IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧 ▶ 株式会社日本自動車部品総合研究所の特許一覧

<>
  • 特許-遠心送風機 図1
  • 特許-遠心送風機 図2
  • 特許-遠心送風機 図3
  • 特許-遠心送風機 図4
  • 特許-遠心送風機 図5
  • 特許-遠心送風機 図6
  • 特許-遠心送風機 図7
  • 特許-遠心送風機 図8
  • 特許-遠心送風機 図9
  • 特許-遠心送風機 図10
  • 特許-遠心送風機 図11
  • 特許-遠心送風機 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】遠心送風機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/44 20060101AFI20230905BHJP
【FI】
F04D29/44 R
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020081516
(22)【出願日】2020-05-01
(65)【公開番号】P2021175892
(43)【公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 功治
(72)【発明者】
【氏名】駒田 千秋
(72)【発明者】
【氏名】今東 昇一
(72)【発明者】
【氏名】吉野 悦郎
(72)【発明者】
【氏名】武内 康浩
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/016198(WO,A1)
【文献】特開2017-096224(JP,A)
【文献】特開2007-291877(JP,A)
【文献】特開2005-201095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心送風機であって、
ファン軸心(CL)を中心に回転することによって空気を吹き出す遠心ファン(20)と、
前記遠心ファンを収容するケーシング(10)とを備え、
前記ケーシングは、
前記遠心ファンが吸い込む空気が通過する空気吸入口(111)が形成されとともに、前記ファン軸心の軸心方向における前記遠心ファンの一方側を覆う第1カバー部(11)と、
前記軸心方向における前記遠心ファンの他方側を覆う第2カバー部(12)と、
前記第1カバー部と前記第2カバー部との隙間を維持する少なくとも1つの支柱(13)とを有し、
前記第1カバー部および前記第2カバー部は、前記第1カバー部における前記第2カバー部に対向する第1カバー面(112)のうち前記遠心ファンより前記ファン軸心の径方向の外側に張り出した部位と、前記第2カバー部における前記第1カバー部に対向する第2カバー面(123)のうち前記遠心ファンより前記径方向の外側に張り出した部位との隙間に前記遠心ファンが吹き出す空気が流れる通風路(15)を形成するとともに、前記第1カバー面の外縁部および前記第2カバー面の外縁部によって、前記遠心ファンが吹き出す空気を前記ケーシングの全周に亘って吹き出す吹出口(16)を形成し、
前記支柱は、前記通風路において、前記遠心ファンより前記径方向の外側に設けられ、
前記第1カバー面および前記第2カバー面のうち少なくとも一方のカバー面は、前記支柱が設けられた部位より前記ファン軸心の周方向における空気流れ上流側に、前記周方向における空気流れ上流側から下流側に向かって前記通風路の前記軸心方向における大きさを徐々に大きくする傾斜部(115、125)を有し、
前記傾斜部は、前記周方向に対して傾斜している遠心送風機。
【請求項2】
前記第1カバー面および前記第2カバー面のうち前記傾斜部が形成されているカバー面は、前記径方向の内側から外側に向かって前記通風路の前記軸心方向における大きさを徐々に大きくする拡張部(116、126)を有し、
前記拡張部は、前記傾斜部に連なるとともに、前記径方向に対して傾斜している請求項1に記載の遠心送風機。
【請求項3】
前記支柱は、前記周方向に複数並んで設けられており、複数の前記支柱のうち、所定の支柱を一方の支柱とし、前記所定の支柱に隣接する支柱のうち、前記所定の支柱より空気流れ下流側に設けられた支柱を他方の支柱としたとき、
前記第1カバー面および前記第2カバー面のうち前記傾斜部が形成されているカバー面は、前記一方の支柱および前記他方の支柱を支持する座面(114、124)を有し、
前記傾斜部は、前記一方の支柱が設けられる前記座面から前記他方の支柱が設けられる前記座面に至る範囲を含んでいる請求項1または2に記載の遠心送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠心送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上ケーシングおよび下ケーシングを有するケーシングと、上ケーシングと下ケーシングとの間に回転自在に収容されたインペラとを備え、ケーシングの側面の略全周から空気を吹き出す遠心送風機が知られている(例えば、特許文献1参照)。上ケーシングおよび下ケーシングは、インペラよりインペラの径方向外側に配置された複数の支柱によって支持されており、上ケーシングと下ケーシングとの間に通風路を形成している。なお、以下の説明において、インペラを遠心ファンと呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-96224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の遠心送風機では、通風路を流れる際に、上ケーシングの下面および下ケーシングの上面と空気との間に発生する摩擦によって、圧力損失が発生する。また、特許文献1に記載の遠心送風機では、遠心ファンから吹き出された空気が通風路を流れる際に支柱に衝突し、圧力損失が発生する。これらの圧力損失は、遠心送風機のファン効率の悪化の要因となる。
【0005】
また、摩擦によって発生する圧力損失および支柱との衝突によって発生する圧力損失は、通風路を流れる空気の圧力成分である全圧である動圧および静圧の合計のうち、運動エネルギである動圧が大きいほど大きくなる。そして、圧力損失が大きいほどファン効率は悪化する。ファン効率は、遠心ファンを回転させるために必要な回転駆動力に対する理論空気動力の比である。駆動力は、遠心ファンを回転させる軸動力である。理論空気動力は、遠心送風機が出力した仕事量に相当する値である。
【0006】
本開示は、圧力損失を抑制し、ファン効率を向上可能な遠心送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
遠心送風機であって、
ファン軸心(CL)を中心に回転することによって空気を吹き出す遠心ファン(20)と、
遠心ファンを収容するケーシング(10)とを備え、
ケーシングは、
遠心ファンが吸い込む空気が通過する空気吸入口(111)が形成されとともに、ファン軸心の軸心方向における遠心ファンの一方側を覆う第1カバー部(11)と、
軸心方向における遠心ファンの他方側を覆う第2カバー部(12)と、
第1カバー部と第2カバー部との隙間を維持する少なくとも1つの支柱(13)とを有し、
第1カバー部および第2カバー部は、第1カバー部における第2カバー部に対向する第1カバー面(112)のうち遠心ファンよりファン軸心の径方向の外側に張り出した部位と、第2カバー部における第1カバー部に対向する第2カバー面(123)のうち遠心ファンより径方向の外側に張り出した部位との隙間に遠心ファンが吹き出す空気が流れる通風路(15)を形成するとともに、第1カバー面の外縁部および第2カバー面の外縁部によって、遠心ファンが吹き出す空気をケーシングの全周に亘って吹き出す吹出口(16)を形成し、
支柱は、通風路において、遠心ファンより径方向の外側に設けられ、
第1カバー面および第2カバー面のうち少なくとも一方のカバー面は、支柱が設けられた部位よりファン軸心の周方向における空気流れ上流側に、周方向における空気流れ上流側から下流側に向かって通風路の軸心方向における大きさを徐々に大きくする傾斜部(115、125)を有し、
傾斜部は、前記周方向に対して傾斜している。
【0008】
これによれば、傾斜部によって、通風路における支柱に向かって周方向に空気が流れる部位の周方向に直交する面の断面積を空気流れ下流側に向かって大きくすることができる。そして、空気が通風路を支柱に向かって流れる際に、通風路の断面積の拡張にともない発生する空気の動圧から静圧への変換が行われるので、空気の全圧のうち動圧を小さくできる。したがって、通風路を流れる際に第1カバー面および第2カバー面との間に生じる摩擦および支柱との衝突によって発生する圧力損失を抑制し、遠心送風機のファン効率を向上させることができる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る遠心送風機の分解斜視図である。
図2】一実施形態に係る遠心送風機の斜視図である。
図3】一実施形態に係る遠心送風機の側面図である。
図4図2のIV-IV断面図である。
図5図2のV-V断面図である。
図6】遠心送風機の第2カバー部に形成された第2傾斜部および第2拡張部の近傍を示した部分拡大斜視図である。
図7】一実施形態の遠心送風機および比較例の遠心送風機の流量係数と圧力係数との関係を示す図である。
図8】一実施形態の遠心送風機および比較例の遠心送風機の流量係数とファン効率との関係を示す図である。
図9】比較例の遠心送風機から吹き出された空気の流れる方向および到達距離を矢印で示した模式図である。
図10】一実施形態に係る遠心送風機から吹き出された空気の流れる方向および到達距離を矢印で示した模式図である。
図11】他の実施形態に係る遠心送風機の分解斜視図である。
図12】他の実施形態に係る遠心送風機の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の一実施形態について図1図10を参照して説明する。遠心送風機1は、図1に示すように、遠心送風機1の筐体であるケーシング10と、ファン軸心CLを中心に回転することによって空気を吹き出す遠心ファン20と、遠心ファン20を回転させる電動モータ30とを備えている。なお、本実施形態では、ファン軸心CLに沿う方向を軸心方向DRa、軸心方向DRaに直交し、且つ、ファン軸心CLから放射状に延びる方向を径方向DRr、遠心ファン20の回転方向を周方向DRcとして遠心送風機1の各種構成等を説明する。
【0012】
ケーシング10は、樹脂で形成されており、遠心ファン20と電動モータ30とを収容している。ケーシング10は、軸心方向DRaにおける遠心ファン20の一方側を覆う第1カバー部11と、軸心方向DRaにおける遠心ファン20の他方側を覆う第2カバー部12と、第1カバー部11および第2カバー部12の隙間を維持する4つの支柱13とを有する。ケーシング10は、第1カバー部11および第2カバー部12が、ネジ14によって結合されている。
【0013】
第1カバー部11は、図2および図3に示すように、略円盤状であって、第1カバー部11の外径が遠心ファン20の外径より大きく形成されている。また、第1カバー部11は、支柱13が設けられるそれぞれの部位が径方向DRr外側に向かって突出している。
【0014】
第1カバー部11の略中央には、第1カバー部11を軸心方向DRaに貫通した空気吸入口111が形成されている。空気吸入口111は、例えば円形に形成されている。空気吸入口111の直径は、遠心ファン20の外径より小さく設定されている。また、第1カバー部11の軸心方向DRaの他方側には、軸心方向DRaにおける遠心ファン20の一方側を覆う第1カバー面112が設けられている。
【0015】
第1カバー面112は、略円環状であって、第1カバー面112の外径が遠心ファン20の外径より大きく形成されている。第1カバー面112は、遠心ファン20より径方向DRr内側の部位が遠心ファン20の一部を覆っている。また、第1カバー面112は、遠心ファン20より径方向DRr外側に張り出した部位が第2カバー部12に対向している。第1カバー面112のうち遠心ファン20より径方向DRr外側に張り出した部位は、第1カバー部11と第2カバー部12との間に、遠心ファン20から吹き出された空気が流れる後述する通風路15を形成する。
【0016】
第1カバー面112には、図3および図4に示すように、遠心ファン20より径方向DRr外側に張り出した部位に、支柱13が設けられる4つの支柱形成部114が周方向DRcに沿って所定の間隔を空けて並んで設けられている。そして、第1カバー面112は、周方向DRcに並べられた4つの支柱形成部114のそれぞれの間に、後述する第1傾斜部115および後述する第1拡張部116を有する。また、第1カバー面112は、径方向DRr外側の縁に、ケーシング10の外部へ空気を吹き出す後述する吹出口16を形成する外縁部117を有する。以下、第1カバー面112の外縁部117を第1外縁部117と呼ぶ。
【0017】
支柱形成部114のそれぞれは、第1カバー面112のうち、遠心ファン20より径方向DRr外側に張り出した部位に形成されている。支柱形成部114は、径方向DRrに沿って延びる平面状に形成されている。4つの支柱形成部114のそれぞれには、支柱13が設けられている。
【0018】
4つの支柱13のそれぞれは、第1カバー面112から第2カバー部12に向かって、軸心方向DRaに沿って突出している。支柱13は、軸心方向DRaと平行な中心軸を有する円柱形状である。4つの支柱13は、第1カバー面112において、ファン軸心CLを中心に周方向DRcに均等なピッチで並んで配置されている。具体的に、4つの支柱13は、第1カバー面112において、ファン軸心CLを中心として、90°ピッチで設けられている。また、支柱13のそれぞれの内側には第1カバー部11と第2カバー部12とを結合させるネジ14が挿通される図示しないネジ穴が形成されている。
【0019】
図1に示すように、第2カバー部12は、第1カバー部11と対を成す略円盤状であって、第2カバー部12の外径が第1カバー部11の外径と略同じ大きさで形成されている。すなわち、第2カバー部12の外径は、遠心ファン20の外径より大きい。第2カバー部12は、モータ収容部121と、ネジ14が挿通される貫通穴122と、第1カバー面112に対向する第2カバー面123を有する。第2カバー部12は、貫通穴122が形成される部位が径方向DRr外側に向かって突出している。
【0020】
モータ収容部121は、軸心方向DRaの他方側に向かって凹んで形成されており、電動モータ30を収容している。貫通穴122は、4つの支柱13に対向する部位それぞれに形成されている。貫通穴122には、支柱13のネジ穴に挿通されるネジ14が挿通される。
【0021】
第2カバー面123は、図2および図3に示すように、外径が第1カバー面112と略同じ形状で形成されており、第2カバー面123の外径が遠心ファン20の外径より大きく形成されている。第2カバー面123の遠心ファン20より径方向DRr外側に張り出した部位は、第1カバー面112における遠心ファン20より径方向DRr外側に張り出した部位に対向している。第2カバー面123のうち第1カバー面112に対向する部位は、第1カバー面112と対になることで、後述する通風路15を形成する。
【0022】
第2カバー面123には、4つの支柱形成部114のそれぞれに対向する部位に、貫通穴122が設けられる穴形成部124が周方向DRcに並んで設けられている。4つの穴形成部124のそれぞれは、径方向DRrに沿って延びており、対向する支柱形成部114と互いに平行となるように形成されている。
【0023】
また、第2カバー面123は、周方向DRcに並べられた4つの穴形成部124のそれぞれの間に、後述する第2傾斜部125と、後述する第2拡張部126を有する。また、第2カバー面123は、径方向DRr外側の縁に、後述する吹出口16を形成する外縁部127を有する。以下、第2カバー面123の外縁部127を第2外縁部127と呼ぶ。
【0024】
本実施形態では、支柱形成部114および穴形成部124が、支柱13を支持する座面に相当する。また、第1傾斜部115および第2傾斜部125が、周方向DRcにおける空気流れ上流側から下流側に向かって通風路15の軸心方向DRaにおける大きさを徐々に大きくする傾斜部に相当する。そして、第1拡張部116および第2拡張部126が、径方向DRrの内側から外側に向かって通風路15の軸心方向DRaにおける大きさを徐々に大きくする拡張部に相当する。第1傾斜部115、第2傾斜部125、第1拡張部116、第2拡張部126の形状の詳細については後述する。
【0025】
通風路15は、第1カバー面112と第2カバー面123との隙間によって形成されている。具体的に、通風路15は、第1カバー面112の遠心ファン20より径方向DRr外側に張り出した部位と第2カバー面123の遠心ファン20より径方向DRr外側に張り出した部位との隙間によって形成されている。通風路15には、4つの支柱13が設けられている。
【0026】
吹出口16は、第1外縁部117および第2外縁部127によって、ケーシング10の側面の全周に亘って形成されている。
【0027】
ここで、4つの支柱13のそれぞれは、通風路15において、遠心ファン20より径方向DRr外側であって、吹出口16より径方向DRr内側に設けられている。このため、吹出口16のうち、4つの支柱13が設けられている箇所の空気流れ下流側では、ケーシング10からの空気の吹出しが4つの支柱13によって妨げられる。したがって、本実施形態におけるケーシング10の側面の全周に亘って吹出口16が形成されていることとは、ケーシング10の側面の略全周に亘って吹出口16が形成されていることを含む意味である。
【0028】
電動モータ30は、アウターロータ型ブラシレスDCモータで構成されている。電動モータ30は、遠心ファン20に連結されており、図示しない動力源から通電されることにより、遠心ファン20を回転させる。
【0029】
遠心ファン20は、樹脂で形成されており、遠心式多翼ファン、すなわち遠心式送風機の羽根車である。遠心ファン20は、図1図4図5に示すように、ファン軸心CLのまわりに配置された複枚のブレード21と、環状の側板22と、略円錐状の主板23と、空気を吹き出すファン吹出口24とを備えている。本実施形態の遠心ファン20は、ブレード21のそれぞれが、径方向DRrの内側から外側に向かうにしたがい、径方向DRrに沿う直線から遠心ファン20の回転方向と逆方向に離れるように曲線状に形成されるターボファンとして構成されている。なお、図4および図5において、電動モータ30は省略している。
【0030】
遠心ファン20は、ファン軸心CLを中心に回転することで、軸心方向DRaの一方側から空気を吸い込み、遠心ファン20の外周側へ径方向DRrの速度成分および周方向DRcの速度成分を有する空気を吹き出す。遠心ファン20から吹き出された空気は、通風路15を、周方向DRcのうち遠心ファン20の回転方向に流れるとともに、遠心ファン20から離れる方向に流れる。以下、周方向DRcのうち、遠心ファン20が回転する方向である空気の流れる方向を正転方向DRc1、正転方向DRc1に反対の方向を反転方向DRc2と呼ぶ。
【0031】
複数のブレード21のそれぞれは、ファン軸心CLを中心に放射状に配置されており、軸心方向DRaの一方側からから流入した空気がそれぞれのブレード21の間へ流れるように形成されている。側板22の内周側には、空気吸入口111から流入した空気を流入する空気流通孔221が形成されている。側板22には、複数のブレード21それぞれの軸心方向DRaの一方側の端部が接合されている。主板23には、複数のブレード21それぞれの軸心方向DRaの他方側の端部が接合されている。すなわち、側板22および主板23は、複数枚のブレード21の各々を介して連結されている。主板23には、電動モータ30が接続されている。
【0032】
また、側板22および主板23のそれぞれの外縁部は、複数のブレード21の間に流入した空気を吹き出すファン吹出口24を形成している。ここで、第1カバー面112における通風路15を形成する部位の径方向DRrにおける最も内側の部位を第1内縁部118、第2カバー面123における通風路15を形成する部位の径方向DRrにおける最も内側の部位を第2内縁部128とする。図5に示すように、ファン吹出口24の軸心方向DRaの大きさhは、第1内縁部118と第2内縁部128との距離d1と略同じ大きさに設定されている。
【0033】
続いて、第1傾斜部115、第1拡張部116、第2傾斜部125、第2拡張部126について図3図4図6を参照して説明する。第1傾斜部115は、4つの支柱形成部114のそれぞれの間に設けられており、第2傾斜部125に対向している。第1拡張部116は、4つの支柱形成部114のそれぞれの間に設けられており、第2拡張部126に対向している。また、第2傾斜部125および第2拡張部126は、4つの穴形成部124のそれぞれの間に設けられている。換言すれば、第1傾斜部115、第1拡張部116、第2傾斜部125、第2拡張部126は、4つの支柱13が設けられている部位それぞれの間に設けられている。第1傾斜部115および第2傾斜部125は、周方向DRcに対して傾斜している。第1拡張部116および第2拡張部126は、図4に示すように、径方向DRrに対して傾斜している。
【0034】
ここで、4つの第1傾斜部115および4つの第2傾斜部125は、それぞれの基本的な構造が同じである。また、4つの第1拡張部116および4つの第2拡張部126は、それぞれの基本的な構造が同じである。
【0035】
このため、本実施形態では、4つの第2傾斜部125のうち、互いに隣接する穴形成部124aと穴形成部124bとの間に設けられた第2傾斜部125aと、4つの第1傾斜部115のうち、第2傾斜部125aに対向する第1傾斜部115aとの詳細を説明する。そして、第2傾斜部125a以外の第2傾斜部125および第1傾斜部115a以外の第1傾斜部115の詳細な説明を省略する。
【0036】
また、本実施形態では、4つの第2拡張部126のうち、互いに隣接する穴形成部124aと穴形成部124bとの間に設けられた第2拡張部126aと、4つの第1拡張部116のうち、第2拡張部126aに対向する第1拡張部116aとの詳細を説明する。そして、第2拡張部126a以外の第2拡張部126および第1拡張部116a以外の第1拡張部116の詳細な説明を省略する。
【0037】
なお、図3に示すように、穴形成部124aは、穴形成部124bより反転方向DRc2側に設けられている。また、第1傾斜部115aおよび第1拡張部116aは、穴形成部124aに対向する支柱形成部114aと穴形成部124bに対向する支柱形成部114bとの間に設けられている。また、支柱形成部114aには、支柱13aが設けられている。支柱形成部114bには、支柱13aより正転方向DRc1側に設けられた支柱13bが設けられている。
【0038】
図6に示すように、第2傾斜部125aは、穴形成部124aと穴形成部124bとの間のうち、所定の範囲内に形成されている。第2傾斜部125aは、反転方向DRc2側から正転方向DRc1側に向かうにしたがい通風路15の軸心方向DRaにおける大きさが徐々に大きくなるように傾斜している。第2傾斜部125aは、軸心方向DRaの他方側に傾斜している。
【0039】
ここで、支柱形成部114aおよび穴形成部124aの軸心方向DRaにおける中心を通り、支柱形成部114aおよび穴形成部124aに平行な面を仮想中心面とする。第2傾斜部125aは、穴形成部124aから穴形成部124bに近づくにしたがい、軸心方向DRaにおける仮想中心面からの距離が連続して大きくなっている。
【0040】
換言すれば、通風路15のうち支柱13aと支柱13bとの間において、周方向DRcにおける空気流れ下流側になるほど周方向DRcに直交する面の断面積が連続して大きくなるように、第2傾斜部125aは、周方向DRcに対して傾斜している。
【0041】
第2傾斜部125aの反転方向DRc2側の端部は、穴形成部124aに連なっている。また、第2傾斜部125aの正転方向DRc1側の端部は、穴形成部124bに連なっている。
【0042】
本実施形態では、第2傾斜部125aは、穴形成部124aから穴形成部124bに至るまでの範囲に形成されている。換言すれば、第2傾斜部125aは、支柱13aが設けられた部位より空気流れ下流側の直後から支柱13bが設けられた部位より空気流れ上流側の直前までの範囲に形成されている。
【0043】
第2傾斜部125aは、穴形成部124aに連なる部位、すなわち、反転方向DRc2側の端部が、第2内縁部128から第2外縁部127までの全範囲に形成されている。また、第2傾斜部125aは、穴形成部124aから穴形成部124bまでの範囲における反転方向DRc2側の略半分の部位が、第2内縁部128から第2外縁部127までの全範囲に形成されている。そして、第2傾斜部125aは、穴形成部124aから穴形成部124bまでの範囲における正転方向DRc1側の略半分の部位が、第2内縁部128から第2外縁部127までの範囲より小さい範囲に形成されている。
【0044】
具体的に、第2傾斜部125aの正転方向DRc1側の略半分の部位は、径方向DRrにおける内側の端部が第2内縁部128から離れており、反転方向DRc2側から正転方向DRc1側に向かうにしたがい径方向DRrの大きさが連続して小さくなっている。第2傾斜部125aの正転方向DRc1側の略半分の部位は、反転方向DRc2側から正転方向DRc1側に向かうにしたがい第2傾斜部125aの径方向DRrにおける内側の端部と第2内縁部128との距離が連続して大きくなっている。第2傾斜部125aは、径方向DRrにおける内側の端部のうち、第2内縁部128から離れている部位に第2拡張部126aが連なっている。
【0045】
第2拡張部126aは、第2内縁部128から第2外縁部127に近づくにしたがい、通風路15の軸心方向DRaにおける大きさが徐々に大きくなるように傾斜している。第2拡張部126aは、軸心方向DRaにおける他方側に傾斜している。すなわち、第2拡張部126aは、軸心方向DRaにおける仮想中心面からの距離が第2内縁部128から第2外縁部127に近づくにしたがい連続して大きくなっている。
【0046】
換言すれば、通風路15の径方向DRrに直交する面の断面積が通風路15の径方向DRrの最も内側の部位から吹出口16に近づくにしたがい連続して大きくなるように、第2拡張部126aは、径方向DRrに対して傾斜している。第2拡張部126aは、径方向DRrにおける内側の端部が第2内縁部128に連なっており、径方向DRrにおける外側の端部が第2傾斜部125aに連なっている。
【0047】
また、第2拡張部126aは、穴形成部124aから穴形成部124bまでの範囲のうちの正転方向DRc1側の略半分の範囲に形成されている。第2拡張部126aは、径方向DRrにおける外側の端部と第2内縁部128との距離が反転方向DRc2側から正転方向DRc1側に向かうにしたがい連続して大きくなっている。すなわち、第2拡張部126aは、径方向DRrの大きさが反転方向DRc2側から正転方向DRc1側に向かうにしたがい連続して大きくなっている。
【0048】
第2拡張部126aは、正転方向DRc1側の端部が穴形成部124bに連なっている。第2拡張部126aは、穴形成部124bに連なる部位、すなわち、正転方向DRc1側の端部が、第2内縁部128から第2外縁部127までの全範囲に形成されている。
【0049】
第2拡張部126aの反転方向DRc2側の端部は、第2傾斜部125aの反転方向DRc2側の端部より正転方向DRc1側であって、第2傾斜部125aの正転方向DRc1側の端部より反転方向DRc2側に設けられている。穴形成部124aから穴形成部124bまでの範囲において、第2傾斜部125aが設けられている範囲は、第2拡張部126aが設けられている範囲よりも大きい。
【0050】
第2傾斜部125aは、仮想中心面を基準に、第1傾斜部115aと対称的な構成となっている。第2拡張部126aは、仮想中心面を基準に、第1拡張部116aと対称的な構成となっている。
【0051】
すなわち、第1傾斜部115aは、支柱形成部114aから支柱形成部114bに至るまでの範囲に形成されている。また、第1傾斜部115aは、支柱形成部114aから支柱形成部114に近づくにしたがい通風路15の軸心方向DRaにおける大きさが徐々に大きくなるように、軸心方向DRaの一方側に傾斜している。換言すれば、通風路15のうち支柱13aと支柱13bとの間において、周方向DRcにおける空気流れ下流側になるほど周方向DRcに直交する面の断面積が連続して大きくなるように、第1傾斜部115aは、周方向DRcに対して傾斜している。
【0052】
第1拡張部116aは、第1傾斜部115aに連なっており、支柱形成部114aから支柱形成部114bまでの範囲のうちの正転方向DRc1側の略半分の範囲に形成されている。また、第1拡張部116aは、第1内縁部118から第1外縁部117に近づくにしたがい、通風路15の軸心方向DRaにおける大きさが徐々に大きくなるように、軸心方向DRaにおける一方側に傾斜している。換言すれば、通風路15の径方向DRrに直交する面の断面積が通風路15の径方向DRrの最も内側の部位から吹出口16に近づくにしたがい連続して大きくなるように、第1拡張部116aは、径方向DRrに対して傾斜している。
【0053】
これにより、通風路15のうち第1傾斜部115aおよび第2傾斜部125aの間の流路は、周方向DRcにおける空気流れ下流側になるほど軸心方向DRaの大きさが大きくなる。例えば、図4に示すように、吹出口16における第1傾斜部115aおよび第2傾斜部125aが形成されている部位の軸心方向DRaの大きさd2は、通風路15の径方向DRrにおける最も内側の部位の軸心方向DRaの大きさd1より大きい。
【0054】
そして、通風路15のうち第1傾斜部115aおよび第2傾斜部125aの間の流路の周方向DRcに直交する面の断面積は、周方向DRcにおける空気流れ下流側になるほど大きくなる。換言すれば、支柱13aと支柱13bとの間の通風路15は、支柱13aから支柱13bに近づくにしたがい周方向DRcに直交する面の断面積が大きくなる。
【0055】
また、通風路15のうち第1拡張部116aおよび第2拡張部126aの間の流路は、径方向DRrにおける空気流れ下流側になるほど軸心方向DRaの大きさが大きくなる。例えば、図4に示すように、吹出口16における第1拡張部116aおよび第2拡張部126aが形成されている部位の軸心方向DRaの大きさd2は、通風路15の径方向DRrにおける最も内側の部位の軸心方向DRaの大きさd1より大きい。
【0056】
そして、通風路15のうち第1拡張部116aおよび第2拡張部126aの間の流路の径方向DRrに直交する面の断面積は、径方向DRrにおける空気流れ下流側になるほど大きくなる。換言すれば、支柱13aと支柱13bとの間の通風路15は、通風路15の径方向DRrにおける最も内側の部位から吹出口16に近づくにしたがい径方向DRrに直交する面の断面積が大きくなる。
【0057】
次に、本実施形態の遠心送風機1の作動について説明する。本実施形態の遠心送風機1は、電動モータ30が駆動されると、遠心ファン20が回転する。これにより、空気吸入口111から流入した空気が空気流通孔221から吸い込まれ、回転する複数のブレード21から運動エネルギである動圧が与えられてファン吹出口24から吹き出される。ファン吹出口24から吹き出された空気は、通風路15を正転方向DRc1および遠心ファン20から離れる方向に流通する。また、通風路15を流れる空気は、支柱13に衝突することによって、支柱13の空気流れ下流側の流れが抑制される。このため、遠心送風機1は、ファン吹出口24から吹き出された空気を4つの支柱13のそれぞれの間を通過させて吹出口16から吹き出す。
【0058】
ところで、ファン吹出口24から吹き出された直後における空気は、圧力成分である全圧のうち略全てが動圧で占められている。しかし、ファン吹出口24から吹き出された空気には、通風路15を流れる際に、第1カバー面112および第2カバー面123との間に生じる摩擦によって圧力損失が発生する。また、ファン吹出口24から吹き出された空気には、通風路15を流れる際に、支柱13と衝突することによって圧力損失が発生する。これにより、通風路15を流れる空気は、動圧の一部が静圧に変換される。
【0059】
通風路15を流れる際に発生する圧力損失は、遠心送風機1のファン効率の悪化の要因となる。また、当該圧力損失は、通風路15を流れる空気の全圧のうち、動圧が大きいほど大きくなる。そして、当該圧力損失が大きいほど、ファン効率は悪化する。
【0060】
遠心送風機1は、電動モータ30を回転させるために必要な動力を抑制するため、ファン効率を向上させることが望まれる。このため、通風路15を流れる際に発生する圧力損失は少ないことが望ましい。以下に、本実施形態における遠心送風機1の作動時の圧力損失について、比較例の遠心送風機の作動時の圧力損失と比較して説明する。以下、比較例の遠心送風機を比較用遠心送風機と呼ぶ。また、比較用遠心送風機における通風路15に相当する流路を比較用通風路、吹出口16に相当する空気吹出口を比較用吹出口と呼ぶ。
【0061】
比較用遠心送風機には、第1傾斜部115、第2傾斜部125、第1拡張部116、第2拡張部126が設けられていない。すなわち、比較用遠心送風機は、比較用通風路の周方向DRcに直交する面の断面積および径方向DRrに直交する面の断面積が空気流れ下流側に向かって変化しない構成となっている。比較用遠心送風機の他の構成は、本実施形態の遠心送風機1と同様である。
【0062】
これに対して、本実施形態の通風路15は、第1傾斜部115、第2傾斜部125によって、隣接する2つの支柱13の間において、空気流れ上流側の支柱13から下流側の支柱13に近づくにしたがい、周方向DRcに直交する面の断面積が大きくなっている。これにより、通風路15を流れる空気には、通風路15を周方向DRcに流れる際に、通風路15の周方向DRcに直交する面の断面積の拡張にともなう動圧から静圧への変換が発生する。このため、隣接する2つの支柱13の間を流れる空気は、空気流れ上流側の支柱13から下流側の支柱13に近づくにしたがい、全圧のうち動圧が占める割合が徐々に小さくなり、これに反して、静圧が占める割合が徐々に大きくなる。
【0063】
また、通風路15は、第1拡張部116、第2傾斜部125によって、通風路15の径方向DRrにおける最も内側の部位から吹出口16に近づくにしたがい、径方向DRrに直交する面の断面積が大きくなっている。これにより、通風路15を流れる空気には、通風路15を径方向DRrに流れる際に、通風路15の径方向DRrに直交する面の断面積の拡張にともなう動圧から静圧への変換が発生する。このため、通風路15を吹出口16に向かって流れる空気は、通風路15の径方向DRrの最も内側の部位から吹出口16に近づくにしたがい、全圧のうち動圧が占める割合が徐々に小さくなり、これに反して、静圧が占める割合が徐々に大きくなる。
【0064】
そして、比較用遠心送風機では、比較用通風路の断面積が変化しないので、比較用通風路の断面積の拡張にともなう動圧から静圧への変換が生じない。
【0065】
したがって、本実施形態の通風路15を流れる空気は、比較用通風路を流れる空気よりも、動圧が小さくなる。これにより、本実施形態の通風路15を流れる際に第1カバー面112および第2カバー面123との間に生じる摩擦および支柱13との衝突によって発生する圧力損失は、比較用通風路を流れる際に発生する圧力損失よりも小さくなる。
【0066】
ここで、本実施形態の遠心送風機1の流量係数に対する圧力係数と比較用遠心送風機の流量係数に対する圧力係数との違いについて、図7を参照して説明する。図7の各線は、実線が本実施形態の遠心送風機1の流量係数に対する圧力係数を示し、破線が比較用遠心送風機の流量係数に対する圧力係数を示す。また、一点鎖線が本実施形態の遠心送風機1の抵抗曲線を示し、二点鎖線が比較用遠心送風機の抵抗曲線を示す。また、実線と一点鎖線との交点が本実施形態の遠心送風機1の作動点を示し、破線と二点鎖線との交点が比較用遠心送風機の作動点を示す。
【0067】
本実施形態では、通風路15の断面積の拡張にともなう動圧から静圧への変換が行われることで、図7に示すように、本実施形態の遠心送風機1の流量係数に対する圧力係数を比較用遠心送風機の流量係数に対する圧力係数以上にすることができる。すなわち、本実施形態の遠心送風機1は、比較用遠心送風機と同一流量係数における圧力係数を比較用遠心送風機の圧力係数以上とすることができる。このことは、本実施形態の遠心送風機1によって、比較用遠心送風機よりも低い回転数で所望の作動点、すなわち吹出口16から吹き出す空気の風量および圧力を確保できることを意味する。
【0068】
また、本実施形態の遠心送風機1の流量係数に対するファン効率と比較用遠心送風機の流量係数に対するファン効率との違いについて、図8を参照して説明する。図8の各線は、実線が本実施形態の遠心送風機1の流量係数に対するファン効率を示し、破線が比較用遠心送風機の流量係数に対するファン効率を示す。また、実線と一点鎖線との交点が本実施形態の遠心送風機1のファン効率を示し、破線と二点鎖線との交点が比較用遠心送風機のファン効率を示す。
【0069】
図8に示すように、本実施形態の遠心送風機1の流量係数に対するファン効率を、図8に示す全流量係数域において、比較用遠心送風機の流量係数に対するファン効率より向上させることができる。すなわち、本実施形態の遠心送風機1および比較用遠心送風機の空気の吸込み量を変化させることでそれぞれの流量係数を変化させた場合であっても、本実施形態の遠心送風機1は、比較用遠心送風機のファン効率より高い効率で作動することができる。
【0070】
ところで、本実施形態の遠心送風機1および比較用遠心送風機は、空気が有するせん断力によって、空気を吹き出す際にも圧力損失が発生する。空気を吹き出す際の圧力損失は、本実施形態の遠心送風機1および比較用遠心送風機が吹き出す空気の到達距離が短くなる要因となる。また、空気の全圧のうち動圧が小さいほど空気が有するせん断力は小さくなる。このため、吹出口16から吹き出される空気の動圧を抑制するほど、遠心送風機1は、遠くまで空気を吹き出すことができる。
【0071】
ここで、本実施形態の遠心送風機1から吹き出される空気の到達距離および比較用遠心送風機から吹き出される空気の到達距離の違いについて、図9および図10を参照して説明する。なお、図9および図10に示す矢印は、吹出口16および比較用吹出口のそれぞれから吹き出された空気の流れを示す。
【0072】
上述したように、本実施形態の通風路15を流れる空気には、通風路15の断面積の拡張にともなう動圧から静圧の変換が発生する。このため、本実施形態の吹出口16における空気の動圧は、比較用吹出口における空気の動圧より小さい。
【0073】
このため、本実施形態の吹出口16から吹き出される空気は、比較用吹出口から吹き出される空気に比較してせん断力が小さくなる。これにより、本実施形態の遠心送風機1は、比較用遠心送風機よりも遠くまで空気を吹き出すことができる。具体的には、図9および図10の比較で示すように、本実施形態の遠心送風機1が4つの支柱13のそれぞれの間から吹き出す空気の到達距離は、比較用遠心送風機が吹き出す空気の到達距離に比較して大きくなる。
【0074】
以上説明した遠心送風機1によれば、第1傾斜部115、第2傾斜部125によって、隣接する2つの支柱13の間の通風路15において、空気流れ上流側の支柱13から下流側の支柱13に近づくにしたがい、周方向DRcに直交する面の断面積を大きくできる。また、通風路15は、第1拡張部116、第2傾斜部125によって、通風路15の径方向DRrにおける最も内側の部位から吹出口16に近づくにしたがい、通風路15の径方向DRrに直交する面の断面積を大きくできる。
【0075】
このため、通風路15を流れる空気には、通風路15の断面積の拡張にともなう動圧から静圧への変換が発生する。これにより、通風路15を流れる空気が周方向DRcにおける空気流れ下流側および径方向DRrにおける空気流れ下流側に向かって流れるにしたがい、空気の全圧のうち動圧を小さくできる。
【0076】
したがって、通風路15を流れる際に第1カバー面112および第2カバー面123との間に生じる摩擦および支柱13との衝突によって発生する圧力損失を抑制できるので、遠心送風機1のファン効率を向上させることができる。
【0077】
また、通風路15を流れる空気の全圧のうち動圧を小さくすることで、通風路15を流れる空気のせん断力を抑制することができる。このため、吹出口16から空気を吹き出す際に、空気が有するせん断力に起因する圧力損失を抑制できるので、吹出口16から吹き出す空気の到達距離を大きくできる。
【0078】
また、第1拡張部116、第2拡張部126によって、通風路15の径方向DRrに直交する面の断面積を径方向DRrの内側から外側へ向かって連続して拡大させることができる。このため、通風路15の径方向DRrに直交する面の断面積を階段状に拡大する場合に比較して、通風路15の断面積が拡大されることによって発生する縮流損失を抑制することができる。
【0079】
また、第1傾斜部115は、互いに隣接する2つの支柱形成部114のうち、一方の支柱形成部114から他方の支柱形成部114に至るまでの範囲に形成されている。第2傾斜部125は、互いに隣接する2つの穴形成部124のうち、一方の穴形成部124から他方の穴形成部124に至るまでの範囲に形成されている。これによれば、第1傾斜部115の周方向DRcに対する角度を、第1傾斜部115が本実施形態の形成範囲よりも小さい範囲で形成された場合における第1傾斜部115の周方向DRcに対する角度よりも小さくできる。また、第2傾斜部125の周方向DRcに対する角度を、第2傾斜部125が本実施形態の形成範囲よりも小さい範囲で形成された場合における第2傾斜部125の周方向DRcに対する角度よりも小さくできる。
【0080】
このため、通風路15における周方向DRcに直交する面の断面積を緩やかに大きくできるので、通風路15の断面積の拡張による動圧から静圧への変換を行う際に生じる圧力損失を抑制し易くなる。
【0081】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0082】
上述の実施形態では、第2傾斜部125aが穴形成部124aから穴形成部124bに至るまでの範囲に形成されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、図11および図12に示すように、第2傾斜部125aは、穴形成部124aから穴形成部124bまでの範囲より小さい範囲に形成されていてもよい。
【0083】
上述の実施形態では、第1カバー面112に第1傾斜部115が設けられ、第2カバー面123に第2傾斜部125が設けられている例について説明したが、これに限定されない。例えば、遠心送風機1は、第1傾斜部115および第2傾斜部125のうち、一方の傾斜部のみが設けられている構成であってもよい。
【0084】
上述の実施形態では、第1カバー面112に第1拡張部116が設けられ、第2カバー面123に第2拡張部126が設けられている例について説明したが、これに限定されない。例えば、遠心送風機1は、第1傾斜部115および第2傾斜部125のうち、第1傾斜部115のみが設けられ、第1拡張部116が設けられている構成または第1拡張部116が設けられていない構成であってもよい。また、遠心送風機1は、第1傾斜部115および第2傾斜部125のうち、第2傾斜部125のみが設けられ、第2拡張部126が設けられている構成または第2拡張部126が設けられていない構成であってもよい。さらに、遠心送風機1は、第1傾斜部115および第2傾斜部125のいずれの傾斜部も設けられ、第1拡張部116および第2拡張部126のうち、いずれか一方の拡張部のみが設けられている構成またはいずれの拡張部も設けられていない構成であってもよい。
【0085】
上述の実施形態では、第1カバー面112に支柱形成部114が設けられ、第2カバー面123に穴形成部124が設けられている例について説明したが、これに限定されない。
【0086】
例えば、第1カバー面112には、支柱形成部114が設けられておらず、複数の第1傾斜部115および複数の第1拡張部116のそれぞれが交互に周方向DRcに連なって設けられる構成でもよい。また、第2カバー面123には、穴形成部124が設けられておらず、複数の第2傾斜部125および複数の第2拡張部126のそれぞれが交互に周方向DRcに連なって設けられる構成でも良い。この場合、複数の支柱13は、周方向DRcに連なった第1傾斜部115および第1拡張部116のそれぞれの間に設けられる構成とすればよい。
【0087】
上述の実施形態では、第1傾斜部115および第2傾斜部125が隣接する2つの支柱13の間において、空気流れ上流側の支柱13から下流側の支柱13に至るまでの範囲に形成されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、第1傾斜部115および第2傾斜部125は、隣接する2つの支柱13の間において、空気流れ上流側の支柱13と径方向DRrに重なる位置から下流側の支柱13に至るまでの範囲に形成されていてもよい。また、第1傾斜部115および第2傾斜部125は、隣接する2つの支柱13の間において、空気流れ上流側の支柱13から下流側の支柱13と径方向DRrに重なる位置に至るまでの範囲に形成されていてもよい。さらに、第1傾斜部115および第2傾斜部125は、隣接する2つの支柱13の間において、空気流れ上流側の支柱13と径方向DRrに重なる位置から下流側の支柱13と径方向DRrに重なる位置に至るまでの範囲に形成されていてもよい。
【0088】
上述の実施形態では、支柱13が第1カバー部11に4つ設けられている例について説明したが、これに限定されない。例えば、支柱13は、第2カバー部12に設けられていてもよい。また、支柱13の個数は4つに限定されず、支柱13は、少なくとも1つ設けられている構成であれば、4つより少ない構成、または、4つより多い構成でもよい。
【0089】
上述の実施形態では、遠心ファン20がターボファンで構成されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、遠心ファン20は、ケーシング10の全周から空気を吹き出す全周吹出し型の遠心式送風機であれば、シロッコファンで構成されていてもよい。
【0090】
上述の実施形態では、第1カバー部11および第2カバー部12がネジ14によって結合されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、第1カバー部11および第2カバー部12は、接着など、ネジ14以外の方法によって結合されていてもよい。
【0091】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0092】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0093】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0094】
(まとめ)
上述の実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、遠心送風機は、ファン軸心を中心に回転することによって空気を吹き出す遠心ファンと、遠心ファンを収容するケーシングとを備える。ケーシングは、遠心ファンが吸い込む空気が通過する空気吸入口111が形成されとともに、ファン軸心の軸心方向における遠心ファンの一方側を覆う第1カバー部11と、軸心方向における遠心ファンの他方側を覆う第2カバー部12とを有する。ケーシングは、第1カバー部と第2カバー部との隙間を維持する少なくとも1つの支柱とを有する。第1カバー部は、第1カバー部における第2カバー部に対向する第1カバー面を有する。第2カバー部は、第2カバー部における第1カバー部に対向する第2カバー面を有する。第1カバー部および第2カバー部は、第1カバー面のうち遠心ファンよりファン軸心の径方向の外側に張り出した部位と、第2カバー面のうち遠心ファンより径方向の外側に張り出した部位との隙間に遠心ファンが吹き出す空気が流れる通風路を形成する第1カバー部および第2カバー部は、第1カバー面の外縁部および第2カバー面の外縁部によって、遠心ファンが吹き出す空気をケーシングの全周に亘って吹き出す吹出口16を形成する。支柱は、通風路において、遠心ファンより径方向の外側に設けられる。第1カバー面および第2カバー面のうち少なくとも一方のカバー面は、支柱が設けられた部位よりファン軸心の周方向における空気流れ上流側に、周方向における空気流れ上流側から下流側に向かって通風路の軸心方向における大きさを徐々に大きくする傾斜部を有する。傾斜部は、周方向に対して傾斜している。
【0095】
第2の観点によれば、第1カバー面および第2カバー面のうち傾斜部が形成されているカバー面は、径方向の内側から外側に向かって通風路の軸心方向における大きさを徐々に大きくする拡張部を有する。拡張部は、傾斜部に連なるとともに、径方向に対して傾斜している。
【0096】
これによると、通風路の径方向に直交する面の断面積を径方向の内側から外側へ向かって徐々に拡大させることができる。このため、通風路の径方向に直交する面の断面積を階段状に拡大する場合に比較して、通風路の断面積が拡大されることによって発生する縮流損失を抑制することができる。
【0097】
第3の観点によれば、支柱は、周方向に複数並んで設けられている。複数の支柱のうち、所定の支柱を一方の支柱とし、所定の支柱に隣接する支柱のうち、所定の支柱より空気流れ上流側に設けられた支柱を他方の支柱とする。第1カバー面および第2カバー面のうち傾斜部が形成されているカバー面は、一方の支柱および他方の支柱を支持する座面を有する。傾斜部は、一方の支柱が設けられる座面から他方の支柱が設けられる座面に至る範囲を含んでいる。
【0098】
これによれば、傾斜部の周方向に対する角度を、傾斜部が一方の支柱が設けられる座面から他方の支柱が設けられる座面に至る範囲よりも小さい範囲で形成された場合における傾斜部の周方向に対する角度よりも小さくできる。このため、通風路における周方向に直交する面の断面積を緩やかに大きくできるので、通風路の断面積の拡張による動圧から静圧への変換を行う際に生じる圧力損失を抑制し易くなる。
【符号の説明】
【0099】
10 ケーシング
11 第1カバー部
12 第2カバー部
13 支柱
15 通風路
16 吹出口
20 遠心ファン
112 第1カバー面
123 第2カバー面
125 傾斜部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12