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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】電動車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20230905BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20230905BHJP
【FI】
B60L3/00 S
B60L50/61
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020008429
(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公開番号】P2021118559
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】南部 壮佑
(72)【発明者】
【氏名】杉本 喬紀
(72)【発明者】
【氏名】生駒 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-109633(JP,A)
【文献】特開2016-193624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00
B60L 50/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モータと、前記駆動モータで用いる電力を蓄積するバッテリと、前記駆動モータで用いる電力を発電するジェネレータと、前記ジェネレータを駆動するエンジンとを備える電動車両の制御装置であって、
前記バッテリからの出力電力を正、前記バッテリに対する入力電力を負とした場合、
前記バッテリからの出力限度電力および前記バッテリに対する入力限度電力を設定するバッテリ入出力限度電力設定部と、
前記出力限度電力と前記入力限度電力とドライバからの要求出力とに基づいて、前記ジェネレータの発電電力を算出する発電電力算出部と、
前記発電電力に基づいて、前記ジェネレータの駆動トルクおよび前記エンジンの駆動トルクを算出するトルク算出部と、
前記ジェネレータの駆動トルクおよび前記エンジンの駆動トルクに基づき、前記ジェネレータ及び前記エンジンのそれぞれをトルク制御するトルク制御部と、を有し、
前記発電電力算出部は、前記出力限度電力と前記入力限度電力との差分が所定値未満の場合、前記発電電力に対して補正電力を加算し、
前記トルク算出部は、前記補正電力が加算される前の前記発電電力に基づいて前記ジェネレータの駆動トルクを算出し、前記補正電力が加算された前記発電電力に基づいて前記エンジンの駆動トルクを算出する、
ことを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項2】
前記発電電力算出部は、前記出力限度電力と前記入力限度電力との差分が小さいほど、前記補正電力を大きくする、
ことを特徴とする請求項1記載の電動車両の制御装置。
【請求項3】
前記電動車両は、車両の電装機器を含む補機を更に備え、
前記発電電力算出部は、前記駆動モータの駆動に要する電力と前記入力限度電力と前記補機の消費電力とに基づいて発電上限電力を設定し、前記出力限度電力と前記入力限度電力との差分が所定値未満の場合、前記発電上限電力に対して前記補正電力を加算する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電動車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動車両の駆動モータに電力を供給するバッテリを保護するため、当該バッテリに入出力する電力を制限する制御が行われている。
例えば下記特許文献1では、電動車両は、並列接続された2つの蓄電装置と、2つの蓄電装置の間で電力を入出力するように構成された車両駆動用電動機とを備える。制御装置は、2つの蓄電装置の各々の残容量に少なくとも基づいて、各蓄電装置の出力許可電力を設定する。2つの蓄電装置のうちのいずれか1つにおいて、出力許可電力の制限が強化されたときには、制御装置は、蓄電装置全体から出力される電力を、各蓄電装置の出力許可電力を合計した値から、2つの蓄電装置のそれぞれに対応して設定された複数の出力許可電力の最小値を2倍した値に切替える。
また、例えば下記特許文献2では、電子制御ユニット(ECU)は、二次電池の内部状態を動的に推定可能な電池モデルに従って、電池内の各点における内部状態予測値を逐次算出する電池モデル部を含んで構成される。ECUは、この内部状態予測値が局所的にも所定の管理範囲を外れることがないように、二次電池からの出力可能電力(放電電力上限値)および入力可能電力(充電電力上限値)を算出する。負荷の動作は、ECUにより設定された入出力可能電力の範囲内に制限される。
また、例えば下記特許文献3では、短時間に大きな電力を供給又は回収する必要がある要件のときは、バッテリのマージンを小さくし、大電力を供給又は回収するように充放電電流を大きく設定して要求を満たし、かつ、充放電継続時間は短く設定してトータルの充放電量が過大となることを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-183524号公報
【文献】特許第4874633号公報
【文献】特許第3613216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動車には、駆動モータで用いる電力を発電するジェネレータを搭載しているものがある。ジェネレータの発電電力は、車両の駆動に必要な駆動電力と互いに参照し合っており、発電電力と駆動電力の一方が減れば他方も減るというループ構造となっている。
ここで、発電電力と駆動電力は、ドライバからの要求出力(アクセル操作量等)に加え、バッテリからの出力限度電力およびバッテリに対する入力限度電力に基づいて決定される。本発明者らは、バッテリの制御状態(出力限度電力および入力限度電力の設定状態)によっては、例えばドライバが要求出力を大きくするよう指示しているにも関わらず発電電力と駆動電力が大きくならず、ドライバの要求に沿った走行ができなくなる場合があることを見出した。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、バッテリの状態に関わらずドライバの要求に沿った走行を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、請求項1の発明にかかる電動車両の制御装置は、駆動モータと、前記駆動モータで用いる電力を蓄積するバッテリと、前記駆動モータで用いる電力を発電するジェネレータと、前記ジェネレータを駆動するエンジンとを備える電動車両の制御装置であって、前記バッテリからの出力電力を正、前記バッテリに対する入力電力を負とした場合、前記バッテリからの出力限度電力および前記バッテリに対する入力限度電力を設定するバッテリ入出力限度電力設定部と、前記出力限度電力と前記入力限度電力とドライバからの要求出力とに基づいて、前記ジェネレータの発電電力を算出する発電電力算出部と、前記発電電力に基づいて、前記ジェネレータの駆動トルクおよび前記エンジンの駆動トルクを算出するトルク算出部と、前記ジェネレータの駆動トルクおよび前記エンジンの駆動トルクに基づき、前記ジェネレータ及び前記エンジンのそれぞれをトルク制御するトルク制御部と、を有し、前記発電電力算出部は、前記出力限度電力と前記入力限度電力との差分が所定値未満の場合、前記発電電力に対して補正電力を加算し、前記トルク算出部は、前記補正電力が加算される前の前記発電電力に基づいて前記ジェネレータの駆動トルクを算出し、前記補正電力が加算された前記発電電力に基づいて前記エンジンの駆動トルクを算出する、ことを特徴とする。
請求項2の発明にかかる電動車両の制御装置は、前記発電電力算出部は、前記出力限度電力と前記入力限度電力との差分が小さいほど、前記補正電力を大きくする、ことを特徴とする。
請求項3の発明にかかる電動車両の制御装置は、前記電動車両は、車両の電装機器を含む補機を更に備え、前記発電電力算出部は、前記駆動モータの駆動に要する電力と前記入力限度電力と前記補機の消費電力とに基づいて発電上限電力を設定し、前記出力限度電力と前記入力限度電力との差分が所定値未満の場合、前記発電上限電力に対して前記補正電力を加算する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、出力限度電力と入力限度電力との差分が所定値未満となった場合、発電電力に対して補正電力を加算してエンジンの駆動トルクを算出する。これにより、ギア損失等によるエンジン誤差が実際の発電量に与える影響を考慮してエンジンの駆動トルクを設定することができ、ドライバの要求に沿った出力を可能とする上で有利となる。
請求項2の発明によれば、出力限度電力と入力限度電力との差分が小さいほど補正電力を大きくするので、バッテリの状態に合わせて補正電力を増減させることができ、エンジン誤差に起因する発電電力の誤差をより低減する上で有利となる。
請求項3の発明によれば、出力限度電力と入力限度電力との差分が所定値未満の場合に、予め発電上限電力を緩和することによりエンジン誤差に基づく発電電力の減少を防止する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態にかかる電動車両10の構成を示すブロック図である。
図2】駆動電力および発電電力の算出方法を模式的に示す説明図である。
図3】エンジン18の出力誤差の影響を模式的に示す説明図である。
図4】補正電力の大きさの設定方法の一例を示す説明図である。
図5】出力限度電力および入力限度電力を模式的に示す説明図である。
図6】発電電力の算出処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる電動車両の制御装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
図1は、実施の形態にかかる電動車両10の構成を示すブロック図である。
電動車両10は、駆動モータ12と、バッテリ14、ジェネレータ16、エンジン18、車両ECU(Electronic Control Unit)20、MCU(Moter Control Unit)22、BMU(Battery Control Unit)24、GCU(Generator Control Unit)26、エンジン(ENG)ECU28を備える。
なお、図1において、実線は電力線、点線は通信線を示している。
【0009】
駆動モータ12は、電力を用いて稼働し、電動車両10の駆動輪を回転させる。また、駆動モータ12は、電動車両10の減速時には回生発電を行い、回生制動力を発生させる。
バッテリ14は、駆動モータ12を稼働させる電力を蓄積する。バッテリ14で蓄積する電力は、例えば後述するジェネレータ16で発電した電力、駆動モータ12の回生発電により発生した電力、図示しない充電機構により外部電源が接続されて供給される電力などが挙げられる。本実施の形態では、バッテリ14からの出力(放電)電力を正、バッテリ14に対する入力(充電)電力を負として説明する。
ジェネレータ16は、エンジン18により駆動され、駆動モータ12や電動車両10の補機類で用いる電力を発電する。なお、ジェネレータ16で発電した電力のうち、駆動モータ12で使用しない余剰分はバッテリ14に蓄積される。また、ジェネレータ16は、バッテリ14の充電率が小さくなった場合などには、バッテリ14で蓄積するための電力を発電する。
エンジン18は、燃料を燃焼させることによって稼働し、ジェネレータ16の駆動軸を回転させる。また、車両の走行状態に基づきエンジン18によって駆動輪を回転させる、すなわちパラレル走行を可能としてもよい。
【0010】
MCU22は駆動モータ12を、BMU24はバッテリ14を、GCU26はジェネレータ16を、エンジンECU28はエンジン18を、それぞれ制御する。
また、車両ECU20は、MCU22、BMU24、GCU26およびエンジンECU28とそれぞれ接続され、電動車両10全体の制御を司る。すなわち、車両ECU20が電動車両10の制御装置に対応する。なお、図1では図示を省略しているが、車両ECU20には、アクセルペダルの操作量を検知するアクセルペダルセンサやブレーキペダルの操作量を検知するブレーキペダルセンサ、電動車両10の走行速度を検知する車速センサなどの各種センサ類が接続されている。
また、車両ECU20、MCU22、BMU24、GCU26およびエンジンECU28は、それぞれCPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されるマイクロコンピュータである。
【0011】
つぎに、車両ECU20の機能的構成について説明する。
車両ECU20は、上記CPUが上記制御プログラムを実行することにより、バッテリ入出力限度電力設定部200、発電電力算出部202(駆動電力算出部202A、発電電力算出部202B)、トルク算出部206(駆動トルク算出部206A、発電トルク算出部206B)として機能する。
【0012】
バッテリ入出力限度電力設定部200は、バッテリ14からの出力限度電力およびバッテリ14に対する入力限度電力を設定する。出力限度電力とは、バッテリ14から出力(放電)を許容する電力の最大値であり、入力限度電力とは、バッテリ14に対して入力(充電)を許容する電力の最大値である。
本実施の形態では、バッテリ入出力限度電力設定部200は、BMU24から送信されるバッテリ14のSOP(Status Of Power:入出力限界電力)に基づいて出力限度電力および入力限度電力を設定する。SOPは、その時点におけるバッテリ14の出力(放電)限界電力であるSOPoutと、入力(充電)限界電力であるSOPinとがあり、その時々のバッテリ14の電圧、温度、SOC等に基づいてBMU24により算出される。
バッテリ入出力限度電力設定部200は、BMU24から送信されるSOPoutに対して所定のマージン値を設定した値(例えばSOPoutから正値を引いた値)を出力限度電力、SOPinに対して所定のマージン値を設定した値(例えばSOPinに正値を足した値)を入力限度電力とする。なお、上記マージン値を0として、入力限界電力=入力限度電力、出力限界電力=出力限度電力としてもよい。すなわち、出力限度電力≦SOPout(出力限界電力)、|入力限度電力|≦|SOPin(入力限界電力)|とする。
図5は、出力限度電力および入力限度電力を模式的に示す説明図である。
このように、SOPoutやSOPinを超えない範囲でバッテリ14に対する電力の入出力を行うよう制御することによって、バッテリ14の過放電や過充電を防止することができる。
なお、上記マージン値は固定値であってもよいし、その時々によって変動する値(例えばSOPout、SOPinの絶対値の所定パーセントなど)であってもよい。
【0013】
電力算出部202は、駆動電力算出部202Aと発電電力算出部202Bとを備える。
駆動電力算出部202Aは、電動車両10の走行に用いる電力、すなわち駆動モータ12の駆動に要する電力(以下、「駆動電力」という)を算出する。駆動電力は、後述する駆動トルク算出部206AからMCU22に出力される駆動トルクを基に算出される。後述するように、駆動トルクは、アクセルペダルセンサ等から演算したドライバ要求トルクと、出力限度電力および発電電力から算出される。
発電電力算出部202Bは、ジェネレータ16で発電する電力(以下、「発電電力」という)を算出する。より詳細には、発電電力算出部202Bは、出力限度電力と入力限度電力とドライバからの要求出力とに基づいて、ジェネレータ16の発電電力を算出する。
駆動電力算出部202Aと発電電力算出部202Bは、それぞれで算出した駆動電力および発電電力を互いに参照して演算を行っている。
【0014】
図2は、駆動電力および発電電力の算出方法を模式的に示す説明図である。
前提として、駆動電力算出部202Aと発電電力算出部202Bは、それぞれ所定間隔ごとに同期して駆動電力および発電電力を算出しているものとする。
まず、駆動電力の算出方法(図2上段参照)について説明する。
今回の駆動電力算出タイミングをnとすると、駆動電力算出部202Aは、前回(n-1)の発電電力を発電電力算出部202Bから取得する。また、駆動電力算出部202Aは、現時点におけるバッテリ14の出力限度電力をバッテリ入出力限度電力設定部200から取得する。また、駆動電力算出部202Aは、電動車両10の補機類(車両の電装機器など)での消費電力を取得する。
駆動モータ12で消費可能な電力の上限値(以下、「駆動上限電力」という)は、ジェネレータ16の発電電力+バッテリ14からの出力電力-補機での消費電力となる。
一方で、駆動電力算出部202Aは、ドライバによるアクセル操作状態や電動車両10の走行速度等を参照して、ドライバが要求する駆動トルクを出力するために必要な電力(以下、「ドライバ要求電力」という)を算出する。
駆動トルク算出部206Aは、駆動上限電力のトルク換算値とドライバ要求トルクとのうち、小さい方の値(両者が同一の場合はその同一値)を駆動トルクとし、MCU22に出力する。すなわち、駆動電力算出部202Aは、駆動上限電力を超過しないよう駆動電力を設定することができる。
【0015】
つぎに、発電電力の算出方法(図2下段参照)について説明する。
発電電力算出部202Bは、今回(n)の駆動電力を駆動電力算出部202Aから取得する。また、発電電力算出部202Bは、現時点におけるバッテリ14の入力限度電力をバッテリ入出力限度電力設定部200から取得する。入力限度電力は負値であるが、便宜上図2では正値で記載している。また、発電電力算出部202Bは、電動車両10の補機類での消費電力を取得する。
ジェネレータ16で発電が許容される電力の上限値(以下、「発電上限電力」という)は、駆動電力+バッテリ14への入力限度電力+補機での消費電力となる。すなわち、発電電力算出部202Bは、駆動モータ12の駆動に要する電力と入力限度電力と補機の消費電力とに基づいて発電上限電力を設定する。
一方で、発電電力算出部202Bは、ドライバによるアクセル操作状態や電動車両10の走行速度等を参照して、ドライバが要求する駆動力を出力するために必要な電力(以下、「目標発電電力」という)を算出する。
発電電力算出部202Bは、発電上限電力と目標発電電力とのうち、小さい方の値(両者が同一の場合はその同一値)を発電電力とする。すなわち、発電上限電力を超えないよう発電電力を設定することができる。
【0016】
ここで、図3Aに示すように、エンジンのトルク誤差やギア損失等に起因するエンジン18の出力誤差(以下、「エンジン誤差(ENG誤差)」という)等が原因となり、ジェネレータ16での実際の発電量が発電電力算出部202Bで算出した発電電力よりも少なくなる場合がある。
特に、出力限度電力と入力限度電力との差分が小さい状態では、エンジン誤差の影響が大きくなり発電電力を増加することができなくなる可能性が高くなる。
そこで、発電電力算出部202Bは、図3Bに示すように、出力限度電力と入力限度電力との差分が所定値未満の場合、通常時、すなわち図2下段のように算出した発電電力に対して補正電力を加算する。
【0017】
上記発電電力の補正について、より詳細に説明する。
上述のように、駆動電力と発電電力はお互いを参照して演算されており、発電が減れば駆動が減り、駆動が減れば発電が減るループ構造になっている。
ここで、駆動電力をDRV、発電電力をGEN、補機での消費電力(補機電力)をAUX、出力限度電力をPout、入力限度電力をPinとすると、図2上段の駆動電力DRVは下記式(1)で、図2下段の発電電力GENは下記式(2)で示される。
DRV=Pout+GEN(n-1)-AUX ・・・(1)
GEN(n)=DRV+Pin×(-1)+AUX ・・・(2)
【0018】
上記式(1)を上記式(2)に代入すると、下記式(3)となる。
GEN(n)=Pout+GEN(n-1)-AUX+Pin×(-1)+AUX ・・・(3)
上記式(3)に図3Aで示すようなエンジン18の出力誤差(ENGERR)を加えると、下記式(4)となる。
GEN(n)=Pout+GEN(n-1)-ENGERR+Pin×(-1) ・・・(4)
上記式(4)を整理すると、下記式(5)となる。
GEN(n)-GEN(n-1)=Pout+Pin×(-1)-ENGERR ・・・(5)
【0019】
ここで、ジェネレータ16の発電電力が増加するということは、GEN(n)-GEN(n-1)>0であり、これはPout+Pin×(-1)-ENGERR>0と同意である。
よって、ジェネレータ16の発電電力を増加させるには、Pout-Pin>ENGERRとなっていなければならない。すなわち、出力限度電力と入力限度電力との差分がエンジン誤差以上でなければ発電電力を増加させることができない。
【0020】
通常は出力限度電力と入力限度電力との差分は十分に確保されるので、エンジン誤差による発電電力への影響は小さい。
一方、例えばバッテリ14の温度が低い時など、バッテリ14の性能が低下している場合には、SOPoutやSOPinの絶対値が小さくなり、出力限度電力と入力限度電力との差も小さくなる。このような状態では、エンジン誤差が出力限度電力と入力限度電力との差分を上回り、発電電力が増加できなくなる可能性がある。
そこで、図3Bに示すように、発電電力に補正電力を加算することにより、エンジン誤差による発電電力の減少分を補填し、ドライバの要求に即した出力を可能とする。
すなわち、発電電力算出部202Bは、出力限度電力と入力限度電力との差分が所定値未満の場合、発電上限電力に対して補正電力を加算する、すなわち発電上限電力を予め緩和することによりエンジン誤差に基づく発電電力の減少を防止する。
【0021】
発電電力算出部202Bは、例えば図4に示すように、出力限度電力と入力限度電力との差分が小さいほど、補正電力を大きくする。図4は、横軸に出力限度電力(正値)と入力限度電力(負値)との差分、縦軸に補正電力を取っている。
出力限度電力と入力限度電力との差分がβ(所定値)以上の場合には、補正電力は0であり、補正電力は加算されない。
一方、出力限度電力と入力限度電力との差分がβ未満の場合には、差分が小さくなるに従って補正電力が大きくなり、出力限度電力と入力限度電力との差分が0の時には補正電力が最大値αとなる。補正電力の最大値αは、例えばエンジン誤差の最大値に基づいて決定される。
このようにすることで、バッテリ14の状態に合わせて適切な補正電力を設定することができ、電動車両10の各部を効率的に稼働させることができる。
補正電力は、出力限度電力と入力限度電力との差分に加え、エンジンまたはジェネレータの回転数や目標回転に応じて変更させてもよい。この目的は、過補正によるエンジン回転数の吹き上がりを防止するためである。エンジン誤差は一定トルクのため、回転に応じて電力を決定しないと補正量が過不足するため、このような制御を追加してもよい。
【0022】
図1の説明に戻り、トルク算出部206は、駆動トルク算出部206Aおよび発電トルク算出部206Bを備える。駆動トルク算出部206Aは、駆動上限電力のトルク換算値とドライバ要求トルクとのうち、小さい方の値(両者が同一の場合はその同一値)を駆動トルクとし、MCU22に出力する。また、発電トルク算出部206Bは、発電電力算出部202Bで算出された発電電力に基づいてジェネレータ16の駆動トルク(ジェネレータトルク)およびエンジン18の駆動トルク(エンジントルク)を算出し、それぞれGCU26およびENG ECU28に出力する。
ここで、トルク算出部206(発電トルク算出部206B)は、出力限度電力と入力限度電力との差分が所定値未満であり、発電電力に補正電力が加算された場合、補正電力が加算される前の発電電力に基づいてジェネレータ16の駆動トルクを算出し、補正電力が加算された発電電力に基づいてエンジン18の駆動トルクを算出する。
このようにすることで、エンジン誤差を補填するための補正電力を発電電力に加えた場合に、ジェネレータ16で実際に発電する電力がドライバの要求よりも大きくなるのを防ぐことができる。
【0023】
GCU26およびENG ECU28は、トルク算出部206(発電トルク算出部206B)で算出されたジェネレータ16の駆動トルクおよびエンジン18の駆動トルクに基づき、ジェネレータ16及びエンジン18のそれぞれをトルク制御するトルク制御部として機能する。
また、MCU22は、トルク算出部206(駆動トルク算出部206A)で算出された駆動モータ12の駆動トルクに基づき、駆動モータ12をトルク制御するトルク制御部として機能する。
【0024】
図6は、発電電力の算出処理の手順を示すフローチャートである。
バッテリ入出力限度電力設定部200は、BMU24からバッテリ14のSOP(SOPoutおよびSOPin)を取得し(ステップS600)、SOPに基づいて出力限度電力および入力限度電力(入出力限度電力と表記)を設定する(ステップS602)。
発電電力算出部202Bは、各種センサからドライバからの要求出力や補機電力を取得し(ステップS604)、これらと共にステップS602で算出された入出力限度電力に基づいて発電電力を算出する(ステップS606)。なお、フローチャートには示していないが、並行して駆動電力算出部202Aも駆動電力を算出している。
出力限度電力と入力限度電力との差分が所定値(βと表記)未満の場合(ステップS608:YES)、発電電力算出部202Bは、ステップS606で算出した発電電力に補正電力を加算する(ステップS610)。そして、トルク算出部206(発電トルク算出部206B)は、発電電力のみに基づいてジェネレータ16の駆動トルクを、発電電力+補正電力に基づいてエンジン18の駆動トルクを、それぞれ算出し、各部(GCU24およびEGN ECU28)に送信する(ステップS612)。
また、ステップS608で出力限度電力と入力限度電力との差分が所定値以上の場合は(ステップS608:NO)、補正電力の加算は行われない。トルク算出部206(発電トルク算出部206B)は、発電電力に基づいてジェネレータ16の駆動トルクおよびエンジン18の駆動トルクを算出し、各部に送信する(ステップS612)。
【0025】
以上説明したように、実施の形態にかかる電動車両10の制御装置(車両ECU20)によれば、出力限度電力と入力限度電力との差分が所定値未満となった場合、発電電力に対して補正電力を加算してエンジンの駆動トルクを算出する。これにより、ギア損失等によるエンジン誤差が実際の発電量に与える影響を考慮してエンジン18の駆動トルクを設定することができ、ドライバの要求に沿った出力を可能とする上で有利となる。
また、実施の形態にかかる電動車両10の制御装置は、出力限度電力と入力限度電力との差分が小さいほど補正電力を大きくするので、バッテリ14の状態に合わせて補正電力を増減させることができ、エンジン誤差に起因する発電電力の誤差をより低減する上で有利となる。
また、実施の形態にかかる電動車両10の制御装置において、出力限度電力と入力限度電力との差分が所定値未満の場合に、予め発電上限電力を緩和するようにすれば、エンジン誤差に基づく発電電力の減少を防止する上で有利となる。
【符号の説明】
【0026】
10 電動車両
12 駆動モータ
14 バッテリ
16 ジェネレータ
18 エンジン
20 車両ECU
200 バッテリ入出力限度電力設定部
202 電力算出部
202A 駆動電力算出部
202B 発電電力算出部
206 トルク算出部
206A 駆動トルク算出部
206B 発電トルク算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6