路Roの生成に使用するメモリ12の容量を少なくするためである。
【0023】
移動体グリッド数Nを除する「2」を使用する理由も概略経路Roの生成に使用するメモリ12の容量を少なくするためである。移動体グリッド数Nを除する数値は、グリッドマップM1の解像度を下げるために設定される数値である。グリッドマップM1から低解像度グリッドマップM2を生成するときに解像度をより下げるためには、除する数値を可能な限り小さくすることが好ましい。グリッド数は整数であることを考慮すれば、「2」という数値がグリッドマップM1の解像度を下げるための最大値である。よって、概略経路Roの生成に使用するメモリ12の容量を最も効率的に少なくするために「2」という数値が採用されている。
【0024】
なお、本実施形態では、移動体グリッド数Nが偶数であるため、低解像度グリッドマップM2のグリッドは、移動体グリッド数Nを「2」で除した数のグリッドマップM1のグリッドを縦横に有していたが、例えば車体20の幅によっては、移動体グリッド数Nが奇数となる場合もある。移動体グリッド数Nが奇数である場合、「2」で除すると整数とならない。そして、グリッド数は一般的に整数であるため、移動体グリッド数Nが奇数である場合、低解像度グリッドマップM2のグリッドは、移動体グリッド数Nに「1」を加算した数を「2」で除した数のグリッドマップM1におけるグリッドを縦横に有するように変更する。
【0025】
図5に示すように、第2処理S102は、低解像度グリッドマップM2のグリッドのうち障害物Obが設定されているグリッドに障害物Obがあることを示す情報である第1情報I1を設定する処理である。
図5では、斜線が設けられている低解像度グリッドマップM2のグリッドに第1情報I1が設定されている。本実施形態では、第1情報I1には「1」という数値が採用されている。すなわち、低解像度グリッドマップM2の1つのグリッドに含まれるグリッドマップM1の複数のグリッドのうち少なくとも1つに障害物Obが設定されている場合、低解像度グリッドマップM2の当該1つのグリッドの全域に障害物Obがあるものとして取り扱う。なお、第1情報I1は、「1」という数値でなくてもよく、例えば「0」という数値でもよい。また、第1情報I1は、数値に限らず文字であってもよい。すなわち、第1情報I1とは、障害物Obがあることを示す情報として低解像度グリッドマップM2のグリッドに設定されるのであれば、設定内容は適宜変更してもよい。
【0026】
次に、第3処理S103について
図5~
図7にしたがって説明する。第3処理S103は、車体20が移動できる領域である移動領域Maと、車体20が移動できない領域である非移動領域Munとを区別する処理である。
【0027】
図5に示すように、低解像度グリッドマップM2は、第1情報I1が設定されていないグリッド、及び当該第1情報I1が設定されていないグリッドを挟み込む第1情報I1が設定されたグリッドにより形成される第1領域R1を複数有している。本実施形態では、第1領域R1は、低解像度グリッドマップM2において、第1情報I1が設定されていない1つのグリッドと、第1情報I1が設定された2つのグリッドとにより構成されている。すなわち、第1情報I1が設定されていないグリッド、及び当該第1情報I1が設定されていないグリッドを挟み込む第1情報I1が設定されたグリッドにより形成される領域のうち最も小さな範囲を第1領域R1としている。第3処理S103では、第1領域R1において車体20が移動できるだけのグリッド数があるか否かを判断する。具体的には、
図6を用いて説明する。
【0028】
図6には、複数の第1領域R1のうちの1つを例示している。第3処理S103では、低解像度グリッドマップM2の第1領域R1と、第1領域R1に対応する位置を示すグリッドマップM1の第2領域R2とを比較する。具体的には、低解像度グリッドマップM2の第1領域R1に対応する位置だけをグリッドマップM1の解像度で表現し、障害物Obの配置を詳細に確認する。第3処理S103では、グリッドマップM1の第2領域R2に存在する障害物Ob間のグリッド数が移動体グリッド数Nを下回るか否かを判断する。例えば、
図6では、障害物Ob間のグリッド数は、「6」である。そのため、
図6に示す第1領域R1では、車体20は移動できないように障害物Obが配置されていることが確認できる。
【0029】
図7に示すように、第3処理S103では、グリッドマップM1の第2領域R2に存在する障害物Ob間のグリッド数が移動体グリッド数Nを下回る場合、第1領域R1の第1情報I1が設定されていないグリッドに車体20が移動できないことを示す第2情報I2を設定する。
図5と比較して斜線が追加されている低解像度グリッドマップM2のグリッドに第2情報I2が設定されている。本実施形態では、第2情報I2には「0」という数値が採用されている。第3処理S103では、低解像度グリッドマップM2の複数の第1領域R1それぞれに対して上記処理を実施する。これにより、第3処理S103では、低解像度グリッドマップM2において第1情報I1及び第2情報I2が設定されていないグリッドにより形成される移動領域Maと、第1情報I1又は第2情報I2が設定されたグリッドにより形成される非移動領域Munとが区別される。なお、第2情報I2は、「0」という数値でなくてもよく、例えば「1」という数値でもよい。この場合、第1情報I1として「0」を採用するとよい。また、第2情報I2は、数値に限らず文字であってもよい。すなわち、第2情報I2とは、車体20が移動できないことを示す情報として低解像度グリッドマップM2のグリッドに設定されるのであれば、設定内容は適宜変更してもよい。
【0030】
図8に示すように、第4処理S104では、低解像度グリッドマップM2の移動領域Maにおいて、車体20が移動を開始する開始点Sと、車体20の移動の目標点である目標点Gとの間で概略経路Roを生成する。経路生成装置10は、多様な経路生成方法を採用することができるが、本実施形態では例えばA-Star探索アルゴリズムやダイクストラアルゴリズムを利用して開始点Sから目標点Gまでの最短の概略経路Roを生成している。なお、生成される概略経路Roは、開始点Sから目標点Gまでの最短経路である必要はなく、自律走行車1が経由すべき経由点があれば、移動領域Maにおいて開始点Sから当該経由点を経由して目標点Gに至る概略経路Roを生成してもよい。また、開始点Sから目標点Gまでの概略経路Roを生成するときに使用するアルゴリズムは、適宜変更してもよい。
【0031】
次に、第5処理S105について
図9~
図13にしたがって説明する。
図9に示すように、第5処理S105では、低解像度グリッドマップM2において、概略経路生成処理において生成された概略経路Roの周辺部分を含む第1分割領域Sd1、第2分割領域Sd2、及び第3分割領域Sd3に分割する。上記の周辺部分とは、概略経路Roに周辺に存在する障害物Obの一部を含む部分を示している。第1分割領域Sd1は、概略経路Roにおける開始点Sを含んでいる。第3分割領域Sd3は、概略経路Roにおける目標点Gを含んでいる。第2分割領域Sd2は、第1分割領域Sd1と第3分割領域Sd3との間の領域である。第2分割領域Sd2は、第1分割領域Sd1及び第3分割領域Sd3と一部オーバーラップするように配置されている。
【0032】
図10に示すように、第5処理S105では、低解像度グリッドマップM2の第1分割領域Sd1に対応するグリッドマップM1の領域を確認し、車体20が移動するための第1詳細経路Rd1を生成する。
【0033】
図11に示すように、第5処理S105では、低解像度グリッドマップM2の第2分割領域Sd2に対応するグリッドマップM1の領域を確認し、車体20が移動するための第2詳細経路Rd2を生成する。このとき、第2分割領域Sd2には、第1分割領域Sd1における第1詳細経路Rd1の終点が含まれている。第5処理S105では、第1詳細経路Rd1の終点を第2詳細経路Rd2の始点として第2詳細経路Rd2を生成する。
【0034】
図12に示すように、第5処理S105では、低解像度グリッドマップM2の第3分割領域Sd3に対応するグリッドマップM1の領域を確認し、車体20が移動するための第3詳細経路Rd3を生成する。第3分割領域Sd3には、第2分割領域Sd2における第2詳細経路Rd2の終点が含まれている。第5処理S105では、第2詳細経路Rd2の終点を第3詳細経路Rd3の始点として第3詳細経路Rd3を生成する。すなわち、
図9に示すように、第2分割領域Sd2が第1分割領域Sd1及び第3分割領域Sd3と一部オーバーラップしているのは、各経路Rd1,Rd2,Rd3を連続的に構成するためである。
【0035】
図13に示すように、第5処理S105では、各分割領域Sd1,Sd2,Sd3で生成された各経路Rd1,Rd2,Rd3をグリッドマップM1上において連続させることにより詳細経路Rdを生成する。すなわち、経路生成装置10は、グリッドマップM1に基づき車体20の概略経路Roを生成し、概略経路Roに基づき車体20の詳細経路Rdを生成している。なお、本実施形態では、低解像度グリッドマップM2を各分割領域Sd1,Sd2,Sd3に分割していたが、これに限らない。例えば、2分割でもよいし、4分割以上であってもよい。低解像度グリッドマップM2を分割する数が少ないほど、表現するグリッドマップM1のグリッド数が増大するため、各経路Rd1,Rd2,Rd3の生成に使用するメモリ12の容量が多くなる。そのため、経路生成装置10の各経路Rd1,Rd2,Rd3の生成に使用するメモリ12の容量が多くなり、経路生成装置10の演算速度が遅くなってしまう。よって、低解像度グリッドマップM2を分割する数は、経路生成装置10のメモリ12の容量によって適宜変更する。
【0036】
本実施形態の作用を説明する。
低解像度グリッドマップM2のグリッドにおいて障害物Obが設定されているグリッドには、第1情報I1が設定され、低解像度グリッドマップM2において車体20が移動できないグリッドには、第2情報I2を設定している。そのため、概略経路Roを生成するときに車体20が移動できない経路が表現される。そして、低解像度グリッドマップM2において、第1情報I1及び第2情報I2が設定されていないグリッドにより車体20が移動できる移動領域Maが明確になる。すなわち、生成した概略経路Ro上に車体20の移動を妨げる要因がなくなる。
【0037】
本実施形態の効果を説明する。
(1)生成した概略経路Ro上に車体20の移動を妨げる要因がなくなり、概略経路Roに基づき詳細経路Rdを生成するため、車体20が円滑に移動できる経路を生成できる。
【0038】
(2)第3処理S103において、低解像度グリッドマップM2の第1領域R1は、2つの第1情報が設定されたグリッドと、1つの第1情報が設定されていないグリッドとにより形成される。そのため、グリッドマップM1において第1領域R1に対応する位置を第2領域R2とすれば、グリッドマップM1上では複数の第2領域R2が形成される。経路生成装置10は、複数の第2領域R2それぞれに対して第2領域R2に存在する障害物Ob間のグリッド数が移動体グリッド数Nよりも下回るか否かを判断する。これは、経路生成装置10がグリッドマップM1全域において障害物Ob間のグリッド数が移動体グリッド数Nを下回るか否かを一括で判断する場合と比較して、車体20が移動できるか否かを判断するために使用するグリッド数が少ないため、経路生成装置10の処理容量が少なくなる。よって、経路生成装置10の演算負荷をより低減させることができる。
【0039】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○ 低解像度グリッドマップM2において、第1領域R1は、2つの第1情報I1が設定されたグリッドと、複数の第1情報I1が設定されていないグリッドとにより構成されていてもよい。
【0040】
○ グリッドマップM1の外枠部分は、本実施形態では工場等の壁部を示しているため、障害物Obがあるとして取り扱っていたが、これに限らない。グリッドマップM1に基づき車体20が移動する経路を生成するにあたって、グリッドマップM1上に開始点S及び目標点Gがある。そのため、そもそも車体20がグリッドマップM1外に離脱する経路を生成しないことから、グリッドマップM1の外枠部分は車体20が移動できない領域として設定されることも考えられる。すなわち、低解像度グリッドマップM2の外枠部分には、車体20が移動できないことを示す第2情報I2が設定されてもよい。このように変更するとき、低解像度グリッドマップM2において、第1情報I1が設定されていない1つのグリッドと、当該第1情報I1が設定されていないグリッドを挟み込む第1情報I1が設定されたグリッド及び第2情報I2が設定されたグリッドとにより形成される第3領域が形成される。経路生成装置10は、第3領域に対応する位置のグリッドマップM1のグリッド数が移動体グリッド数Nを下回るか否かを判定し、移動体グリッド数Nを下回る場合、第3領域における第1情報I1が設定されていないグリッドに第2情報I2を設定する。よって、低解像度グリッドマップM2において移動領域Maと、非移動領域Munとを区別することができる。
【0041】
○ 自律走行車1は、搬送台車であったが、これに限らない。例えば、掃除ロボットのような移動ロボットであってもよい。
○ また、経路生成装置10は、自律走行車1に適用されていたが、例えば自動車やフォークリフト等の車両に適用してもよい。また、経路生成装置10が移動体としての車体20が移動する経路を生成したが、例えばコンピュータで生成された空間でのアバターを移動体として、コンピュータで生成された空間でのアバターが移動する経路を生成してもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…経路生成装置、20…車体、Ro…概略経路、Rd…詳細経路、M1…グリッドマップ、M2…低解像度グリッドマップ、S101…第1処理、S102…第2処理、S103…第3処理、S104…第4処理、I1…第1情報、I2…第2情報、R1…第1領域、R2…第2領域、Ma…移動領域、Mun…非移動領域、S…開始点、G…目標点、Ob…障害物、N…移動体グリッド数。