(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】タンク保持装置
(51)【国際特許分類】
F17C 13/08 20060101AFI20230905BHJP
B60K 15/07 20060101ALI20230905BHJP
F16B 2/08 20060101ALI20230905BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20230905BHJP
【FI】
F17C13/08 301A
B60K15/07
F16B2/08 F
H01M8/04 N
(21)【出願番号】P 2020100727
(22)【出願日】2020-06-10
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】藤井 学
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-087875(JP,A)
【文献】実開昭63-089828(JP,U)
【文献】特開2009-046000(JP,A)
【文献】米国特許第06557814(US,B1)
【文献】独国特許出願公開第102014201328(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/08
B60K 15/07
F16B 2/08
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクを保持するタンク保持装置であって、
前記タンクの外周に沿って配置される帯状のバンドを有し、
前記バン
ドは、
基部と、前記基部の内側に配置され前記基部より突出して前記タンク
の表面を押圧し
て弾性変形する
第一押圧要素と、前記基部の内側に配置され前記基部より前記第一押圧要素とは反対側に突出する第二押圧要素と、を備え、
前記第一押圧要素及び前記第二押圧要素は板状であり、当該板状のうち互いが反対位置となる一組の端部が前記基部に接続され、前記第一押圧要素と前記第二押圧要素とは前記バンドが延びる方向に交互に複数配列されている、
タンク保持装置。
【請求項2】
タンクを保持するタンク保持装置であって、
前記タンクの外周に沿って配置される帯状のバンドを有し、
前記バンドは、帯状の基部と、前記基部に一端が接続され他端が自由端であり、前記自由端がタンク表面を押圧して弾性変形する押圧要素と、を備え、
前記押圧要素は板状で、前記基部に接続された部位から前記自由端に向けて細くなる形状であり、
前記押圧要素は、前記基部を挟んで前記基部の両側に配置されるとともに、帯状の前記基部が延びる方向に複数配列される、
タンク保持装置。
【請求項3】
前記バンドが2つ設けられており、該2つのバンドにより前記タンクの外周を挟み、前記2つのバンドの端部同士が連結されている、請求項1
又は2に記載のタンク保持装置。
【請求項4】
前記バンドの端部には補強板が配置されており、前記補強板にはバンドの長さ方向に延びる長孔が設けられている、請求項1
乃至3のいずれかに記載のタンク保持装置。
【請求項5】
前記押圧
要素はカバーにより被覆されている請求項1乃至
4の
いずれかに記載のタンク保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タンクを車両などの設備に固定するための保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンクを車両等の設備に固定するためにタンクを保持する手段として、特許文献1乃至特許文献3には、タンクの外周の一方側に立体断面の剛性フレーム(支持部材)を置き、これにタンクを添わせ、他方側に略平板(低剛性)の金属バンドを配置してその一端を剛性フレームに固定するとともに、他端をコイルスプリングで押さえ、張力を与えてタンクを保持することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-070467号公報
【文献】特開2019-074189号公報
【文献】特開2016-070468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、上記のように金属バンドに張力を与えるため、タンクに隣接した部位にコイルスプリングを配置する必要があり、そのために占有空間(占有スペース)を要する。コイルスプリングはタンクごとに必要であるため、複数のタンクを並べて設備に搭載する際にはコイルスプリングが占有する部分を確保することを想定してタンク相互間距離を取る必要があり、搭載するタンクが多いとそのために要するスペースが顕著になる。
また、タンク径の個体差、充填による膨張等でタンクと剛性フレームとの接点が上昇し、このためタンク周上端がタンク直径の拡大量を上回る位置上昇となることがあり、これを予め勘案してスペースを確保しておく必要があることから、スペースの無駄を生じることもある。
【0005】
本開示は、これらの実情に鑑みてなされたものであり、必要とされる空間(スペース)を抑制することを可能とするタンク保持装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、タンクを保持するタンク保持装置であって、タンクの外周に沿って配置される帯状のバンドを有し、バンドには、突出してタンク表面を押圧し、弾性変形する押圧要素が複数設けられている、タンク保持装置を開示する。
【0007】
バンドが2つ設けられてもよく、該2つのバンドによりタンクの外周を挟み、2つのバンドの端部同士が連結されるように構成することができる。
【0008】
バンドの端部に補強板を配置してもよく、補強板にはバンドの長さ方向に延びる長孔を設けることができる。
【0009】
押圧要素はその両端がバンドに連結している板状であってもよい。
【0010】
押圧要素はその一端が自由端であってもよい。
【0011】
押圧部はカバーにより被覆されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、少なくとも従来のようにコイルスプリングを配置する必要がなく、占有スペースを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1はタンク保持装置10が配置されたタンク1を平面視した図である。
【
図3】
図3はタンク保持装置10が配置されたタンク1を側面から見た図である。
【
図7】
図7は補強板12及び補強板22の部分に注目した分解斜視図である。
【
図8】
図8は他の例の補強板12及び補強板22の部分に注目した分解斜視図である。
【
図9】
図9は他の例の補強板12及び補強板22の部分に注目した分解斜視図である。
【
図14】
図14はバンド13の他の形態例を説明する図である。
【
図15】
図15はバンド13の他の形態例を説明する図である。
【
図25】
図25はタンク保持装置10が配置されたタンク1が設備に固定された場面を表す図である。
【
図27】
図27はタンクの径の違いよる作用を説明する図である。
【
図28】
図28はタンクの径の違いよる作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1乃至
図4には1つの例にかかるタンク保持装置10にタンク1が配置された状態を説明する図を示した。
図1はタンク1及びタンク保持装置10の平面図(上方から見た図)、
図2は
図1のA-A矢視断面図、
図3はタンク1及びタンク保持装置10の右側面図(
図1の右方から見た図)、
図4は
図1のB-B矢視断面図である。
これら図からわかるように本形態では2つのタンク保持装置10によりタンク1を保持している。ただし、1つのタンクに用いるタンク保持装置10の数は2つに限定されることはなく、必要に応じてその数を決めることができる。
【0015】
1.タンクの構造
図1乃至
図4には保持される1つの例かかるタンク1の形状が表れている。本例では、燃料電池車用の燃料である水素を貯蔵するタンクを例に説明する。タンク1はその内部が高圧になるため、高圧タンクと呼ばれることもある。本例のタンク1はライナ2、口金3、及び補強層4を有している。以下に各構成について説明する。
【0016】
<ライナ>
ライナ2は、タンク1の内部空間を区画する中空の部材である。ライナ2は筒状の部材であり、その内部空間に収容されたもの(本例では水素)を漏らすことなく保持する。より詳しくは、ライナ2は筒の軸方向両端で径が狭められており、その開口に口金3が嵌め込まれている。
ライナ2は、内部空間に収容されたものを漏らすことなく保持することができる材料で構成されていればよく、材料は公知のものを用いることができるが、本例ではナイロン樹脂、ポリエチレン系の合成樹脂等の樹脂からなるものである。
ライナ2の厚さは特に限定されることはないが、軽量化の観点から0.5mm乃至3.0mm程度であることが好ましい。
【0017】
<口金>
口金3は、ライナ2の開口端部に配置された金属製の部材であり、タンク1を製造する際のチャック部分とされたり、タンク1への収容物の充填及びタンク1からの収容物の取り出しの際の出入口を形成したりする。このような口金の構造は公知のものを用いることができる。
【0018】
<補強層>
補強層4は、繊維層及び繊維層に含浸され硬化した樹脂を有している。繊維層は、ライナ2の外表面に繊維束が所定の厚さにまで何層にも亘って巻き付けられて構成されている。
【0019】
繊維層の繊維束には炭素繊維が用いられおり、繊維束は炭素繊維が束となって所定の断面形状(例えば長方形断面)を有する帯状である。具体的には特に限定されることはないが、断面形状が、幅6mm乃至9mm、厚さが0.1mm乃至0.15mm程度の長方形であることが挙げられる。繊維束に含まれる炭素繊維の量も特に限定されることはないが、例えば36000本程度の炭素繊維からなることが挙げられる。
このような炭素繊維による繊維束がライナ2の外表面に巻き付けられることで繊維層が形成されている。
【0020】
補強層4において繊維層に含浸して硬化した樹脂は、初めは流動性のある状態で繊維層に浸透し、その後、何らかの方法により硬化することで繊維層の強度を高めることができるものであれば特に限定されることはない。これには例えば熱により硬化する熱硬化樹脂を挙げることができ、例えばアミン系又は無水物系の硬化促進剤、及び、ゴム系の強化剤を含むエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等がある。その他、エポキシ樹脂を主剤とし、これに硬化剤を混ぜることにより硬化する樹脂組成物も挙げることができる。これによれば、主剤と硬化剤とを混ぜてから硬化するまでの間にこの混合物である樹脂組成物を繊維層に浸透させることで、自動的に硬化する。
【0021】
<その他>
タンクには、上記に加えて必要に応じて保護層を設けてもよい。保護層は補強層の外周に配置されており、ガラス繊維が巻かれ、ここに樹脂が含浸されてなる層である。含浸される樹脂は補強層と同様に考えることができる。これにより高圧タンクに対して耐衝撃性が付与される。保護層の厚さは特に限定されることはないが、1.0mm乃至1.5mm程度とすることができる。
【0022】
2.タンク保持装置
本形態のタンク保持装置10は、
図1乃至
図4からわかるように、第一保持部材11及び第二保持部材21を有し、第一保持部材11及び第二保持部材21でタンク1を外周部で挟み、端部同士が連結部材30により連結されることでタンク1の外周を囲むように配置される。
第一保持部材11は補強板12及びバンド13を有して構成され、第二保持部材21は補強板22及びバンド23を有して構成されている。以下各構成について説明する。
【0023】
2.1.補強板
補強板12は帯状のバンド13の両端のそれぞれに配置され、補強板22は帯状のバンド23の両端のそれぞれに配置される板状の部材である。
図5乃至
図7には補強板12を説明する図を示した。
図5は
図1にCで示した部分を拡大して表した図である。ただし、連結部材30及びタンク1は除外している。
図6は
図3にDで示した部分を拡大した図である。ただし連結部材30は分離して表している。
図7には補強板12及び補強板22の部分に注目して拡大した分解斜視図を示した。
ここで、本形態では補強板12と補強板22とは同じ形状とされている。従って、ここでは補強板12について説明し、補強板22については説明を省略するが補強板22についても同様に考えることができる。
なお、タンク保持装置10において、「長さ方向」は帯状であるバンド13、バンド23の長手方向、「幅方向」は帯状であるバンド13、バンド23の幅方向、及び、「厚さ方向」は長さ方向及び幅方向に直交する方向をそれぞれ意味する。
【0024】
本形態で補強板12は、バンド13(補強板22ではバンド23)の端部の一方の面に重ねられるように配置され、その幅方向の大きさは当該配置される部位におけるバンド13の幅方向大きさと同程度である。
【0025】
補強板12の長さ方向の大きさは、タンク1を保持した姿勢で、バンド13の一方の面とバンド23の一方の面とが重なる範囲を含む大きさであることが好ましい。これにより安定したタンク1の固定ができる。また、バンド13とバンド23とが重なる部位を超えてバンド13とバンド23とが離れる位置にまで延びてもよい。これによりさらに安定したタンク1の保持が可能となる。このとき、バンド13とバンド23とが離れる位置に配置される補強板12の部分は、厚さ方向に湾曲した湾曲部12c(補強板22では湾曲部22c)を有していることが好ましい。この湾曲部12cは、
図6や
図7からわかるように、補強板12の縁がバンド13に強く触れることを抑制できるように構成されている。従って、タンク1を保持した状態で補強板12の湾曲部12cの縁がバンド13に触れていないように反っていることが好ましい。これにより補強板12の縁でバンド13を傷つけることが抑制される。
【0026】
一方、補強板12の長さ方向のうちバンド13の端部側を向く端部には、厚さ方向に貫通する孔12a(補強板22では孔22a)が設けられている。この孔12aは連結部材30が通されて第二保持部材21の補強板22と固定される。
なお、本例では孔12aは補強板12の長さ方向の端部に設けられたが、これに限らず他の部位に孔12aを設けてもよい。
図8に例を示した。
図8の例では補強板12の幅方向の一端側に孔12aを設けている。例えば孔12aが補強板12の長さ方向の端部にあるとタンク1を保持するスペースが有効に利用できないようなときに、
図1乃至
図7のような孔12a(孔22a)の代わりに
図8のような孔12a(孔22a)としてもよい。この孔12aも連結部材30が通される孔である。
【0027】
また、補強板12は、長さ方向に長く延び、厚さ方向に貫通した長孔12b(補強板22では長孔22b)を有している。この長孔12b、長孔22bには後述するように、ここを固定部材6が通され、これによりタンク保持装置10が配置されたタンク1が例えば車両等の設備に固定される。
この長孔12b、長孔22bを通した固定部材6でタンク保持装置10が配置されたタンク1が設備に固定されることにより、タンク1の膨張、収縮に伴う補強板12、補強板22の長手方向の移動を吸収することができる。タンク1の膨張、収縮に伴うタンク保持装置10の作用については後で説明する。
【0028】
補強板12、補強板22は第一保持部材11と第二保持部材21とを連結し、さらに固定部材6により設備に固定する部位であり、大きなスペースを占有することを避ける観点から薄くても高い強度を有する材料であることがよいことから、金属であることが好ましい。例えば厚さ1mm乃至3mm程度のステンレス鋼を挙げることができる。
また、補強板12とバンド13とは接合してもしなくてもよいが、より強固で安定したタンク保持装置とする観点から接合することが好ましい。接合方法は特に限定されることはないが、接着剤による接合や溶接等を挙げることができる。
【0029】
ここまで説明した補強板12と補強板22とは同じ形状である。これにより部品の種類を少なく抑えることができる。ただし、これに限らず、補強板12と補強板22とが異なる形状を有してもよい。
図9、
図10には補強板12と補強板22との形状が異なる例を示した。
図9は分解斜視図、
図10は
図9を矢印Eで示した方向から見た図である。
これら図からわかるように
図9、
図10の例では補強板12の幅方向の縁から補強板22の方に向けて立ち上がる片12dが備えられており、補強板22の幅方向の縁からは補強板12とは反対側となる方向に立ち上がる片22dが備えられている。
さらに、
図10からよくわかるように、この例では、補強板12の2つの片12dの間の大きさが、補強板22の幅方向の大きさより大きくなるように構成されている。これによれば、補強板12と補強板22とを重ねて連結部材30で連結したときに補強板12の片12dの間に補強板22を収めることができる。従って、片12d、片22dによって補強板の剛性を高くすることができるとともに、2つの補強板をコンパクトに重ねることが可能となる。
【0030】
2.2.バンド
<バンドの形態1>
バンド13、バンド23は帯状の部材であり、タンク保持装置10によりタンク1が保持された姿勢で
図1乃至
図4からわかるように、バンド13及びバンド23は、バンド13及びバンド23でタンク1を挟むようにしてタンク1の外周に沿うように配置される。より詳しくは、バンド13、バンド23は、その長さ方向と幅方向とにより形成される一方側の面をタンク1の外周に対向するように配置し、厚さ方向がタンクの径方向となる。
本開示では、バンド13、バンド23がその厚さ方向に押圧力を生じることができる構造を備えている。これによりタンク1の径方向への押圧力を生じさせることができ、タンク1の外周に密着した状態を維持する。
【0031】
図11、
図12には本形態のタンク保持装置10が備えるバンド13の構造を示した。
図11は、
図1にFで示した部分を拡大した図、
図12は
図11のG-G線に沿った切断面である。また、
図13にはバンド13の一部を斜視図で表した。
ここで、本形態ではバンド13とバンド23とは同じ形状とされている。従って、ここではバンド13について説明し、バンド23については説明を省略するがバンド23についても同様に考えることができる。
【0032】
本形態のバンド13は、基部14、及び、押圧部15を有している(バンド23では基部24及び押圧部25)。
基部14はバンド13の基礎となる部分であり、全体として帯状である。本形態のバンド13の基部14は補強板12に重なる部分で幅方向が大きく、それ以外の大部分はこれより幅方向が小さくされている。この幅方向の大きさが小さい部分に押圧要素16が備えられることにより押圧部15が形成されている。
基部14のうち、補強板12に重なる部分には、補強板12の孔12a、長孔12bに対応する位置に孔及び長孔が設けられており、補強板12及びバンド13を厚さ方向に貫通するように構成されている。
【0033】
押圧部15は、複数の押圧要素16が配置される部位である。本形態では基部14の幅方向の大きさが小さい部位に設けられており、基部14の幅方向の両側のそれぞれに押圧要素16が配列されてなる。すなわち本形態では、基部14の長さ方向に並ぶ押圧要素16が基部14を挟んで幅方向に2列配置されている。
【0034】
それぞれの押圧要素16は、基部14に連結した根本部16aから幅方向に延び、先端部16bが自由端とされている。ただし、
図12に表れているように、押圧要素16が延びる方向は幅方向であるとともに基部14から離隔するにつれてタンク1に近づくよう傾斜して先端部16bが厚さ方向に突出している。これにより、バンド13がタンク1の外周に配置されたときには押圧要素16の先端部16bがタンク1の外周に接し、基部14はタンク1の外周から浮き上がるような態様となる。そして押圧要素16がタンク1から押圧力を受けて、押圧要素16の先端部16bが
図12に矢印αで示した方向に変形させられ、押圧要素16はこれに抗する付勢力を生じて押圧要素16がタンク1を押圧する。これによりバンド13がタンク1に密着した状態を維持する。この押圧力はタンク1の膨張及び収縮による押圧要素16の弾性変形の程度により変化するが、いずれの場合にも弾性変形の範囲内でタンクを保持することができるように押圧部材16の形状が決められることが好ましい。
【0035】
本形態で押圧要素16は、
図11の視点で根本部16aから先端部16bに向けて細くなる形状である。これにより、押圧要素16の変位時において各部に発生する応力の均等化を高めることができる。すなわち、押圧要素について、根本部から先端部に向けて幅を減少させることで変形時の応力分布が平準化され、先端部に一定の変位を与えた時の最大応力が下がるため、押圧要素を短くすることが可能であり、材料面積の小さい設計ができるとともに、軽量化も可能となる。
一方、根本部から先端部に向けて細くすることなく一定である場合には、根元部の曲げ応力が大きくなる傾向にあり、タンクに接触する先端部の手前の応力が小さく、その差(倍率)が大きくなることがある。その結果、押圧要素に一定の変位(タンク径の変化に伴う変位)を与えるとき、根元部に集中した応力が板材の降伏応力を超えない設計とするために、押圧要素を長くしなければならず、使用する材料の面積が大きくなる傾向にある。ただし、このような事項が問題にならなければ、必ずしも先細となる形状に限定される必要はなく、
図14に示したように根本部16aから先端部16bに向けて細くならない形態であってもよい。
図14は
図11に相当する図である。
【0036】
また、本形態で押圧要素16はその先端部16bにおいて傾斜角度が変化する屈曲した部位である爪部16cを有している。この屈曲は押圧要素がタンクから高い圧力を受けて変位が大きくなったときにタンクの表面に平行になるような態様とすることができる。これにより、特に押圧要素16がタンク1から高い圧力を受けたときに押圧要素16とタンク1との接触面積を広く取ることができる。また接触面積を広くすることで押圧要素16の縁によるタンク1の表面への傷つきも抑制することが可能となる。
ただし、爪部16cは必ずしも必要はなく、例えば、押圧要素がタンクから力を受けたときにその先端部のみでなく先端部と根本部との間の多くの部分又は全部でタンクに接触する場合には爪部を設けなくてもよい。かかる観点から、押圧要素を変形し難い剛性とした場合には先端部のみでタンクに接触しやすいため、爪部の効果が顕著であるといえる。
【0037】
また、本形態で押圧要素16は基部14を挟んで幅方向で同じ位置に配置されているが、これに限らず
図15に示したように基部14を挟んで幅方向で同じ位置とならないように長さ方向のピッチを半分ずらすように配列してもよい。
図15は
図11に相当する図である。
この例によれば、押圧要素16がタンク1を押圧したときに押圧要素16の根本部16aと基部14との接続部に点線で囲んだ部分に他に比べて大きな応力が生じるが、
図15の例によれば、押圧要素16が上記のように半ピッチずらすように配置されていることで、応力が高くなる位置が重ならないようにすることができ、高い強度確保の観点から有用である。
【0038】
このようなバンドを構成するための材料は特に限定されることはないが、本開示ではバンドが押圧要素を備えて板バネとしても機能するように構成する観点から、強度及び弾性変形に有利な材料であることが好ましい。かかる観点から金属であることが好ましく、例えばステンレス鋼を挙げることができる。また、適切な弾性を得るために材料、厚さ、及び押圧要素の形状を変更することができる。厚さは限定されることはないがステンレス鋼の場合には0.5mm乃至2mm程度のものを挙げることができる。
【0039】
<バンドの形態2>
図16、
図17には、上記したバンド13とは異なる形態のバンド53の形態を説明するための図を表した。
図16は
図11に相当する図、
図17は
図16にH-Hで示した線に沿った切断面である。
バンド53では帯状の基部54の内側に複数の押圧要素56が長さ方向に配列されることで押圧部55が構成されている。
【0040】
各々の押圧要素56は、基部54の幅方向の一端側を根本部56aとして基部54に連結しており、基部54の幅方向の他端側に延び、先端部56bが自由端とされている。ただし、
図17に表れているように、押圧要素56が延びる方向は、幅方向であるとともに根本部56aから離隔するにつれてタンク1に近づくように傾斜し先端部56bが厚さ方向に突出している。これにより、バンド53がタンク1の外周に配置されたときには押圧要素56の先端部56b側がタンク1の外周に接し、基部54はタンク1の外周から浮き上がるような態様となる。そして押圧要素56がタンク1から押圧力を受けて、押圧要素56の先端部56bが
図17に矢印αで示した方向に変形させられ、押圧要素56はこれに抗する付勢力を生じて押圧要素56がタンク1を押圧する。これによりバンド53がタンク1に密着した状態を維持する。この押圧力はタンク1の膨張及び収縮による押圧要素56の弾性変形の程度により変化するが、いずれの場合にも弾性変形の範囲内でタンクを保持することができるように押圧部材56の形状が決められることが好ましい。
【0041】
なお、本形態の押圧要素56も、その先端部56bが基部54側に向けて屈曲する爪部56cを有している。これによりタンク1への接触による大きな圧力発生やタンク1への傷つきを抑制している。
【0042】
このようなバンド53を上記バンド13、バンド23の代わりに用いても同様の効果を奏するものとなる。
【0043】
<バンドの形態3>
図18乃至
図20には、上記したバンドとは異なる形態のバンド63の形態を説明するための図を表した。
図18は
図11に相当する図、
図19は
図18にI-Iで示した線に沿った切断面、
図20は
図18にJ-Jで示した線に沿った切断面である。
バンド63では帯状の基部64の内側に2種類の押圧要素である第一押圧要素66、及び、第二押圧要素67が長さ方向に交互に配列されることで押圧部65が構成されている。
【0044】
第一押圧要素66は、基部64の幅方向の一端側を根本部66a、基部64の幅方向の他端側を根本部66bとしてそれぞれ基部64に連結しており、この2つの根本部である根本部66aと根本部66bとの間に配置される部材が厚さ方向(タンク1に近づく方向)に突出するように屈曲している。より詳しくは
図19からわかるように、第一押圧要素66は、根本部66a、根本部66bから互いに近づく方向であるとともに、タンク1にも近づくように傾斜して延びる。そして厚さ方向で所定の位置に達した位置で幅方向に平行となるように延びている。本形態ではこの第一押圧要素66のうち幅方向に平行に延びる部分がタンク1に接触するように配置される。
【0045】
第二押圧要素67は、基部64の幅方向の一端側を根本部67a、基部64の幅方向の他端側を根本部67bとしてそれぞれ基部64に連結しており、この2つの根本部である根本部67aと根本部67bとの間に配置される部材が厚さ方向(タンク1から離隔する方向、第一押圧要素66とは厚さ方向において反対となる方向)に突出するように屈曲している。より詳しくは
図20からわかるように、第二押圧要素67は、根本部67a、根本部67bから互いに近づく方向であるとともに、タンク1から離隔するように斜め方向に延びる。そして厚さ方向で所定の位置に達した位置で幅方向に平行となるように延びている。本形態ではこの第二押圧要素67がタンク1から離隔する位置に配置される。
【0046】
本形態では第一押圧要素66がタンク1の外周に接し基部64はタンク1の外周から浮き上げるような態様となる。第一押圧要素66がタンク1から力を受けると第一押圧要素66は、
図19にαで示したように変形させられる。第一押圧要素66は幅方向両端が基部64に連結しているので、
図19に直線βで示したように基部64が幅方向への広がるような変形を伴う。これにより第二押圧要素67が
図20の矢印γで示したように変形し、これに押圧部65では全体としてこの変形に抗する付勢力を生じる。そしてこの付勢力によりタンク1を押圧してタンク1との密着状態を維持する。
【0047】
本形態では、第一押圧要素66と第二押圧要素67とが長さ方向に交互に並んでいるがこれに限定されることなく、例えば要求される弾性力を得るために第一押圧要素66と第二押圧要素67とを必要な割合で配置することができる。
【0048】
このようなバンド63を上記バンド13、バンド23の代わりに用いても同様の効果を奏するものとなる。
【0049】
<バンドの形態4>
図21乃至
図23には、上記したバンドとは異なる形態のバンド73の形態を説明するための図を表した。
図21は
図11に相当する図、
図22は
図21にK-Kで示した線に沿った切断面、
図23は
図21にL-Lで示した線に沿った切断面である。
バンド73では帯状の基部74の内側に2種類の押圧要素である第一押圧要素76、及び、第二押圧要素77が長さ方向に交互に配列されることで押圧部75が構成されている。
【0050】
第一押圧要素76は、基部74の幅方向の一端側を根本部76a、基部74の幅方向の他端側を根本部76bとしてそれぞれ基部74に連結しており、この2つの根本部である根本部76aと根本部76bとの間に配置される部材が厚さ方向に突出するように屈曲している。より詳しくは
図22からわかるように、第一押圧要素76は、根本部76aから離隔するにつれてタンク1から離れる方向に傾斜した部位を有し、厚さ方向に所定の位置に達した所で幅方向に平行となる部位を備える。さらに根本部76aから離隔するにつれてタンク1に近づく方向に傾斜する部位を有し、厚さ方向に所定の位置に達した所で幅方向に平行となる部位を有する。そして根本部76bに向けてタンク1から離れる方向に傾斜した部位を有して根本部76bに至る。
【0051】
第二押圧要素77は、基部74の幅方向の一端側を根本部77a、基部74の幅方向の他端側を根本部77bとしてそれぞれ基部74に連結しており、この2つの根本部である根本部77aと根本部77bとの間に配置される部材が厚さ方向に突出するように屈曲している。より詳しくは
図23からわかるように、第二押圧要素77は、根本部77aから離隔するにつれてタンク1に近づく方向に傾斜した部位を有し、厚さ方向に所定の位置に達した所で幅方向に平行となる部位を備える。さらに根本部77aから離隔するにつれてタンク1から離れる方向に傾斜する部位を有し、厚さ方向に所定の位置に達した所で幅方向に平行となる部位を有する。そして根本部77bに向けてタンク1に近づく方向に傾斜した部位を有して根本部77bに至る。
【0052】
本形態では第一押圧要素76及び第二押圧要素77が、幅方向の異なる位置でそれぞれタンク1の外周に接し、基部74はタンク1の外周面から浮き上がるような態様となる。第一押圧要素76及び第二押圧要素77は、タンク1に接する部分で
図22、
図23に矢印αで示した方向に変形する。第一押圧要素76及び第二押圧要素77は幅方向両端が基部74に連結しているので、第一押圧要素76及び第二押圧要素77が
図22、
図23に矢印βのように基部74が幅方向への広がるように変形する。そして、これにより第一押圧要素76及び第二押圧要素77のうちタンク1とは反対側に突出した部分が
図22、
図23に矢印γで示した方向に変形する。これに押圧部75では全体としてこの変形に抗する付勢力を生じる。そしてこの付勢力によりタンク1を押圧してタンク1との密着状態を維持する。
【0053】
このようなバンド73を上記バンド13、バンド23の代わりに用いても同様の効果を奏するものとなる。
【0054】
2.3.連結部材
連結部材30は第一保持部材11の補強板12と第二保持部材21の補強板22とを連結する部材である。連結部材30は
図1乃至
図10に表れているように、ボルト及びナットの組み合わせを挙げることができる。このときナットは補強板に予め溶接等により固定されていてもよいし、個別の部材であってもよい。
【0055】
2.4.カバー
各形態に具備されたバンドのうち、押圧部をカバーにより覆うようにしてもよい。
図24に説明するための図を示した。
図24は、バンド13にカバー80が配置された例における
図12に相当する図である。
図24からわかるように、バンド13の少なくともタンク1に接触する部位を含んでカバー80で覆う。ここではバンド13を例に示したが上記した他の形態についてもカバーを設けることが可能である。
このようなカバーは樹脂やゴムにより構成することができる。樹脂やゴムによるカバーでバンドを被覆することで、金属からなるバンドが直接タンクに接触することが回避され、タンクの損傷を抑制することができる。
【0056】
2.5.第一保持部材と第二保持部材との組み合わせ
以上説明した第一保持部材11、及び、第二保持部材21がタンク1に配置されるとともに両者が組み合わされる。より具体的には次の通りである。ここでは
図1乃至
図4を参照しつつバンド13及びバンド23を有する例で説明するが、上記した他のバンドを有する例についても同様である。
第一保持部材11及び第二保持部材21を
図1乃至
図4に表れるようにタンク1の外周に沿って配置する。このとき、バンド13、バンド23は、その面のうち押圧力を発揮できるように構成された面、すなわち、押圧要素16、押圧要素26(第二保持部材21の押圧要素)が突出する側をタンク1の表面に接するように配置する。
【0057】
次に
図6乃至
図10にも表れているように、補強板12、バンド13の端部、バンド23の端部、及び、補強板22の順に重ねられた部位において、孔12a及び孔22aを通した連結部材30によりこれらを固定する。このようにして、タンク保持装置10がタンク1の外周部に配置される。
【0058】
3.タンク保持部材が配置されたタンクの設備への固定
以上のようにタンク保持装置10が配置されたタンク1が、例えば車両等の設備に固定される。
図25、
図26に説明のための図を示した。
図25はタンク1が設備に固定された場面を示した図で
図3と同様の視点による図、
図26は
図25にMで示した部分を拡大した図である。
これら図からわかるように、タンク保持装置10が配置されたタンク1は、ボルトからなる固定部材6が長孔12b及び長孔22b(
図7参照)を通して設備の固定部5に固定される。
これによりタンク1がタンク保持装置10を介して設備に固定される。
【0059】
4.効果・その他
本開示のタンク保持装置10によれば、次のように作用する。
図27、
図28に説明のための図を示した。
図27は
図25と同じ視点による図であり、
図27はタンク1の径が小さい場合、又は、膨張前の状態を示す図である。一方、
図28はタンク1の径が大きい場合、又は、膨張したときの状態を示す図である。また、
図29は
図27にNで示した部分を拡大した図、
図30は
図28にPで示した部分を拡大した図である。
これら図を見てもわかるように、タンク1の径が小さい場合やタンク1の膨張前においては補強板12、補強板22とタンク1との間の領域Qが大きく形成されることでバンド13及びバンド23は、押圧部15の押圧要素16、押圧部25の押圧要素26により押圧力を付与しつつタンク1を安定して保持する。一方、タンク1の径が大きい場合やタンク1が内容物の充填等により膨張した場合には、補強板12、補強板22とタンク1との間の領域Qが小さくなり、バンド13及びバンド23は、押圧部15の押圧要素16、押圧部25の押圧要素26の変形が大きくなることで押圧力が大きくなりつつタンク1をさらに安定して保持する。
【0060】
このように、本開示のタンク保持装置によれば、タンクの径の変化はバンドに設けられた押圧要素の変形、及び、バンドの変形による領域Qの大きさの変化により吸収することができる。従って従来のようにコイルスプリングの設置が不要であるため、その分、空間(スペース)を有効に利用することが可能となる。
このようにコイルスプリングの設置が不要であることによる空間の有効利用という観点からは第一保持部材及び第二保持部材の少なくとも一方を備えていればよい。
【0061】
第一保持部材及び第二保持部材の両方、すなわち、タンクの一周に亘って押圧要素を配置することで、タンクの膨張及び収縮に伴うタンクの径の変化があってもタンクの中心位置の変化がほとんどないため、当該膨張及び収縮による変化を超える大きさのタンク外周部の一方向への移動を小さく抑えることができる。すなわち、かかる観点からも空間の有効利用が可能である。
また、タンクの弁は通常、タンク口金に締結されているため、本開示によりタンク径の拡大及び縮小にかかわらず、タンク中心軸位置が上下に移動しないことから、口金の位置が移動し難くなり、弁に締結されている配管に静歪を与えないことになる。これにより車両走行による動歪が付加されることで発生することの多い配管の亀裂発生を抑制することが可能となる。
【0062】
また、第一保持部材及び第二保持部材の少なくとも一方を用いることによりバンド全体でタンクの膨張収縮に対する変化を吸収するため、従来のコイルスプリングのように一方側に偏って配置される手段による場合に比べてバンドがタンクを保持する力を均等に近づけることができ、タンクへの負担を軽減することが可能となる。
【0063】
また、
図1等からわかるように、上記した各例における押圧要素は幅方向に延びる形状を有している。すなわち、この配置によれば、タンクの軸線に平行に延びる方向に押圧要素が延びるようにしている。これによれば、タンクが膨張収縮する際に軸線方向へのタンク表面の移動があっても押圧要素とタンク表面との摩擦を低減することができ、タンクへの押圧要素の引っ掛かりや異音の発生を抑制することができる。
【0064】
補強板に関しては、タンク保持装置を備えるタンクを設備に固定部材により固定する際に補強板の長孔を介することでタンク径の変化、及び、タンク径の違いがあってもこの違いを吸収しつつタンクを設備に固定し、固定を維持することができる。
また、
図29と
図30とを対比してわかるように、タンクの径が小さい場合(
図29)に補強板12の屈曲部12cがバンド13、補強板22の屈曲部22cがバンド23に対して間隙を有するように構成することで、タンクの径が大きい場合(
図30)に屈曲部12cにバンド13、屈曲部22cにバンド23が接触しても、接触する力を抑えることができ、補強板12、補強板22の縁によるバンド13、バンド23への傷つけを抑制することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 高圧タンク
10 タンク保持装置
11 第一保持部材
12 補強板
13 バンド
16 押圧要素
21 第二保持部材
22 補強板
23 バンド