IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日油株式会社の特許一覧

特許7342757ヘテロ型単分散ポリエチレングリコール誘導体の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】ヘテロ型単分散ポリエチレングリコール誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/333 20060101AFI20230905BHJP
   C08G 65/30 20060101ALI20230905BHJP
   C08G 65/32 20060101ALI20230905BHJP
   C08G 65/332 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
C08G65/333
C08G65/30
C08G65/32
C08G65/332
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020054290
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2020164843
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2019065528
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】小野澤 昭英
(72)【発明者】
【氏名】市川 貴志
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-014371(JP,A)
【文献】特表2003-511422(JP,A)
【文献】特開2003-138004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00-65/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるヘテロ型単分散ポリエチレングリコールを製造する方法であって、下記工程(A)、(B)、(C)、(D)、(E)および(F)を有することを特徴とする、ヘテロ型単分散ポリエチレングリコールの製造方法。

【化1】


(式(1)中、aは6~12の整数を示す)

工程(A): 式(2)の化合物と式(3)の化合物を式(F1)の条件を満たすように求核置換反応させ、式(4)の化合物を得る工程
【化2】


(式(2)中、bは3~9の整数を示す)

【化3】


(式(3)中、Lはメシル基またはトシル基を示し、R1はトリチル基またはベンジル基を示し、cは3~9の整数を示す)

6≦b+c≦12 (F1)

【化4】


(式(4)中、R1はトリチル基またはベンジル基を示し、aは6~12の整数を示す)

工程(B): 前記工程(A)で得られた前記式(4)の化合物に式(5)の化合物を10℃以下の温度条件でマイケル付加反応させ、式(6)の化合物を得る工程
【化5】


(式(5)中、R2は炭素数1~6の炭化水素基を示す)

【化6】
(式(6)中、R1はトリチル基またはベンジル基を示し、R2は炭素数1~6の炭化水素基を示し、aは6~12の整数を示す)

工程(C): 前記工程(B)で得られた前記式(6)の化合物を脱トリチル化または脱ベンジル化し、式(7)の化合物を含む反応生成物を得る工程
【化7】


(式(7)中、R2は炭素数1~6の炭化水素基を示し、aは6~12の整数を示す)

工程(D): 前記工程(C)で得られた前記反応生成物から前記式(7)の化合物を精製する工程

工程(E): 前記工程(D)で得られた前記式(7)の化合物とフタルイミドを反応させて脱フタルイミド化し、式(8)の化合物を得る工程
【化8】


(式(8)中、R2は炭素数1~6の炭化水素基を示し、aは6~12の整数を示す)

工程(F): 前記工程(E)で得られた前記式(8)の化合物を酸加水分解処理し、前記式(1)で表される化合物を得る工程。
【請求項2】
前記工程(D)において、前記式(7)の化合物をジクロロメタンまたはクロロホルムを用いて精製することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記工程(D)において、前記式(7)の化合物を水または無機塩の濃度が10重量%以下の水溶液を用いて精製することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記工程(D)が、1~25℃の温度での洗浄工程を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項5】
式(1)で表されるヘテロ型単分散ポリエチレングリコールを製造する方法であって、下記工程(A)、(B)、(C)、(E)、(F)および(G)を有することを特徴とする、ヘテロ型単分散ポリエチレングリコールの製造方法。
【化1】


(式(1)中、aは13~40の整数を示す)

工程(A): 式(2)の化合物と式(3)の化合物を式(F1)の条件を満たすように求核置換反応させ、式(4)の化合物を得る工程
【化2】


(式(2)中、bは3~37の整数を示す)

【化3】


(式(3)中、Lはメシル基またはトシル基を示し、R1はトリチル基またはベンジル基を示し、cは3~37の整数を示す)

13≦b+c≦40 (F1)

【化4】


(式(4)中、R1はトリチル基またはベンジル基を示し、aは13~40の整数を示す)

工程(B): 前記工程(A)で得られた前記式(4)の化合物に式(5)の化合物を10℃以下の温度条件でマイケル付加反応させ、式(6)の化合物を得る工程
【化5】


(式(5)中、R2は炭素数1~6の炭化水素基を示す)

【化6】


(式(6)中、R1はトリチル基またはベンジル基を示し、R2は炭素数1~6の炭化水素基を示し、aは13~40の整数を示す)

工程(C): 前記工程(B)で得られた化合物を脱トリチル化または脱ベンジル化し、式(7)の化合物を得る工程
【化7】


(式(7)中、R2は炭素数1~6の炭化水素基を示し、aは13~40の整数を示す)

工程(E): 前記工程(C)で得られた前記式(7)の化合物とフタルイミドを反応させ、脱フタルイミド化し、式(8)で表される化合物を得る工程
【化8】

(式(8)中、R2は炭素数1~6の炭化水素基を示し、aは13~40の整数を示す)

工程(F): 前記工程(E)で得られた前記式(8)の化合物を酸加水分解処理を実施し、前記式(1)の化合物を含む反応生成物を得る工程

工程(G): 前記工程(F)で得られた前記反応生成物から前記式(1)の化合物を精製する工程
【請求項6】
前記工程(G)において、精製に使用する有機溶媒がジクロロメタンまたはクロロホルムであることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記工程(G)において、精製に使用する水溶液がpH8以上の塩基性水溶液であることを特徴とする、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
前記工程(B)において、前記式(5)の化合物のRがイソプロピル基またはtert-ブチル基であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(B)において、塩基として、フレーク状の水酸化カリウムまたはパウダー状の水酸化カリウムを用いることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬用用途に用いられるヘテロ型単分散ポリエチレングリコールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医薬品分野においては、リンカーを介して薬剤と抗体とを結合させ、抗原提示細胞に薬物を能動的に運搬することが可能な抗体結合医薬(Antibody-Drug Conjugate:ADC)が実用化されて高い注目を集めている(Toxins、2011年、3月、p.848-883(非特許文献1)、J.Med.Chem.、2011年、54、p.3606-3623(非特許文献2)。
【0003】
このADCのリンカー材料として利用が進められているものの1つが、ヘテロ型単分散ポリエチレングリコールである。ヘテロ型単分散ポリエチレングリコールは、両末端に互いに異なる官能基を有するヘテロ型ポリエチレングリコールを主成分として含有し、かつ分子量が一定である単分散ポリエチレングリコールである。
【0004】
前記ADCでは、前記へテロ型単分散ポリエチレングリコールをリンカーとして、その各末端に抗体と薬剤とを区別して結合させるため、前記へテロ型単分散ポリエチレングリコール中に、両末端に互いに同じ官能基を有する化合物(ホモ型ポリエチレングリコール等)が不純物として存在すると、抗体が2つ結合した化合物または薬剤が2つ結合した化合物が生成する。抗体が2つ結合した化合物は薬剤が結合していないためにADCとしての効果が奏されず、薬剤が2つ結合した化合物は抗体が結合してないために抗原提示細胞以外の箇所に運搬されて副作用を引き起こす原因となる。また、目的の官能基を有するヘテロ型単分散ポリエチレングリコールと異なる組み合わせで官能基を有する他のヘテロ型化合物が不純物として含有する場合も、目的とする抗体または薬剤の一方が欠損した化合物が生成するため、上記と同様な問題が生じる。したがって、薬剤の使用、効果の観点から、前記へテロ型単分散ポリエチレングリコールとしては、両末端に互いに異なる官能基を有するヘテロ型単分散ポリエチレングリコールを1種のみ、高純度で含有することが重要である。
【0005】
また、前記ADCの効果を向上させることを目的として、抗体に対して複数個の薬剤を結合させたADCを使用することが試みられている。このADCを製造する際は、通常、薬剤の結合個数を質量分析計やHPLCを用いて確認するため、リンカー材料として用いる前記へテロ型単分散ポリエチレングリコール中にエチレングリコール鎖長の異なる化合物が存在すると、その確認が困難になるという製造上の問題が生じる。その他にも前記エチレングリコール鎖長の異なる化合物が不純物として存在する場合、前記ADC製造時に添加する抗体や薬剤の当量が不明確になるために高価な抗体や薬剤を過剰に使用する必要が生じるという問題や、前記エチレングリコール鎖長の異なる化合物は医薬品申請の際に主の薬剤とは別の化合物として取り扱われるために、化合物の同定や各種試験の実施、許容量の評価等が更に必要になるという問題がある。従って、前記ヘテロ型単分散ポリエチレングリコールとしては、エチレングリコール鎖長が同じポリエチレングリコールを1種のみ、高純度で含有することが重要である。
【0006】
このように、ADCのリンカー材料として用いるヘテロ型単分散ポリエチレングリコールとしては、主成分として両末端に互いに異なる官能基を有するヘテロ型ポリエチレングリコールであって、前記ヘテロ型ポリエチレングリコール間でエチレングリコール鎖長が同じである化合物を特に高純度で含有することが望まれていた。
【0007】
前記官能基として、アミノ基およびカルボキシル基をそれぞれ末端に有するヘテロ型単分散ポリエチレングリコールは、前記ADCのリンカーとしてそのまま使用可能であり、さらにこれを原料として官能基変換して得られたヘテロ型単分散ポリエチレングリコールもADCのリンカーとして使用することが可能である。
【0008】
前記へテロ型単分散ポリエチレングリコールを製造する上で、効率よく末端官能基化を行うことが必要である。末端官能基化工程として、特許文献1および特許文献2には、モノメトキシポリエチレングリコールの末端にカルボキシル基を導入する方法が開示されている。特許文献1では、モノメトキシポリエチレングリコールとアクリロニトリルとをマイケル付加反応させ、濃塩酸条件下でニトリルをアミドに変換し、水酸化カリウム水溶液条件下でアミドを加水分解することでカルボキシル基に変換している。しかし、このような強酸、強塩基条件下では、マイケル付加反応の逆反応によってカルボキシル基ではなく水酸基を有する化合物の生成やエチレングリコール鎖の切断によってエチレングリコール鎖長が短い化合物等の生成により、純度や収率が低下する。特許文献2では、モノメトキシポリエチレングリコールとtert-ブチルアクリレートとをマイケル付加反応させ、トリフルオロ酢酸条件下でカルボキシル基に変換している。しかし、同文献中に開示されている方法では、tert-ブチルアクリレートの導入率は70%以下と低く、末端が水酸基である化合物が残存する問題がある。
【0009】
また、アミノ基を導入する方法として、特許文献3では、末端ビニル基を有するオクタエチレングリコール誘導体をオゾン酸化によりビニル基をアルデヒド基に変換し、塩化アンモニウム溶液中でシアノホウ素化ナトリウムによる還元的アミノ化反応によりアミノ基に変換している。しかし、オゾン酸化による爆発性のある過酸化物の生成やシアノホウ素化ナトリウムの毒性の観点から、工業的な生産には課題がある。また、特許文献4では、オクタエチレングリコール誘導体の水酸基とトシルクロリドとを反応させトシル基を導入し、フタルイミドカリウムとを反応させてフタルイミド基に変換し、ヒドラジン一水和物を用いた脱保護反応によりアミノ基に変換している。このようなガブリエルアミン合成は一般的なアミノ基の変換方法であるが、アミノ基を導入するために、一度水酸基にトシル基などの脱離基を導入する工程が必要となる。このような反応工程では、未反応原料の残存や反応副生物の生成が避けられず、一般的に反応工程が多くなるほど、目的の化合物の収率が低下する。
【0010】
また、非特許文献3では、エチレングリコール鎖長が8の片末端4,4’-ジメトキシトリチル基、他方の片末端が水酸基である、両末端が互いに異なる化合物を合成する方法が開示されている。前記合成経路の一部は次式:
DmtrO-(CH2CH2O)4-Ts + HO-(CH2CH2O)4-H
→ DmtrO-(CH2CH2O)8-H + DmtrO-(CH2CH2O)12-Dmtr
(式中、Dmtrは4,4’-ジメトキシトリチル基を示す)
で表され、片末端トシル体とテトラエチレングリコールとの1:1の反応により8量体の片末端Dmtr体が得られる際に、片末端トシル体とテトラエチレングリコールとの2:1の反応により12量体の両末端Dmtr体が生成することが記載されている。
しかし、このような両末端にDmtr基を有する化合物を含む混合物を用いて両末端にそれぞれアミノ基とカルボキシル基とを有するヘテロ型ポリエチレングリコールを合成すると、両末端にアミノ基を有する化合物または両末端にカルボキシル基を有する化合物が不純物として生成する。そのため、このような不純物を含有するヘテロ型単分散ポリエチレングリコールをADCの製造に用いると、薬剤が2つ結合したまたは抗体が2つ結合した化合物が生成し、薬剤としての有効性が低下する原因になる。
【0011】
また、両末端の官能基が互いに異なる前記へテロ型ポリエチレングリコール製造する方法として、特許文献3では、片末端がアミノ保護基を有するトリエチレングリコール誘導体と片末端がカルボキシル保護基を有するエチレングリコール誘導体とをカップリングし、片末端ごとに脱保護をし、アミノ基およびカルボキシル基をそれぞれ末端に有するヘテロ型単分散ポリエチレングリコールを得ることが記載されている。しかし、このような保護基を導入したポリエチレングリコール誘導体同士のカップリングにおいて、一方を過剰に使用するため、コストが増加する。
【0012】
また、特許文献4では、容易に入手可能な市販のテトラエチレングリコールを出発物質として逐次合成によって、片末端に脱離基を有し、他方の片末端に水酸基を有するヘテロ型単分散ポリエチレングリコールを中間体にして、アミノ基およびカルボキシル基をそれぞれ末端に有するヘテロ型単分散ポリエチレングリコールを高純度に得る方法が記載されている。
しかし、この製法では目的のエチレングリコール鎖長まで逐次合成を繰り返した後に、片末端に保護基を有し、他方の片末端に水酸基を有するヘテロ型単分散ポリエチレングリコールから両末端保護基を有する単分散ポリエチレングリコール不純物を除去するために、水酸基をトシル基に一度変換している。前述のように、このような反応工程を追加するほど目的の化合物の収率が低下する。そのため工業的な生産には更なる改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第5672622号明細書
【文献】特表2007-538111号公報
【文献】国際特許9201474号公報
【文献】特開2017-14371号公報
【非特許文献】
【0014】
【文献】Toxins、2011年、3月、p.848-883
【文献】J.Med.Chem.、2011年、54、p.3606-3623
【文献】Polym. Chem.、2014年、5、p.694-697
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、医薬用用途に用いられるヘテロ型単分散ポリエチレングリコール誘導体を工業的に収率良く製造できる製法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記の構成からなるヘテロ型単分散ポリエチレングリコール誘導体の製造方法を確立した。
【0017】
即ち、本発明は以下の通りである。
【0018】
(1) 式(1)で表されるヘテロ型単分散ポリエチレングリコールを製造する方法であって、下記工程(A)、(B)、(C)、(D)、(E)および(F)を有することを特徴とする、ヘテロ型単分散ポリエチレングリコールの製造方法。

【化1】


(式(1)中、aは6~12の整数を示す)

工程(A): 式(2)の化合物と式(3)の化合物を式(F1)の条件を満たすように求核置換反応させ、式(4)の化合物を得る工程
【化2】


(式(2)中、bは3~9の整数を示す)
【化3】


(式(3)中、Lはメシル基またはトシル基を示し、R1はトリチル基またはベンジル基を示し、cは3~9の整数を示す)

6≦b+c≦12 (F1)

【化4】


(式(4)中、R1はトリチル基またはベンジル基を示し、aは6~12の整数を示す)

工程(B): 前記工程(A)で得られた前記式(4)の化合物に式(5)の化合物を10℃以下の温度条件でマイケル付加反応させ、式(6)の化合物を得る工程
【化5】


(式(5)中、R2は炭素数1~6の炭化水素基を示す)

【化6】


(式(6)中、R1はトリチル基またはベンジル基を示し、R2は炭素数1~6の炭化水素基を示し、aは6~12の整数を示す)

工程(C): 前記工程(B)で得られた前記式(6)の化合物を脱トリチル化または脱ベンジル化し、式(7)の化合物を含む反応生成物を得る工程
【化7】


(式(7)中、R2は炭素数1~6の炭化水素基を示し、aは6~12の整数を示す)

工程(D): 前記工程(C)で得られた前記反応生成物から前記式(7)の化合物を精製する工程

工程(E): 前記工程(D)で得られた前記式(7)の化合物とフタルイミドを反応させて脱フタルイミド化し、式(8)の化合物を得る工程
【化8】


(式(8)中、R2は炭素数1~6の炭化水素基を示し、aは6~12の整数を示す)

工程(F): 前記工程(E)で得られた前記式(8)の化合物を酸加水分解処理し、前記式(1)で表される化合物を得る工程。
【0019】
(2) 前記工程(D)において、前記式(7)の化合物をジクロロメタンまたはクロロホルムを用いて精製することを特徴とする、(1)の方法。
【0020】
(3) 前記工程(D)において、前記式(7)の化合物を水または無機塩の濃度が10重量%以下である水溶液を用いて精製することを特徴とする、(1)または(2)の方法。
【0021】
(4) 前記工程(D)が、1~25℃の温度での洗浄工程を有することを特徴とする、(1)~(3)のいずれかの方法。
【0022】
(5) 式(1)で表されるヘテロ型単分散ポリエチレングリコールを製造する方法であって、下記工程(A)、(B)、(C)、(E)、(F)および(G)を有することを特徴とする、ヘテロ型単分散ポリエチレングリコールの製造方法。
【化9】


(式(1)中、aは13~40の整数を示す)

工程(A): 式(2)の化合物と式(3)の化合物を式(F1)の条件を満たすように求核置換反応させ、式(4)の化合物を得る工程
【化10】


(式(2)中、bは3~37の整数を示す)

【化11】


(式(3)中、Lはメシル基またはトシル基を示し、R1はトリチル基またはベンジル基を示し、cは3~37の整数を示す)

13≦b+c≦40 (F1)

【化12】


(式(4)中、R1はトリチル基またはベンジル基を示し、aは13~40の整数を示す)

工程(B): 前記工程(A)で得られた前記式(4)の化合物に式(5)の化合物を10℃以下の温度条件でマイケル付加反応させ、式(6)の化合物を得る工程
【化13】


(式(5)中、R2は炭素数1~6の炭化水素基を示す)

【化14】


(式(6)中、R1はトリチル基またはベンジル基を示し、R2は炭素数1~6の炭化水素基を示し、aは13~40の整数を示す)

工程(C): 前記工程(B)で得られた化合物を脱トリチル化または脱ベンジル化し、式(7)の化合物を得る工程
【化15】


(式(7)中、R2は炭素数1~6の炭化水素基を示し、aは13~40の整数を示す)

工程(E): 前記工程(C)で得られた前記式(7)の化合物とフタルイミドを反応させ、脱フタルイミド化し、式(8)で表される化合物を得る工程
【化16】


(式(8)中、R2は炭素数1~6の炭化水素基を示し、aは13~40の整数を示す)

工程(F): 前記工程(E)で得られた前記式(8)の化合物を酸加水分解処理し、前記式(1)の化合物を含む反応生成物を得る工程

工程(G): 前記工程(F)で得られた前記反応生成物から前記式(1)の化合物を精製する工程
【0023】
(6) 前記工程(G)において、精製に使用する有機溶媒がジクロロメタンまたはクロロホルムであることを特徴とする、(5)の方法。
【0024】
(7) 前記工程(G)において、精製に使用する水溶液がpH8以上の塩基性水溶液であることを特徴とする、(5)または(6)の方法。
【0025】
(8) 前記工程(B)において、前記式(5)の化合物のRがイソプロピル基またはtert-ブチル基であることを特徴とする、(1)~(7)のいずれかの方法。
【0026】
(9) 前記工程(B)において、塩基として、フレーク状の水酸化カリウムまたはパウダー状の水酸化カリウムを用いることを特徴とする、(1)~(8)のいずれかの方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、両末端にそれぞれアミノ基およびカルボキシル基を有する高純度なヘテロ型単分散ポリエチレングリコールの新規な製造方法である。この製造方法では、工程中にカラムクロマトグラフィー等の精製方法を用いなくとも、簡便な分液抽出により、高純度なヘテロ型単分散ポリエチレングリコールを製造することができる。さらに、従来の鎖長延長工程で副生する鎖長の異なる特定分子量の両末端保護体不純物を精製するために、一度水酸基をトシル基に変換する工程を経ずに当該不純物を除去することが可能である。このように、従来よりも工程数が少ないことで、収率低下の原因となる未反応原料の残存や反応副生物の生成を抑制することが可能であるため、収率良く、両末端にそれぞれアミノ基およびカルボキシル基を有する高純度なヘテロ型単分散ポリエチレングリコールの工業的な製造方法として提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係るヘテロ型単分散ポリエチレングリコール誘導体は、下式(1)で示される。「単分散ポリエチレングリコール」とは、特定のエチレングリコール鎖長を有する成分が90%以上含まれる化合物のことである。
【0029】
【化17】

【0030】
本発明の式(1)におけるaは、エチレングリコールの繰り返し単位を表す6~12または13~40の整数である。ADC用のリンカーとして使用する観点からは、aとしては6~12または13~24の整数であることが好ましい。
【0031】
両末端にそれぞれアミノ基およびカルボキシル基を有する高純度なヘテロ型単分散ポリエチレングリコール(1)は、以下のようにして製造できる。
【0032】
(工程(A))
本発明に係る工程(A)は、下記式(2):
HO-(CH2CH2O)b-H ・・・(2)
で表される化合物と下記式(3):
R1O-(CH2CH2O)c-L ・・・(3)
で表される化合物を下記式(F1):
6≦b+c≦12または13≦b+c≦40・・・(F1)
で表される条件を満たすように求核置換反応させ、下記式(4):
R1O-(CH2CH2O)a-H ・・・(4)
で表される化合物を得る工程である。
【0033】
前記式(2)中におけるbは、3~9または3~37の整数を示し、好ましくは3~9または10~21の整数である。前記式(3)中におけるR1は、トリチル基またはベンジル基を示し、Lはメシル基またはトシル基を示し、cは3~9または3~37の整数を示し、好ましくは3~9または10~21の整数である。また、前記式(2)中のbおよび式(3)中のcは、b+c=6~12または13~40であり、前記式(F1)で表される条件を満たし、好ましくは、b+c=6~12または13~24である。
【0034】
前記式(2)で表される化合物および式(3)で表される化合物は、市販品を利用できる他、公知の合成方法により得ることができる。また、前記式(3)で表される化合物としては、本工程(A)で得られる前記式(4)で表される化合物をメシル化またはトシル化した化合物を利用することで、エチレングリコール鎖長の長い、すなわち前記式(4)におけるaの値が大きい化合物を合成することが可能である。
【0035】
前記式(2)で表される化合物と前記式(3)で表される化合物とを塩基存在下で求核置換反応させることで、前記式(4)で表される化合物を含む反応混合物を得ることができる。前記式(4)中、Rはトリチル基またはベンジル基を示し、aは6~12または13~40の整数を示し、好ましくは6~12または13~24の整数を示す。また、前記式(4)中のR1と前記式(3)中のR1は同一の置換基を示す。なお、前記反応混合物中には、下記式(9):
R1O-(CH2CH2O)d-R1 ・・・(9)
で表される化合物を不純物として含有する。
前記式(9)におけるRはトリチル基またはベンジル基を示し、dは3~80の整数を示す。また、前記式(9)中のR1と前記式(3)中のR1は同一の置換基を示す。
【0036】
前記求核置換反応は、溶媒中で反応を行うことができる。前記溶媒として、前記式(2)で表される化合物および前記式(3)で表される化合物と反応しない溶媒であれば特に制限はないが、具体的には、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルムなどの非プロトン性極性溶媒、およびこれらの混合溶媒を用いることができ、好ましくはアセトニトリル、ジメチルホルムアミドである。前記溶媒の使用量としては、前記式(3)で表される化合物に対して、通常、重量比で1~100倍、好ましくは2~50倍、より好ましくは3~30倍量である。前記溶媒量の使用量が前記下限値未満である場合には、前記式(2)で表される化合物の両末端に前記式(3)で表される化合物が結合した前記式(9)で表される化合物の生成量が多くなる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、求核置換反応の進行が遅くなる傾向にある。
【0037】
前記求核置換反応において、前記式(2)で表される化合物の使用量としては、前記式(3)で表される化合物に対して、通常、モル比で1.1~50倍、好ましくは5.0~30倍、より好ましくは5.0~20倍である。前記式(2)で表される化合物の使用量が前記未満である場合には、前記式(2)で表される化合物の両末端に前記式(3)で表される化合物が結合した、前記式(9)で表される化合物の生成量が多くなる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、求核置換反応の進行が遅くなる傾向にある。
【0038】
前記求核置換反応において、使用する塩基としては、反応が進行するものであれば特に制限はないが、具体的には、水素化ナトリウム、金属ナトリウム、カリウムtert-ブトキシドであり、好ましくは水素化ナトリウム、金属ナトリウムである。前記塩基の使用量としては、前記式(3)で表される化合物に対して、通常、モル比で1.1~10倍、好ましくは1.2~5倍量である。
反応温度としては、使用する溶媒等により異なるが、通常0~100℃、好ましくは、50~90℃である。反応温度が前記下限未満である場合は、反応が遅くなる恐れがあり、他方、前記上限超過の場合は、過剰な温度によって副反応が進行する恐れがある。また、反応時間としては、前記反応温度等の条件により異なるが、通常0.2~48時間、好ましくは2~24時間である。反応時間が短いと反応が不十分となる。
【0039】
工程(A)においては、このような求核置換反応により、前記式(4)で表される化合物および前記式(9)で表される化合物を含有する反応混合物は、そのまま未精製で次の工程(B)に用いてもよく、シリカゲルカラムクロマトグラフィーや分液抽出処理および吸着処理等によって前記式(4)で表される化合物を精製してから使用してもよい。前記式(9)で表される化合物は、次の工程(B)における反応において反応性がなく、また、後述する工程で精製除去が可能であるため、未精製で用いることができる。
【0040】
(工程(B))
本発明に係る工程(B)は、前記式(4)で表される化合物に、下記式(5):
【化18】


で表される化合物を10℃以下の温度条件でマイケル付加させ、下記式(6):
【化19】


で表される化合物を得る工程である。
【0041】
前記式(5)におけるRは炭素数1~6の炭化水素基を示す。前記炭素数1~6の炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基が挙げられる。塩基性条件下での安定性から、R2としてはイソプロピル基またはtert-ブチル基が好ましい。さらにより好ましくは、後述する精製工程の効率を上げる観点から、R2としてはtert-ブチル基である。
また、前記式(6)中、Rはトリチル基またはベンジル基を示し、Rは炭素数1~6の炭化水素基を示し、aは6~12または13~40の整数を示し、好ましくは6~12または13~24の整数を示す。前記式(6)中のR1と前記式(4)中のR1は同一の置換基であり、前記式(6)中のR2と前記式(5)中のR2は同一の置換基である。
【0042】
前記マイケル付加反応は、溶媒中で反応を行うことができる。前記溶媒として、前記式(4)で表される化合物および前記式(5)で表される化合物と反応しない溶媒であれば特に制限はないが、具体的には、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエンなどの有機溶媒、およびこれらの混合溶媒を用いることができ、好ましくはジクロロメタン、クロロホルムである。前記溶媒の使用量としては、前記式(4)で表される化合物に対して、通常、重量比で1~100倍、好ましくは3~50倍、より好ましくは5~30倍量である。前記溶媒量の使用量が前記下限値未満である場合には、前記式(6)で表される化合物に前記式(5)で表される化合物が更にマイケル付加反応した化合物が生成するといった過剰反応が生じる恐れがあり、他方、前記上限を超える場合には、マイケル付加反応の進行が遅くなる傾向にある。
【0043】
前記マイケル付加反応において、前記式(5)で表される化合物の使用量としては、前記式(4)で表される化合物に対して、通常、モル比で1~50倍、好ましくは1.5~25倍である。前記式(5)で表される化合物の使用量が前記下限値未満である場合には、マイケル付加反応が完結しない可能性があり、他方、前記上限を超える場合には、前記式(5)で表される化合物の重合体が生成するといった副反応が生じる恐れがある。
【0044】
前記マイケル付加反応において、使用する塩基としては、反応が進行するものであれば特に制限はないが、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機触媒であり、好ましくは水酸化カリウム、反応性の観点から、より好ましくはフレーク状の水酸化カリウムまたはパウダー状の水酸化カリウムである。前記塩基触媒の使用量としては、前記式(4)で表される化合物に対して、通常、モル比で0.1~10倍、好ましくは0.1~5倍量である。
反応温度としては、通常、10℃以下、好ましくは5℃以下である。反応温度が前記上限超過の場合は、前記式(6)で表される化合物に前記式(5)で表される化合物が更にマイケル付加反応した化合物が生成するといった過剰反応が生じる恐れがある。また、反応時間としては、前記反応温度、前記塩基触媒等の条件により異なるが、通常0.2~12時間、好ましくは0.5~6時間である。
【0045】
工程(B)において、このようなマイケル付加反応により得られた前記式(6)で表される化合物および工程(A)で生成した前記式(9)で表される化合物を含有する反応混合物は、そのまま未精製で次の工程(C)に用いてもよく、シリカゲルカラムクロマトグラフィーや分液抽出処理および吸着処理等によって前記式(6)で表される化合物を精製してから使用してもよいが、本発明においては、後述する工程で精製が可能であるため、未精製で使用することができる。
【0046】
(工程(C))
本発明に係る工程(C)は、前記式(6)で表される化合物を脱トリチル化または脱ベンジル化し、下記式(7):
【化20】


で表される化合物を得る工程である。
【0047】
前記式(6)中における、Rがトリチル基である場合には脱トリチル化を、R1がベンジル基である場合には脱ベンジル化をすることにより、前記式(7)で表される化合物を含む反応生成物を得ることができる。なお、前記反応生成物中には、工程(A)で生成した前記式(9)で表される化合物が脱トリチル化または脱ベンジル化された、下記式(10):
HO-(CH2CH2O)d-H ・・・(10)
で表される化合物を不純物として含有する。前記式(10)中、dは3~80の整数を示す。
【0048】
前記脱トリチル化および脱ベンジル化の方法としては、公知の方法が利用可能であり、例えば、GREENE WUTS著、Protective Groups in Organic
Synthesisに記載されている方法が有効である。また、前記式(6)および(9)中のRがトリチル基である場合は、酸性条件下での変換反応、接触水素添加などにより脱トリチル化させることが可能である。前記酸性条件下での変換反応としては、目的の化合物(7)を分解しない酸性条件下であれば問題ないが、具体的にはメタノール溶媒中、触媒量のp-トルエンスルホン酸・1水和物を添加することで脱トリチル化反応を行う方法がある。
また、前記接触水素添加による方法としては、メタノール溶媒中、水素雰囲気下、触媒量のパラジウム/炭素を加えて脱ベンジル化反応を行う方法がある。他方、前記式(6)および(9)中のR2がベンジル基である場合は、接触水素添加により脱ベンジル化させることが可能であり、具体的には、メタノール溶媒中、水素雰囲気下、触媒量のパラジウム/炭素に加えることで脱ベンジル化させることができる。
【0049】
工程(C)において、このような脱トリチル化または脱ベンジル化により、前記式(7)で表される化合物および前記式(10)で表される化合物を含有する反応混合物を得ることができる。この反応混合物は、未精製のままで次の工程(D)に用いてもよく、シリカゲルカラムクロマトグラフィーや分液抽出処理および吸着処理等によって前記式(6)で表される化合物を精製してから使用してもよいが、本発明においては、後述する工程で精製が可能であるため、未精製で使用することができる。
【0050】
(工程(D))
本発明に係る工程(D)は、前記工程(C)で得られた前記式(7)で表される、特にaが6~12の整数である化合物を含有する反応混合物を精製する工程である。この精製工程は、前記工程(C)で不純物として生成した前記式(10)で表される化合物を除去する工程であり、反応に使用する適正な試薬添加量の決定や精製工程の煩雑化の抑制などの観点から、この工程(D)において、式(10)で表される不純物化合物を除去することが工業的な製造方法としても好ましい。
【0051】
前記工程(C)で不純物として生成した前記式(10)で表される化合物は、両末端がどちらも水酸基であることから、前記式(7)で表されるaが6~12の整数である化合物と比較して極性差が生じるため、シリカゲルクロマトグラフィーによる精製をしなくとも、簡便な分液抽出のみで、前記式(10)の不純物を除去することができる。一方で、前記式(7)で表されるaが13~40の整数である化合物では前記式(10)で表される化合物不純物との極性差が小さくなるため、除去効率が低下する。
【0052】
工程(D)において、前記工程(C)で得られた反応生成物を有機溶媒に溶解させた後に、25℃以下において水または水溶液で分液洗浄する工程である。前記有機溶媒としてはジクロロメタン、クロロホルム、トルエンがあり、好ましくは前記式(7)で表される化合物の溶解性の観点から、ジクロロメタン、クロロホルムである。前記有機溶媒の使用量としては、前記式(7)で表される化合物と前記式(10)で表される化合物とを含む前記反応混合物に対して、通常、重量比で2~30倍、好ましくは3~20倍である。前記有機溶媒の使用量が前記下限未満である場合は、前記式(7)で表される化合物が水層に溶け込む恐れがあり、他方、前記上限超過の場合は、前記式(10)で表される化合物が有機層に溶け込む恐れがあり、分液洗浄効率が低下する。
【0053】
また、前記洗浄に使用する水または水溶液としては、前記式(10)で表される化合物を溶解可能であれば特に制限はないが、具体的には、イオン交換水や蒸留水などの水、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムなどの無機塩の水溶液がある。無機塩の濃度としては、無機塩が水溶液に溶解すれば特に限定されないが、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。前記水溶液の無機塩の濃度が前記上限超過の場合は、前記式(10)で表される化合物の洗浄効率が低下する。前記水または水溶液の使用量としては、前記式(7)で表される化合物と前記式(10)で表される化合物とを含む前記反応混合物に対して、通常、重量比で2~30倍、好ましくは3~20倍である。前記水または水溶液の使用量が前記下限未満である場合は、前記式(10)で表される化合物の洗浄効率が低下し、他方、前記上限超過の場合は、前記式(7)で表される化合物が水層に溶け込む恐れがあり、目的の化合物の収率が低下する。
【0054】
工程(D)において、前記有機溶媒と前記水または水溶液との比率としては、通常、重量比で有機溶媒/水または水溶液の値が、0.2~3.5であり、好ましくは1.0~3.5である。
【0055】
工程(D)において、洗浄温度としては、1~25℃であり、好ましくは5~20℃である。前記温度が前記下限未満である場合は、水または水溶液が固まり精製が困難になり、他方、前記温度が前記上限超過の場合には、前記式(10)で表される化合物が有機層に溶解して除去することが困難になる傾向にある。また、前記分液洗浄を行う回数としては、特に限定はなく、TLCやMS測定などによって有機溶媒中に含まれる前記式(10)で表される化合物を確認しながら複数回行うことが好ましい。
【0056】
工程(D)において、このような簡便な分液抽出処理によって、工程(A)~(C)で生成する不純物を除去することが可能であるため、各工程において、シリカゲルクロマトグラフィー等による精製が不要である。なお、得られた前記式(7)で表される化合物は、そのまま工程(E)に用いることが可能であり、さらに晶析、吸着剤処理、シリカゲルクロマトグラフィー等の処理により精製をして用いてもよい。
【0057】
(工程(E))
本発明に係る工程(E)は、工程(C)または工程(D)で得られた前記式(7)で表される化合物の水酸基とフタルイミドを光延反応で結合させ、多価アミンで脱保護することで、下記式(8):
【化21】


で表される化合物を得る工程である。
【0058】
なお、工程(D)の精製工程を経ていない場合(式(7)のaが13~40の場合)、前記反応生成物中には、工程(C)で生成した前記式(10)で表される化合物とフタルイミドが結合し、脱保護された、下記式(11):
H2N-(CH2CH2O)d-1-CH2CH2-NH2 ・・・(11)
で表される化合物を不純物として含有する。前記式(11)中、dは3~80の整数を示す。
【0059】
工程(E)のフタルイミドとの反応は、溶媒中で行うことができる。前記溶媒として、前記式(7)で表される化合物とフタルイミドと反応しない溶媒であれば特に制限はないが、具体的には、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエンなどの有機溶媒、およびこれらの混合溶媒を用いることができ、好ましくはジクロロメタン、クロロホルムである。前記溶媒の使用量としては、前記式(7)で表される化合物に対して、通常、重量比で1~50倍、好ましくは3~30倍、より好ましくは5~20倍量である。
【0060】
工程(E)のフタルイミドとの反応において、フタルイミドの使用量としては、前記式(7)で表される化合物に対して、通常、モル比で1.0~10倍、好ましくは1.3~5倍である。フタルイミドの使用量が前記下限値未満である場合には、反応が完結しない可能性があり、他方、前記上限を超える場合には、未反応のフタルイミドが残存するため、これを除去する工程が必要となり、収率が低下する。
【0061】
工程(E)のフタルイミドとの反応において、使用するアゾ系試薬としては、1,1’-アゾビス(N ,N-ジメチルホルムアミド)、1,1’-(アゾジカルボニル)ジピペリジン、アゾジカルボン酸ジベンジル、アゾジカルボン酸ジエチル、アゾジカルボン酸ジイソプロピル、アゾジカルボン酸ジメチル、1,1’-アゾビス(N ,N-ジイソプロピルホルムアミド)、1,6-ジメチル-1,5,7-ヘキサヒドロ-1,4,6,7-テトラゾシン-2,5-ジオンなどが挙げられ、好ましくはアゾジカルボン酸ジエチル、アゾジカルボン酸ジイソプロピル、より好ましくはアゾジカルボン酸ジイソプロピルである。アゾ系試薬の使用量としては、前記式(7)で表される化合物に対して、通常、モル比で1.0~10倍、好ましくは1.1~5倍である。また、使用するホスフィン系試薬としてはジシクロヘキシルフェニルホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン、4-(ジメチルアミノ)フェニルジフェニルホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、イソプロピルジフェニルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-t-ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ-n-ヘキシルホスフィン、トリ-n-オクチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどが挙げられ、好ましくはトリフェニルホスフィンである。ホスフィン系試薬の使用量としては、前記式(7)で表される化合物に対して、通常、モル比で1.0~10倍、好ましくは1.3~5倍である。
【0062】
また、反応温度としては、通常、0℃~100℃、好ましくは10℃~50℃である。また、反応時間としては、通常、10分~12時間、好ましくは0.5~6時間である。
【0063】
工程(E)の脱保護において、GREENE WUTS著、Protective Groups in Organic
Synthesisに記載されている方法であれば、特に制限はないが、多価アミンを用いることが好ましい。
【0064】
工程(E)の脱保護においては、使用する溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノール、エタノールなどが挙げられ、好ましくはメタノールである。前記溶媒の使用量としては、前記式(7)で表される化合物に対して、通常、重量比で1~50倍、好ましくは2~30倍、より好ましくは3~20倍量である。
【0065】
工程(E)の脱保護においては、使用する多価アミンとしては、ヒドラジン・1水和物、エチレンジアミン、エチレンジアミン・1水和物がある。多価アミンの使用量としては、前記式(7)で表される化合物に対して、通常、モル比で1~50倍、好ましくは5~30倍である。多価アミンの使用量が前記下限値未満である場合には、脱保護反応が不十分となる。また、反応温度としては、通常、10℃~80℃、好ましくは20℃~60℃である。また、反応時間としては、通常、0.5~24時間、好ましくは1.0~12時間である。
【0066】
工程(E)において、このような光延反応および脱保護により得られた前記式(8)で表される化合物および前記式(11)で表される化合物を含有する反応混合物は、そのまま未精製で次の工程(F)に用いてもよく、シリカゲルカラムクロマトグラフィーや分液抽出処理および吸着処理等によって前記式(8)で表される化合物を精製してから使用してもよいが、本発明においては、後述する工程で精製が可能であるため、未精製で使用することができる。
【0067】
(工程(F))
本発明に係る工程(F)は、工程(E)で得られた前記式(8)で表される反応生成物に酸加水分解処理を行い、前記式(1)で表される化合物を含有する前記へテロ単分散ポリエチレングリコールを得る工程である。
【0068】
前記加水分解処理は、溶媒中で反応を行うことができる。前記溶媒としては、水、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン等の溶媒、およびこれらの混合溶媒である。好ましくは、水またはジクロロメタンである。前記溶媒量の使用量としては、前記式(8)で表される化合物に対して、通常、重量比で0.5倍~50倍、好ましくは0.8倍~40倍、より好ましくは1~30倍量である。前記溶媒の使用量が前記下限未満である場合は反応溶液の粘度が高くなって、撹拌効率が低下し反応が完了しない恐れがあり、他方、前記上限超過の場合は、反応の進行が遅くなる傾向にある。
【0069】
前記加水分解においては、酸触媒を用いる。前記酸触媒としては、反応が進行すれば特に制限はなく、具体的には、塩酸、リン酸、トリフルオロ酢酸等である。副反応を抑制する観点から、好ましくは塩酸が好ましい。前記酸触媒の使用量としては、使用する酸触媒の種類により異なるが、具体的には、1M塩酸を使用する場合、前記式(8)で表される化合物に対して、通常、重量比で0.5~10倍量である。
【0070】
前記酸加水分解の反応温度としては、使用する酸触媒により異なるが、通常10~100℃である。また、前記酸加水分解の反応時間としては、反応温度等の条件により異なるが、通常0.5~12時間程度である。
【0071】
工程(F)において、このような酸加水分解処理、前記式(1)で表される化合物および前記式(11)で表される化合物を含有する反応混合物を得ることができる。この反応混合物は、後述する工程で精製が可能であるため、未精製で使用することができる。
【0072】
(工程(G))
本発明に係る工程(G)は、前記工程(F)で得られた前記式(1)で表される化合物を含有する反応混合物を精製する工程である。前記式(1)中のaが6~12の整数である化合物は前記工程(D)に精製していれば、この工程(G)を必ずしも実施する必要はないが実施しても良い。しかし、工程(G)は、前記式(1)中のaが13~40の整数である化合物に対しては必要な精製工程である。
【0073】
工程(G)において、前記工程(F)で得られた反応生成物を水溶液に溶解させた後に、30℃以下において有機溶媒で分液洗浄する工程である。前記水溶液としてはpH8以上の塩基性水溶液であり、具体的には、pH9~11に調整した水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等が好ましい。前記塩基性水溶液の使用量としては、前記式(1)で表される化合物と前記式(11)で表される化合物とを含む前記反応混合物に対して、通常、重量比で2~30倍、好ましくは3~20倍である。前記塩基性水溶液の使用量が前記下限未満である場合は、前記式(1)で表される化合物が有機溶媒中に溶け込む恐れがあり、他方、前記上限超過の場合は、分液洗浄効率が低下する恐れがある。
【0074】
また、前記洗浄に使用する有機溶媒としては、前記式(11)で表される不純物化合物を溶解可能であれば特に制限はないが、具体的には、酢酸エチル、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタンであり、不純物の溶解性の観点からは、クロロホルム、ジクロロメタンが好ましい。前記有機溶媒の使用量としては、前記式(8)で表される化合物と前記式(11)で表される化合物とを含む前記反応混合物に対して、通常、重量比で2~30倍、好ましくは3~20倍である。前記有機溶媒の使用量が前記下限未満である場合は、前記式(11)で表される化合物の除去効率が低下し、他方、前記上限超過の場合は、前記式(1)で表される化合物が有機層に溶け込む恐れがあり、目的の化合物の収率が低下する。
【0075】
工程(G)において、前記有機溶媒と前記塩基性水溶液との比率としては、通常、重量比で有機溶媒/塩基性水溶液の値が、0.2~3.0であり、好ましくは0.5~2.0である。前記分液洗浄を行う回数としては、特に限定はなく、TLCやMS測定などによって水溶液中に含まれる前記式(11)で表される化合物を確認しながら複数回行うことが好ましい。
【0076】
本発明により、工程中にカラムクロマトグラフィー等の精製方法を用いなくとも、簡便な分液抽出により、高純度なヘテロ型単分散ポリエチレングリコールを製造することができる。さらに、従来の鎖長延長工程で副生する鎖長の異なる特定分子量の両末端保護体不純物を精製するために、一度水酸基をトシル基に変換する工程を経ずに当該不純物を除去することが可能である。このように、従来よりも工程数が少ないことで、収率低下の原因となる未反応原料の残存や反応副生物の生成を抑制することが可能であるため、収率良く、両末端にそれぞれアミノ基およびカルボキシル基を有する高純度なヘテロ型単分散ポリエチレングリコールの工業的な製造方法として提供することが可能である。
【実施例
【0077】
以下に、実施例に挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0078】
本発明で得られる単分散ポリエチレングリコールの測定については、1H-NMR分析では、日本電子データム(株)製JNM-ECP400またはJNM-ECP600を用いた。測定にはφ5mmチューブを用い、重水素化溶媒としてCDCl3またはCDOD3を使用し、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を使用した。
【0079】
工程(A)の製造方法にて得られた、aが8、12の前記式(4)で表される化合物(Rがトリチル基)である片末端トリチル基単分散ポリエチレングリコールには、前記式(9)で表される化合物である両末端トリチル基単分散ポリエチレングリコール不純物が含まれ、含有量の正確な定量は困難であるが、片末端トリチル基単分散ポリエチレングリコールの水酸基を、塩化メタンスルホニルと反応させて、得られた化合物の1H-NMR測定結果から、各段階で含まれる両末端トリチル基単分散ポリエチレングリコール不純物の含量を概算した。
【0080】
なお各実施例の反応においては、片末端トリチル基単分散ポリエチレングリコールの正確なモル数が不明であるため、全量が片末端トリチル基単分散ポリエチレングリコールあると仮定し、試薬当量を算出した。
【0081】
(実施例1)
式(1)中のaが8である化合物10の合成
【化22】

【0082】
(実施例1-1)
式(3)中のaが4であり、R がトリチル基であり、Lがメシル基である化合物4の合成
【0083】
【化23】

【0084】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応器にテトラエチレングリコール1(3416g、17.6mol)、トルエン(3.7L)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、110~120℃で、共沸脱水した。共沸脱水後に冷却し、トリエチルアミン(736ml、5.3mol)、DMAP(54g、0.44mol)およびトリチルクロリド(TrtCl、1226g、4.4mol)を加え、室温で3時間撹拌した。3時間後、薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いてTrtClの消失を確認し、5%リン酸二水素ナトリウム水溶液(6.1L)を加え、分液した。有機層を5%リン酸二水素ナトリウム水溶液(6.1L)で1回、飽和重曹水(6.1L)で1回、飽和食塩水(6.1L)で1回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物2を含有する反応生成物を得た。また、TLC分析および1H-NMR測定結果により、得られた反応生成物には上記化合物3が含まれていることを確認した。

化合物2
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
2.4 (1H, t, -C-(OCH2CH24-OH)、
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2CH2-、化合物3由来を含む)、
3.45-3.85 (14H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2CH 2)3-OH、化合物3由来を含む)、
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5)3C-OCH2CH2-、化合物3由来を含む)
収量:1687g
【0085】
【化24】

【0086】
次いで、温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物2を含有する反応生成物(化合物2:1672g、3.83mol未満)、トルエン(8.4L)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、トリエチルアミン(643ml、4.62mol)を加えた。10℃で塩化メタンスルホニル(326mL、4.22mol)を滴下し、室温で2時間撹拌した。2時間後、TLC分析により化合物2の消失を確認し、5%リン酸二水素ナトリウム水溶液(8.4L)を加え、分液した。有機層を5%リン酸二水素ナトリウム水溶液(8.4L)で1回、飽和重曹水(8.4L)で2回、飽和食塩水(8.4L)で1回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物4を含有する反応生成物を得た。また、TLC分析および1H-NMR測定結果により、得られた反応生成物には上記化合物3が含まれていることを確認した。

化合物4
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
2.98 (3H, s, -OCH2CH2-O-SO2CH 3)、
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2CH2-、化合物3由来を含む)、
3.45-3.85 (12H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2CH 2)2-OCH 2CH2-、化合物3由来を含む)、
4.33 (2H, t, -OCH2CH 2-O-SO2CH3)、
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5)3C-OCH2CH2-、化合物3由来を含む)
収量:1942g
【0087】
実施例1-1の化合物4の1H-NMR測定結果から、化合物3は約6.2mol%含まれていることを確認した。
なお、δ3.23ピークを基準とした場合の化合物3含有量算出式は下式で表される。
(((2-[δ4.32])/4H)/( [δ4.32]/2H))×100 (mol%)
また、実施例1-1にて得られた反応生成物2には化合物3を約8.8wt%含有していることになる。
【0088】
(実施例1-2、工程(A))
式(4)中のaが8であり、R がトリチル基である化合物5の合成
【化25】

【0089】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応器に水素化ナトリウム(215g)を入れ、窒素置換後、MeCN(3.9L)を加えて、0℃に冷却した。トルエン(1.8L)で共沸脱水したテトラエチレングリコール1(3660g、18.8mol)にMeCN(2.1L)を混合して、この混合溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、化合物4を含有する反応生成物(化合物4:1942g、3.77mol未満)にMeCN(2.1L)を混合し、この混合溶液を20分かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を75℃に昇温し、3時間撹拌した。3時間後TLCを用いて化合物4が消失したことを確認し、40℃以下になるまで放冷した。反応混合溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液(3.9L)、ヘキサン(3L)を加えて分液した。ヘキサン層(上層)を除去した下層を減圧濃縮し、残渣にトルエン(9.7L)を加えた。このトルエン溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液(5.8L)で1回、飽和食塩水(9.7L)で3回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物5を含有する反応生成物を得た。また、TLC分析および1H-NMR測定結果により、得られた反応生成物には上記化合物3、6が含まれていることを確認した。

化合物4
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
2.52 (1H, t, -C-(OCH2CH28-OH)、
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2CH2-、化合物3,6由来を含む)、
3.45-3.85 (30H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2CH 2)7-OH、化合物3,6由来を含む)、
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5)3C-OCH2CH2-、化合物3,6由来を含む)
収量:2195g
【0090】
(実施例1-3、工程(B))
式(6)中のaが8であり、R がトリチル基であり、R がtert-ブチル基である化合物7の合成
【化26】

【0091】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物5を含有する反応生成物(化合物5:2190g、3.58mol未満)、ジクロロメタン(11L)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、パウダー状の水酸化カリウム(21g、0.37mol)を加えた。5℃まで冷却した後、アクリル酸tert-ブチル(式(5)のRがtert-ブチル基である化合物、780mL、5.38mol)を滴下し、5℃で1時間反応させた。反応後、飽和塩化アンモニウム水溶液(4.0L)を加え、分液した。有機層を飽和食塩水(5.5L)で1回洗浄した。有機層を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物4を含有する反応生成物を得た。また、TLC分析および1H-NMR測定結果により、得られた反応生成物には上記化合物3、6が含まれていることを確認した。

化合物7
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
1.44 (9H, s, -CH2CH2-COO-C(CH 3)3)、
2.49 (2H, t, -CH2CH 2-COO-C(CH3)3)、
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2CH2-、化合物3,6由来を含む)、
3.45-3.85 (32H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2CH 2)7-OCH 2CH2-、化合物3,6由来を含む)、
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5)3C-OCH2CH2-、化合物3,6由来を含む)
収量:2588g (収率:98%)
【0092】
(実施例1-4、工程(C)、(D))
式(7)中のaが8であり、R がtert-ブチル基である化合物8の合成
【化27】

【0093】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物7を含有する反応生成物(化合物7:2588g、3.49mol未満)、メタノール(12.9L)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、p-トルエンスルホン酸・1水和物(338g、1.78mol)、ヘキサン(10L)を加えた。室温で30分撹拌した後、ヘキサン層を除去し、再度ヘキサン(6.5L)を加えて30分撹拌した。同様の操作を5回行った後、1H-NMR測定の結果、化合物7および3、6の消失を確認し、飽和重曹水(5.2L)を加えた。この混合溶液をヘキサン(6.5L)で1回洗浄し、トリチルメチルエーテルを除去した。メタノール溶液を減圧濃縮し、化合物8を含む粗生成物を得た。TLC分析および1H-NMR測定結果により、得られた粗生成物には上記化合物1、9が含まれていることを確認した。
【0094】
次いで、上記粗生成物にジクロロメタン(12.9L)を加え、10℃の条件下、イオン交換水(12.9L)で3回、飽和食塩水(12.9L)で1回洗浄し、TLC分析により、化合物1および9の消失を確認した。有機層に硫酸マグネシウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物8を含有する精製物を得た。

化合物8
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
1.44 (9H, s, -CH2CH2-COO-C(CH 3)3)、
2.50 (2H, t, -CH2CH 2-COO-C(CH3)3)、
2.6 (1H, t, H-(OCH2CH28-OCH2CH2-)、
3.45-3.85 (34H, m, H-(OCH 2CH 2)8-OCH 2CH2-)
収量:1229g (収率:71%)
【0095】
(実施例1-5、工程(E))
式(8)中のaが8であり、R がtert-ブチル基である化合物9の合成
【化28】

【0096】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物8(1229g、2.46mol)、ジクロロメタン(4.9L)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、フタルイミド(508g、3.45mol)、トリフェニルホスフィン(906g、3.45mol)を加えた。室温で30分撹拌した後、ジクロロメタン(1.2L)で希釈したアゾジカルボン酸ジイソプロピル(599g、2.96mol)を滴下し、1時間撹拌した。1時間後、TLCにより化合物8の消失を確認し、減圧にて溶剤を留去し、メタノール(5.4L)、エチレンジアミン一水和物(2L、24.7mol)を加え、40℃で2時間反応した。これに6N塩酸水溶液を加え中和し、減圧にて溶媒を留去し、食塩、クロロホルム(6.1L)を加え抽出を行い、この抽出溶液に飽和食塩水(6.2L)を加えて2回洗浄した。この有機層に1%リン酸二水素ナトリウム水溶液(6.2L)を加えて3回抽出した。抽出した水溶液にクロロホルム(2.2L)とトルエン(4L)の混合溶媒を加えて7回洗浄した。これに5N水酸化ナトリウム水溶液を加え中和後、食塩を加え、ジクロロメタン(6.2L)で4回抽出を行った。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物9を得た。

化合物9
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
1.44 (9H, s, -CH2CH2-COO-C(CH 3)3)、
2.50 (2H, t, -CH2CH 2-COO-C(CH3)3)、
3.1 (2H, t, H2N-CH 2CH2O-(CH2CH2O)7-)、
3.45-3.85 (32H, m, H2N-CH2CH 2O-(CH 2CH 2O)7-CH 2CH2-)
収量:1149g (収率:94%)
【0097】
(実施例1-6、工程(F))
式(1)中のaが8であり、化合物10の合成
【化29】

【0098】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物9(850g、1.71mol)、1M塩酸(4.2L)を加えて溶解させた後、50~55℃で1時間撹拌した。15℃に冷却後、10M水酸化ナトリウム水溶液で中和し、食塩、ジクロロメタン(4.3L)を加え洗浄した。さらに、この水層をジクロロメタン(4.3L)で2回洗浄し、6M塩酸にてpH2に調整し、減圧濃縮した。ジクロロメタン(2.6L)、エタノール(2.2L)を加え撹拌し、ろ過後、減圧濃縮した。次いで、ジクロロメタン(2.6L)を加えて減圧濃縮する操作を3回繰り返した後、ジクロロメタン(2.6L)を加えて溶解後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物10を得た。

化合物10
1H-NMR(CD3OD、内部標準TMS);δ(ppm):
2.56 (2H, t, -CH2CH 2-COOH)、
3.17 (2H, t, H2N-CH 2CH2O-)、
3.6-3.9 (32H, m, -CH2CH 2O-(CH 2CH 2O)7-CH 2CH2-)
収量:710g (収率:87%)
純度:99.8%
(HPLC-RI)
【0099】
純度測定に用いたHPLC測定条件を以下に示す。
装置:Waters社製のalliance
カラム:ジーエルサイエンス社製のInertsil ODS-3 (カラムサイズ:4.6mm×25cm,粒子径5μm)
検出器:RI
展開溶媒:メタノール/5mM酢酸アンモニウム溶液 = 15/85
流速:1.0mL/min
カラム温度:40℃
サンプル濃度:1mg/mL
注入量:50μL
【0100】
(実施例2)
式(1)中のaが12である化合物18の合成
【化30】

【0101】
(実施例2-1)
式(3)中のaが8であり、R がトリチル基であり、Lがメシル基である化合物11の合成
【化31】

【0102】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物5を含有する反応生成物(化合物5:841g、1.37mol未満)、トルエン(4.2L)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、トリエチルアミン(267ml、1.92mol)を加えた。10℃で塩化メタンスルホニル(128mL、1.65mol)を滴下し、室温で2時間撹拌した。2時間後、TLC分析により化合物5の消失を確認し、5%リン酸二水素ナトリウム水溶液(4.2L)を加え、分液した。有機層を5%リン酸二水素ナトリウム水溶液(4.2L)で1回、飽和重曹水(4.2L)で2回、飽和食塩水(4.2L)で1回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物11を含有する反応生成物を得た。また、TLC分析および1H-NMR測定結果により、得られた反応生成物には上記化合物3、6が含まれていることを確認した。

化合物11
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
3.07 (3H, s, -OCH2CH2-O-SO2CH 3)、
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2CH2-、化合物3,6由来を含む)、
3.45-3.85 (28H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2CH 2)6-OCH 2CH2-、化合物3,6由来を含む)、
4.37 (2H, t, -OCH2CH 2-O-SO2CH3)、
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5)3C-OCH2CH2-、化合物3,6由来を含む)
収量:945g
【0103】
実施例2-1の化合物11の1H-NMR測定結果から、化合物3および6は約11mol%(化合物3: 6mol%、化合物6: 5mol%、概算)含まれていることを確認した。
なお、δ3.23ピークを基準とした場合の化合物3、6含有量算出式は下式で表される。
(((2-[δ4.32])/4H)/([δ4.32]/2H))×100 (mol%)
化合物3の含有量は実施例1-1で算出した値を適用
また、実施例2-1で使用した反応生成物5には化合物3および6が約12.6wt%含有していることになる。
【0104】
(実施例2-2、工程(A))
式(4)中のaが12であり、R がトリチル基である化合物12の合成
【化32】

【0105】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応器に水素化ナトリウム(78g)を入れ、窒素置換後、MeCN(1.9L)を加えて、0℃に冷却した。トルエン(660mL)で共沸脱水したテトラエチレングリコール1(1327g、6.83mol)にMeCN(940mL)を混合して、この混合溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、化合物11を含有する反応生成物(化合物11:944g、1.37mol未満)にMeCN(940mL)を混合し、この混合溶液を20分かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を75℃に昇温し、3時間撹拌した。3時間後1H-NMRを用いて化合物11が消失したことを確認し、40℃以下になるまで放冷した。反応混合溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液(1.9L)、ヘキサン(1.4L)を加えて分液した。ヘキサン層(上層)を除去した下層を減圧濃縮し、残渣にトルエン(4.7L)を加えた。このトルエン溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液(2.8L)で1回、飽和食塩水(4.7L)で3回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物12を含有する反応生成物を得た。また、TLC分析および1H-NMR測定結果により、得られた反応生成物には上記化合物3、6、13が含まれていることを確認した。

化合物12
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
2.56 (1H, t, -C-(OCH2CH212-OH)、
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2CH2-、化合物3,6,13由来を含む)、
3.45-3.85 (46H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2CH 2)11-OH、化合物3,6,13
由来を含む)、
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5)3C-OCH2CH2-、化合物3,6,13由来を含む)
収量:1027g
【0106】
(実施例2-3、工程(B))
式(6)中のaが12であり、R がトリチル基であり、R がtert-ブチル基である化合物14の合成
【化33】

【0107】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物12を含有する反応生成物(化合物12:200g、253mmol未満)、ジクロロメタン(1000mL)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、パウダー状の水酸化カリウム(1.4g、25mmol)を加えた。5℃まで冷却した後、アクリル酸tert-ブチル(式(5)のRがtert-ブチル基である化合物、55mL、380mmol)を滴下し、5℃で2時間反応させた。反応後、飽和塩化アンモニウム水溶液(400mL)を加え、分液した。有機層を飽和食塩水(600mL)で1回洗浄した。有機層を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物14を含有する反応生成物を得た。また、TLC分析および1H-NMR測定結果により、得られた反応生成物には上記化合物3、6、13が含まれていることを確認した。

化合物14
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
1.44 (9H, s, -CH2CH2-COO-C(CH 3)3)、
2.49 (2H, t, -CH2CH 2-COO-C(CH3)3)、
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2CH2-、化合物3,6,13由来を含む)、
3.45-3.85 (48H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2CH 2)11-OCH 2CH2-、化合物3,6,13由来を含む)、
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5)3C-OCH2CH2-、化合物3,6,13由来を含む)
収量:226g (収率97%)
【0108】
(実施例2-4、工程(C)、(D))
式(7)中のaが12であり、R がtert-ブチル基である化合物15の合成
【化34】

【0109】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物14を含有する反応生成物(化合物14:226g、246mmol未満)、メタノール(1.1L)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、p-トルエンスルホン酸・1水和物(23g、123mmol)、ヘキサン(900mL)を加えた。室温で30分撹拌した後、ヘキサン層を除去し、再度ヘキサン(565mL)を加えて30分撹拌した。同様の操作を4回行った後、1H-NMR測定の結果、化合物14および3、6、13の消失を確認し、飽和重曹水(452mL)を加えた。この混合溶液をヘキサン(565mL)で1回洗浄し、トリチルメチルエーテルを除去した。メタノール溶液を減圧濃縮し、化合物15を含む粗生成物を得た。TLC分析および1H-NMR測定結果により、得られた粗生成物には上記化合物1、9、16が含まれていることを確認した。
【0110】
次いで、上記粗生成物にジクロロメタン(1.1L)を加え、10℃の条件下、イオン交換水(1.1L)で3回、飽和食塩水(1.1L)で1回洗浄し、TLC分析により、化合物1、9、13の消失を確認した。有機層に硫酸マグネシウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物15を含有する精製物を得た。

化合物15
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
1.44 (9H, s, -CH2CH2-COO-C(CH 3)3)、
2.50 (2H, t, -CH2CH 2-COO-C(CH3)3)、
2.6 (1H, t, H-(OCH2CH212-OCH2CH2-)、
3.45-3.85 (50H, m, H-(OCH 2CH 2)12-OCH 2CH2-)
収量:118g (収率:71%)
【0111】
(実施例2-5、工程(E))
式(8)中のaが12であり、R がtert-ブチル基である化合物17の合成
【化35】

【0112】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物15(117g、173mmol)、ジクロロメタン(469mL)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、フタルイミド(36g、245mmol)、トリフェニルホスフィン(64g、244mmol)を加えた。室温で30分撹拌した後、ジクロロメタン(118mL)で希釈したアゾジカルボン酸ジイソプロピル(42g、208mmol)を滴下し、1時間撹拌した。1時間後、TLCにより化合物15の消失を確認し、減圧にて溶剤を留去し、メタノール(518mL)、エチレンジアミン一水和物(141mL、1.73mol)を加え、40℃で3時間反応した。これに6N塩酸水溶液を加え中和し、減圧にて溶媒を留去し、食塩、クロロホルム(585mL)を加え抽出を行い、この抽出溶液に飽和食塩水(585mL)を加えて2回洗浄した。この有機層に1%リン酸二水素ナトリウム水溶液(585mL)を加えて4回抽出した。抽出した水溶液にクロロホルム(293mL)とトルエン(293mL)の混合溶媒を加えて7回洗浄した。これに5N水酸化ナトリウム水溶液を加え中和後、食塩を加え、ジクロロメタン(590mL)で4回抽出を行った。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物17を得た。

化合物17
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
1.44 (9H, s, -CH2CH2-COO-C(CH 3)3)、
2.50 (2H, t, -CH2CH 2-COO-C(CH3)3)、
3.1 (2H, t, H2N-CH 2CH2O-(CH2CH2O)11-)、
3.45-3.85 (48H, m, H2N-CH2CH 2O-(CH 2CH 2O)11-CH 2CH2-)
収量:113g (収率:97%)
【0113】
(実施例2-6、工程(F))
式(1)中のaが12であり、化合物18の合成
【化36】

【0114】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物17(50g、74mmol)、1M塩酸(250mL)を加えて溶解させた後、50~55℃で1時間撹拌した。15℃に冷却後、10M水酸化ナトリウム水溶液で中和し、食塩、ジクロロメタン(250mL)を加え洗浄した。再度、水層をジクロロメタン(250mL)で1回洗浄し、6M塩酸にてpH2に調整し、ジクロロメタン(250mL)で4回抽出した。回収した有機層を混合し、硫酸ナトリウムで脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色固体の化合物18を得た。

化合物18
1H-NMR(CD3OD、内部標準TMS);δ(ppm):
2.56 (2H, t, -CH2CH 2-COOH)、
3.17 (2H, t, H2N-CH 2CH2O-)、
3.6-3.9 (48H, m, -CH2CH 2O-(CH 2CH 2O)11-CH 2CH2-)
収量:44g (収率:91%)
純度:99.8%
(HPLC-RI)
純度測定に用いたHPLC測定条件を以下に示す。
装置:Waters社製のalliance
カラム:ジーエルサイエンス社製のInertsil ODS-3 (カラムサイズ:4.6mm×25cm,粒子径5μm)
検出器:RI
展開溶媒:メタノール/5mM酢酸アンモニウム溶液 = 27.5/72.5
流速:1.0mL/min
カラム温度:40℃
サンプル濃度:2mg/mL
注入量:50μL
【0115】
(実施例3)
式(1)中のaが24である化合物40の合成
【化37】

【0116】
(実施例3-1)
式(3)中のaが12であり、R がトリチル基であり、Lがメシル基である化合物19の合成
【化38】

【0117】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物12を含有する反応生成物(化合物12:90g、0.11mol未満)、トルエン(451mL)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、トリエチルアミン(29ml、0.21mol)を加えた。10℃で塩化メタンスルホニル(14mL、0.18mol)を滴下し、室温で2時間撹拌した。2時間後、TLC分析により化合物12の消失を確認し、5%リン酸二水素ナトリウム水溶液(450mL)を加え、分液した。有機層を5%リン酸二水素ナトリウム水溶液(450mL)で1回、飽和重曹水(450mL)で2回、飽和食塩水(450mL)で1回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物19を含有する反応生成物を得た。また、TLC分析および1H-NMR測定結果により、得られた反応生成物には上記化合物3、6、13が含まれていることを確認した。

化合物19
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
3.07 (3H, s, -OCH2CH2-O-SO2CH 3)、
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2CH2-、化合物3,6,13由来を含む)、
3.45-3.85 (44H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2CH 2)10-OCH 2CH2-、化合物3,6,13由来を含む)、
4.37 (2H, t, -OCH2CH 2-O-SO2CH3)、
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5)3C-OCH2CH2-、化合物3,6,13由来を含む)
収量:96g
【0118】
実施例3-1の化合物19の1H-NMR測定結果から、化合物3、6および13は約15mol%(化合物3: 6mol%、化合物6: 5mol%、化合物13: 4mol%、概算)含まれていることを確認した。
なお、δ3.23ピークを基準とした場合の化合物3、6および13含有量算出式は下式で表される。
(((2-[δ4.32])/4H)/([δ4.32]/2H))×100 (mol%)
化合物3、6の含有量は実施例1-1、2―1で算出した値を適用
また、実施例3-1で使用した反応生成物12には化合物3、6および13が約15.9wt%含有していることになる。
【0119】
(実施例3-2、工程(A))
式(4)中のaが16であり、R がトリチル基である化合物20の合成
【化39】

【0120】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応器に水素化ナトリウム(6.3g)を入れ、窒素置換後、MeCN(192mL)を加えて、0℃に冷却した。トルエン(53mL)で共沸脱水したテトラエチレングリコール1(108g、0.56mol)にMeCN(96mL)を混合して、この混合溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、化合物19を含有する反応生成物(化合物19:96g、0.11mol未満)にMeCN(96mL)を混合し、この混合溶液を15分かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を75℃に昇温し、3時間撹拌した。3時間後1H-NMRを用いて化合物19が消失したことを確認し、40℃以下になるまで放冷した。反応混合溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液(170mL)、ヘキサン(146mL)を加えて分液した。ヘキサン層(上層)を除去した下層を減圧濃縮し、残渣にトルエン(481mL)を加えた。このトルエン溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液(260mL)で1回、飽和食塩水(480mL)で3回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物20を含有する反応生成物を得た。また、TLC分析および1H-NMR測定結果により、得られた反応生成物には上記化合物3、6、13および21が含まれていることを確認した。

化合物20
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
2.78 (1H, b, -C-(OCH2CH216-OH)、
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2CH2-、化合物3,6,13,21由来を含む)、
3.45-3.85 (62H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2CH 2)15-OH、化合物3,6,13,21由来を含む)、
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5)3C-OCH2CH2-、化合物3,6,13,21由来を含む)
収量:103g
【0121】
(実施例3-3)
式(3)中のaが16であり、R がトリチル基であり、Lがメシル基である化合物22の合成
【化40】

【0122】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物20を含有する反応生成物(化合物20:100g、0.10mol未満)、トルエン(500mL)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、トリエチルアミン(20ml、0.14mol)を加えた。10℃で塩化メタンスルホニル(9.6mL、0.12mol)を滴下し、室温で2時間撹拌した。2時間後、TLC分析により化合物14の消失を確認し、5%リン酸二水素ナトリウム水溶液(500mL)を加え、分液した。有機層を5%リン酸二水素ナトリウム水溶液(500mL)で1回、飽和重曹水(500mL)で2回、飽和食塩水(500mL)で1回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物22を含有する反応生成物を得た。また、TLC分析および1H-NMR測定結果により、得られた反応生成物には上記化合物3、6、13および21が含まれていることを確認した。

化合物22
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
3.07 (3H, s, -OCH2CH2-O-SO2CH 3)、
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2CH2-、化合物3,6,13,21由来を含む)、
3.45-3.85 (60H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2CH 2)14-OCH 2CH2-、化合物3,6,13,21由来を含む)、
4.37 (2H, t, -OCH2CH 2-O-SO2CH3)、
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5)3C-OCH2CH2-、化合物3,6,13,21由来を含む)
収量:106g
【0123】
(実施例3-4、工程(A))
式(4)中のaが20であり、R がトリチル基である化合物23の合成
【化41】

【0124】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応器に水素化ナトリウム(5.7g)を入れ、窒素置換後、MeCN(208mL)を加えて、0℃に冷却した。トルエン(48mL)で共沸脱水したテトラエチレングリコール1(97g、0.50mol)にMeCN(105mL)を混合して、この混合溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、化合物22を含有する反応生成物(化合物22:109g、0.10mol未満)にMeCN(105mL)を混合し、この混合溶液を15分かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を75℃に昇温し、3時間撹拌した。3時間後1H-NMRを用いて化合物22が消失したことを確認し、40℃以下になるまで放冷した。反応混合溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液(190mL)、ヘキサン(159mL)を加えて分液した。ヘキサン層(上層)を除去した下層を減圧濃縮し、残渣にトルエン(524mL)を加えた。このトルエン溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液(285mL)で1回、飽和食塩水(520mL)で3回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物23を含有する反応生成物を得た。また、TLC分析および1H-NMR測定結果により、得られた反応生成物には上記化合物3、6、13、21および24が含まれていることを確認した。

化合物22
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
2.64 (1H, b, -C-(OCH2CH220-OH)、
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2CH2-、化合物3,6,13,21,24由来を含む)、
3.45-3.85 (78H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2CH 2)19-OH、化合物3,6,13,21,24由来を含む)、
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5)3C-OCH2CH2-、化合物3,6,13,21,24由来を含む)
収量:109g
【0125】
(実施例3-5)
式(3)中のaが20であり、R がトリチル基であり、Lがメシル基である化合物25の合成
【化42】

【0126】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物23を含有する反応生成物(化合物23:107g、0.094mol未満)、トルエン(585mL)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、トリエチルアミン(18ml、0.13mol)を加えた。10℃で塩化メタンスルホニル(8.7mL、0.11mol)を滴下し、室温で2時間撹拌した。2時間後、TLC分析により化合物14の消失を確認し、5%リン酸二水素ナトリウム水溶液(535mL)を加え、分液した。有機層を5%リン酸二水素ナトリウム水溶液(535mL)で1回、飽和重曹水(535mL)で2回、飽和食塩水(535mL)で1回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物25を含有する反応生成物を得た。また、TLC分析および1H-NMR測定結果により、得られた反応生成物には上記化合物3、6、13、21および24が含まれていることを確認した。

化合物25
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
3.07 (3H, s, -OCH2CH2-O-SO2CH 3)、
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2CH2-、化合物3,6,13,21,24由来を含む)、
3.45-3.85 (76H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2CH 2)18-OCH 2CH2-、化合物3,6,13,21,24由来を含む)、
4.37 (2H, t, -OCH2CH 2-O-SO2CH3)、
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5)3C-OCH2CH2-、化合物3,6,13,21,24由来を含む)
収量:113g
【0127】
(実施例3-6、工程(A))
式(4)中のaが24であり、R がトリチル基である化合物26の合成
【化43】

【0128】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応器に水素化ナトリウム(5.2g)を入れ、窒素置換後、MeCN(221mL)を加えて、0℃に冷却した。トルエン(44mL)で共沸脱水したテトラエチレングリコール1(88g、0.46mol)にMeCN(111mL)を混合して、この混合溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、化合物25を含有する反応生成物(化合物25:113g、0.092mol未満)にMeCN(111mL)を混合し、この混合溶液を15分かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を75℃に昇温し、3時間撹拌した。3時間後1H-NMRを用いて化合物25が消失したことを確認し、40℃以下になるまで放冷した。反応混合溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液(200mL)、ヘキサン(168mL)を加えて分液した。ヘキサン層(上層)を除去した下層を減圧濃縮し、残渣にトルエン(556mL)を加えた。このトルエン溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液(300mL)で1回、飽和食塩水(555mL)で3回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物26を含有する反応生成物を得た。また、TLC分析および1H-NMR測定結果により、得られた反応生成物には上記化合物3、6、13、21、24および27が含まれていることを確認した。

化合物26
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
2.66 (1H, b, -C-(OCH2CH224-OH)、
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2CH2-、化合物3,6,13,21,24,27由来を含む)、
3.45-3.85 (94H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2CH 2)23-OH、化合物3,6,13,21,24,27由来を含む)、
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5)3C-OCH2CH2-、化合物3,6,13,21,24,27由来を含む)
収量:115g
【0129】
(実施例3-7、工程(B))
式(6)中のaが24であり、R がトリチル基であり、R がtert-ブチル基である化合物28の合成
【化44】

【0130】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物28を含有する反応生成物(化合物28:5.02g、3.79mmol未満)、ジクロロメタン(25mL)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、フレーク状の水酸化カリウム(128mg、2.28mmol)を加えた。5℃まで冷却した後、アクリル酸tert-ブチル(式(5)のRがtert-ブチル基である化合物、1.1mL、7.58mmol)を滴下し、5℃で4時間反応させた。反応後、飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)を加え、分液した。有機層を飽和食塩水(15mL)で1回洗浄した。有機層を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物28を含有する反応生成物を得た。また、TLC分析および1H-NMR測定結果により、得られた反応生成物には上記化合物3、6、13、21、24および27が含まれていることを確認した。

化合物28
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
1.44 (9H, s, -CH2CH2-COO-C(CH 3)3)、
2.49 (2H, t, -CH2CH 2-COO-C(CH3)3)、
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2CH2-、化合物3,6,13,21,24,27由来を含む)、
3.45-3.85 (96H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2CH 2)23-OCH 2CH2-、化合物3,6,13,21,24,27由来を含む)、
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5)3C-OCH2CH2-、化合物3,6,13,21,24,27由来を含む)
収量:5.31g
【0131】
(実施例3-8、工程(C))
式(7)中のaが24であり、R がtert-ブチル基である化合物29の合成
【化45】

【0132】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物28を含有する反応生成物(化合物28:5.01g、3.46mmol未満)、メタノール(25mL)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、p-トルエンスルホン酸・1水和物(329mg、1.72mmol)、ヘキサン(20mL)を加えた。室温で30分撹拌した後、ヘキサン層を除去し、再度ヘキサン(13mL)を加えて30分撹拌した。同様の操作を4回行った後、1H-NMR測定の結果、化合物28および3、6、13、21、24および27の消失を確認し、飽和重曹水(11mL)を加えた。この混合溶液をヘキサン(13mL)で1回洗浄し、トリチルメチルエーテルを除去した。メタノール溶液を減圧濃縮し、20%食塩水(10mL)、ジクロロメタン(10mL)を加え、分液した。有機層に硫酸マグネシウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物29を含有する反応生成物を得た。また、TLC分析および1H-NMR測定結果により、得られた反応生成物には上記化合物1、9、16、30、31および32が含まれていることを確認した。

化合物29
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
1.44 (9H, s, -CH2CH2-COO-C(CH 3)3)、
2.50 (2H, t, -CH2CH 2-COO-C(CH3)3)、
2.7 (1H, b, H-(OCH2CH224-OCH2CH2-)、
3.45-3.85 (98H, m, H-(OCH 2CH 2)24-OCH 2CH2-、化合物1,9,16,30,31,32由来を含む)
収量:3.13g
【0133】
(実施例3-9、工程(E))
式(8)中のaが24であり、R がtert-ブチル基である化合物33の合成
【化46】

【0134】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物29を含有する反応生成物(化合物29:3.00g、2.49mmol未満)、ジクロロメタン(12mL)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、フタルイミド(641mg、4.36mmol)、トリフェニルホスフィン(1.14g、4.35mmol)を加えた。室温で30分撹拌した後、ジクロロメタン(3mL)で希釈したアゾジカルボン酸ジイソプロピル(756mg、3.74mmol)を滴下し、3時間撹拌した。3時間後、TLC分析により化合物29の消失を確認し、減圧にて溶剤を留去し、メタノール(13mL)、エチレンジアミン一水和物(2mL、24.8mol)を加え、40℃で4時間反応した。これに6N塩酸水溶液を加え中和し、減圧にて溶媒を留去し、食塩、クロロホルム(15mL)を加え抽出を行い、この抽出溶液に飽和食塩水(15mL)を加えて2回洗浄した。この有機層に1%リン酸二水素ナトリウム水溶液(15mL)を加えて4回抽出した。抽出した水溶液にクロロホルム(8mL)とトルエン(8mL)の混合溶媒を加えて7回洗浄した。これに5N水酸化ナトリウム水溶液を加え中和後、食塩を加え、ジクロロメタン(15mL)で4回抽出を行った。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物33を含有する反応生成物を得た。また、TLC分析および1H-NMR測定結果により、得られた反応生成物には上記化合物34、35、36、37、38および39が含まれていることを確認した。

化合物33
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
1.44 (9H, s, -CH2CH2-COO-C(CH 3)3)、
2.50 (2H, t, -CH2CH 2-COO-C(CH3)3)、
3.1 (2H, t, H2N-CH 2CH2O-(CH2CH2O)23-)、
3.45-3.85 (96H, m, H2N-CH2CH 2O-(CH 2CH 2O)23-CH 2CH2-、化合物34,35,36,37,38,39由来を含む)
収量:2.45g
【0135】
(実施例3―10、工程(F)、(G))
式(1)中のaが24であり、化合物40の合成
【化47】

【0136】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物33を含有する反応生成物(化合物33:1.22g、1.00mmol未満)、1M塩酸(6mL)を加えて溶解させた後、50~55℃で2時間撹拌した。2時間後、TLCにより化合物33の消失を確認した。室温まで冷却した。
【0137】
次いで、反応溶液に10M水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH10に調整して、ジクロロメタン(6mL)を加え2回洗浄した。6M塩酸にてpH2に調整し、食塩を添加後、ジクロロメタン(6mL)で3回抽出した。回収した有機層を混合し、硫酸ナトリウムで脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色油状固体の化合物40(1.16g)を得た。得られた化合物40にテトラヒドロフラン(5mL)を加え溶解後、10℃まで冷却し、10℃に冷却したヘキサン(24mL)を加えて、結晶化させた。結晶をろ取し、10℃に冷却したヘキサン(10mL)で結晶を洗浄した。結晶をろ取して真空下で乾燥して、白色粉末結晶の化合物40を得た。

化合物40
1H-NMR(CD3OD、内部標準TMS);δ(ppm):
2.56 (2H, t, -CH2CH 2-COOH)、
3.17 (2H, t, H2N-CH 2CH2O-)、
3.6-3.9 (96H, m, -CH2CH 2O-(CH 2CH 2O)23-CH 2CH2-)
収量:893mg
【0138】
(実施例4)
実施例1-2で得られた化合物5を含有する反応生成物から、両末端がトリチル基である化合物の含有量を除いたときの、式(4)中のR1がトリチル基である化合物中のaが8である化合物5の含有量を算出するために、化合物42の誘導化を実施した。
【0139】
式(3)中のaが8であり、R がトリチル基であり、Lがトシル基である化合物41の合成
【化48】

【0140】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物5を含有する反応生成物(化合物5:5g、8.2mmol未満)、ジクロロメタン(25mL)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、トリエチルアミン(1.2mL、8.6mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(100mg、0.82mmol)およびTsCl(1.4g、7.3mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。4時間後、1H-NMR分析によりTsClの消失を確認し、1M塩酸水溶液(25mL)を加え、分液した。有機層を1M塩酸水溶液(25mL)で1回、飽和重曹水(25mL)で2回、飽和食塩水(25mL)で1回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物41を含有する反応生成物を得た。また、TLC分析および1H-NMR測定結果により、得られた反応生成物には上記化合物3、6が含まれていることを確認した。

化合物41
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
2.45 (3H, s, -OSO2-Ph-CH 3)、
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2CH2-、化合物3,6由来を含む)、
3.45-3.85 (28H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2CH 2)6-OCH 2CH2-、化合物3,6由来を含む)、
4.16 (2H, t, -OCH2CH 2-OSO2-Ph-CH3)、
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5)3C-OCH2CH2-、化合物3,6由来を含む),
7.35 (2H, d, -OSO2-Ph-CH3)、
7.80 (2H, d, -OSO2-Ph-CH3)

収量:6.1g
【0141】
片末端水酸基、片末端トシル基を有するエチレングリコール鎖長が8ユニットの化合物42の合成
【化49】

【0142】
次いで、温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物42を含有する反応生成物(化合物42:6.1g、8.0mmol未満)、メタノール(25mL)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、p-トルエンスルホン酸・1水和物(0.78g、4.1mmol)、ヘキサン(20mL)を加えた。室温で30分撹拌した後、ヘキサン層を除去し、再度ヘキサン(13mL)を加えて30分撹拌した。同様の操作を6回行った後、1H-NMR測定の結果、化合物42および3、6の消失を確認し、飽和重曹水(10mL)を加えた。この混合溶液をヘキサン(13mL)で2回洗浄し、トリチルメチルエーテルを除去した。メタノール溶液を減圧濃縮し、ジクロロメタン(25mL)を加え抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物42を得た。

化合物42
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
2.45 (3H, s, -OSO2-Ph-CH 3)、
2.73 (1H, t, H-(OCH2CH2)8-)、
3.45-3.85 (30H, m, -(OCH 2CH 2)7-OCH 2CH2-)、
4.16 (2H, t, -(OCH2CH2)7-OCH2CH 2-OSO2-Ph-CH3),
7.35 (2H, d, -OSO2-Ph-CH3)、
7.80 (2H, d, -OSO2-Ph-CH3)

収量:3.0g
純度:99.7% (HPLC-RI)
純度測定に用いたHPLC測定条件を以下に示す。
装置:Waters社製のalliance
カラム:ジーエルサイエンス社製のInertsil ODS-3 (カラムサイズ:4.6mm×25cm,粒子径5μm)
検出器:RI
展開溶媒:メタノール/5mM酢酸アンモニウム溶液 = 50/50
流速:0.6mL/min
カラム温度:40℃
サンプル濃度:0.2mg/mL
注入量:40μL
純度の値は保持時間10~40minで検出される全ピーク面積に対する化合物43のピーク面積の割合。
【0143】
(実施例5)
実施例2-2で得られた化合物12を含有する反応生成物から、両末端がトリチル基である化合物の含有量を除いたときの、式(4)中のR1がトリチル基である化合物中のaが12である化合物12の含有量を算出するために、化合物44の誘導化を実施した。
【0144】
式(3)中のaが12であり、R がトリチル基であり、Lがトシル基である化合物43の合成
【化50】

【0145】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物12を含有する反応生成物(化合物12:5g、6.3mmol未満)、ジクロロメタン(25mL)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、トリエチルアミン(0.93mL、6.6mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(77mg、0.63mmol)およびTsCl(0.97g、5.4mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。4時間後、1H-NMR分析によりTsClの消失を確認し、1M塩酸水溶液(25mL)を加え、分液した。有機層を1M塩酸水溶液(25mL)で1回、飽和重曹水(25mL)で2回、飽和食塩水(25mL)で1回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物43を含有する反応生成物を得た。また、TLC分析および1H-NMR測定結果により、得られた反応生成物には上記化合物3、6および13が含まれていることを確認した。

化合物43
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
2.45 (3H, s, -OSO2-Ph-CH 3)、
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2CH2-、化合物3,6,13由来を含む)、
3.45-3.85 (44H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2CH 2)10-OCH 2CH2-、化合物3,6,13由来を含む)、
4.16 (2H, t, -OCH2CH 2-OSO2-Ph-CH3)、
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5)3C-OCH2CH2-、化合物3,6,13由来を含む),
7.35 (2H, d, -OSO2-Ph-CH3)、
7.80 (2H, d, -OSO2-Ph-CH3)

収量:6.1g
【0146】
【化51】

【0147】
次いで、温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物43を含有する反応生成物(化合物43:6.1g、6.5mmol未満)、メタノール(25mL)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、p-トルエンスルホン酸・1水和物(0.60g、3.2mmol)、ヘキサン(20mL)を加えた。室温で30分撹拌した後、ヘキサン層を除去し、再度ヘキサン(13mL)を加えて30分撹拌した。同様の操作を6回行った後、1H-NMR測定の結果、化合物43および3、6、13の消失を確認し、飽和重曹水(10mL)を加えた。この混合溶液をヘキサン(13mL)で2回洗浄し、トリチルメチルエーテルを除去した。メタノール溶液を減圧濃縮し、ジクロロメタン(25mL)を加え抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物44を得た。

化合物44
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
2.45 (3H, s, -OSO2-Ph-CH 3)、
2.73 (1H, t, H-(OCH2CH2)8-)、
3.45-3.85 (46H, m, -(OCH 2CH 2)11-OCH 2CH2-)、
4.16 (2H, t, -(OCH2CH2)7-OCH2CH 2-OSO2-Ph-CH3),
7.35 (2H, d, -OSO2-Ph-CH3)、
7.80 (2H, d, -OSO2-Ph-CH3)

収量:3.3g
純度:99.7% (HPLC-RI)
純度測定に用いたHPLC測定条件を以下に示す。
装置:Waters社製のalliance
カラム:ジーエルサイエンス社製のInertsil ODS-3 (カラムサイズ:4.6mm×25cm,粒子径5μm)
検出器:RI
展開溶媒:メタノール/5mM酢酸アンモニウム溶液 = 55/45
流速:0.6mL/min
カラム温度:40℃
サンプル濃度:0.2mg/mL
注入量:40μL
純度の値は保持時間11~40minで検出される全ピーク面積に対する化合物44のピーク面積の割合。
【0148】
(比較例1、トシル化工程を経由して、化合物10を得る製造方法)
特許文献4記載の製造方法にて、式(1)中のaが8である化合物10の合成を行なった。
【0149】
(比較例1-1)
式(3)中のaが4であり、R がトリチル基であり、Lがトシル基である化合物41の合成
【化52】

【0150】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応器にテトラエチレングリコール1(200mL、1.15mol)、トルエン(50mL)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、110~120℃で、共沸脱水した。共沸脱水後に冷却し、ピリジン(18ml、0.22mol)およびトリチルクロリド(TrtCl、40g、0.14mol)を加え、室温で3時間撹拌した。3時間後、TLCを用いてTrtClの消失を確認し、イオン交換水(200mL)を加えた。得られた混合溶液にトルエン(100mL)を加えて分液し、有機層にイオン交換水(80mL)と飽和食塩水(20mL)の混合溶液で1回、1M塩酸水溶液(50mL)で1回、飽和食塩水(50mL)で4回洗浄した。得られた有機層に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過し、ろ液にトルエン(50mL)を加えて共沸脱水を3回行い、淡黄色透明液体の化合物2を含有する反応生成物を得た。また、ESI-MS測定により、得られた反応生成物には上記化合物3が含まれていることを確認した。

化合物2
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
2.4 (1H, t, -C-(OCH2CH24-OH)、
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2CH2-、化合物3由来を含む)、
3.45-3.85 (14H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2CH 2)3-OH、化合物3由来を含む)、
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5)3C-OCH2CH2-、化合物3由来を含む)
MS(ESI+):化合物2 454.5 [M+NH4]+、 化合物3 696.9 [M+NH4]+
収量:63.8g
【0151】
【化53】

【0152】
次いで、温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物2を含有する反応生成物(化合物2:62.8g、0.14mol未満)、トルエン(314mL)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、トリエチルアミン(24mL、0.17mol)を加えた。10℃で塩化メタンスルホニル(12.2mL、0.16mol)を滴下し、室温で2時間撹拌した。2時間後、TLC分析により化合物2の消失を確認し、1M塩酸水溶液(314mL)を加え、分液した。有機層を1M塩酸水溶液(314mL)で1回、飽和重曹水(314mL)で2回、飽和食塩水(314mL)で1回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物4を含有する反応生成物を得た。また、ESI-MS測定により、得られた反応生成物には上記化合物3が含まれていることを確認した。

化合物4
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
2.98 (3H, s, -OCH2CH2-O-SO2CH 3)、
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2CH2-、化合物3由来を含む)、
3.45-3.85 (12H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2CH 2)2-OCH 2CH2-、化合物3由来を含む)、
4.33 (2H, t, -OCH2CH 2-O-SO2CH3)、
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5)3C-OCH2CH2-、化合物3由来を含む)
MS(ESI+):化合物4 532.4 [M+NH4]+、 化合物3 696.8 [M+NH4]+
収量:70.4g
【0153】
比較例1-1の化合物4の1H-NMR測定結果から、化合物3は約4.8mol%含まれていることを確認した。
なお、δ3.23ピークを基準とした場合の化合物3含有量算出式は下式で表される。
(((2-[δ4.32])/4H)/([δ4.32]/2H))×100 (mol%)
また、比較例1-1にて得られた反応生成物2には化合物3が約6.9wt%含有していることになる。
【0154】
(比較例1-2)
式(4)中のaが8であり、R がトリチル基である化合物5の合成
【化54】

【0155】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応器に水素化ナトリウム(7.8g)を入れ、窒素置換後、MeCN(141mL)を加えて、0℃に冷却した。トルエン(107mL)で共沸脱水したテトラエチレングリコール1(213g、1.10mol)にMeCN(70mL)を混合して、この混合溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、化合物4を含有する反応生成物(化合物4:70.4g、0.14mol未満)にMeCN(70mL)を混合し、この混合溶液を15分かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を80℃に昇温し、3時間撹拌した。3時間後1H-NMRを用いて化合物4が消失したことを確認し、40℃以下になるまで放冷した。反応混合溶液を減圧濃縮し、残渣にトルエン(352mL)を加えた。このトルエン溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液(352mL)で2回、飽和食塩水(352mL)で3回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物5を含有する反応生成物を得た。また、ESI-MS測定により、得られた反応生成物中には上記化合物3および6も含まれていることを確認した。

化合物5
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
2.52 (1H, t, -C-(OCH2CH28-OH)、
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2CH2-、化合物3,6由来を含む)、
3.45-3.85 (30H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2CH 2)7-OH、化合物3,6由来を含む)、
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5)3C-OCH2CH2-、化合物3,6由来を含む)
MS(ESI+):化合物5 630.8 [M+NH4]+、 化合物3 696.8 [M+NH4]+、 化合物6 1048.4 [M+NH4]+
収量:82.4g
【0156】
(比較例1-3)
式(3)中のaが8であり、R がトリチル基であり、Lがトシル基である化合物41の合成
【化55】

【0157】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応器に化合物5を含有する反応生成物(化合物5: 77.8g、0.14mol未満)にテトラヒドロフラン(200mL)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、0℃に冷却した。水酸化ナトリウム水溶液(20g、0.5mol/60mL)を加え、0℃で20分撹拌した。反応混合液にトシルクロリド/テトラヒドロフラン溶液(30g、0.16mnol/60mL)を30分かけて滴下し、0℃で1.5時間撹拌した。1.5時間後、TLCにより化合物5の消失を確認した後、過剰のトシルクロリドの消失させるため室温で12.5時間撹拌した。12.5時間後、TLCでトシルクロリドの消失を確認し、イオン交換水(30mL)とジエチルエーテル(50mL)を加えた。混合液を飽和重曹水(50mL)で1回、飽和食塩水(50mL)で3回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え、脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物41を含有する反応生成物を得た。また、ESI-MS測定により、得られた反応生成物には上記化合物3、6が含まれていることを確認した。

化合物41
MS(ESI+):化合物41 785.2 [M+NH4]+、 化合物3 697.0 [M+NH4]+、 化合物6 1048.7 [M+NH4]+
収量:86.1g (収率:88%)
【0158】
(比較例1-4)
片末端水酸基、片末端トシル基を有するエチレングリコール鎖長が8ユニットの化合物42の合成
【化56】

【0159】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物41を含有する反応生成物(化合物41:85.6g、0.144mol未満)、メタノール(20mL)、パラジウム炭素(Pd/C、2g)を加えて水素置換して室温で18時間撹拌した。18時間後、TLCにより化合物42の消失を確認し、Pd/Cをセライトろ過により除去した。ろ液にイオン交換水(130mL)を加え、生成したトリフェニルメタンをろ過した。ろ液にトリフェニルメタンを残存していたために、ヘキサン(100mL)で5回洗浄し、トリフェニルメタンを除去した。メタノール/イオン交換水層を減圧濃縮し、化合物41を含む粗生成物を得た。次いで、その粗生成物にジクロロメタン(120mL)を加え、20℃の条件下、イオン交換水(100mL)で3回、飽和食塩水(100mL)で2回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え、乾燥、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物42の精製物を得た。

化合物42
精製物
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
2.45 (3H, s, -OSO2-Ph-CH 3)、
2.73 (1H, t, H-(OCH2CH2)8-)、
3.45-3.85 (30H, m, -(OCH 2CH 2)7-OCH 2CH2-)、
4.16 (2H, t, -(OCH2CH2)7-OCH2CH 2-OSO2-Ph-CH3)、
7.35 (2H, d, -OSO2-Ph-CH3)、
7.80 (2H, d, -OSO2-Ph-CH3)

MS(ESI+):化合物42 542.4 [M+NH4]+
粗生成物
MS(ESI+):化合物42 542.4 [M+NH4]+、 化合物1 212.7 [M+NH4]+、 化合物9 564.5 [M+NH4]+
収量:52.0g (収率:89%)
純度:96.7% (HPLC-RI)
純度測定に用いたHPLC測定条件を以下に示す。
装置:Waters社製のalliance、
カラム:ジーエルサイエンス社製のInertsil ODS-3 (カラムサイズ:4.6mm×25cm,粒子径5μm)、
検出器:RI、
展開溶媒:メタノール/5mM酢酸アンモニウム溶液 = 50/50、流速:0.6mL/min、
カラム温度:40℃、
サンプル濃度:0.2mg/mL、
注入量:40μL。
純度の値は保持時間10~40minで検出される全ピーク面積に対する化合物42のピーク面積の割合。
【0160】
(比較例1-5)
片末端トシル基、片末端tertブチルエステル基を有するエチレングリコール鎖長が8ユニットの化合物45の合成
【化57】

【0161】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物45(1.0g、1.91mmol)、アクリル酸tert-ブチル(1.8mL、19mmol)、トルエン(25mL)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、0℃まで冷却後、パウダー状の水酸化カリウム(53mg、0.9mmol)を加え、0℃で1時間反応させた。反応後、イオン交換水(20mL)を加え分液した。有機層を飽和食塩水(20mL)で1回洗浄した。有機層を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物45を得た。

化合物45
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
1.45 (9H, s, (CH 3)3C-O-CO-CH2CH2-)、
2.45 (3H, s, -OSO2-Ph-CH 3)、
2.50 (2H, t, (CH3)3C-O-CO-CH 2CH2-)、
3.45-3.85 (32H, m, -CH2CH 2-(OCH 2CH 2)7-OCH 2CH2-)、
4.16 (2H, t, -OCH2CH 2-OSO2-Ph-CH3)、
7.34 (2H, d, -OSO2-Ph-CH3)、
7.80 (2H, d, -OSO2-Ph-CH3)
MS(ESI+):化合物45 670.6 [M+NH4]+
収量:1.06g (収率:85%)
【0162】
(比較例1-6)
片末端フタルイミド基、片末端tertブチルエステル基を有するエチレングリコール鎖長が8ユニットの化合物46の合成
【化58】

【0163】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物45(1.06g、1.60mmol)、アセトニトリル(25mL)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、フタルイミドカリウム塩(520mg、2.80mmol)を加え、80℃で8時間撹拌した。NMRにより化合物45の消失を確認し、反応溶液を濃縮した。ジクロロメタン(7mL)を加え固形分をろ過した後に、ろ液を0.1M水酸化ナトリウム水溶液(7mL)で1回、飽和食塩水(10mL)で1回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物46を得た。

化合物46
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
1.45 (9H, s, (CH 3)3C-O-CO-CH2CH2-)、
2.50 (2H, t, (CH3)3C-O-CO-CH 2CH2-)、
3.45-3.85 (32H, m, -CH2CH 2-(OCH 2CH 2)7-OCH 2CH2-)、
3.90 (2H, t, -OCH2CH 2-phthalimide)、
7.71 (2H, dd, -phthalimide)、
7.80 (2H, dd, -phthalimide)
MS(ESI+):化合物46 945.7 [M+NH4]+
収量:965mg (収率:95%)
【0164】
(比較例1-7)
式(8)中のaが8であり、R がtert-ブチル基である化合物9の合成
【化59】

【0165】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物46(510mg、0.80mmol)、エタノール(10mL)およびヒドラジン1水和物(334mg、6.70mmol)を加えて85℃で45分反応した。室温まで冷却後、析出した白色固体を溶解させるために、12%炭酸カリウ水溶液(5mL)を加えた後に混合溶液を減圧濃縮した。次いで、イオン交換水(3mL)を加え濃塩酸(0.6mL)を添加し、pH3に調整し、固形分をろ過した。ろ液をジクロロメタンで3回洗浄し、水層に食塩を添加し飽和させた。この水溶液をジクロロメタンで5回抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで脱水、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物9を得た。

化合物9
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
1.44 (9H, s, -CH2CH2-COO-C(CH 3)3)、
2.50 (2H, t, -CH2CH 2-COO-C(CH3)3)、
3.1 (2H, t, H2N-CH 2CH2O-(CH2CH2O)7-)、
3.45-3.85 (32H, m, H2N-CH2CH 2O-(CH 2CH 2O)7-CH 2CH2-)
収量:400mg (収率:99%)
【0166】
(比較例1-8)
式(1)中のaが8であり、化合物10の合成
【化60】

【0167】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物9(400mg、0.80mmol)、1M塩酸(0.5mL)を加えて溶解させた後、55℃で5時間撹拌した。15℃に冷却後、10M水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH5に調整した。水分をトルエン(5mL)で2回共沸脱水して得られた固形分にジクロロメタン(10mL)を加え、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物10を得た。

化合物10
1H-NMR(CD3OD、内部標準TMS);δ(ppm):
2.56 (2H, t, -CH2CH 2-COOH)、
3.17 (2H, t, H2N-CH 2CH2O-)、
3.6-3.9 (32H, m, -CH2CH 2O-(CH 2CH 2O)7-CH 2CH2-)
収量:320mg (収率:83%)
純度:95.6% (HPLC-RI)
純度測定に用いたHPLC測定条件を以下に示す。
装置:Waters社製のalliance、
カラム:ジーエルサイエンス社製のInertsil ODS-3 (カラムサイズ:4.6mm×25cm,粒子径5μm)、
検出器:RI、
展開溶媒:メタノール/5mM酢酸アンモニウム溶液 = 15/85、
流速:1.0mL/min、
カラム温度:40℃、
サンプル濃度:1mg/mL、
注入量:50μL
【0168】
(比較例2、トシル化工程を経由して、化合物18を得る製造方法)
特許文献4記載の製造方法にて、式(1)中のaが12である化合物18の合成を行なった。
【0169】
(比較例2-1)
式(3)中のaが8であり、R がトリチル基であり、Lがメシル基である化合物11の合成
【化61】

【0170】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物5を含有する反応生成物(化合物5:72.7g、0.12mol未満)、トルエン(350mL)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、トリエチルアミン(20mL、0.14mol)を加えた。10℃で塩化メタンスルホニル(10mL、0.13mol)を滴下し、室温で2時間撹拌した。2時間後、TLC分析により化合物5の消失を確認し、1M塩酸水溶液(100mL)を加え、分液した。有機層を1M塩酸水溶液(100mL)で1回、飽和重曹水(100mL)で2回、飽和食塩水(100mL)で1回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物11を含有する反応生成物を得た。また、ESI-MS測定により、得られた反応生成物には上記化合物3、6が含まれていることを確認した。

化合物11
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
3.07 (3H, s, -OCH2CH2-O-SO2CH 3)、
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2CH2-、化合物3,6由来を含む)、
3.45-3.85 (28H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2CH 2)6-OCH 2CH2-、化合物3,6由来を含む)、
4.37 (2H, t, -OCH2CH 2-O-SO2CH3)、
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5)3C-OCH2CH2-、化合物3,6由来を含む)
MS(ESI+):化合物11 708.3 [M+NH4]+、 化合物3 696.4 [M+NH4]+、 化合物6 1048.5 [M+NH4]+
収量:80.1g
【0171】
比較例2-1の化合物11の1H-NMR測定結果から、化合物3および6は約9.5mol%(化合物3: 4.8mol%、化合物6: 4.7mol%、概算)含まれていることを確認した。
なお、δ3.23ピークを基準とした場合の化合物3、6含有量算出式で表される。
(((2-[δ4.32])/4H)/([δ4.32]/2H))×100 (mol%)
化合物3の含有量は比較例1-1で算出した値を適用
また、比較例2-1にて使用した反応生成物5には化合物3および6が約11.7wt%含有していることになる。
【0172】
(比較例2-2)
式(4)中のaが12であり、R がトリチル基である化合物12の合成
【化62】

【0173】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応器に水素化ナトリウム(6.6g)を入れ、窒素置換後、MeCN(200mL)を加えて、0℃に冷却した。トルエン(50mL)で共沸脱水したテトラエチレングリコール1(180g、0.93mol)にMeCN(50mL)を混合して、この混合溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、化合物11を含有する反応生成物(化合物11:80.1g、0.12mol未満)にMeCN(50mL)を混合し、この混合溶液を15分かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を80℃に昇温し、3時間撹拌した。3時間後1H-NMRを用いて化合物11が消失したことを確認し、40℃以下になるまで放冷した。反応混合溶液を減圧濃縮し、残渣にトルエン(200mL)を加えた。このトルエン溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)で2回、飽和食塩水(100mL)で3回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物12を含有する反応生成物を得た。また、ESI-MSおよび1H-NMR測定より、得られた反応生成物には上記化合物3、6、13が含まれていることを確認した。

化合物12
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
2.56 (1H, t, -C-(OCH2CH212-OH)、
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2CH2-、化合物3,6,13由来を含む)、
3.45-3.85 (46H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2CH 2)11-OH、化合物3,6,13
由来を含む)、
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5)3C-OCH2CH2-、化合物3,6,13由来を含む)
MS(ESI+):化合物12 806.4 [M+NH4]+、 化合物3 696.8 [M+NH4]+、 化合物6 1048.1 [M+NH4]+、 化合物13 1400.9 [M+NH4]+
収量:85.4g
【0174】
(比較例2-3)
式(3)中のaが12であり、R がトリチル基であり、Lがトシル基である化合物43の合成
【化63】

【0175】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物12を含有する反応生成物(化合物12:57.3g、72.7mmol未満)、ジクロロメタン(280mL)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、トリエチルアミン(10mL、73mol)、4-ジメチルアミノピリジン(888mg、7.27mmol)およびTsCl(12.5g、65.5mmol)を加え、室温で4.5時間撹拌した。4.5時間後、1H-NMR分析によりTsClの消失を確認し、1M塩酸水溶液(150mL)を加え、分液した。有機層を1M塩酸水溶液(150mL)で1回、飽和重曹水(150mL)で2回、飽和食塩水(150mL)で1回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物43を含有する反応生成物を得た。また、ESI-MS測定により、得られた反応生成物には上記化合物3、6、13が含まれていることを確認した。

化合物43
MS(ESI+):化合物43 960.3 [M+NH4]+、 化合物3 696.3 [M+NH4]+、 化合物6 1048.2 [M+NH4]+、 化合物13 1400.8 [M+NH4]+
収量:69.1g (収率:101%)
【0176】
(比較例2-4)
片末端水酸基、片末端トシル基を有するエチレングリコール鎖長が12ユニットの化合物44の合成
【化64】

【0177】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物43を含有する反応生成物(化合物43:69.1g、73.3mmol未満)、メタノール(550L)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、p-トルエンスルホン酸・1水和物(6.97g、36.7mmol)、ヘキサン(200mL)を加えた。室温で30分撹拌した後、ヘキサン層を除去し、再度ヘキサン(200mL)を加えて30分撹拌した。同様の操作を6回行った後、1H-NMR測定の結果、化合物43および3、6、13の消失を確認し、飽和重曹水(200mL)を加えた。この混合溶液をヘキサン(200mL)で2回洗浄し、トリチルメチルエーテルを除去した。メタノール溶液を減圧濃縮し、ジクロロメタン(200mL)を加え、20℃以下の条件下、イオン交換水(200mL)で3回、飽和食塩水(200mL)で1回洗浄した。有機層に硫酸マグネシウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物44の精製物を得た。

化合物44
精製物
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
2.45 (3H, s, -OSO2-Ph-CH 3)、
2.73 (1H, t, H-(OCH2CH2)8-)、
3.45-3.85 (46H, m, -(OCH 2CH 2)11-OCH 2CH2-)、
4.16 (2H, t, -(OCH2CH2)7-OCH2CH 2-OSO2-Ph-CH3),
7.35 (2H, d, -OSO2-Ph-CH3)、
7.80 (2H, d, -OSO2-Ph-CH3)
MS(ESI+):化合物44 718.3 [M+NH4]+
粗生成物
MS(ESI+):化合物44 718.3 [M+NH4]+、 化合物1 212.3 [M+NH4]+、 化合物9 564.5 [M+NH4]+ 、 化合物16 916.4 [M+NH4]+
収量:30.3g (収率:59%)
純度:94.9% (HPLC-RI)
純度測定に用いたHPLC測定条件を以下に示す。
装置:Waters社製のalliance、
カラム:ジーエルサイエンス社製のInertsil ODS-3 (カラムサイズ:4.6mm×25cm,粒子径5μm)、
検出器:RI、
展開溶媒:メタノール/5mM酢酸アンモニウム溶液 = 55/45、
流速:0.6mL/min、
カラム温度:40℃、
サンプル濃度:0.2mg/mL、
注入量:40μL。
純度の値は保持時間11~40minで検出される全ピーク面積に対する化合物44のピーク面積の割合。
【0178】
(比較例2-5)
片末端トシル基、片末端tertブチルエステル基を有するエチレングリコール鎖長が12ユニットの化合物47の合成
【化65】

【0179】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物44(4.96g、7.08mmol)、アクリル酸tert-ブチル(3.09mL、21.2mmol)、トルエン(100mL)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、0℃まで冷却後、パウダー状の水酸化カリウム(199mg、3.54mmol)を加え、0℃で1時間反応させた。反応後、飽和塩化アンモニウム水溶液(50mL)を加え分液した。有機層を飽和食塩水(50mL)で1回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物47を得た。

化合物47
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
1.45 (9H, s, (CH 3)3C-O-CO-CH2CH2-)、
2.45 (3H, s, -OSO2-Ph-CH 3)、
2.50 (2H, t, (CH3)3C-O-CO-CH 2CH2-)、
3.45-3.85 (48H, m, -CH2CH 2-(OCH 2CH 2)11-OCH 2CH2-)、
4.16 (2H, t, -OCH2CH 2-OSO2-Ph-CH3)、
7.34 (2H, d, -OSO2-Ph-CH3)、
7.80 (2H, d, -OSO2-Ph-CH3)
MS(ESI+):化合物47 847.0 [M+NH4]+
収量:5.43g (収率:93%)
【0180】
(比較例2-6)
片末端フタルイミド基、片末端tertブチルエステル基を有するエチレングリコール鎖長が12ユニットの化合物48の合成
【化66】

【0181】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物47(5.43g、6.55mmol)、アセトニトリル(45mL)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、フタルイミドカリウム塩(1.58g、8.52mmol)を加え、80℃で18時間撹拌した。NMRにより化合物48の消失を確認し、反応溶液を濃縮した。残渣にジクロロメタン(50mL)を加え固形分をろ過した後に、ろ液を0.1M水酸化ナトリウム水溶液(50mL)で1回、飽和食塩水(50mL)で1回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物48を得た。

化合物48
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
1.45 (9H, s, (CH 3)3C-O-CO-CH2CH2-)、
2.50 (2H, t, (CH3)3C-O-CO-CH 2CH2-)、
3.45-3.85 (48H, m, -CH2CH 2-(OCH 2CH 2)11-OCH 2CH2-)、
3.90 (2H, t, -OCH2CH 2-phthalimide)、
7.71 (2H, dd, -phthalimide)、
7.80 (2H, dd, -phthalimide)
MS(ESI+):化合物48 828.1 [M+NH4]+
収量:4.26g (収率:81%)
【0182】
(比較例2-7)
式(8)中のaが12であり、R がtert-ブチル基である化合物17の合成
【化67】

【0183】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物48(4.26g、5.30mmol)、エタノール(60mL)およびヒドラジン1水和物(3.86mL、79.5mmol)を加えて85℃で1時間反応させた。室温まで冷却後、析出した白色固体を溶解させるために、12%炭酸カリウ水溶液(5mL)を加えた後に混合溶液を減圧濃縮した。残渣にイオン交換水(20mL)を加え濃塩酸を添加し、pH3に調整し、固形分をろ過した。ろ液に食塩を加えてジクロロメタン(20mL)で2回抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物17を得た。

化合物17
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
1.44 (9H, s, -CH2CH2-COO-C(CH 3)3)、
2.50 (2H, t, -CH2CH 2-COO-C(CH3)3)、
3.1 (2H, t, H2N-CH 2CH2O-(CH2CH2O)11-)、
3.45-3.85 (48H, m, H2N-CH2CH 2O-(CH 2CH 2O)11-CH 2CH2-)
収量:3.13g (収率:88%)
【0184】
(比較例2-8)
式(1)中のaが12であり、化合物18の合成
【化68】

【0185】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物17(3.13g、4.65mmol)、1M塩酸(3mL)を加えて溶解させた後、55℃で2時間撹拌した。15℃に冷却後、イオン交換水(5mL)で希釈し、ジクロロメタン(10mL)で3回洗浄した。水層に2M水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9に調整した。この水溶液をジクロロメタン(10mL)で3回洗浄し、水層に食塩を加えて飽和させた。この水溶液をクロロホルム(10mL)で3回抽出し、有機層に硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色固体の化合物18を得た。

化合物18
1H-NMR(CD3OD、内部標準TMS);δ(ppm):
2.56 (2H, t, -CH2CH 2-COOH)、
3.17 (2H, t, H2N-CH 2CH2O-)、
3.6-3.9 (48H, m, -CH2CH 2O-(CH 2CH 2O)11-CH 2CH2-)
収量:2.32g (収率76%)
純度:98.0% (HPLC-RI)
純度測定に用いたHPLC測定条件を以下に示す。
装置:Waters社製のalliance、
カラム:ジーエルサイエンス社製のInertsil ODS-3 (カラムサイズ:4.6mm×25cm, 粒子径5μm)、
検出器:RI、
展開溶媒:メタノール/5mM酢酸アンモニウム溶液 = 27.5/72.5、
流速:1.0mL/min、
カラム温度:40℃、
サンプル濃度:2mg/mL、注入量:50μL
【0186】
(比較例3)
比較例2-2で得られた化合物12を含有する反応生成物中の両末端にトリチル基を有する化合物3、6および13の含有量の算出式
【0187】
(3)中のaが12であり、R がトリチル基であり、Lがメシル基である化合物19の合成
【化69】

【0188】
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機を付した反応容器に化合物12を含有する反応生成物(化合物12:25g、317mmol未満)、トルエン(125mL)を加えて窒素雰囲気下で溶解させた後、トリエチルアミン(5.3mL、38mmol)を加えた。10℃で塩化メタンスルホニル(2.7mL、35mmol)を滴下し、室温で2時間撹拌した。2時間後、TLC分析により化合物12の消失を確認し、1M塩酸水溶液(50mL)を加え、分液した。有機層を1M塩酸水溶液(50mL)で1回、飽和重曹水(50mL)で2回、飽和食塩水(50mL)で1回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え脱水後、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物19を含有する反応生成物を得た。また、ESI-MS測定により、得られた反応生成物には上記化合物3、6および13が含まれていることを確認した。

化合物19
1H-NMR(CDCl3、内部標準TMS);δ(ppm):
3.07 (3H, s, -OCH2CH2-O-SO2CH 3)、
3.23 (2H, t, (C6H5)3C-OCH 2CH2-、化合物3,6,13由来を含む)、
3.45-3.85 (44H, m, -OCH2CH 2-(OCH 2CH 2)10-OCH 2CH2-、化合物3,6,13由来を含む)、
4.37 (2H, t, -OCH2CH 2-O-SO2CH3)、
7.21-7.47 (15H, m, (C6 H 5)3C-OCH2CH2-、化合物3,6,13由来を含む)
MS(ESI+):化合物19 884.9 [M+NH4]+、 化合物3 696.8 [M+NH4]+、 化合物6 1049.4 [M+NH4]+、 化合物13 1401.3 [M+NH4]+
収量:26g
【0189】
比較例3の化合物19の1H-NMR測定結果から、化合物3、6および13は約9.8mol%(化合物3: 4.8mol%、化合物6: 4.7mol%、化合物13: 0.3mol%、概算)含まれていることを確認した。
なお、δ3.23ピークを基準とした場合の化合物3、6、13含有量算出式は下式で表される。
(((2-[δ4.32])/4H)/([δ4.32]/2H))×100 (mol%)
化合物3、6の含有量は比較例1-1、2―1で算出した値を適用
また、比較例3にて使用した反応生成物12には化合物3、6および13が約9.7wt%含有していることになる。
【0190】
両末端にそれぞれ水酸基とトリチル基を有するヘテロ単分散ポリエチレングリコールの化合物5を原料に両末端にそれぞれアミノ基とカルボキシル基を有するヘテロ単分散ポリエチレングリコールの化合物10を得るまでの総収率の比較
【0191】
aが8または12において、式(4)から式(1)を製造した場合の総収率を表1に示す。
【表1】
【0192】
前記総収率は下式で求めた。
【数1】
【0193】
前記総収率を求める式において、aが8である化合物5の純分とは、実施例1-2で得られた化合物5を含有する反応生成物量から、両末端にトリチル基を有する化合物3、6の含有量を除いた値に、実施例4で得られた化合物42の純度を乗じた値である。また、比較例1-2で得られた化合物5を含有する反応生成物量から、両末端にトリチル基を有する化合物3、6の含有量を除いた値に、比較例1-4で得られた化合物42の純度を乗じた値である。
【0194】
前記総収率を求める式において、aが12である化合物12の純分とは、実施例2-2で得られた化合物12を含有する反応生成物量から、両末端にトリチル基を有する化合物3、6および13の含有量を除いた値に、実施例5で得られた化合物44の純度を乗じた値である。また、比較例2-2で得られた化合物5を含有する反応生成物量から、両末端にトリチル基を有する化合物3、6および13の含有量を除いた値に、比較例2-4で得られた化合物44の純度を乗じた値である。
【0195】
前記総収率を求める式において、aが8である化合物10およびaが12である化合物18の純分とは、各々HPLCで求められた純度に相当する。
【0196】
従来の製造方法では、鎖長延長工程で副生する鎖長の異なる特定分子量の両末端にトリチル基を含有する不純物を精製するために、一度水酸基をトシル基に変換していた。一方で、この工程を経ずに当該不純物を除去することで、従来よりも工程数が少なくなり、収率低下の原因となる未反応原料の残存や反応副生物の生成を抑制することができ、収率を向上させることができた。