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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】車両用フード構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/10 20060101AFI20230905BHJP
【FI】
B62D25/10 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019237051
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104748
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】千葉 孝太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼倉 英輔
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-63218(JP,A)
【文献】特開2018-114952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のフードの外面を構成するアウタパネルと、
前記アウタパネルに対向配置され、前記フードの内面を構成するインナパネルと、
前記インナパネルに設けられ、前記フードの前端部を車体にロックするためのストライカと、
前記インナパネルの前記アウタパネル側の面に接合され、前記ストライカを支持するリンフォースと、
を備え、
前記インナパネルの前記リンフォースの車両後方側には、車両幅方向に延在し、当該インナパネルの面を前記アウタパネル側に階段状に変位させる段差部が設けられ、
前記段差部の前記リンフォースと車両前後方向において対向する位置には、前記アウタパネル側に凸状に形成されるビード部が前記段差部の稜線を跨いで車両前後方向に延在するように形成され、
前記リンフォースの後端部が前記ビード部に接合されていることを特徴とする車両用フード構造。
【請求項2】
前記リンフォースは、前記段差部を形成する縦壁面において前記ビード部に接合されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用フード構造。
【請求項3】
前記ビード部は、車両の幅方向に並んで複数形成され、
前記リンフォースは、前記複数形成されたビード部のそれぞれと接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用フード構造。
【請求項4】
前記ビード部は、前記ストライカの車両幅方向の中心線を基準として車両幅方向に対称配置されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用フード構造。
【請求項5】
前記ビード部は、車両幅方向おいて前記リンフォースの端部から遠い距離に位置するほど高さが高くなるように形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の車両用フード構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用フード構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントフード(ボンネット)のストライカを車体側のロック機構に嵌合させたり、嵌合を解除したりする開閉操作時に、ストライカを介してフロントフードに荷重が作用する。このような開閉操作時に作用する荷重に対してストライカ近傍の強度を高めるために種々の補強構造が設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、フロントフードのストライカ廻りの補強構造を簡素化、低コスト化しつつ、補強部分の剛性や溶接強度を確保するために、フロントフードインナパネルの前部の車両幅方向中央部に上向きに凸となった膨出部を形成し、膨出部と共に閉断面形状を構成するストライカリンフォースを膨出部の下側に配置し、ストライカリンフォースに車両前後方向に沿うビードを形成する構成が示されている。また、ストライカリンフォースの前後の端部を膨出部の前後の端部に溶接すること、さらに、その前後の端部の溶接構造について示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-101258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように特許文献1に示されたフードインナパネルは、ストライカリンフォースの強度を向上させるものであるので、ストライカリンフォースの強度向上がされたとしても、剛性が低くなり応力集中が生じやすい領域を一部に有するフードインナパネルの場合、その領域を避けるようにストライカリンフォースに作用するフード開閉操作時の応力をフードインナパネル全域に分散させることはでき難い。そのため、応力集中が生じやすい一部領域に応力集中に伴う変形を生じさせる虞がある。
【0006】
そこで、上記課題に鑑み、本発明の少なくとも一つの実施形態は、ストライカリンフォースに作用するフロントフードの開閉操作時の応力をフードインナパネルの広範囲に分散させて、一部領域への応力集中に伴う変形を抑制することができる車両用フード構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)前述した目的を達成するために発明されたものであり、本発明の少なくとも一つの実施形態は、車両用のフードの外面を構成するアウタパネルと、前記アウタパネルに対向配置され、前記フードの内面を構成するインナパネルと、前記インナパネルに設けられ、前記フードの前端部を車体にロックするためのストライカと、前記インナパネルの前記アウタパネル側の面に接合され、前記ストライカを支持するリンフォースと、を備え、前記インナパネルの前記リンフォースの車両後方側には、車両幅方向に延在し、当該インナパネルの面を前記アウタパネル側に階段状に変位させる段差部が設けられ、前記段差部の前記リンフォースと車両前後方向において対向する位置には、前記アウタパネル側に凸状に形成されるビード部が前記段差部の稜線を跨いで車両前後方向に延在するように形成され、前記リンフォースの後端部が前記ビード部に接合されている。
【0008】
このような構成によれば、リンフォースとビード部とが接合されているので、リンフォースを介してストライカから入力される応力をビード部に負荷することができる。これにより、車両幅方向に延びるように形成されたインナパネルの骨部を伝って同方向へと流れる力の一部をビード部の延在方向である車両前後方向へと分散させることができる。従って、車両幅方向両側部において剛性が低くなる箇所への応力集中を低減し、フード閉時にインナパネルに歪みが発生することを防止できる。
【0009】
また、応力が負荷されるビード部は、平坦部と比べて剛性の高い段差部に形成されている。従って、ビード部への応力負荷に伴ってインナパネルに歪みが発生することを防止できる。
【0010】
また、ビード部は、段差部の稜線を跨いで車両前後方向に延在して形成されている。従って、段差部の稜線よりも前側で留まることなく、ストライカから入力された応力を車両前後方向後側へと当該稜線を越えて確実に伝達させて、上記箇所への応力集中を低減することができる。
【0011】
(2)幾つかの実施形態では、前記(1)の構成において、前記リンフォースは、前記段差部を形成する縦壁面において前記ビード部に接合されている。
【0012】
このような構成によれば、リンフォースは、段差部を形成する縦壁面においてビード部に接合されているので、リンフォースとビード部との接合部において、フード閉時の応力をせん断方向で受けることができる。従って、例えば、平坦面である段差部の上面でリンフォースとビード部とが接合されて剥離方向でフード閉時の応力を受ける場合と比較して、接合部の剥がれや接合部周辺の亀裂の発生を防止することができる。
【0013】
(3)幾つかの実施形態では、前記(1)または(2)の構成において、前記ビード部は、車両の幅方向に並んで複数形成され、前記リンフォースは、前記複数形成されたビード部のそれぞれと接合されている。
【0014】
このような構成によれば、ビード部は、車両の幅方向に並んで複数形成され、リンフォースは、複数のビード部のそれぞれと接合されているので、リンフォースを介してストライカから入力される応力を複数のビード部それぞれに負荷することができる。これにより、ビード部が一つのみの場合と比較して、より多くの力を車両前後方向へと分散させることができる。以上より、車両幅方向両側部の上記箇所への応力集中をより低減することができる。
【0015】
(4)幾つかの実施形態では、前記(3)の構成において、前記ビード部は、前記ストライカの車両幅方向の中心線を基準として車両幅方向に対称配置されている。
【0016】
このような構成によれば、ビード部は、ストライカの車両幅方向の中心線を基準として車両幅方向に対称配置されているので、インナパネルに対して、ストライカの車両幅方向の中心線を基準として車両幅方向に対称に応力を負荷することができる。これにより、ストライカを挟んで車両幅方向一方側と他端側のどちらか一方に応力が偏って負荷されることを防止し、インナパネルに歪みが発生することを防止できる。
【0017】
(5)幾つかの実施形態では、前記(3)または(4)の構成において、前記ビード部は、車両幅方向おいて前記リンフォースの端部から遠い距離に位置するほど高さが高くなるように形成されている。
【0018】
このような構成によれば、ビード部は、車両幅方向おいてリンフォースの端部から遠い距離に位置するほど高さが高くなるように形成されているので、負荷される応力を各ビード部で均等化して、リンフォースの車幅方向両端部に位置するビード部への応力集中を防止することができる。
【0019】
すなわち、リンフォースは板状部材でその周囲がインナパネルに溶接接合される構造であるので(図1図4の溶接箇所W、Ws参照)、リンフォースの中央部分にストライカからフード閉時の荷重が作用すると、リンフォースの周囲の溶接部分に大きな応力が生じる。従って、特に、リンフォースの隅の部分において最も大きくなるので、車両幅方向に並んだ複数のビード部の高さが均等の場合には、リンフォースの車幅方向両端部に位置するビード部へ負荷される応力が増加して、該ビード部に応力集中が生じやすい。そこで、リンフォースの端部から遠い距離に位置するビード部ほど高さを高くして負荷される応力が増加するようにして、負荷される応力を各ビード部で均等化している。
【発明の効果】
【0020】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、ストライカリンフォースに作用するフロントフードの開閉操作時の応力をフードインナパネルの広範囲に分散させて、一部領域への応力集中に伴う変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るフードインナパネルの全体構成の概要を示す上平面視図である。
図2図1の一実施形態に係るフードインナパネルの全体構成の概要を示す上面全体斜視図である。
図3図1の一実施形態に係るフードインナパネルの全体構成の概要を示す下面全体斜視図である。
図4図2のP部の拡大斜視図である。
図5図4のQ部の拡大平面視図である。
図6図5のA-A線断面図である。
図7図5のC-C線断面図である。
図8図4のB-B線断面図である。
図9】フロントフード開閉操作時のフードインナパネルにおける応力の流れを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、実施形態として記載されている、または図面に示されている構成部品の相対的配置等は、本発明の範囲をこれらに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、説明中の上下前後左右の方向は、運転席から乗員が前方を見た方向で定義するものとする。各図中において、「FR」は前方、「UPR」は上方、「LH」は左方、「RH」は右方を示す。
【0023】
図1~9を参照して本発明の一実施形態を説明する。車両の前部のエンジンルームを開閉するフロントフード(フード)1は、フードアウタパネル(アウタパネル)3とフードインナパネル(インナパネル)5とによって構成される(図8参照)。図1は、そのフードインナパネル5を、フードアウタパネル3を取り外した状態で上方から見た上平面視図を示す。
【0024】
図1に示すように、フードインナパネル5は、金属板(例えばアルミニウム合金板)によって形成される。外形形状は、車両幅方向において略左右対称形状を有し、また、車両前部に向かって車両幅方向に細くなるとともに、左右の曲がり部7、7を境に先端部が細くなって突出する形状を有している。また、図2、3に示すように、左右の曲がり部7、7を境にして車両幅方向の幅が細くなるとともに、先端部に向かって下方向に折れ曲がる形状を有している。
【0025】
また、図1~3に示すように、フードインナパネル5の左右の後部には、フロントフード1の開閉用のヒンジ9、9が設けられている。このヒンジ9、9は、不図示の車体側に連結される。さらに、フードインナパネル5には、軽量化のために強度に影響しない箇所を肉抜きするために、または部品の取り付け作業等のために開口が設けられている。
【0026】
また、フードインナパネル5は、図1~3に示すように、車両幅方向に延在するように設けられた複数の階段状の横段差部(段差部)11を有して車両後部から前部に向かって下方に傾斜するように形成され、さらに車両前後方向に延在するように設けられた複数の縦段差部13を有して車両幅方向の中央部から左右方向に向かって下方に傾斜するように形成されている。なお、これら車両幅方向に延在する横段差部11と、車両前後方向に延在する縦段差部13とは連続して設けられ、または、それぞれ単独で設けられている。
【0027】
図1、2に示すように、フードインナパネル5を上方から見た場合に、車両幅方向に延在する横段差部11の稜線11Rと、車両前後方向に延在する縦段差部13の稜線13Rとは、略梯子形状のように通されている。この略梯子形状の稜線11R、13Rの状態を明確にするために図9に、稜線11R、13Rの延在方向を概略的に点線11RA、13RAで示す。
【0028】
また、略梯子形状に横段差部11及び縦段差部13が形成されていることからフードインナパネル5には、略梯子形状に骨部が形成されているといえる。すなわち、稜線11Rの延在方向を示す点線11RAに沿って、横段差部11による横骨部12が形成され、稜線13Rの延在方向を示す点線13RAに沿って縦段差部13による縦骨部14が形成されている。
【0029】
フードインナパネル5の車両前部には、上平面視において略矩形形状からなる金属製(例えばアルミニウム合金製)のストライカリンフォース17が、フードインナパネル5の上面に、すなわちフードインナパネル5のフードアウタパネル3側の面に接合(溶接接合)している。溶接箇所Wは、ストライカリンフォース17の周囲である両側部17a、前端部17b及び後端部17cのそれぞれの部分にあり、スポット溶接されている。
【0030】
ストライカリンフォース17は、フードインナパネル5とフードアウタパネル3との間に配置されてフードインナパネル5の上面に接合されるので、フロントフード1を開いた際に、エンジンルーム側から直接目視されないので見栄えが向上する。
【0031】
また、フードインナパネル5の車両前部には、フロントフード1の下部側の車体に設けられたフードラッチ(不図示)に係合してフロントフード1をロックするフードストライカ(ストライカ)15が設けられている(図3参照)。
【0032】
フードストライカ15は、略U字形状からなり、両端部が金属製(例えば鉄製)のストライカプレート19に溶接で固定される。ストライカプレート19は、ストライカリンフォース(リンフォース)17の上面に、すなわちストライカリンフォース17のフードアウタパネル3側の面にボルト(不図示)によって締結される(図8参照)。図4に示す貫通孔23は、ストライカプレート19とストライカリンフォース17とを締結するボルト孔である。
【0033】
そして、ストライカプレート19に固定されたフードストライカ15は、ストライカリンフォース17及びフードインナパネル5に形成された開口24を貫通してフードインナパネル5の下面から車体側に突出するように設けられる(図3参照)。なお、このフードストライカ15の車両幅方向の中心線SCは、車両の車両幅方向の中心位置と一致するように設けられている。
【0034】
図1~3に示すように、ストライカリンフォース17の後方側であって最初に設けられた横段差部11(11a)には、ストライカリンフォース17と車両前後方向において対向する位置に、フードアウタパネル3側に凸状に形成されたビード部25が設けられている。このビード部25は、横段差部11aの稜線11Rを跨ぐように車両前後方向に延在するように形成されている。
【0035】
また、ビード部25は、車両幅方向に延在する横段差部11aに沿って、例えば、図1~5に示すように4つ(4箇所)形成されている。なお、ビード部25の個数については特に限定するものではなく、1つでも複数でもよい。また、ビード部25の断面形状については、特に限定するものではなく矩形形状に限らず、湾曲形状であっても、円弧形状であってもよい。さらに、ビード部25は、横段差部11aを形成するフードインナパネル5自体を凸状に形成しても、横段差部11aを形成するフードインナパネル5とは別体に形成されたビード部25を接合してもよい。
【0036】
図8に、図4のB-B線断面図を示す。フードインナパネル5、ストライカリンフォース17、ストライカプレート19、およびフードストライカ15の結合関係を示す。ストライカリンフォース17の後端部17cが、横段差部11aに形成されたビード部25に溶接箇所Wで接合されている。
【0037】
さらに、ストライカリンフォース17の後端部17cは、横段差部11aを形成する縦壁面25Fにおいてビード部25に接合されている。この縦壁面25Fは、稜線11Rよりも前側の傾斜面である。
【0038】
以上のように構成されたフードインナパネル5において、図9に、フロントフード1の閉操作時に作用する応力の流れ状態を概念的に示す。
【0039】
図1、2に示すように、フードインナパネル5の前部の形状は、車両幅方向の幅が細くなるとともに、先端部に向かって下方向に折れ曲がる左右の曲がり部7、7を有するので、この曲がり部7、7の近傍において応力が集中しやすい応力集中部E、Eが形成される。
【0040】
従って、横段差部11aにビード部25が形成されていない従来構造の場合には、応力分散機能は得られず、ストライカリンフォース17を介してフードストライカ15から入力される応力は、横段差部11a及び横段差部11aと同じような段差部からなるフードインナパネル5の横骨部12を伝って左右方向(矢印F1方向)に流れる。これにより、応力集中部E、Eへの応力集中が増大するおそれがある。
【0041】
これに対して、図9に示すように、本実施形態では、横段差部11aに形成されたビード部25にストライカリンフォース17の後端部17cが接合されるので、ストライカリンフォース17を介してフードストライカ15から入力される応力がビード部25にも負荷される。
【0042】
これにより、横段差部11aを伝って左右方向へと流れる応力の一部をビード部25の延在方向である車両前後方向(矢印F3方向)へと分散させて、横段差部11a及び横段差部11aと同じような段差部からなるフードインナパネル5の横骨部12を伝って左右方向(矢印F1方向)に流れる応力を低減できる。従って、応力集中部E、Eへの応力集中を低減し、フード閉時にフードインナパネル5に歪みが発生することを防止できる。
【0043】
なお、横段差部11aの延在方向である左右方向及び横段差部11aと同じような段差部からなるフードインナパネル5の横骨部12の左右方向(矢印F1方向)に流れた応力は、フードインナパネル5の左右両側に車両前後方向に延在する縦段差部13(縦骨部14)の部分を通って車両前後方向(矢印F2方向)に流れる。
【0044】
以上説明した本実施形態によれば、ストライカリンフォース17とビード部25とが接合されているので、ストライカリンフォース17を介してフードストライカ15から入力される応力をビード部25に負荷することができる。これにより、車両幅方向に延びるように形成されたフードインナパネル5の横骨部12である横段差部11aを伝って同方向へと流れる力の一部をビード部25の延在方向である車両前後方向へと分散させることができる。従って、車両幅方向両側部において剛性が低くなる応力集中部E、Eへの応力集中を低減し、フード閉時にインナパネルに歪みが発生することを防止できる。
【0045】
また、応力が負荷されるビード部25は、平坦部と比べて剛性の高い横段差部11aに形成されている。従って、ビード部25への応力負荷に伴ってフードインナパネル5に歪みが発生することを防止できる。
【0046】
また、ビード部25は、横段差部11aの稜線11Rを跨いで車両前後方向に延在して形成されている。従って、横段差部11aの稜線11Rよりも前側で留まることなく、フードストライカ15から入力された応力を車両前後方向後側へと当該稜線11Rを越えて確実に伝達させて、上記応力集中部E、Eへの応力集中を低減することができる。
【0047】
さらに、本実施形態によれば、ストライカリンフォース17の後端部17cは、横段差部11aを形成する縦壁面25Fにおいてビード部25に接合されているので、ストライカリンフォース17とビード部25との接合部において、フロントフード1の閉時の応力をせん断方向で受けることができる。従って、例えば、平坦面である横段差部11aの上面25Gでストライカリンフォース17の後端部17cとビード部25とが接合されて剥離方向でフロントフード1の閉時の応力を受ける場合と比較して、接合部の剥がれや接合部周辺の亀裂の発生を防止することができる。
【0048】
幾つかの実施形態では、図1~7に示すように、ビード部25は、車両の幅方向に並んで複数(4つ)形成され、ストライカリンフォース17の後端部17cは、4つのビード部25のそれぞれと、各ビード部25の縦壁面25Fにおいて溶接箇所Wで接合される。
【0049】
図7に示すように、ストライカリンフォース17の後端部17cと、ビード部25との接合状態は、ストライカリンフォース17の後端部17cの下面がビード部25の縦壁面25Fの上に重なるように接合される。
【0050】
さらに、図4、5、7に示すように、ストライカリンフォース17の後端部17cには、ビード部25よりも車両幅方向の一端側と他端側のそれぞれにおいても溶接される溶接箇所Wsが設けられる。
【0051】
このように、ビード部25は、車両の幅方向に並んで複数形成され、リンフォースは、複数のビード部のそれぞれと接合されている。従って、ストライカリンフォース17を介してフードストライカ15から入力される応力を4つのビード部25それぞれに負荷することができる。これにより、ビード部25が一つのみの場合と比較して、より多くの力を車両前後方向へと分散させることができる。以上より、車両幅方向両側部の応力集中部E、Eへの応力集中をより低減することができる。
【0052】
また、ストライカリンフォース17の後端部17cには、ビード部25よりも車両幅方向の一端側と他端側のそれぞれにおいても溶接される溶接箇所Wsが設けられるので、ストライカリンフォース17の後端部17cと横段差部11aとの接合強度が確保される。
【0053】
幾つかの実施形態では、図1に示すように、ビード部25は、フードストライカ15の車両幅方向の中心線SCを基準として車両幅方向に対称配置されている。すなわち、図1に示すように、フードストライカ15の車両幅方向の中心線SCを基準として車両幅方向に左右に対称に2つずつビード部25が配置されている。
【0054】
このように、ビード部25は、フードストライカ15の車両幅方向の中心線SCを基準として車両幅方向に対称配置されているので、フードインナパネル5に対して、フードストライカの車両幅方向の中心線SCを基準として車両幅方向に対称に応力を負荷することができる。これにより、フードストライカ15を挟んで車両幅方向一方側と他端側のどちらか一方に応力が偏って負荷されることを防止し、フードインナパネル5に歪みが発生することを防止できる。
【0055】
また、幾つかの実施形態では、図6、7に示すように、ビード部25は、車両幅方向おいてストライカリンフォース17の端部から遠い距離に位置するほど高さが高くなるように形成されている。
【0056】
すなわち、図6に示すように、ビード部25は、フードストライカ15の車両幅方向の中心線SCの位置を挟んで一端側と他端側とにそれぞれ2つ形成され、これらビード部25の断面形状は、車両幅方向の中央に位置するほど凸状の高さが高くなるように形成されている。すなわち車両幅方向の中央側に位置するビード部25aの高さ(横段差部11aの下面から上面に向かって形成された高さ)h1が、外側のビード部25bの高さh2よりも高く形成されている。
【0057】
そして、図7に示すように、ストライカリンフォース17の後端部17cの下面が高さの異なるビード部25a、25bのそれぞれの上面に溶接箇所Wで接合されている。さらに、ビード部25a、25bよりも車両幅方向の一端側と他端側のそれぞれにおいて溶接箇所Wsで、ストライカリンフォース17の後端部17cの両端部が横段差部11aに接合されている。
【0058】
また、図7に示すように、ストライカリンフォース17の後端部17cの下面とビード部25の上面との接合を確実にするため、断面形状においてビード部25a、25bの側面部とストライカリンフォース17の後端部17cとの間にスペースS1、S2が形成されるような断面形状を有している。
【0059】
このように、ビード部25は、車両幅方向おいてストライカリンフォース17の端部から遠い距離に位置するほど高さが高くなるように形成されているので、負荷される応力を各ビード部25で均等化して、ストライカリンフォース17の車幅方向両端部に位置するビード部25への応力集中を防止することができる。
【0060】
すなわち、ストライカリンフォース17は板状部材でその周囲がフードインナパネル5に溶接接合される構造であるので(図1図4の溶接箇所W、Ws参照)、ストライカリンフォース17の中央部分にフードストライカ15からフード閉時の荷重が作用すると、ストライカリンフォース17の周囲の溶接部分に大きな応力が生じる。従って、特に、ストライカリンフォース17の隅の部分において最も大きくなるので、車両幅方向に並んだ複数のビード部25の高さが均等の場合には、ストライカリンフォース17の車両幅方向両端部に位置するビード部25へ負荷される応力が増加して、該ビード部25に応力集中が生じやすい。
【0061】
そこで、車両幅方向おいてストライカリンフォース17の端部から遠い距離に位置するビード部25aほど端部側のビード部25bより高さを高くして負荷される応力が増加するようにして、負荷される応力を各ビード部25a、25bで均等化している。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、ストライカリンフォースに作用するフロントフードの開閉操作時の応力をフードインナパネルの広範囲に分散させて、一部領域への応力集中に伴う変形を抑制することができるので、車両のフロントフードへの利用に適している。
【符号の説明】
【0063】
1 フロントフード(フード)
3 フードアウタパネル(アウタパネル)
5 フードインナパネル(インナパネル)
7 曲がり部
9 ヒンジ
11、11a 横段差部(段差部)
11R 稜線
12 横骨部
13 縦段差部
13R 稜線
14 縦骨部
15 フードストライカ(ストライカ)
17 ストライカリンフォース(リンフォース)
17a ストライカリンフォースの両側部
17b ストライカリンフォースの前端部
17c ストライカリンフォースの後端部
19 ストライカプレート
25、25a、25b ビード部
25F 縦壁面
SC フードストライカの車両幅方向の中心線
E 応力集中部
F1、F2、F3 応力の流れ方向
W、Ws 溶接箇所
S1、S2 スペース
図1
図2
図3
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図5
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図9