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特許7342807走行予定経路設定装置及び走行予定経路設定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-04
(45)【発行日】2023-09-12
(54)【発明の名称】走行予定経路設定装置及び走行予定経路設定方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20230905BHJP
   B60W 30/12 20200101ALI20230905BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20230905BHJP
   B60W 40/072 20120101ALI20230905BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/12
B60W40/06
B60W40/072
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020113294
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011887
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】森本 修一
(72)【発明者】
【氏名】朝香 佑太
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 航
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 駿
(72)【発明者】
【氏名】家永 昂
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 貴洋
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-206895(JP,A)
【文献】特表2017-520056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30、30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行中の車線を特定する車線特定部と、
前記車両の現在位置から所定距離先までの走行予定区間内において、前記車両が走行中の車線の左右の車線区画線の少なくとも一方が存在しない区間を特定区間として検出する検出部と、
前記特定区間において、前記左右の車線区画線のうちの存在する方、前車線を含む道路の道路端、または前記特定区間の前後の区間における前記車両が走行する予定経路の何れかを基準とする、記予定経路の複数の候補を設定し、設定した前記複数の候補のうち、前記特定区間の前後の区間における前記予定経路との接続部における曲率変化または前記車両の進行方向と直交する方向におけるオフセット距離が最小となる候補を、前記特定区間における前記予定経路として設定する経路設定部と、
を有する走行予定経路設定装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記特定区間として、前記車両が走行中の車線の左右の車線区画線の何れか一方が途切れている片区画線区間を検出し、
前記経路設定部は、前記片区画線区間において、前記複数の候補として、左右の車線区画線のうちの途切れていない方の区画線から第1のオフセット距離だけ前記車線の中心側の位置に設定される第1の候補と、前記片区画線区間の前後の区間における前記予定経路を最短で結ぶ第2の候補とを設定し、設定した前記複数の候補のうち、前記片区画線区間の前後の区間における前記予定経路との接続部における曲率変化または前記車両の進行方向と直交する方向におけるオフセット距離が最小となる候補を、前記片区画線区間における前記予定経路として設定する、請求項1に記載の走行予定経路設定装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記特定区間として、前記車両が走行中の車線の左右の車線区画線の両方が途切れている無区画線区間をさらに検出し、
前記経路設定部は、前記無区画線区間において、前記複数の候補として、前記車両が走行中の道路の左端から第2のオフセット距離だけ前記道路の中心側の位置に設定される第1の候補と前記車両が走行中の道路の右端から第2のオフセット距離だけ前記道路の中心側の位置に設定される第2の候補とを設定し、設定した前記複数の候補のうち、前記無区画線区間の前後の区間における前記予定経路との接続部における曲率変化または前記車両の進行方向と直交する方向におけるオフセット距離が最小となる候補を、前記無区画線区間における前記予定経路として設定する、請求項1に記載の走行予定経路設定装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記特定区間として、前記車両が走行中の車線の左右の車線区画線の何れか一方が途切れている片区画線区間をさらに検出し、
前記経路設定部は、前記片区画線区間と前記無区画線区間とが連続する場合、前記片区画線区間の前記予定経路を前記無区画線区間の前記予定経路よりも先に設定する、請求項3に記載の走行予定経路設定装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記車線の幅が所定の幅閾値よりも広い拡幅区間をさらに検出し、
前記経路設定部は、前記拡幅区間において、前記複数の候補として、前記車両が走行中の車線の左側の車線区画線から第3のオフセット距離だけ前記車線の中心側の位置に設定される第1の候補と前記車両が走行中の車線の右側の車線区画線から第3のオフセット距離だけ前記車線の中心側の位置に設定される第2の候補とを設定し、設定した前記複数の候補のうち、前記拡幅区間の前後の区間における前記予定経路との接続部における曲率変化または前記車両の進行方向と直交する方向におけるオフセット距離が最小となる候補を、前記拡幅区間における前記予定経路として設定する、請求項1~3の何れか一項に記載の走行予定経路設定装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記走行予定区間内において、前記車両が走行する車線が他の車線と合流し、または他の車線と分岐する合分岐区間をさらに検出し、
前記経路設定部は、前記合分岐区間において、前記複数の候補の一つとして、前記他の車線と反対側の車線区画線または前記他の車線と反対側の道路端から第4のオフセット距離だけ前記車線の中心側の位置に前記予定経路を設定する、請求項1~5の何れか一項に記載の走行予定経路設定装置。
【請求項7】
車両が走行中の車線を特定し、
前記車両の現在位置から所定距離先までの走行予定区間内において、前記車両が走行中の車線の左右の車線区画線の少なくとも一方が存在しない区間を特定区間として検出し、
前記特定区間において、前記左右の車線区画線のうちの存在する方、前車線を含む道路の道路端、または前記特定区間の前後の区間における前記車両が走行する予定経路の何れかを基準とする、記予定経路の複数の候補を設定し、設定した前記複数の候補のうち、前記特定区間の前後の区間における前記予定経路との接続部における曲率変化または前記車両の進行方向と直交する方向におけるオフセット距離が最小となる候補を、前記特定区間における前記予定経路として設定する、
ことを含む走行予定経路設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が走行する予定の経路を設定する走行予定経路設定装置及び走行予定経路設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を自動運転する技術が研究されている。このような技術では、自動運転される車両が車線に沿って走行するよう、車線区画線に基づいて車両の走行が制御される。しかし、道路によっては、車両が走行する車線の左右それぞれの車線区画線のうちの一方が存在しないことがある。そこで、左右の車線区画線の一方が存在しなくても、車両の走行を適切に制御するための技術が提案されている(例えば、特許文献1~4を参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された技術では、運転支援ECUは、カメラが撮像した車両前方の走行路面の画像を用いて、走行路面の区画線を検出するとともに区画線が存在しない区間に仮想的な区画線を設定し、区画線と仮想的な区画線とに基づいて車両を制御して運転支援を行う。そしてこの運転支援ECUは、仮想的な区画線から車両が逸脱する場合に警告を報知する。
【0004】
また、特許文献2に記載された技術では、走行区画線認識装置は、車載カメラにより撮影された画像に基づいて左右の白線を検出し、検出された左右の白線から道路の幅の広がりが異常か否か判定し、異常と判定された場合に、片側認識モードにより白線を認識する。その際、この走行区画線認識装置は、片側認識モードでは、検出された各白線に基づいて、車両の位置関係を表すパラメータ及び白線の形状を表すパラメータのうちの二つ以上のパラメータを算出し、算出したパラメータによる白線の認識結果を統合して、左右両側から認識する片側の白線を選択する。
【0005】
さらに、特許文献3に記載された技術では、白線追従走行制御装置は、左右何れかの白線が認識されなくなったとき、認識されている側の白線より、白線が認識されなくなった側へ向けて、それまでに左右の白線の認識に基づいて算出されていた両白線間の幅の半分より所定のシフト量だけ小さい距離隔てた位置に沿って車両を誘導する。
【0006】
さらにまた、特許文献4に記載された技術では、左側及び右側の車線境界に基づき、将来的車線幅及び近傍車線幅が算出される。また、車線幅増加量が算出されて、増大する車線幅同士の間の差に基づき、車線分岐部または車線合流部が検出される。そして車線分岐部または合流部が生じた側の車線境界は無視され、かつ、無視されない方の車線境界に基づき、片側的な車線中心合わせ計算が実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2011/064825号
【文献】特開2015-165368号公報
【文献】特開2016-206895号公報
【文献】特表2017-520056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の技術では、自動運転制御される車両が走行する車線(以下、自車線と呼ぶことがある)の左右何れか一方または両方について車線区画線が設けられていない区間及びその前後の区間において、車両が走行する予定の経路(以下、単に走行予定経路と呼ぶ)が自車線に沿った滑らかな経路とならないことがある。
【0009】
そこで、本発明は、自車線の左右何れかまたは両方の車線区画線が存在しない区間が存在しても、自車線に沿った滑らか走行予定経路を設定することが可能な走行予定経路設定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一つの実施形態によれば、走行予定経路設定装置が提供される。この走行予定経路設定装置は、車両が走行中の車線を特定する車線特定部と、車両の現在位置から所定距離先までの走行予定区間内において、車両が走行中の車線の左右の車線区画線の少なくとも一方が存在しない区間を特定区間として検出する検出部と、特定区間において、左右の車線区画線のうちの存在する方または道路端を基準とする候補を含む、車両が走行する予定経路の少なくとも一つの候補を設定し、設定した候補のうち、特定区間の前後の区間における予定経路との接続部における曲率変化または車両の進行方向と直交する方向におけるオフセット距離が最小となる候補を、特定区間における予定経路として設定する経路設定部と、を有する。
【0011】
この走行予定経路設定装置において、検出部は、特定区間として、車両が走行中の車線の左右の車線区画線の何れか一方が途切れている片区画線区間を検出し、経路設定部は、片区画線区間において、左右の車線区画線のうちの途切れていない方の区画線から第1のオフセット距離だけ車線の中心側の位置に設定される第1の候補を含む、少なくとも一つの候補を設定し、設定した候補のうち、片区画線区間の前後の区間における予定経路との接続部における曲率変化または車両の進行方向と直交する方向におけるオフセット距離が最小となる候補を、片区画線区間における予定経路として設定することが好ましい。
【0012】
また、この走行予定経路設定装置において、検出部は、特定区間として、車両が走行中の車線の左右の車線区画線の両方が途切れている無区画線区間をさらに検出し、経路設定部は、無区画線区間において、車両が走行中の道路の左端から第2のオフセット距離だけ道路の中心側の位置に設定される第1の候補と車両が走行中の道路の右端から第2のオフセット距離だけ道路の中心側の位置に設定される第2の候補とを含む、複数の候補を設定し、設定した候補のうち、無区画線区間の前後の区間における予定経路との接続部における曲率変化または車両の進行方向と直交する方向におけるオフセット距離が最小となる候補を、無区画線区間における予定経路として設定することが好ましい。
【0013】
また、この走行予定経路設定装置において、経路設定部は、片区画線区間と無区画線区間とが連続する場合、片区画線区間の予定経路を無区画線区間の予定経路よりも先に設定することがさらに好ましい。
【0014】
さらに、この走行予定経路設定装置において、検出部は、車線の幅が所定の幅閾値よりも広い拡幅区間をさらに検出し、経路設定部は、拡幅区間において、車両が走行中の車線の左側の車線区画線から第3のオフセット距離だけ車線の中心側の位置に設定される第1の候補と車両が走行中の車線の右側の車線区画線から第3のオフセット距離だけ車線の中心側の位置に設定される第2の候補とを含む、複数の候補を設定し、設定した候補のうち、拡幅区間の前後の区間における予定経路との接続部における曲率変化または車両の進行方向と直交する方向におけるオフセット距離が最小となる候補を、拡幅区間における予定経路として設定することが好ましい。
【0015】
さらにまた、この走行予定経路設定装置において、検出部は、走行予定区間内において、車両が走行する車線が他の車線と合流し、または他の車線と分岐する合分岐区間をさらに検出し、経路設定部は、合分岐区間において他の車線と反対側の車線区画線または他の車線と反対側の道路端から第4のオフセット距離だけ車線の中心側の位置に予定経路を設定することが好ましい。
【0016】
本発明の他の形態によれば、走行予定経路設定方法が提供される。この走行予定経路設定方法は、車両が走行中の車線を特定し、車両の現在位置から所定距離先までの走行予定区間内において、車両が走行中の車線の左右の車線区画線の少なくとも一方が存在しない区間を特定区間として検出し、特定区間において、左右の車線区画線のうちの存在する方または道路端を基準とする候補を含む、車両が走行する予定経路の少なくとも一つの候補を設定し、設定した候補のうち、特定区間の前後の区間における予定経路との接続部における曲率変化または車両の進行方向と直交する方向におけるオフセット距離が最小となる候補を、特定区間における予定経路として設定する、ことを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る走行予定経路設定装置は、自車線の左右何れかまたは両方の車線区画線が存在しない区間が存在しても、自車線に沿った滑らか走行予定経路を設定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】走行予定経路設定装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。
図2】走行予定経路設定装置の一つの実施形態である電子制御装置のハードウェア構成図である。
図3】走行予定経路設定処理を含む車両制御処理に関する、電子制御装置のプロセッサの機能ブロック図である。
図4】(a)~(c)は、片区画線区間及び無区画線区間の検出の一例を示す図である。
図5】拡幅区間の一例を示す図である。
図6】片区画線区間及び無区画線区間における走行予定経路設定の説明図である。
図7】拡幅区間における走行予定経路設定の説明図である。
図8】走行予定経路設定処理を含む車両制御処理の動作フローチャートである。
図9】変形例による、合分岐区間における走行予定経路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図を参照しつつ、走行予定経路設定装置及び走行予定経路設定装置において実施される走行予定経路設定方法について説明する。この走行予定経路設定装置は、車両の現在位置から所定距離先までの走行予定区間において、道路上の位置の集合として規定される、車両が走行する予定の経路(以下、単に走行予定経路と呼ぶ)を設定する。その際、この走行予定経路設定装置は、自車線の左右の何れか一方の車線区画線が存在しない区間(以下、片区画線区間と呼ぶ)と、自車線の左右の両方の車線区画線が存在しない区間(以下、無区画線区間と呼ぶ)を検出する。そしてこの走行予定経路設定装置は、片区画線区間については、左右の車線区画線のうちの存在する方の車線区画線から所定のオフセット距離だけ自車線の中心側の位置に経路候補の一つを設定する。また、この走行予定経路設定装置は、無区画線区間については、車両が走行中の道路の左端及び右端を検出し、左端を基準とする走行予定経路の候補と右端を基準とする走行予定経路の候補とを含むように、複数の経路候補を設定する。そしてこの走行予定経路設定装置は、片区画線区間及び無区画線区間のそれぞれについて、設定した候補のうち、無区画線区間の前後の区間における走行予定経路との接続部における曲率変化またはオフセットが最小となる経路候補を、片区画線区間及び無区画線区間における走行予定経路として設定する。
【0020】
図1は、走行予定経路設定装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。また図2は、走行予定経路設定装置の一つの実施形態である電子制御装置のハードウェア構成図である。本実施形態では、車両10に搭載され、かつ、車両10を制御する車両制御システム1は、GPS受信機2と、カメラ3と、ストレージ装置4と、走行予定経路設定装置の一例である電子制御装置(ECU)5とを有する。GPS受信機2、カメラ3及びストレージ装置4とECU5とは、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。なお、車両制御システム1は、LiDARあるいはレーダといった、車両10から車両10の周囲に存在する物体までの距離を測定する距離センサ(図示せず)をさらに有していてもよい。さらに、車両制御システム1は、目的地までの走行予定ルートを探索するためのナビゲーション装置(図示せず)を有していてもよい。さらにまた、車両制御システム1は、他の機器と無線通信するための無線通信器(図示せず)を有していてもよい。
【0021】
GPS受信機2は、所定の周期ごとにGPS衛星からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて車両10の自己位置を測位する。そしてGPS受信機2は、所定の周期ごとに、GPS信号に基づく車両10の自己位置の測位結果を表す測位情報を、車内ネットワークを介してECU5へ出力する。なお、車両10はGPS受信機2以外の衛星測位システムに準拠した受信機を有していてもよい。この場合、その受信機が車両10の自己位置を測位すればよい。
【0022】
カメラ3は、撮像部の一例であり、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系を有する。そしてカメラ3は、例えば、車両10の前方を向くように、例えば、車両10の車室内に取り付けられる。そしてカメラ3は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとに車両10の前方領域を撮影し、その前方領域が写った画像を生成する。カメラ3により得られた画像は、カラー画像であってもよく、あるいは、グレー画像であってもよい。なお、車両10には、撮影方向または焦点距離が異なる複数のカメラが設けられてもよい。
【0023】
カメラ3は、画像を生成する度に、その生成した画像を、車内ネットワークを介してECU5へ出力する。
【0024】
ストレージ装置4は、記憶部の一例であり、例えば、ハードディスク装置、不揮発性の半導体メモリ、または光記録媒体及びそのアクセス装置を有する。そしてストレージ装置4は、地図情報の一例である高精度地図を記憶する。高精度地図には、例えば、その高精度地図に表される所定の領域に含まれる道路の各地点における車線区画線の有無及び位置を表す情報及び道路端を表す情報(例えば、道路の中心から道路端までの距離、縁石の位置等)が含まれる。また、高精度地図には、停止線といった車線区画線以外の道路標示を表す情報、及び、道路標識を表す情報などが含まれてもよい。
【0025】
さらに、ストレージ装置4は、高精度地図の更新処理、及び、ECU5からの高精度地図の読出し要求に関する処理などを実行するためのプロセッサを有していてもよい。そしてストレージ装置4は、例えば、車両10が所定距離だけ移動する度に、無線通信器(図示せず)を介して地図サーバへ、高精度地図の取得要求を車両10の現在位置とともに送信し、地図サーバから無線通信器を介して車両10の現在位置の周囲の所定の領域についての高精度地図を受信してもよい。また、ストレージ装置4は、ECU5からの高精度地図の読出し要求を受信すると、記憶している高精度地図から、車両10の現在位置を含み、上記の所定の領域よりも相対的に狭い範囲を表す高精度地図を切り出して、車内ネットワークを介してECU5へ出力する。
【0026】
ECU5は、車両10を自動運転するよう、車両10の走行を制御する。
【0027】
図2に示されるように、ECU5は、通信インターフェース21と、メモリ22と、プロセッサ23とを有する。通信インターフェース21、メモリ22及びプロセッサ23は、それぞれ、別個の回路として構成されてもよく、あるいは、一つの集積回路として一体的に構成されてもよい。
【0028】
通信インターフェース21は、ECU5を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。そして通信インターフェース21は、GPS受信機2から測位情報を受信する度に、その測位情報をプロセッサ23へわたす。また、通信インターフェース21は、カメラ3から画像を受信する度に、受信した画像をプロセッサ23へわたす。さらにまた、通信インターフェース21は、ストレージ装置4から読み込んだ高精度地図をプロセッサ23へわたす。
【0029】
メモリ22は、記憶部の他の一例であり、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ22は、ECU5のプロセッサ23により実行される走行予定経路設定処理において使用される各種のデータを記憶する。例えば、メモリ22は、車両10の周囲の画像、自己位置の測位結果、高精度地図、カメラ3の焦点距離、画角、撮影方向及び取り付け位置などを表す内部パラメータ、及び、車線区画線などの検出に利用される識別器を特定するためのパラメータセットなどを記憶する。さらに、メモリ22は、走行予定経路設定処理の途中で生成される各種のデータを一時的に記憶する。
【0030】
プロセッサ23は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ23は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ23は、車両10に対する車両制御処理を実行する。
【0031】
図3は、走行予定経路設定処理を含む車両制御処理に関する、プロセッサ23の機能ブロック図である。プロセッサ23は、車線特定部31と、検出部32と、基準経路設定部33と、経路設定部34と、車両制御部35とを有する。プロセッサ23が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ23上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ23が有するこれらの各部は、プロセッサ23に設けられる、専用の演算回路であってもよい。
【0032】
車線特定部31は、所定の周期ごとに、車両10が走行中の車線(以下、自車線と呼ぶことがある)を特定する。例えば、車線特定部31は、GPS受信機2により測位された車両10の現在位置と高精度地図とを参照して、車両10が走行中の道路を特定し、特定した道路において、車両10が走行可能な車線を、自車線として特定する。例えば、車両10の現在位置における道路が片側1車線の道路であり、かつ、左側通行の道路であれば、車線特定部31は、車両10の進行方向に向かって左側の車線を自車線として特定する。
【0033】
あるいは、車線特定部31は、カメラ3により得られた画像と高精度地図とを照合することで、自車線を特定してもよい。この場合、車線特定部31は、例えば、画像を識別器に入力することで、画像に表された道路上または道路周辺の地物(例えば、車線区画線、道路端の縁石、道路標識等)を検出する。そのような識別器として、車線特定部31は、例えば、Single Shot MultiBox Detector(SSD)、または、Faster R-CNNといった、コンボリューショナルニューラルネットワーク型(CNN)のアーキテクチャを持つディープニューラルネットワーク(DNN)を用いることができる。このような識別器は、画像から検知対象となる地物を検出するように予め学習される。そして車線特定部31は、車両10の位置及び姿勢を仮定して、画像から検出された道路上の地物をカメラ3の内部パラメータを参照して高精度地図上に投影するか、あるいは、高精度地図上の車両10の周囲の道路上の地物を画像上に投影する。車線特定部31は、画像から検出された道路上の地物と高精度地図上に表された道路上の地物とが最も一致するときの車両10の位置及び姿勢を、車両10の現在位置及び姿勢として推定する。そして車線特定部31は、高精度地図に表された個々の車線のうち、推定した車両10の現在位置を含む車線を、自車線として特定すればよい。
【0034】
車線特定部31は、特定した自車線を表す情報及び車両10の現在位置を表す情報を、検出部32、基準経路設定部33、経路設定部34及び車両制御部35へ通知する。
【0035】
検出部32は、車線特定部31から自車線を表す情報及び車両10の現在位置を表す情報を受信する度に、車両10の現在位置から所定距離先までの車両10の走行予定区間内において、少なくとも左右何れかの車線区画線が存在しない特定区間、すなわち、片区画線区間及び無区画線区間を検出する。さらに、検出部32は、自車線の幅が標準的な車線の幅よりも広い拡幅区間を特定区間の一つとして検出する。さらにまた、検出部32は、自車線の左右それぞれの車線区画線が存在し、かつ、自車線の幅が標準的な車線の幅である区間を基準区間とする。
【0036】
例えば、検出部32は、片区画線区間及び無区画線区間を検出するために、走行予定区間において、高精度地図を参照して、自車線の左側の車線区画線及び自車線の右側の車線区画線のそれぞれについて、車線区画線が途切れている端点をノードとして検出する。検出部32は、個々のノードから、他方の車線区画線までの最短距離となる位置に対応するノードを設定する。ただし、最短距離となる位置が他方の車線区画線の端点であって、その端点が既に別のノードと対応付けられている場合には、検出部32は、他方の車線区画線上に対応するノードが無いことを示す仮想のノードを設定する。検出部32は、自車線を、その延伸方向に沿って、左右それぞれの車線区画線において連続する二つのノード間の区間ごとに区切る。そして検出部32は、個々の区間において、左右の一方にしか車線区画線が無い区間を片区画線区間として検出し、両方とも車線区画線が無い区間を無区画線区間として検出する。
【0037】
図4(a)~図4(c)は、片区画線区間及び無区画線区間の検出の一例を示す図である。図4(a)に示されるように、走行予定区間において自車線400の右側に車線区画線401が設けられており、自車線400の左側に車線区画線402が設けられているものとする。この例では、右側の車線区画線401及び左側の車線区画線402の何れについても、途中で途切れた箇所が存在する。そのため、車線区画線401における個々の端点がノード403-1~403-6として特定されるとともに、車線区画線402における個々の端点がノード404-1~404-6として特定される。
【0038】
図4(b)に示されるように、右側の車線区画線401の個々のノード403-1~403-6から、左側の車線区画線402のうちの最短距離となる位置に対応するノードが設定される。例えば、ノード403-1に対応するノードとして、左側の車線区画線上にノード405-1が設定される。同様に、左側の車線区画線402の個々のノード404-1~404-6から、右側の車線区画線401のうちの最短距離となる位置に対応するノードが設定される。ただし、ノード404-1については、最短距離となる位置が右側の車線区画線401の端点であって、その端点が既に別のノード405-1と対応付けられている。そのため、ノード404-1に対応する、右側の車線区画線401上のノードが無いことを示す仮想のノード407-1が設定される。同様に、ノード404-4についても、対応するノードが無いことを示す仮想のノード407-2が設定される。
【0039】
図4(c)に示されるように、自車線400の延伸方向に沿って連続する二つのノードで区切られた個々の区間410-1~410-9のうち、左右何れか一方にのみ車線区画線が存在する区間が片区画線区間として検出される。この例では、区間410-1、410-3、410-5及び410-7が片区画線区間として検出される。また、区間410-8が無区画線区間として検出される。それ以外の区間は、基準区間とされる。なお、自車線の左右の何れ側にもノードが無い区間、例えば、区間410-1よりも前方の区間は無区画線区間として検出される。
【0040】
また、検出部32は、拡幅区間を検出するために、走行予定区間内において、車両10の進行方向に沿って所定の間隔ごとに、高精度地図を参照して自車線の幅を求める。そして検出部32は、所定の間隔ごとに、自車線の幅を所定の幅閾値と比較し、自車線の幅が幅閾値よりも広い区画を拡幅区間として検出する。幅閾値は、道路の規格に準拠した標準的な車線の幅に所定のオフセット値を加えた値として設定され、メモリ22に予め記憶される。なお、所定のオフセット値は、例えば、車線の標準的な幅に0.3~0.7を乗じた値とすることができる。また、幅閾値は、道路の規格(例えば、自動車専用道または国道など)に応じて複数設定されてもよい。この場合、検出部32は、高精度地図を参照して、車両10が現在走行中の道路の規格を特定し、特定した規格に対応する幅閾値をメモリ22から読み込んで、自車線の幅との比較に用いればよい。あるいは、検出部32は、走行予定区間内において、自車線の左右両側に車線区画線が存在する各地点の自車線の幅の平均値に所定のオフセット値を加算することで幅閾値を設定してもよい。
【0041】
さらに、検出部32は、自車線の左右両方に車線区画線が存在する区間であり、かつ、車線の幅が幅閾値以下である区間を基準区間とする。
【0042】
図5は、拡幅区間の一例を示す図である。図5に示される例では、車両10が車線501を走行しており、区間502において車線501の幅が幅閾値よりも広くなっている。したがって、区間502が拡幅区間として検出される。
【0043】
検出部32は、車両10の現在位置から所定距離先までの車両10の走行予定区間内における基準区間の位置を表す情報(例えば、基準区間の両端点の位置を表す情報)を基準経路設定部33へ通知する。また、検出部32は、車両10の現在位置から所定距離先までの車両10の走行予定区間内における個々の特定区間の位置を表す情報(例えば、特定区間の両端点の位置を表す情報)及び特定区間の種別を表す情報を経路設定部34へ通知する。
【0044】
基準経路設定部33は、検出部32から走行予定区間内の基準区間の位置を表す情報を受信すると、その基準区間における走行予定経路(以下、基準経路と呼ぶことがある)を設定する。例えば、基準経路設定部33は、自車線の左側の車線区画線から基準経路までの距離(第1の距離)と、自車線の右側の車線区画線から基準経路までの距離(第2の距離)との比が所定の比となるように基準経路を設定する。所定の比は、例えば、1対1に設定される。この場合、基準経路は自車線の中央を通るように設定される。ただし、所定の比は1対1に限られず、車両10の周囲の状況によって、基準経路が自車線内の左寄りまたは右寄りとなるように設定されてもよい。具体的に、車両10の周囲において、自車線の右側に隣接する隣接車線をトラックまたはバスといった大型車両が走行している場合、車両10と大型車両間の間隔が狭くなり過ぎることが無いよう、基準経路は、自車線の左寄りに設定されることが好ましい。そこでこのような場合、上記の所定の比は、第1の距離が第2の距離よりも短くなるよう、例えば、4:6または3:7に設定される。逆に、自車線の左側に隣接する隣接車線を大型車両が走行している場合、基準経路は、自車線の右寄りに設定されることが好ましい。そこでこのような場合、上記の所定の比は、第2の距離が第1の距離よりも短くなるよう、例えば、6:4または7:3に設定される。
【0045】
なお、基準経路設定部33は、例えば、カメラ3により得られた画像を識別器に入力することで、車両10の周囲を走行する他の車両を検出するとともに、他の車両が大型車両か否かを判別することができる。そのような識別器として、基準経路設定部33は、車線特定部31に関して上述したような、CNN型のアーキテクチャを有するDNNを用いることができる。基準経路設定部33は、検出された他の車両の種別が大型車両である場合、画像上でその大型車両が表された物体領域の位置と車線区画線の位置とを比較することで、その大型車両が隣接車線を走行しているか否かを判定できる。さらに、物体領域の下端の位置は、その大型車両の路面に接する位置と推定されるので、画像上での物体領域の下端の位置は、カメラ3から見たその大型車両の路面に接する位置への方位であると推定される。そこで基準経路設定部33は、カメラ3の取り付け位置及び焦点距離といった内部パラメータと、その大型車両が表された物体領域の下端の位置とに基づいて、その大型車両までの距離を推定できる。そして基準経路設定部33は、隣接車線を走行する大型車両が存在し、かつ、車両10からその大型車両までの推定距離が所定距離以下である場合、上記のように、基準経路が自車線の中心よりもその隣接車線と反対側の車線区画線に近付くように、所定の比を設定すればよい。
【0046】
あるいは、基準経路設定部33は、車両10の現在位置が基準区間に含まれる場合、車両10の現在位置に基づいて、上記の所定の比を設定してもよい。例えば、基準経路設定部33は、車両10の現在位置から自車線の左側の車線区画線までの距離と、車両10の現在位置から自車線の右側の車線区画線までの距離との比を、上記の所定の比として設定してもよい。このように基準経路を設定することで、車線の横断方向における、車両10の位置が維持されるように基準経路が設定される。
【0047】
基準経路設定部33は、基準区間について設定した基準経路を表す情報(例えば、第1の距離と第2の距離の比と、基準区間の車線幅)とを、経路設定部34及び車両制御部35へ通知する。
【0048】
経路設定部34は、検出部32から走行予定区間内の特定区間の位置及び種類を表す情報を受信するとともに、基準経路設定部33から基準区間についての基準経路を表す情報を受信すると、個々の特定区間についての走行予定経路を設定する。
【0049】
例えば、経路設定部34は、特定区間のうち、片区画線区間について、自車線の左右の車線区画線のうちの存在する方の車線区画線から第1のオフセット距離だけ自車線の中心側に位置する第1の候補経路を含む少なくとも一つの候補経路を設定する。そして経路設定部34は、設定した少なくとも一つの候補経路のうち、片区画線区間の前後の区間における走行予定経路と接続したときのその走行予定経路との接続部における曲率変化の平均値が最小となる候補経路を、片区画線区間における走行予定経路として設定する。本実施形態では、片区画線区間の前後の区間は、片区画線区間以外の他の種別の特定区間または基準区間となる。第1のオフセット距離は、例えば、着目する片区画線区間に最も近い基準区間における、左側の車線区画線から基準経路までの第1の距離または右側の車線区画線から基準経路までの第2の距離の何れかに設定される。なお、経路設定部34は、片区画線区間において左側の車線区画線が存在する場合には、第1のオフセット距離を、着目する片区画線区間に最も近い基準区間における、左側の車線区画線から基準経路までの第1の距離に設定してもよい。同様に、経路設定部34は、片区画線区間において右側の車線区画線が存在する場合には、第1のオフセット距離を、着目する片区画線区間に最も近い基準区間における、右側の車線区画線から基準経路までの第2の距離に設定してもよい。これにより、車両10が自車線の右寄りまたは左寄りを走行するように、基準経路が設定されている場合でも、片区画線区間の前後の区間の走行予定経路と滑らかに接続される候補経路が設定される可能性が高くなる。
【0050】
また、経路設定部34は、特定区間のうち、無区画線区間について、車両10が走行中の道路の左端及び右端を検出する。例えば、経路設定部34は、車両10の現在位置と高精度地図とに基づいて、車両10が走行中の道路の無各線区間における、左右の道路端の位置を検出すればよい。あるいは、経路設定部34は、車線特定部31に関して説明したように、カメラ3により得られた画像を識別器に入力することで左右の道路端を検出してもよく、車線特定部31から左右の道路端の縁石の検出結果を受け取って、その検出結果に基づいて左右の道路端の位置を特定してもよい。
【0051】
経路設定部34は、道路の左端から第2のオフセット距離だけ道路の中心側に位置する第1の候補経路と道路の右端から第2のオフセット距離だけ道路の中心側に位置する第2の候補経路とを含む、複数の候補経路を設定する。そして経路設定部34は、設定した複数の候補経路のうち、無区画線区間の前後の区間における走行予定経路と接続したときのその走行予定経路との接続部における曲率変化の平均値が最小となる候補経路を、無区画線区間における走行予定経路として設定する。本実施形態では、無区画線区間の前後の区間は、無区画線区間以外の他の種別の特定区間または基準区間となる。
【0052】
図6は、片区画線区間及び無区画線区間における走行予定経路設定の説明図である。図6に示されるように、走行予定区間600内に、車両10が走行する自車線601の左右何れかの車線区画線が途切れている片区画線区間611、612、及び、自車線601の左右両側の車線区画線が存在しない無区画線区間613が含まれている。左右の車線区画線のうち、左側の車線区画線602のみが存在する片区画線区間611では、左側の車線区画線602から第1のオフセット距離だけ自車線601の中心側に候補経路621が設定される。同様に、右側の車線区画線603のみが存在する片区画線区間612では、右側の車線区画線602から第1のオフセット距離だけ自車線601の中心側に候補経路622が設定される。この例では、各片区画線区間において設定される候補経路の数は一つであるので、設定した候補経路がその片区画線区間における走行予定経路となる。
【0053】
また、無区画線区間613では、道路の左端から第2のオフセット距離だけ道路の中心側に位置する第1の候補経路631と、道路の右端から第2のオフセット距離だけ道路の中心側に位置する第2の候補経路632とが設定される。この例では、無区画線区間613の前後の区間における走行予定経路640に対して、第1の候補経路631よりも第2の候補経路632の方が、接続部における曲率変化の平均値が小さい。そこで、第2の候補経路632が無区画線区間613における走行予定経路として選択される。
【0054】
さらに、経路設定部34は、特定区間のうちの拡幅区間について、自車線の左側の車線区画線から第3のオフセット距離だけ自車線の中心側に位置する第1の候補経路と、自車線の右側の車線区画線から第3のオフセット距離だけ自車線の中心側に位置する第2の候補経路とを含む、複数の候補経路を設定する。そして経路設定部34は、設定した複数の候補経路のうち、拡幅区間の前後の区間における走行予定経路と接続したときのその走行予定経路との接続部における曲率変化の平均値が最小となる候補経路を、拡幅区間における走行予定経路として設定する。本実施形態では、拡幅区間の前後の区間は、拡幅区間以外の他の種別の特定区間または基準区間となる。第3のオフセット距離は、例えば、着目する拡幅区間に最も近い基準区間における、左側の車線区画線から基準経路までの第1の距離または右側の車線区画線から基準経路までの第2の距離に設定される。なお、経路設定部34は、左側の車線区画線を基準とする第1の候補経路についての第3のオフセット距離を上記の第1の距離に設定し、右側の車線区画線を基準とする第2の候補経路についての第3のオフセット距離を上記の第2の距離に設定してもよい。これにより、車両10が自車線の右寄りまたは左寄りを走行するように、基準経路が設定されている場合でも、第1の候補経路または第2の候補経路の何れかが拡幅区間の前後の区間の走行予定経路と滑らかに接続されるように設定される可能性が高くなる。
【0055】
図7は、拡幅区間における走行予定経路設定の説明図である。図7に示されるように、走行予定区間700内に、車両10が走行する自車線701の幅が他の部分よりも広くなる拡幅区間710が含まれている。拡幅区間710では、左側の車線区画線702から第3のオフセット距離の位置に第1の候補経路711が設定され、一方、右側の車線区画線703から第3のオフセット距離の位置に第2の候補経路712が設定される。この場合、拡幅区間710の前後の区間における走行予定経路720に対して、第1の候補経路711よりも第2の候補経路712の方が、接続部における曲率変化の平均値が小さい。そこで、第2の候補経路712が拡幅区間710における走行予定経路として選択される。
【0056】
なお、変形例によれば、経路設定部34は、片区画線区間及び無区画線区間について、設定された候補経路のうち、前後の区間の走行予定経路との接続部における、車両10の進行方向と直交する方向に沿ったオフセット距離の平均値が最小となる候補経路を、走行予定経路として設定してもよい。同様に、経路設定部34は、拡幅区間について、設定された候補経路のうち、前後の区間の走行予定経路との接続部における、車両10の進行方向と直交する方向に沿ったオフセット距離の平均値が最小となる候補経路を、拡幅区間における走行予定経路として設定してもよい。
【0057】
さらに、経路設定部34は、拡幅区間、片区画線区間及び無区画線区間のそれぞれについて、上記以外の候補経路を設定してもよい。例えば、経路設定部34は、拡幅区間、片区画線区間及び無区画線区間の何れかについて、その区間の前後の区間のそれぞれの走行予定経路を最短で結ぶ経路を候補経路の一つとして設定してもよい。このような候補経路を追加的に設定することで、経路設定部34は、特定区間における走行予定経路とその前後の区間における走行予定経路とを滑らかに接続できる可能性をより高くすることができる。
【0058】
さらに、種類の異なる特定区間が連続することがある。例えば、再度図6を参照すると、片区画線区間612と無区画線区間613とが連続している。このような場合、特定区間の前後の区間の少なくとも一方が、その区間自身の車線区画線に基づいて走行予定経路を設定できる基準区間以外の区間となっている。そこで、経路設定部34は、種類の異なる特定区間が連続する場合、特定区間の種類に応じて走行予定経路を設定する優先順位を設定し、その優先順位に従って特定区間ごとに走行予定経路を設定してもよい。例えば、経路設定部34は、拡幅区間に対して優先順位を最も高く設定し、片区画線区間に対して2番目の優先順位を設定し、無区画線区間の優先順位を最も低く設定してもよい。この場合、経路設定部34は、拡幅区間→片区画線区間→無区画線区間の順に(基準区間も含めると、基準区間→拡幅区間→片区画線区間→無区画線区間の順に)、上記の方法に従って走行予定経路を設定すればよい。あるいは、経路設定部34は、片区画線区間に対して優先順位を最も高く設定し、拡幅区間に対して2番目の優先順位を設定し、無区画線区間の優先順位を最も低く設定してもよい。この場合、経路設定部34は、片区画線区間→拡幅区間→無区画線区間の順に(基準区間も含めると、基準区間→片区画線区間→拡幅区間→無区画線区間の順に)、上記の方法に従って走行予定経路を設定すればよい。経路設定部34は、自車線の少なくとも一方の車線区画線を走行予定経路の設定に利用できる区間から順に走行予定経路を設定するので、走行予定区間全体において車線区画線をより滑らかに接続することができる。
【0059】
あるいは、経路設定部34は、種類の異なる複数の特定区間が連続する場合、その複数の特定区間のうち、何れかの基準区間に近い方の特定区間から順に、上記の方法に従って走行予定経路を設定してもよい。あるいはまた、経路設定部34は、種類の異なる複数の特定区間が連続する場合、その複数の特定区間のうち、車両10の現在位置に近い方の特定区間から順に、上記の方法に従って走行予定経路を設定してもよい。この場合も、経路設定部34は、走行予定区間全体において車線区画線をより滑らかに接続することができる。
【0060】
経路設定部34は、各特定区間について走行予定経路を設定すると、走行予定区間内の各区間について設定された走行予定経路を接続することで走行予定区間全体についての走行予定経路を設定する。その際、経路設定部34は、走行予定区間内の各区間について設定された走行予定経路を接続することで得られた経路に対してスムージング処理を実行することで、走行予定区間全体についての走行予定経路を設定してもよい。
【0061】
経路設定部34は、走行予定経路全体についての走行予定経路を車両制御部35へわたす。
【0062】
車両制御部35は、走行予定経路に沿って車両10が走行するように車両10を自動運転制御する。例えば、車両制御部35は、走行予定経路、及び、車速センサ(図示せず)により測定された車両10の現在の車速に従って、車両10の目標加速度を求め、その目標加速度となるようにアクセル開度またはブレーキ量を設定する。そして車両制御部35は、設定されたアクセル開度に従って燃料噴射量を求め、その燃料噴射量に応じた制御信号を車両10のエンジンの燃料噴射装置へ出力する。あるいは、車両制御部35は、設定されたブレーキ量に応じた制御信号を車両10のブレーキへ出力する。
【0063】
さらに、車両制御部35は、車両10が走行予定経路に沿って走行するために車両10の進行方向を変更する場合には、その走行予定経路に従って車両10の操舵角を求め、その操舵角に応じた制御信号を、車両10の操舵輪を制御するアクチュエータ(図示せず)へ出力する。
【0064】
図8は、プロセッサ23により実行される、走行予定経路設定処理を含む車両制御処理の動作フローチャートである。プロセッサ23は、所定の周期ごとに、以下の動作フローチャートに従って車両制御処理を実行すればよい。なお、以下に示す動作フローチャートの各ステップのうち、ステップS101~S110の処理が走行予定経路設定処理に含まれる。
【0065】
プロセッサ23の車線特定部31は、車両10が走行中の車線、すなわち、自車線を特定する(ステップS101)。プロセッサ23の検出部32は、走行予定区間内において、自車線の拡幅区間、片区画線区間及び無区画線区間を検出するとともに、それ以外の区間を基準区間とする(ステップS102)。
【0066】
プロセッサ23の基準経路設定部33は、走行予定区間内の各基準区間について、自車線の左側の車線区画線から基準経路までの第1の距離と、自車線の右側の車線区画線から基準経路までの第2の距離との比が所定の比となるように基準経路を設定する(ステップS103)。
【0067】
プロセッサ23の経路設定部34は、走行予定区間内の片区画線区間について、自車線の左右の車線区画線のうちの存在する方の車線区画線から第1のオフセット距離だけ自車線の中心側に位置する第1の候補経路を含む少なくとも一つの候補経路を設定する(ステップS104)。そして経路設定部34は、設定した少なくとも一つの候補経路のうち、片区画線区間の前後の区間における走行予定経路と接続したときのその走行予定経路との接続部における曲率変化の平均値が最小となる候補経路を、片区画線区間における走行予定経路として設定する(ステップS105)。
【0068】
さらに、経路設定部34は、走行予定区間内の無区画線区間について、車両10が走行中の道路の左端から第2のオフセット距離だけ道路の中心側に位置する第1の候補経路と道路の右端から第2のオフセット距離だけ道路の中心側に位置する第2の候補経路とを含む、複数の候補経路を設定する(ステップS106)。そして経路設定部34は、設定した複数の候補経路のうち、無区画線区間の前後の区間における走行予定経路と接続したときのその走行予定経路との接続部における曲率変化の平均値が最小となる候補経路を、無区画線区間における走行予定経路として設定する(ステップS107)。
【0069】
さらに、経路設定部34は、走行予定区間内の拡幅区間について、自車線の左側の車線区画線から第1のオフセット距離だけ自車線の中心側に位置する第1の候補経路と、自車線の右側の車線区画線から第1のオフセット距離だけ自車線の中心側に位置する第2の候補経路とを含む、複数の候補経路を設定する(ステップS108)。そして経路設定部34は、設定した複数の候補経路のうち、拡幅区間の前後の区間における走行予定経路と接続したときのその走行予定経路との接続部における曲率変化の平均値が最小となる候補経路を、拡幅区間における走行予定経路として設定する(ステップS109)。なお、経路設定部34は、ステップS105、S107及びS109において、上記のように、設定された候補経路のうち、前後の区間の走行予定経路との接続部における、車両10の進行方向と直交する方向に沿ったオフセット距離の平均値が最小となる候補経路を、その区間における走行予定経路として設定してもよい。
【0070】
経路設定部34は、基準区間、拡幅区間、片区画線区間及び無区画線区間のそれぞれの走行予定経路を接続することで、走行予定区間全体の走行予定経路を設定する(ステップS110)。そしてプロセッサ23の車両制御部35は、走行予定経路に沿って車両10が走行するように車両10を自動運転制御する(ステップS111)。そしてプロセッサ23は、車両制御処理を終了する。
【0071】
以上に説明してきたように、この走行予定経路設定装置は、車両の現在位置から所定距離先までの走行予定区間において、片区画線区間と、無区画線区間とを検出する。そしてこの走行予定経路設定装置は、片区画線区間については、左右の車線区画線のうちの存在する方の車線区画線から所定のオフセット距離だけ自車線の中心側の位置に経路候補の一つを設定する。また、この走行予定経路設定装置は、無区画線区間については、車両が走行中の道路の左端を基準とする経路候補と右端を基準とする経路候補とを含むように、複数の経路候補を設定する。そしてこの走行予定経路設定装置は、片区画線区間及び無区画線区間のそれぞれについて、設定した候補のうち、その区間の前後の区間における走行予定経路との接続部における曲率変化またはオフセットが小さい方の候補を、片区画線区間及び無区画線区間における走行予定経路として設定する。そのため、この走行予定経路設定装置は、自車線の左右何れかまたは両方の車線区画線が存在しない区間が存在しても、自車線に沿った滑らか走行予定経路を設定することができる。
【0072】
変形例によれば、検出部32は、走行予定区間内に自車線が他の車線に合流し、また自車線から他の車線が分岐する合分岐区間を検出してもよい。この場合も、上記の実施形態と同様に、検出部32は、車両10の現在位置及び高精度地図を参照することで、合分岐区間を検出することができる。例えば、検出部32は、自車線と他の車線とが合流する場合、自車線の左右それぞれの車線区画線のうち、他の車線側の車線区画線が他の車線の車線区画線と合わさる地点から、自車線と他の車線とが一つの車線となった地点、すなわち、車線の幅が一車線分の幅となった地点までを合分岐区間とすればよい。同様に、検出部32は、自車線から他の車線が分岐する場合、自車線と他の車線とが分岐し始めた地点から、自車線と他の車線との間の車線区画線が表れる地点までの区間を合分岐区間とすればよい。
【0073】
この場合、経路設定部34は、合分岐区間において、他の車線と反対側合流側の車線区画線または道路端を基準として、被合流側または被分岐側へ、すなわち自車線の中心側へ第4のオフセット距離となる位置に走行予定経路を設定すればよい。なお、第4のオフセット距離は、例えば、片区画線区間における第1のオフセット距離と同様に、着目する合分岐区間に最も近い基準区間における、左側の車線区画線から基準経路までの第1の距離または右側の車線区画線から基準経路までの第2の距離の何れかに設定されればよい。
【0074】
図9は、この変形例による、合分岐区間における走行予定経路の一例を示す図である。この例では、車両10が走行中の車線901が右側に隣接する他の車線902へ合流している。そのため、車線901と他の車線902との合分岐区間において、車線901の左側の車線区画線911、または車線区画線911がなければ、車線901の左側の道路端912から他の車線902側へ向けて第4のオフセット距離となる位置に走行予定経路921が設定される。このように合分岐区間において走行予定経路を設定することで、合分岐区間及びその前後の区間において走行予定経路が車線に沿った滑らかな経路として設定される。
【0075】
また、上記の実施形態または変形例による、ECU5のプロセッサ23の機能を実現するコンピュータプログラムは、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な可搬性の記録媒体に記録された形で提供されてもよい。
【0076】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0077】
1 車両制御システム
10 車両
2 GPS受信機
3 カメラ
4 ストレージ装置
5 電子制御装置(ECU)
21 通信インターフェース
22 メモリ
23 プロセッサ
31 車線特定部
32 検出部
33 基準経路設定部
34 経路設定部
35 車両制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9