(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】車載用電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230905BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20230905BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H01F37/00 N
H01F37/00 E
H01F37/00 J
H01F37/00 G
(21)【出願番号】P 2020054451
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】門間 健司
(72)【発明者】
【氏名】矢野 順也
(72)【発明者】
【氏名】木下 雄介
(72)【発明者】
【氏名】山蔭 駿平
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/170817(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/016554(WO,A1)
【文献】特開2010-130779(JP,A)
【文献】特開2018-112147(JP,A)
【文献】特開2010-272584(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0175867(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H01F 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する電動モータと、
前記電動モータを駆動するインバータ装置と、
前記インバータ装置を内部に収容するハウジングと、を備え、
前記インバータ装置は、
回路基板と、
前記回路基板に実装されるチョークコイルと、を備え、
前記チョークコイルは、
環状のコアと、
電気絶縁性を有し、前記コアを覆う環状のコアケースと、
前記コアケースに巻回される一対の巻線と、
電気絶縁性を有し、前記ハウジングに固定されるとともに前記チョークコイルを収容するホルダと、を備え、
前記コアケースは、周方向での前記一対の巻線の間に形成された開口部を有し、前記コアは前記開口部を介して前記ホルダと接着剤で固定されて
おり、
前記一対の巻線の巻き方向は互いに反対方向となっており、
前記一対の巻線は、第1の巻線及び第2の巻線によって構成され、
前記第1の巻線の両端及び前記第2の巻線の両端は、前記回路基板の貫通孔を貫通し、且つ前記回路基板にはんだ付けされていることを特徴とする車載用電動圧縮機。
【請求項2】
前記コアは前記開口部を介して前記ハウジングと接着剤で固定されていることを特徴とする請求項1に記載の車載用電動圧縮機。
【請求項3】
流体を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する電動モータと、
前記電動モータを駆動するインバータ装置と、
前記インバータ装置を内部に収容するハウジングと、を備え、
前記インバータ装置は、
回路基板と、
前記回路基板に実装されるチョークコイルと、を備え、
前記チョークコイルは、
環状のコアと、
電気絶縁性を有し、前記コアを覆う環状のコアケースと、
前記コアケースに巻回される一対の巻線と、
電気絶縁性を有し、前記ハウジングに固定されるとともに前記チョークコイルを収容するホルダと、を備え、
前記コアケースは、周方向での前記一対の巻線の間に形成された開口部を有し、前記コアは前記開口部を介して前記ホルダと接着剤で固定されており、
前記コアケースは、前記ホルダに向けて立設するとともに前記開口部を周方向に挟む一対の壁部を有し、
前記接着剤は、前記一対の壁部に挟まれた領域に
のみ配置され、
前記一対の壁部が前記ホルダに当接することにより、前記一対の巻線と前記ホルダとの間に空隙が形成されることを特徴とす
る車載用電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用電動圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1等に開示されているように、車載用電動圧縮機において耐EMC性向上のため、近年多くの機種で使用されているコイルのうち、主に磁性体であるコアが絶縁コーティング等で絶縁されていない場合、巻線とコアとの間の絶縁を確保するため、巻線とコアとの間に樹脂等のコアケースを挟む必要がある。また、コアケースは2部品よりなり、コアを上下から挟み込む構成が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コアはコアケース内に収容されており、このとき、コアとコアケースとの間には隙間で空いているため、車両の振動によってコアとコアケースとの間においてコアが動いてしまう懸念がある。この衝撃荷重により、回路基板に、はんだ付けされる巻線にも応力が加わり、電気的接続部及び機械的接合部である、はんだ付け部が脆弱化するリスクが高まる。また、コアが動くことにより、コイルの電気的特性が所望の値から外れるリスクも高まる。
【0005】
本発明の目的は、チョークコイルにおけるコアの移動を抑制して耐振性向上を図ることができる車載用電動圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための車載用電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動するインバータ装置と、前記インバータ装置を内部に収容するハウジングと、を備え、前記インバータ装置は、回路基板と、前記回路基板に実装されるチョークコイルと、を備え、前記チョークコイルは、環状のコアと、電気絶縁性を有し、前記コアを覆う環状のコアケースと、前記コアケースに巻回される一対の巻線と、電気絶縁性を有し、前記ハウジングに固定されるとともに前記チョークコイルを収容するホルダと、を備え、前記コアケースは、周方向での前記一対の巻線の間に形成された開口部を有し、前記コアは前記開口部を介して前記ホルダと接着剤で固定されていることを要旨とする。
【0007】
これによれば、コアケースにおける周方向での一対の巻線の間に形成された開口部を介してコアがホルダと接着剤で固定されることによって、チョークコイルにおけるコアの移動を抑制して耐振性向上を図ることができる。また、コイルの電気的特性の安定化を図ることもできる。
【0008】
また、車載用電動圧縮機において、前記コアケースは、前記ホルダに向けて立設するとともに前記開口部を周方向に挟む一対の壁部を有し、前記接着剤は、前記一対の壁部に挟まれた領域に配置され、前記一対の壁部が前記ホルダに当接することにより、前記一対の巻線と前記ホルダとの間に空隙が形成されるとよい。
【0009】
この場合、絶縁性を保ちつつ接着剤の量を少なくできる。さらには空隙を設けることにより巻線の冷却効果が得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、チョークコイルにおけるコアの移動を抑制して耐振性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】(a)は回路基板及びコモンモードチョークコイルの平面図、(b)は回路基板及びコモンモードチョークコイルの正面図、(c)は回路基板及びコモンモードチョークコイルの右側面図。
【
図5】回路基板及びコモンモードチョークコイルの分解斜視図。
【
図7】(a)はコモンモードチョークコイルの平面図、(b)はコモンモードチョークコイルの正面図。
【
図9】(a)はコモンモードチョークコイルの平面図、(b)はコモンモードチョークコイルの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。本実施形態の車載用電動圧縮機は、流体としての冷媒を圧縮する圧縮部を備えており、車載用空調装置に用いられる。即ち、本実施形態における車載用電動圧縮機の圧縮対象の流体は冷媒である。
【0013】
図1に示すように、車載用空調装置10は、車載用電動圧縮機11と、車載用電動圧縮機11に対して流体としての冷媒を供給する外部冷媒回路12とを備えている。外部冷媒回路12は、例えば熱交換器及び膨張弁等を有している。車載用空調装置10は、車載用電動圧縮機11によって冷媒が圧縮され、且つ、外部冷媒回路12によって冷媒の熱交換及び膨張が行われることによって、車内の冷暖房を行う。
【0014】
車載用空調装置10は、当該車載用空調装置10の全体を制御する空調ECU13を備えている。空調ECU13は、車内温度やカーエアコンの設定温度等を把握可能に構成されており、これらのパラメータに基づいて、車載用電動圧縮機11に対してON/OFF指令等といった各種指令を送信する。
【0015】
車載用電動圧縮機11は、外部冷媒回路12から冷媒が吸入される吸入口14aが形成されたハウジング14を備えている。
ハウジング14は、伝熱性を有する材料(例えばアルミニウム等の金属)で形成されている。ハウジング14は、車両のボディに接地されている。
【0016】
ハウジング14は、互いに組み付けられた吸入ハウジング15と吐出ハウジング16と制御ハウジング17とを有している。吸入ハウジング15は、一方向に開口した有底筒状であり、板状の底壁部15aと、底壁部15aの周縁部から吐出ハウジング16に向けて起立した側壁部15bとを有している。底壁部15aは例えば略板状であり、側壁部15bは例えば略筒状である。吐出ハウジング16は、吸入ハウジング15の開口を塞いだ状態で吸入ハウジング15に組み付けられている。これにより、吸入ハウジング15と吐出ハウジング16で区画された内部空間が形成されている。
【0017】
吸入口14aは、吸入ハウジング15の側壁部15bに形成されている。詳細には、吸入口14aは、吸入ハウジング15の側壁部15bのうち吐出ハウジング16よりも底壁部15a側に配置されている。
【0018】
吐出ハウジング16には、冷媒が吐出される吐出口14bが形成されている。吐出口14bは、吐出ハウジング16、詳細には吐出ハウジング16における底壁部15aと対向する部位に形成されている。
【0019】
車載用電動圧縮機11は、吸入ハウジング15と吐出ハウジング16で区画された内部空間に収容された回転軸18、圧縮部19及び電動モータ20を備えている。
回転軸18は、回転可能な状態で支持されている。回転軸18は、その軸線方向が板状の底壁部15aの厚さ方向(換言すれば筒状の側壁部15bの軸線方向)と一致する状態で配置されている。回転軸18と圧縮部19とは連結されている。
【0020】
圧縮部19は、吸入口14a(換言すれば底壁部15a)よりも吐出口14b側に配置されている。圧縮部19は、回転軸18が回転することによって、吸入口14aから吸入された冷媒を圧縮し、その圧縮された冷媒を吐出口14bから吐出させるものである。なお、圧縮部19の具体的な構成は、スクロールタイプ、ピストンタイプ、ベーンタイプ等任意である。
【0021】
電動モータ20は、圧縮部19と底壁部15aとの間に配置されている。電動モータ20は、回転軸18を回転させることにより、圧縮部19を駆動させるものである。電動モータ20は、例えば回転軸18に対して固定された円筒形状のロータ21と、吸入ハウジング15に固定されたステータ22とを有する。ステータ22は、円筒形状のステータコア23と、ステータコア23に形成されたティースに捲回されたコイル24とを有している。ロータ21及びステータ22は、回転軸18の径方向に対向している。コイル24が通電されることによりロータ21及び回転軸18が回転し、圧縮部19による冷媒の圧縮が行われる。
【0022】
図1に示すように、車載用電動圧縮機11は、吸入ハウジング15と制御ハウジング17で区画された収容室S0に駆動装置25が収容され、駆動装置25は、電動モータ20を駆動させるものであって直流電力が入力される。
【0023】
制御ハウジング17は、吸入ハウジング15の底壁部15aに向けて開口した有底筒状である。制御ハウジング17は、開口端が底壁部15aに突き合せられた状態で、ボルト26によって底壁部15aに取り付けられている。制御ハウジング17の開口は、底壁部15aによって塞がれている。収容室S0は、制御ハウジング17と底壁部15aとによって形成されている。
【0024】
収容室S0は、底壁部15aに対して電動モータ20とは反対側に配置されている。圧縮部19、電動モータ20及び駆動装置25は、回転軸18の軸線方向に配列されている。
【0025】
制御ハウジング17にはコネクタ27が設けられており、駆動装置25はコネクタ27と電気的に接続されている。コネクタ27を介して、車両に搭載された車載用蓄電装置28から駆動装置25に直流電力が入力されるとともに、空調ECU13と駆動装置25とが電気的に接続されている。車載用蓄電装置28は、車両に搭載された直流電源であり、例えば二次電池やキャパシタ等である。
【0026】
図1に示すように、収容室S0には回路基板29が配置されている。回路基板29は板状である。回路基板29は、底壁部15aに対して回転軸18の軸線方向に所定の間隔を隔てて対向配置されている。駆動装置25は、インバータ装置30と、コネクタ27とインバータ装置30とを電気的に接続するのに用いられる2本の接続ラインEL1,EL2と、を備えている。駆動装置25は回路基板29を用いて構成されている。
【0027】
インバータ装置30は、電動モータ20を駆動するためのものである。インバータ装置30は、インバータ回路31(
図2参照)と、回路基板29と、ノイズ低減部32(
図2参照)を備えている。インバータ回路31は、直流電力を交流電力に変換するためのものである。ノイズ低減部32は、インバータ回路31の入力側に設けられるとともにインバータ回路31に入力される前の直流電力に含まれるコモンモードノイズ及びノーマルモードノイズを低減させるためのものである。
【0028】
次に、電動モータ20及び駆動装置25の電気的構成について説明する。
図2に示すように、電動モータ20のコイル24は、例えばu相コイル24u、v相コイル24v及びw相コイル24wを有する三相構造となっている。各コイル24u~24wは例えばY結線されている。
【0029】
インバータ回路31は、u相コイル24uに対応するu相スイッチング素子Qu1,Qu2と、v相コイル24vに対応するv相スイッチング素子Qv1,Qv2と、w相コイル24wに対応するw相スイッチング素子Qw1,Qw2と、を備えている。各スイッチング素子Qu1~Qw2は例えばIGBT等のパワースイッチング素子である。なお、スイッチング素子Qu1~Qw2は、還流ダイオード(ボディダイオード)Du1~Dw2を有している。
【0030】
各u相スイッチング素子Qu1,Qu2は接続線を介して互いに直列に接続されており、その接続線はu相コイル24uに接続されている。そして、各u相スイッチング素子Qu1,Qu2の直列接続体は、両接続ラインEL1,EL2に電気的に接続されており、上記直列接続体には、車載用蓄電装置28からの直流電力が入力されている。
【0031】
なお、他のスイッチング素子Qv1,Qv2,Qw1,Qw2については、対応するコイルが異なる点を除いて、u相スイッチング素子Qu1,Qu2と同様の接続態様である。
【0032】
駆動装置25は、各スイッチング素子Qu1~Qw2のスイッチング動作を制御する制御部33を備えている。制御部33は、例えば、1つ以上の専用のハードウェア回路、及び/又は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ(制御回路)によって実現することができる。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、例えば各種処理をプロセッサに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ即ちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0033】
制御部33は、コネクタ27を介して空調ECU13と電気的に接続されており、空調ECU13からの指令に基づいて、各スイッチング素子Qu1~Qw2を周期的にON/OFFさせる。詳細には、制御部33は、空調ECU13からの指令に基づいて、各スイッチング素子Qu1~Qw2をパルス幅変調制御(PWM制御)する。より具体的には、制御部33は、キャリア信号(搬送波信号)と指令電圧値信号(比較対象信号)とを用いて、制御信号を生成する。そして、制御部33は、生成された制御信号を用いて各スイッチング素子Qu1~Qw2のON/OFF制御を行うことにより直流電力を交流電力に変換する。
【0034】
ノイズ低減部32は、回路基板29(
図1参照)と、回路基板29に実装されるコモンモードチョークコイル34と、回路基板29に実装されるXコンデンサ35を備えている。平滑コンデンサとしてのXコンデンサ35は、コモンモードチョークコイル34と共にローパスフィルタ回路36を構成する。ローパスフィルタ回路36は、接続ラインEL1,EL2上に設けられている。ローパスフィルタ回路36は、回路的にはコネクタ27とインバータ回路31との間に設けられている。
【0035】
コモンモードチョークコイル34は、両接続ラインEL1,EL2上に設けられている。
Xコンデンサ35は、コモンモードチョークコイル34に対して後段(インバータ回路31側)に設けられており、両接続ラインEL1,EL2に電気的に接続されている。コモンモードチョークコイル34とXコンデンサ35とによってLC共振回路が構成されている。即ち、本実施形態のローパスフィルタ回路36は、コモンモードチョークコイル34を含むLC共振回路である。
【0036】
両Yコンデンサ37,38は、互いに直列に接続されている。詳細には、駆動装置25は、第1Yコンデンサ37の一端と第2Yコンデンサ38の一端とを接続するバイパスラインEL3を備えている。当該バイパスラインEL3は車両のボディに接地されている。
【0037】
また、両Yコンデンサ37,38の直列接続体が、コモンモードチョークコイル34とXコンデンサ35との間に設けられており、コモンモードチョークコイル34に電気的に接続されている。第1Yコンデンサ37の上記一端とは反対側の他端は、第1接続ラインEL1、詳細には第1接続ラインEL1のうちコモンモードチョークコイル34の第1の巻線とインバータ回路31とを接続する部分に接続されている。第2Yコンデンサ38における上記一端とは反対側の他端は、第2接続ラインEL2、詳細には第2接続ラインEL2のうちコモンモードチョークコイル34の第2の巻線とインバータ回路31とを接続する部分に接続されている。
【0038】
車両には、車載用機器として例えばPCU(パワーコントロールユニット)39が、駆動装置25とは別に搭載されている。PCU39は、車載用蓄電装置28から供給される直流電力を用いて、車両に搭載されている走行用モータ等を駆動させる。即ち、本実施形態では、PCU39と駆動装置25とは、車載用蓄電装置28に対して並列に接続されており、車載用蓄電装置28は、PCU39と駆動装置25とで共用されている。
【0039】
PCU39は、例えば、昇圧スイッチング素子を有し且つ当該昇圧スイッチング素子を周期的にON/OFFさせることにより車載用蓄電装置28の直流電力を昇圧させる昇圧コンバータ40と、車載用蓄電装置28に並列に接続された電源用コンデンサ41とを備えている。また、図示は省略するが、PCU39は、昇圧コンバータ40によって昇圧された直流電力を、走行用モータが駆動可能な駆動電力に変換する走行用インバータを備えている。
【0040】
【0041】
なお、図面において、3軸直交座標を規定しており、
図1の回転軸18の軸線方向をZ方向とし、Z方向に直交する方向をX,Y方向としている。
図3(a),(b),(c)、
図4、
図5に示すように、コモンモードチョークコイル34は、環状のコア50と、コアケース60と、第1の巻線70と、第2の巻線71と、ホルダ80と、を備える。コア50を収容したコアケース60に巻線70,71が巻回された状態で使用される。第1の巻線70と第2の巻線71とにより、コアケース60に巻回されるとともに、両端が回路基板29に、はんだ付けされる一対の巻線が構成されている。
【0042】
図3(a),(b),(c)、
図4に示すように、回路基板29は、回路基板29を貫通するとともに底壁部15aに立設したボス120に螺入するネジ121により吸入ハウジング15の底壁部15aに固定されている。
【0043】
図5に示すように、コア50は、コアケース60の内部に収容される。コア50は、
図4に示すように断面四角形状をなし、
図5に示すX-Y平面において全体として略長方形状の環状をなしている。コア50は、第1直線部51と第2直線部52を有し、第1直線部51と第2直線部52とは、互いに平行となるようX方向に直線に延びている。コア50は、一対の直線部51,52の一方の先端部同士をつなぐ円弧部53、及び、一対の直線部51,52の他方の先端部同士をつなぐ円弧部54を有する。
【0044】
図6、
図7(a),(b)に示すように、コアケース60は、環状をなし、樹脂製であり、電気絶縁性を有する。コアケース60は、コア50を収容すべく分割タイプであり、上ケース60aと下ケース60bとからなり、Z方向に2分割されている。コアケース60は第1直線部51と第2直線部52を覆うかたちでコア50の外周の殆どを覆っている。
【0045】
コアケース60は、本体部61と、本体部61から延びる平板状の壁部62a,62b,62c,62d,62eとを備える。本体部61は、X-Y平面において全体として略長方形状の環状をなしている。本体部61は、コア50の第1直線部51に対応する第1直線部63と、コア50の第2直線部52に対応する第2直線部64と、コア50の円弧部53に対応する部位65と、コア50の円弧部54に対応する部位66を有する。本体部61は、後述する開口部90,91(
図6参照)を除いて、コア50の全てを覆っている。
【0046】
図6に示すように、本体部61の第1直線部63の外面に、第1の巻線70の少なくとも一部が巻回されている。本体部61の第2直線部64の外面に、第2の巻線71の少なくとも一部が巻回されている。両巻線70,71の巻き方向は、互いに反対方向となっている。また、第1の巻線70と第2の巻線71は離れつつ対向している。
【0047】
壁部62aは、
図7(a)に示すようにX-Y平面において環状の本体部61の中心を通るようにX方向に延在するとともに
図6に示すようにZ方向に延在している。壁部62aは、本体部61の内周面側において、巻線70と巻線71との間に延びるように設けられる。壁部62aにより巻線70と巻線71とが隔てられる。
【0048】
各壁部62b,62c,62d,62eは、
図7(a)に示すようにX-Y平面において環状の本体部61の中心側から外方に向かって放射状に延在するとともに
図6に示すようにZ方向に延在している。
図7(a)において環状の本体部61の周方向において壁部62bに対し反時計回りに順に壁部62c、壁部62d、壁部62eが位置している。
図7(a)に示すように、壁部62bの基部と壁部62eの基部と壁部62aの一端とは繋がっている。壁部62cの基部と壁部62dの基部と壁部62aの他端とは繋がっている。
【0049】
壁部62c,62dは、コア50の円弧部54に対応する部位66において、巻線70と巻線71との間にZ方向に延びるように設けられる。壁部62c,62dにより巻線70と巻線71とが隔てられる。壁部62b,62eは、コア50の円弧部53に対応する部位65において、巻線70と巻線71との間にZ方向に延びるように設けられる。壁部62b,62eにより巻線70と巻線71とが隔てられる。
【0050】
第1の巻線70は、コアケース60の本体部61における壁部62bと壁部62cとの間に巻回されている。第2の巻線71は、コアケース60の本体部61における壁部62dと壁部62eとの間に巻回されている。即ち、コアケース60の本体部61において壁部62cと壁部62dとの間、及び、壁部62eと壁部62bとの間には巻線70,71が巻回されていない。
【0051】
図3(a),(b),(c)、
図4に示すように、第1の巻線70は、両端70eが回路基板29の貫通孔(スルーホール)を通して回路基板29から突出した状態で回路基板29に、はんだ付けされている。第2の巻線71は、第1の巻線70から離れつつ対向しており、両端71eが回路基板29の貫通孔(スルーホール)を通して回路基板29から突出した状態で回路基板29に、はんだ付けされている。
【0052】
巻線70の両端70e及び巻線71の両端71eは、それぞれ、はんだ付けにより回路基板29に形成された導体パターンと電気的に接続される。
図4に示すように、巻線70,71における吸入ハウジング15の底壁部15aとの対向面には放熱グリス130が配置されている。これにより、コモンモードチョークコイル34は、吸入ハウジング15ひいてはハウジング14に熱的に結合している。
【0053】
図3(a),(b),(c)、
図4に示すように、ホルダ80は、樹脂製であり、電気絶縁性を有する。ホルダ80は複数の取付部85を有し、取付部85を貫通するとともに底壁部15aに立設したボス122に螺入するネジ123により吸入ハウジング15の底壁部15aに固定されている。ホルダ80は、ハウジング14に固定されるとともにコモンモードチョークコイル34を収容する。ホルダ80は、回路基板29とコアケース60との間に挟まれるように配置される。詳しくは、回路基板29は、X-Y平面に配置され、コアケース60は回路基板29とはZ方向に離間して配置され、Z方向において回路基板29とコアケース60との間にホルダ80が配置される。ホルダ80は、隔壁部81と、四角枠部82を有する。隔壁部81は、回路基板29と第1の巻線70との間、及び、回路基板29と第2の巻線71との間に配置される。隔壁部81は、長方形をなし、X-Y平面に延びる平板状をなしている。
【0054】
枠部82は、隔壁部81の外周縁から屈曲してZ方向に延びている。隔壁部81には巻線70,71の端部が通る貫通孔83(
図5参照)が形成されている。
ホルダ80は、コア50における回路基板29に対向する部位、コアケース60における回路基板29に対向する部位、第1の巻線70における回路基板29に対向する部位、及び、第2の巻線71における回路基板29に対向する部位を覆うように配置されている。
【0055】
図6、
図7(a),(b)に示すように、コア50の円弧部53に対応する部位65には開口部90が形成されている。コア50の円弧部54に対応する部位66には開口部91が形成されている。よって、コアケース60は、周方向での一対の巻線70,71の間に形成された開口部90,91を有する。詳しくは、開口部90は、コアケース60の本体部61における壁部62eと壁部62bとの間の巻線70,71が巻回されていない部位に設けられている。開口部91は、コアケース60の本体部61における壁部62cと壁部62dとの間の巻線70,71が巻回されていない部位に設けられている。
【0056】
コア50は開口部90から露出した露出部100、及び、開口部91から露出した露出部101を有する。
図4に示すように、コア50は、開口部90,91を介してホルダ80と接着剤110,111で固定されている。コア50は、コアの露出部100とホルダ80とが接着剤110で固定されているとともに、コアの露出部101とホルダ80とが接着剤111で固定されている。また、接着剤110,111によりホルダ80とコアケース60とが固定されている。
【0057】
また、
図4、
図6に示すように、コアケース60の一対の壁部62b,62eは、ホルダ80に向けて立設するとともに開口部90を周方向に挟んでいる。コアケース60の一対の壁部62c,62dは、ホルダ80に向けて立設するとともに開口部91を周方向に挟んでいる。接着剤110,111は、一対の壁部62b,62e及び一対の壁部62c,62dに挟まれた領域に配置されている。一対の壁部62b,62e及び一対の壁部62c,62dがホルダ80に当接することにより、一対の巻線70,71とホルダ80との間に空隙Sp1及び空隙Sp2が形成される。詳しくは、ホルダ80の隔壁部81と枠部82と一対の壁部62b,62eを用いて空隙Sp1が形成されるとともに、ホルダ80の隔壁部81と枠部82と一対の壁部62c,62dを用いて空隙Sp2が形成される。この空隙Sp1に接着剤110が配置されるとともに空隙Sp2に接着剤111が配置される。
【0058】
また、
図4に示すように、コモンモードチョークコイル34と底壁部15aとの間が接着剤131,132で固定されている。
製造の際には次のようにする。
【0059】
図6に示すように、コアケース60内にコア50を収納するとともに第1の巻線70及び第2の巻線71を巻回した状態から、
図9(a),(b)に示すように、ホルダ80に対して、コア50、コアケース60、巻線70,71の組立体を固定する。
【0060】
このとき、
図8に示すように、ホルダ80の内面の端部に硬化前の接着剤110a,111aを配置しておく。そして、ホルダ80に対し、コア50、コアケース60、巻線70,71の組立体を挿入するとともにホルダ80の貫通孔83に巻線70の両端70e及び巻線71の両端71eを通す。
【0061】
この状態で、接着剤110a,111aを硬化させる。これにより、
図10に示すように、接着剤110,111によりホルダ80とコア50とコアケース60とが固定される。
【0062】
さらに、
図4に示すように第1の巻線70の両端70e及び第2の巻線71の両端71eを回路基板29の貫通孔に貫通するように挿入する。そして、はんだ付けにより回路基板29から突出している第1の巻線70の両端70e及び第2の巻線71の両端71eを回路基板29に、はんだ付けする。
【0063】
次に、作用について説明する。
コモンモードチョークコイル34で発生した熱は、コモンモードチョークコイル34が底壁部15aに熱的に接合されているので、底壁部15aに逃がされる。よって、コモンモードチョークコイル34において発生する熱が放熱グリス130を通して逃がされ、放熱面への放熱性に優れたものとなる。
【0064】
コアケース60は上ケース60aと下ケース60bとが爪等で結合されており、コア50はコアケース60で挟み込まれているだけでコア50とコアケース60の間には隙間が空いている。そのため、車両の振動によりコア50とコアケース60の間においてコア50が動いてしまう。すると、回路基板29と巻線70,71の、はんだ付け部に応力が加わり、リード折損のリスクが高まる。
【0065】
また、コア50の変位を抑制すべくホルダでハウジングに固定するには、接着剤の量を多くする必要があり、生産性が良くない。つまり、コアケース60とホルダ80間を接着剤固定する場合にコア50まで接着しようとすると接着剤の量が多く必要となる。
【0066】
本実施形態においては、接着剤でコア50を固定することとし、コア50を取り囲んでいるコアケース60の一部を切り欠いてコア50の一部を露出させてハウジングに固定されるホルダ80とコア50を接着剤で固定し、ホルダ80、コア50の相対的な変位がなくなり、コア50とコアケース60ががたつくことを防止して、巻線70,71のコア移動抑制による耐振性向上を図ることができる。つまり、コア50をホルダ80で直接固定できる構成とし、衝撃荷重の発生を抑制する。リード等が来ない、絶縁が不要な箇所にてコアケース60からコア50を露出させ、コア50をホルダ80に接着剤で固定し、また、コアケース60も同様に固定することで、衝撃荷重の発生を抑制することができる。
【0067】
このように、耐振性の向上が図られるとともに、接着剤の量を抑えられコスト低減が図られる。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0068】
(1)車載用電動圧縮機11の構成として、流体を圧縮する圧縮部19と、圧縮部19を駆動する電動モータ20と、電動モータ20を駆動するインバータ装置30と、インバータ装置30を内部に収容するハウジング14と、を備える。インバータ装置30は、回路基板29と、回路基板29に実装されるチョークコイルとしてのコモンモードチョークコイル34と、を備える。コモンモードチョークコイル34は、環状のコア50と、電気絶縁性を有し、コア50を覆う環状のコアケース60と、コアケース60に巻回される一対の巻線70,71と、電気絶縁性を有し、ハウジング14に固定されるとともにコモンモードチョークコイル34を収容するホルダ80と、を備える。コアケース60は、周方向での一対の巻線70,71の間に形成された開口部90,91を有し、コア50は開口部90,91を介してホルダ80と接着剤110,111で固定されている。よって、コモンモードチョークコイル34におけるコア50の移動を抑制して耐振性向上を図ることができる。また、コイルの電気的特性の安定化を図ることもできる。
【0069】
(2)コアケース60は、ホルダ80に向けて立設するとともに開口部90,91を周方向に挟む一対の壁部62b,62e及び一対の壁部62c,62dを有し、接着剤110,111は、一対の壁部62b,62e及び一対の壁部62c,62dに挟まれた領域に配置され、一対の壁部62b,62e及び一対の壁部62c,62dがホルダ80に当接することにより、一対の巻線70,71とホルダ80との間に空隙Sp1,Sp2が形成される。この場合、絶縁性を保ちつつ接着剤の量を少なくできる。さらには空隙Sp1,Sp2を設けることにより巻線70,71の冷却効果が得られる。
【0070】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○接着剤の硬化は時間により行っても加温により行ってもよく、要は、硬化させることにより接着機能を持たせればよい。
【符号の説明】
【0071】
11…車載用電動圧縮機、14…ハウジング、19…圧縮部、20…電動モータ、29…回路基板、30…インバータ装置、34…コモンモードチョークコイル、50…コア、60…コアケース、62b,62e…一対の壁部、62c,62d…一対の壁部、70,71…一対の巻線、70e…両端、71e…両端、80…ホルダ、90,91…開口部、100,101…露出部、110,111…接着剤、Sp1,Sp2…空隙。